(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】橋梁伸縮装置
(51)【国際特許分類】
E01C 11/02 20060101AFI20241015BHJP
E01D 19/06 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
E01C11/02 A
E01D19/06
(21)【出願番号】P 2021206987
(22)【出願日】2021-12-21
【審査請求日】2024-08-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年2月4日に福井新聞に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年10月6日に福井新聞に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年1月20日に建設工業新聞に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年10月8日に建設工業新聞に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年12月1日に建設工業新聞に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年3月30日に福井県次世代橋梁部材事業化研究会で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年8月30日に福井県道路メンテナンス研修会で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年11月25日及び26日に令和3年度福井県工業技術センター一般公開で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年9月8日及び9日にフクイ建設技術フェア2021で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年8月23日にウェブサイトに公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年12月23日にウェブサイトに公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年1月14日にウェブサイトに公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年10月4日及び5日に福井県福井市篠尾町の天神橋にて施工
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592029256
【氏名又は名称】福井県
(73)【特許権者】
【識別番号】515103308
【氏名又は名称】日光産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】林 泰正
(72)【発明者】
【氏名】古木 敬三
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孝弘
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録実用新案第20-0312792(KR,Y1)
【文献】中国実用新案第214613570(CN,U)
【文献】特開2012-162955(JP,A)
【文献】特開2000-129616(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111021240(CN,A)
【文献】中国実用新案第212533711(CN,U)
【文献】中国実用新案第208105041(CN,U)
【文献】韓国登録特許第10-1938625(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 11/02
E01D 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋桁と橋台の間、又は2つの橋桁間に架設する橋梁伸縮装置であって、
伸縮スリットを挟んで略平行に延在する2つのベース本体と、前記2つのベース本体をそれぞれ橋桁及び橋台又は2つの橋桁の間詰コンクリート内に定着する複数の連結部と、一方の前記ベース本体の上面から上向きに突起する複数のスタッドボルトと、を有する、ベースウェブと、
両面を連通するボルト孔を有し、前記ベース本体の長手方向に沿って前記伸縮スリットの上方を被覆するように前記ベース本体上に配列した、複数のフェースプレートと、
前記複数のフェースプレートの下部において、前記ベース本体の長手方向に沿って前記伸縮スリットの上部を閉塞するように前記ベース本体上に付設した、透水性の濾過シートと、
前記2つのベース本体間に前記伸縮スリット内の全長にわたって挟持した、バックアップ材と、
前記バックアップ材上に前記伸縮スリット内の全長にわたって設置した、不透水性の弾性シール材と、
前記2つのベース本体、前記濾過シート、及び弾性シール材によって画設した集水空間と、を備え、
前記複数のフェースプレートのボルト孔内に前記スタッドボルトを挿通し、前記スタッドボルトにナットを螺着することで、前記複数のフェースプレートを一方の前記ベース本体に固定したことを特徴とする、
橋梁伸縮装置。
【請求項2】
前記ベース本体が、上面に前記濾過シートの厚みに対応する深さの配置溝を備えることを特徴とする、請求項1に記載の橋梁伸縮装置。
【請求項3】
前記伸縮スリットの設計上の最大幅において、前記濾過シートが前記集水空間側への弛みを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の橋梁伸縮装置。
【請求項4】
前記フェースプレートが、前記ベース本体の上部を被覆する支持プレートと、前記支持プレートの表面を被覆する保護プレートと、の二層構造からなることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の橋梁伸縮装置。
【請求項5】
前記濾過シートが、高強力ポリエステル繊維製の透水性シートからなることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の橋梁伸縮装置。
【請求項6】
前記ベースウェブが、前記ベース本体の上縁の高さから前記橋桁及び/又は橋台の方向に延出する複数の誘導部を有することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の橋梁伸縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁伸縮装置に関し、特に維持管理及び補修が容易で、橋梁のライフサイクルコスト(LCC)を大幅に減縮可能な橋梁伸縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、全国には70万を超える橋梁が存在し、その内、平成29年の時点で約23%が建設後50年を経過した老朽橋である。この割合は10年後には約50%、20年後には約70%に達するとみられている。
現存する橋梁の多くは、車両の大型化や交通量の増加による疲労損傷、塩害、中性化等によって、健全性の低下をもたらしている。
【0003】
橋梁の損傷の原因の一つに、橋梁伸縮装置から橋台や橋脚への漏水がある。橋梁伸縮装置とは、橋桁と橋台の間に架設する装置であって、温度変化、車両の通行、及び地震等による橋梁の伸縮を吸収するための装置である。
橋梁伸縮装置から橋台や橋脚へ漏水することによって、鋼桁端部や支承が腐食したり、橋台のコンクリートが凍害や塩害を受けて急速に劣化する。特に寒冷地においては、路面に凍結防止剤を散布することが多く、漏水内に凍結防止剤から溶出した塩化物が混ざることで、鋼製部材の腐食が急激に進行する。
従来技術の橋梁伸縮装置として、特許文献1には、櫛歯状のフェースプレートの下方に一体に設けた支持部内に止水材を配置したフィンガージョイント型の橋梁伸縮装置が開示されている。また、特許文献2には、この橋梁伸縮装置において止水材の下部に設けたゴム製の二次止水装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-143845号公報
【文献】実用新案第3174898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術には以下のような問題点がある。
<1>止水材がフェースプレートの直下に位置するため、フェースプレートの間に土砂や雪等の異物が侵入することで、止水材が異物によって下方へ押し込まれて破損するおそれがある。
<2>フェースプレートがウェブと一体であるため、フェースプレート下の止水材を橋上から点検/補修することができない。このため、止水材が破損した後は止水材の下方に設置した二次止水装置で止水し、二次止水装置の破損後に補修に着手する運用となる。従って、補修時には長時間にわたって橋梁伸縮装置の内部に水が溜まった状態であるため、橋梁伸縮装置全体が甚大なダメージを負っており、また、橋梁伸縮装置内部からの浸水により橋桁や橋台等にも損傷を与えている可能性がある。
<3>フェースプレートやその下部の止水材を部分ごとに補修/交換することができない。このため、補修時には橋面のコンクリートを斫って橋梁伸縮装置全体を交換する必要があり(
図6)、補修コストが嵩む。また、補修工事の規模が大きいため、長時間にわたって通行を止める必要があり、近隣の交通への影響が大きい。
<4>止水材の点検やフェースプレート下の異物の除去等の予防保全が困難で、破損後の事後保全が中心となるため、橋梁のライフサイクルコスト(LCC)が嵩む。
【0006】
本発明の目的は、以上のような問題点を解決するための橋梁伸縮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の橋梁伸縮装置は、伸縮スリットを挟んで略平行に延在する2つのベース本体と、2つのベース本体をそれぞれ橋桁及び橋台又は2つの橋桁の間詰コンクリート内に定着する複数の連結部と、一方のベース本体の上面から上向きに突起する複数のスタッドボルトと、を有する、ベースウェブと、両面を連通するボルト孔を有し、ベース本体の長手方向に沿って伸縮スリットの上方を被覆するようにベース本体上に配列した、複数のフェースプレートと、複数のフェースプレートの下部において、ベース本体の長手方向に沿って伸縮スリットの上部を閉塞するようにベース本体上に付設した、透水性の濾過シートと、2つのベース本体間に伸縮スリット内の全長にわたって挟持した、バックアップ材と、バックアップ材上に伸縮スリット内の全長にわたって設置した、不透水性の弾性シール材と、2つのベース本体、濾過シート、及び弾性シール材によって画設した集水空間と、を備え、複数のフェースプレートのボルト孔内にスタッドボルトを挿通し、スタッドボルトにナットを螺着することで、複数のフェースプレートを一方のベース本体に固定したことを特徴とする。
【0008】
本発明の橋梁伸縮装置は、ベース本体が、上面に濾過シートの厚みに対応する深さの配置溝を備えていてもよい。
【0009】
本発明の橋梁伸縮装置は、伸縮スリットの設計上の最大幅において、濾過シートが集水空間側への弛みを有していてもよい。
【0010】
本発明の橋梁伸縮装置は、フェースプレートが、ベース本体の上部を被覆する支持プレートと、支持プレートの表面を被覆する保護プレートと、の二層構造からなっていてもよい。
【0011】
本発明の橋梁伸縮装置は、濾過シートが、高強力ポリエステル繊維製の透水性シートからなっていてよい。
【0012】
本発明の橋梁伸縮装置は、ベースウェブが、ベース本体の上縁の高さから橋桁及び/又は橋台の方向に延出する複数の誘導部を有していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の橋梁伸縮装置は以上の構成を備えるため、次の効果のうち少なくとも一つを備える。
<1>弾性シール材の上方を濾過シートで被覆し、弾性シール材と濾過シートの間に集水空間を確保することで、異物を濾過シートに捕捉して、異物の押し込みによる止水機能の損傷を防ぐことができる。
<2>フェースプレートを取り外し可能な構造とすることで、橋梁伸縮装置の内部を橋上から容易に点検/補修することができる。このため、一次止水の機能を随時回復できるので、二次止水装置を設置する必要がない。
<3>フェースプレートを取り外して、フェースプレートや弾性シール材等を部分ごとに補修できるため、補修コストを低減できる。また、短時間の作業で補修できるため、交通規制による近隣の交通への影響が小さい。
<4>内部の濾過シートや弾性シール材を、橋上から随時点検/補修できるため、予防保全により橋梁のLCCを大幅に減縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の橋梁伸縮装置について詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
[橋梁伸縮装置]
<1>全体の構成(
図1)
本発明の橋梁伸縮装置1は、橋桁と橋台の間又は2つの橋桁間に架設する荷重支持型かつスライドジョイント式の伸縮装置である。
橋梁伸縮装置1は、全体として、橋桁の幅方向に長い長尺状を呈する。
橋梁伸縮装置1は、伸縮スリットSを挟んで橋桁及び橋台又は2つの橋桁と接続したベースウェブ10と、ベースウェブ10上に配列して伸縮スリットSの上部を被覆した複数のフェースプレート20と、複数のフェースプレート20下で伸縮スリットSの上部を閉塞した濾過シート30と、伸縮スリットS内に挟持したバックアップ材40と、バックアップ材40上に設置した弾性シール材50と、伸縮スリットS内において濾過シート30と弾性シール材50の間に画設した集水空間60と、を少なくとも備える。
【0017】
<2>ベースウェブ(
図2)
ベースウェブ10は、橋梁伸縮装置1の基本構造部材である。
ベースウェブ10は、主として略平行に配置する2つの長尺状のベース本体11からなり、一方のベース本体11を橋桁に、他方のベース本体11を橋台又は他の橋桁にそれぞれ連結することで、2つのベース本体11の間に伸縮スリットSを構成する。
【0018】
<2.1>ベース本体(
図2)
ベース本体11は、フェースプレート20を支持する部材である。
ベース本体11は、橋桁等の間詰コンクリート内に定着するための複数の連結部12と、一方のベース本体11の上面に設けた複数のスタッドボルト14と、を少なくとも備える。
本例ではベース本体11として、長尺の水平部11aと、水平部11aの幅方向一側辺から下方へ延出した挟持壁11bと、水平部11aの幅方向他側辺から上方へ延出した収容壁11cと、の組み合わせからなる断面階段状の鋼材を採用する。
2つのベース本体11は、挟持壁11bが内側を向くように組み合わせる。
各挟持壁11bの内側には、バックアップ材40を下方から支持する支持金具を付設する(不図示)。
スタッドボルト14は、水平部11aの長手方向に沿って一定の間隔で設ける。
【0019】
<2.2>連結部(
図2)
連結部12は、ベース本体11の定着部材である。
本例では連結部12として、挟持壁11bの長手方向に沿って、挟持壁11bの外面に所定間隔で溶接した異形鉄筋を採用する。
橋梁伸縮装置1の設置時又は交換時に、連結部12を橋桁又は橋台の打設空間内に配置して、間詰コンクリートを打設することで、ベース本体11を橋桁又は橋台に定着させる。
なお、連結部12は、上記の構成に限らず、頭付きスタッドジベル、穴あき鋼板ジベル、交換貫通型穴あき鋼板ジベル、フープ鉄筋等の他の公知の定着部材であってもよい。また、連結部12の付設位置も挟持壁11bに限らず、例えば収容壁11cの外側に設けてもよい。
要はベース本体11を橋桁又は橋台に確実に固定できる構造であればよい。
【0020】
<2.3>誘導部(
図2)
誘導部13は、ベース本体11及びフェースプレート20の損傷を防ぐための部材である。
本例では誘導部13として、収容壁11cの外側に設けた鋼材であって、収容壁11cの上縁の高さから外側に延出する部材を採用する。
特に北陸や東北などの積雪量の多い地域では、作業中の除雪車の刃が橋梁伸縮装置に接触してベース本体やフェースプレートを損傷する事故が多発している。そこで、ベース本体11の外側に誘導部13を設け、誘導部13の上面が走行中の除雪車の歯を上向きに誘導することで、除雪車の歯がベース本体11及びフェースプレート20に衝突して損傷させるのを防ぐことができる。
【0021】
<2.4>配置溝(
図4)
配置溝11dは、濾過シート30を収容するための段差である。
本例では、ベース本体11の上面に、濾過シート30の厚みに対応する深さの配置溝11dを備える。
詳細には、ベース本体11の水平部11aにおいて、伸縮スリットS側の角をベース本体11の長手方向にわたって切り欠いて、水平面である配置溝11dを設ける。
配置溝11dの深さは、濾過シート30の厚みに対応する。ここで「対応する」とは、必ずしも濾過シート30の厚みと同一でなくてもよいが、少なくとも濾過シート30の上部が水平部11a上に突起してフェースプレート20と水平部11aの間に隙間が生じない程度の深さであることを意味する。
配置溝11dによって、フェースプレート20の伸縮による濾過シート30のめくれや剥がれを防ぐことができる。
【0022】
<3>フェースプレート(
図3)
フェースプレート20は、伸縮スリットSの上部を被覆する部材である。
フェースプレート20は、ベース本体11の長手方向に沿って並列配置する。
本例ではフェースプレート20として、矩形の縞鋼板からなる保護プレート21と、保護プレート21より幅の狭い矩形の鋼板からなる支持プレート22の組み合わせを採用し、保護プレート21の下面に支持プレート22を溶接して一体とする。
フェースプレート20は、ベースウェブ10のスタッドボルト14を挿通する複数のボルト孔23を備える。
各ボルト孔23の位置は、フェースプレート20をベースウェブ10上に設置する状態におけるスタッドボルト14の位置に対応する。ボルト孔23内には、ナット15で支圧して固定するための小段を設ける。
フェースプレート20をベース本体11の水平部11a上に設置し、ボルト孔23内のスタッドボルト14にナット15を螺着することで、ナット15でボルト孔23内の小段を支圧して、フェースプレート20をベース本体11に固定することができる。
ナット15の螺着後は、ボルト孔23内に樹脂等の充填材16を充填してシーリングする。
【0023】
<3.1>フェースプレートの二層構造(
図3)
本例では、フェースプレート20が、ベース本体11の上部を被覆する支持プレート22と、支持プレート22の表面を被覆する保護プレート21の二層構造からなる。
このため、縞鋼板などの表面処理を必要とする保護プレート21を厚みが一定な共通部材とし、加工が少なく入手が容易な支持プレート22の厚さを設定することで、構造計算上フェースプレート20に求められる様々な厚みに低コストで対応することができる。
【0024】
<4>濾過シート(
図4)
濾過シート30は、フェースプレート20下に入り込んだ異物Dの捕捉機能を有する部材である。ここで「異物」とは例えば土砂、雪、凍結防止剤、植物、塵、ゴミ等である。
濾過シート30は、透水性の素材からなる。本例では濾過シート30として、引張強度が高く耐候性に優れた、高強力ポリエステル繊維製の透水性シートを採用する。
濾過シート30は、伸縮スリットSの上部を閉塞するように、ベース本体11の配置溝11dに沿って2つの水平部11a間にわたって付設する。
詳細には、例えば帯状の濾過シート30をベース本体11に沿って配置溝11d内に連続して接着する。あるいは、複数枚の濾過シート30を、相互に端部が重なるように接着してもよい。
本例では、濾過シート30の上面に集塵部31を設ける。
【0025】
<4.1>集塵部(
図4)
集塵部31は、異物Dを保持する構造である。
集塵部31は、濾過シート30の中央を集水空間60側へ弛ませることで、濾過シート30上に構成する。
詳細には、伸縮スリットSの設計上の最大幅において、濾過シート30を、中央が集水空間60側へ弛む幅に設置し、濾過シート30の中央上部に集塵部31を構成する。
車両の通行や伸縮スリットSの伸縮によって、路面からフェースプレート20の下部に異物Dが押し込まれた場合、異物Dが集水空間60側に凹んだ集塵部31内に溜まることで、濾過シート30が押し破られるのを防ぐことができる。
【0026】
<5>バックアップ材(
図4)
バックアップ材40は、弾性シール材50を支持する部材である。
バックアップ材40は、伸縮スリットSの伸縮に追従可能な弾性を備える。
本例ではバックアップ材40として、断面矩形の長尺状を呈する発泡ウレタンを採用する。ただしバックアップ材40の素材はこれに限らず、例えば発泡ポリエチレン樹脂製等であってもよい。
バックアップ材40は、2つの挟持壁11bの間に伸縮スリットSの全長にわたって押し込み、支持金具の上に載せる。
【0027】
<6>弾性シール材(
図4)
弾性シール材50は、止水機能を有する部材である。
弾性シール材50は、不透水性の素材からなる。
本例では弾性シール材50として、ポリブタジエン系の液状体を主剤とする二成分型のシール材を採用する。本例の場合、2つの挟持壁11bの間にバックアップ材40を挟持した状態で、バックアップ材40上に主剤を充填し、充填後に主剤に硬化剤を加えることで、弾性シール材50をバックアップ材40上に一体に成型する。
ただし弾性シール材50はポリブタジエン系に限らず、他の原料からなってもよい。また、二成分型に限らず、連続気泡フォームと止水膜を一体化してなる乾式のシール材であってもよい。
【0028】
<7>止水機能と集塵機能の分離(
図4)
本発明の橋梁伸縮装置1は、弾性シール材50と濾過シート30の組み合わせによって、止水機能と集塵機能を分離した構成に一つの特徴を有する。
従来技術の橋梁伸縮装置は、止水材がフェースプレートの直下に設置されているため、フェースプレートの下部に侵入した土砂や圧接雪などの異物が止水材を下方に押し込むことで、止水材が脱落したり破損して止水機能を損なうおそれがあった。
これに対し、本発明の橋梁伸縮装置1は、弾性シール材50を伸縮スリットSの奥に配置し、濾過シート30と弾性シール材50の間に集水空間60を確保することで、フェースプレート20の下部に侵入した異物Dを濾過シート30が捕捉しつつ、水のみを濾過して集水空間60内に落とす。これによって、異物Dによる弾性シール材50の脱落や破損を防ぎ、止水機能を確保することができる。
【0029】
<8>橋梁伸縮装置のメンテナンス(
図5)
本発明の橋梁伸縮装置1は、設置・供用後に、ベースウェブ10からフェースプレート20を取り外して、橋梁上から伸縮スリットS内をメンテナンス(維持管理及び補修)可能な構成に一つの特徴を有する。
詳細には、例えば以下の手順でメンテナンスを行う。
保護プレート21のボルト孔23から充填材16を剥がし、ナット15を緩めてスタッドボルト14から取り外す。
フェースプレート20を持ち上げてベース本体11から取り外す。同様の作業をすべてのフェースプレート20において行う。この際、フェースプレート20は、一枚ものでなく、ベース本体11の長さ方向に連続する分割体であるため、軽量で作業員がフェースプレート20を一人で取り外すことができる。
フェースプレート20の取り外しによって、ベース本体の水平部11aと濾過シート30が露出する。
ここで、濾過シート30に損傷がなければ、集水空間60内に異物Dが侵入し得ず、従って、弾性シール材50の止水機能は損なわれていないことが確認できる。この場合、濾過シート30上の異物Dを清掃するだけでメンテナンスは終了する。
一方、濾過シート30に損傷が確認される場合、または弾性シール材50を目視で確認する必要がある場合には、濾過シート30を水平部11aから剥がすことで、弾性シール材50を露出して確認することができ、必要に応じて補修することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 橋梁伸縮装置
10 ベースウェブ
11 ベース本体
11a 水平部
11b 挟持壁
11c 収容壁
11d 配置溝
12 連結部
13 誘導部
14 スタッドボルト
15 ナット
16 充填材
20 フェースプレート
21 保護プレート
22 支持プレート
23 ボルト孔
30 濾過シート
31 集塵部
40 バックアップ材
50 弾性シール材
60 集水空間
S 伸縮スリット
D 異物