(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】スキンケア布帛
(51)【国際特許分類】
A45D 44/00 20060101AFI20241015BHJP
D03D 15/68 20210101ALI20241015BHJP
D03D 15/513 20210101ALI20241015BHJP
D03D 15/65 20210101ALI20241015BHJP
D02G 3/04 20060101ALI20241015BHJP
D02G 3/26 20060101ALI20241015BHJP
D06M 11/00 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
A45D44/00 Z
D03D15/68
D03D15/513
D03D15/65
D02G3/04
D02G3/26
D06M11/00 100
(21)【出願番号】P 2020118366
(22)【出願日】2020-07-09
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】512019295
【氏名又は名称】森保染色株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520253188
【氏名又は名称】愛宕織物株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520234305
【氏名又は名称】丹羽 国治
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100068663
【氏名又は名称】松波 祥文
(72)【発明者】
【氏名】早川 典雄
(72)【発明者】
【氏名】伴 隆行
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 国治
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-002364(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0187113(US,A1)
【文献】特開2009-297289(JP,A)
【文献】特開2004-293010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0231653(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D44/00
D03D15/513
D03D15/65
D03D15/68
D02G 3/04
D02G 3/26
D06M11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸が、非アラミド繊維マルチフィラメント糸からなる経糸又は緯糸の一方に付加されて製織された
布帛であり、付加された前記アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸は、交差する複数の前記非アラミド繊維マルチフィラメント糸上に連続して浮いて製織され、
布帛の組織表面に存在し現れたスキンケア布帛であって、
前記アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸が、100~3000本のパラ型芳香族ポリアミド単繊維からなる繊度が300~4000デニールのマルチフィラメントの拠り数500T/m以下の無撚糸または弱撚糸であり、かつ、
非アラミド繊維マルチフィラメント糸は、30~1000本のポリエステル単繊維からなる繊度が70~1000デニールのマルチフィラメントの拠り数500T/m以下の無撚糸または弱撚糸であり、
前記布帛は、経糸と緯糸とが各10~200本/2.54cmで製織されており、
前記アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸の本数と、
前記非アラミド繊維マルチフィラメント糸の本数との割合が、1:0.5~10になっていることを特徴とするスキンケア布帛。
【請求項2】
前記アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸は、交差する2~30本の前記非アラミド繊維マルチフィラメント糸の上に連続して浮いていることを特徴とする請求項1に記載のスキンケア布帛。
【請求項3】
請求項1、または2に記載のスキンケア布帛が、前記アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸が存在している表面を外側にして袋状に縫製され、内部にクッション材が充填されているスキンケア用パフ。
【請求項4】
請求項1、または2に記載のスキンケア布帛の製造方法であって、アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸と水溶性繊維糸とを撚り合わせたアラミド繊維複合撚糸を用いて製織し、次いで製織した布帛から水にて水溶性繊維糸を溶解除去するか、あるいはアラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸を糊付けして製織し、水にて糊を溶解除去することを特徴とするスキンケア布帛の製造方法。
【請求項5】
請求項1、または2に記載のスキンケア布帛の製造方法であって、非アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸と水溶性繊維糸とを撚り合わせた非アラミド繊維複合撚糸からなる経糸又は緯糸の一方に、アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸と水溶性繊維糸とを撚り合わせたアラミド繊維複合撚糸を付加して製織し、次いで製織した布帛から水にて水溶性繊維糸を溶解除去するか、あるいはアラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸を糊付けして製織し、水にて糊を溶解除去することを特徴とするスキンケア布帛の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌波(ハダナミ)を整え、角質混じりの余分な皮脂や汚れを肌の表面より取り去り、肌の表面を繊細で滑らかにして、肌の透明感を向上させると共に、肌理(キメ)の整った肌を得るためのスキンケア布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケア布帛としては、袋状に縫製し、内部にポリウレタンフォーム等からなる中芯を包み込んで円盤状の形態に形成する毛足の長いパイルを起毛した布帛があるが、これは化粧料を肌に塗布するための化粧パフを構成している布帛であり、皮脂や汚れを肌の表面より取り去るものではない。
【0003】
また、肌に残る余分な皮脂や汗を除去するあぶらとり紙もよく知られており、植物繊維を原料とした和紙や洋紙が用いられている。そして、肌触りが良く、さらに汗や皮脂の除去性を良くするための各種の提案がなされている。特許文献1には、植物性繊維パルプに絹原糸をフィブリル化させた絹繊維パルプを混合して抄紙したあぶら取り紙が提案され、特許文献2にはポリエステル繊維からなる極細繊維を用いて抄紙したあぶらとり紙が提案されている。さらに、特許文献3、4には、極細繊維で構成される皮脂取り布帛も提案されている。この布帛は、抄紙した紙ではなく、織編された布帛であるため、皮脂の除去に優れるだけでなく、繰り返し洗濯して使用することができる。しかし、これらのあぶらとり紙や皮脂取り布帛は、肌に押し付けることにより、肌の表面に付着している皮脂や汗を吸い取って除去するものである。
【0004】
一方、特許文献5には、垢すり用具用の生地として合成繊維系の特殊な複合撚糸を用いてループが形成された生地が示されている。しかし、垢すりは水で濡れた状態で皮膚を摩擦することにより、垢を除去するものであり、本文献の生地も同様に使われる布帛であり、特殊な複合撚糸を用いることで効率よく除去できるものである。
【0005】
本発明は、以上のような、化粧料の肌に塗布する化粧用パフ、肌に付着している皮脂を吸い取るあぶらとり紙や、肌に付着した垢を擦り落とす垢すり用具などではなく、肌の表面を軽く撫ぜるだけで、肌表面に突起状に存在する肌波を整え、肌表面に存在する角質を含む余分な皮脂を取り除き、肌の透明感を向上させると共に、肌理の整った肌を得ることのできるスキンケア布帛を提供しようとするものである。
【0006】
肌の表面は一様に平滑ではなく、多数の溝(皮溝)とこの溝に囲まれて盛り上がった丘(皮丘)とからなる規則的な表面模様になっている。この表面模様が規則的に整っていることが、いわゆる肌理が整っているといわれる。
図4はこのような肌の表面100を拡大して、斜視図にて模式的に示したものである。肌の表面100は平坦ではなく、皮溝200と称される溝が刻まれており、この皮溝200に囲まれて三角形状の模様で盛り上がった皮丘300を形成し、規則的な表面模様となっている。さらに、皮丘300の表面に突起状に存在する肌波400が存在している。そして、溝である皮溝200には角質を含む皮脂や汚れが堆積し易く、肌荒れや肌のかゆみを誘引する原因の一つである。
【0007】
肌に痒みを感じたときに、指の爪で肌を掻いた場合には、肌の表面や上記した肌波400を破壊して、肌のバリアー効果を壊してしまうため、少しの刺激に対して過敏な肌になってしまい、炎症を起こし易くなり、炎症が悪化し、さらなる痒みを感じ、また肌を掻くという悪循環に陥ることとなる。
【0008】
本願発明者は、上記のような悪循環を避け、痒みを感じても、肌の表面を爪で掻くのではなく、肌の表面や肌波400を破壊することなく、肌を傷つけず軽く撫ぜるだけで、痒みを和らげると共に、肌の皮溝に残った角質を含む余分な皮脂を除去することのできるスキンケア布帛の探索検討を行った結果、アラミド繊維が織り込まれた布帛が好ましいことを見出し、本願発明のスキンケア布帛の提供に至った。アラミド繊維は高強度・高弾性率などの機械的特性や耐熱・耐炎性などの熱的特性を活かして、各種産業資材や防護衣料として用いられているように、アラミド繊維は機械的物性値が高く硬い繊維であるが、製織して布帛とすることにより、好ましいスキンケア布帛となることを見出し、本発明に至ったものである。
【0009】
一方、特許文献1には、アラミド繊維を含む合成繊維を加えて抄紙してもよいことが記載され(本文献、項目0017)、特許文献2にも、同様に加えられる極細繊維として、アラミド繊維が例示されている(本文献、項目0013)。しかし、これらはいずれも抄紙したあぶらとり紙であり、製織した布帛ではなく、皮脂や汗を吸い取って除去するものである。また、ナノファイバー繊維を使用した多層構造織編物が記載された特許文献6には、使用できる繊維としてアラミド繊維が例示されている(本文献、項目0019)が、この繊維は糸状Bを形成するものであり、多層構造織編物の中間層に用いられるもので、アラミド繊維が肌に直接触れるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2000-139755号公報
【文献】特開2013-118950号公報
【文献】特許第4258247号公報
【文献】特許第5186276号公報
【文献】特許第5963805号公報
【文献】特許第5229890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、痒みを感じても、肌の表面を爪で掻くことなく、肌を傷つけず軽く撫ぜるだけで、痒みを和らげると共に、肌の皮溝に残った角質を含む余分な皮脂を除去することのできるスキンケア布帛を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のスキンケア布帛は、アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸で製織された布帛、又は該アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸が非アラミド繊維マルチフィラメント糸と共に製織された布帛であって、前記アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸は前記布帛の組織表面に存在し現れていることを特徴とする。そして、アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸が、非アラミド繊維マルチフィラメント糸からなる経糸又は緯糸の一方に付加されて製織された布帛であって、付加された前記アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸は、交差する複数の前記非アラミド繊維マルチフィラメント糸上に連続して浮いて製織され、前記布帛の組織表面に存在し現れていることが好ましい。
【0013】
また、前記アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸は、単繊維フィラメント数が100~3000本、繊度が300~4000デニールであって、前記非アラミド繊維マルチフィラメント糸は、単繊維フィラメント数が30~1000本、繊度が70~1000デニールであり、前記布帛は経糸と緯糸とが各10~200本/2.54cmで製織されており、前記アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸は、交差する2~30本の前記非アラミド繊維マルチフィラメント糸の上に連続して浮いて存在し現れていることが好ましい。
【0014】
そして、前記非アラミド繊維マルチフィラメント糸は、無撚糸または弱撚糸であり、さらにポリエステル繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸であることが好ましい。
【0015】
また、スキンケア布帛が、前記アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸が存在している表面を外側にして袋状に縫製され、内部にクッション材が充填されているスキンケア用パフも提供される。
【0016】
前記のスキンケア布帛の製造法としては、製織時に無撚糸あるは弱撚糸がばらけるのを防ぐためにエアー処理を行って製織することができるが、アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸と水溶性繊維糸とを撚り合わせたアラミド繊維複合撚糸を用いて製織し、次いで製織した布帛から水にて水溶性繊維糸を溶解除去することにより、布帛の表面組織に前記アラミド繊維マルフィラメント無撚糸またな弱撚糸だけを残す製造方法、もしくはアラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸を糊付けし、水にて糊を溶解除去することにより、布帛の表面組織に前記アラミド繊維マルフィラメント無撚糸またな弱撚糸だけを残す製造方法が好ましく適用され、さらには、非アラミド繊維マルチフィラメント糸として、無撚糸または弱撚糸を用いる場合には、非アラミド繊維マルチフィラメントと水溶性繊維糸とを撚り合わせた非アラミド繊維複合撚糸を用いて製織し、次いで製織した布帛から水にて水溶性繊維糸を溶解除去する製造方法、もしくは非アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸を糊付けし、水にて糊を溶解除去すること等により、布帛の全体および表面組織に前記非アラミド繊維マルフィラメント無撚糸または弱撚糸だけを残す製造方法が好ましく適用される。
【0017】
本発明のスキンケア布帛は、布帛の表面組織にアラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸が存在し現れている。そして、この表面に存在し現れているアラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸の糸方向と直交する方法に、スキンケア布帛で肌を軽く撫ぜることで、スキンケア効果を発揮する。このスキンケア布帛ではアラミド繊維はマルフィラメント無撚糸または弱撚糸であることが必要であり、紡績糸や強撚糸では肌を痛めたり、肌に不快な感触を与えたりするために好ましくない。また、ともに製織される非アラミド繊維マルフィラメント糸も同様に無撚糸または弱撚糸であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
前記したようにスキンケア布帛は、アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸が、布帛の表面組織に存在するように織り込まれている。そのため、このスキンケア布帛で肌を軽く撫ぜることにより、アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸の糸束が肌の表面を拭って、
図1に示した皮丘300に存在する肌波400を軽く押して、
図4に示すように凹凸の差を小さくして、肌波400を整えると共に、
図1に示した肌に刻まれた溝である皮溝200から角質を含む余分な皮脂を取り除く作用を発揮する。このアラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸の糸束の作用は、爪で皮膚を掻いた場合のように、肌の表面組織を破壊して、肌のバリアー効果を壊してしまうことが少ない。そのため、皮膚に痒みを感じた場合に本発明のスキンケア布帛で皮膚を軽く撫ぜることにより、肌の痒みを減少させたい欲求を満足させると共に、爪によって掻く事と比較して、皮膚の破壊を少なくする事が出来、その結果皮膚の炎症も改善することができる。そして、肌波400の凹凸の差を小さくして肌の表面を滑らかにする肌波400を整える作用により、肌の表面での光の乱反射が低減し、肌からの反射光が強くなり、肌の透明感や明るさを増すことができ、肌の白さも取り戻すことができる。
【0019】
また、スキンケア布帛を袋状として、その内部にクッション材が充填されたスキンケア用パフは、パフの表面での肌のケアがし易く、このパフで肌を撫ぜることにより、表面に存在し現れているアラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸の糸束による上記の作用を、より効果的に発揮させることができる。
【0020】
スキンケア布帛の製織は、アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸と水溶性繊維糸を撚り合わせたアラミド繊維マルフィラメント複合撚糸を用いて、製織後、水にて水溶性繊維糸を溶解除去する方法もしくはアラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸を糊付けし、水にて糊を溶解除去する方法により、織機による製織をスムーズに行うことができる。また、アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸と共に製織される非アラミド繊維マルチフィラメント糸も、同様に、水溶性繊維糸を撚り合わせた非アラミド繊維マルフィラメント複合撚糸を用いて製織をスムーズに行い、製織後、水にて水溶性繊維糸を溶解除去するもしくはアラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸を糊付けし、水にて糊を溶解除去することにより、いずれのマルチフィラメント糸も無撚糸または弱撚糸とすることができ、肌触りがよく、肌に余分な刺激を与えることのない、好ましいスキンケア布帛を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】スキンケア布帛の実施例の組織図(A)及び断面構造図(B、C)。
【
図2】内部にクッション材を充填したスキンケア用パフの断面説明図。
【
図4】スキンケア布帛による肌波を整える作用の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に付き詳細に説明を行う。
【0023】
前記したように、本発明のスキンケア布帛は、アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸で製織された布帛、又は該アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸が非アラミド繊維マルチフィラメント糸と共に製織された布帛であって、前記アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸は前記布帛の組織表面に現れているスキンケア布帛であり、そして、アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸が、非アラミド繊維マルチフィラメント糸からなる経糸又は緯糸の一方に、付加されて製織され、このアラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸が布帛表面に現れているスキンケア布帛が好ましい。これらのスキンケア布帛の無撚糸または弱撚糸の糸束が肌の表面を拭うことにより、スキンケア効果を発揮するものである。
【0024】
アラミド繊維は芳香族ポリアミドによる繊維であり、パラ型、メタ型いずれのアラミド繊維を用いることができるが、パラ型アラミド繊維が好ましい。そして、本発明のスキンケア布帛では、マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸が用いられる。アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸は、単繊維フィラメント数は100~3000本からなり、300~4000デニールの繊度としたマルチフィラメント無撚糸または弱撚糸である。弱撚糸の撚り数は500T/m以下が好ましい。そして、前記したように強撚糸や紡績糸は好ましくない。
【0025】
非アラミド繊維マルチフィラメント糸は、アラミド繊維以外の各種の天然繊維、再生繊維、合成繊維のマルチフィラメント糸であり、合成繊維としてはポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維などを例示することができる。また、この非アラミド繊維マルフィラメント糸は無撚糸または弱撚糸であり、弱撚糸の撚り数は500T/m以下であることが好ましく、特にポリエステル繊維が好ましく、単繊維数は30~1000本からなり、70~1000デニールの繊度であることが好ましい。
【0026】
アラミド繊維マルチフィラメント糸は,スキンケア布帛においては無撚糸または弱撚糸であることが必要であるが、織機にセットして製織するには、形状が安定した糸であることが好ましい。そのため、アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸を水溶性繊維糸と撚り合わせてアラミド繊維複合撚糸として、この複合撚糸を用いて製織し、次いで製織した布帛から水にて水溶性繊維糸を溶解除去するか、アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸を糊付けし、水にて糊を溶解除去し、複合撚糸をアラミド繊維マルチフィラメント無撚糸もしくは弱撚糸とするスキンケア布帛の製造法が好ましい。
【0027】
上記の複合撚糸に用いられる水溶性繊維や糊は、溶解除去されスキンケア布帛には残らないのであり、フィラメント糸と紡績糸のいずれでも用いることができ、水に溶解する繊維や糊であればよい。水に溶解する繊維は例えば、水溶性ポリビニルアルコール系繊維、水溶性エチレン-ビニルアルコール系共重合体繊維、水溶性ポリアミド繊維などを例示することができる。水溶性ポリビニルアルコール系繊維を好ましく用いることができ、水溶性ビニロンとして広く用いられている繊維(繊度20~600デニール)を用いることができる。
【0028】
非アラミド繊維マルチフィラメント糸として、無撚糸または弱撚糸が用いられる場合には、アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸と同様に、水溶性繊維糸と撚り合わせて複合撚糸として、この複合撚糸を用いて製織し、次いで製織した布帛から水にて水溶性繊維糸を溶解除去するか、アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸を糊付けし、水にて糊を溶解除去して、複合撚糸や糊付けされた糸を非アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸とするスキンケア布帛の製造法を採用することができる。
【0029】
アラミド繊維及び非アラミド繊維いずれもマルチフィラメント無撚糸または弱撚糸を用いることにより、非常に肌触りの良いスキンケア布帛とすることができる。
【0030】
アラミド繊維マルチフィラメントの複合撚糸や糊付けされた無撚糸または弱撚糸は、単独、もしくは非アラミド繊維マルフィラメント糸と共に製織されるが、糸の割合は前者1本に対して後者が0~30本の割合で製織されることが好ましく、より好ましくは0.5~10本の割合である。そして、非アラミド繊維マルチフィラメント糸からなる経糸又は緯糸の一方に付加されたアラミド繊維マルチフィラメントの複合撚糸や糊付けされた無撚糸または弱撚糸は、好ましくは、交差する2~30本の前記非アラミド繊維マルチフィラメント糸の上に連続して浮いて製織され、スキンケア布帛の組織表面に存在しており、この存在するアラミド繊維マルチフィラメントの複合撚糸や糊付けされた無撚糸または弱撚糸の糸束が、その後、水にて水溶性繊維糸や糊を除去する事で肌に対して前記したスキンケア効果を発揮する。
【0031】
スキンケア布帛を
図2に示すスキンケア用パフ10とすることにより、スキンケア用品として有効に用いることができる。このスキンケア用パフ10は、スキンケア用布帛1を袋状として、内部にクッション材4を充填したものである。スキンケア布帛1は、アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸が存在している組織表面2を表側として、内側にクッション材4を収納して二つ折りされ、折り部3以外の3辺が縫製され縫製部5となり、袋状のスキンケア用パフ10となったものである。この場合、2枚のスキンケア布帛1を用いて、4周を縫製して袋状とすることでもよく、内部にクッション材4が充填され、表面にアラミド繊維マルチフィラメント無撚糸または弱撚糸が現れておればよい。内部に収納されるクッション材4は、ウレタンフォームなどのシート用スポンジが好適に使用される。そのほか、セルロース綿やポリエステル綿などを用いてもよい。
【0032】
本発明のスキンケア布帛の実施例として、
図1に、40本/25.4mmの糸を打ち込んで製織したスキンケア布帛の組織図(A)、経糸及び緯糸の断面組織図(B)、(C)を示す。このスキンケア布帛は、単繊維フィラメント数200本、繊度600デニールのポリエステル繊維マルチフィラメント無撚糸からなる経糸T1、T3、T4、T6に、単繊維フィラメント数700本、繊度1000デニールのアラミド繊維マルフィラメント無撚糸を付加して経糸T2、T5とし、経糸と同様のポリエステルマルチフィラメント無撚糸からなる緯糸Y1~Y8とにより製織して、組織図(A)で示される織布としてスキンケア布帛を得た。
【0033】
図1の断面組織図(B)には、経糸T1~T6の各断面組織を示し、向かって右側の面が布帛の表面であり、断面組織図(C)には、緯糸Y1~Y8の各断面組織を示し、上側の面が布帛の表面である。上記のようにポリエステル繊維マルチフィラメント無撚糸からなる経糸T1、T3、T4、T6の4本に対し、アラミド繊維マルフィラメント無撚糸からなる経糸T2、T4の2本が付加されており、アラミド繊維マルフィラメント無撚糸1本に対して、ポリエステル繊維マルチフィラメント無撚糸2本の割合で付加され製織されている。経糸T2は、交差する緯糸Y1の下に沈んだのち、交差する5本の緯糸Y2~Y6の上に連続して浮いたのち、緯糸Y7の下に沈む組織となり、スキンケア布帛の組織表面にアラミド繊維マルチフィラメント無撚糸の糸束が規則的に存在し現れている。
【0034】
この実施例のスキンケア布帛は、製織時に用いる糸のアラミド繊維は、マルチフィラメント無撚糸と水溶性ビニロンフィラメント糸(繊度300デニール)との複合撚糸を用いて、製織して、製織後水にて水溶性ビニロンフィラメント糸を溶解除去し、非アラミド繊維のポリエステル繊維マルチフィラメント無撚糸はエアー処理にて繊維がばらけるのを防止してそのまま製織して、作成した。
【0035】
この作成したスキンケア布帛をアラミド繊維マルフィラメント無撚糸が存在し現れている組織表面を表側にして、袋状に縫製し、内部にウレタンスポンジシートを収納し、スキンケア用パフを作成した。このパフを用いて、肌を軽く撫ぜたところ、肌の表面が滑らかとなり、肌の透明感が得られ、肌色の白さも増した。また、痒みを感じていた手の甲部分の肌を同様に、このパフで軽く撫ぜたところ、痒みを感ずることがなくなった。
【0036】
前記実施例において、アラミド繊維マルチフィラメント無撚糸及びポリエステル繊維マルチフィラメント無撚糸のそれぞれを弱撚糸とした場合も、いずれか一方のみを弱撚糸とした場合も同様な効果のあるスキンケア用パフを作成することができた。
【符号の説明】
【0037】
T1~T6 経糸
Y1~Y8 緯糸
1 スキンケア布帛
2 組織表面
3 折り部
4 クッション材
5 縫製部
10 スキンケア用パフ
100 肌の表面
200 皮溝
300 皮丘
400 肌波