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特許7570582形状姿勢推定装置、形状姿勢推定方法及び形状姿勢推定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】形状姿勢推定装置、形状姿勢推定方法及び形状姿勢推定システム
(51)【国際特許分類】
   B64G 3/00 20060101AFI20241011BHJP
【FI】
B64G3/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024549126
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 JP2022044304
【審査請求日】2024-08-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】尾野 仁深
(72)【発明者】
【氏名】辻 秀伸
(72)【発明者】
【氏名】福田 多伸
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108415098(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112179355(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112417670(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象の移動体の光度を測定する光度測定装置から、前記光度の時間的な変化を示す第1の光度曲線を取得する光度曲線取得部と、
レーダ装置から、当該レーダ装置と前記移動体との間の距離を示す距離画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された距離画像と、宇宙空間に存在している可能性のある物体の特徴を示す特徴データとを用いて、前記移動体のモデルを生成するモデル生成部と、
前記モデル生成部により生成された移動体のモデルに対して照明光源からの光が照射されたときの前記モデルの光度の時間的な変化をシミュレーションし、前記モデルの光度の時間的な変化を示す第2の光度曲線を出力する光度曲線算出部と、
前記光度曲線取得部により取得された第1の光度曲線と前記光度曲線算出部から出力された第2の光度曲線とに基づいて、前記モデルの形状及び姿勢のそれぞれを調整し、調整後のモデルから、前記移動体の形状及び姿勢のそれぞれを推定する形状姿勢推定部と
を備えた形状姿勢推定装置。
【請求項2】
前記モデル生成部は、
前記画像取得部により取得された距離画像から、前記移動体の輝度を示す輝度画像を生成する輝度画像生成部と、
前記画像取得部により取得された距離画像から、前記移動体の形状の凹凸を示す奥行情報を算出する奥行算出部と、
前記輝度画像生成部により生成された輝度画像と前記奥行算出部により算出された奥行情報と前記特徴データとを用いて、前記移動体のモデルを生成するモデル生成処理部と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の形状姿勢推定装置。
【請求項3】
前記画像取得部は、
前記レーダ装置から、前記距離画像を取得するほかに、前記移動体を撮像する撮像装置を実装している飛翔体から、前記撮像装置による前記移動体の撮像画像を取得し、
前記モデル生成部は、
前記画像取得部により取得された距離画像及び前記画像取得部により取得された撮像画像の中から、いずれか一方の画像を選択し、前記選択した画像と前記特徴データとを用いて、前記移動体のモデルを生成することを特徴とする請求項1記載の形状姿勢推定装置。
【請求項4】
前記形状姿勢推定部は、
前記光度曲線算出部から出力された第2の光度曲線が前記光度曲線取得部により取得された第1の光度曲線に近づくように、前記モデルの形状及び姿勢のそれぞれを調整することを特徴とする請求項1記載の形状姿勢推定装置。
【請求項5】
前記形状姿勢推定部は、
前記第2の光度曲線が前記第1の光度曲線に近づくように、前記モデルの形状、姿勢及び材料のそれぞれを調整することを特徴とする請求項4記載の形状姿勢推定装置。
【請求項6】
光度曲線取得部が、監視対象の移動体の光度を測定する光度測定装置から、前記光度の時間的な変化を示す第1の光度曲線を取得し、
画像取得部が、レーダ装置から、当該レーダ装置と前記移動体との間の距離を示す距離画像を取得し、
モデル生成部が、前記画像取得部により取得された距離画像と、宇宙空間に存在している可能性のある物体の特徴を示す特徴データとを用いて、前記移動体のモデルを生成し、
光度曲線算出部が、前記モデル生成部により生成された移動体のモデルに対して照明光源からの光が照射されたときの前記モデルの光度の時間的な変化をシミュレーションし、前記モデルの光度の時間的な変化を示す第2の光度曲線を出力し、
形状姿勢推定部が、前記光度曲線取得部により取得された第1の光度曲線と前記光度曲線算出部から出力された第2の光度曲線とに基づいて、前記モデルの形状及び姿勢のそれぞれを調整し、調整後のモデルから、前記移動体の形状及び姿勢のそれぞれを推定する
形状姿勢推定方法。
【請求項7】
レーダ装置と、
監視対象の移動体の光度を測定する光度測定装置と、
前記移動体の形状及び姿勢のそれぞれを推定する形状姿勢推定装置とを備え、
前記形状姿勢推定装置は、
前記光度測定装置から、前記光度の時間的な変化を示す第1の光度曲線を取得する光度曲線取得部と、
前記レーダ装置から、当該レーダ装置と前記移動体との間の距離を示す距離画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された距離画像と、宇宙空間に存在している可能性のある物体の特徴を示す特徴データとを用いて、前記移動体のモデルを生成するモデル生成部と、
前記モデル生成部により生成された移動体のモデルに対して照明光源からの光が照射されたときの前記モデルの光度の時間的な変化をシミュレーションし、前記モデルの光度の時間的な変化を示す第2の光度曲線を出力する光度曲線算出部と、
前記光度曲線取得部により取得された第1の光度曲線と前記光度曲線算出部から出力された第2の光度曲線とに基づいて、前記モデルの形状及び姿勢のそれぞれを調整し、調整後のモデルから、前記移動体の形状及び姿勢のそれぞれを推定する形状姿勢推定部とを備えている
ことを特徴とする形状姿勢推定システム。
【請求項8】
前記レーダ装置は、
地上に設置されていることを特徴とする請求項7記載の形状姿勢推定システム。
【請求項9】
前記光度測定装置は、
前記移動体からの光のうち、光度を測定する波長の光、又は、光度を測定する偏光を選択する光選択部を備えており、前記光選択部により選択された波長の光、又は、前記光選択部により選択された偏光の光度を測定することを特徴とする請求項7記載の形状姿勢推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、形状姿勢推定装置、形状姿勢推定方法及び形状姿勢推定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
宇宙空間を移動する目標対象物の形状及び姿勢のそれぞれを推定する監視システムがある
このような監視システムとして、特許文献1には、目標対象物の輝度の時間的な変化を示す複数の輝度変化パターン(以下「登録輝度変化パターン」という)を記憶しているデータベースを備える監視システムが開示されている。登録輝度変化パターンは、目標対象物の形状及び姿勢のそれぞれと対応付けられている。
特許文献1に開示されている監視システムは、目標対象物の輝度の時間的な変化を示す輝度変化パターン(以下「観測輝度変化パターン」という)を観測し、観測輝度変化パターンとデータベースに記憶されている複数の登録輝度変化パターンとのパターンマッチングを行う。当該監視システムは、複数の登録輝度変化パターンの中で、観測輝度変化パターンとの一致度が最も高い登録輝度変化パターンに対応付けられている形状及び姿勢のそれぞれを推定結果として出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-202809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている監視システムでは、観測輝度変化パターンと一致度が高い登録輝度変化パターンが、データベースに記憶されていなければ、監視システムによる形状等の推定精度が劣化してしまうという課題があった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、移動体の登録輝度変化パターンをデータベースに記憶させることなく、移動体の形状及び姿勢のそれぞれを推定することができる形状姿勢推定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る形状姿勢推定装置は、監視対象の移動体の光度を測定する光度測定装置から、光度の時間的な変化を示す第1の光度曲線を取得する光度曲線取得部と、レーダ装置から、レーダ装置と移動体との間の距離を示す距離画像を取得する画像取得部と、画像取得部により取得された距離画像と、宇宙空間に存在している可能性のある物体の特徴を示す特徴データとを用いて、移動体のモデルを生成するモデル生成部とを備えている。また、形状姿勢推定装置は、モデル生成部により生成された移動体のモデルに対して照明光源からの光が照射されたときのモデルの光度の時間的な変化をシミュレーションし、モデルの光度の時間的な変化を示す第2の光度曲線を出力する光度曲線算出部と、光度曲線取得部により取得された第1の光度曲線と光度曲線算出部から出力された第2の光度曲線とに基づいて、モデルの形状及び姿勢のそれぞれを調整し、調整後のモデルから、移動体の形状及び姿勢のそれぞれを推定する形状姿勢推定部とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、移動体の登録輝度変化パターンをデータベースに記憶させることなく、移動体の形状及び姿勢のそれぞれを推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る形状姿勢推定システムを示す構成図である。
図2】実施の形態1に係る形状姿勢推定システムに含まれる光度測定装置10を示す構成図である。
図3】実施の形態1に係る形状姿勢推定システムに含まれる計画装置30を示す構成図である。
図4】実施の形態1に係る形状姿勢推定システムに含まれる地上局40を示す構成図である。
図5】実施の形態1に係る形状姿勢推定装置50を示す構成図である。
図6】実施の形態1に係る形状姿勢推定装置50のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図7】形状姿勢推定装置50が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合のコンピュータのハードウェア構成図である。
図8】移動体1とレーダ装置4と光度測定装置10と計画装置30と形状姿勢推定装置50との位置関係を示す説明図である。
図9】移動体1と飛翔体2と光度測定装置10と計画装置30と地上局40と形状姿勢推定装置50との位置関係を示す説明図である。
図10】処理装置21による位置及び光度におけるそれぞれの算出処理等を示すフローチャートである。
図11】形状姿勢推定装置50の処理手順である形状姿勢推定方法を示すフローチャートである。
図12】形状姿勢推定装置50の処理手順である形状姿勢推定方法を示すフローチャートである。
図13】形状姿勢推定装置50の処理内容を示す説明図である。
図14】移動体1と飛翔体2と光度測定装置10と計画装置30と地上局40と形状姿勢推定装置50との位置関係を示す説明図である。
図15】実施の形態2に係る形状姿勢推定装置50の処理内容を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示をより詳細に説明するために、本開示を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る形状姿勢推定システムを示す構成図である。
図1に示す形状姿勢推定システムは、レーダ装置4、光度測定装置10、計画装置30、地上局40及び形状姿勢推定装置50を備えている。
【0011】
移動体1は、形状姿勢推定装置50による監視対象であり、既知の軌道上を移動する。
移動体1としては、例えば、地球周辺の宇宙空間を移動している隕石、デブリ、人工衛星、ロケット、太陽電池パネル、多層断熱材、又は、ねじ等の衛星材料がある。移動体1は、恒星と異なり、一般的には、自ら発光しないため、太陽等の照明光源によって照らされることで輝きを生じることが多い。
飛翔体2は、撮像装置3を実装しており、撮像装置3による移動体1の撮像画像を示す撮像画像データを地上局40に送信する。
飛翔体2としては、例えば、既知の軌道上を移動する人工衛星がある。
撮像装置3は、移動体1を撮像する映像機器である。
【0012】
レーダ装置4は、地上に設置されている。
レーダ装置4は、電波を移動体1に向けて放射し、移動体1による反射後の電波である反射波を受信する。
レーダ装置4は、反射波に基づいて、レーダ装置4と移動体1との間の距離を示す距離画像を生成し、後述する通信線路74を介して、距離画像を示す距離画像データを形状姿勢推定装置50に出力する。
図1に示す形状姿勢推定システムでは、レーダ装置4が、通信線路74を介して、距離画像データを形状姿勢推定装置50に出力している。しかし、これは一例に過ぎず、レーダ装置4が、距離画像データを形状姿勢推定装置50に直接送信するようにしてもよい。
図1に示す形状姿勢推定システムでは、レーダ装置4が、地上に設置されている。しかし、これは一例に過ぎず、レーダ装置4が、例えば、飛翔体2に設置されていてもよい。
【0013】
図2は、実施の形態1に係る形状姿勢推定システムに含まれる光度測定装置10を示す構成図である。
図2に示す光度測定装置10は、通信線路74と接続されている。
光度測定装置10は、監視対象の移動体1の光度を測定し、通信線路74を介して、光度の測定結果を形状姿勢推定装置50に出力する。
光度測定装置10は、集光装置11、光選択部12、遮光装置13、位置検出器14、時刻校正部15、カウンタ16、制御装置17、指向装置18及び解析装置19を備えている。
【0014】
集光装置11は、例えば、光の屈折を利用する屈折型の望遠鏡によって実現される。
集光装置11は、移動体1の放射光、又は、移動体1の反射光を集光する。
移動体1の放射光は、移動体1が自ら発光する光を意味し、移動体1の反射光は、例えば、太陽等の恒星が発する光が移動体1に反射された光を意味する。図1に示す形状姿勢推定システムでは、移動体1の反射光は、移動体1の散乱光を含むものである。
図1に示す形状姿勢推定システムでは、集光装置11が屈折型の望遠鏡によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、集光装置11が、例えば、光の反射を利用する反射型の望遠鏡によって実現されているものであってもよいし、屈折型の望遠鏡と反射型の望遠鏡との双方によって実現されているものであってもよい。
【0015】
光選択部12は、例えば、フィルタホイールによって実現される。フィルタホイールは、1つ以上の波長フィルタ、又は、1つ以上の偏光フィルタによって実現される。
光選択部12は、制御装置17から、選択対象の波長、又は、選択対象の偏光を示す選択信号を取得する。
光選択部12は、集光装置11により集光された光のうち、選択信号が示す波長の光、又は、選択信号が示す偏光を選択する。
図1に示す形状姿勢推定システムでは、光選択部12がフィルタホイールによって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、光選択部12が、例えば、集光装置11により集光された光に含まれている不必要な光を部分的に吸収するND(Neutral Density)フィルタによって実現されているものであってもよいし、不要な光を選択的に取り除く波長フィルタによって実現されているものであってもよい。
【0016】
遮光装置13は、例えば、機械的なシャッタ、又は、電子的なシャッタを備えている。
遮光装置13のシャッタは、制御装置17から出力された制御信号に従って開閉される。シャッタが位置検出器14の露光時間に応じて開閉されることで、光選択部12によって選択された光の遮断と光の透過とが交互に繰り返される。
【0017】
位置検出器14は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、又は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサによって実現される。
位置検出器14は、遮光装置13を透過してきた光を検出して、移動体1が映っている光強度画像を撮像する。
位置検出器14が、CCDイメージセンサ、又は、CMOSイメージセンサによって実現されている場合、移動体1が位置検出器14の視野内に入っていれば、移動体1が視野の中心位置からずれた位置に存在していたとしても、移動体1を検出することができる。このため、集光装置11の指向方向の制御が容易になる利点がある。また、位置検出器14が、CCDイメージセンサ等によって実現されている場合、視野の上下方向、又は、視野の左右方向のうち、どちらの方向に向かって、移動体1が移動しているのかが光強度画像から分かる。また、視野内に恒星が入っていれば、恒星の位置及び恒星の光度のそれぞれも光強度画像から分かる利点がある。
図1に示す形状姿勢推定システムでは、位置検出器14が、CCDイメージセンサ等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、位置検出器14が、CCDイメージセンサ等のほかに、読み出し回路及びメモリ等を備えていてもよい。
【0018】
時刻校正部15は、後述する基準信号源71から、通信装置22を介して、基準時刻を取得する。
時刻校正部15は、取得した基準時刻に基づいて、カウンタ16の時刻を校正する。
例えば、恒星は、日周運動によって、一秒間で15秒角(=15/3600度)ほど移動する。このため、位置の決定に秒角の精度が必要である場合、時刻校正部15は、少なくともサブ秒で時刻を校正する必要がある。
【0019】
カウンタ16は、例えば、時計によって実現される。
カウンタ16の時刻は、時刻校正部15によって校正される。
カウンタ16は、後述する時間帯情報が示す時間帯の先頭の時刻からの経過時間をカウントし、経過時間を制御装置17及び解析装置19のそれぞれに出力する。
【0020】
制御装置17は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を実装している半導体集積回路、あるいは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラム基板によって実現される。
制御装置17は、カウンタ16から出力された経過時間に基づいて、集光装置11の指向方向を示す制御信号を指向装置18に出力するほか、シャッタの開閉時刻を示す制御信号を遮光装置13に出力し、光強度画像の撮像時刻を示す制御信号を位置検出器14に出力する。
また、制御装置17は、選択対象の波長、又は、選択対象の偏光を示す選択信号を光選択部12に出力する。
【0021】
指向装置18は、例えば、一軸以上の回転軸を有する回転ステージによって実現される。回転ステージとしては、例えば、経緯台、又は、赤道儀がある。
指向装置18は、制御装置17から出力された制御信号に従って、集光装置11の指向方向を制御する。
集光装置11が回転ステージに実装されており、回転ステージに付加されているモータ等が、制御装置17から出力された制御信号に従って駆動することで、集光装置11の指向方向が制御される。
【0022】
解析装置19は、記録装置20、処理装置21及び通信装置22を備えている。
記録装置20は、例えば、RAM(Random Access Memory)、又は、ハードディスクによって実現される。
記録装置20は、例えば、位置検出器14により撮像された光強度画像と、位置検出器14により光強度画像が撮像されたときにカウンタ16から出力された経過時間と、処理装置21により算出された移動体1の画像上の位置及び移動体1の光度とを記録する。
【0023】
処理装置21は、例えば、CPUを実装している半導体集積回路、あるいは、FPGAのようなプログラム基板によって実現される。
処理装置21は、位置検出器14により撮像された光強度画像から、移動体1の画像上の位置と、移動体1の光度とを算出する。移動体1の画像上の位置は、集光装置11を実現している望遠鏡から移動体1を見た角度に相当する。移動体1の光度は、位置検出器14により受光された光の量に相当する。移動体1の光度の時間的な変化は、第1の光度曲線に相当する。
光選択部12が、集光装置11により集光された光のうち、選択信号が示す波長の光を選択するため、位置検出器14は、特定の波長の信号光を検出することができる。したがって、位置検出器14により受光された光は、特定の波長の光になり、位置検出器14により撮像された光強度画像は、特定の波長の光によって生成される。
【0024】
通信装置22は、基準信号源71から、通信線路74を介して、基準時刻を受信し、基準時刻を時刻校正部15に出力する。
また、通信装置22は、第1の光度曲線を、通信線路74を介して、形状姿勢推定装置50に出力する。
【0025】
図3は、実施の形態1に係る形状姿勢推定システムに含まれる計画装置30を示す構成図である。
図3に示す計画装置30は、通信装置31、軌道計算装置32及び運用計画設定装置33を備えている。
通信装置31は、通信線路74と接続されている。
通信装置31は、後述する軌道上物体データ記憶部72から、通信線路74を介して、宇宙空間に存在している移動体の中で、軌道が確定している移動体1の軌道を示す第1の軌道データを受信する。第1の軌道データは、複数の過去の観測時刻における移動体1の位置を示す位置データと、複数の過去の観測時刻における移動体1の速度を示す速度データとを含んでいる。
また、通信装置31は、軌道上物体データ記憶部72から、通信線路74を介して、軌道が確定している宇宙空間内の飛翔体2の軌道を示す第2の軌道データを受信する。第2の軌道データは、複数の観測時刻における飛翔体2の位置を示す位置データと、複数の観測時刻における飛翔体2の速度を示す速度データとを含んでいる。また、第2の軌道データは、将来の軌道における複数の時刻の位置及び速度のそれぞれを含んでいる。
通信装置31は、後述する恒星データ記憶部73から、通信線路74を介して、複数の時刻における恒星の位置及び恒星から発せられる特定の波長帯の光の明るさのそれぞれを示す恒星情報を受信する。
通信装置31は、運用計画設定装置33により作成されたコマンドを地上局40に送信する。
【0026】
軌道計算装置32は、例えば、CPUを実装している半導体集積回路、あるいは、FPGAのようなプログラム基板によって実現される。
軌道計算装置32は、通信装置31により受信された第1の軌道データに基づいて、移動体1の将来の軌道を算出する。
軌道計算装置32は、通信装置31により受信された恒星情報に基づいて、恒星に含まれる太陽の軌道を特定する。
軌道計算装置32は、太陽の軌道と、移動体1の将来の軌道と、第2の軌道データが示す飛翔体2の将来の軌道とから、将来の複数の時刻における、太陽と移動体1と飛翔体2との幾何学的な配置を特定する。
軌道計算装置32は、将来の複数の時刻における幾何学的な配置に基づいて、例えば、太陽からの光が地球に遮られて、太陽からの光が移動体1に照射されない将来の時刻を算出する。
軌道計算装置32は、移動体1の将来の軌道を示す将来軌道データと、第2の軌道データと、太陽からの光が移動体1に照射されない将来の時刻を示す時刻情報とを運用計画設定装置33に出力する。
【0027】
運用計画設定装置33は、例えば、CPUを実装している半導体集積回路、あるいは、FPGAのようなプログラム基板によって実現される。
運用計画設定装置33は、軌道計算装置32から、将来軌道データと第2の軌道データと時刻情報とを取得する。
運用計画設定装置33は、将来軌道データと第2の軌道データと時刻情報とに基づいて、飛翔体2を制御するためのコマンドを作成し、コマンドを通信装置31に出力する。
【0028】
図4は、実施の形態1に係る形状姿勢推定システムに含まれる地上局40を示す構成図である。
図4に示す地上局40は、通信装置41、信号送信部42、アンテナ43、信号受信部44、記録装置45、制御装置46及び指向装置47を備えている。
【0029】
通信装置41は、計画装置30の通信装置31からコマンドを受信し、コマンドを信号送信部42及び制御装置46のそれぞれに出力する。
通信装置41は、記録装置45に記録された撮像画像データを、計画装置30の通信装置31を介して、形状姿勢推定装置50に送信する。
図4に示す地上局40では、通信装置41が、撮像画像データを、計画装置30の通信装置31を介して、形状姿勢推定装置50に送信している。しかし、これは一例に過ぎず、通信装置41が、撮像画像データを形状姿勢推定装置50に直接送信するようにしてもよい。
【0030】
信号送信部42は、通信装置41から出力されたコマンドに対する変調処理等を実施することで、コマンドを示す送信信号を生成する。飛翔体2との通信が可能な波長帯として、例えば、Xバンド、又は、Sバンドが決められていれば、信号送信部42は、Xバンドの電波の送信信号、又は、Sバンドの電波の送信信号を生成する。コマンドに対する変調処理等としては、いわゆる変調処理のほかに、例えば、符号化処理及び増幅処理がある。
図4に示す地上局40では、信号送信部42が、電波の送信信号を生成している。しかし、これは一例に過ぎず、信号送信部42が、光の送信信号を生成するようにしてもよい。
【0031】
アンテナ43は、例えば、パラボラアンテナによって実現される。
アンテナ43は、信号送信部42により生成された電波の送信信号を飛翔体2に向けて放射する。信号送信部42により光の送信信号が生成されていれば、アンテナ43の代わりに集光装置が用いられる。
アンテナ43は、飛翔体2から、撮像装置3による移動体1の撮像画像を示す撮像画像データに係る電波を受信し、電波の受信信号を信号受信部44に出力する。
【0032】
信号受信部44は、アンテナ43から出力された電波の受信信号から、移動体1の撮像画像を示す撮像画像データを復調し、撮像画像データを記録装置45に出力する。
記録装置45は、信号受信部44から出力された撮像画像データを記録する。
【0033】
制御装置46は、例えば、CPUを実装している半導体集積回路、あるいは、FPGAのようなプログラム基板によって実現される。
制御装置46は、通信装置41から出力されたコマンドに従ってアンテナ43の指向方向を示す制御信号を指向装置47に出力する。
また、制御装置46は、信号送信部42の送信タイミング及び信号受信部44の受信タイミングのそれぞれを制御する。
【0034】
指向装置47は、例えば、一軸以上の回転軸を有する回転ステージによって実現される。
指向装置47は、制御装置46から出力された制御信号に従って、アンテナ43の指向方向を制御する。
アンテナ43が回転ステージに実装されており、回転ステージに付加されているモータ等が、指向装置47から出力された制御信号に従って駆動することで、アンテナ43の指向方向が制御される。
【0035】
図5は、実施の形態1に係る形状姿勢推定装置50を示す構成図である。
図6は、実施の形態1に係る形状姿勢推定装置50のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図5に示す形状姿勢推定装置50は、材料データ記憶部51、形状データ記憶部52、特性データ記憶部53、光度曲線取得部54、画像取得部55、モデル生成部56、光度曲線算出部57及び形状姿勢推定部58を備えている。
形状姿勢推定装置50は、移動体1の形状及び姿勢のそれぞれを推定する。
【0036】
材料データ記憶部51は、例えば、図6に示す材料データ記憶回路61によって実現される。
材料データ記憶部51は、宇宙空間に存在している可能性のある物体の特徴を示す特徴データとして、当該物体の材料の特性を示す材料データを記憶している。
当該物体が人工衛星等の人工物であれば、例えば、人工物の表面を形成している材料の物性値を示すデータが、材料データとして材料データ記憶部51に記憶される。材料の物性値としては、例えば、材料の分光反射率、放射率、散乱特性、又は、密度がある。
当該物体が自然物であり、自然物が、例えば、隕石又は金属であれば、隕石の物性値を示すデータ又は金属の物性値を示すデータが、材料データとして材料データ記憶部51に記憶される。
【0037】
形状データ記憶部52は、例えば、図6に示す形状データ記憶回路62によって実現される。
形状データ記憶部52は、宇宙空間に存在している可能性のある物体の特徴を示す特徴データとして、当該物体の形状を示す形状データを記憶している。
当該物体が人工衛星等の人工物であれば、過去に作成された人工物の形状を示すデータが、形状データとして形状データ記憶部52に記憶される。人工物は、軌道上で分解又は破砕されることもある。このため、人工物の全体の形状を示す形状データだけでなく、人工物に含まれている複数の部品のそれぞれの形状を示す形状データについても形状データ記憶部52に記憶される。
【0038】
特性データ記憶部53は、例えば、図6に示す特性データ記憶回路63によって実現される。
特性データ記憶部53は、宇宙空間に存在している可能性のある物体の特徴を示す特徴データとして、宇宙空間に存在している物体の中で、軌道が確定していないものの、既知の軌道と対応している可能性のある物体の特性データを記憶している。当該物体の特性データとしては、例えば、形状、特性、画像、又は、光度曲線を示すデータがある。
【0039】
図5に示す形状姿勢推定装置50は、材料データ記憶部51、形状データ記憶部52及び特性データ記憶部53を備えている。しかし、これは一例に過ぎず、材料データ記憶部51、形状データ記憶部52及び特性データ記憶部53のそれぞれが、形状姿勢推定装置50の外部に設置されていてもよい。この場合、形状姿勢推定装置50が、通信装置を介して、材料データ記憶部51、形状データ記憶部52及び特性データ記憶部53のそれぞれに記憶されている特徴データを取得すればよい。
【0040】
光度曲線取得部54は、例えば、図6に示す光度曲線取得回路64によって実現される。
光度曲線取得部54は、通信線路74と接続されている通信装置54aを備えている。
光度曲線取得部54は、通信装置54aを用いて、光度測定装置10の記録装置20に記録されている、移動体1の光度の時間的な変化を示す第1の光度曲線を取得する。
光度曲線取得部54は、第1の光度曲線を形状姿勢推定部58に出力する。
図5に示す形状姿勢推定装置50では、光度曲線取得部54が通信装置54aを備えている。しかし、これは一例に過ぎず、通信装置54aが、光度曲線取得部54の外部に設けられていてもよい。
【0041】
画像取得部55は、例えば、図6に示す画像取得回路65によって実現される。
画像取得部55は、通信線路74と接続されている通信装置55aを備えている。
画像取得部55は、通信装置55aを用いて、レーダ装置4から出力された距離画像データと、地上局40の記録装置45に記録されている、撮像装置3による移動体1の撮像画像を示す撮像画像データとを取得する。
画像取得部55は、距離画像データ及び撮像画像データのそれぞれをモデル生成部56に出力する。
図5に示す形状姿勢推定装置50では、画像取得部55が通信装置55aを備えている。しかし、これは一例に過ぎず、通信装置55aが、画像取得部55の外部に設けられていてもよい。
【0042】
モデル生成部56は、例えば、図6に示すモデル生成回路66によって実現される。
モデル生成部56は、輝度画像生成部56a、奥行算出部56b及びモデル生成処理部56cを備えている。
モデル生成部56は、画像取得部55から、距離画像データ及び撮像画像データのそれぞれを取得する。
また、モデル生成部56は、材料データ記憶部51、形状データ記憶部52及び特性データ記憶部53のそれぞれから、宇宙空間に存在している可能性のある物体の特徴を示す特徴データを取得する。
モデル生成部56は、距離画像データ及び撮像画像データの中から、いずれか一方の画像データを選択する。
モデル生成部56は、選択した画像データと特徴データとを用いて、移動体1のモデルを生成する。移動体1のモデルは、例えば、移動体1の形状及び反射特性等のそれぞれが模擬されている3次元モデルである。
モデル生成部56は、移動体1のモデルを光度曲線算出部57及び形状姿勢推定部58のそれぞれに出力する。
【0043】
輝度画像生成部56aは、画像取得部55から距離画像データを取得した場合、距離画像データが示す距離画像から、移動体1の輝度を示す輝度画像を生成する。
距離画像は、監視対象までの距離が濃淡で表された画像である。輝度画像は、監視対象までの距離が近いほど、輝度値が大きい画像である。ここでの監視対象は、移動体1である。
輝度画像生成部56aは、輝度画像をモデル生成処理部56cに出力する。
【0044】
奥行算出部56bは、距離画像データが示す距離画像に映っている移動体1の形状の凹凸を示す奥行情報を算出し、奥行情報をモデル生成処理部56cに出力する。
モデル生成処理部56cは、輝度画像生成部56aから輝度画像を取得し、奥行算出部56bから奥行情報を取得する。
モデル生成処理部56cは、輝度画像と奥行情報と特徴データとを用いて、移動体1のモデルを生成する。
【0045】
光度曲線算出部57は、例えば、図6に示す光度曲線算出回路67によって実現される。
光度曲線算出部57は、モデル生成部56により生成された移動体1のモデルに対して照明光源からの光が照射されたときのモデルの光度の時間的な変化をシミュレーションする。
具体的には、光度曲線算出部57は、照明条件として、移動体1のモデルの姿勢を仮定するほか、移動体1のモデルに対して光を照射する照明光源との配置を仮定する。光度曲線算出部57によって、撮像画像データが示す撮像画像を用いて、移動体1のモデルが生成されている場合、光度曲線算出部57は、照明光源により光が照射されるモデルを観測する飛翔体2の配置も仮定する。
光度曲線算出部57は、上記の照明条件の下で、光が照射されるモデルの光度の時間変化をシミュレーションする。
光度曲線算出部57は、モデルの光度の時間変化を示す第2の光度曲線を形状姿勢推定部58に出力する。
【0046】
形状姿勢推定部58は、例えば、図6に示す形状姿勢推定回路68によって実現される。
形状姿勢推定部58は、光度曲線取得部54から第1の光度曲線を取得し、光度曲線算出部57から第2の光度曲線を取得する。
形状姿勢推定部58は、モデル生成部56から、移動体1のモデルを取得する。
形状姿勢推定部58は、第1の光度曲線と第2の光度曲線とに基づいて、移動体1のモデルの形状及び姿勢のそれぞれを調整する。具体的には、形状姿勢推定部58は、第2の光度曲線が第1の光度曲線に近づくように、移動体1のモデルの形状及び姿勢のそれぞれを調整する。
形状姿勢推定部58は、調整後のモデルから、移動体1の形状及び姿勢のそれぞれを推定する。
【0047】
基準信号源71は、例えば、複数のGPS(Global Positioning System)衛星から発信されるGPS信号を受信するGPS受信器を備え、GPS信号に含まれている時刻を取得する。あるいは、基準信号源71は、標準電波を受信する電波時計を備え、標準電波に含まれている時刻を取得する。あるいは、基準信号源71は、NTP(Network Time Protocol)に代表されるネットワーク機器の時刻同期のためのプロトコルを利用して時刻を取得する。
基準信号源71は、取得した時刻を基準時刻として、光度測定装置10の通信装置22に出力する。
【0048】
軌道上物体データ記憶部72は、例えば、RAM、又は、ハードディスクによって実現される。
軌道上物体データ記憶部72は、宇宙空間に存在している移動体の中で、軌道が確定している移動体1の軌道を示す第1の軌道データを記憶している。
また、軌道上物体データ記憶部72は、軌道が確定している宇宙空間内の飛翔体2の軌道を示す第2の軌道データを記憶している。
【0049】
恒星データ記憶部73は、例えば、RAM、又は、ハードディスクによって実現される。
恒星データ記憶部73は、複数の時刻における恒星の位置及び恒星から発せられる特定の波長帯の光の明るさのそれぞれを示す恒星情報を記憶している。
【0050】
図1に示す形状姿勢推定システムでは、軌道上物体データ記憶部72及び恒星データ記憶部73のそれぞれが、当該形状姿勢推定システムの外部に設けられている。しかし、これは一例に過ぎず、軌道上物体データ記憶部72及び恒星データ記憶部73のそれぞれが、当該形状姿勢推定システムの内部に設けられていてもよい。
【0051】
通信線路74は、例えば、電話回線、インターネット、又は、LAN(Local Area Network )によって実現される。
通信線路74は、レーダ装置4、光度測定装置10、計画装置30、形状姿勢推定装置50、基準信号源71、軌道上物体データ記憶部72及び恒星データ記憶部73とを結んでいる。
【0052】
図5では、形状姿勢推定装置50の構成要素である材料データ記憶部51、形状データ記憶部52、特性データ記憶部53、光度曲線取得部54、画像取得部55、モデル生成部56、光度曲線算出部57及び形状姿勢推定部58のそれぞれが、図6に示すような専用のハードウェアによって実現されるものを想定している。即ち、形状姿勢推定装置50が、材料データ記憶回路61、形状データ記憶回路62、特性データ記憶回路63、光度曲線取得回路64、画像取得回路65、モデル生成回路66、光度曲線算出回路67及び形状姿勢推定回路68によって実現されるものを想定している。
ここで、材料データ記憶回路61、形状データ記憶回路62及び特性データ記憶回路63のそれぞれは、例えば、RAM、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、あるいは、DVD(Digital Versatile Disc)が該当する。
また、光度曲線取得回路64、画像取得回路65、モデル生成回路66、光度曲線算出回路67及び形状姿勢推定回路68のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0053】
形状姿勢推定装置50の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではなく、形状姿勢推定装置50が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
ソフトウェア又はファームウェアは、プログラムとして、コンピュータのメモリに格納される。コンピュータは、プログラムを実行するハードウェアを意味し、例えば、CPU、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)が該当する。
図7は、形状姿勢推定装置50が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合のコンピュータのハードウェア構成図である。
【0054】
形状姿勢推定装置50が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、材料データ記憶部51、形状データ記憶部52及び特性データ記憶部53がコンピュータのメモリ81上に構成される。光度曲線取得部54、画像取得部55、モデル生成部56、光度曲線算出部57及び形状姿勢推定部58におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムがメモリ81に格納される。そして、コンピュータのプロセッサ82がメモリ81に格納されているプログラムを実行する。
【0055】
また、図6では、形状姿勢推定装置50の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、図7では、形状姿勢推定装置50がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、形状姿勢推定装置50における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
【0056】
次に、図1に示す形状姿勢推定システムの動作について説明する。
図8は、移動体1とレーダ装置4と光度測定装置10と計画装置30と形状姿勢推定装置50との位置関係を示す説明図である。図8では、地上局40の図示を省略している。
図8には、光度測定装置10により得られる光強度画像と、レーダ装置4により得られる距離画像とが付記されている。
図9は、移動体1と飛翔体2と光度測定装置10と計画装置30と地上局40と形状姿勢推定装置50との位置関係を示す説明図である。図9では、レーダ装置4の図示を省略している。
図9には、光度測定装置10により得られる光強度画像と、地上局40により得られる撮像画像とが付記されている。
【0057】
図8に示されている移動体1の形状は、中心部が太くて、先端が細い人工衛星のような形状である。しかし、これは一例に過ぎず、移動体1の形状は、どのような形状であってもよいことは言うまでもない。
図9では、光度測定装置10から見える移動体1の箇所と、飛翔体2から見える移動体1の箇所との違いを説明するために、便宜上、移動体1の形状が、直方体である例を示している。このため、図9に示されている移動体1の形状と図8に示されている移動体1の形状とが異なっているが、実際には、図9に示されている移動体1の形状と図8に示されている移動体1の形状とは、同一形状である。
図9の例では、光度測定装置10からは、直方体の側面S,S,S,Sのうち、側面S,Sが見えている。また、飛翔体2からは、直方体の側面S,S,S,Sのうち、側面S,Sが見えている。
図1に示す形状姿勢推定システムでは、光度測定装置10の位置検出器14が、時刻t(n=1,・・・,N)のときに移動体1を撮像し、レーダ装置4が、時刻tのときに、レーダ装置4と移動体1との間の距離を観測するものとする。また、飛翔体2に実装されている撮像装置3が、時刻tのときに移動体1を撮像するものとする。Nは、2以上の整数である。図8及び図9は、N=5の例を示している。
【0058】
図8及び図9の例では、移動体1は、自ら発光しないため、太陽等の照明光源によって照らされることで輝きを生じる。照明光源が太陽であれば、移動体1は、約5800Kの黒体放射によって照明される。照明光源と移動体1とを結ぶ線分と、移動体1と光度測定装置10とを結ぶ線分とのなす角θが位相角で表されるとき、位相角が0度であれば、照明光源と移動体1と光度測定装置10とが一列に並ぶため、移動体1による光の反射が多くなる。そのため、位相角が0度に近い程、光度測定装置10により測定される移動体1の光度が大きくなることが想定される。しかし、光度測定装置10が設置されている地球が、照明光源である太陽光を遮断することで、太陽光が移動体1を照らさないこともある。
よって、光度測定装置10は、光度測定装置10が設置されている地球が太陽光を遮断することなく、太陽光が移動体1を照らしているとき、移動体1の光度を測定する必要がある。
【0059】
まず、計画装置30の通信装置31は、軌道上物体データ記憶部72から、通信線路74を介して、移動体1の軌道を示す第1の軌道データと、飛翔体2の軌道を示す第2の軌道データとを受信する。
また、通信装置31は、恒星データ記憶部73から、通信線路74を介して、恒星の位置及び恒星から発せられる特定の波長帯の光の明るさのそれぞれを示す恒星情報を受信する。
通信装置31は、第1の軌道データ、第2の軌道データ及び恒星情報のそれぞれを軌道計算装置32に出力する。
【0060】
軌道計算装置32は、通信装置31から、第1の軌道データ、第2の軌道データ及び恒星情報のそれぞれを取得する。
軌道計算装置32は、第1の軌道データに基づいて、将来観測を予定している時刻t(n=1,・・・,N)における移動体1の位置x(t),y(t),z(t)を予測する。移動体1の位置x(t),y(t),z(t)の予測処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【0061】
また、軌道計算装置32は、第2の軌道データに基づいて、将来観測を予定している時刻tにおける飛翔体2の位置x(t),y(t),z(t)を特定する。第2の軌道データは、時刻tにおける飛翔体2の位置x(t),y(t),z(t)を含んでいる。
軌道計算装置32は、恒星情報に基づいて、時刻tにおける照明光源の位置x(t),y(t),z(t)を特定する。
図1に示す形状姿勢推定システムでは、照明光源が太陽であり、太陽は、恒星に含まれる。
【0062】
軌道計算装置32は、時刻tにおける移動体1の位置x(t),y(t),z(t)と、時刻tにおける照明光源の位置x(t),y(t),z(t)と、時刻tにおける地球の位置x(t),y(t),z(t)とから、時刻tのときに、地球が太陽光を遮断することなく、太陽光が移動体1を照らすか否かを判定する。時刻tにおける地球の位置x(t),y(t),z(t)は、既値である。
軌道計算装置32は、時刻tのとき、地球が太陽光を遮断して、太陽光が移動体1を照らさなければ、観測の予定時刻tを、地球が太陽光を遮断することなく、太陽光が移動体1を照らす時刻に変更する。軌道計算装置32は、時刻tが、太陽光が移動体1を照らす時刻であっても、なす角θである位相角が0度に近くなる時刻に変更するようにしてもよい。ただし、位相角が0度に近くなる時刻は、太陽光が移動体1を照らす時刻である必要がある。
軌道計算装置32は、観測の予定時刻tを変更すれば、時刻tにおける移動体1の位置x(t),y(t),z(t)を再度予測し、時刻tにおける照明光源の位置x(t),y(t),z(t)を再度特定する。
軌道計算装置32は、観測の予定時刻tと、観測の予定時刻tを含む時間帯Tとを示す時間帯情報を通信装置31及び運用計画設定装置33のそれぞれに出力する。時間帯Tは、例えば、時刻(t-t)から時刻tに至る時間帯である。tは、例えば、指向装置18による指向方向θの制御に要する時間である。tは、軌道計算装置32の内部メモリに格納されていてもよいし、計画装置30の外部から与えられるものであってもよい。
また、軌道計算装置32は、第1の軌道データ及び第2の軌道データのそれぞれを運用計画設定装置33に出力する。
【0063】
運用計画設定装置33は、軌道計算装置32から、第1の軌道データ、第2の軌道データ及び時間帯情報のそれぞれを取得する。
運用計画設定装置33は、第1の軌道データ、第2の軌道データ及び時間帯情報に基づいて、時刻tにおける移動体1の位置x(t),y(t),z(t)と、時刻tにおける飛翔体2の位置x(t),y(t),z(t)との幾何学的な配置を特定する。
運用計画設定装置33は、移動体1及び飛翔体2におけるそれぞれの時刻tでの幾何学的な配置に基づいて、飛翔体2等を制御するためのコマンドを作成する。
即ち、運用計画設定装置33は、それぞれの時刻tでの幾何学的な配置に基づいて、飛翔体2に実装されている撮像装置3が、移動体1を撮影することができるように、飛翔体2の姿勢及びアンテナ43の指向方向のそれぞれを制御するための撮像時刻t(n=1,・・・,N)のときのコマンドを作成する。
運用計画設定装置33は、撮像時刻tのときのコマンドを通信装置31に出力する。
【0064】
通信装置31は、軌道計算装置32から出力された時間帯情報及び第1の軌道データのそれぞれを、通信線路74を介して、光度測定装置10及びレーダ装置4のそれぞれに送信する。
また、通信装置31は、運用計画設定装置33により作成された撮像時刻t(n=1,・・・,N)のときのコマンドを地上局40に送信する。
【0065】
光度測定装置10は、移動体1の光度の測定処理を実施する。
以下、光度測定装置10による光度の測定処理を具体的に説明する。
光度測定装置10の通信装置22は、計画装置30から、通信線路74を介して、時間帯情報及び第1の軌道データのそれぞれを受信する。
通信装置22は、時間帯情報をカウンタ16に出力し、第1の軌道データを制御装置17に出力する。
また、通信装置22は、基準信号源71から、通信線路74を介して、基準時刻を受信し、基準時刻を時刻校正部15に出力する。
さらに、通信装置22は、恒星データ記憶部73から、通信線路74を介して、恒星情報を受信し、恒星情報を制御装置17に出力する。
【0066】
時刻校正部15は、通信装置22から、基準時刻を取得する。
時刻校正部15は、基準時刻に基づいて、カウンタ16の時刻を校正する。
カウンタ16は、通信装置22から、時間帯情報を取得する。
カウンタ16は、時刻校正部15によって時刻が校正されたのち、時間帯情報が示す時間帯Tの先頭の時刻t-tからの経過時間Eをカウントする。
カウンタ16は、経過時間Eを制御装置17及び解析装置19のそれぞれに出力し、時間帯情報を制御装置17に出力する。
【0067】
制御装置17は、通信装置22から第1の軌道データを取得し、カウンタ16から経過時間E及び時間帯情報のそれぞれを取得する。
制御装置17は、経過時間Eが、t,t+t-t,t+t-t,t+t-t,t+t-t,・・・になると、現在の時刻tが、観測時刻t(n=1,・・・,N)よりも時刻tだけ前の時刻であると判定する。
制御装置17は、第1の軌道データが示す観測時刻tにおける移動体1の位置x(t),y(t),z(t)と、観測時刻tにおける光度測定装置10の位置x(t),y(t),z(t)との幾何学的な配置を特定する。観測時刻tにおける光度測定装置10の位置x(t),y(t),z(t)は、既値である。
制御装置17は、特定した幾何学的な配置に基づいて、観測時刻tのときに、集光装置11の指向方向が移動体1を向くように、集光装置11の指向方向θを設定する。
制御装置17は、集光装置11の指向方向θを示す制御信号を指向装置18に出力する。
【0068】
制御装置17は、現在の時刻tが、観測時刻t(n=1,・・・,N)よりも時刻tだけ前の時刻になると、シャッタの開時刻tを示す制御信号を遮光装置13に出力し、光強度画像の撮像時刻tを示す制御信号を位置検出器14に出力する。
また、制御装置17は、現在の時刻tが、観測時刻tからΔtの時刻だけ経過すると、シャッタの閉時刻t+Δt,t+Δt,t+Δt,t+Δt,t+Δtを示す制御信号を遮光装置13に出力する。Δtは、シャッタの開時間である。例えば、Δt=(t-t)/2=(t-t)/2=(t-t)/2=(t-t)/2である。
【0069】
また、制御装置17は、選択対象の波長、又は、選択対象の偏光を示す選択信号を光選択部12に出力する。
例えば、光選択部12が、恒星データ記憶部73に記憶されている恒星から発せられる光の波長帯と同じ波長帯の光を透過させることが可能なフィルタを選択することで、処理装置21が、当該波長帯の光の光度を正確に算出することができる。このため、制御装置17は、通信装置22から出力された恒星情報に基づいて、恒星から発せられる光の波長帯と同じ波長帯の光を透過させるフィルタを選択するための選択信号を生成する。
制御装置17は、選択信号を光選択部12に出力する。
【0070】
指向装置18は、制御装置17から、集光装置11の指向方向θを示す制御信号を取得する。
指向装置18は、制御信号に従って回転ステージに付加されているモータ等を駆動することで、集光装置11の指向方向θを制御する。
即ち、集光装置11は、移動体1の物体面を像面に射影する機能を有し、基準となる光軸を備えているので、指向装置18は、集光装置11の光軸を制御装置17から出力された制御信号が示す指向方向θに合わせることで、集光装置11の指向方向を制御する。
【0071】
集光装置11は、指向装置18による指向方向θの制御が完了した段階で、移動体1の反射光を集光する。
集光装置11は、集光した移動体1の反射光を光選択部12に出力する。
図1に示す光度測定装置10では、集光装置11が、移動体1の反射光を集光している。しかし、移動体1が、自ら光を発している物体であれば、集光装置11が、移動体1の放射光を集光する。
【0072】
光選択部12は、集光装置11により集光された光のうち、制御装置17から出力された選択信号が示す波長の光、又は、当該選択信号が示す偏光を選択する。
光選択部12は、選択した波長の光、又は、選択した偏光を遮光装置13に出力する。
光選択部12により用いられるフィルタは、例えば、カメラによって一般的に使用される、赤青緑のようなカラーフィルタであってもよいし、公知のジョンソンフィルタ、又は、SDSS(Sloan Digitized Sky Survey)フィルタであってもよい。
【0073】
遮光装置13のシャッタは、制御装置17から出力された制御信号に従って開閉される。シャッタが位置検出器14の露光時間に応じて開閉されることで、光選択部12によって選択された光の遮断と光の透過とが交互に繰り返される。
光度測定装置10では、移動体1の明るさが分からないため、位置検出器14により検出される移動体1の像が飽和しないように、遮光装置13によって適切な時間Δtだけシャッタが開放される。
指向装置18が、集光装置11の指向方向θを制御することで、光度測定装置10と移動体1との相対速度を小さくすることができる。指向装置18は、例えば、相対速度を地球の大気揺らぎである1~3秒角と同等の大きさに制御することができる。したがって、遮光装置13は、シャッタの開放時間を変えることで、飽和しないような露光時間を設定することができる。
具体的には、制御装置17が、シャッタの開放時間が短いフレームの光度と、シャッタの開放時間が長いフレームの光度とを比較し、飽和していない方のフレームの開放時間を露光時間に設定すればよい。
なお、光度測定装置10は、移動体1の像が飽和しない範囲で、光選択部12によって選択された光の増幅率を調整するようにしてもよい。
光度は、エネルギーであるため、位置検出器14がCCDのような半導体検出器であれば、電子の数を数えることで得られる。しかしながら、位置検出器14が光にさらされる時間は、シャッタの開放時間によって決まるため、光度の測定精度は、シャッタの開放時間の精度に依存する。また、シャッタの開閉時刻は、移動体1の位置の決定精度に依存する。
【0074】
位置検出器14は、制御装置17から出力された制御信号が示す撮像時刻tのときに、遮光装置13を透過してきた光を検出して、移動体1が映っている光強度画像を撮像する。
撮像時刻tが、例えば、t,t,t,t,tであれば、位置検出器14は、撮像時刻t,t,t,t,tの光強度画像を撮像し、撮像時刻t,t,t,t,tの光強度画像を処理装置21に出力する。図8及び図9のそれぞれには、撮像時刻t,t,t,t,tの光強度画像が示されている。
【0075】
処理装置21は、位置検出器14から、撮像時刻t,・・・,tの光強度画像を取得する。
処理装置21は、撮像時刻t(n=1,・・・,N)の光強度画像に含まれているノイズを除去する等の前処理を実施する。処理装置21は、前処理後の光強度画像から、移動体1の画像上の位置と、移動体1の光度とを算出する。移動体1の画像上の位置は、集光装置11を実現している望遠鏡から移動体1を見た角度に相当する。移動体1の光度は、位置検出器14により受光した光の量に相当する。
処理装置21は、前処理後の光強度画像と、移動体1の画像上の位置と、移動体1の光度とを記録装置20に記録させる。
また、処理装置21は、制御装置17から、第1のステータス情報として、集光装置11の指向方向を示す制御信号と、シャッタの開閉時刻を示す制御信号と、光強度画像の撮像時刻を示す制御信号とを取得する。処理装置21は、前処理後の光強度画像と一緒に、第1のステータス情報を記録装置20に記録させる。
【0076】
以下、処理装置21による位置及び光度におけるそれぞれの算出処理等を具体的に説明する。
図10は、処理装置21による位置及び光度におけるそれぞれの算出処理等を示すフローチャートである。
まず、処理装置21は、撮像時刻t(n=1,・・・,N)の光強度画像に対する前処理として、光強度画像に含まれている暗転流ノイズ及び背景光ノイズのそれぞれを除去する処理のほか、周辺光量の減衰等を補正する処理を実施する。
処理装置21は、撮像時刻tの光強度画像に対する前処理を実施した後、集光装置11の指向方向が位置検出器14の視野中心であると仮定し、位置検出器14の視野角を求める(図10のステップST1)。
位置検出器14の1画素当りの視野角αは、撮像時刻tの光強度画像における1画素の大きさpと、集光装置11の焦点距離fとから算出できる。α=tan-1(p/f)
したがって、位置検出器14の上下方向の視野角は、1画素当りの視野角αを光強度画像の上下方向の画素数倍することで算出できる。また、位置検出器14の左右方向の視野角は、1画素当りの視野角αを光強度画像の左右方向の画素数倍することで算出できる。
【0077】
次に、処理装置21は、撮像時刻t(n=1,・・・,N)の光強度画像に含まれている点像である明点を抽出する。
1つ以上の明点の集まり(以下「明点群」という)は、移動体1を表している可能性があるものの、移動体1の背景として恒星が光強度画像に映っていれば、明点群は、恒星を表している可能性もある。したがって、光強度画像に含まれている複数の明点群のそれぞれは、移動体1又は恒星のいずれかと対応している。
処理装置21は、明点群として、撮像時刻tの光強度画像に含まれている複数の画素の中で、画素値が閾値以上である画素の集まりである画素群を検出する。処理装置21は、明点群である画素群の位置と光度とを求める(図10のステップST2)。閾値は、0よりも大きく、画素値の最大値よりも小さい値である。
撮像時刻tの光強度画像に含まれている明点群の広がりは、集光装置11の大きさが有限であれば、回折限界で広がりを有する。実際には、大気の揺らぎによる広がりのほかに、シーイングの影響による広がりがあるため、移動体1が小さい場合に写る明点群は、回折限界よりも広がる。
このように明点群は、広がりを有するため、処理装置21は、明点群の位置として、例えば、広がりの重心位置を求める。また、処理装置21は、明点群の光度として、広がりに含まれている複数の画素の画素値の和を求める。
【0078】
位置検出器14の視野中心と視野角とが求まると、位置検出器14の指向方向と、明点群の見かけの大きさとが求まる。このため、光強度画像の上下方向の位相と、光強度画像の左右方向の位相と、光強度画像の回転方向の位相とが求まれば、光強度画像上の座標と、宇宙空間に存在している恒星の位置を示す天球座標との位置関係を求めることができる。天球座標としては、例えば、天の赤道を基準とする赤道座標系、観測者の地平線を基準とする地平座標系、又は、銀河面を基準とする銀河座標系があるが、いずれの座標系を用いてもよい。光強度画像上の位置は、天球座標の位置、赤経及び赤緯、あるいは、方位角及び仰角等の角度で、表すことができる。
【0079】
処理装置21は、光強度画像に含まれている明点群の位置を、恒星データ記憶部73に記憶されている恒星情報が示す恒星の位置の座標系に変換する。
また、処理装置21は、恒星データ記憶部73に記憶されている恒星情報が示す恒星の明るさがカタログ等級で表されていれば、明点群の光度をカタログ等級の明るさに変換する。
カタログ等級は、明るさが100倍になると、-5等級になることが定義されている。このため、明点群の光度がF、カタログ等級がm、露光時間がTであるとすれば、カタログ等級mは、以下の式(1)又は式(2)のように表される。
m=-2.5log10(F/T)+m_zero (1)
m=-2.5log10(F)+m_zero’ (2)
m_zero’=m_zero+2.5log10(T) (3)
式(1)及び式(2)において、m_zero及びm_zero’のそれぞれは、機械等級である。
式(1)と式(2)との違いは、露光時間Tの影響を考慮して、ゼロ点がシフトされているだけの違いである。
【0080】
恒星情報に記録されている恒星の明るさを示す等級vの単位時間当りの光度と、当該恒星に対応する明点群の光度Fの単位時間当りの光度とが、大気吸収のない条件下では、同じになることを利用すると、機械等級m_zeroは、以下の式(4)又は式(5)のように表される。
m_zero = < v-2.5log10(F)> (4)
m_zero = < v-m > (5)
式(4)及び式(5)において、<□>は、□の平均の算出処理を意味する数学記号である。
ここでは、平均の算出処理を行うことで、機械等級m_zeroが算出されている。しかし、これは一例に過ぎず、例えば、中央値の算出処理を行うことで、機械等級m_zeroが算出されるものであってもよい。
【0081】
そして、処理装置21は、座標変換後の明点群の位置と恒星の位置とを比較し、光度変換後の明点群の光度と恒星の光度とを比較する。
処理装置21は、位置の比較結果及び光度の比較結果のそれぞれに基づいて、恒星に対応している明点群を特定することで、移動体1に対応している明点群を特定する(図10のステップST3)。
即ち、処理装置21は、撮像時刻t(n=1,・・・,N)の光強度画像に含まれている複数の明点群の中で、恒星に対応している明点群以外の明点群を、移動体1に対応している明点群とする。
恒星に対応している明点群を特定する処理自体は、公知の処理である。明点群を特定する処理としては、例えば、SSD(Sum of Squared Difference)法、SAD(Sum of Absolute Difference)法、相互相関法(Cross Correlation)、正規化相互相関(NCC:Normalized Cross Correlation)法、零平均正規化相互相関(ZNCC:Zero means Normalized Cross Correlation)法、又は、位相限定相関(POC:Phase-Only Correlation)法を用いることができる。
【0082】
処理装置21は、撮像時刻t(n=1,・・・,N)の光強度画像に含まれている複数の明点群の中で、移動体1に対応している座標変換後の明点群の位置を、移動体1の画像上の位置として、記録装置20に記録させる。
また、処理装置21は、撮像時刻tの光強度画像に含まれている複数の明点群の中で、移動体1に対応している光度変換後の明点群の光度を、移動体1の光度として、記録装置20に記録させる(図10のステップST4)。記録装置20に記録される移動体1における撮像時刻t,・・・,tの光度は、移動体1の光度の時間的な変化を示す第1の光度曲線に相当する。
図8及び図9の例では、撮像時刻t,t,t,t,tにおける5つの光強度画像が得られているので、5つの光強度画像のそれぞれに含まれている明点群のうち、移動体1に対応している明点群の光度が、移動体1の光度として、記録装置20に記録される。
【0083】
地上局40の通信装置41は、計画装置30から、撮像時刻t(n=1,・・・,N)のときのコマンドを受信する。
通信装置41は、撮像時刻tのときのコマンドを信号送信部42及び制御装置46のそれぞれに出力する。
【0084】
信号送信部42は、通信装置41から、撮像時刻t(n=1,・・・,N)のときのコマンドを取得する。
信号送信部42は、撮像時刻tのときのコマンドに対する変調処理等を実施することで、撮像時刻tのときのコマンドを示す送信信号を生成する。飛翔体2との通信が可能な波長帯が、例えば、Xバンド、又は、Sバンドであれば、信号送信部42は、Xバンドの送信信号、又は、Sバンドの送信信号を生成する。
信号送信部42は、撮像時刻tのときの送信信号をアンテナ43に出力する。
【0085】
制御装置46は、通信装置41から、撮像時刻t(n=1,・・・,N)のときのコマンドを取得する。
制御装置46は、撮像時刻tのときのコマンドに従ってアンテナ43の指向方向を示す制御信号を指向装置47に出力する。
指向装置47は、制御装置46から出力された制御信号に従って回転ステージに付加されているモータ等を駆動することで、アンテナ43の指向方向を制御する。
【0086】
アンテナ43は、信号送信部42から出力された撮像時刻tのときの送信信号に係る電波を飛翔体2に向けて放射する。
飛翔体2は、アンテナ43から放射された電波を受信すると、電波から送信信号を復調し、撮像時刻tのときの送信信号が示すコマンドに従って、飛翔体2の姿勢として、撮像装置3の指向方向を制御する。
即ち、飛翔体2は、撮像時刻tのときのコマンドに従って、撮像装置3を移動体1が存在している方向に向ける。
その後、撮像装置3は、時刻がtのときに、移動体1を撮像する。飛翔体2は、図9に示すような、撮像時刻tの撮像画像を示す撮像画像データに係る電波を地上局40に送信する。
アンテナ43は、飛翔体2から、撮像時刻tの撮像画像を示す撮像画像データに係る電波を受信し、電波の受信信号を信号受信部44に出力する。
【0087】
信号受信部44は、アンテナ43から出力された受信信号を取得する。
信号受信部44は、受信信号から、撮像時刻tの撮像画像を示す撮像画像データを復調し、撮像画像データを記録装置45に記録させる。また、信号受信部44は、撮像画像データと一緒に、撮像装置3の指向方向及び撮像装置3の撮像時刻のそれぞれを示す第2のステータス情報を記録装置45に記録させる。
通信装置41は、記録装置45に記録された撮像画像データ及び第2のステータス情報のそれぞれを、計画装置30の通信装置31を介して、形状姿勢推定装置50に送信する。
【0088】
レーダ装置4は、通信装置31から、時間帯情報及び第1の軌道データのそれぞれを取得する。
レーダ装置4は、時間帯情報及び第1の軌道データのそれぞれに基づいて、観測時刻tにおける移動体1の位置x(t),y(t),z(t)と、観測時刻tにおけるレーダ装置4の位置x(t),y(t),z(t)との幾何学的な配置を特定する。観測時刻tにおけるレーダ装置4の位置x(t),y(t),z(t)は、既値である。
レーダ装置4は、特定した幾何学的な配置に基づいて、観測時刻tのときに、電波の放射方向が移動体1を向くように、電波の放射方向を制御する。
【0089】
レーダ装置4は、移動体1による反射後の電波である反射波を受信する。
レーダ装置4は、反射波に基づいて、レーダ装置4と移動体1との間の距離を示す距離画像を生成する。反射波に基づいて距離画像を生成する処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
レーダ装置4は、距離画像を示す距離画像データを、通信線路74を介して、形状姿勢推定装置50に出力する。
【0090】
形状姿勢推定装置50は、移動体の形状及び姿勢の推定処理を実施する。
図11及び図12は、形状姿勢推定装置50の処理手順である形状姿勢推定方法を示すフローチャートである。
図13は、形状姿勢推定装置50の処理内容を示す説明図である。図13は、モデル生成部56によって撮像画像データが選択された場合の例を示している。
以下、形状姿勢推定装置50による形状及び姿勢の推定処理を具体的に説明する。
【0091】
光度曲線取得部54は、通信装置54aを用いて、光度測定装置10の記録装置20から、第1の光度曲線を取得する(図11のステップST11)。
光度曲線取得部54は、第1の光度曲線を形状姿勢推定部58に出力する。
【0092】
画像取得部55の通信装置55aは、地上局40の通信装置41から送信された、撮像画像データ及び第2のステータス情報のそれぞれを受信する(図11のステップST12)。当該撮像画像データは、図9に示すように、撮像装置3による移動体1の撮像時刻tの撮像画像を示すデータである。
画像取得部55は、撮像画像データ及び第2のステータス情報のそれぞれをモデル生成部56に出力する。
また、画像取得部55の通信装置55aは、レーダ装置4から、距離画像を示す距離画像データを受信する(図11のステップST12)。距離画像データが示す距離画像は、図8に示すように、撮像時刻tにおけるレーダ装置4と移動体1との間の距離を示す画像である。
【0093】
画像取得部55は、通信装置55aを用いて、軌道上物体データ記憶部72から、通信線路74を介して、移動体1の軌道を示す第1の軌道データと、飛翔体2の軌道を示す第2の軌道データとを受信する。さらに、画像取得部55は、通信装置55aを用いて、恒星データ記憶部73から、通信線路74を介して、恒星情報を受信する。
画像取得部55は、第1の軌道データ、第2の軌道データ及び恒星情報のそれぞれをモデル生成部56に出力する。
【0094】
モデル生成部56は、画像取得部55から、撮像画像データ、第2のステータス情報及び距離画像データのそれぞれを取得する。また、モデル生成部56は、画像取得部55から、第1の軌道データ、第2の軌道データ及び恒星情報のそれぞれを取得する。
モデル生成部56は、撮像画像データ及び距離画像データの中から、いずれか一方の画像データを選択する。
以下、モデル生成部56による画像データの選択例(1)~(3)を説明する。
【0095】
(1)モデル生成部56は、画像取得部55から距離画像データが出力されていれば、距離画像データを選択し、画像取得部55から距離画像データが出力されていなければ、撮像画像データを選択する
この場合、例えば、レーダ装置4から移動体1が見えない位置に移動体1が存在している時間帯では、モデル生成部56が、撮像画像データを選択することで、移動体1の形状等の推定が可能になる。
(2)モデル生成部56は、画像取得部55から撮像画像データが出力されていれば、撮像画像データを選択し、画像取得部55から撮像画像データが出力されていなければ、距離画像データを選択する。
この場合、例えば、光度測定装置10が設置されている地球が、照明光源である太陽光を遮断することで、太陽光が移動体1を照らさない時間帯では、モデル生成部56が、距離画像データを選択することで、移動体1の形状等の推定が可能になる。
(3)モデル生成部56は、例えば、距離画像と撮像画像との画像精度を比較し、画像精度が高い方の画像を示す画像データを選択する。画像精度の比較処理は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
この場合、移動体1の形状等の推定精度が向上する。
【0096】
モデル生成部56は、撮像画像データを選択すれば、撮像画像データが示す移動体1の撮像画像(以下「取得撮像画像」という)と、宇宙空間に存在している可能性のある物体の特徴を示す特徴データとを用いて、移動体1のモデルを生成する。
モデル生成部56は、距離画像データを選択すれば、距離画像データが示す距離画像(以下「取得距離画像」という)と、特徴データとを用いて、移動体1のモデルを生成する。
以下、モデル生成部56によるモデルの生成処理を具体的に説明する。
【0097】
最初に、モデル生成部56によって撮像画像データが選択された場合のモデルの生成処理を説明する。
まず、モデル生成部56は、形状データ記憶部52に記憶されている複数の形状データが示す物体の形状の中で、例えば、撮像画像データが示す撮像時刻tの取得撮像画像に映っている移動体1の形状と最も類似している物体の形状を検索する。物体の形状の検索処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
ここでは、モデル生成部56が、複数の形状データが示す物体の形状の中で、撮像時刻tの取得撮像画像に映っている移動体1の形状と最も類似している物体の形状を検索している。しかし、これは一例に過ぎず、モデル生成部56が、複数の形状データが示す物体の形状の中で、例えば、撮像時刻tの取得撮像画像に映っている移動体1の形状と最も類似している物体の形状を検索してもよいし、撮像時刻tの取得撮像画像に映っている移動体1の形状と最も類似している物体の形状を検索してもよい。
【0098】
モデル生成部56は、形状データ記憶部52から、移動体1の形状と最も類似している物体の形状を示す形状データを取得する(図11のステップST13)。
また、モデル生成部56は、材料データ記憶部51から、任意の物体の材料の特性を示す材料データを取得する。
モデル生成部56は、取得した形状データ及び取得した材料データのそれぞれを用いて、移動体1のモデルを仮生成する(図11のステップST14)。モデルの形状は、形状データに従って仮生成され、モデルの材料は、材料データに従って仮生成される。
【0099】
モデル生成部56は、第1の軌道データに基づいて、第2のステータス情報が示す撮像装置3の撮像時刻t(n=1,・・・,N)における移動体1の位置x(t),y(t),z(t)を予測する。
また、モデル生成部56は、第2の軌道データに基づいて、撮像装置3の撮像時刻tにおける飛翔体2の位置x(t),y(t),z(t)を特定する。
また、モデル生成部56は、恒星情報に基づいて、撮像時刻tにおける照明光源の位置x(t),y(t),z(t)を特定する。
【0100】
次に、モデル生成部56は、位置x(t),y(t),z(t)に存在している照明光源から、位置x(t),y(t),z(t)に存在している移動体1のモデルに光が照射されるという照明条件を設定する。
モデル生成部56は、上記の照明条件の下で、位置x(t),y(t),z(t)に存在している飛翔体2の撮像装置3によって、移動体1のモデルが撮像される撮像画像(以下「模擬撮像画像」という)を模擬する照明解析処理を行う(図11のステップST15)。照明解析処理は、照明光源が光を移動体1に照射しているときに、撮像画像を模擬するコンピュータシミュレーションである。
【0101】
次に、モデル生成部56は、撮像時刻t(n=1,・・・,N)の模擬撮像画像に映っている移動体1のモデルの姿勢が、撮像時刻tの取得撮像画像に映っている移動体1の姿勢と一致するように、移動体1のモデルの姿勢及びモデルの形状のそれぞれを調整する処理(以下「姿勢調整処理」という)を行う(図11のステップST16)。
モデル生成部56は、移動体1が例えば人工衛星であれば、人工衛星に実装されている太陽電池パネルの法線が太陽の方向を向くように、モデルの形状を調整し、人工衛星に実装されているアンテナの指向方向が地球の中心方向を向くように、モデルの姿勢を調整する。
【0102】
移動体1の位置x(t),y(t),z(t)と照明光源の位置x(t),y(t),z(t)との配置によっては、移動体1の一部に影が生じてしまうことがある。移動体1の一部に影が生じている場合、移動体1の一部が取得撮像画像に映らないため、移動体1の全景が分からないことがある。このような場合、モデル生成部56は、軌道が確定している別の移動体の特性データを用いて、移動体1のモデルを仮生成するようにしてもよい。別の移動体の特性データとしては、例えば、別の移動体の形状を示すデータ、又は、別の移動体を示す撮像画像データがあり、特性データ記憶部53により記憶されている物体の特性データを用いることができる。
【0103】
ここでは、モデル生成部56が、第1の軌道データに基づいて、第2のステータス情報が示す撮像装置3の撮像時刻tにおける移動体1の位置x(t),y(t),z(t)を予測している。モデル生成部56が、例えば、第1の軌道データを得ることができないような場合、移動体1の見かけの位置を求めるようにしてもよい。
即ち、モデル生成部56は、第2のステータス情報が示す撮像装置3の指向方向が撮像装置3の視野中心であると仮定し、撮像装置3の視野角を求める。撮像装置3の視野角は、位置検出器14の視野角と同様に求められる。モデル生成部56は、撮像装置3の視野角が分かれば、移動体1の見かけの位置を求めることができる。この場合、モデル生成部56は、撮像時刻t(n=1,・・・,N)の模擬撮像画像に映っている移動体1のモデルの姿勢が、見かけの位置に存在している移動体1の姿勢と一致するように、姿勢調整処理を行う。
【0104】
次に、モデル生成部56は、上記の照明条件の下で、位置x(t),y(t),z(t)に存在している飛翔体2の撮像装置3によって、姿勢調整処理後のモデルが撮像される照明解析処理を行う。
次に、モデル生成部56は、撮像画像データが示す撮像時刻t(n=1,・・・,N)の取得撮像画像と、撮像時刻tにおける姿勢調整処理後のモデルの模擬撮像画像との相関度を算出する(図11のステップST17)。
モデル生成部56による相関度の算出に際し、モデル生成部56が、模擬撮像画像に対する公知のlog-polar変換、あるいは、公知のFourier-Mellin変換を行い、その後、取得撮像画像と変換後の模擬撮像画像との相関処理を行えば、模擬撮像画像の回転及び倍率のそれぞれを算出することができる。並進に関しては、モデル生成部56が、ピクセル画像の相関処理を行えばよい。いずれの相関処理においても、相関度の算出処理方法としては、例えば、SSD法、SAD法、相互相関法、NCC法、ZNCC法、又は、POC法を用いることができる。
【0105】
モデル生成部56は、撮像時刻t(n=1,・・・,N)の取得撮像画像と姿勢調整処理後のモデルの模擬撮像画像との相関度が閾値よりも大きければ(図11のステップST18:YESの場合)、撮像時刻tの取得撮像画像と姿勢調整処理後のモデルの模擬撮像画像との相関が高いと判定する。閾値は、モデル生成部56の内部メモリに格納されていてもよいし、形状姿勢推定装置50の外部から与えられるものであってもよい。
モデル生成部56は、撮像時刻tの取得撮像画像と姿勢調整処理後のモデルの模擬撮像画像との相関度が閾値以下であれば(図11のステップST18:NOの場合)、撮像時刻tの取得撮像画像と姿勢調整処理後のモデルの模擬撮像画像との相関が低いと判定する。
【0106】
モデル生成部56は、撮像時刻tの取得撮像画像と姿勢調整処理後のモデルの模擬撮像画像との相関が低いと判定すれば、撮像時刻tにおける姿勢調整処理後のモデルの材料を変更する(図11のステップST19)。
モデル生成部56は、撮像時刻tの取得撮像画像と姿勢調整処理後のモデルの模擬撮像画像との相関度が閾値よりも大きくなるまで、照明解析処理、姿勢調整処理、相関度の算出処理、相関の判定処理及び材料の変更処理を繰り返し行う(図11のステップST15~ST19)。
モデル生成部56は、撮像時刻tの取得撮像画像と姿勢調整処理後のモデルの模擬撮像画像との相関が高いと判定すれば、撮像時刻tにおける材料変更後のモデル(以下「生成モデル」という)を光度曲線算出部57及び形状姿勢推定部58のそれぞれに出力する。
また、モデル生成部56は、撮像時刻tにおける移動体1の位置x(t),y(t),z(t)と、撮像時刻tにおける照明光源の位置x(t),y(t),z(t)とを光度曲線算出部57に出力する。
【0107】
次に、モデル生成部56によって距離画像データが選択された場合のモデルの生成処理を説明する。
モデル生成部56の輝度画像生成部56aは、画像取得部55から距離画像データを取得した場合、距離画像データが示す取得距離画像から、移動体1の輝度を示す輝度画像(以下「取得輝度画像」という)を生成する。
距離画像は、監視対象までの距離の数値を濃淡で表した画像であり、輝度画像は、監視対象までの距離が近いほど、輝度値が大きい画像である。このため、輝度画像生成部56aは、取得距離画像に含まれている複数の画素におけるそれぞれの濃淡を示す値から、輝度画像に含まれているそれぞれの画素の輝度値を求めることができる。
輝度画像生成部56aは、輝度画像をモデル生成処理部56cに出力する。
【0108】
モデル生成部56の奥行算出部56bは、取得距離画像に映っている移動体1の形状の凹凸を示す奥行情報を算出する。
距離画像は、監視対象までの距離が濃淡で表された画像であり、監視対象は、移動体1である。このため、取得距離画像に含まれている複数の画素におけるそれぞれの濃淡を示す値から、移動体1の形状の凹凸を示す奥行情報を算出することができる。
奥行算出部56bは、奥行情報をモデル生成処理部56cに出力する。
図8の例では、レーダ装置4から移動体1の部位であるSまでの距離がdであり、レーダ装置4から移動体1の部位であるSまでの距離がdであり、レーダ装置4から移動体1の部位であるSまでの距離がdである。
このため、例えば、Sを基準の部位であるとすれば、奥行算出部56bは、Sに対するSの奥行情報Δとして、Δ=d-dを求めることができる。また、奥行算出部56bは、Sに対するSの奥行情報Δとして、Δ=d-dを求めることができる。
【0109】
モデル生成部56のモデル生成処理部56cは、輝度画像生成部56aから取得輝度画像を取得し、奥行算出部56bから奥行情報を取得する。
モデル生成処理部56cは、形状データ記憶部52に記憶されている複数の形状データが示す物体の形状の中で、例えば、撮像時刻tの取得輝度画像に映っている移動体1の形状と最も類似している物体の形状を検索する。
【0110】
モデル生成処理部56cは、形状データ記憶部52から、移動体1の形状と最も類似している物体の形状を示す形状データを取得する(図11のステップST13)。
また、モデル生成処理部56cは、材料データ記憶部51から、任意の物体の材料の特性を示す材料データを取得する。
モデル生成処理部56cは、取得した形状データと、取得した材料データと、奥行情報とを用いて、移動体1のモデルを仮生成する(図11のステップST14)。
【0111】
モデル生成処理部56cは、第1の軌道データに基づいて、第2のステータス情報が示す撮像時刻t(n=1,・・・,N)における移動体1の位置x(t),y(t),z(t)を予測する。
また、モデル生成処理部56cは、恒星情報に基づいて、撮像時刻tにおける照明光源の位置x(t),y(t),z(t)を特定する。
【0112】
次に、モデル生成処理部56cは、位置x(t),y(t),z(t)に存在している照明光源から、位置x(t),y(t),z(t)に存在している移動体1のモデルに光が照射されるという照明条件を設定する。
モデル生成処理部56cは、上記の照明条件の下で、位置x(t),y(t),z(t)に存在しているレーダ装置4によって、移動体1のモデルが観測される距離画像に係る輝度画像(以下「模擬輝度画像」という)を模擬する照明解析処理を行う(図11のステップST15)。照明解析処理は、照明光源が光を移動体1に照射しているときに、輝度画像を模擬するコンピュータシミュレーションである。
【0113】
次に、モデル生成処理部56cは、撮像時刻t(n=1,・・・,N)の模擬輝度画像に映っている移動体1のモデルの姿勢が、撮像時刻tの取得輝度画像に映っている移動体1の姿勢と一致するように、移動体1のモデルの姿勢及びモデルの形状のそれぞれを調整する処理(以下「姿勢調整処理」という)を行う(図11のステップST16)。
モデル生成処理部56cは、移動体1が例えば人工衛星であれば、人工衛星に実装されている太陽電池パネルの法線が太陽の方向を向くように、モデルの形状を調整し、人工衛星に実装されているアンテナの指向方向が地球の中心方向を向くように、モデルの姿勢を調整する。
【0114】
移動体1の位置x(t),y(t),z(t)と照明光源の位置x(t),y(t),z(t)との配置によっては、移動体1の一部に影が生じてしまうことがある。
移動体1の一部に影が生じている場合、移動体1の一部が取得撮像画像に映らないため、取得撮像画像からは、移動体1の全景が分からないことがある。
これに対して、取得輝度画像は、移動体1による反射波に基づいて生成されるものである。このため、移動体1の一部に影が生じていても、移動体1の全景が取得輝度画像に映るため、取得輝度画像から、移動体1の全景が分かる。
【0115】
ここでは、モデル生成処理部56cが、第1の軌道データに基づいて、第2のステータス情報が示す撮像時刻tにおける移動体1の位置x(t),y(t),z(t)を予測している。モデル生成処理部56cが、例えば、第1の軌道データを得ることができないような場合、移動体1の見かけの位置を求めるようにしてもよい。
【0116】
次に、モデル生成処理部56cは、上記の照明条件の下で、位置x(t),y(t),z(t)に存在しているレーダ装置4によって、姿勢調整処理後のモデルが撮像される照明解析処理を行う。
次に、モデル生成処理部56cは、撮像時刻t(n=1,・・・,N)の取得輝度画像と、撮像時刻tにおける姿勢調整処理後のモデルの模擬輝度画像との相関度を算出する(図11のステップST17)。
モデル生成処理部56cによる相関度の算出に際し、モデル生成処理部56cが、模擬距離画像に対する公知のlog-polar変換、あるいは、公知のFourier-Mellin変換を行い、その後、取得輝度画像と変換後の模擬輝度画像との相関処理を行えば、模擬輝度画像の回転及び倍率のそれぞれを算出することができる。並進に関しては、モデル生成処理部56cが、ピクセル画像の相関処理を行えばよい。いずれの相関処理においても、相関度の算出処理方法としては、例えば、SSD法、SAD法、相互相関法、NCC法、ZNCC法、又は、POC法を用いることができる。
【0117】
モデル生成処理部56cは、撮像時刻t(n=1,・・・,N)の取得輝度画像と姿勢調整処理後のモデルの模擬輝度画像との相関度が閾値よりも大きければ(図11のステップST18:YESの場合)、撮像時刻tの取得輝度画像と姿勢調整処理後のモデルの模擬輝度画像との相関が高いと判定する。閾値は、モデル生成処理部56cの内部メモリに格納されていてもよいし、形状姿勢推定装置50の外部から与えられるものであってもよい。
モデル生成処理部56cは、撮像時刻tの取得輝度画像と姿勢調整処理後のモデルの模擬輝度画像との相関度が閾値以下であれば(図11のステップST18:NOの場合)、撮像時刻tの取得輝度画像と姿勢調整処理後のモデルの模擬輝度画像との相関が低いと判定する。
【0118】
モデル生成処理部56cは、撮像時刻tの取得輝度画像と姿勢調整処理後のモデルの模擬輝度画像との相関が低いと判定すれば、撮像時刻tにおける姿勢調整処理後のモデルの材料を変更する(図11のステップST19)。
モデル生成処理部56cは、撮像時刻tの取得輝度画像と姿勢調整処理後のモデルの模擬輝度画像との相関度が閾値よりも大きくなるまで、照明解析処理、姿勢調整処理、相関度の算出処理、相関の判定処理及び材料の変更処理を繰り返し行う(図11のステップST15~ST19)。
モデル生成処理部56cは、撮像時刻tの取得輝度画像と姿勢調整処理後のモデルの模擬輝度画像との相関が高いと判定すれば、撮像時刻tにおける材料変更後のモデル(以下「生成モデル」という)を光度曲線算出部57及び形状姿勢推定部58のそれぞれに出力する。
また、モデル生成処理部56cは、撮像時刻tにおける移動体1の位置x(t),y(t),z(t)と、撮像時刻tにおける照明光源の位置x(t),y(t),z(t)とを光度曲線算出部57に出力する。
【0119】
光度曲線算出部57は、モデル生成部56から、撮像時刻tの生成モデルを取得する。
また、光度曲線算出部57は、モデル生成部56から、撮像時刻tにおける移動体1の位置x(t),y(t),z(t)と、撮像時刻tにおける照明光源の位置x(t),y(t),z(t)とを取得する。
光度曲線算出部57は、図13に示すように、撮像時刻tの生成モデル等を用いて、移動体1の光度の時間変化を示す第2の光度曲線を算出する(図12のステップST20)。
以下、光度曲線算出部57による第2の光度曲線の算出処理を具体的に説明する。
【0120】
光度曲線算出部57は、撮像時刻tにおける照明光源の位置x(t),y(t),z(t)と、撮像時刻tにおける光度測定装置10の位置x(t),y(t),z(t)との幾何学的な配置を照明条件に設定する。また、光度曲線算出部57は、照明条件として、照明光源から位置x(t),y(t),z(t)に存在している移動体1のモデルに光が照射されるという条件を設定する。光度測定装置10の位置x(t),y(t),z(t)は、既値である。
光度曲線算出部57は、上記の照明条件において、撮像時刻tの生成モデルに対して照明光源からの光が照射されたときの生成モデルの光度の時間的な変化をシミュレーションする。即ち、光度曲線算出部57は、上記の照明条件において、生成モデルに対して照明光源からの光が照射されたときに、光度測定装置10により撮像される光強度画像(以下「模擬光強度画像」という)を模擬する照明解析処理を実施する。
【0121】
光度曲線算出部57は、撮像時刻t(n=1,・・・,N)の模擬光強度画像に映っている移動体1の光度を算出する。光度曲線算出部57による光度の算出処理としては、例えば、処理装置21による光度の算出処理を用いることができる。
=t,・・・tについてのN個の光度の時間変化は、第2の光度曲線に相当する。
光度曲線算出部57は、第2の光度曲線を形状姿勢推定部58に出力する。
【0122】
形状姿勢推定部58は、光度曲線取得部54から第1の光度曲線を取得し、光度曲線算出部57から第2の光度曲線を取得する。
また、形状姿勢推定部58は、モデル生成部56から、撮像時刻tの生成モデルを取得する。
形状姿勢推定部58は、図13に示すように、第2の光度曲線が第1の光度曲線に近づくように、撮像時刻tの生成モデルの形状、姿勢及び材料のそれぞれを調整する。
ここでは、形状姿勢推定部58が、生成モデルの形状、姿勢及び材料のそれぞれを調整している。第2の光度曲線が第1の光度曲線に近づけばよいため、形状姿勢推定部58が、生成モデルの形状、姿勢、又は、材料のうちのいずれか1つを変更するものであってもよい。また、形状姿勢推定部58が、生成モデルの材料を調整せずに、生成モデルの形状及び姿勢のそれぞれを調整するものであってもよい。
以下、形状姿勢推定部58による形状、姿勢及び材料の調整処理を具体的に説明する。
【0123】
形状姿勢推定部58は、以下の式(6)に示すように、第1の光度曲線に含まれている撮像時刻t(n=1,・・・,N)の移動体1の光度L(t)と、第2の光度曲線に含まれている撮像時刻tの移動体1の光度L(t)との差分ΔL(t)を算出する(図11のステップST21)。
ΔL(t)=L(t)-L(t) (6)
形状姿勢推定部58は、差分ΔL(t)の絶対値と閾値Thとを比較し、差分ΔL(t)の絶対値が閾値Thよりも大きければ(図11のステップST22:YESの場合)、撮像時刻tにおける生成モデルの形状、生成モデルの姿勢、又は、生成モデルの材料を変更する(図11のステップST23)。閾値Thは、形状姿勢推定部58の内部メモリに格納されていてもよいし、形状姿勢推定装置50の外部から与えられるものであってもよい。
【0124】
具体的には、以下の通りである。
(1)光度曲線に小さい山であるサブピークがあることがある。サブピークは、生成モデルの形状に由来する可能性が高い。例えば、アンテナ等の構造に由来する可能性が高い。このため、形状姿勢推定部58は、生成モデルの形状を優先的に調整する。
(2)光度曲線のピークが左右にずれていることがある。左右のずれは、生成モデルの姿勢に由来する可能性が高い。このため、形状姿勢推定部58は、生成モデルの姿勢を優先的に調整する。
(3)全体的なピーク及びサブピークのそれぞれが一致したら、形状姿勢推定部58は、生成モデルの材料を調整する。
(4)最後に、形状姿勢推定部58は、生成モデルの形状、姿勢及び材料のそれぞれを微調整する。
撮像時刻tにおける生成モデルの形状、生成モデルの姿勢、又は、生成モデルの材料を変更する処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略するが、生成モデルの形状の変更処理としては、例えば、生成モデルの形状を、形状データ記憶部52に記憶されている他の物体の形状に変更する処理を用いることができる。また、生成モデルの姿勢の変更処理としては、例えば、生成モデルの姿勢である指向方向を、事前に設定されている角度だけ変更する処理を用いることができる。また、生成モデルの材料の変更処理としては、例えば、生成モデルの材料を、材料データ記憶部51に記憶されている他の物体の材料に変更する処理を用いることができる。
【0125】
形状姿勢推定部58は、L(t)>L(t)であれば、撮像時刻tの移動体1の光度L(t)が小さくなるように、撮像時刻tにおける生成モデルの形状、生成モデルの姿勢、又は、生成モデルの材料を変更する。
形状姿勢推定部58は、L(t)<L(t)であれば、撮像時刻tの移動体1の光度L(t)が大きくなるように、撮像時刻tにおける生成モデルの形状、生成モデルの姿勢、又は、生成モデルの材料を変更する。
差分ΔL(t)の絶対値が閾値Th以下になるまで、第2の光度曲線の算出処理、差分の算出処理、比較処理及びモデルの変更処理が繰り返し行われる(図12のステップST20~ST23)。
【0126】
形状姿勢推定部58は、差分ΔL(t)の絶対値が閾値Th以下であれば(図12のステップST22:NOの場合)、撮像時刻tの生成モデルの変更処理を完了する。
形状姿勢推定部58は、変更処理が完了した生成モデルから、移動体1の形状及び姿勢のそれぞれを推定する(図12のステップST24)。
形状姿勢推定部58は、例えば、撮像時刻tにおける移動体1の形状の推定結果として、変更処理が完了した撮像時刻tの生成モデルの形状を示す形状データを外部に出力する。
形状姿勢推定部58は、例えば、撮像時刻tにおける移動体1の姿勢の推定結果として、変更処理が完了した撮像時刻tの生成モデルの姿勢を示す姿勢データを外部に出力する。
移動体1が例えば人工衛星であれば、形状姿勢推定部58が、移動体1に実装されているアンテナの指向方向、あるいは、移動体1に実装されている太陽電池パネルの法線方向を、モデルの姿勢としてもよい。アンテナの指向方向等は、モデルの画像を解析することで求まる。
また、移動体1が例えば隕石であれば、形状姿勢推定部58が、隕石の重心線の方向を、モデルの姿勢としてもよい。隕石の重心線の方向は、モデルの画像を解析することで求まる。
【0127】
以上の実施の形態1では、監視対象の移動体1の光度を測定する光度測定装置10から、光度の時間的な変化を示す第1の光度曲線を取得する光度曲線取得部54と、レーダ装置4から、レーダ装置4と移動体1との間の距離を示す距離画像を取得する画像取得部55と、画像取得部55により取得された移動体1の撮像画像と、宇宙空間に存在している可能性のある物体の特徴を示す特徴データとを用いて、移動体1のモデルを生成するモデル生成部56とを備えるように、形状姿勢推定装置50を構成した。また、形状姿勢推定装置50は、モデル生成部56により生成された移動体1のモデルに対して照明光源からの光が照射されたときのモデルの光度の時間的な変化をシミュレーションし、モデルの光度の時間的な変化を示す第2の光度曲線を出力する光度曲線算出部57と、光度曲線取得部54により取得された第1の光度曲線と光度曲線算出部57から出力された第2の光度曲線とに基づいて、モデルの形状及び姿勢のそれぞれを調整し、調整後のモデルから、移動体1の形状及び姿勢のそれぞれを推定する形状姿勢推定部58とを備えている。したがって、形状姿勢推定装置50は、移動体1の登録輝度変化パターンをデータベースに記憶させることなく、移動体1の形状及び姿勢のそれぞれを推定することができる。
【0128】
また、実施の形態1では、画像取得部55が、レーダ装置4から、距離画像を取得するほかに、移動体1を撮像する撮像装置3を実装している飛翔体2から、撮像装置3による移動体1の撮像画像を取得する。そして、モデル生成部56が、画像取得部55により取得された距離画像及び画像取得部55により取得された撮像画像の中から、いずれか一方の画像を選択し、選択した画像と特徴データとを用いて、移動体1のモデルを生成するように、形状姿勢推定装置50を構成した。したがって、形状姿勢推定装置50は、レーダ装置4が、距離画像を生成できない時間帯でも、撮像装置3が、移動体1の全景を撮像することができれば、移動体1の形状及び姿勢のそれぞれを推定することができる。
【0129】
実施の形態2.
図2に示す光度測定装置10では、光選択部12が、集光装置11により集光された光の中から、1つの波長の光、又は、1つの偏光を選択している。
実施の形態2では、光選択部12が、集光装置11により集光された光の中から、M(Mは、2以上の整数)個の波長の光、又は、M個の偏光を選択する光度測定装置10について説明する。
【0130】
実施の形態2に係る形状姿勢推定システムの構成は、実施の形態1に係る形状姿勢推定システムの構成と同様であり、実施の形態2に係る形状姿勢推定システムを示す構成図は、図1である。
実施の形態2に係る形状姿勢推定システムに含まれる光度測定装置10の構成は、実施の形態1に係る形状姿勢推定システムに含まれる光度測定装置10の構成と同様であり、実施の形態2に係る形状姿勢推定システムに含まれる光度測定装置10を示す構成図は、図2である。
実施の形態2に係る形状姿勢推定システムに含まれる計画装置30の構成は、実施の形態1に係る形状姿勢推定システムに含まれる計画装置30の構成と同様であり、実施の形態2に係る形状姿勢推定システムに含まれる計画装置30を示す構成図は、図3である。
実施の形態2に係る形状姿勢推定システムに含まれる地上局40の構成は、実施の形態1に係る形状姿勢推定システムに含まれる地上局40の構成と同様であり、実施の形態2に係る形状姿勢推定システムに含まれる地上局40を示す構成図は、図4である。
実施の形態2に係る形状姿勢推定装置50の構成は、実施の形態1に係る形状姿勢推定装置50の構成と同様であり、実施の形態2に係る形状姿勢推定装置50を示す構成図は、図5である。
【0131】
図14は、移動体1と飛翔体2と光度測定装置10と計画装置30と地上局40と形状姿勢推定装置50との位置関係を示す説明図である。
図15は、実施の形態2に係る形状姿勢推定装置50の処理内容を示す説明図である。
図14及び図15のそれぞれは、モデル生成部56によって撮像画像データが選択された場合の例を示している。ただし、これは一例に過ぎず、モデル生成部56によって距離画像データが選択されてもよいことは言うまでもない。
【0132】
地球の周囲における宇宙空間を周回する移動体1に光を照射する照明光源は、通常、太陽である。太陽光は、複数の波長の光を含んでいる。このため、太陽光に含まれている複数の波長の光の中から、M個の波長の光をそれぞれ選択すれば、時刻t(n=1,・・・,N)において、位置検出器14が、それぞれの波長の光が照射されている光強度画像をM個撮像することができる。
実施の形態2に係る形状姿勢推定システムでは、光度測定装置10の制御装置17は、太陽光に含まれている複数の波長の光の中から、選択対象の波長をM個決定し、M個の波長を示す選択信号を光選択部12に出力する。
光選択部12は、太陽光に含まれている複数の波長の光の中から、制御装置17から出力された選択信号が示すM個の波長の光を順番に選択し、選択したそれぞれの波長の光を、遮光装置13を介して、位置検出器14に出力する。
位置検出器14は、遮光装置13を透過してきたそれぞれの波長の光を検出して、移動体1が映っている光強度画像を撮像する。
【0133】
処理装置21は、撮像時刻t(n=1,・・・,N)における、M個の光強度画像のそれぞれに含まれている複数の明点群の中で、移動体1に対応している光度変換後の明点群の光度を、移動体1の光度として、記録装置20に記録させる。撮像時刻t,・・・,tにおける波長m(m=1,・・・,M)の光度は、移動体1における波長mの光度の時間的な変化を示す第1の光度曲線に相当する。したがって、記録装置20には、図15に示すように、M本の第1の光度曲線が記録される。図14及び図15では、M=4の例が示されている。
【0134】
計画装置30の運用計画設定装置33は、飛翔体2を制御するためのコマンドを作成する際、M個の波長を示す選択信号を当該コマンドに含め、選択信号を含むコマンドを通信装置31に出力する。
通信装置31は、選択信号を含むコマンドを地上局40に出力する。
【0135】
地上局40のアンテナ43は、撮像時刻tのときの送信信号に係る電波を飛翔体2に向けて放射する。
飛翔体2は、アンテナ43から放射された電波を受信すると、電波から送信信号を復調し、撮像時刻tのときの送信信号が示すコマンドに従って、飛翔体2の姿勢として、撮像装置3の指向方向を制御する。
撮像装置3は、時刻がtのときに、移動体1を撮像する。
撮像装置3は、例えば、フィルタホイールを備えている。フィルタホイールは、コマンドに含まれている選択信号に従って、通過させる波長の光を変更する。撮像装置3は、フィルタホイールを用いて、撮像時刻tの撮像画像から、それぞれの波長の光で表されている撮像画像をM個生成する。
飛翔体2は、図15に示すように、撮像時刻tにおけるM個の撮像画像を示す撮像画像データに係る電波を地上局40に送信する。
これにより、地上局40の記録装置45には、撮像時刻tにおけるM個の撮像画像を示す撮像画像データが記録される。
【0136】
形状姿勢推定装置50のモデル生成部56は、飛翔体2の撮像装置3によって、時刻t(n=1,・・・,N)で撮像される撮像画像を模擬する照明解析処理を行う。照明解析処理の照射条件として、M個の波長の光をそれぞれ照射するものとして、モデル生成部56が、波長m(m=1,・・・,M)の模擬撮像画像を取得する。
モデル生成部56は、地上局40の記録装置45に記録されている撮像時刻t(n=1,・・・,N)における波長m(m=1,・・・,M)の取得撮像画像と、撮像時刻tにおける波長mの模擬撮像画像との相関度を算出する。
【0137】
モデル生成部56は、撮像時刻tにおける波長mの取得撮像画像と撮像時刻tにおける波長mの模擬撮像画像との相関が低いと判定すれば、仮生成した移動体1のモデルの材料を変更する。
モデル生成部56は、撮像時刻tにおける波長mの取得撮像画像と撮像時刻tにおける波長mの模擬撮像画像との相関度が閾値よりも大きくなるまで、照明解析処理、姿勢調整処理、相関度の算出処理、相関の判定処理及び材料の変更処理を繰り返し行う。
モデル生成部56は、波長mの取得撮像画像と波長mの模擬撮像画像との相関が高いと判定すれば、相関が高いときの移動体1のモデルを光度曲線算出部57及び形状姿勢推定部58のそれぞれに出力する。
【0138】
光度曲線算出部57は、図15に示すように、撮像時刻t(n=1,・・・,N)のモデル等を用いて、移動体1の光度の時間変化を示す波長m(m=1,・・・,M)の第2の光度曲線を算出する。
形状姿勢推定部58は、図15に示すように、波長m(m=1,・・・,M)の第2の光度曲線が波長mの第1の光度曲線に近づくように、移動体1のモデルの形状、姿勢及び材料のそれぞれを調整する。
撮像時刻t(n=1,・・・,N)における移動体1の形状は、光の波長が異なっても、変化しない。しかし、光の波長が異なれば、移動体1における光の反射率が異なるため、撮像時刻t(n=1,・・・,N)におけるM個の取得撮像画像に映っている移動体1の形状は、互いに異なることがある。このため、波長m毎に、モデルの材料を変更することで、移動体1のモデルを高精度に生成することができる。
【0139】
なお、本開示は、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本開示は、形状姿勢推定装置、形状姿勢推定方法及び形状姿勢推定システムに適している。
【符号の説明】
【0141】
1 移動体、2 飛翔体、3 撮像装置、4 レーダ装置、10 光度測定装置、11 集光装置、12 光選択部、13 遮光装置、14 位置検出器、15 時刻校正部、16 カウンタ、17 制御装置、18 指向装置、19 解析装置、20 記録装置、21 処理装置、22 通信装置、30 計画装置、31 通信装置、32 軌道計算装置、33 運用計画設定装置、40 地上局、41 通信装置、42 信号送信部、43 アンテナ、44 信号受信部、45 記録装置、46 制御装置、47 指向装置、50 形状姿勢推定装置、51 材料データ記憶部、52 形状データ記憶部、53 特性データ記憶部、54 光度曲線取得部、55 画像取得部、56 モデル生成部、56a 輝度画像生成部、56b 奥行算出部、56c モデル生成処理部、57 光度曲線算出部、58 形状姿勢推定部、61 材料データ記憶回路、62 形状データ記憶回路、63 特性データ記憶回路、64 光度曲線取得回路、65 画像取得回路、66 モデル生成回路、67 光度曲線算出回路、68 形状姿勢推定回路、71 基準信号源、72 軌道上物体データ記憶部、73 恒星データ記憶部、74 通信線路、81 メモリ、82 プロセッサ。
【要約】
監視対象の移動体(1)の光度を測定する光度測定装置(10)から、光度の時間的な変化を示す第1の光度曲線を取得する光度曲線取得部(54)と、レーダ装置(4)から、レーダ装置(4)と移動体(1)との間の距離を示す距離画像を取得する画像取得部(55)と、画像取得部(55)により取得された距離画像と、宇宙空間に存在している可能性のある物体の特徴を示す特徴データとを用いて、移動体(1)のモデルを生成するモデル生成部(56)とを備えるように、形状姿勢推定装置(50)を構成した。また、形状姿勢推定装置(50)は、モデル生成部(56)により生成された移動体(1)のモデルに対して照明光源からの光が照射されたときのモデルの光度の時間的な変化をシミュレーションし、モデルの光度の時間的な変化を示す第2の光度曲線を出力する光度曲線算出部(57)と、光度曲線取得部(54)により取得された第1の光度曲線と光度曲線算出部(57)から出力された第2の光度曲線とに基づいて、モデルの形状及び姿勢のそれぞれを調整し、調整後のモデルから、移動体(1)の形状及び姿勢のそれぞれを推定する形状姿勢推定部(58)とを備えている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15