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特許7570617ICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】ICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/38 20120101AFI20241015BHJP
   G06Q 40/04 20120101ALI20241015BHJP
   G06Q 20/06 20120101ALI20241015BHJP
【FI】
G06Q20/38 310
G06Q40/04
G06Q20/06 300
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021152863
(22)【出願日】2021-09-21
(65)【公開番号】P2023044810
(43)【公開日】2023-04-03
【審査請求日】2024-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313004816
【氏名又は名称】西本 一也
(73)【特許権者】
【識別番号】519249262
【氏名又は名称】株式会社デジタルアセットマーケッツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】弁理士法人篠原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100065824
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100104983
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 雅之
(74)【代理人】
【識別番号】100166394
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和弘
(72)【発明者】
【氏名】西本 一也
【審査官】毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第6500158(JP,B1)
【文献】特開2020-107228(JP,A)
【文献】特開2020-053082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックチェーンなどの分散台帳技術を用いて、モノやサービスがブロックチェーンなどの分散台帳技術上で作成され管理されるデータとして示されたデジタル資産となるICO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で証券型トークンなどの電子記録移転権利付きトークン(STO型トークン)として取引に用いることを可能にするシステムであって、
ICO型トークン取引市場においてICO型トークンの取引を行う機能を有するICO型トークン取引用スマートコントラクトと、
証券の性質を有する資産がブロックチェーンなどの分散台帳技術上で作成され管理されるデータとして示されたSTO型トークンの予定発行量に対応する量のICO型トークンを、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークン取引市場で購入させる、またはICO型トークン発行体から借り入れることが可能な機能を有するICO型トークン調達手段と、
前記ICO型トークン調達手段が前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた、または借り入れたICO型トークンと同量のトークンまたは差金決済物や信用取引によるICO型トークンもしくはSTO型トークンなどをヘッジ分として反対売買しておくことが可能な機能を有するヘッジ分取引用スマートコントラクトと、
前記ICO型トークン調達手段が前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた、または借り入れたICO型トークンを担保として設定し、担保として設定したICO型トークンに対応する量のSTO型トークンを自動生成し証券市場などの電子記録移転権利の取引市場に発行する機能を有するSTO型トークン発行用スマートコントラクトと、
証券市場などの電子記録移転権利の取引市場においてSTO型トークンの取引を行う機能を有するSTO型トークン取引用スマートコントラクトと、
前記STO型トークン発行用スマートコントラクトが発行した所定量のSTO型トークンの売り注文が証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で約定したとき、ヘッジ分のトークンまたは差金決済物や信用取引によるICO型トークンもしくはSTO型トークンを、約定したSTO型トークンに相当する量分解消するとともに、ICO型トークンの担保設定を、約定したSTO型トークンに相当する量分解除する機能を有する、ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクトと、
ICO型トークンとSTO型トークンの取引価格を随時入手する機能を有する取引価格入手手段と、
ICO型トークンまたはSTO型トークンの信用取引を行う信用取引用スマートコントラクトと、
ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回っている場合に、ICO型トークンとSTO型トークンのうち価格が割高となっている方のトークンを所定量売却し、価格が割安となっている方のトークンを所定量購入することで価格差の絶対値が所定の価格差限界値以下となるようにICO型トークンとSTO型トークンの価格乖離幅を縮小させる裁定取引を自動的に行う機能を有する裁定取引用スマートコントラクトと、
を有することを特徴とするICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システム。
【請求項2】
ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値以下となっている場合において、自己保有するICO型トークンとSTO型トークンとの売買ポジション量が所定の限界範囲を超えた場合、その限界範囲に対して買い超過となるトークンについては所定の調整量の信用売りを前記信用取引用スマートコントラクトに行わせるとともに、その限界範囲に対して売り超過となるトークンについては該所定の調整量の売りヘッジ相当量を前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトまたは前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに買い戻させることにより、売買ポジション量の調整を自動的に行う機能を有する売買ポジション量調整用スマートコントラクトを有することを特徴とする請求項1に記載のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システム。
【請求項3】
前記裁定取引用スマートコントラクトは、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回り、かつ、STO型トークンが割高となっている場合において、STO型トークンを保有しているときは、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトにSTO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で売却させるとともに、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークンをICO型トークン取引市場で購入させる機能を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システム。
【請求項4】
前記裁定取引用スマートコントラクトは、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回り、かつ、STO型トークンが割高となっている場合において、STO型トークンを保有していないときは、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークンをICO型トークン取引市場で購入させ、購入させたICO型トークンを前記STO型トークン発行用スマートコントラクトに担保として設定させ、対応する量のSTO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場に発行させるとともに、発行させたSTO型トークンを前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに売却させる機能を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システム。
【請求項5】
前記裁定取引用スマートコントラクトは、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回り、かつ、STO型トークンが割高となっている場合において、STO型トークンを保有していないときであり、かつ、ICO型トークン取引市場にICO型トークンの売りがなく、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークンをICO型トークン取引市場で購入させることができないときは、ICO型トークン発行体に対し、ICO型トークンのICO型トークン取引市場への発行を指示する機能を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システム。
【請求項6】
前記裁定取引用スマートコントラクトは、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回り、かつ、STO型トークンが割安となっている場合において、
ICO型トークンを保有しているときは、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトにSTO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させるとともに、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークンをICO型トークン取引市場で売却させ、
ICO型トークンを保有していないときは、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトにSTO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させるとともに、前記信用取引用スマートコントラクトにICO型トークンを信用売りさせる機能を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システム。
【請求項7】
STO型トークンの償却指示を受け付ける機能を有するSTO型トークン償却指示受付手段と、
前記STO型トークン償却指示受付手段が、所定量のSTO型トークンの償却指示を受け付けたとき、受け付けたSTO型トークンの償却指示量に対応する量のICO型トークンの売却を、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに行わせる機能を有するICO型トークン売却指示用スマートコントラクトと、
をさらに有することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システム。
【請求項8】
前記ICO型トークン調達手段は、ステーブルコインに準じた担保力を有する所定量のICO型トークンを、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークン取引市場で購入させることが可能な機能をさらに有するとともに、
前記ICO型トークン調達手段が前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保として設定し、担保として設定したステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンに対応する量の金利付きSTO型トークンを、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させることが可能な機能を有するSTO型トークン調達手段をさらに有し、
前記STO型トークン発行用スマートコントラクトは、前記ICO型トークン調達手段が前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンと、前記STO型トークン調達手段がステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保として前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた金利付きSTO型トークンと、を所定割合で組み合わせたものを担保として設定し、担保として設定した量に対応する量のインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンを自動生成し証券市場などの電子記録移転権利の取引市場に発行する機能をさらに有し、
前記ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクトは、前記STO型トークン発行用スマートコントラクトが発行したインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの売り注文が証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で約定したとき、前記ICO型トークンと前記金利付きSTO型トークンとを組み合わせたものの担保設定を、約定したインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンに相当する量分、前記ICO型トークンと前記金利付きSTO型トークンとの組み合わせの割合に応じて解除する機能をさらに有することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システム。
【請求項9】
前記ICO型トークン調達手段は、ステーブルコインに準じた担保力を有する所定量のICO型トークンを、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークン取引市場で購入させることが可能な機能をさらに有するとともに、
前記ICO型トークン調達手段が前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保として設定し、担保として設定したステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンに対応する量の金利付きSTO型トークンを、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させることが可能な機能を有するSTO型トークン調達手段をさらに有し、
前記STO型トークン取引用スマートコントラクトは、前記ICO型トークン調達手段が前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンと、前記STO型トークン調達手段がステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保として前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた金利付きSTO型トークンと、を所定割合で組み合わせたインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの取引を行う機能をさらに有することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システム。
【請求項10】
デジタルで表現された、移動可能な、担保力を有する価値あるものの取引市場において前記価値あるものの取引を行う機能を有する価値あるもの取引用スマートコントラクトと、
前記価値あるものを、前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに前記価値あるものの取引市場で購入させることが可能な機能を有する価値あるもの調達手段と、
をさらに有するとともに、
前記STO型トークン調達手段は、前記価値あるもの調達手段が前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに購入させた前記価値あるものを担保として設定し、担保として設定した前記価値あるものに対応する量の金利付きSTO型トークンを、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させることが可能な機能をさらに有し、
前記STO型トークン発行用スマートコントラクトは、前記価値あるもの調達手段が前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに購入させた前記価値あるものと、前記STO型トークン調達手段が前記価値あるものを担保として前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた金利付きSTO型トークンと、を組み合わせたものを担保として設定し、担保に対応するインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンを自動生成し証券市場などの電子記録移転権利の取引市場に発行する機能をさらに有し、
前記ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクトは、前記STO型トークン発行用スマートコントラクトが発行したインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの売り注文が証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で約定したとき、前記価値あるものと前記金利付きSTO型トークンとを組み合わせたものの担保設定を解除する機能をさらに有することを特徴とする請求項8に記載のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システム。
【請求項11】
デジタルで表現された、移動可能な、担保力を有する価値あるものの取引市場において前記価値あるものの取引を行う機能を有する価値あるもの取引用スマートコントラクトと、
前記価値あるものを、前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに前記価値あるものの取引市場で購入させることが可能な機能を有する価値あるもの調達手段と、
をさらに有するとともに、
前記STO型トークン調達手段は、前記価値あるもの調達手段が前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに購入させた前記価値あるものを担保として設定し、担保として設定した前記価値あるものに対応する量の金利付きSTO型トークンを、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させることが可能な機能をさらに有し、
前記STO型トークン取引用スマートコントラクトは、前記価値あるもの調達手段が前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに購入させた前記価値あるものと、前記STO型トークン調達手段が前記価値あるものを担保として前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた金利付きSTO型トークンと、を組み合わせたインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの取引を行う機能をさらに有することを特徴とする請求項8に記載のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引に用いることを可能にするシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的なキャッシュレス化の流れに伴い、資産として価値のあるものをデジタル変換したデジタル資産に注目が集まっている。
デジタル資産で用いるトークンは、例えば、法定通貨を基準とした前払い支払い手段である電子マネーやステーブルコイン等、通貨をデジタル化し、それ自体に価値があり決済に使えるもの、証券をデジタル化したSTO型トークン(STO:Security Tokens)、モノやサービスをデジタル化したICO型トークン(ICO:Initial Coin Offering、新規暗号資産公開)に分類される。
【0003】
これらのトークンのうち、STO型トークンは、価値のベースが証券であることから、決済には使えない投機・投資向けのトークンであり、対象が投資家に限定される性質を有する。
一方、電子マネー、ステーブルコイン、ICO型トークンの一部は、トークン自体に価値があり決済に使え、発行量が可変で不特定多数を対象とする性質を有する。
ブロックチェーンなどの分散技術を用いるトークンとしては、広域にアクセスできる決済的な特性を有する電子マネー、ステーブルコイン、ICO型トークンが適している。このうち、電子マネー、ステーブルコインは、各国中央銀行等が発行を担うもので、取引情報は秘匿化され開放されない性質を有する。一方、ICO型トークンは、各企業等が発行を担うもので、取引情報が開放される性質を有するため、事業として広範囲に広がってゆくことが期待される。
【0004】
また、ICO型トークンは、大企業による資金調達を目的としたものや、ICO型トークンのベースとなる製品を提供する発行数量分の製品原料の確保のために、調達資金の一部を原料ヘッジに充当することを目的としたものや、店舗や中小規模の事業体が「商い」を行う前提で発行する、商品やサービスなどとの交換的特性をもつ前払いタイプのトークンに分類できる。
【0005】
ICO型トークンのうち、資金調達を目的としたものは、ICO型トークン取引所(デジタル資産取引所)が扱うものであり、審査を経て上場する規模を持つものであって、いわゆる日本ではICO(、外国ではIEO(Initial Exchange Offering))の対象となるトークンである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、日本では、トークンの本格的なサービスは開始されていないが、ICO型トークンを発行・流通するための、ブロックチェーンなどの分散技術を用いたプラットフォームが整備され、大企業による資金調達目的のトークンの発行・流通が発展して行くとともに、店舗や中小規模の事業体等によるトークンによる小口の商品等の交換サービスが広範囲に発展して行くことが期待される。
【0007】
ところで、ICO型トークンは既存の証券となる株式や債券とは異なり、証券会社が扱うことができず、証券市場などの電子記録移転権利の取引市場では流通させることができない。
しかし、ICO型トークンを、証券市場などの電子記録移転権利の取引市場における取引に用いることができるようにすれば、ICO型トークンを用いたサービスが更に発展して行くことが期待できる。
【0008】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、既存の証券となる株式や債券とは異なり、証券市場などの電子記録移転権利の取引市場では流通させることができないICO型トークンを、証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引に用いることを可能にする、ICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明によるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムは、ブロックチェーンなどの分散技術を用いて、モノやサービスがブロックチェーンなどの分散技術上で作成され管理されるデータとして示されたデジタル資産となるICO型トークンを証券型トークンなどの電子記録移転権利付きトークン(STO型トークン)として証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で取引に用いることを可能にするシステムであって、ICO型トークン取引市場においてICO型トークンの取引を行う機能を有するICO型トークン取引用スマートコントラクトと、証券の性質を有する資産がブロックチェーンなどの分散技術上で作成され管理されるデータとして示されたSTO型トークンの予定発行量に対応する量のICO型トークンを、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークン取引市場で購入させる(、またはICO型トークン発行体から借り入れる)ことが可能な機能を有するICO型トークン調達手段と、前記ICO型トークン調達手段が前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた(、または借り入れた)ICO型トークンと同量のトークン(または差金決済物や信用取引によるICO型トークンもしくはSTO型トークンなど)をヘッジ分として反対売買しておくことが可能な機能を有するヘッジ分取引用スマートコントラクトと、前記ICO型トークン調達手段が前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた(、または借り入れた)ICO型トークンを担保として設定し、担保として設定したICO型トークンに対応する量のSTO型トークンを自動生成し証券市場などの電子記録移転権利の取引市場に発行する機能を有するSTO型トークン発行用スマートコントラクトと、証券市場などの電子記録移転権利の取引市場においてSTO型トークンの取引を行う機能を有するSTO型トークン取引用スマートコントラクトと、前記STO型トークン発行用スマートコントラクトが発行した所定量のSTO型トークンの売り注文が証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で約定したとき、ヘッジ分のトークン(または差金決済物や信用取引によるICO型トークンもしくはSTO型トークン)を、約定したSTO型トークンに相当する量分解消するとともに、ICO型トークンの担保設定を、約定したSTO型トークンに相当する量分解除する機能を有する、ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクトと、ICO型トークンとSTO型トークンの取引価格を随時入手する機能を有する取引価格入手手段と、ICO型トークンまたはSTO型トークンの信用取引を行う信用取引用スマートコントラクトと、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回っている場合に、ICO型トークンとSTO型トークンのうち価格が割高となっている方のトークンを所定量売却し、価格が割安となっている方のトークンを所定量購入することで価格差の絶対値が所定の価格差限界値以下となるようにICO型トークンとSTO型トークンの価格乖離幅を縮小させる裁定取引を自動的に行う機能を有する裁定取引用スマートコントラクトと、を有することを特徴としている。
なお、本願明細書における「スマートコントラクト」とは、ブロックチェーンなどの分散技術上で稼働する、処理を自動化するプログラムである。
【0010】
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値以下となっている場合において、自己保有するICO型トークンとSTO型トークンとの売買ポジション量が所定の限界範囲を超えた場合、その限界範囲に対して買い超過となるトークンについては所定の調整量の信用売りを前記信用取引用スマートコントラクトに行わせるとともに、その限界範囲に対して売り超過となるトークンについては該所定の調整量の売りヘッジ相当量を前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトまたは前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに買い戻させることにより、売買ポジション量の調整を自動的に行う機能を有する売買ポジション量調整用スマートコントラクトを有するのが好ましい。
【0011】
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、前記裁定取引用スマートコントラクトは、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回り、かつ、STO型トークンが割高となっている場合において、STO型トークンを保有しているときは、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトにSTO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で売却させるとともに、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークンをICO型トークン取引市場で購入させる機能を有するのが好ましい。
【0012】
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、前記裁定取引用スマートコントラクトは、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回り、かつ、STO型トークンが割高となっている場合において、STO型トークンを保有していないときは、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークンをICO型トークン取引市場で購入させ、購入させたICO型トークンを前記STO型トークン発行用スマートコントラクトに担保として設定させ、対応する量のSTO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場に発行させるとともに、発行させたSTO型トークンを前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに売却させる機能を有するのが好ましい。
【0013】
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、前記裁定取引用スマートコントラクトは、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回り、かつ、STO型トークンが割高となっている場合において、STO型トークンを保有していないときであり、かつ、(ICO型トークン取引市場にICO型トークンの売りがなく、)前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークンをICO型トークン取引市場で購入させることができないときは、ICO型トークン発行体に対し、ICO型トークンのICO型トークン取引市場への発行を指示する機能を有するのが好ましい。
【0014】
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、前記裁定取引用スマートコントラクトは、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回り、かつ、STO型トークンが割安となっている場合において、ICO型トークンを保有しているときは、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトにSTO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させるとともに、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークンをICO型トークン取引市場で売却させ、ICO型トークンを保有していないときは、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトにSTO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させるとともに、前記信用取引用スマートコントラクトにICO型トークンを信用売りさせる機能を有するのが好ましい。
【0015】
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、STO型トークンの償却指示を受け付ける機能を有するSTO型トークン償却指示受付手段と、前記STO型トークン償却指示受付手段が、所定量のSTO型トークンの償却指示を受け付けたとき、受け付けたSTO型トークンの償却指示量に対応する量のICO型トークンの売却を、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに行わせる機能を有するICO型トークン売却指示用スマートコントラクトと、をさらに有するのが好ましい。
【0016】
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、前記ICO型トークン調達手段は、ステーブルコインに準じた担保力を有する所定量のICO型トークンを、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークン取引市場で購入させることが可能な機能をさらに有するとともに、前記ICO型トークン調達手段が前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保として設定し、担保として設定したステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンに対応する量の金利付きSTO型トークンを、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させることが可能な機能を有するSTO型トークン調達手段をさらに有し、前記STO型トークン発行用スマートコントラクトは、前記ICO型ト―クン調達手段が前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンと、前記STO型トークン調達手段がステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保として前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた金利付きSTO型トークンと、を所定割合で組み合わせたものを担保として設定し、担保として設定した量に対応する量のインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンを自動生成し証券市場などの電子記録移転権利の取引市場に発行する機能をさらに有し、
前記ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクトは、前記STO型トークン発行用スマートコントラクトが発行したインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの売り注文が証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で約定したとき、前記ICO型トークンと前記金利付きSTO型トークンとを組み合わせたものの担保設定を、約定したインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンに相当する量分、前記ICO型トークンと前記金利付きSTO型トークンとの組み合わせの割合に応じて解除する機能をさらに有するのが好ましい。
【0017】
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、前記ICO型トークン調達手段は、ステーブルコインに準じた担保力を有する所定量のICO型トークンを、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークン取引市場で購入させることが可能な機能をさらに有するとともに、前記ICO型トークン調達手段が前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保として設定し、担保として設定したステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンに対応する量の金利付きSTO型トークンを、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させることが可能な機能を有するSTO型トークン調達手段をさらに有し、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトは、前記ICO型ト―クン調達手段が前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンと、前記STO型トークン調達手段がステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保として前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた金利付きSTO型トークンと、を所定割合で組み合わせたインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの取引を行う機能をさらに有するのが好ましい。
【0018】
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、デジタルで表現された、移動可能な、担保力を有する価値あるものの取引市場において前記価値あるものの取引を行う機能を有する価値あるもの取引用スマートコントラクトと、前記価値あるものを、前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに前記価値あるものの取引市場で購入させることが可能な機能を有する価値あるもの調達手段と、をさらに有するとともに、前記STO型トークン調達手段は、前記価値あるもの調達手段が前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに購入させた前記価値あるものを担保として設定し、担保として設定した前記価値あるものに対応する量の金利付きSTO型トークンを、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させることが可能な機能をさらに有し、前記STO型トークン発行用スマートコントラクトは、前記価値あるもの調達手段が前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに購入させた前記価値あるものと、前記STO型トークン調達手段が前記価値あるものを担保として前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた金利付きSTO型トークンと、を組み合わせたものを担保として設定し、担保に対応するインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンを自動生成し証券市場などの電子記録移転権利の取引市場に発行する機能をさらに有し、
前記ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクトは、前記STO型トークン発行用スマートコントラクトが発行したインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの売り注文が証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で約定したとき、前記価値あるものと前記金利付きSTO型トークンとを組み合わせたものの担保設定を解除する機能をさらに有するのが好ましい。
なお、本願明細書における「デジタルで表現された、移動可能な、担保力を有する価値あるもの」には、ステーブルコインや、ゴールドトークンなどのICO型トークンや、担保力のあるNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)などのデジタル資産が挙げられる。
NFTは、代替が不可能なブロックチェーンなどの分散技術上で発行された、送信権が入った唯一無二の鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータである。
【0019】
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、デジタルで表現された、移動可能な、担保力を有する価値あるものの取引市場において前記価値あるものの取引を行う機能を有する価値あるもの取引用スマートコントラクトと、前記価値あるものを、前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに前記価値あるものの取引市場で購入させることが可能な機能を有する価値あるもの調達手段と、をさらに有するとともに、前記STO型トークン調達手段は、前記価値あるもの調達手段が前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに購入させた前記価値あるものを担保として設定し、担保として設定した前記価値あるものに対応する量の金利付きSTO型トークンを、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させることが可能な機能をさらに有し、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトは、前記価値あるもの調達手段が前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに購入させた前記価値あるものと、前記STO型トークン調達手段が前記価値あるものを担保として前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた金利付きSTO型トークンと、を組み合わせたインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの取引を行う機能をさらに有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、既存の証券となる株式や債券とは異なり、証券市場などの電子記録移転権利の取引市場では流通させることができないICO型トークンを、証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引に用いることを可能にする、ICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムの構成を概念的に示すブロック図である。
図2】第1実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおけるICO型トークン取引用スマートコントラクトに備わる機能の概要を示す説明図である。
図3】第1実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおけるICO型トークン調達手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図4】第1実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおけるヘッジ分取引用スマートコントラクトに備わる機能の概要を示す説明図である。
図5】第1実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおけるSTO型トークン発行用スマートコントラクトに備わる機能の概要を示す説明図である。
図6】第1実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおけるSTO型トークン取引用スマートコントラクトに備わる機能の概要を示す説明図である。
図7】第1実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおけるヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクトに備わる機能の概要を示す説明図である。
図8】第1実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおける取引価格入手手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図9】第1実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおける信用取引用スマートコントラクトに備わる機能の概要を示す説明図である。
図10】第1実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおける裁定取引用スマートコントラクトに備わる機能の概要を示す説明図である。
図11図10の裁定取引用スマートコントラクトに備わる機能に基づく処理の流れの一例の一部分を示す説明図である。
図12図10の裁定取引用スマートコントラクトに備わる機能に基づく処理の流れの一例の図11の続き部分を示す説明図である。
図13】第1実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおける売買ポジション量調整用スマートコントラクトに備わる機能の概要を示す説明図である。
図14】第1実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおけるSTO型トークン償却指示受付手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図15】第1実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおけるICO型トークン売却指示用スマートコントラクトに備わる機能の概要を示す説明図である。
図16】本発明の第2実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムの構成を概念的に示すブロック図である。
図17】第2実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおけるICO型トークン調達手段に備わる特有の機能の概要を示す説明図である。
図18】第2実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおけるSTO型トークン調達手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図19】第2実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおけるSTO型トークン発行用スマートコントラクトに備わる特有の機能の概要を示す説明図である。
図20】第2実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおけるヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクトに備わる特有の機能の概要を示す説明図である。
図21】本発明の第3実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムの構成を概念的に示すブロック図である。
図22】第3実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおけるSTO型トークン取引用スマートコントラクトに備わる特有の機能の概要を示す説明図である。
図23】本発明の第4実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムの構成を概念的に示すブロック図である。
図24】第4実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおける価値あるもの取引用スマートコントラクトに備わる機能の概要を示す説明図である。
図25】第4実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおける価値あるもの調達手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図26】第4実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおけるSTO型トークン調達手段に備わる特有の機能の概要を示す説明図である。
図27】第4実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおけるSTO型トークン発行用スマートコントラクトに備わる特有の機能の概要を示す説明図である。
図28】第4実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおけるヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクトに備わる特有の機能の概要を示す説明図である。
図29】本発明の第5実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムの構成を概念的に示すブロック図である。
図30】第5実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおけるSTO型トークン取引用スマートコントラクトに備わる特有の機能の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施形態の説明に先立ち、本発明を導出するに至った経緯及び本発明の作用効果について説明する。
上述のように、ICO型トークンは証券会社が扱うことができず、証券市場などの電子記録移転権利の取引市場では流通させることができない。しかし、ICO型トークンを、証券市場などの電子記録移転権利の取引市場における取引に用いることができるようにすれば、ICO型トークンを用いたサービスが更に発展して行くことが期待できる。
しかるに、本件発明者は、ICO型トークンを信託管理してSTO型トークン化することを着想し、検討、考察を重ねた。
【0023】
ICO型トークンのSTO型トークン化を信託機関で対応させる場合、ブロックチェーンなどの分散技術上での秘密鍵管理を行なうことになるが、コールドウォレットでの秘密鍵管理は、人手を介した管理作業となり煩雑化する。そこで、トークンの管理をデジタル処理で自動化すべく、スマートコントラクトで行うことを考えた。
詳しくは、スマートコントラクト管理アドレスに当該ICO型トークンを移動し、スマートコントラクトでICO型トークンを管理するようにした。そして、当該スマートコントラクトにおいてICO型トークンを認識したときに、スマートコントラクトが、認識したICO型トークンに対応する量のSTO型トークンを自動生成することを考えた。スマートコントラクトで自動生成したSTO型トークンの送付先アドレスはスマートコントラクトに登録されたSTO型トークンを取り扱う証券会社等に特定されるため、外部第三者へのSTO型トークンの流出リスクは無くなると考えられる。
また、STO型トークンを償却する場合には、償却するSTO型トークンに対応する量の償却用のICO型トークンが発生するが、償却のために売却するICO型トークンの送付先はスマートコントラクトに登録された資金決済業者等に特定されるため、外部第三者へのICO型トークンの流出リスクは無くなると考えられる。
【0024】
また、ICO型トークンをSTO型トークン化した場合、証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で取引されるSTO型トークンとICO型トークン取引市場で取引されるICO型トークンとの価格が大きく乖離して、STO型トークンの価格の妥当性を維持できなくなる場合も起こり得ると考えられる。
【0025】
また、ICO型トークンをSTO型トークン化する場合、証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で取引されるSTO型トークンとICO型トークン取引市場で取引されるICO型トークンとの流動性を調整することが必要になると考えられる。流動性の調整のためには、あらかじめ一定量の自己玉を保有しておくことになるが、流動性の調整如何により、STO型トークンとICO型トークンの双方の自己玉保有量が増大するリスクも懸念される。
【0026】
本件発明者は、このような問題を鑑み、証券市場などの電子記録移転権利の取引市場では流通させることができないICO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引に用いることが可能なシステムを構築することについて、更なる検討、考察を重ねた末に、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムを導出するに至った。
【0027】
本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムは、ブロックチェーンなどの分散技術を用いて、モノやサービスがブロックチェーンなどの分散技術上で作成され管理されるデータとして示されたデジタル資産となるICO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で証券型トークンなどの電子記録移転権利付きトークン(STO型トークン)として取引に用いることを可能にするシステムであって、ICO型トークン取引市場においてICO型トークンの取引を行う機能を有するICO型トークン取引用スマートコントラクトと、証券の性質を有する資産がブロックチェーンなどの分散技術上で作成され管理されるデータとして示されたSTO型トークンの予定発行量に対応する量のICO型トークンを、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークン取引市場で購入させる(、またはICO型トークン発行体から借り入れる)ことが可能な機能を有するICO型トークン調達手段と、前記ICO型トークン調達手段が前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた(、または借り入れた)ICO型トークンと同量のトークン(または差金決済物や信用取引によるICO型トークンもしくはSTO型トークンなど)をヘッジ分として反対売買しておくことが可能な機能を有するヘッジ分取引用スマートコントラクトと、前記ICO型トークン調達手段が前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた(、または借り入れた)ICO型トークンを担保として設定し、担保として設定したICO型トークンに対応する量のSTO型トークンを自動生成し証券市場などの電子記録移転権利の取引市場に発行する機能を有するSTO型トークン発行用スマートコントラクトと、証券市場などの電子記録移転権利の取引市場においてSTO型トークンの取引を行う機能を有するSTO型トークン取引用スマートコントラクトと、前記STO型トークン発行用スマートコントラクトが発行した所定量のSTO型トークンの売り注文が証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で約定したとき、ヘッジ分のトークン(または差金決済物や信用取引によるICO型トークンもしくはSTO型トークン)を、約定したSTO型トークンに相当する量分解消するとともに、ICO型トークンの担保設定を、約定したSTO型トークンに相当する量分解除する機能を有する、ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクトと、ICO型トークンとSTO型トークンの取引価格を随時入手する機能を有する取引価格入手手段と、ICO型トークンまたはSTO型トークンの信用取引を行う信用取引用スマートコントラクトと、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回っている場合に、ICO型トークンとSTO型トークンのうち価格が割高となっている方のトークンを所定量売却し、価格が割安となっている方のトークンを所定量購入することで価格差の絶対値が所定の価格差限界値以下となるようにICO型トークンとSTO型トークンの価格乖離幅を縮小させる裁定取引を自動的に行う機能を有する裁定取引用スマートコントラクトと、を有する。
【0028】
本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムのように、ICO型トークンを担保として対応する量のSTO型トークンを発行する構成にすれば、証券市場などの電子記録移転権利の取引市場では流通させることができないICO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引に用いることが可能となる。
【0029】
ICO型トークンはデジタル資産として決済できるタイプのトークンであり、例えば、ゴールド(地金)や原油などを対象とする。
一方、STO型トークンはETF(上場投資信託)やETN(上場投資証券)といった証券型の特性を持つ。ETFは運用対象となる資金を、ゴールドや原油の現物などを購入し、価格を連動させるようにすることから、現物の交換は可能ではあるが、その現物との価格連動制は確実ではない。ETNは価格連動制を確実に保証するが、その保証の裏付けとなるものを記載せず、ETNの発行体企業(金融機関に限定される)の信用力だけで保証されるため、基本的に現物の引き渡しが不可能で差金決済となる。また、ETNの発行体が倒産すると何も残らない特性がある。
本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおけるSTO型トークンは、デジタル資産をベースにしてETFやETNといった証券型の特性を持たせたトークンであり、既存の証券となる株式や債券をSTO化するものではない。
なお、ゴールドなど保管が容易なものは、調達し信託に預けることでETFとしてサービスされる。一方、原油は保管が難しいことから、先物をベースに限月のギャップを埋めてインデックス化し、ETNとして発行される。ただし、ETNは国内の企業が認可されたケースはなく、全て海外の企業となっている。
既存の証券となる株式や債券をデジタル化したSTO型トークンの発行においては、STO型トークン発行のベースとなる現物を信託する場合、現物を国内で管理することが原則になる。このため、例えば、ゴールドなどの現物をベースとして証券をデジタル化したSTO型トークンを発行する場合、ゴールドなどの現物を海外から輸入して、信託で管理するコストがかかる等、コスト面や管理面での負担が大きくなる。
これに対し、本発明のように、ICO型トークンをベースとしてSTO型トークンを発行するようにすれば、現物をベースとしてSTO型トークンを発行する場合とは異なり、コスト面や管理面での負担が低減され、非常に効率的にSTO型トークンを発行することができる。
【0030】
また、ICO型トークンを担保として対応する量のSTO型トークンを発行する処理等、トークンを移動する処理を、スマートコントラクトを介して行うようにすれば、人手を介した秘密鍵管理を行う必要がなく、また、トークンの移動先アドレスがスマートコントラクトに登録されたものに限定されるため、トークンの外部への流出リスクを極力無くすことができる。
また、ICO型トークンを用いたSTO型トークンの発行等の処理を、分散されたスマートコントラクトを介して行うようにしたので、24時間の無停止環境でサービスを提供することができる。
【0031】
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムのように、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回っている場合に、ICO型トークンとSTO型トークンのうち価格が割高となっている方のトークンを所定量売却し、価格が割安となっている方のトークンを所定量購入することで価格差の絶対値が所定の価格差限界値以下となるようにICO型トークンとSTO型トークンの価格乖離幅を縮小させる裁定取引を自動的に行う機能を有する裁定取引用スマートコントラクトを有するようにすれば、STO型トークンの価格の妥当性を維持することができる。
【0032】
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、好ましくは、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値以下となっている場合において、自己保有するICO型トークンとSTO型トークンとの売買ポジション量が所定の限界範囲を超えた場合、その限界範囲に対して買い超過となるトークンについては所定の調整量の信用売りを前記信用取引用スマートコントラクトに行わせるとともに、その限界範囲に対して売り超過となるトークンについては該所定の調整量の売りヘッジ相当量を前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトまたは前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに買い戻させることにより、売買ポジション量の調整を自動的に行う機能を有する売買ポジション量調整用スマートコントラクトを有する。
このようにすれば、証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で取引されるSTO型トークンとICO型トークン取引市場で取引されるICO型トークンとの流動性の調整如何による、STO型トークンとICO型トークンの双方の自己玉保有量が増大するリスクを低減することができる。
【0033】
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、好ましくは、前記裁定取引用スマートコントラクトは、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回り、かつ、STO型トークンが割高となっている場合において、STO型トークンを保有しているときは、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトにSTO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で売却させるとともに、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークンをICO型トークン取引市場で購入させる機能を有する。
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、好ましくは、前記裁定取引用スマートコントラクトは、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回り、かつ、STO型トークンが割高となっている場合において、STO型トークンを保有していないときは、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークンをICO型トークン取引市場で購入させ、購入させたICO型トークンを前記STO型トークン発行用スマートコントラクトに担保として設定させ、対応する量のSTO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場に発行させるとともに、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに売却させる機能を有する。
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、好ましくは、前記裁定取引用スマートコントラクトは、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回り、かつ、STO型トークンが割高となっている場合において、STO型トークンを保有していないときであり、かつ、(ICO型トークン取引市場にICO型トークンの売りがなく、)前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークンをICO型トークン取引市場で購入させることができないときは、ICO型トークン発行体に対し、ICO型トークンのICO型トークン取引市場への発行を指示する機能を有する。
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、好ましくは、前記裁定取引用スマートコントラクトは、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回り、かつ、STO型トークンが割安となっている場合において、ICO型トークンを保有しているときは、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトにSTO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させるとともに、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークンをICO型トークン取引市場で売却させ、ICO型トークンを保有していないときは、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトにSTO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させるとともに、前記信用取引用スマートコントラクトにICO型トークンを信用売りさせる機能を有する。
これらのようにすれば、裁定取引用スマートコントラクトによる処理が具現化する。
【0034】
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、好ましくは、STO型トークンの償却指示を受け付ける、STO型トークン償却指示受付手段と、前記STO型トークン償却指示受付手段が、所定量のSTO型トークンの償却指示を受け付けたとき、受け付けたSTO型トークンの償却指示量に対応する量のICO型トークンの売却を、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに行わせる機能を有するICO型トークン売却指示用スマートコントラクトと、をさらに有する。
このようにすれば、ICO型トークンを売却する際のICO型トークンの送付先アドレスもスマートコントラクトに登録されたものに限定されるため、トークンの外部への流出リスクを極力無くすことができる。
【0035】
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、好ましくは、前記ICO型トークン調達手段は、ステーブルコインに準じた担保力を有する所定量のICO型トークンを、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークン取引市場で購入させることが可能な機能をさらに有するとともに、前記ICO型トークン調達手段が前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保として設定し、担保として設定したステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンに対応する量の金利付きSTO型トークンを、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させることが可能な機能を有するSTO型トークン調達手段をさらに有し、前記STO型トークン発行用スマートコントラクトは、前記ICO型ト―クン調達手段が前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンと、前記STO型トークン調達手段がステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保として前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた金利付きSTO型トークンと、を所定割合で組み合わせたものを担保として設定し、担保として設定した量に対応する量のインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンを自動生成し証券市場などの電子記録移転権利の取引市場に発行する機能をさらに有し、前記ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクトは、前記STO型トークン発行用スマートコントラクトが発行したインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの売り注文が証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で約定したとき、前記ICO型トークンと前記金利付きSTO型トークンとを組み合わせたものの担保設定を、約定したインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンに相当する量分、前記ICO型トークンと前記金利付きSTO型トークンとの組み合わせの割合に応じて解除する機能をさらに有する。
【0036】
本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムのように、ICO型トークン調達手段がICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保として設定し、担保として設定したステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンに対応する量の金利付きSTO型トークンを、STO型トークン取引用スマートコントラクトに証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させることが可能な機能を有するSTO型トークン調達手段をさらに有するように構成すれば、担保力を有するICO型トークンをインフレヘッジ用として所有し続けながら、金利付きのSTO型トークンにより金利を得ることが可能となる。
また、STO型トークン発行用スマートコントラクトが、ICO型ト―クン調達手段がICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンと、STO型トークン調達手段がステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保としてSTO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた金利付きSTO型トークンと、を所定割合で組み合わせたものを担保として設定し、担保として設定した量に対応する量のインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンを自動生成し証券市場などの電子記録移転権利の取引市場に発行する機能をさらに有するように構成すれば、担保力を有するICO型トークンをインフレヘッジ用として所定量所有し続けながら、金利付きのSTO型トークンにより金利を得るとともに、顧客に対し金利付きインフレヘッジの商品を提供することが可能となる。
【0037】
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、好ましくは、前記ICO型トークン調達手段は、ステーブルコインに準じた担保力を有する所定量のICO型トークンを、前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトにICO型トークン取引市場で購入させることが可能な機能をさらに有するとともに、前記ICO型トークン調達手段が前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保として設定し、担保として設定したステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンに対応する量の金利付きSTO型トークンを、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させることが可能な機能を有するSTO型トークン調達手段をさらに有し、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトは、前記ICO型ト―クン調達手段が前記ICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンと、前記STO型トークン調達手段がステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保として前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた金利付きSTO型トークンと、を所定割合で組み合わせたインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの取引を行う機能をさらに有する。
【0038】
本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムのように、STO型トークン取引用スマートコントラクトが、ICO型ト―クン調達手段がICO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンと、STO型トークン調達手段がステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保としてSTO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた金利付きSTO型トークンと、を所定割合で組み合わせたインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの取引を行う機能をさらに有するように構成すれば、担保力を有するICO型トークンをインフレヘッジ用として所定量所有し続けながら、金利付きのSTO型トークンにより金利を得るとともに、顧客に対し金利付きインフレヘッジの商品を提供することが可能となる。
【0039】
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、好ましくは、デジタルで表現された、移動可能な、担保力を有する価値あるものの取引市場において前記価値あるものの取引を行う機能を有する価値あるもの取引用スマートコントラクトと、前記価値あるものを、前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに前記価値あるものの取引市場で購入させることが可能な機能を有する価値あるもの調達手段と、をさらに有するとともに、前記STO型トークン調達手段は、前記価値あるもの調達手段が前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに購入させた前記価値あるものを担保として設定し、担保として設定した前記価値あるものに対応する量の金利付きSTO型トークンを、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させることが可能な機能をさらに有し、前記STO型トークン発行用スマートコントラクトは、前記価値あるもの調達手段が前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに購入させた前記価値あるものと、前記STO型トークン調達手段が前記価値あるものを担保として前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた金利付きSTO型トークンと、を組み合わせたものを担保として設定し、担保に対応するインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンを自動生成し証券市場などの電子記録移転権利の取引市場に発行する機能をさらに有し、前記ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクトは、前記STO型トークン発行用スマートコントラクトが発行したインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの売り注文が証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で約定したとき、前記価値あるものと前記金利付きSTO型トークンとを組み合わせたものの担保設定を解除する機能をさらに有する。
【0040】
本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムのように、デジタルで表現された、移動可能な、担保力を有する価値あるものの取引市場において価値あるものの取引を行う機能を有する価値あるもの取引用スマートコントラクトと、価値あるものを、価値あるもの取引用スマートコントラクトに価値あるものの取引市場で購入させることが可能な機能を有する価値あるもの調達手段と、をさらに有するとともに、STO型トークン調達手段が、価値あるもの調達手段が価値あるもの取引用スマートコントラクトに購入させた価値あるものを担保として設定し、担保として設定した価値あるものに対応する量の金利付きSTO型トークンを、STO型トークン取引用スマートコントラクトに証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させることが可能な機能をさらに有するように構成すれば、ゴールドトークンなどのICO型トークンの他にもステーブルコインや、担保力のあるNFTなどの価値あるデジタル資産をインフレヘッジ用として所有し続けながら、金利付きのSTO型トークンにより金利を得ることが可能となる。
また、STO型トークン発行用スマートコントラクトは、前記価値あるもの調達手段が前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに購入させた前記価値あるものと、前記STO型トークン調達手段が前記価値あるものを担保として前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた金利付きSTO型トークンと、を組み合わせたものを担保として設定し、担保に対応するインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンを自動生成し証券市場などの電子記録移転権利の取引市場に発行する機能をさらに有するように構成すれば、ゴールドトークンなどのICO型トークンの他にもステーブルコインや、担保力のあるNFTなどの価値あるデジタル資産をインフレヘッジ用として所有し続けながら、金利付きのSTO型トークンにより金利を得るとともに、顧客に対し金利付きインフレヘッジの商品を提供することが可能となる。
【0041】
また、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおいては、好ましくは、デジタルで表現された、移動可能な、担保力を有する価値あるものの取引市場において前記価値あるものの取引を行う機能を有する価値あるもの取引用スマートコントラクトと、前記価値あるものを、前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに前記価値あるものの取引市場で購入させることが可能な機能を有する価値あるもの調達手段と、をさらに有するとともに、前記STO型トークン調達手段は、前記価値あるもの調達手段が前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに購入させた前記価値あるものを担保として設定し、担保として設定した前記価値あるものに対応する量の金利付きSTO型トークンを、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入させることが可能な機能をさらに有し、前記STO型トークン取引用スマートコントラクトは、前記価値あるもの調達手段が前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに購入させた前記価値あるものと、前記STO型トークン調達手段が前記価値あるものを担保として前記STO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた金利付きSTO型トークンと、を組み合わせたインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの取引を行う機能をさらに有する。
【0042】
本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムのように、STO型トークン取引用スマートコントラクトが、価値あるもの調達手段が前記価値あるもの取引用スマートコントラクトに購入させた価値あるものと、STO型トークン調達手段が価値あるものを担保としてSTO型トークン取引用スマートコントラクトに購入させた金利付きSTO型トークンと、を組み合わせたインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの取引を行う機能をさらに有するように構成すれば、ゴールドトークンなどのICO型トークンの他にもステーブルコインや、担保力のあるNFTなどの価値あるデジタル資産をインフレヘッジ用として所有し続けながら、金利付きのSTO型トークンにより金利を得るとともに、顧客に対し金利付きインフレヘッジの商品を提供することが可能となる。
【0043】
従って、本発明によれば、既存の証券となる株式や債券とは異なり、証券市場などの電子記録移転権利の取引市場では流通させることができないICO型トークンを、証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引に用いることを可能にする、ICO型トークンの証券市場での取引可能化システムが得られる。
【0044】
以下、本発明の実施形態について、適宜、図面を参照して説明する。
第1実施形態
図1は本発明の第1実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムの構成を概念的に示すブロック図である。
図1のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムは、ICO型トークン取引用スマートコントラクト11と、ICO型トークン調達手段12と、ヘッジ分取引用スマートコントラクト13と、STO型トークン発行用スマートコントラクト14と、STO型トークン取引用スマートコントラクト15と、ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクト16と、取引価格入手手段17と、信用取引用スマートコントラクト18と、裁定取引用スマートコントラクト19と、売買ポジション量調整用スマートコントラクト20と、STO型トークン償却指示受付手段21と、ICO型トークン売却指示用スマートコントラクト22を有している。図1中、30は証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)、40はICO型トークン取引市場、50はICO型トークン発行体である。
【0045】
ICO型トークン取引用スマートコントラクト11は、図2に示すように、ICO型トークン取引市場40においてICO型トークンの取引を行う機能を有するように構成されている。
【0046】
ICO型トークン調達手段12は、図3に示すように、STO型トークンの予定発行量に対応する量のICO型トークンを、ICO型トークン取引用スマートコントラクト11にICO型トークン取引市場40で購入させる(、またはICO型トークン発行体50から借り入れる)ことが可能な機能を有するように構成されている。
【0047】
ヘッジ分取引用スマートコントラクト13は、図4に示すように、ICO型トークン調達手段12がICO型トークン取引用スマートコントラクト11に購入させた(、または借り入れた)ICO型トークンと同量のトークン(または差金決済物や信用取引によるICO型トークンもしくはSTO型トークンなど)をヘッジ分として反対売買しておくことが可能な機能を有するように構成されている。
相場が膠着している状況などにおいて、その都度ICO型トークンを調達すると手間がかかる。そこで、事前に所定量のICO型トークンを調達しておいて、STO型トークンを販売しない場合がある。
そのような場合でも、仮にICO型トークンの価格が大きく変動(この場合は下落)した場合にICO型トークンについてのポジションの保有はリスク要因になることから、保有するICO型トークンに対して、同量のトークンをヘッジ分として反対売買(この場合は売り)をする必要がある。
ヘッジ分取引用スマートコントラクト13は、この同量のトークンのヘッジ分として反対売買を、CFD(あるいは先物)などの差金決済物や、ICO型トークンもしくはSTO型トークンの信用売りを用いて行う。
【0048】
STO型トークン発行用スマートコントラクト14は、図5に示すように、ICO型トークン調達手段12がICO型トークン取引用スマートコントラクト11に購入させた(、または借り入れた)ICO型トークンを担保として設定し、担保として設定したICO型トークンに対応する量のSTO型トークンを自動生成し証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30に発行する機能を有するように構成されている。
なお、STO型トークンの発行については、証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30に流通しないものは、トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも数量を含み価格を含まない第1価値構成要素が設定された一時的処理データ(無効なトークン)として発行量を決めて、一時的処理データ管理手段(不図示)がブロックチェーンなどの分散技術を介して管理する。また、トークンの価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量のうち、少なくとも価格を含み数量を含まない第2価値構成要素が設定されたデータを第2価値構成要素設定データ管理手段(不図示)で管理しておく。そして、STO型トークン発行用スマートコントラクト14は、STO型トークンの発行が必要となったときに、一時的処理データ管理手段により管理されている第1価値構成要素と、第2価値構成要素設定データ管理手段により管理されている第2価値構成要素と、を用いて、一時的処理データから価値を構成する要素をなす銘柄、価格及び数量が揃った有効トークンに変換して市場へ放出するようにする。
例えば、一時的処理データ管理手段が、一時的処理データを100単位管理しておくものとする。また、STO型トークン発行用スマートコントラクト14が、ICO型トークン調達手段12により調達されたICO型トークンを10単位保有し担保として設定することで、STO型トークンを10単位生成し、後述するSTO型トークン取引用スマートコントラクト15が、10単位のSTO型トークンを販売したとする。しかるに、その後、STO型トークンの人気が高くなって価格が上昇し、ICO型トークンよりも高額になったとき、さらに、ICO型トークン調達手段12がICO型トークンを調達し、STO型トークン発行用スマートコントラクト14がSTO型トークンを生成し、STO型トークン取引用スマートコントラクト15がSTO型トークンを販売するが、STO型トークン発行用スマートコントラクト14は、その際、一時的処理データから市場に流通させる分を有効トークンに変換することによってSTO型トークンを生成する。
【0049】
STO型トークン取引用スマートコントラクト15は、図6に示すように、証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30においてSTO型トークンの取引を行う機能を有するように構成されている。
【0050】
ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクト16は、図7に示すように、STO型トークン発行用スマートコントラクト14が発行した所定量のSTO型トークンの売り注文が証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30で約定したとき、ヘッジ分のトークン(または差金決済物や信用取引によるICO型トークンもしくはSTO型トークン)を、約定したSTO型トークンに相当する量分解消するとともに、ICO型トークンの担保設定を、約定したSTO型トークンに相当する量分解除する機能を有するように構成されている。
【0051】
取引価格入手手段17は、図8に示すように、ICO型トークンとSTO型トークンの取引価格を随時入手する機能を有するように構成されている。
【0052】
信用取引用スマートコントラクト18は、図9に示すように、ICO型トークンまたはSTO型トークンの信用取引を行う機能を有するように構成されている。
【0053】
裁定取引用スマートコントラクト19は、図10に示すように、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回っている場合に、ICO型トークンとSTO型トークンのうち価格が割高となっている方のトークンを所定量売却し、価格が割安となっている方のトークンを所定量購入することで価格差の絶対値が所定の価格差限界値以下となるようにICO型トークンとSTO型トークンの価格乖離幅を縮小させる裁定取引を、ICO型トークン取引用スマートコントラクト11、STO型トークン取引用スマートコントラクト15及び信用取引用スマートコントラクト18等を介して自動的に行う機能を有するように構成されている。
【0054】
詳しくは、裁定取引用スマートコントラクト19は、図11図12に示すように、例えば、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回り、かつ、STO型トークンが割高となっている場合において、STO型トークンを保有しているときは、STO型トークン取引用スマートコントラクト15にSTO型トークンを証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30で売却させるとともに、ICO型トークン取引用スマートコントラクト11にICO型トークンをICO型トークン取引市場40で購入させ、STO型トークンを保有していないときは、ICO型トークン取引用スマートコントラクト11にICO型トークンをICO型トークン取引市場40で購入させ、購入させたICO型トークンをSTO型トークン発行用スマートコントラクト14に担保として設定させ、対応する量のSTO型トークンを証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30に発行させるとともに、発行させたSTO型トークンをSTO型トークン取引用スマートコントラクト15に売却させる機能を有するように構成されている。
また、裁定取引用スマートコントラクト19は、例えば、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回り、かつ、STO型トークンが割高となっている場合において、STO型トークンを保有していないときであり、かつ、(ICO型トークン取引市場40にICO型トークンの売りがなく、)ICO型トークン取引用スマートコントラクト11を介してICO型トークンをICO型トークン取引市場40で購入させることができないときは、ICO型トークン発行体50に対し、ICO型トークンのICO型トークン取引市場40への発行を指示する機能を有するように構成されている。なお、この場合、ICO型トークン発行体50は、外部商品市場からICO型トークン発行分に相当する量の現物を購入するようにする。
また、裁定取引用スマートコントラクト19は、例えば、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回り、かつ、STO型トークンが割安となっている場合において、ICO型トークンを保有しているときは、STO型トークン取引用スマートコントラクト15にSTO型トークンを証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30で購入させるとともに、ICO型トークン取引用スマートコントラクト11にICO型トークンをICO型トークン取引市場40で売却させ、ICO型トークンを保有していないときは、STO型トークン取引用スマートコントラクト15にSTO型トークンを証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30で購入させるとともに、信用取引用スマートコントラクト18にICO型トークンを信用売りさせる機能を有するように構成されている。
【0055】
売買ポジション量調整用スマートコントラクト20は、図13に示すように、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値以下となっている場合において、自己保有するICO型トークンとSTO型トークンとの売買ポジション量が所定の限界範囲を超えた場合、その限界範囲に対して買い超過となるトークンについては所定の調整量の信用売りを信用取引用スマートコントラクト18に行わせるとともに、その限界範囲に対して売り超過となるトークンについては該所定の調整量の売りヘッジ相当量をICO型トークン取引用スマートコントラクト11またはSTO型トークン取引用スマートコントラクト15に買い戻させることにより、売買ポジション量の調整を自動的に行う機能を有するように構成されている。
【0056】
STO型トークンを用いてICO型トークンの取引範囲を証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)に拡大すると、STO型トークンとICO型トークンとの流動性の調整が必要となる。流動性の調整のためには、あらかじめ一定量の自己玉を保有しておくことになるが、流動性の調整如何により、STO型トークンとICO型トークンの双方の自己玉保有量が増大するリスクも懸念される。
しかるに、売買ポジション量調整用スマートコントラクト20は、自己玉保有量の増大リスクを解消する機能を有する。
【0057】
ここで、売買ポジション量調整用スマートコントラクト20による売買ポジション量調整の例を説明する。
自己保有するICO型トークンとSTO型トークン双方の売買ポジション量が所定の基準量からプラス、マイナスの所定量までのICO型トークンとSTO型トークン双方の流動性調整用の自己玉を保有するリスクの限界範囲(ここでは、デルタ限界範囲と称する)を±100、調整幅を±50と設定してあるものとする。
例えば、ICO型トークンのポジションが+70買持、STO型トークンのポジションが-70売持の状態にあるときには、売買ポジション量調整用スマートコントラクト20は、売買ポジション量の調整を行わない。
ここで、流動性の調整のために、ICO型トークンを追加で+40買、STO型トークンを追加で-40売を行ったとする。その場合、ICO型トークンのポジションが+110買持、STO型トークンのポジションが-110売持となり、デルタ限界範囲の±100を超えることになる。このとき、売買ポジション量調整用スマートコントラクト20は、調整幅±50でICO型トークンとSTO型トークン双方の売買ポジション量を調整(本例の場合、ICO型トークンを-50信用売り、STO型トークンを+50単純買い)し、ICO型トークンのポジションが+60買持、STO型トークンのポジションが-60売持の状態にする。
【0058】
<デルタ限界範囲±100、調整幅を±50と設定した場合>
(1)ICO型トークンとSTO型トークンの売買ポジションがデルタ限界範囲を超えない場合の一例
このとき、売買ポジション量調整用スマートコントラクト20は、売買ポジション量の調整を行わない。
(2)ICO型トークンとSTO型トークンの売買ポジションがデルタ限界範囲を超えた場合の一例
このとき、売買ポジション量調整用スマートコントラクト20は、売買ポジション量を調整幅±50で調整する。
(3)調整幅±50で調整後のICO型トークンとSTO型トークンの売買ポジション
【0059】
STO型トークン償却指示受付手段21は、図14に示すように、STO型トークンの償却指示を受け付ける機能を有するように構成されている。
【0060】
ICO型トークン売却指示用スマートコントラクト22は、図15に示すように、STO型トークン償却指示受付手段21が、所定量のSTO型トークンの償却指示を受け付けたとき、受け付けたSTO型トークンの償却指示量に対応する量のICO型トークンの売却を、ICO型トークン取引用スマートコントラクト11に行わせる機能を有するように構成されている。
【0061】
このように構成された第1実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムを用いた処理の流れを説明する。
最初に、ICO型トークン調達手段12を作動させ、STO型トークンの予定発行量に対応する量のICO型トークンを、ICO型トークン取引用スマートコントラクト11にICO型トークン取引市場40で購入させる(、またはICO型トークン発行体50から借り入れる)。このとき、ヘッジ分取引用スマートコントラクト13は、ICO型トークン調達手段12が購入させた(、または借り入れた)ICO型トークンと同量のトークン(または差金決済物や信用取引によるICO型トークンもしくはSTO型トークン)をヘッジ分として反対売買する。
次に、STO型トークン発行用スマートコントラクト14は、ICO型トークン調達手段12が購入させた(、または借り入れた)ICO型トークンを担保として設定し、担保として設定したICO型トークンに対応する量のSTO型トークンを自動生成し証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30に発行する。
その後、STO型トークン取引用スマートコントラクト15は、証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30においてSTO型トークンの取引を行う。
そして、ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクト16は、STO型トークン発行用スマートコントラクト14が発行した所定量のSTO型トークンの売り注文が証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30で約定したとき、ヘッジ分のトークン(または差金決済物や信用取引によるICO型トークンもしくはSTO型トークン)を、約定したSTO型トークンに相当する量分解消するとともに、ICO型トークンの担保設定を、約定したSTO型トークンに相当する量分解除する。
また、STO型トークンが証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30に発行された後、取引価格入手手段17は、ICO型トークンとSTO型トークンの取引価格を随時入手する。
そして、裁定取引用スマートコントラクト19が、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回っている場合に、ICO型トークンとSTO型トークンのうち価格が割高となっている方のトークンを所定量売却し、価格が割安となっている方のトークンを所定量購入することで価格差の絶対値が所定の価格差限界値以下となるようにICO型トークンとSTO型トークンの価格乖離幅を縮小させる裁定取引を、ICO型トークン取引用スマートコントラクト11、STO型トークン取引用スマートコントラクト15及び信用取引用スマートコントラクト18等を介して自動的に行う。
また、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値以下となっている場合において、自己保有するICO型トークンとSTO型トークンとの売買ポジション量が所定の限界範囲を超えた場合、売買ポジション量調整用スマートコントラクト20が、その限界範囲に対して買い超過となるトークンについては所定の調整量の信用売りを信用取引用スマートコントラクト18に行わせるとともに、その限界範囲に対して売り超過となるトークンについては該所定の調整量の売りヘッジ相当量をICO型トークン取引用スマートコントラクト11またはSTO型トークン取引用スマートコントラクト15に買い戻させることにより、売買ポジション量の調整を自動的に行う。
なお、STO型トークンがICO型トークンに比べて割安であって、証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30からSTO型トークンを買い入れて償却することで、STO型トークンの価格を上げる必要がある場合、STO型トークン償却指示受付手段21が、所定量のSTO型トークンの償却指示を受け付けることができる。このとき、ICO型トークン売却指示用スマートコントラクト22は、受け付けたSTO型トークンの償却指示量に対応する量のICO型トークンの売却を、ICO型トークン取引用スマートコントラクト11に行わせる。
【0062】
第1実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムの効果
第1実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムによれば、ICO型トークンを担保として対応する量のSTO型トークンを発行する構成にしたので、証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30では流通させることができないICO型トークンを証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30での取引に用いることが可能となる。
既存の証券となる株式や債券をデジタル化したSTO型トークンの発行においては、STO型トークン発行のベースとなる現物を信託する場合、現物を国内で管理することが原則になる。このため、例えば、ゴールドなどの現物をベースとして証券をデジタル化したSTO型トークンを発行する場合、ゴールドなどの現物を海外から輸入して、信託で管理するコストがかかる等、コスト面や管理面での負担が大きくなる。
これに対し、第1実施形態のように、STO型トークンを発行するベースがICO型トークンであれば、現物とは異なり、コスト面や管理面での負担が低減され、非常に効率的にSTO型トークンを発行することができる。
【0063】
また、第1実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムによれば、ICO型トークンを担保として対応する量のSTO型トークンを発行する処理等、トークンを移動する処理を、スマートコントラクトを介して行うようにしたので、人手を介した秘密鍵管理を行う必要がなく、また、トークンの移動先アドレスがスマートコントラクトに登録されたものに限定されるため、トークンの外部への流出リスクを極力無くすことができる。
また、ICO型トークンを用いたSTO型トークンの発行等の処理を、分散されたスマートコントラクトを介して行うようにしたので、24時間の無停止環境でサービスを提供することができる。
【0064】
また、第1実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムによれば、裁定取引用スマートコントラクト19が、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回っている場合に、ICO型トークンとSTO型トークンのうち価格が割高となっている方のトークンを所定量売却し、価格が割安となっている方のトークンを所定量購入することで価格差の絶対値が所定の価格差限界値以下となるようにICO型トークンとSTO型トークンの価格乖離幅を縮小させる裁定取引を、ICO型トークン取引用スマートコントラクト11、STO型トークン取引用スマートコントラクト15及び信用取引用スマートコントラクト18等を介して自動的に行う機能を有するようにしたので、STO型トークンの価格の妥当性を維持することができる。
【0065】
また、第1実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムによれば、売買ポジション量調整用スマートコントラクト20が、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値以下となっている場合において、自己保有するICO型トークンとSTO型トークンとの売買ポジション量が所定の限界範囲を超えた場合、その限界範囲に対して買い超過となるトークンについては所定の調整量の信用売りを信用取引用スマートコントラクト18に行わせるとともに、その限界範囲に対して売り超過となるトークンについては該所定の調整量の売りヘッジ相当量をICO型トークン取引用スマートコントラクト11またはSTO型トークン取引用スマートコントラクト15に買い戻させることにより、売買ポジション量の調整を自動的に行うようにしたので、証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30で取引されるSTO型トークンとICO型トークン取引市場40で取引されるICO型トークンとの流動性の調整如何による、STO型トークンとICO型トークンの双方の自己玉保有量が増大するリスクを低減することができる。
【0066】
従って、第1実施形態によれば、既存の証券となる株式や債券とは異なり、証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30では流通させることができないICO型トークンを、証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30での取引に用いることを可能にする、ICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムが得られる。
【0067】
以上、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムについて第1実施形態を用いて説明したが、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムは、第1実施形態で説明した構成に限られるものではなく、本発明の請求項の範囲内でどのような形態にも構成可能である。
例えば、第1実施形態では、STO型トークンの発行量が可変である場合における構成としたが、STO型トークンの発行量が固定である場合においても、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムは、適用可能である。
その場合は、裁定取引用スマートコントラクト19は、ICO型トークンとSTO型トークンとの価格差の絶対値が所定の価格差限界値を上回り、かつ、STO型トークンが割高となっている場合において、STO型トークンを保有していないときは、ICO型トークンのICO型トークン取引市場40での購入や、ICO型トークンを担保として設定した、STO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場への発行を行わないようにする。
【0068】
また、第1実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムでは、ICO型トークンを担保として、STO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場に発行し、ICO型トークンとSTO型トークン双方の流動性を調整する機能を備えた構成としたが、第1実施形態の構成に、さらに、担保力のあるICO型トークンの一部(や、その他のデジタルで表現された、移動可能な、担保力を有する価値あるもの)を担保として、金利付きSTO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入し、担保力のあるICO型トークン(や、その他のデジタルで表現された、移動可能な、担保力を有する価値あるもの)と購入した金利付きSTO型トークンを用いて、インフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場に発行する機能を備えた構成とするのが望ましい。
【0069】
デジタル資産は基本的に担保力が不足しているものが多いが、一部のデジタル資産にはトークンが保証されたタイプのものが存在する。
例えば、ゴールド(地金)を担保とするトークンや、与信の高い第三者(例えば銀行)により保証されているトークンは、ステーブルコインに準じた扱いが可能と考えられる。
ステーブルコインは銀行法下において、通貨類を担保として発行されるものであるが、ゴールドなどの貴金属類や、コモディティー類の中には、価値が安定し、ステーブルコインのような特性を持ったものがある。
ステーブルコインのような特性を持ち保証されているトークン類には担保力がある。
【0070】
例えば、ゴールドトークンなどの担保力のあるトークンを担保(担保を管理するスマートコントラクトに預入する)として、デジタル通貨などの資金調達を行うことも可能である。
トークンの担保力が維持できない水準に達したときに、担保とすべきトークン(やデジタル通貨)が補充されない場合、担保として預入していたトークン(やデジタル通貨)を売却し、貸付を回収するというデジタル契約をスマートコントラクトに行わせる。
【0071】
この概念を拡大し、ゴールドトークンなどの担保力のあるトークンを担保として、証券の性質を有する金利付きのSTO型トークンの買い付けを行うようにする。
即ち、金利のつかないステーブルコインの特性を有する物(ここでは、以下、「ステーブル」と称し、ゴールドトークンなどを含む)を担保として、金利を得るようにする。
【0072】
ステーブルを売却し、金利付きのSTO型トークンを購入すれば金利を得ることはできるが、ゴールドトークンなどには、インフレヘッジ用として所有し続け、売却を所望しない要素が存在する。
そこで、本件発明者は、ゴールドトークンなどの無金利の担保力のあるトークンを所有しつつ、金利付きのSTO型トークンを購入することで、金利を得るようにすることを考えた。
担保力のあるトークンを担保としたときの借入金利よりも金利付きのSTO型トークンの金利が高ければ、担保力のあるトークンをインフレヘッジ用として所有し続けながら、金利付きのSTO型トークンにより金利を得ることが可能となる。
【0073】
なお、地金は細かい(必要とする担保量を切り崩す)担保設定や、そもそも本物、偽物の確認が煩雑である。
また、CFD(差金決済取引)や先物は契約(権利移転が不可)であり、担保に設定できない。
また、ETF(上場投資信託)は管理コストを要し、長期の担保差出は不利である。
【0074】
担保力のあるトークンを担保として、購入する金利付きの証券の例としては、不動産型のものや、海外の高金利証券などが挙げられる。
【0075】
また、担保は、購入する証券(STO型トークン)の特性に応じて、全額相当を差し入れる必要はなく、一部の保証として担保をスマートコントラクトに差し入れる。
スマートコントラクトは、担保自体の価値の下落を確認(随時時価をチェック)し、担保不足時には担保差し入れを要求し、実現しない場合は証券(STO型トークン)の解消を自動的に行う。
【0076】
さらに、本件発明者は、特殊な証券(STO型トークン)として、まずゴールドトークンを購入し、購入したゴールドトークンを担保として金利付きSTO型トークン(証券含む)を購入し、担保としたゴールドトークンと購入した金利付きSTO型トークンを合わせた、新しい証券(STO型トークン)を販売できるようにすることを考えた。
このようなSTO型トークンは、インフレヘッジ(ゴールドによる)と金利付きのSTO型トークンの双方を組み入れたものであることから、顧客に対し金利付きインフレヘッジの商品として提供することが可能となる。
【0077】
以下、第1実施形態の構成に、さらに、担保力のあるICO型トークンの一部(や、その他のデジタルで表現された、移動可能な、担保力を有する価値あるもの)を担保として、金利付きSTO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場で購入し、担保力のあるICO型トークン(や、その他のデジタルで表現された、移動可能な、担保力を有する価値あるもの)と購入した金利付きSTO型トークンを用いて、インフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場に発行する機能を備えた実施形態について説明する。
【0078】
第2実施形態
図16は本発明の第2実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムの構成を概念的に示すブロック図である。なお、図1図15に示す第1実施形態と異なる構成について説明し、同じ構成についての説明は省略する。
図16のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムは、ICO型トークン取引用スマートコントラクト11と、ICO型トークン調達手段12’と、ヘッジ分取引用スマートコントラクト13と、STO型トークン発行用スマートコントラクト14’と、STO型トークン取引用スマートコントラクト15と、ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクト16’と、取引価格入手手段17と、信用取引用スマートコントラクト18と、裁定取引用スマートコントラクト19と、売買ポジション量調整用スマートコントラクト20と、STO型トークン償却指示受付手段21と、ICO型トークン売却指示用スマートコントラクト22と、STO型トークン調達手段23を有している。
【0079】
ICO型トークン調達手段12’は、図17に示すように、第1実施形態におけるICO型トークン調達手段12が有する機能に加えて、ステーブルコインに準じた担保力を有する所定量のICO型トークンを、ICO型トークン取引用スマートコントラクト11にICO型トークン取引市場40で購入させることが可能な機能をさらに有している。
【0080】
STO型トークン調達手段23は、図18に示すように、ICO型トークン調達手段12’がICO型トークン取引用スマートコントラクト11に購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保として設定し、担保として設定したステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンに対応する量の金利付きSTO型トークンを、STO型トークン取引用スマートコントラクト15に証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30で購入させることが可能な機能を有している。
【0081】
STO型トークン発行用スマートコントラクト14’は、図19に示すように、第1実施形態におけるSTO型トークン発行用スマートコントラクト14が有する機能に加えて、ICO型ト―クン調達手段12’がICO型トークン取引用スマートコントラクト11に購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンと、STO型トークン調達手段23がステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保としてSTO型トークン取引用スマートコントラクト15に購入させた金利付きSTO型トークンと、を所定割合で組み合わせたものを担保として設定し、担保として設定した量に対応する量のインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンを自動生成し証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30に発行する機能をさらに有している。
【0082】
ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクト16’は、図20に示すように、第1実施形態におけるヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクト16が有する機能に加えて、STO型トークン発行用スマートコントラクト14’が発行したインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの売り注文が証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30で約定したとき、ICO型トークンと金利付きSTO型トークンとを組み合わせたものの担保設定を、約定したインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンに相当する量分、ICO型トークンと金利付きSTO型トークンとの組み合わせの割合に応じて解除する機能をさらに有している。
その他の構成は、第1実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおける構成と略同じである。
【0083】
第2実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムによれば、ICO型トークン調達手段12’がICO型トークン取引用スマートコントラクト11に購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保として設定し、担保として設定したステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンに対応する量の金利付きSTO型トークンを、STO型トークン取引用スマートコントラクト15に証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30で購入させることが可能な機能を有するSTO型トークン調達手段23をさらに有するように構成したので、担保力を有するICO型トークンをインフレヘッジ用として所有し続けながら、金利付きのSTO型トークンにより金利を得ることが可能となる。
また、STO型トークン発行用スマートコントラクト14’が、ICO型ト―クン調達手段12’がICO型トークン取引用スマートコントラクト11に購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンと、STO型トークン調達手段23がステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保としてSTO型トークン取引用スマートコントラクト15に購入させた金利付きSTO型トークンと、を所定割合で組み合わせたものを担保として設定し、担保として設定した量に対応する量のインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンを自動生成し証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30に発行する機能をさらに有するように構成したので、担保力を有するICO型トークンをインフレヘッジ用として所定量所有し続けながら、金利付きのSTO型トークンにより金利を得るとともに、顧客に対し金利付きインフレヘッジの商品を提供することが可能となる。
その他の効果は第1実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムと略同じである。
【0084】
第3実施形態
図21は本発明の第3実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムの構成を概念的に示すブロック図である。なお、図1図15に示す第1実施形態、図16図20に示す第2実施形態のいずれとも異なる構成について説明し、同じ構成についての説明は省略する。
図21のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムは、ICO型トークン取引用スマートコントラクト11と、ICO型トークン調達手段12’と、ヘッジ分取引用スマートコントラクト13と、STO型トークン発行用スマートコントラクト14と、STO型トークン取引用スマートコントラクト15’と、ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクト16と、取引価格入手手段17と、信用取引用スマートコントラクト18と、裁定取引用スマートコントラクト19と、売買ポジション量調整用スマートコントラクト20と、STO型トークン償却指示受付手段21と、ICO型トークン売却指示用スマートコントラクト22と、STO型トークン調達手段23を有している。
【0085】
ICO型トークン調達手段12’、STO型トークン調達手段23は、第2実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおけるものと略同様に構成されている。
STO型トークン取引用スマートコントラクト15’は、図22に示すように、第1実施形態におけるSTO型トークン取引用スマートコントラクト15が有する機能に加えて、ICO型ト―クン調達手段12’がICO型トークン取引用スマートコントラクト11に購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンと、STO型トークン調達手段23がステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保としてSTO型トークン取引用スマートコントラクト15’に購入させた金利付きSTO型トークンと、を所定割合で組み合わせたインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの取引を行う機能をさらに有している。
その他の構成は、第1実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおける構成と略同じである。
【0086】
第3実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムによれば、STO型トークン取引用スマートコントラクト15’が、ICO型ト―クン調達手段12’がICO型トークン取引用スマートコントラクト11に購入させたステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンと、STO型トークン調達手段23がステーブルコインに準じた担保力を有するICO型トークンの一部を担保としてSTO型トークン取引用スマートコントラクト15’に購入させた金利付きSTO型トークンと、を所定割合で組み合わせたインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの取引を行う機能をさらに有するように構成したので、担保力を有するICO型トークンをインフレヘッジ用として所定量所有し続けながら、金利付きのSTO型トークンにより金利を得るとともに、顧客に対し金利付きインフレヘッジの商品を提供することが可能となる。
その他の効果は第1実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムと略同じである。
【0087】
第4実施形態
図23は本発明の第4実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムの構成を概念的に示すブロック図である。なお、図1図15に示す第1実施形態、図16図20に示す第2実施形態、図21図22に示す第3実施形態のいずれとも異なる構成について説明し、同じ構成についての説明は省略する。
図23のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムは、ICO型トークン取引用スマートコントラクト11と、ICO型トークン調達手段12と、ヘッジ分取引用スマートコントラクト13と、STO型トークン発行用スマートコントラクト14’’と、STO型トークン取引用スマートコントラクト15と、ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクト16’’と、取引価格入手手段17と、信用取引用スマートコントラクト18と、裁定取引用スマートコントラクト19と、売買ポジション量調整用スマートコントラクト20と、STO型トークン償却指示受付手段21と、ICO型トークン売却指示用スマートコントラクト22と、STO型トークン調達手段23’と、価値あるもの取引用スマートコントラクト24と、価値あるもの調達手段25と、を有している。
【0088】
価値あるもの取引用スマートコントラクト24は、図24に示すように、デジタルで表現された、移動可能な、担保力を有する価値あるものの取引市場40’において価値あるものの取引を行う機能を有している。
【0089】
価値あるもの調達手段25は、図25に示すように、価値あるものを、価値あるもの取引用スマートコントラクト24に価値あるものの取引市場40’で購入させることが可能な機能を有している。
【0090】
STO型トークン調達手段23’は、図26に示すように、第2実施形態におけるSTO型トークン調達手段23が有する機能に加えて、価値あるもの調達手段25が価値あるもの取引用スマートコントラクト24に購入させた価値あるものを担保として設定し、担保として設定した価値あるものに対応する量の金利付きSTO型トークンを、STO型トークン取引用スマートコントラクト15に証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30で購入させることが可能な機能をさらに有している。
【0091】
STO型トークン発行用スマートコントラクト14’’は、図27に示すように、第2実施形態におけるSTO型トークン発行用スマートコントラクト14’が有する機能に加えて、価値あるもの調達手段25が価値あるもの取引用スマートコントラクト24に購入させた価値あるものと、STO型トークン調達手段23’が価値あるものを担保としてSTO型トークン取引用スマートコントラクト15に購入させた金利付きSTO型トークンと、を組み合わせたものを担保として設定し、担保に対応するインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンを自動生成し証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30に発行する機能をさらに有している。
【0092】
ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクト16’’は、図28に示すように、第2実施形態におけるヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクト16’が有する機能に加えて、STO型トークン発行用スマートコントラクト14’’が発行したインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの売り注文が証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30で約定したとき、価値あるものと金利付きSTO型トークンとを組み合わせたものの担保設定を解除する機能をさらに有している。
その他の構成は、第1実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおける構成と略同じである。
【0093】
第4実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムによれば、デジタルで表現された、移動可能な、担保力を有する価値あるものの取引市場40’において価値あるものの取引を行う機能を有する価値あるもの取引用スマートコントラクト24と、価値あるものを、価値あるもの取引用スマートコントラクト24に価値あるものの取引市場40’で購入させることが可能な機能を有する価値あるもの調達手段25と、をさらに有するとともに、STO型トークン調達手段23’が、価値あるもの調達手段25が価値あるもの取引用スマートコントラクト24に購入させた価値あるものを担保として設定し、担保として設定した価値あるものに対応する量の金利付きSTO型トークンを、STO型トークン取引用スマートコントラクト15に証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30で購入させることが可能な機能をさらに有するように構成したので、ゴールドトークンなどのICO型トークンの他にもステーブルコインや、担保力のあるNFTなどの価値あるデジタル資産をインフレヘッジ用として所有し続けながら、金利付きのSTO型トークンにより金利を得ることが可能となる。
また、STO型トークン発行用スマートコントラクト14’’が、価値あるもの調達手段25が価値あるもの取引用スマートコントラクト24に購入させた価値あるものと、STO型トークン調達手段23’が価値あるものを担保としてSTO型トークン取引用スマートコントラクト15に購入させた金利付きSTO型トークンと、を組み合わせたものを担保として設定し、担保に対応するインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンを自動生成し証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)30に発行する機能をさらに有するように構成したので、ゴールドトークンなどのICO型トークンの他にもステーブルコインや、担保力のあるNFTなどの価値あるデジタル資産をインフレヘッジ用として所有し続けながら、金利付きのSTO型トークンにより金利を得るとともに、顧客に対し金利付きインフレヘッジの商品を提供することが可能となる。
その他の効果は第1実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムと略同じである。
【0094】
第5実施形態
図29は本発明の第5実施形態にかかるICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムの構成を概念的に示すブロック図である。なお、図1図15に示す第1実施形態、図16図20に示す第2実施形態、図21図22に示す第3実施形態、図23図28に示す第4実施形態のいずれとも異なる構成について説明し、同じ構成についての説明は省略する。
図29のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムは、ICO型トークン取引用スマートコントラクト11と、ICO型トークン調達手段12’と、ヘッジ分取引用スマートコントラクト13と、STO型トークン発行用スマートコントラクト14と、STO型トークン取引用スマートコントラクト15’’と、ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクト16と、取引価格入手手段17と、信用取引用スマートコントラクト18と、裁定取引用スマートコントラクト19と、売買ポジション量調整用スマートコントラクト20と、STO型トークン償却指示受付手段21と、ICO型トークン売却指示用スマートコントラクト22と、STO型トークン調達手段23’と、価値あるもの取引用スマートコントラクト24と、価値あるもの調達手段25と、を有している。
【0095】
ICO型トークン調達手段12’は、第2実施形態におけるものと略同様に構成されている。
STO型トークン調達手段23’、価値あるもの取引用スマートコントラクト24、価値あるもの調達手段25は、第4実施形態におけるものと略同様に構成されている。
STO型トークン取引用スマートコントラクト15’’は、図30に示すように、第3実施形態におけるSTO型トークン取引用スマートコントラクト15’が有する機能に加えて、価値あるもの調達手段25が価値あるもの取引用スマートコントラクト24に購入させた価値あるものと、STO型トークン調達手段23’が価値あるものを担保としてSTO型トークン取引用スマートコントラクト15’’に購入させた金利付きSTO型トークンと、を組み合わせたインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの取引を行う機能をさらに有している。
その他の構成は、第1実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムにおける構成と略同じである。
【0096】
第5実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムによれば、STO型トークン取引用スマートコントラクト15’’が、価値あるもの調達手段25が価値あるもの取引用スマートコントラクト24に購入させた価値あるものと、STO型トークン調達手段23’が価値あるものを担保としてSTO型トークン取引用スマートコントラクト15’’に購入させた金利付きSTO型トークンと、を組み合わせたインフレヘッジ用の金利付きSTO型トークンの取引を行う機能をさらに有するように構成したので、ゴールドトークンなどのICO型トークンの他にもステーブルコインや、担保力のあるNFTなどの価値あるデジタル資産をインフレヘッジ用として所有し続けながら、金利付きのSTO型トークンにより金利を得るとともに、顧客に対し金利付きインフレヘッジの商品を提供することが可能となる。
【0097】
以上、第2実施形態~第5実施形態のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムについて説明したが、本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムは、第1実施形態の構成に、第2実施形態~第5実施形態におけるICO型トークン調達手段12’、STO型トークン発行用スマートコントラクト14’、14’’、STO型トークン取引用スマートコントラクト15’、15’’、ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクト16’、16’’、STO型トークン調達手段23、23’、価値あるもの取引用スマートコントラクト24、価値あるもの調達手段25の全てを備えた構成とすることも勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のICO型トークンの証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引可能化システムは、ICO型トークンを証券市場などの電子記録移転権利の取引市場での取引に用いることが必要とされる分野に有用である。
【符号の説明】
【0099】
11 ICO型トークン取引用スマートコントラクト
12、12’ ICO型トークン調達手段
13 ヘッジ分取引用スマートコントラクト
14、14’、14’’ STO型トークン発行用スマートコントラクト
15、15’、15’’ STO型トークン取引用スマートコントラクト
16、16’、16’’ ヘッジ解消・担保設定解除用スマートコントラクト
17 取引価格入手手段
18 信用取引用スマートコントラクト
19 裁定取引用スマートコントラクト
20 売買ポジション量調整用スマートコントラクト
21 STO型トークン償却指示受付手段
22 ICO型トークン売却指示用スマートコントラクト
23、23’ STO型トークン調達手段
24 価値あるもの取引用スマートコントラクト
25 価値あるもの調達手段
30 証券市場(などの電子記録移転権利の取引市場)
40 ICO型トークン取引市場
40’ 価値あるものの取引市場
50 ICO型トークン発行体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図30