(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】多軸アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 41/03 20060101AFI20241011BHJP
【FI】
H02K41/03 A
(21)【出願番号】P 2024550624
(86)(22)【出願日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2023033739
【審査請求日】2024-08-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】森本 朔
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄一朗
(72)【発明者】
【氏名】細野 淳
(72)【発明者】
【氏名】田中 敏則
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-239661(JP,A)
【文献】特開2008-253009(JP,A)
【文献】国際公開第2023/095285(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の多軸アクチュエータ用コイルと、
前記多軸アクチュエータ用コイルの内周に配置されるシャフトと、
を備え、
前記多軸アクチュエータ用コイルは、
前記シャフトを軸方向に移動させる磁界を発生させる直動コイル群と、
前記直動コイル群の内周または外周に配置されて前記シャフトを周方向に移動させる磁界を発生させる回転コイル群と、
を備え、
前記直動コイル群は、前記軸方向に並べられて配置された複数の直動コイルを有し、
各前記直動コイルは、前記周方向に延びており、
各前記直動コイルは、前記周方向の一端と他端とに位置する2つのコイル端を有し、
各前記直動コイルにおいて2つの前記コイル端が成す周方向の第1の角度は、前記回転コイル群の電気角周期と等しいか、または、前記回転コイル群の電気角周期の整数倍であ
り、
前記直動コイルは、前記周方向に延びながら前記軸方向に移動する螺旋状に巻き回されたマグネットワイヤであり、
前記回転コイル群は、前記軸方向と半径方向とに交互に延びながら前記周方向に移動する螺旋状に巻き回されるマグネットワイヤであり、
前記直動コイルの2つの前記コイル端は、前記マグネットワイヤの長さ方向の一端と他端とに位置しており、
前記第1の角度は、0度を超えることを特徴とする多軸アクチュエータ。
【請求項2】
筒状の多軸アクチュエータ用コイルと、
前記多軸アクチュエータ用コイルの内周に配置されるシャフトと、
を備え、
前記多軸アクチュエータ用コイルは、
可撓性を有し、前記シャフトの周方向に巻き回されたプリント基板と、
前記プリント基板にプリントされて、前記シャフトを軸方向に移動させる磁界を発生させる直動コイル群と、
前記プリント基板にプリントされて、前記直動コイル群の内周または外周に配置されて前記シャフトを前記周方向に移動させる磁界を発生させる回転コイル群と、
を備え、
前記直動コイル群は、複数の直動コイルのそれぞれである複数の第1のコイルパターンを有し、
各前記第1のコイルパターンは、前記周方向に直線状に延びる複数の第1の長辺部と、隣り合う2つの前記第1の長辺部を繋ぐ複数の第1の短辺部と、を含み、
各前記第1のコイルパターンの各前記第1の長辺部は、互いに平行に延びており、
各前記第1の長辺部の長さ方向の一端と他端とが成す周方向の第1の角度は、前記回転コイル群の電気角周期と等しいか、または、前記回転コイル群の電気角周期の整数倍であることを特徴とする多軸アクチュエータ。
【請求項3】
前記直動コイルの巻回角度をA、前記直動コイルの巻数をT、前記第1の角度をθ1とし、前記巻回角度Aを下記式で表したとき、
A=360度×T+θ1
各前記直動コイルの前記巻回角度Aが同じ角度であることを特徴とする請求項1
または2に記載の多軸アクチュエータ。
【請求項4】
前記直動コイル群および前記回転コイル群は、多相コイルであり、
前記回転コイル群と半径方向で対面する前記直動コイルの数は各相で一致しており、かつ、各相の前記直動コイルの数は偶数であり、
前記回転コイル群は、前記軸方向に直線状に延びる長辺部を含み、
前記直動コイル群の前記軸方向の長さは、前記長辺部の前記軸方向の長さよりも短いことを特徴とする請求項1または2に記載の多軸アクチュエータ。
【請求項5】
半径方向において前記多軸アクチュエータ用コイルと対面するように前記多軸アクチュエータ用コイルの内周または外周に配置されるとともに、前記シャフトの外周に配置される磁石をさらに備え、
前記磁石は、
第1の中心を有する複数の第1の磁石と、
前記第1の磁石に隣接して配置されて、前記第1の中心とは前記軸方向および前記周方向にずれる第2の中心を有する複数の第2の磁石と、を含み、
前記回転コイル群は、前記軸方向に直線状に延びる長辺部を含み、
隣接する前記第1の磁石の前記第1の中心と前記第2の磁石の前記第2の中心との前記軸方向に沿う距離を極間距離としたとき、前記長辺部の前記軸方向の長さは、前記極間距離の2m倍と同一の長さであり、
前記mは、自然数であり、
前記直動コイル群の前記軸方向の長さは、前記長辺部の前記軸方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項1または2に記載の多軸アクチュエータ。
【請求項6】
前記第1の角度は、0度を超えることを特徴とする請求項
2に記載の多軸アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多軸アクチュエータ用コイルを備える多軸アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体の製造装置、小型ロボットなどで、可動子を複数方向に移動させる多軸アクチュエータが用いられている。多軸アクチュエータには、可動子を複数方向に移動させるための磁界を発生させる多軸アクチュエータ用コイルが搭載されている。例えば、特許文献1には、軸方向に並べられて配置されたZ軸コイルを有する直動コイル群と、直動コイル群の外周に並べられて配置されたθ軸コイルを有する回転コイル群とを備える多軸アクチュエータ用コイルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、異なる2つのコイル群が半径方向に並んで配置されていると、2つのコイル群のうち一方に通電した際に発生する磁束が他方のコイル群に干渉する相互干渉が発生する。これにより、意図せぬ誘導電流が生じ、多軸アクチュエータの誤作動を招くという問題がある。特に、回転コイル群から発生した磁束が直動コイル群に干渉する場合に、前記した問題が顕著になる。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、回転コイル群から発生した磁束が直動コイル群に干渉することを抑制できる多軸アクチュエータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる多軸アクチュエータは、筒状の多軸アクチュエータ用コイルと、多軸アクチュエータ用コイルの内周に配置されるシャフトと、を備えている。多軸アクチュエータ用コイルは、シャフトを軸方向に移動させる磁界を発生させる直動コイル群と、直動コイル群の内周または外周に配置されてシャフトを周方向に移動させる磁界を発生させる回転コイル群と、を備えている。直動コイル群は、軸方向に並べられて配置された複数の直動コイルを有している。各直動コイルは、周方向に延びている。各直動コイルは、周方向の一端と他端とに位置する2つのコイル端を有している。各直動コイルにおいて2つのコイル端が成す周方向の第1の角度は、回転コイル群の電気角周期と等しいか、または、回転コイル群の電気角周期の整数倍である。直動コイルは、周方向に延びながら軸方向に移動する螺旋状に巻き回されたマグネットワイヤである。回転コイル群は、軸方向と半径方向とに交互に延びながら周方向に移動する螺旋状に巻き回されるマグネットワイヤである。直動コイルの2つのコイル端は、マグネットワイヤの長さ方向の一端と他端とに位置している。第1の角度は、0度を超える。
【発明の効果】
【0007】
本開示にかかる多軸アクチュエータは、回転コイル群から発生した磁束が直動コイル群に干渉することを抑制できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1にかかる多軸アクチュエータを示した斜視図
【
図3】
図1に示されたIII-III線に沿った断面図
【
図4】実施の形態1にかかる多軸アクチュエータを一部破断した斜視図
【
図5】実施の形態1にかかる直動コイルを示した斜視図
【
図6】実施の形態1にかかる直動コイルを軸方向に沿って見たときの図
【
図7】実施の形態1にかかる回転コイルを示した正面図
【
図8】実施の形態1にかかる磁石を一部破断した斜視図
【
図9】実施の形態1にかかる磁石を軸方向に沿って見たときの図
【
図10】実施の形態2にかかる多軸アクチュエータを模式的に示した側面図
【
図11】実施の形態3にかかる多軸アクチュエータを模式的に示した側面図
【
図12】実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイルを示した斜視図
【
図13】実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイルを軸方向に沿って見たときの図
【
図14】実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第1のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板の表面を示した図
【
図15】実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第1のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板の裏面を表面から透かして見たときの図
【
図16】実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第2のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板の表面を示した図
【
図17】実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第2のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板の裏面を表面から透かして見たときの図
【
図18】実施の形態4の変形例にかかる多軸アクチュエータ用コイルを示した斜視図
【
図19】実施の形態4の変形例にかかる多軸アクチュエータ用コイルを軸方向に沿って見たときの図
【
図20】実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第1のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板の表面を示した図
【
図21】実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第1のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板の裏面を表面から透かして見たときの図
【
図22】実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第2のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板の表面を示した図
【
図23】実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第2のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板の裏面を表面から透かして見たときの図
【
図24】実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイルを示した斜視図
【
図25】実施の形態6にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第1のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板の表面を示した図
【
図26】実施の形態6にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第1のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板の裏面を表面から透かして見たときの図
【
図27】実施の形態6にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第2のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板の表面を示した図
【
図28】実施の形態6にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第2のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板の裏面を表面から透かして見たときの図
【
図29】実施の形態7にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第2のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板の表面を示した図
【
図30】実施の形態7にかかる多軸アクチュエータ用コイルの第1のプリント基板を巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板の表面を示した図
【
図31】実施の形態7にかかる多軸アクチュエータ用コイルを軸方向に沿って見たときの図
【
図32】実施の形態8にかかる多軸アクチュエータを示した斜視図
【
図33】
図32に示されたXXXIII-XXXIII線に沿った断面図
【
図34】
図32に示されたXXXIV-XXXIV線に沿った断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施の形態にかかる多軸アクチュエータを図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
はじめに、
図1から
図3を参照して、多軸アクチュエータ100について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる多軸アクチュエータ100を示した斜視図である。
図2は、
図1に示されたII-II線に沿った断面図である。
図3は、
図1に示されたIII-III線に沿った断面図である。
図1および
図2に示すように、多軸アクチュエータ100は、ハウジング6と、ロータコア7と、磁石8と、多軸アクチュエータ用コイル1と、ステータコア9と、シャフト10とを備えている。
【0011】
ロータコア7およびステータコア9は、いずれも中心軸Cを有する円筒形状に形成されている。以下、多軸アクチュエータ100の各構成要素について方向を説明するときには、中心軸Cと平行な方向を軸方向、中心軸Cと直交する方向を半径方向、中心軸Cを中心とする回転方向を周方向とする。多軸アクチュエータ100は、ステータコア9の内周側にロータコア7が配置されるインナーロータ型の多軸アクチュエータである。
【0012】
ハウジング6は、ロータコア7、磁石8、多軸アクチュエータ用コイル1、ステータコア9およびシャフト10を収容する部材である。ハウジング6の形状は、外周面が角丸正方形で内周面が円形の筒状である。
図3に示すように、ハウジング6は、軸方向の両端部が開口する筒状のフレーム6aと、フレーム6aの軸方向の両端部の開口部に配置される2つのブラケット6bとを有している。2つのブラケット6bのそれぞれには、シャフト10が挿入される挿入孔6cが形成されている。各ブラケット6bの挿入孔6cの内周面には、軸受11が1つずつ配置されている。軸受11は、シャフト10を回転および直動可能に支持する部材である。シャフト10は、2つの軸受11により回転および直動可能に支持されている。
図3の紙面右側のブラケット6bには、ハウジング6の外部にシャフト10を突出させるための貫通孔6dが形成されている。
【0013】
図2に示すように、ステータコア9は、フレーム6aの内周に配置されている。ステータコア9は、フレーム6aの内周に嵌め込まれている。ステータコア9には、複数方向に磁路が形成される。そのため、ステータコア9の材料には、例えば、圧粉磁心、バルク材が使用されることが好ましい。
【0014】
多軸アクチュエータ用コイル1は、ステータコア9の内周に配置されている。多軸アクチュエータ用コイル1は、円筒形状に形成されている。多軸アクチュエータ用コイル1は、ロータコア7およびステータコア9の中心軸Cと同軸に配置されている。多軸アクチュエータ用コイル1は、直動コイル群2と、直動コイル群2の内周に配置される回転コイル群3とを備えている。直動コイル群2は、シャフト10を軸方向に移動させるための磁界を発生させる。直動コイル群2に電流を流すことにより磁界が発生し、この磁界によりシャフト10を軸方向に移動させる推力が発生して、シャフト10を軸方向に移動させることができる。回転コイル群3は、シャフト10を周方向に回転させるための磁界を発生させる。回転コイル群3に電流を流すことにより磁界が発生し、この磁界によりシャフト10を周方向に回転させるトルクが発生して、シャフト10を周方向に回転させることができる。多軸アクチュエータ用コイル1の詳細については後記する。
【0015】
磁石8は、多軸アクチュエータ用コイル1の内周に設けられている。磁石8は、多軸アクチュエータ用コイル1と空隙を介して配置されている。磁石8は、半径方向において多軸アクチュエータ用コイル1と対面する。
【0016】
ロータコア7は、磁石8の内周に配置されている。換言すると、磁石8は、ロータコア7の外周に取り付けられている。
【0017】
シャフト10は、ロータコア7の内周に配置されている。
図3に示すように、シャフト10は、中心軸Cに沿って延びている。シャフト10は、中心軸Cと同軸に配置されている。シャフト10の軸方向の一端部は、
図3の紙面右側の一方のブラケット6bの挿入孔6cおよび貫通孔6dを通じてハウジング6の外部に突出している。シャフト10の軸方向の他端部は、
図3の紙面左側の他方のブラケット6bの挿入孔6cを通じてハウジング6の外部に突出している。シャフト10は、複数方向に移動可能である。本実施の形態では、シャフト10は、周方向と軸方向とに移動することができる。多軸アクチュエータ100は、本実施の形態ではムービングマグネット型の多軸アクチュエータである。ロータコア7と磁石8とシャフト10とで可動子が構成され、多軸アクチュエータ用コイル1とステータコア9とフレーム6aとで固定子が構成される。ロータコア7と磁石8とは、シャフト10と共に、周方向と軸方向とに移動する。
【0018】
図3の紙面右側の一方のブラケット6bの内部には、第1の位置検出器12および第2の位置検出器13が配置されている。第1の位置検出器12は、シャフト10の周方向の角度を検出するための機器である。第1の位置検出器12は、複数の磁極または刻線を有する第1のスケール12aと、第1のスケール12aからシャフト10の回転角度を検出する第1のセンサ12bとを有している。第1のスケール12aは、シャフト10に取り付けられている。第1のセンサ12bは、一方のブラケット6bに取り付けられている。第2の位置検出器13は、シャフト10の軸方向の位置を検出するための機器である。第2の位置検出器13は、複数の磁極または刻線を有する第2のスケール13aと、第2のスケール13aからシャフト10の軸方向の位置を検出する第2のセンサ13bとを有している。第2のスケール13aは、シャフト10に取り付けられている。第2のセンサ13bは、一方のブラケット6bに取り付けられている。
【0019】
次に、
図4から
図9を参照して、磁石8、シャフト10および多軸アクチュエータ用コイル1の詳細について説明する。
図4は、実施の形態1にかかる多軸アクチュエータ100を一部破断した斜視図である。
図5は、実施の形態1にかかる直動コイル2aを示した斜視図である。
図6は、実施の形態1にかかる直動コイル2aを軸方向に沿って見たときの図である。
図7は、実施の形態1にかかる回転コイル3aを示した正面図である。
図8は、実施の形態1にかかる磁石8を一部破断した斜視図である。
図9は、実施の形態1にかかる磁石8を軸方向に沿って見たときの図である。なお、
図4では、多軸アクチュエータ100のうち多軸アクチュエータ用コイル1と磁石8とシャフト10のみを図示している。
図5では、1つの直動コイル2aのみを図示している。
【0020】
図4に示すように、多軸アクチュエータ用コイル1は、可動子を軸方向に移動させる磁界を発生させる直動コイル群2と、直動コイル群2の内周に配置されて可動子を周方向に移動させる磁界を発生させる回転コイル群3とを備えている。以下では、直動コイル群2および回転コイル群3が3相コイルである場合を例にして説明する。
【0021】
直動コイル群2は、軸方向に並べられて配置された複数の直動コイル2aを有している。
図4では、2つの直動コイル2aが図示されているが、実際には3個以上の直動コイル2aが軸方向に並べられて配置される。各直動コイル2aは、周方向に延びている。各直動コイル2aは、周方向に延びながら軸方向に移動する螺旋状に巻き回された1本のマグネットワイヤである。各直動コイル2aの形状は、本実施の形態では半径方向に重ならない1層の円筒形状であるが、半径方向に2層以上に重なる円筒形状でもよい。
【0022】
各直動コイル2aは、周方向の一端と他端とに位置する2つのコイル端2b,2cを有している。
図5に示すように、直動コイル2aのコイル端2b,2cは、マグネットワイヤの長さ方向の一端と他端とに位置する。2つのコイル端2b,2cは、半径方向の外側に向かって突出している。2つのコイル端2b,2cのうちいずれか一方は、巻き始まり端部である。2つのコイル端2b,2cのうちいずれか他方は、巻き終わり端部である。2つのコイル端2b,2cのうちいずれか一方は、図示しない電力供給部の電源線が接続される端子となる。2つのコイル端2b,2cのうちいずれか他方は、各相の直動コイル2aと電気的に接続される接続部となる。接続部は、例えば、中性点となってもよいし、デルタ結線となってもよい。
【0023】
図6に示すように、各直動コイル2aにおいて2つのコイル端2b,2cが成す周方向の第1の角度θ1は、
図4に示される回転コイル群3の電気角周期と等しいか、または、回転コイル群3の電気角周期の整数倍である。第1の角度θ1は、直動コイル2aの軸中心2dを基点とした2つのコイル端2b,2cが成す周方向の角度である。第1の角度θ1は、0度でもよいが、0度を超えることが好ましい。本実施の形態では、第1の角度θ1が0度を超える場合を例示している。第1の角度θ1が0度を超える場合には、同一の直動コイル2aにおいて、2つのコイル端2b,2cの周方向における位置がずれている。一方、第1の角度θ1が0度である場合には、同一の直動コイル2aにおいて、2つのコイル端2b,2cの周方向における位置が一致する。
【0024】
図4に示すように、異なる直動コイル2aにおいては、コイル端2bの周方向における位置が一致していてもよいし、コイル端2bの周方向における位置がずれていてもよい。異なる直動コイル2aにおいては、コイル端2cの周方向における位置が一致していてもよいし、コイル端2cの周方向における位置がずれていてもよい。軸方向に隣接する一方の直動コイル2aのコイル端2bと隣接する他方の直動コイル2aのコイル端2cとの周方向における位置は、ずれていてもよいし、一致していてもよい。直動コイル2aの巻回角度をA、直動コイル2aの巻数をT、第1の角度をθ1とし、巻回角度Aを下記式(1)で表したとき、各直動コイル2aの巻回角度Aが同じ角度であることが好ましい。
A=360度×T+θ1・・・(1)
【0025】
回転コイル群3は、軸方向と半径方向とに交互に延びながら周方向に移動する螺旋状に巻き回される1本のマグネットワイヤである。回転コイル群3は、
図7に示される六角形のループである回転コイル3aを複数有している。複数の回転コイル3aは、周方向に連続して形成される。各回転コイル3aは、軸方向に直線状に延びる長辺部3bと、半径方向に延びる短辺部3cとを含んでいる。長辺部3bと短辺部3cとは、交互に配置されている。長辺部3bは、可動子を回転させるトルクの発生に寄与する部分である。短辺部3cは、可動子を回転させるトルクの発生に寄与しにくい部分である。短辺部3cは、隣り合う2つの長辺部3bを繋ぐ役割を果たしている。短辺部3cの形状は、ループの外周に向かって凸となる先鋭状である。
【0026】
図4に示すように、磁石8およびシャフト10は、回転コイル3aの内周に配置されている。磁石8は、シャフト10の外周面に沿って配置されている。
図8に示すように、半径方向に沿って見たときの磁石8の形状は、本実施の形態では菱形であるが、正方形などでもよい。菱形の対角線の一方が軸方向と一致するように、かつ、菱形の対角線の他方が周方向と一致するように、複数の磁石8が隙間無く配置されている。磁石8は、N極となる第1の磁石8aと、S極となる第2の磁石8bとを含んでいる。
図8では、第1の磁石8aと第2の磁石8bとを区別するために、第1の磁石8aのみにドットハッチングを付している。第1の磁石8aと第2の磁石8bとは、互いの辺同士を接触させて配置されている。第1の磁石8aが軸方向に並べられた列と第2の磁石8bが軸方向に並べられた列とが周方向に交互に配置されている。第1の磁石8aが周方向に並べられた列と第2の磁石8bが周方向に並べられた列とが軸方向に交互に配置されている。第1の磁石8aの配向は、半径方向の内側から外側に向かう方向である。第2の磁石8bの配向は、半径方向の外側から内側に向かう方向である。
【0027】
第1の磁石8aは、第1の中心8cを有している。第1の中心8cは、第1の磁石8aを半径方向に沿って見たときの第1の磁石8aの中心である。第1の磁石8aの形状が菱形の場合には、2本の対角線が交わる箇所が第1の中心8cである。第2の磁石8bは、第2の中心8dを有している。第2の中心8dは、第2の磁石8bを半径方向に沿って見たときの第2の磁石8bの中心である。第2の磁石8bの形状が菱形の場合には、2本の対角線が交わる箇所が第2の中心8dである。第1の中心8cと第2の中心8dとは、軸方向および周方向にずれている。
【0028】
ここでは、隣接する第1の磁石8aの第1の中心8cと第2の磁石8bの第2の中心8dとの軸方向に沿う距離を、極間距離P5とする。また、
図9に示すように、隣接する第1の磁石8aと第2の磁石8bとにおいて第1の中心8cと第2の中心8dとが成す周方向の角度を、第2の角度θ2とする。第2の角度θ2は、円筒形状に並べられて配置された磁石8の軸中心8eを基点として、隣接する第1の磁石8aの第1の中心8cと第2の磁石8bの第2の中心8dとが成す周方向の角度である。
図6に示される第1の角度θ1は、
図9に示される第2の角度θ2の2n倍と同一の角度である。nは、0、または、自然数である。なお、本明細書において同一の角度とは、完全に同一の角度である場合の他、マグネットワイヤの曲げ性能を考慮して厳密には同一の角度ではなくマグネットワイヤの線径の2倍から3倍までずれた角度を含む意味である。図示した磁石8の配列は一例であり、極間距離P5と第2の角度θ2とを有する磁石8の配列であれば、適宜変更してもよい。
【0029】
次に、本実施の形態にかかる多軸アクチュエータ100の効果について説明する。
【0030】
本実施の形態では、
図4に示すように、多軸アクチュエータ用コイル1は、可動子を軸方向に移動させる磁界を発生させる直動コイル群2と、直動コイル群2の内周に配置されて可動子を周方向に移動させる磁界を発生させる回転コイル群3とを備えている。また、本実施の形態では、
図6に示すように、各直動コイル2aにおいて2つのコイル端2b,2cが成す周方向の第1の角度θ1は、回転コイル群3の電気角周期と等しいか、または、回転コイル群3の電気角周期の整数倍である。これらの構成により、
図4に示される回転コイル群3に通電した際に直動コイル群2に鎖交する磁束、すなわち直動側干渉磁束が回転コイル群3の各相で平衡となる。そのため、回転コイル群3の各相から発生する直動側干渉磁束の合計は理論上0となり、回転コイル群3から発生した直動側干渉磁束が直動コイル群2に干渉することを抑制できる。これにより、意図せぬ誘導電流の発生を抑制して、多軸アクチュエータ100の誤作動を抑制することができる。
【0031】
本実施の形態では、
図6に示すように、第1の角度θ1は、0度を超える。この構成により、同一の直動コイル2aにおいて、2つのコイル端2b,2cの周方向における位置がずれる。そのため、2つのコイル端2b,2cのうちいずれか一方に電源線を接続する結線作業と、2つのコイル端2b,2cのうちいずれか他方を中性点またはデルタ結線となるように接続する結線作業とを行いやすくなる。
【0032】
図4および
図6に示される直動コイル2aの巻回角度をA、直動コイル2aの巻数をT、第1の角度をθ1とし、巻回角度Aを前記した式(1)で表したとき、各直動コイル2aの巻回角度Aが同じ角度であることが好ましい。このようにすると、各直動コイル2aの巻数Tが厳密に一致するため、直動コイル2aの長さが各相で同一になる。これにより、各相の巻線の起磁力が一致することから、多軸アクチュエータ100の運転時の脈動、すなわち振動が抑制されたり、各相の巻線の抵抗値が一致することから、デルタ結線の採用時に循環電流が抑制されたりするなどの効果を期待できる。
【0033】
本実施の形態では、
図4に示すように、隣接する一方の直動コイル2aのコイル端2bと隣接する他方の直動コイル2aのコイル端2cとの周方向における位置は、ずれている。この構成により、隣接する一方の直動コイル2aのコイル端2bと隣接する他方の直動コイル2aのコイル端2cとが互いに干渉しない。そのため、隣接する直動コイル2aの間の隙間を抑えながら直動コイル2aを軸方向に積み重ねられるとともに、コイル端2b,2cへの結線作業を行いやすくなる。
【0034】
次に、実施の形態1の変形例について説明する。
【0035】
本実施の形態では、直動コイル群2および回転コイル群3が3相コイルである場合を例示しているが、これに限定されない。直動コイル群2および回転コイル群3は、4相以上の多相コイルであってもよい。
【0036】
本実施の形態では、
図4に示すように、多軸アクチュエータ100は、磁石8を備えたが、磁石8を備えなくてもよい。例えば、多軸アクチュエータ100は、鉄心のリラクタンストルクのみで回転するSynRM(Synchronous Reluctance Motor)に相当する構成でもよい。
【0037】
本実施の形態では、
図2および
図3に示すように、多軸アクチュエータ100は、ステータコア9を備えたが、ステータコア9を備えなくてもよい。例えば、多軸アクチュエータ100は、コイル付近に鉄心を有さないコアレス構造に相当する構成でもよい。
【0038】
本実施の形態では、
図2および
図3に示すように、多軸アクチュエータ100は、フレーム6aを備えたが、フレーム6aを備えなくてもよい。例えば、多軸アクチュエータ100は、ステータコア9がフレームの役割を兼ねるフレームレス構造に相当する構成でもよい。
【0039】
本実施の形態では、
図8に示される第1の磁石8aがN極となり、第2の磁石8bがS極となっているが、第1の磁石8aがS極となり、第2の磁石8bがN極となってもよい。
【0040】
実施の形態2.
次に、
図10を参照して、実施の形態2にかかる多軸アクチュエータ100Aについて説明する。
図10は、実施の形態2にかかる多軸アクチュエータ100Aを模式的に示した側面図である。本実施の形態では、回転コイル群3と半径方向で対面する直動コイル2aの数が各相で一致しており、かつ、各相の直動コイル2aの数が偶数である点、および、多軸アクチュエータ用コイル1Aにおいて直動コイル群2の軸方向の長さP1が回転コイル群3の長辺部3bの軸方向の長さP2よりも短い点が、前記した実施の形態1と相違する。なお、実施の形態2では、前記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
直動コイル群2の軸方向の長さP1は、回転コイル群3の長辺部3bの軸方向の長さP2よりも短い。直動コイル群2の軸方向の長さP1は、直動コイル群2の軸方向の一端から他端までの軸方向に沿う長さである。回転コイル群3の長辺部3bの軸方向の長さP2は、回転コイル群3の長辺部3bの軸方向の一端から他端までの軸方向に沿う長さである。回転コイル群3と半径方向で対面する直動コイル2aの数は各相で一致しており、かつ、各相の直動コイル2aの数は偶数である。
図12には、一例として、直動コイル群2が3相コイルであり、各相の直動コイル2aの数が2個の場合を図示している。
【0042】
次に、本実施の形態にかかる多軸アクチュエータ100Aの効果について説明する。
【0043】
本実施の形態では、前記した実施の形態1と同一の効果を奏することができる。本実施の形態では、回転コイル群3と半径方向で対面する直動コイル2aの数が各相で一致しており、かつ、各相の直動コイル2aの数が偶数である。また、本実施の形態では、直動コイル群2の軸方向の長さP1が回転コイル群3の長辺部3bの軸方向の長さP2よりも短い。これらの構成により、直動コイル群2に通電した際に回転コイル群3に鎖交する磁束、すなわち回転側干渉磁束が直動コイル群2の各相で平衡となる。そのため、直動コイル群2の各相から発生する回転側干渉磁束の合計は理論上0となり、直動コイル群2から発生した回転側干渉磁束が回転コイル群3に干渉することを抑制できる。つまり、本実施の形態では、回転コイル群3から発生した磁束が直動コイル群2に干渉すること、および、直動コイル群2から発生した磁束が回転コイル群3に干渉することの両方を抑制できる。これにより、意図せぬ誘導電流の発生をより一層抑制して、多軸アクチュエータ100Aの誤作動をより一層抑制することができる。
【0044】
実施の形態3.
次に、
図11を参照して、実施の形態3にかかる多軸アクチュエータ100Bについて説明する。
図11は、実施の形態3にかかる多軸アクチュエータ100Bを模式的に示した側面図である。本実施の形態では、回転コイル群3の長辺部3bの軸方向の長さP2が極間距離P5の2m倍と同一の長さである点、および、多軸アクチュエータ用コイル1Bにおいて直動コイル群2の軸方向の長さP1が回転コイル群3の長辺部3bの軸方向の長さP2よりも長い点が、前記した実施の形態1と相違する。なお、実施の形態3では、前記した実施の形態1,2と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
直動コイル群2の軸方向の長さP1は、回転コイル群3の長辺部3bの軸方向の長さP2よりも長い。長辺部3bの軸方向の長さP2は、
図8に示される極間距離P5の2m倍と同一の長さである。mは、自然数である。なお、本明細書において同一の長さとは、完全に同一の長さである場合の他、マグネットワイヤの曲げ性能を考慮して厳密には同一の長さではなくマグネットワイヤの線径の2倍から3倍までずれた長さを含む意味である。
【0046】
次に、本実施の形態にかかる多軸アクチュエータ100Bの効果について説明する。
【0047】
本実施の形態では、前記した実施の形態1と同一の効果を奏することができる。本実施の形態では、長辺部3bの軸方向の長さP2が極間距離P5の2m倍と同一の長さである。また、本実施の形態では、直動コイル群2の軸方向の長さP1が長辺部3bの軸方向の長さP2よりも長い。これらの構成により、直動コイル群2に通電した際に回転コイル群3に鎖交する磁束、すなわち回転側干渉磁束が直動コイル群2の各相で平衡となる。そのため、直動コイル群2の各相から発生する回転側干渉磁束の合計は理論上0となり、直動コイル群2から発生した回転側干渉磁束が回転コイル群3に干渉することを抑制できる。つまり、本実施の形態では、回転コイル群3から発生した磁束が直動コイル群2に干渉すること、および、直動コイル群2から発生した磁束が回転コイル群3に干渉することの両方を抑制できる。これにより、意図せぬ誘導電流の発生をより一層抑制して、多軸アクチュエータ100Bの誤作動をより一層抑制することができる。
【0048】
実施の形態4.
次に、
図12から
図17を参照して、実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ100Cについて説明する。
図12は、実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Cを示した斜視図である。
図13は、実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Cを軸方向に沿って見たときの図である。
図14は、実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Cの第1のプリント基板4Aを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板4Aの表面41を示した図である。
図15は、実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Cの第1のプリント基板4Aを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板4Aの裏面42を表面41から透かして見たときの図である。
図16は、実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Cの第2のプリント基板4Bを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板4Bの表面41を示した図である。
図17は、実施の形態4にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Cの第2のプリント基板4Bを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板4Bの裏面42を表面41から透かして見たときの図である。本実施の形態では、多軸アクチュエータ用コイル1Cがコイル基板である点が、前記した実施の形態1と相違する。なお、実施の形態4では、前記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
図12に示すように、多軸アクチュエータ用コイル1Cは、可撓性を有し周方向に巻き回されたプリント基板4と、プリント基板4にプリントされた直動コイル群5Aと回転コイル群5Bとを備えている。なお、
図12では、回転コイル群5Bが明確に図示されていないが、直動コイル群5Aの内周に配置されている。また、
図12では、多軸アクチュエータ用コイル1Cの内周に配置される磁石8およびシャフト10の図示を省略している。プリント基板4は、
図13に示される1つの軸57を中心にして巻き回されている。軸57は、
図2に示される中心軸Cと平行に延びる仮想軸である。プリント基板4の巻回方向は、中心軸Cを中心とする回転方向である周方向と一致する。
【0050】
図12に示すように、プリント基板4は、自由に変形させることが可能なフレキシブル基板である。プリント基板4は、本実施の形態では周方向に分割されている。
図14から
図17に示すように、プリント基板4は、2枚に分割されている。以下の説明において、2枚のプリント基板4を区別する場合には、
図14および
図15に示される一方のプリント基板4を第1のプリント基板4Aと称し、
図16および
図17に示される他方のプリント基板4を第2のプリント基板4Bと称する。
図14および
図15において第1のプリント基板4Aは、灰色領域で図示されている。
図16および
図17において第2のプリント基板4Bは、斜線ハッチングで図示されている。
図18以降で第1のプリント基板4Aと第2のプリント基板4Bとが図示される場合にも、
図14から
図17と同じ方法で両者を区別する。
図12に示すように、プリント基板4は、表面41と、表面41とは反対を向く裏面42とを有している。プリント基板4は、半径方向に2層以上形成されていることが好ましい。
図14から
図17に示すように、プリント基板4は、周方向の一端43と他端44とを有している。なお、
図15および
図17では、裏面42が見えないが、説明の便宜上、表面41と裏面42の符号を併記する。
【0051】
図14および
図15においてドットハッチングで図示された箇所が、直動コイル群5Aである。
図16および
図17において格子ハッチングで図示された箇所が、回転コイル群5Bである。以下の説明において、直動コイル群5Aと回転コイル群5Bとを区別せずにコイル群5と呼ぶ場合もある。
図18以降で直動コイル群5Aと回転コイル群5Bとが図示される場合にも、
図14から
図17と同じ方法で両者を区別する。
【0052】
図14から
図17に示すように、各コイル群5は、複数のコイルパターン51を有している。各コイルパターン51は、直線状に延びる複数の長辺部51aと、隣り合う2つの長辺部51aを繋ぐ複数の短辺部51bとを含んでいる。コイルパターン51は、プリント基板4の銅箔層をエッチングすることにより形成される導電体である。以下の説明において、直動コイル群5Aと回転コイル群5Bとのコイルパターン51を区別する場合には、直動コイル群5Aのコイルパターン51を第1のコイルパターン52と称し、回転コイル群5Bのコイルパターン51を第2のコイルパターン53と称する。
図14から
図17では、各コイル群5が3相コイルである場合を例示している。
図14から
図17では、ハッチングの密度を変えることにより、各相のコイルパターン51を区別している。
【0053】
図14および
図15に示すように、第1のコイルパターン52の数は、本実施の形態では6個である。第1のコイルパターン52の数は、本実施の形態では第1のプリント基板4Aの表面41と裏面42とに3個ずつである。表面41の3個の第1のコイルパターン52は、軸方向に並べられて配置されている。裏面42の3個の第1のコイルパターン52は、軸方向に並べられて配置されている。複数の第1のコイルパターン52は、軸方向に並べられて配置された複数の直動コイルである。ここでは、同相の第1のコイルパターン52が存在する軸方向のエリアを、第1のプリント基板4Aの表面41および裏面42の区別なく数えた数を、直動コイルのコイル数とする。また、同相の第1のコイルパターン52が存在する軸方向のエリアの区分けは、後記する第1の長辺部52aを基準にして行い、第1の長辺部52a以外の部分を考慮しない。したがって、第1のプリント基板4Aの表面41から裏面42に向かう方向に沿って見たときに、表面41において同相の第1のコイルパターン52の第1の長辺部52aが存在する軸方向のエリアと裏面42において同相の第1のコイルパターン52の第1の長辺部52aが存在する軸方向のエリアとの軸方向位置が同じである場合には、1個の直動コイルとして数える。一方、第1のプリント基板4Aの表面41から裏面42に向かう方向に沿って見たときに、表面41において同相の第1のコイルパターン52の第1の長辺部52aが存在する軸方向のエリアと裏面42において同相の第1のコイルパターン52の第1の長辺部52aが存在する軸方向のエリアとの軸方向位置が異なる場合には、異なる直動コイルとして数える。例えば、
図14および
図15においては、表面41において同相の第1のコイルパターン52の第1の長辺部52aが存在する軸方向のエリアと裏面42において同相の第1のコイルパターン52の第1の長辺部52aが存在する軸方向のエリアとが3個ずつであり、6個の軸方向のエリアの軸方向位置が互いに異なっている。そのため、直動コイルのコイル数は、6個と数える。各第1のコイルパターン52は、概ね同一形状である。各第1のコイルパターン52は、同一形状のループが軸方向に中心を一定間隔でずらしながら巻かれた分布巻きで第1のプリント基板4Aにプリントされている。第1のプリント基板4Aの表面41と裏面42とで同一位置にある2個の端部A1・・・A5,B1・・・B5,C1・・・C5は、スルーホール54を介して電気的に接続されている。
【0054】
第1のコイルパターン52は、第1のプリント基板4Aの表面41と裏面42とに交互に配置されている。第1のプリント基板4Aの表面41の第1のコイルパターン52が表面41で半周延びた後、スルーホール54を介して第1のプリント基板4Aの裏面42に渡って、裏面42の第1のコイルパターン52が裏面42で半周延びる。6個の第1のコイルパターン52のそれぞれの巻数は、第1のプリント基板4Aを巻き回す前の第1のコイルパターン52のそれぞれの巻数と半径方向に積み重なる第1のプリント基板4Aの積層数との積となる。6個の第1のコイルパターン52のそれぞれの巻数は、任意に決めてよい。第1のプリント基板4Aの表面41には、各相の第1のコイルパターン52の他端を電気的に接続する接続部55が設けられている。接続部55は、軸方向に延びている。
【0055】
第1のコイルパターン52は、周方向に延びる複数の第1の長辺部52aと、複数の第1の短辺部52bとを含んでいる。第1の長辺部52aと第1の短辺部52bとは、交互に配置されている。第1の長辺部52aは、可動子を軸方向に移動させる推力の発生に寄与する部分である。第1の短辺部52bは、可動子を軸方向に移動させる推力の発生に寄与しにくい部分である。第1の短辺部52bは、表裏の2つの第1の長辺部52aを繋ぐ役割を果たしている。
図14に示される第1の短辺部52bは、第1の長辺部52aから離れるにつれて軸方向の一方に位置するように傾斜しながら延びている。
図15に示される第1の短辺部52bは、第1の長辺部52aから離れるにつれて軸方向の他方に位置するように傾斜しながら延びている。裏面42の第1のコイルパターン52の一端には、図示しない電力供給部の電源線が接続される端子52cが設けられている。各第1のコイルパターン52には、端子52cを介して、図示しない電力供給部から電力が供給される。端子52cは、第1のプリント基板4Aの軸方向の一端面よりも軸方向の外側に突出している。軸方向の外側とは、第1のプリント基板4Aの軸方向の中心から軸方向の端面に向かう方向を意味する。
【0056】
図14に示すように、各第1のコイルパターン52は、周方向の一端と他端とに位置する2つのコイル端51c,51dを有している。第1のコイルパターンのコイル端51c,51dは、第1のコイルパターン52の第1の長辺部52aの長さ方向の一端と他端とに位置する。
図13に示すように、2つのコイル端51c,51dが成す周方向の第1の角度θ1は、回転コイル群5Bの電気角周期と等しいか、または、回転コイル群5Bの電気角周期の整数倍である。第1の角度θ1は、プリント基板4を巻き回す中心となる軸57を基点とした2つのコイル端51c,51dが成す周方向の角度である。第1の角度θ1は、0度を超えることが好ましい。本実施の形態では、第1の角度θ1が0度を超える場合を例示している。第1の角度θ1が0度を超える場合には、同一の第1のコイルパターン52において、2つのコイル端51c,51dの周方向における位置がずれている。第1の角度θ1は、
図9に示される第2の角度θ2の2n倍と同一の角度である。
【0057】
図14に示すように、異なる第1のコイルパターン52においては、コイル端51cの周方向における位置が図示のように一致していてもよいし、コイル端51cの周方向における位置がずれていてもよい。異なる第1のコイルパターン52においては、コイル端51dの周方向における位置が図示のように一致していてもよいし、コイル端51dの周方向における位置がずれていてもよい。
図12に示すように、軸方向に隣接する一方の第1のコイルパターン52のコイル端51cと隣接する他方の第1のコイルパターン52のコイル端51dとの周方向における位置は、図示のようにずれていてもよいし、一致していてもよい。第1のコイルパターン52の巻回角度をA、第1のコイルパターン52の巻数をT、第1の角度をθ1とし、巻回角度Aを下記式(2)で表したとき、各第1のコイルパターン52の巻回角度Aが同じ角度であることが好ましい。
A=360度×T+θ1・・・(2)
【0058】
図16および
図17に示すように、第2のコイルパターン53の数は、本実施の形態では18個である。第2のコイルパターン53の数は、本実施の形態では第2のプリント基板4Bの表面41と裏面42とに9個ずつである。表面41の9個の第2のコイルパターン53は、周方向に並べられて配置されている。裏面42の9個の第2のコイルパターン53は、周方向に並べられて配置されている。複数の第2のコイルパターン53は、周方向に並べられて配置された複数の回転コイルである。ここでは、同相の第2のコイルパターン53が存在する周方向のエリアを、第2のプリント基板4Bの表面41および裏面42の区別なく数えた数を、回転コイルのコイル数とする。また、同相の第2のコイルパターン53が存在する周方向のエリアの区分けは、後記する第2の長辺部53aを基準にして行い、第2の長辺部53a以外の部分を考慮しない。したがって、第2のプリント基板4Bの表面41から裏面42に向かう方向に沿って見たときに、表面41において同相の第2のコイルパターン53の第2の長辺部53aが存在する周方向のエリアと裏面42において同相の第2のコイルパターン53の第2の長辺部53aが存在する周方向のエリアとの周方向位置が同じである場合には、1個の回転コイルとして数える。一方、第2のプリント基板4Bの表面41から裏面42に向かう方向に沿って見たときに、表面41において同相の第2のコイルパターン53の第2の長辺部53aが存在する周方向のエリアと裏面42において同相の第2のコイルパターン53の第2の長辺部53aが存在する周方向のエリアとの周方向位置が異なる場合には、異なる回転コイルとして数える。例えば、
図16および
図17においては、表面41において同相の第2のコイルパターン53の第2の長辺部53aが存在する周方向のエリアと裏面42において同相の第2のコイルパターン53の第2の長辺部53aが存在する周方向のエリアとが9個ずつであり、このうち6個の周方向のエリアの周方向位置が互いに異なっていて6個の周方向のエリアの周方向位置が同じである。そのため、回転コイルのコイル数は、12個と数える。各第2のコイルパターン53は、概ね同一形状である。各第2のコイルパターン53は、同一形状のループが周方向に中心を一定間隔でずらしながら巻かれた分布巻きで第2のプリント基板4Bにプリントされている。第2のプリント基板4Bの表面41と裏面42とで同一位置にある2個の端部D1・・・D5,E1・・・E5,F1・・・F5は、スルーホール54を介して電気的に接続されている。また、第2のプリント基板4Bの表面41と裏面42とで同一位置にある2個の端部G1・・・G5,H1・・・H5,I1・・・I5は、スルーホール54を介して電気的に接続されている。また、第2のプリント基板4Bの表面41と裏面42とで同一位置にある2個の端部J1・・・J5,K1・・・K5,L1・・・L5は、スルーホール54を介して電気的に接続されている。
【0059】
第2のコイルパターン53は、第2のプリント基板4Bの表面41と裏面42とに交互に配置されている。第2のプリント基板4Bの表面41の第2のコイルパターン53が表面41で半周延びた後、スルーホール54を介して第2のプリント基板4Bの裏面42に渡って、裏面42の第2のコイルパターン53が裏面42で半周延びる。18個の第2のコイルパターン53のそれぞれの巻数は、第2のプリント基板4Bを巻き回す前の第2のコイルパターン53のそれぞれの巻数と半径方向に積み重なる第2のプリント基板4Bの積層数との積となる。18個の第2のコイルパターン53のそれぞれの巻数は、任意に決めてよい。第2のプリント基板4Bの表面41には、各相の第2のコイルパターン53の他端を電気的に接続する接続部56が設けられている。接続部56は、周方向に延びている。接続部55,56は、例えば、中性点となってもよいし、デルタ結線となってもよい。
【0060】
第2のコイルパターン53は、軸方向に延びる複数の第2の長辺部53aと、複数の第2の短辺部53bとを含んでいる。第2の長辺部53aと第2の短辺部53bとは、交互に配置されている。第2の長辺部53aは、可動子を回転させるトルクの発生に寄与する部分である。第2の短辺部53bは、可動子を回転させるトルクの発生に寄与しにくい部分である。第2の短辺部53bは、表裏の2つの第2の長辺部53aを繋ぐ役割を果たしている。
図16に示される第2の短辺部53bは、第2の長辺部53aから離れるにつれて周方向の一方に位置するように傾斜しながら延びている。
図17に示される第2の短辺部53bは、第2の長辺部53aから離れるにつれて周方向の他方に位置するように傾斜しながら延びている。裏面42の第2のコイルパターン53の一端には、図示しない電力供給部の電源線が接続される端子53cが設けられている。各第2のコイルパターン53には、端子53cを介して、図示しない電力供給部から電力が供給される。端子53cは、第2のプリント基板4Bの軸方向の他端面よりも軸方向の外側に突出している。
【0061】
図14および
図15に示される各第1のコイルパターン52の第1の長辺部52aは、互いに平行に延びている。
図16および
図17に示される各第2のコイルパターン53の第2の長辺部53aは、互いに平行に延びている。
図14および
図15に示される各第1のコイルパターン52の第1の長辺部52aと
図16および
図17に示される各第2のコイルパターン53の第2の長辺部53aとは、互いに交差する方向に延びている。第1の長辺部52aと第2の長辺部53aとは、本実施の形態では互いに直交する方向に延びている。
【0062】
図12に示すように、各プリント基板4は、コイル群5が形成された表面41が外周に位置するようにかつ裏面42が内周に位置するように、右回りに巻き回されている。各プリント基板4は、コイル群5が形成された表面41が内周に位置するようにかつ裏面42が外周に位置するように、巻き回されてもよい。各プリント基板4は、図示しない治具の円筒面に沿って巻き回される。
図14および
図15に示される第1のプリント基板4Aの周方向の他端44が
図16および
図17に示される第2のプリント基板4Bの周方向の一端43に連続するように、第1のプリント基板4Aおよび第2のプリント基板4Bが連続して巻き回されている。これにより、
図12に示される円筒形状の多軸アクチュエータ用コイル1Cが成形される。多軸アクチュエータ用コイル1Cの外周面は、第1のプリント基板4Aの表面41となる。
【0063】
図14から
図17に示される第1のプリント基板4Aと第2のプリント基板4Bとは、接着剤、テープなどの固定手段により連結されてもよいし、連結されていなくもよい。後者の場合には、内周に位置する第2のプリント基板4Bを巻き回した後、第2のプリント基板4Bの周方向の一端43に連続するように、第1のプリント基板4Aを巻き回せばよい。内周に位置する第2のプリント基板4Bをガイドにして、2枚目の第1のプリント基板4Aを巻き回せるため、多軸アクチュエータ用コイル1Cを容易に成形することができる。
【0064】
直動コイル群5Aは、回転コイル群5Bの外周に配置される。すなわち、直動コイル群5Aと回転コイル群5Bとは、周方向で一致する位置に配置されている。換言すると、直動コイル群5Aと回転コイル群5Bとは、半径方向に並べられて配置されている。半径方向に並べられて配置される直動コイル群5Aと回転コイル群5Bとの間には、例えば、図示しない絶縁層が全周に亘って挟み込まれて配置されている。これにより、直動コイル群5Aと回転コイル群5Bとの短絡を防止できる。
【0065】
次に、本実施の形態にかかる多軸アクチュエータ100Cの効果について説明する。
【0066】
本実施の形態においても、前記した実施の形態1と同様に、回転コイル群5Bの各相から発生する直動側干渉磁束の合計は理論上0となり、回転コイル群5Bから発生した直動側干渉磁束が直動コイル群5Aに干渉することを抑制できる。
【0067】
本実施の形態では、
図12および
図13に示すように、多軸アクチュエータ用コイル1Cは、可撓性を有し1つの軸57を中心にして巻き回されたプリント基板4と、プリント基板4にプリントされた複数の直動コイル群5Aおよび回転コイル群5Bとを備えている。この構成により、プリント基板4の変形が容易であるため、プリントされた直動コイル群5Aおよび回転コイル群5Bも含めてプリント基板4を容易に変形させることができる。すなわち、本実施の形態では、直動コイル群5Aおよび回転コイル群5Bを容易かつ精度良く半径方向に並べて配置することができる。そのため、本実施の形態では、巻き崩れおよび巻線間の交錯が生じにくく、多軸アクチュエータ用コイル1Cの肥大化を抑制して、コイルスペースの肥大化を抑制することができる。したがって、多軸アクチュエータ用コイル1Cをスペース効率良く成形することができる。また、コイルスペースの肥大化を抑制できることにより、多軸アクチュエータ100Cの大型化および多軸アクチュエータ100Cの出力密度の低下を抑制することができる。
【0068】
次に、実施の形態4の変形例について説明する。
【0069】
本実施の形態では、
図13に示すように、プリント基板4が円筒形状に巻き回されているが、プリント基板4の軸57と直交する断面形状が多角形状の筒状となるようにプリント基板4が巻き回されてもよい。
【0070】
図14から
図17に示される第1のプリント基板4Aおよび第2のプリント基板4Bの巻き回し量は適宜変更してもよい。例えば、各プリント基板4が1周を超えて巻き回されてもよい。このようにすると、コイルパターン51の巻数がより多く必要な多軸アクチュエータ100Cに対応することができる。
【0071】
直動コイル群5Aおよび回転コイル群5Bのそれぞれのコイルパターン51の数は、図示の例に限定されることなく、適宜変更してもよい。また、
図14から
図17では、直動コイル群5Aおよび回転コイル群5Bのそれぞれが3相コイルである場合を例示しているが、これに限定されない。直動コイル群5Aおよび回転コイル群5Bのそれぞれは、4相以上のコイルであってもよい。また、本実施の形態では各コイルパターン51の分布巻きの一例として、重ね巻きを図示したが、これに限定されない。各コイルパターン51の分布巻きは、例えば、波巻きでもよい。
【0072】
図18は、実施の形態4の変形例にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Cを示した斜視図である。
図19は、実施の形態4の変形例にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Cを軸方向に沿って見たときの図である。
図18および
図19に示すように、同一の第1のコイルパターン52において、2つのコイル端51c,51dの周方向における位置が一致していてもよい。このような構成にすると、第1の角度θ1は0度になる。
【0073】
実施の形態5.
次に、
図20から
図24を参照して、実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ100Dについて説明する。
図20は、実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Dの第1のプリント基板4Aを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板4Aの表面41を示した図である。
図21は、実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Dの第1のプリント基板4Aを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板4Aの裏面42を表面41から透かして見たときの図である。
図22は、実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Dの第2のプリント基板4Bを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板4Bの表面41を示した図である。
図23は、実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Dの第2のプリント基板4Bを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板4Bの裏面42を表面41から透かして見たときの図である。
図24は、実施の形態5にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Dを示した斜視図である。本実施の形態では、回転コイル群5Bと半径方向で対面する直動コイルの数が各相で一致しており、かつ、各相の直動コイルの数が偶数である点、および、多軸アクチュエータ用コイル1Dにおいて直動コイル群5Aの軸方向の長さP3が回転コイル群5Bの第2の長辺部53aの軸方向の長さP4よりも短い点が、前記した実施の形態4と相違する。なお、実施の形態5では、前記した実施の形態4と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
図21および
図23では、裏面42が見えないが、説明の便宜上、表面41と裏面42の符号を併記する。
【0074】
図20および
図21に示すように、直動コイル群5Aの軸方向の長さP3は、直動コイル群5Aの軸方向の一端P31から他端P32までの軸方向に沿う長さである。具体的には、直動コイル群5Aの軸方向の長さP3は、軸方向の一方の端に位置する第1の長辺部52aから軸方向の他方の端に位置する第1の長辺部52aまでの軸方向に沿う長さである。
図22および
図23に示すように、第2の長辺部53aの軸方向の長さP4は、回転コイル群5Bの第2の長辺部53aの軸方向の一端から他端までの軸方向に沿う長さである。
図20および
図21においては、表面41の第1のコイルパターン52の第1の長辺部52aが存在する軸方向のエリアと裏面42の第1のコイルパターン52の第1の長辺部52aが存在する軸方向のエリアとが3個ずつであり、6個の軸方向のエリアの軸方向位置が互いに異なっている。そのため、直動コイルのコイル数は、6個である。回転コイル群5Bと半径方向で対面する直動コイルの数は各相で一致しており、かつ、各相の直動コイルの数は偶数である。
図24には、一例として、直動コイル群5Aが3相コイルであり、各相の直動コイルの数が2個の場合を図示している。
【0075】
次に、本実施の形態にかかる多軸アクチュエータ100Dの効果について説明する。
【0076】
本実施の形態では、前記した実施の形態4と同一の効果を奏することができる。本実施の形態では、
図20、
図21および
図24に示すように、回転コイル群5Bと半径方向で対面する直動コイルの数が各相で一致しており、かつ、各相の直動コイルの数が偶数である。また、本実施の形態では、
図24に示すように、直動コイル群5Aの軸方向の長さP3が回転コイル群5Bの第2の長辺部53aの軸方向の長さP4よりも短い。これらの構成により、直動コイル群5Aに通電した際に回転コイル群5Bに鎖交する磁束、すなわち回転側干渉磁束が直動コイル群5Aの各相で平衡となる。そのため、直動コイル群5Aの各相から発生する回転側干渉磁束の合計は理論上0となり、直動コイル群5Aから発生した回転側干渉磁束が回転コイル群5Bに干渉することを抑制できる。つまり、本実施の形態では、回転コイル群5Bから発生した磁束が直動コイル群5Aに干渉すること、および、直動コイル群5Aから発生した磁束が回転コイル群5Bに干渉することの両方を抑制できる。これにより、意図せぬ誘導電流の発生をより一層抑制して、多軸アクチュエータ100Dの誤作動をより一層抑制することができる。
【0077】
実施の形態6.
次に、
図25から
図28を参照して、実施の形態6にかかる多軸アクチュエータ100Eについて説明する。
図25は、実施の形態6にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Eの第1のプリント基板4Aを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板4Aの表面41を示した図である。
図26は、実施の形態6にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Eの第1のプリント基板4Aを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板4Aの裏面42を表面41から透かして見たときの図である。
図27は、実施の形態6にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Eの第2のプリント基板4Bを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板4Bの表面41を示した図である。
図28は、実施の形態6にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Eの第2のプリント基板4Bを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板4Bの裏面42を表面41から透かして見たときの図である。本実施の形態では、回転コイル群5Bの第2の長辺部53aの軸方向の長さP4が極間距離P5の2m倍と同一の長さである点、および、多軸アクチュエータ用コイル1Eにおいて直動コイル群5Aの軸方向の長さP3が回転コイル群5Bの第2の長辺部53aの軸方向の長さP4よりも長い点が、前記した実施の形態4と相違する。なお、実施の形態6では、前記した実施の形態4,5と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
図26および
図28では、裏面42が見えないが、説明の便宜上、表面41と裏面42の符号を併記する。
【0078】
図25および
図26に示される直動コイル群5Aの軸方向の長さP3は、
図27および
図28に示される回転コイル群5Bの第2の長辺部53aの軸方向の長さP4よりも長い。第2の長辺部53aの軸方向の長さP4は、
図8に示される極間距離P5の2m倍と同一の長さである。mは、自然数である。
【0079】
次に、本実施の形態にかかる多軸アクチュエータ100Eの効果について説明する。
【0080】
本実施の形態では、前記した実施の形態4と同一の効果を奏することができる。本実施の形態では、
図27および
図28に示される回転コイル群5Bの第2の長辺部53aの軸方向の長さP4が
図8に示される極間距離P5の2m倍と同一の長さである。また、本実施の形態では、
図25から
図28に示すように、直動コイル群5Aの軸方向の長さP3が回転コイル群5Bの第2の長辺部53aの軸方向の長さP4よりも長い。この構成により、直動コイル群5Aに通電した際に回転コイル群5Bに鎖交する磁束、すなわち回転側干渉磁束が直動コイル群5Aの各相で平衡となる。そのため、直動コイル群5Aの各相から発生する回転側干渉磁束の合計は理論上0となり、直動コイル群5Aから発生した回転側干渉磁束が回転コイル群5Bに干渉することを抑制できる。つまり、本実施の形態では、回転コイル群5Bから発生した磁束が直動コイル群5Aに干渉すること、および、直動コイル群5Aから発生した磁束が回転コイル群5Bに干渉することの両方を抑制できる。これにより、意図せぬ誘導電流の発生をより一層抑制して、多軸アクチュエータ100Eの誤作動をより一層抑制することができる。
【0081】
実施の形態7.
次に、
図29から
図31を参照して、実施の形態7にかかる多軸アクチュエータ100Fについて説明する。
図29は、実施の形態7にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Fの第2のプリント基板4Bを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第2のプリント基板4Bの表面41を示した図である。
図30は、実施の形態7にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Fの第1のプリント基板4Aを巻き回す前の状態を示した側面図であって、第1のプリント基板4Aの表面41を示した図である。
図31は、実施の形態7にかかる多軸アクチュエータ用コイル1Fを軸方向に沿って見たときの図である。本実施の形態では、コイルパターン51の巻き方が集中巻きである点が、前記した実施の形態4と相違する。なお、実施の形態7では、前記した実施の形態4と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0082】
図30に示すように、第1のコイルパターン52の数は、本実施の形態では3個である。3個の第1のコイルパターン52は、軸方向に並べられて配置されている。各第1のコイルパターン52は、同一形状で異なる大きさのループが同一の中心を基点に巻かれた集中巻きで第1のプリント基板4Aにプリントされている。第1のコイルパターン52の形状は、外周から内周に向かうにつれて四角形のループの大きさが小さくなる雷紋状である。
【0083】
第1のコイルパターン52は、周方向に延びる複数の第1の長辺部52aと、軸方向に延びる複数の第1の短辺部52bとを含んでいる。第1の長辺部52aと第1の短辺部52bとは、交互に配置されている。第1の短辺部52bは、隣り合う2つの第1の長辺部52aを繋ぐ役割を果たしている。各第1のコイルパターン52の他端には、端子52cの反対側となるループ内側の端子52dが設けられる。各第1のコイルパターン52の端子52dは、図示しないパターンまたはジャンパ線で互いに結線される。
【0084】
図29に示すように、第2のコイルパターン53の数は、本実施の形態では6個である。6個の第2のコイルパターン53は、周方向に並べられて配置されている。各第2のコイルパターン53は、同一形状である。各第2のコイルパターン53は、同一形状で異なる大きさのループが同一の中心を基点に巻かれた集中巻きで第2のプリント基板4Bにプリントされている。第2のコイルパターン53の形状は、外周から内周に向かうにつれて大きさが小さくなる雷紋状である。
【0085】
第2のコイルパターン53は、軸方向に延びる複数の第2の長辺部53aと、周方向に延びる複数の第2の短辺部53bとを含んでいる。第2の長辺部53aと第2の短辺部53bとは、交互に配置されている。第2の短辺部53bは、隣り合う2つの第2の長辺部53aを繋ぐ役割を果たしている。各第2のコイルパターン53の他端には、端子53cの反対側となるループ内側の端子53dが設けられる。各第2のコイルパターン53の端子53dは、図示しないパターンまたはジャンパ線で互いに結線される。
【0086】
図31に示すように、各プリント基板4は、コイル群5が形成された表面41が内周に位置するようにかつ裏面42が外周に位置するように、右回りに巻き回されている。各プリント基板4は、コイル群5が形成された表面41が外周に位置するようにかつ裏面42が内周に位置するように、巻き回されてもよい。各プリント基板4は、図示しない治具の円筒面に沿って巻き回される。第1のプリント基板4Aの周方向の一端43が第2のプリント基板4Bの周方向の他端44に連続するように、第1のプリント基板4Aおよび第2のプリント基板4Bが連続して巻き回されている。これにより、円筒形状の多軸アクチュエータ用コイル1Fが成形される。多軸アクチュエータ用コイル1Fの外周面は、第1のプリント基板4Aの裏面42および第2のプリント基板4Bの裏面42となる。
【0087】
直動コイル群5Aは、回転コイル群5Bの一部の外周に配置される。すなわち、直動コイル群5Aと回転コイル群5Bの一部とは、周方向で一致する位置に配置されている。換言すると、直動コイル群5Aと回転コイル群5Bの一部とは、半径方向に並べられて配置されている。半径方向に並べられて配置される直動コイル群5Aと回転コイル群5Bの一部との間には、第2のプリント基板4Bが全周に亘って挟み込まれて配置されている。これにより、直動コイル群5Aと回転コイル群5Bとの短絡を防止できる。
【0088】
次に、本実施の形態にかかる多軸アクチュエータ100Fの効果について説明する。
【0089】
図31に示されるプリント基板4を円筒に複数回巻き回した場合には、プリント基板4の1周当たりの周長は、プリント基板4の外周側ほど長くなる。そのため、
図29に示される回転コイル群5Bのようにコイルパターン51の配列方向が周方向と一致し、かつ、各コイルパターン51の周方向の幅が等しい場合には、プリント基板4を円筒に巻き回す回数が増えるほど、同相のコイルパターン51が周方向にずれる位相ずれが生じる。また、位相ずれが生じることで1周ごとの電気的な位相が変化し、多軸アクチュエータの電磁気特性が低下しやすいという問題がある。
【0090】
この点、本実施の形態では、
図29および
図31に示すように、巻き回されたプリント基板4の内周側に配置される回転コイル群5Bは、コイルパターン51の配列方向が周方向と一致し、かつ、長辺部51aが周方向に対して直交する方向に延びている。つまり、位相ずれによる多軸アクチュエータ100Fの電磁気特性の低下が顕著に表れやすい回転コイル群5Bを、位相ずれの発生が抑制されるプリント基板4の内周側に配置する。この構成により、回転コイル群5Bを巻き回されたプリント基板4の外周側に配置する場合に比べて、多軸アクチュエータ100Fの電磁気特性の低下を抑制することができる。
【0091】
なお、直動コイル群5Aおよび回転コイル群5Bのうちの一方のコイルパターン51が集中巻きでプリント基板4にプリントされ、直動コイル群5Aおよび回転コイル群5Bのうちの他方のコイルパターン51が分布巻きでプリント基板4にプリントされてもよい。
【0092】
実施の形態8.
次に、
図32から
図34を参照して、実施の形態8にかかる多軸アクチュエータ100Gについて説明する。
図32は、実施の形態8にかかる多軸アクチュエータ100Gを示した斜視図である。
図33は、
図32に示されたXXXIII-XXXIII線に沿った断面図である。
図34は、
図32に示されたXXXIV-XXXIV線に沿った断面図である。本実施の形態では、ロータコア7の外周に多軸アクチュエータ用コイル1Gが配置されるムービングコイル型の多軸アクチュエータ100Gである点が、前記した実施の形態1と相違する。なお、実施の形態8では、前記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0093】
図32から
図34に示すように、ハウジング6、シャフト10、軸受11、第1の位置検出器12および第2の位置検出器13の構成は、前記した実施の形態1と同一である。
【0094】
図33に示すように、ステータコア9は、フレーム6aの内周に配置されている。磁石8は、ステータコア9の内周に設けられている。磁石8は、半径方向において多軸アクチュエータ用コイル1Gと対面する。
【0095】
多軸アクチュエータ用コイル1Gは、磁石8の内周に配置されている。多軸アクチュエータ用コイル1Gは、磁石8と空隙を介して配置されている。多軸アクチュエータ用コイル1Gは、直動コイル群2と、直動コイル群2の外周に配置される回転コイル群3とを備えている。
【0096】
ロータコア7は、多軸アクチュエータ用コイル1Gの内周に配置されている。換言すると、多軸アクチュエータ用コイル1Gは、ロータコア7の外周に配置されている。
【0097】
シャフト10は、ロータコア7の内周に配置されている。ロータコア7と多軸アクチュエータ用コイル1Gとシャフト10とは、可動子を構成する。磁石8とステータコア9とフレーム6aとは、固定子を構成する。ロータコア7と多軸アクチュエータ用コイル1Gとは、シャフト10と共に、周方向と軸方向とに移動する。
【0098】
次に、本実施の形態にかかる多軸アクチュエータ100Gの効果について説明する。
【0099】
本実施の形態でも、可動子を複数方向に移動させながら、前記した実施の形態1と同一の効果を奏することができる。また、多軸アクチュエータ用コイル1Gが巻数の少ない多軸アクチュエータ用コイルの場合、可動子が軽量化し、多軸アクチュエータ100Gの応答性が向上する。さらに、多軸アクチュエータ用コイル1Gを直接円筒成形する際、プリント基板4をロータコア7に直接巻き付けながら成形することが可能となり、成形用の円筒治具を別途用意する必要がなくなる。
【0100】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0101】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G 多軸アクチュエータ用コイル、2,5A 直動コイル群、2a 直動コイル、2b,2c,51c,51d コイル端、2d,8e 軸中心、3,5B 回転コイル群、3a 回転コイル、3b,51a 長辺部、3c,51b 短辺部、4 プリント基板、4A 第1のプリント基板、4B 第2のプリント基板、5 コイル群、6 ハウジング、6a フレーム、6b ブラケット、6c 挿入孔、6d 貫通孔、7 ロータコア、8 磁石、8a 第1の磁石、8b 第2の磁石、8c 第1の中心、8d 第2の中心、9 ステータコア、10 シャフト、11 軸受、12 第1の位置検出器、12a 第1のスケール、12b 第1のセンサ、13 第2の位置検出器、13a 第2のスケール、13b 第2のセンサ、41 表面、42 裏面、43 一端、44 他端、51 コイルパターン、52 第1のコイルパターン、52a 第1の長辺部、52b 第1の短辺部、52c,52d,53c,53d 端子、53 第2のコイルパターン、53a 第2の長辺部、53b 第2の短辺部、54 スルーホール、55,56 接続部、57 軸、100,100A,100B,100C,100D,100E,100F,100G 多軸アクチュエータ。
【要約】
多軸アクチュエータ(100)は、多軸アクチュエータ用コイル(1)と、多軸アクチュエータ用コイル(1)の内周に配置されるシャフト(10)とを備えている。多軸アクチュエータ用コイル(1)は、シャフト(10)を軸方向に移動させる磁界を発生させる直動コイル群(2)と、直動コイル群(2)の内周または外周に配置されてシャフト(10)を周方向に移動させる磁界を発生させる回転コイル群(3)とを備えている。直動コイル群(2)は、軸方向に並べられて配置された複数の直動コイル(2a)を有している。各直動コイル(2a)は、周方向に延びている。各直動コイル(2a)は、周方向の一端と他端とに位置する2つのコイル端(2b,2c)を有している。各直動コイル(2a)において2つのコイル端(2b,2c)が成す周方向の第1の角度は、回転コイル群(3)の電気角周期と等しいか、または、回転コイル群(3)の電気角周期の整数倍である。