(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】多軸アクチュエータ用コイルおよび多軸アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 41/03 20060101AFI20241011BHJP
【FI】
H02K41/03 A
(21)【出願番号】P 2024550623
(86)(22)【出願日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2023033738
【審査請求日】2024-08-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】森本 朔
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄一朗
(72)【発明者】
【氏名】細野 淳
(72)【発明者】
【氏名】田中 敏則
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-239661(JP,A)
【文献】国際公開第2023/095285(WO,A1)
【文献】特表平9-502597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有し、1つの軸を中心にして巻き回されたプリント基板と、
前記プリント基板にプリントされた複数のコイル群と、を備え、
異なる前記コイル群は、前記軸に対して直交する方向に並んで配置されており、
各前記コイル群は、直線状に延びる長辺部を含む複数のコイルパターンを有し、
同一の前記コイル群における各前記コイルパターンの前記長辺部は、互いに平行に延びており、
異なる前記コイル群における各前記コイルパターンの前記長辺部は、互いに交差する方向に延びて
おり、
各前記コイル群は、1枚の前記プリント基板にプリントされていることを特徴とする多軸アクチュエータ用コイル。
【請求項2】
可撓性を有し、1つの軸を中心にして巻き回されたプリント基板と、
前記プリント基板にプリントされた複数のコイル群と、を備え、
異なる前記コイル群は、前記軸に対して直交する方向に並んで配置されており、
各前記コイル群は、直線状に延びる長辺部を含む複数のコイルパターンを有し、
同一の前記コイル群における各前記コイルパターンの前記長辺部は、互いに平行に延びており、
異なる前記コイル群における各前記コイルパターンの前記長辺部は、互いに交差する方向に延びており、
各前記コイル群は、1周を超えて巻き回されていることを特徴とする多軸アクチュエータ用コイル。
【請求項3】
巻き回された前記プリント基板の内周側に配置される前記コイル群は、前記コイルパターンの配列方向が前記プリント基板の巻回方向と一致し、かつ、前記長辺部が前記巻回方向に対して直交する方向に延びていることを特徴とする請求項1または2に記載の多軸アクチュエータ用コイル。
【請求項4】
各前記コイル群の各前記コイルパターンの端子は、前記プリント基板の巻回方向で1箇所にまとめて配置されていることを特徴とする請求項1
または2に記載の多軸アクチュエータ用コイル。
【請求項5】
請求項1
または2に記載の多軸アクチュエータ用コイルと、
前記多軸アクチュエータ用コイルの内周に配置されるシャフトと、
を備えることを特徴とする多軸アクチュエータ。
【請求項6】
前記多軸アクチュエータ用コイルの外周または内周に配置されて前記多軸アクチュエータ用コイルと対面するように配置された磁石をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の多軸アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多軸アクチュエータ用コイル、および、この多軸アクチュエータ用コイルを備える多軸アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体の製造装置、小型ロボットなどで、可動子を複数方向に移動させる多軸アクチュエータが用いられている。多軸アクチュエータには、可動子を複数方向に移動させるための磁界を発生させる多軸アクチュエータ用コイルが搭載されている。例えば、特許文献1には、軸方向に並べられて配置された複数のZ軸コイルと、Z軸コイルの外周に並べられて配置された複数のθ軸コイルとを備える多軸アクチュエータ用コイルが開示されている。Z軸コイルの形状は、円筒形状であり、θ軸コイルの形状は、楕円環状である。
【0003】
Z軸コイルとθ軸コイルとの巻線には、マグネットワイヤが使用されている。特許文献1に開示された多軸アクチュエータ用コイルは、θ軸コイルの素となるマグネットワイヤを巻芯に括りつける形で楕円環状に成形した後、楕円環状に成形したマグネットワイヤをZ軸コイルの円筒面に沿って曲げながらZ軸コイルに巻き付けることで成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、楕円環状に成形したマグネットワイヤをZ軸コイルの円筒面に沿って曲げながらZ軸コイルに巻き付けようとしても、マグネットワイヤがZ軸コイルの円筒面に沿って変形しないことがある。すなわち、マグネットワイヤを精度良く円筒に成形することは困難であり、巻き崩れ、巻線間の交錯といった問題が生じる。特に、小型ロボットなどに搭載される多軸アクチュエータ用コイルのようにサイズが小さいものほど、前記した問題が顕著になる。巻き崩れおよび巻線間の交錯は、コイルが肥大化する要因となり、コイルスペースの肥大化を招いてしまう。したがって、マグネットワイヤによって多軸アクチュエータ用コイルをスペース効率良く成形することは困難であった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、従来よりもスペース効率良く成形することができる多軸アクチュエータ用コイルを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる多軸アクチュエータ用コイルは、可撓性を有し、1つの軸を中心にして巻き回されたプリント基板と、プリント基板にプリントされた複数のコイル群と、を備えている。異なるコイル群は、軸に対して直交する方向に並んで配置されている。各コイル群は、直線状に延びる長辺部を含む複数のコイルパターンを有している。同一のコイル群における各コイルパターンの長辺部は、互いに平行に延びている。異なるコイル群における各コイルパターンの長辺部は、互いに交差する方向に延びている。各コイル群は、1枚のプリント基板にプリントされている。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる多軸アクチュエータ用コイルは、従来よりもスペース効率良く成形することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1にかかる多軸アクチュエータを示した斜視図
【
図3】
図1に示されたIII-III線に沿った断面図
【
図4】実施の形態1にかかる多軸アクチュエータ用コイルを軸方向に沿って見たときの図
【
図5】実施の形態1にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第1のプリント基板を巻き回す前の状態を軸方向に沿って見たときの図
【
図6】実施の形態1にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第1のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図
【
図7】実施の形態1にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第2のプリント基板を巻き回す前の状態を軸方向に沿って見たときの図
【
図8】実施の形態1にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第2のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図
【
図9】実施の形態1にかかる多軸アクチュエータ用コイルを示した側面図
【
図10】実施の形態1の変形例1にかかる多軸アクチュエータ用コイルのコイルパターンを示した側面図
【
図11】実施の形態1の変形例2にかかる多軸アクチュエータ用コイルのコイルパターンを示した側面図
【
図12】実施の形態2にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第1のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板の表面を示した図
【
図13】実施の形態2にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第1のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板の裏面を示した図
【
図14】実施の形態2にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第2のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板の表面を示した図
【
図15】実施の形態2にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第2のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板の裏面を示した図
【
図16】実施の形態2にかかる多軸アクチュエータ用コイルを軸方向に沿って見たときの図
【
図17】実施の形態3にかかる多軸アクチュエータ用コイルのプリント基板を巻き回す前の状態を軸方向に沿って見たときの図
【
図18】実施の形態3にかかる多軸アクチュエータ用コイルのプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図
【
図19】実施の形態3にかかる多軸アクチュエータ用コイルを軸方向に沿って見たときの図
【
図20】実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第2のプリント基板を巻き回す前の状態を軸方向に沿って見たときの図
【
図21】実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第2のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図
【
図22】実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第1のプリント基板を巻き回す前の状態を軸方向に沿って見たときの図
【
図23】実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第1のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図
【
図24】実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイルを軸方向に沿って見たときの図
【
図25】実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第1のプリント基板を巻き回す前の状態を軸方向に沿って見たときの図
【
図26】実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第1のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図
【
図27】実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第2のプリント基板を巻き回す前の状態を軸方向に沿って見たときの図
【
図28】実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第2のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図
【
図29】実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイルを軸方向に沿って見たときの図
【
図30】実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイルを示した側面図
【
図31】実施の形態6にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第1のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板の表面を示した図
【
図32】実施の形態6にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第1のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板の裏面を示した図
【
図33】実施の形態6にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第2のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板の表面を示した図
【
図34】実施の形態6にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第2のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板の裏面を示した図
【
図35】実施の形態7にかかる多軸アクチュエータ用コイルとティースとを模式的に示した側面図であって、多軸アクチュエータ用コイルの内周から外周に向かって見た図
【
図36】実施の形態8にかかる多軸アクチュエータを示した斜視図
【
図37】
図36に示されたXXXVII-XXXVII線に沿った断面図
【
図38】
図36に示されたXXXVIII-XXXVIII線に沿った断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態にかかる多軸アクチュエータ用コイルおよび多軸アクチュエータを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
はじめに、
図1から
図3を参照して、多軸アクチュエータ100について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる多軸アクチュエータ100を示した斜視図である。
図2は、
図1に示されたII-II線に沿った断面図である。
図3は、
図1に示されたIII-III線に沿った断面図である。
図1および
図2に示すように、多軸アクチュエータ100は、ハウジング6と、固定子コア7と、多軸アクチュエータ用コイル1と、磁石8と、可動子コア9と、シャフト10とを備えている。
【0012】
固定子コア7および可動子コア9は、いずれも中心軸Cを有する円筒形状に形成されている。以下、多軸アクチュエータ100の各構成要素について方向を説明するときには、中心軸Cと平行な方向を軸方向、中心軸Cと直交する方向を半径方向、中心軸Cを中心とする回転方向を周方向とする。多軸アクチュエータ100は、可動子コア9の外周側に固定子コア7が配置されるインナー可動子型の多軸アクチュエータである。
【0013】
ハウジング6は、固定子コア7、磁石8、多軸アクチュエータ用コイル1、可動子コア9およびシャフト10を収容する部材である。ハウジング6の形状は、外周面が角丸正方形で内周面が円形の筒状である。
図3に示すように、ハウジング6は、軸方向の両端部が開口する筒状のフレーム6aと、フレーム6aの軸方向の両端部の開口部に配置される2つのブラケット6bとを有している。2つのブラケット6bのそれぞれには、シャフト10が挿入される挿入孔6cが形成されている。各ブラケット6bの挿入孔6cの内周面には、軸受11が1つずつ配置されている。軸受11は、シャフト10を回転および直動可能に支持する部材である。シャフト10は、2つの軸受11により回転および直動可能に支持されている。
図3の紙面右側のブラケット6bには、ハウジング6の外部にシャフト10を突出させるための貫通孔6dが形成されている。
【0014】
図2に示すように、固定子コア7は、フレーム6aの内周に配置されている。磁石8は、可動子コア9の外周に設けられている。磁石8は、半径方向において多軸アクチュエータ用コイル1と対面する。多軸アクチュエータ100は、本実施の形態ではムービングマグネット型の多軸アクチュエータである。可動子コア9と磁石8とシャフト10とで可動子が構成され、多軸アクチュエータ用コイル1と固定子コア7とフレーム6aとで固定子が構成される。
【0015】
多軸アクチュエータ用コイル1は、磁石8の外周に配置されている。多軸アクチュエータ用コイル1は、磁石8と空隙を介して配置されている。多軸アクチュエータ用コイル1は、円筒形状に形成されている。多軸アクチュエータ用コイル1は、固定子コア7および可動子コア9の中心軸Cと同軸に配置されている。多軸アクチュエータ用コイル1は、第1のコイル群3Aと、第1のコイル群3Aの内周に配置される第2のコイル群3Bとを備えている。第1のコイル群3Aは、例えば、可動子を軸方向に移動させるための磁界を発生させる。第1のコイル群3Aに電流を流すことにより磁界が発生し、この磁界により可動子を軸方向に移動させる推力が発生して、可動子を軸方向に移動させることができる。第2のコイル群3Bは、例えば、可動子を周方向に回転させるための磁界を発生させる。第2のコイル群3Bに電流を流すことにより磁界が発生し、この磁界により可動子を周方向に回転させるトルクが発生して、可動子を周方向に回転させることができる。多軸アクチュエータ用コイル1の詳細については後記する。
【0016】
固定子コア7は、多軸アクチュエータ用コイル1の外周に配置されている。換言すると、多軸アクチュエータ用コイル1は、固定子コア7の内周に配置されている。多軸アクチュエータ用コイル1は、接着剤により固定子コア7の内周に固定子コア7と電気的に絶縁されながら取り付けられている。多軸アクチュエータ用コイル1の後記するプリント基板2は、樹脂を多く含むため放熱性が悪いという特性を有する。そのため、接着剤には、放熱性の高い接着剤が使用されることが好ましい。固定子コア7には、複数方向に磁路が形成される。そのため、固定子コア7の材料には、例えば、圧粉磁心、バルク材が使用されることが好ましい。
【0017】
シャフト10は、可動子コア9の内周に配置されている。
図3に示すように、シャフト10は、中心軸Cに沿って延びている。シャフト10は、中心軸Cと同軸に配置されている。シャフト10の軸方向の一端部は、
図3の紙面右側の一方のブラケット6bの挿入孔6cおよび貫通孔6dを通じてハウジング6の外部に突出している。シャフト10の軸方向の他端部は、
図3の紙面左側の他方のブラケット6bの挿入孔6cを通じてハウジング6の外部に突出している。シャフト10は、複数方向に移動可能である。本実施の形態では、シャフト10は、周方向と軸方向とに移動することができる。可動子コア9と磁石8とは、シャフト10と共に、周方向と軸方向とに移動する。
【0018】
図3の紙面右側の一方のブラケット6bの内部には、第1の位置検出器12および第2の位置検出器13が配置されている。第1の位置検出器12は、シャフト10の周方向の角度を検出するための機器である。第1の位置検出器12は、複数の磁極または刻線を有する第1のスケール12aと、第1のスケール12aからシャフト10の回転角度を検出する第1のセンサ12bとを有している。第1のスケール12aは、シャフト10に取り付けられている。第1のセンサ12bは、一方のブラケット6bに取り付けられている。第2の位置検出器13は、シャフト10の軸方向の位置を検出するための機器である。第2の位置検出器13は、複数の磁極または刻線を有する第2のスケール13aと、第2のスケール13aからシャフト10の軸方向の位置を検出する第2のセンサ13bとを有している。第2のスケール13aは、シャフト10に取り付けられている。第2のセンサ13bは、一方のブラケット6bに取り付けられている。
【0019】
次に、
図4から
図9を参照して、多軸アクチュエータ用コイル1の詳細について説明する。
図4は、実施の形態1にかかる多軸アクチュエータ用コイル1を軸方向に沿って見たときの図である。
図5は、実施の形態1にかかる多軸アクチュエータ用コイル1の第1のプリント基板2Aを巻き回す前の状態を軸方向に沿って見たときの図である。
図6は、実施の形態1にかかる多軸アクチュエータ用コイル1の第1のプリント基板2Aを巻き回す前の状態を示した側面図である。
図7は、実施の形態1にかかる多軸アクチュエータ用コイル1の第2のプリント基板2Bを巻き回す前の状態を軸方向に沿って見たときの図である。
図8は、実施の形態1にかかる多軸アクチュエータ用コイル1の第2のプリント基板2Bを巻き回す前の状態を示した側面図である。
図9は、実施の形態1にかかる多軸アクチュエータ用コイル1を示した側面図である。
【0020】
図4に示すように、多軸アクチュエータ用コイル1は、可撓性を有し1つの軸4を中心にして巻き回されたプリント基板2と、プリント基板2にプリントされた複数のコイル群3とを備えている。
図4では、プリント基板2を灰色領域または斜線ハッチングで図示し、コイル群3をドットハッチングまたは格子ハッチングで図示している。軸4は、
図2に示される中心軸Cと平行に延びる仮想軸である。以下、多軸アクチュエータ用コイル1の各構成要素について方向を説明するときには、軸4と平行な方向を軸方向、軸4に対して直交する方向を直交方向、プリント基板2を巻き回す方向を巻回方向とする。
【0021】
プリント基板2は、自由に変形させることが可能なフレキシブル基板である。プリント基板2は、本実施の形態では巻回方向に分割されている。プリント基板2は、2枚に分割されている。以下の説明において、2枚のプリント基板2を区別する場合には、一方のプリント基板2を第1のプリント基板2Aと称し、他方のプリント基板2を第2のプリント基板2Bと称する。
図4において第1のプリント基板2Aは、灰色領域で図示されている。
図4において第2のプリント基板2Bは、斜線ハッチングで図示されている。
図5以降で第1のプリント基板2Aと第2のプリント基板2Bとが図示される場合にも、
図4と同じ方法で両者を区別する。各プリント基板2は、表面21と、表面21とは反対を向く裏面22とを有している。各プリント基板2は、巻回方向の一端23と他端24とを有している。第1のプリント基板2Aの巻回方向の他端24と第2のプリント基板2Bの巻回方向の一端23とは、巻回方向に隣接している。
【0022】
コイル群3の数は、本実施の形態では2個である。以下の説明において、2個のコイル群3を区別する場合には、一方のコイル群3を第1のコイル群3Aと称し、他方のコイル群3を第2のコイル群3Bと称する。
図4において第1のコイル群3Aは、ドットハッチングで図示されている。
図4において第2のコイル群3Bは、格子ハッチングで図示されている。
図5以降で第1のコイル群3Aと第2のコイル群3Bとが図示される場合にも、
図4と同じ方法で両者を区別する。
【0023】
図6および
図8に示すように、各コイル群3は、複数のコイルパターン31を有している。各コイルパターン31は、直線状に延びる複数の長辺部31aと、隣り合う2つの長辺部31aを繋ぐ複数の短辺部31bとを含んでいる。コイルパターン31は、プリント基板2の銅箔層をエッチングすることにより形成される導電体である。以下の説明において、第1のコイル群3Aと第2のコイル群3Bとのコイルパターン31を区別する場合には、第1のコイル群3Aのコイルパターン31を第1のコイルパターン32と称し、第2のコイル群3Bのコイルパターン31を第2のコイルパターン33と称する。
図5から
図8では、各コイル群3が3相コイルである場合を例示している。
図5から
図8では、ハッチングの密度を変えることにより、各相のコイルパターン31を区別している。
【0024】
図6に示すように、第1のコイルパターン32の数は、本実施の形態では3個である。3個の第1のコイルパターン32は、軸方向に並べられて配置されている。各第1のコイルパターン32は、概ね同一形状である。各第1のコイルパターン32は、同一形状で異なる大きさのループが同一の中心を基点に巻かれた集中巻きで第1のプリント基板2Aにプリントされている。第1のコイルパターン32の形状は、外周から内周に向かうにつれて四角形のループの大きさが小さくなる雷紋状である。
【0025】
第1のコイルパターン32は、巻回方向に延びる複数の第1の長辺部32aと、軸方向に延びる複数の第1の短辺部32bとを含んでいる。第1の長辺部32aと第1の短辺部32bとは、交互に配置されている。第1の長辺部32aは、可動子を軸方向に移動させる推力の発生に寄与する部分である。第1の短辺部32bは、可動子を軸方向に移動させる推力の発生に寄与しにくい部分である。第1の短辺部32bは、隣り合う2つの第1の長辺部32aを繋ぐ役割を果たしている。各第1のコイルパターン32の一端には、図示しない電力供給部の電源線が接続される端子32cが設けられている。各第1のコイルパターン32には、端子32cを介して、図示しない電力供給部から電力が供給される。端子32cは、第1のプリント基板2Aの軸方向の一端面よりも軸方向の外側に突出している。軸方向の外側とは、プリント基板2の軸方向の中心から軸方向の端面に向かう方向を意味する。各第1のコイルパターン32の他端には、端子32cの反対側となるループ内側の端子32dが設けられる。各第1のコイルパターン32の端子32dは、図示しないパターンまたはジャンパ線で互いに結線される。
【0026】
図8に示すように、第2のコイルパターン33の数は、本実施の形態では6個である。6個の第2のコイルパターン33は、巻回方向に並べられて配置されている。各第2のコイルパターン33は、同一形状である。各第2のコイルパターン33は、同一形状で異なる大きさのループが同一の中心を基点に巻かれた集中巻きで第2のプリント基板2Bにプリントされている。第2のコイルパターン33の形状は、外周から内周に向かうにつれて大きさが小さくなる雷紋状である。
【0027】
第2のコイルパターン33は、軸方向に延びる複数の第2の長辺部33aと、巻回方向に延びる複数の第2の短辺部33bとを含んでいる。第2の長辺部33aと第2の短辺部33bとは、交互に配置されている。第2の長辺部33aは、可動子を回転させるトルクの発生に寄与する部分である。第2の短辺部33bは、可動子を回転させるトルクの発生に寄与しにくい部分である。第2の短辺部33bは、隣り合う2つの第2の長辺部33aを繋ぐ役割を果たしている。各第2のコイルパターン33の一端には、図示しない電力供給部の電源線が接続される端子33cが設けられている。各第2のコイルパターン33には、端子33cを介して、図示しない電力供給部から電力が供給される。端子33cは、第2のプリント基板2Bの軸方向の一端面よりも軸方向の外側に突出している。各第2のコイルパターン33の他端には、端子33cの反対側となるループ内側の端子33dが設けられる。各第2のコイルパターン33の端子33dは、図示しないパターンまたはジャンパ線で互いに結線される。
【0028】
図6および
図8に示すように、同一のコイル群3における各コイルパターン31の長辺部31aは、互いに平行に延びている。具体的には、
図6に示される各第1のコイルパターン32の第1の長辺部32aは、互いに平行に延びている。
図8に示される各第2のコイルパターン33の第2の長辺部33aは、互いに平行に延びている。異なるコイル群3における各コイルパターン31の長辺部31aは、互いに交差する方向に延びている。具体的には、
図6に示される各第1のコイルパターン32の第1の長辺部32aと
図8に示される各第2のコイルパターン33の第2の長辺部33aとは、互いに交差する方向に延びている。第1の長辺部32aと第2の長辺部33aとは、本実施の形態では互いに直交する方向に延びている。
【0029】
図4に示すように、各プリント基板2は、コイル群3が形成された表面21が内周に位置するようにかつ裏面22が外周に位置するように、右回りに巻き回されている。各プリント基板2は、コイル群3が形成された表面21が外周に位置するようにかつ裏面22が内周に位置するように、巻き回されてもよい。各プリント基板2は、図示しない治具の円筒面に沿って巻き回される。第2のプリント基板2Bの巻回方向の一端23が第1のプリント基板2Aの巻回方向の他端24に連続するように、第1のプリント基板2Aおよび第2のプリント基板2Bが連続して巻き回されている。これにより、円筒形状の多軸アクチュエータ用コイル1が成形される。
図9に示すように、多軸アクチュエータ用コイル1の外周面は、第2のプリント基板2Bの裏面22となる。
【0030】
図4に戻り、第1のプリント基板2Aと第2のプリント基板2Bとは、接着剤、テープなどの固定手段により連結されてもよいし、連結されていなくてもよい。後者の場合には、内周に位置する第1のプリント基板2Aを巻き回した後、第1のプリント基板2Aの巻回方向の他端24に連続するように、第2のプリント基板2Bを巻き回せばよい。内周に位置する第1のプリント基板2Aをガイドにして、2枚目の第2のプリント基板2Bを巻き回せるため、多軸アクチュエータ用コイル1を容易に成形することができる。
【0031】
第1のコイル群3Aは、第2のコイル群3Bの一部の内周に配置される。すなわち、第1のコイル群3Aと第2のコイル群3Bの一部とは、周方向で一致する位置に配置されている。換言すると、異なるコイル群3は、軸4に対して直交する方向に並べられて配置されている。軸4に対して直交する方向に並べられて配置される第1のコイル群3Aと第2のコイル群3Bとの間には、第1のプリント基板2Aが全周に亘って挟み込まれて配置されている。これにより、第1のコイル群3Aと第2のコイル群3Bとの短絡を防止できる。
【0032】
次に、本実施の形態にかかる多軸アクチュエータ用コイル1および多軸アクチュエータ100の効果について説明する。
【0033】
本実施の形態では、
図4に示すように、多軸アクチュエータ用コイル1は、可撓性を有し1つの軸4を中心にして巻き回されたプリント基板2と、プリント基板2にプリントされた複数のコイル群3とを備えている。この構成により、プリント基板2の変形が容易であるため、プリントされたコイル群3も含めてプリント基板2を容易に変形させることができる。すなわち、本実施の形態では、マグネットワイヤによって多軸アクチュエータ用コイルを成形する場合に比べて、複数のコイル群3を容易かつ精度良く直交方向に並べて配置することができる。そのため、本実施の形態では、巻き崩れおよび巻線間の交錯が生じにくく、多軸アクチュエータ用コイル1の肥大化を抑制して、コイルスペースの肥大化を抑制することができる。したがって、従来よりも多軸アクチュエータ用コイル1をスペース効率良く成形することができる。また、コイルスペースの肥大化を抑制できることにより、多軸アクチュエータ100の大型化および多軸アクチュエータ100の出力密度の低下を抑制することができる。
【0034】
本実施の形態では、
図6および
図8に示すように、各コイル群3は、直線状に延びる長辺部31aを含む複数のコイルパターン31を有している。また、本実施の形態では、同一のコイル群3における各コイルパターン31の長辺部31aは、互いに平行に延びている。また、本実施の形態では、異なるコイル群3における各コイルパターン31の長辺部31aは、互いに交差する方向に延びている。これらの構成により、
図3に示されるシャフト10を複数方向に移動させることができる。
【0035】
本実施の形態では、
図4に示すように、直交方向に並んで配置される2つのコイル群3の間には、プリント基板2が配置されている。この構成により、2つのコイル群3の間の電気絶縁性を担保できる。なお、2つのコイル群3の間の直交方向に沿う距離は、プリント基板2の絶縁層の厚みと接着層の厚みとにより定まり、2つのコイル群3の間の電気絶縁性を担保できれば0.1mmまで短縮することができる。
【0036】
特許文献1に開示されている技術では、Z軸コイルとθ軸コイルとの間に、両コイルの短絡を防止する沿面距離を設ける必要がある。そのため、両コイルの位置を精度良く調整した上で、両コイルをモールド樹脂で固定するか、または、両コイルの間にインシュレータなどの絶縁部材を挟み込んで配置する必要がある。したがって、特許文献1に開示されている技術では、多軸アクチュエータ用コイルを成形する際の作業工程数が増加するとともに、多軸アクチュエータ用コイルの部品点数が増加する。この点、本実施の形態では、
図4に示すように、プリントされたコイル群3も含めてプリント基板2を変形させるだけで、直交方向に並べられて配置される2つのコイル群3の間にプリント基板2が配置されるため、2つのコイル群3の短絡を防止できる。これにより、モールド樹脂、インシュレータなどの絶縁部材が不要になるため、特許文献1に開示されている技術に比べて、多軸アクチュエータ用コイル1を成形する際の作業工程数を削減できるとともに、多軸アクチュエータ用コイル1の部品点数を削減できる。
【0037】
次に、実施の形態1の変形例について説明する。
【0038】
本実施の形態では、
図4に示すように、プリント基板2が円筒形状に巻き回されているが、プリント基板2の軸4と直交する断面形状が多角形状の筒状となるようにプリント基板2が巻き回されてもよい。
【0039】
本実施の形態では、
図4に示すように、プリント基板2の枚数が2枚であるが、3枚以上であってもよい。プリント基板2の枚数が3枚以上の場合でも、巻回方向に隣り合うプリント基板2は、接着剤、テープなどの固定手段により連結されてもよいし、連結されていなくてもよい。後者の場合には、内周に位置するプリント基板2を巻き回した後、巻き回したプリント基板2の巻回方向の終端に連続するように、次のプリント基板2を巻き回せばよい。内周に位置するプリント基板2をガイドにして、2枚目以降のプリント基板2を巻き回せるため、多軸アクチュエータ用コイル1を容易に成形することができる。プリント基板2の枚数が3枚以上の場合には、複数のプリント基板2のそれぞれのコイル群3の長辺部31aの延伸方向が互いに異なっていてもよい。また、プリント基板2の枚数が3枚以上の場合には、複数のプリント基板2のうちの一部のコイル群3の長辺部31aの延伸方向と、複数のプリント基板2のうちの残部のコイル群3の長辺部31aの延伸方向とが互いに異なっていてもよい。
【0040】
本実施の形態では、
図4に示すように、第1のコイル群3Aがプリントされた第1のプリント基板2Aが半周分巻き回されて、第2のコイル群3Bがプリントされた第2のプリント基板2Bが1周分巻き回されているが、各プリント基板2の巻き回し量は適宜変更してもよい。例えば、各プリント基板2が1周を超えて巻き回されてもよい。このようにすると、コイルパターン31の巻数がより多く必要な多軸アクチュエータ100に対応することができる。
【0041】
図6および
図8に示される各コイル群3のコイルパターン31の数は、図示の例に限定されることなく、適宜変更してもよい。また、
図6および
図8では、各コイル群3が3相コイルである場合を例示しているが、これに限定されない。各コイル群3は、単相コイルでもよいし、4相以上のコイルであってもよい。
【0042】
コイルパターン31の形状は、図示の例に限定されることなく、適宜変更してもよい。コイルパターン31の形状は、例えば、
図10に示される形状でもよい。
図10は、実施の形態1の変形例1にかかる多軸アクチュエータ用コイル1のコイルパターン31を示した側面図である。
図10に示されるコイルパターン31の形状は、外周から内周に向かうにつれて六角形のループの大きさが小さくなる形状である。長辺部31aは、直線状に延びている。短辺部31bの形状は、ループの外周に向かって凸となる先鋭状である。短辺部31bは、隣り合う一方の長辺部31aから他方の長辺部31aに向かってループの外周に位置するように直線状に延びた後、ループの内周に位置するように直線状に延びている。本変形例でも、前記した実施の形態1と同一の効果を奏することができる。
【0043】
コイルパターン31の形状は、例えば、
図11に示される形状でもよい。
図11は、実施の形態1の変形例2にかかる多軸アクチュエータ用コイル1のコイルパターン31を示した側面図である。
図11に示されるコイルパターン31の形状は、外周から内周に向かうにつれて楕円形のループの大きさが小さくなる形状である。長辺部31aは、直線状に延びている。短辺部31bの形状は、ループの外周に向かって凸となる曲線状である。短辺部31bは、隣り合う一方の長辺部31aから他方の長辺部31aに向かってループの外周に位置するように曲線状に延びた後、ループの内周に位置するように曲線状に延びている。本変形例でも、前記した実施の形態1と同一の効果を奏することができる。
【0044】
本実施の形態では、
図3に示されるシャフト10を含む可動子の移動方向は、周方向と軸方向とであったが、シャフト10を含む可動子の移動方向を限定する趣旨ではない。例えば、シャフト10を含む可動子は、左周りに回転しながら軸方向に移動する螺旋運動が可能であるとともに、右回りに回転しながら軸方向に移動する螺旋運動が可能であってもよい。このような構成にする場合には、
図6および
図8に示される各コイル群3の長辺部31aの延伸方向を、軸方向および巻回方向に交差する方向に変更すればよい。このように変更する場合でも、同一のコイル群3における各コイルパターン31の長辺部31aは、互いに平行に延びている。また、異なるコイル群3における各コイルパターン31の長辺部31aは、互いに交差する方向に延びている。
【0045】
本実施の形態では、
図2および
図3に示すように、多軸アクチュエータ100は、磁石8を備えたが、磁石8を備えなくてもよい。例えば、多軸アクチュエータ100は、鉄心のリラクタンストルクのみで回転するSynRM(Synchronous Reluctance Motor)に相当する構成でもよい。
【0046】
本実施の形態では、
図2および
図3に示すように、多軸アクチュエータ100は、固定子コア7を備えたが、固定子コア7を備えなくてもよい。例えば、多軸アクチュエータ100は、コイル付近に鉄心を有さないコアレス構造に相当する構成でもよい。
【0047】
本実施の形態では、
図2および
図3に示すように、多軸アクチュエータ100は、フレーム6aを備えたが、フレーム6aを備えなくてもよい。例えば、多軸アクチュエータ100は、固定子コア7がフレームの役割を兼ねるフレームレス構造に相当する構成でもよい。
【0048】
実施の形態2.
次に、
図12から
図16を参照して、実施の形態2にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Aについて説明する。
図12は、実施の形態2にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Aの第1のプリント基板2Aを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板2Aの表面21を示した図である。
図13は、実施の形態2にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Aの第1のプリント基板2Aを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板2Aの裏面22を示した図である。
図14は、実施の形態2にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Aの第2のプリント基板2Bを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板2Bの表面21を示した図である。
図15は、実施の形態2にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Aの第2のプリント基板2Bを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板2Bの裏面22を示した図である。
図16は、実施の形態2にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Aを軸方向に沿って見たときの図である。本実施の形態では、プリント基板2の表面21と裏面22との両面にコイル群3がプリントされている点が、前記した実施の形態1と相違する。なお、実施の形態2では、前記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
以下の説明において、
図12に示される第1のプリント基板2Aの表面21の第1のコイルパターン32を第1のコイルパターン32Aと称し、
図13に示される第1のプリント基板2Aの裏面22の第1のコイルパターン32を第1のコイルパターン32Bと称する。また、
図14に示される第2のプリント基板2Bの表面21の第2のコイルパターン33を第2のコイルパターン33Aと称し、
図15に示される第2のプリント基板2Bの裏面22の第2のコイルパターン33を第2のコイルパターン33Bと称する。
【0050】
図12に示すように、第1のコイルパターン32Aの一端には、端子32cが設けられている。第1のコイルパターン32Aは、端子32cが設けられた一端を始端として、外周から内周に向かって巻き回されるように形成されている。
図13では、
図12に示される第1のプリント基板2Aを紙面の上下に反転させるとともに裏返した状態を図示している。第1のコイルパターン32Aと第1のコイルパターン32Bとで同一位置にある2個の端部A1,B1,C1は、スルーホール34を介して電気的に接続されている。第1のコイルパターン32Bは、スルーホール34に接続される端部A1,B1,C1である一端を始端として、内周から外周に向かって巻き回されるように形成されている。第1のプリント基板2Aの裏面22には、各相の第1のコイルパターン32Bの他端を電気的に接続する接続部35が設けられている。接続部35は、軸方向に延びている。
【0051】
図14に示すように、第2のコイルパターン33Aの一端には、端子33cが設けられている。第2のコイルパターン33Aは、端子33cが設けられた一端を始端として、外周から内周に向かって巻き回されるように形成されている。
図15では、
図14に示される第2のプリント基板2Bを紙面の上下に反転させるとともに裏返した状態を図示している。第2のコイルパターン33Aと第2のコイルパターン33Bとで同一位置にある2個の端部D1,・・・I1は、スルーホール34を介して電気的に接続されている。第2のコイルパターン33Bは、スルーホール34に接続される端部D1,・・・I1である一端を始端として、内周から外周に向かって巻き回されるように形成されている。第2のプリント基板2Bの裏面22には、各相の第2のコイルパターン33Bの他端を電気的に接続する接続部36が設けられている。接続部36は、巻回方向に延びている。接続部35,36は、例えば、中性点となってもよいし、デルタ結線となってもよい。
【0052】
図16に示される各プリント基板2の巻回方向および巻き回し方法は前記実施の形態1と同一である。すなわち、前記した実施の形態1と同じ要領で、実施の形態2にかかる第1のプリント基板2Aおよび第2のプリント基板2Bも巻き回される。第1のプリント基板2Aにおいては、第1のコイルパターン32Aが第1のコイルパターン32Bに対して内周に配置される。第2のプリント基板2Bにおいては、第2のコイルパターン33Aが第2のコイルパターン33Bに対して内周に配置される。軸4に対して直交する方向に並べられて配置される第1のコイルパターン32Bと第2のコイルパターン33Aとの間には、絶縁層5が全周に亘って配置されている。絶縁層5は、プリント基板2のうちコイル群3がプリントされた面に塗布される塗布物、軸4に対して直交する方向に並べられて配置されるプリント基板2の間に挟み込まれる被挟持物などである。塗布物は、例えば、ソルダーレジストである。被挟持物は、例えば、絶縁シートである。
【0053】
次に、本実施の形態にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Aの効果について説明する。
【0054】
本実施の形態では、前記した実施の形態1と同一の効果を奏することができる。また、本実施の形態では、
図16に示すように、コイル群3は、プリント基板2の表面21と裏面22との両面にプリントされている。この構成により、コイル群3がプリント基板2の片面だけにプリントされる場合に比べて、コイルパターン31の巻数を2倍にすることができる。
【0055】
本実施の形態では、
図16に示すように、軸4に対して直交する方向に並べられて配置される第1のコイルパターン32Bと第2のコイルパターン33Aとの間には、絶縁層5が全周に亘って配置されている。この構成により、第1のコイルパターン32Bと第2のコイルパターン33Aとの短絡を防止できる。
【0056】
実施の形態3.
次に、
図17から
図19を参照して、実施の形態3にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Bについて説明する。
図17は、実施の形態3にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Bのプリント基板2を巻き回す前の状態を軸方向に沿って見たときの図である。
図18は、実施の形態3にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Bのプリント基板2を巻き回す前の状態を示した側面図である。
図19は、実施の形態3にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Bを軸方向に沿って見たときの図である。本実施の形態では、各コイル群3が1枚のプリント基板2にプリントされている点が、前記した実施の形態1と相違する。なお、実施の形態3では、前記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
図17および
図18に示すように、第1のコイル群3Aと第2のコイル群3Bとは、同じプリント基板2において、巻回方向に並べられて配置されている。プリント基板2は、巻回方向の一端23と他端24とを有している。巻回方向の一端23から他端24に向かって、第1のコイル群3A、第2のコイル群3Bの順に配置されている。
図19に示されるプリント基板2の巻回方向および巻き回し方法は前記実施の形態1と同一である。すなわち、前記した実施の形態1と同じ要領で、実施の形態3にかかるプリント基板2も巻き回される。
【0058】
次に、本実施の形態にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Bの効果について説明する。
【0059】
本実施の形態では、
図19に示すように、各コイル群3は、1枚のプリント基板2にプリントされている。この構成により、複数のコイル群3をより一層容易かつ精度良く直交方向に並べて配置することができる。そのため、本実施の形態では、巻き崩れおよび巻線間の交錯がさらに生じにくく、多軸アクチュエータ用コイル1Bの肥大化をより一層抑制して、コイルスペースの肥大化をより一層抑制することができる。したがって、多軸アクチュエータ用コイル1Bをより一層スペース効率良く成形することができる。また、プリント基板2を巻き回して多軸アクチュエータ用コイル1Bを成形する際の巻き崩れおよび巻線間の交錯がより一層抑制されるため、多軸アクチュエータ100の電磁気特性を向上させることができる。
【0060】
実施の形態4.
次に、
図20から
図24を参照して、実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Cについて説明する。
図20は、実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Cの第2のプリント基板2Bを巻き回す前の状態を軸方向に沿って見たときの図である。
図21は、実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Cの第2のプリント基板2Bを巻き回す前の状態を示した側面図である。
図22は、実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Cの第1のプリント基板2Aを巻き回す前の状態を軸方向に沿って見たときの図である。
図23は、実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Cの第1のプリント基板2Aを巻き回す前の状態を示した側面図である。
図24は、実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Cを軸方向に沿って見たときの図である。本実施の形態では、複数のコイル群3の巻回方向における位置が逆になっている点が、前記した実施の形態1と相違する。なお、実施の形態4では、前記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
図24に示される巻き回されたプリント基板2の内周側に配置されるコイル群3は、本実施の形態では
図20および
図21に示される第2のコイル群3Bである。第2のコイル群3Bは、コイルパターン31の配列方向が巻回方向と一致し、かつ、長辺部31aが巻回方向に対して直交する方向に延びている。コイルパターン31の配列方向が巻回方向と一致するとは、プリント基板2が巻き回された状態で複数のコイルパターン31が配列されている方向と巻回方向とが一致していることを意味する。
図24に示すように、第2のコイル群3Bの一部は、第1のコイル群3Aの内周に配置されている。第2のコイル群3Bは、巻き回されたプリント基板2の最内周に配置されている。なお、
図22および
図23に示される第1のコイル群3Aの構成は、前記した実施の形態1と同一である。
【0062】
図24に示される各プリント基板2の巻回方向および巻き回し方法は前記実施の形態1と概ね同一である。ただし、本実施の形態では、第1のプリント基板2Aの巻回方向の一端23が第2のプリント基板2Bの巻回方向の他端24に連続するように、第2のプリント基板2Bおよび第1のプリント基板2Aが連続して巻き回されている。これにより、円筒形状の多軸アクチュエータ用コイル1Cが成形される。多軸アクチュエータ用コイル1Cの外周面は、第1のプリント基板2Aの裏面22および第2のプリント基板2Bの裏面22となる。
【0063】
次に、本実施の形態にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Cの効果について説明する。
【0064】
図24に示されるプリント基板2を円筒に複数回巻き回した場合には、プリント基板2の1周当たりの周長は、プリント基板2の外周側ほど長くなる。そのため、
図21に示される第2のコイル群3Bのようにコイルパターン31の配列方向が巻回方向と一致し、かつ、各コイルパターン31の巻回方向の幅Wが等しい場合には、プリント基板2を円筒に巻き回す回数が増えるほど、同相のコイルパターン31が巻回方向にずれる位相ずれが生じる。また、位相ずれが生じることで1周ごとの電気的な位相が変化し、多軸アクチュエータ100の電磁気特性が低下しやすいという問題がある。
【0065】
この点、本実施の形態では、
図21および
図24に示すように、巻き回されたプリント基板2の内周側に配置される第2のコイル群3Bは、コイルパターン31の配列方向が巻回方向と一致し、かつ、長辺部31aが巻回方向に対して直交する方向に延びている。つまり、位相ずれによる多軸アクチュエータ100の電磁気特性の低下が顕著に表れやすい第2のコイル群3Bを、位相ずれの発生が抑制されるプリント基板2の内周側に配置する。この構成により、巻き回されたプリント基板2の外周側に第2のコイル群3Bを配置する場合に比べて、多軸アクチュエータ100の電磁気特性の低下を抑制することができる。
【0066】
なお、コイルパターン31の巻回方向の幅Wをプリント基板2の外周側に位置するものほど広くしてもよい。このようにすると、巻き回されたプリント基板2の内周側に第2のコイル群3Bを配置しなくても、位相ずれの発生が抑制されて、多軸アクチュエータ100の電磁気特性の低下を抑制することができる。
【0067】
実施の形態5.
次に、
図25から
図30を参照して、実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Dについて説明する。
図25は、実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Dの第1のプリント基板2Aを巻き回す前の状態を軸方向に沿って見たときの図である。
図26は、実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Dの第1のプリント基板2Aを巻き回す前の状態を示した側面図である。
図27は、実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Dの第2のプリント基板2Bを巻き回す前の状態を軸方向に沿って見たときの図である。
図28は、実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Dの第2のプリント基板2Bを巻き回す前の状態を示した側面図である。
図29は、実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Dを軸方向に沿って見たときの図である。
図30は、実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Dを示した側面図である。本実施の形態では、端子32c,33cを巻回方向で1箇所にまとめて配置した点が、前記した実施の形態1と相違する。なお、実施の形態5では、前記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0068】
図25および
図26に示すように、第1のプリント基板2Aの軸方向の一端面よりも軸方向の外側に突出する各端子32cは、巻回方向で第1のプリント基板2Aの他端24に寄った位置に配置されている。第1のプリント基板2Aおよび第2のプリント基板2Bを巻き回したときに、第1のプリント基板2Aの他端24は、第2のプリント基板2Bの一端23に連続する部分である。つまり、各端子32cは、第1のプリント基板2Aと第2のプリント基板2Bとが連続する部分に寄った位置に配置されている。各端子32cは、巻回方向に並べられて配置されている。
【0069】
図27および
図28に示すように、第2のプリント基板2Bの軸方向の一端面よりも軸方向の外側に突出する各端子33cは、巻回方向で第2のプリント基板2Bの一端23に寄った位置に配置されている。つまり、各端子33cは、第1のプリント基板2Aと第2のプリント基板2Bとが連続する部分に寄った位置に配置されている。各端子33cは、巻回方向に並べられて配置されている。
【0070】
図示の例では、各端子33cが各相電流の流入源となる。また、図示の例では、端子33d1と端子33e1とが接続され、端子33d2と端子33e2とが接続され、端子33d3と端子33e3とが接続される。さらに、図示の例では、端子33d4と端子33d5と端子33d6とが中性点で結線される。なお、端子33d1と端子33e1との接続方法、端子33d2と端子33e2との接続方法、端子33d3と端子33e3との接続方法としては、例えば、スルーホールを介して裏面22に渡り裏面22に形成されたパターンによる接続、ジャンパ線による接続が挙げられる。
【0071】
図29に示される各プリント基板2の巻回方向および巻き回し方法は前記実施の形態1と同一である。すなわち、前記した実施の形態1と同じ要領で、実施の形態5にかかる第1のプリント基板2Aおよび第2のプリント基板2Bも巻き回される。このように第1のプリント基板2Aおよび第2のプリント基板2Bを巻き回すと、
図30に示すように、第1のコイル群3Aと第2のコイル群3Bとが巻回方向で連続する部分において、端子32cと端子33cとは巻回方向に並べられて配置される。すなわち、各コイル群3の各コイルパターン31の端子32c,33cは、巻回方向で1箇所にまとめて配置されている。
【0072】
次に、本実施の形態にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Dの効果について説明する。
【0073】
本実施の形態では、
図30に示すように、各コイル群3の各コイルパターン31の端子32c,33cは、巻回方向で1箇所にまとめて配置されている。この構成により、多軸アクチュエータ100と電力供給部とを接続する電源線をひとまとまりにすることができるため、結線が単純化され、多軸アクチュエータ100への電力の供給が容易になる。
【0074】
実施の形態6.
次に、
図31および
図34を参照して、実施の形態6にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Eについて説明する。
図31は、実施の形態6にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Eの第1のプリント基板2Aを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板2Aの表面21を示した図である。
図32は、実施の形態6にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Eの第1のプリント基板2Aを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板2Aの裏面22を示した図である。
図33は、実施の形態6にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Eの第2のプリント基板2Bを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板2Bの表面21を示した図である。
図34は、実施の形態6にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Eの第2のプリント基板2Bを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板2Bの裏面22を示した図である。本実施の形態では、コイルパターン31の巻き方が分布巻きである点が、前記した実施の形態1と相違する。なお、実施の形態6では、前記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0075】
図32では、
図31に示される第1のプリント基板2Aを紙面の上下に反転させるとともに裏返した状態を図示している。
図31および
図32に示すように、各第1のコイルパターン32は、同一形状のループが軸方向に中心を一定間隔でずらしながら巻かれた分布巻きで第1のプリント基板2Aにプリントされている。第1のコイルパターン32の数は、本実施の形態では第1のプリント基板2Aの表面21と裏面22とに3個ずつである。表面21の3個の第1のコイルパターン32は、軸方向に並べられて配置されている。裏面22の3個の第1のコイルパターン32は、軸方向に並べられて配置されている。ここでは、同相の第1のコイルパターン32が存在する軸方向のエリアを、第1のプリント基板2Aの表面21および裏面22の区別なく数えた数を、第1のコイル群3Aにおけるコイル数とする。また、同相の第1のコイルパターン32が存在する軸方向のエリアの区分けは、後記する第1の長辺部32aを基準にして行い、第1の長辺部32a以外の部分を考慮しない。したがって、第1のプリント基板2Aの表面21から裏面22に向かう方向に沿って見たときに、表面21において同相の第1のコイルパターン32の第1の長辺部32aが存在する軸方向のエリアと裏面22において同相の第1のコイルパターン32の第1の長辺部32aが存在する軸方向のエリアとの軸方向位置が同じである場合には、1個のコイルとして数える。一方、第1のプリント基板2Aの表面21から裏面22に向かう方向に沿って見たときに、表面21において同相の第1のコイルパターン32の第1の長辺部32aが存在する軸方向のエリアと裏面22において同相の第1のコイルパターン32の第1の長辺部32aが存在する軸方向のエリアとの軸方向位置が異なる場合には、異なるコイルとして数える。例えば、
図31および
図32においては、表面21において同相の第1のコイルパターン32の第1の長辺部32aが存在する軸方向のエリアと裏面22において同相の第1のコイルパターン32の第1の長辺部32aが存在する軸方向のエリアとが3個ずつであり、6個の軸方向のエリアの軸方向位置が互いに異なっている。そのため、第1のコイル群3Aにおけるコイル数は、6個と数える。第1のプリント基板2Aの表面21と裏面22とで同一位置にある2個の端部J1・・・J5,K1・・・K5,L1・・・L5は、スルーホール34を介して電気的に接続されている。第1のコイルパターン32は、第1のプリント基板2Aの表面21と裏面22とに交互に配置されている。第1のプリント基板2Aの表面21の第1のコイルパターン32が表面21で半周延びた後、スルーホール34を介して第1のプリント基板2Aの裏面22に渡って、裏面22の第1のコイルパターン32が裏面22で半周延びる。6個の第1のコイルパターン32のそれぞれの巻数は、第1のプリント基板2Aを巻き回す前の第1のコイルパターン32のそれぞれの巻数と直交方向に積み重なる第1のプリント基板2Aの積層数との積となる。6個の第1のコイルパターン32のそれぞれの巻数は、任意に決めてよい。
【0076】
第1のコイルパターン32は、巻回方向に延びる複数の第1の長辺部32aと、複数の第1の短辺部32bとを含んでいる。第1の短辺部32bは、表裏の2つの第1の長辺部32aを繋ぐ役割を果たしている。
図31に示される第1の短辺部32bは、第1の長辺部32aから離れるにつれて軸方向の一方に位置するように傾斜しながら延びている。
図32に示される第1の短辺部32bは、第1の長辺部32aから離れるにつれて軸方向の他方に位置するように傾斜しながら延びている。
【0077】
本実施の形態では、各相が2個のコイルで構成される3相の星型結線のパターンである第1のコイルパターン32を図示している。表面21の第1のコイルパターン32のうち第1のプリント基板2A外に延びる一端の端子32cが電流の流入箇所となる。裏面22の第1のコイルパターン32のうち第1のプリント基板2A内に位置する他端同士は中性点である接続部35で結線される。本実施の形態では、同相のコイル間を接続し、各相のコイルが2個の場合を図示しているが、1相当たり1個または2個以外の複数のコイルを有するパターンとしてもよい。また、本実施の形態では、星型結線の場合を図示しているが、例えばデルタ結線のような異なる結線パターンとしてもよい。
【0078】
図34では、
図33に示される第2のプリント基板2Bを紙面の上下に反転させるとともに裏返した状態を図示している。
図33および
図34に示すように、各第2のコイルパターン33は、同一形状のループが巻回方向に中心を一定間隔でずらしながら巻かれた分布巻きで第2のプリント基板2Bにプリントされている。第2のコイルパターン33の数は、本実施の形態では18個である。第2のコイルパターン33の数は、本実施の形態では第2のプリント基板2Bの表面21と裏面22とに9個ずつである。表面21の9個の第2のコイルパターン33は、巻回方向に並べられて配置されている。裏面22の9個の第2のコイルパターン33は、巻回方向に並べられて配置されている。ここでは、同相の第2のコイルパターン33が存在する巻回方向のエリアを、第2のプリント基板2Bの表面21および裏面22の区別なく数えた数を、第2のコイル群3Bにおけるコイル数とする。また、同相の第2のコイルパターン33が存在する巻回方向のエリアの区分けは、後記する第2の長辺部33aを基準にして行い、第2の長辺部33a以外の部分を考慮しない。したがって、第2のプリント基板2Bの表面21から裏面22に向かう方向に沿って見たときに、表面21において同相の第2のコイルパターン33の第2の長辺部33aが存在する巻回方向のエリアと裏面22において同相の第2のコイルパターン33の第2の長辺部33aが存在する巻回方向のエリアとの巻回方向位置が同じである場合には、1個のコイルとして数える。一方、第2のプリント基板2Bの表面21から裏面22に向かう方向に沿って見たときに、表面21において同相の第2のコイルパターン33の第2の長辺部33aが存在する巻回方向のエリアと裏面22において同相の第2のコイルパターン33の第2の長辺部33aが存在する巻回方向のエリアとの巻回方向位置が異なる場合には、異なるコイルとして数える。例えば、
図33および
図34においては、表面21において同相の第2のコイルパターン33の第2の長辺部33aが存在する巻回方向のエリアと裏面22において同相の第2のコイルパターン33の第2の長辺部33aが存在する巻回方向のエリアとが9個ずつであり、このうち6個の巻回方向のエリアの巻回方向位置が互いに異なっていて6個の巻回方向のエリアの巻回方向位置が同じである。そのため、コイル数は、12個と数える。第2のプリント基板2Bの表面21と裏面22とで同一位置にある2個の端部M1・・・M5,N1・・・N5,O1・・・O5は、スルーホール34を介して電気的に接続されている。また、第2のプリント基板2Bの表面21と裏面22とで同一位置にある2個の端部P1・・・P5,Q1・・・Q5,R1・・・R5は、スルーホール34を介して電気的に接続されている。また、第2のプリント基板2Bの表面21と裏面22とで同一位置にある2個の端部S1・・・S5,T1・・・T5,U1・・・U5は、スルーホール34を介して電気的に接続されている。
【0079】
第2のコイルパターン33は、第2のプリント基板2Bの表面21と裏面22とに交互に配置されている。第2のプリント基板2Bの表面21の第2のコイルパターン33が表面21で半周延びた後、スルーホール34を介して第2のプリント基板2Bの裏面22に渡って、裏面22の第2のコイルパターン33が裏面22で半周延びる。18個の第2のコイルパターン33のそれぞれの巻数は、第2のプリント基板2Bを巻き回す前の第2のコイルパターン33のそれぞれの巻数と直径方向に積み重なる第2のプリント基板2Bの積層数との積となる。18個の第2のコイルパターン33のそれぞれの巻数は、任意に決めてよい。第2のコイルパターン33は、軸方向に延びる複数の第2の長辺部33aと、複数の第2の短辺部33bとを含んでいる。第2の短辺部33bは、表裏の2つの第2の長辺部33aを繋ぐ役割を果たしている。
【0080】
次に、本実施の形態にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Eの効果について説明する。
【0081】
本実施の形態では、前記した実施の形態1と同一の効果を奏することができる。また、本実施の形態では、コイルパターン31の巻き方が分布巻きであることにより、有効鎖交磁束数が増加し、多軸アクチュエータ100の出力密度を向上させることができる。なお、本実施の形態では各コイルパターン31の分布巻きの一例として、重ね巻きを図示したが、これに限定されない。各コイルパターン31の分布巻きは、例えば、波巻きでもよい。また、複数のコイル群3のうちの一方のコイルパターン31が集中巻きでプリント基板2にプリントされ、複数のコイル群3のうちの他方のコイルパターン31が分布巻きでプリント基板2にプリントされてもよい。
【0082】
実施の形態7.
次に、
図35を参照して、実施の形態7にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Fおよび多軸アクチュエータ100Aについて説明する。
図35は、実施の形態7にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Fとティース7aとを模式的に示した側面図であって、多軸アクチュエータ用コイル1Fの内周から外周に向かって見た図である。本実施の形態では、ティース7aを備える多軸アクチュエータ100Aに多軸アクチュエータ用コイル1Fを搭載した点が、前記した実施の形態1と相違する。なお、実施の形態7では、前記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
図35では、プリント基板2の図示を省略している。
【0083】
第1のコイルパターン32の第1の長辺部32aと第2のコイルパターン33の第2の長辺部33aとは、互いに交差している。第1のコイルパターン32の第1の長辺部32aと第2のコイルパターン33の第2の長辺部33aとは、直交方向に沿って見たときに格子状に配置されている。図示しないプリント基板2には、格子状の複数の孔25が形成されている。各孔25は、第1の長辺部32aと第2の長辺部33aとが交差しない部分に形成されている。各孔25は、本実施の形態では隣り合う2つの第1の長辺部32aと隣り合う2つの第2の長辺部33aとに囲まれた部分に形成されている。
【0084】
固定子コア7は、複数の孔25のそれぞれに配置される複数のティース7aを備えている。固定子コア7は、ティース7aが接続される図示しないコアバックを備えている。コアバックは、巻回方向で複数に分割されている。1つのコアバックごとに複数のティース7aが接続されている。多軸アクチュエータ用コイル1Fは、複数のティース7aを介して固定子コア7に保持されている。
【0085】
次に、本実施の形態にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Fおよび多軸アクチュエータ100Aの効果について説明する。
【0086】
本実施の形態では、第1のコイルパターン32の第1の長辺部32aと第2のコイルパターン33の第2の長辺部33aとは、直交方向に沿って見たときに格子状に配置されている。プリント基板2には、格子状の複数の孔25が形成されている。固定子コア7は、複数の孔25のそれぞれに配置される複数のティース7aを備えている。これらの構成により、多軸アクチュエータ用コイル1Fが複数のティース7aを介して固定子コア7に保持される。これにより、ティース7aが存在しない状態と比較して固定子側インダクタンスが増加するため、多軸アクチュエータ100Aの出力密度が向上し、多軸アクチュエータ100Aの更なる高出力化と小型化とが可能となる。
【0087】
実施の形態8.
次に、
図36から
図38を参照して、実施の形態8にかかる多軸アクチュエータ100Bについて説明する。
図36は、実施の形態8にかかる多軸アクチュエータ100Bを示した斜視図である。
図37は、
図36に示されたXXXVII-XXXVII線に沿った断面図である。
図38は、
図36に示されたXXXVIII-XXXVIII線に沿った断面図である。本実施の形態では、多軸アクチュエータ用コイル1Gと可動子コア9とシャフト10とで可動子が構成され、磁石8と固定子コア7とフレーム6aとで固定子が構成されるムービングコイル型の多軸アクチュエータ100Bである点が、前記した実施の形態1と相違する。なお、実施の形態8では、前記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0088】
図36から
図38に示すように、ハウジング6、シャフト10、軸受11、第1の位置検出器12および第2の位置検出器13の構成は、前記した実施の形態1と同一である。
【0089】
図37に示すように、固定子コア7は、フレーム6aの内周に配置されている。固定子コア7は、フレーム6aの内周に嵌め込まれている。
【0090】
多軸アクチュエータ用コイル1Gは、可動子コア9の外周に配置されている。第1のコイル群3Aが第2のコイル群3Bに対して内周に位置するように、多軸アクチュエータ用コイル1Gが配置されている。
【0091】
磁石8は、多軸アクチュエータ用コイル1Gの外周に設けられている。磁石8は、多軸アクチュエータ用コイル1Gと空隙を介して配置されている。磁石8は、半径方向において多軸アクチュエータ用コイル1Gと対面する。
【0092】
可動子コア9は、多軸アクチュエータ用コイル1Gの内周に配置されている。換言すると、多軸アクチュエータ用コイル1Gは、可動子コア9の外周に取り付けられている。シャフト10は、可動子コア9の内周に配置されている。可動子コア9と多軸アクチュエータ用コイル1Gとは、シャフト10と共に、周方向と軸方向とに移動する。
【0093】
次に、本実施の形態にかかる多軸アクチュエータ100Bの効果について説明する。
【0094】
本実施の形態でも、可動子を複数方向に移動させながら、前記した実施の形態1と同一の効果を奏することができる。また、多軸アクチュエータ用コイル1Gが巻数の少ない多軸アクチュエータ用コイルの場合、可動子が軽量化し、多軸アクチュエータ100Bの応答性が向上する。さらに、多軸アクチュエータ用コイル1Gを直接円筒成形する際、プリント基板2を可動子コア9に直接巻き付けながら成形することが可能となり、成形用の円筒治具を別途用意する必要がなくなる。
【0095】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0096】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G 多軸アクチュエータ用コイル、2 プリント基板、2A 第1のプリント基板、2B 第2のプリント基板、3 コイル群、3A 第1のコイル群、3B 第2のコイル群、4 軸、5 絶縁層、6 ハウジング、6a フレーム、6b ブラケット、6c 挿入孔、6d 貫通孔、7 固定子コア、7a ティース、8 磁石、9 可動子コア、10 シャフト、11 軸受、12 第1の位置検出器、12a 第1のスケール、12b 第1のセンサ、13 第2の位置検出器、13a 第2のスケール、13b 第2のセンサ、21 表面、22 裏面、23 一端、24 他端、25 孔、31 コイルパターン、31a 長辺部、31b 短辺部、32,32A,32B 第1のコイルパターン、32a 第1の長辺部、32b 第1の短辺部、32c,32d,33c,33d,33d1,33d2,33d3,33d4,33d5,33d6,33e1,33e2,33e3 端子、33,33A,33B 第2のコイルパターン、33a 第2の長辺部、33b 第2の短辺部、34 スルーホール、35,36 接続部、100,100A,100B 多軸アクチュエータ。
【要約】
多軸アクチュエータ用コイル(1)は、可撓性を有し、1つの軸(4)を中心にして巻き回されたプリント基板(2)と、プリント基板(2)にプリントされた複数のコイル群(3)と、を備えている。異なるコイル群(3)は、軸(4)に対して直交する方向に並んで配置されている。各コイル群(3)は、直線状に延びる長辺部を含む複数のコイルパターン(31)を有している。同一のコイル群(3)における各コイルパターン(31)の長辺部は、互いに平行に延びている。異なるコイル群(3)における各コイルパターン(31)の長辺部は、互いに交差する方向に延びている。