(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
B25J5/00 A
(21)【出願番号】P 2019013589
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2021-09-13
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度から30年度、知の拠点あいち重点研究プロジェクト「次世代ロボット社会形成技術開発プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】三枝 亮
(72)【発明者】
【氏名】平山 慶太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 薪雄
【合議体】
【審判長】鈴木 貴雄
【審判官】刈間 宏信
【審判官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-47163(JP,A)
【文献】特開2016-131825(JP,A)
【文献】特開2016-93883(JP,A)
【文献】特開2006-167841(JP,A)
【文献】特開2006-26209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象者のバイタルサインを測定する測定器が搭載されたアームと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記測定器が前記測定対象者に近づくように前記アームを制御する近接処理と、
前記近接処理の後、前記測定器に前記測定対象者のバイタルサインを測定させる測定処理と、
前記測定処理の前、前記測定対象者が前記アームを掴んだと判定された後、前記アームを制御することによって、前記測定対象者が
前記測定処理により適した姿勢となるように補助又は誘導する姿勢変更処理と、
を実行し、
前記近接処理において、前記測定対象者が誰であるかに応じた位置に前記測定器が位置するように、前記アームを制御する
ことを特徴とするロボット。
【請求項2】
走行部を更に備え、
前記制御部は、前記近接処理の前に、または、前記近接処理と並行して、前記測定対象者に応じた方向から前記測定対象者に近づくように前記走行部を制御することを特徴とする請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記制御部は、前記近接処理の後、前記測定処理の前に、前記測定器の位置を調整するように前記アームを制御する調整処理を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項4】
前記アームは、
複数の関節部分と、
前記複数の関節部分のそれぞれについて固定化するか否かを制御可能な機構と、
前記複数の関節部分のうち固定化されていない関節部分を曲げるワイヤと
を備えていることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のロボット。
【請求項5】
スピーカーを更に備え、
前記制御部は、前記測定対象者の姿勢変更を促すように前記スピーカーを介してアナウンスしたのち、又はアナウンスしながら、前記姿勢変更処理を実行することを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象者の生体データの測定を補助するロボットが従来技術として知られている。特許文献1では、測定対象者が測定器を装着して生体データを測定する時間になったら、測定対象者との会話で生体データの測定を測定対象者に促す等の機能を有するロボットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平2006-285425号公報(2006年10月19日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術は、体温等の測定を行う場合に、測定対象者が、測定器を取りに行く必要や準備する必要があり、負担となるという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、測定対象者の負担を軽減することができるロボットを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るロボットは、測定対象者のバイタルサインを測定する測定器が搭載されたアームと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記測定器が前記測定対象者に近づくように前記アームを制御する近接処理と、前記近接処理の後、前記測定器に前記測定対象者のバイタルサインを測定させる測定処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、測定対象者の負担を軽減することができるロボットを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係るロボットの機能ブロック図である。
【
図3】実施形態1に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】実施形態2に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】実施形態3に係るロボットの機能ブロック図である。
【
図6】実施形態3に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】アームの関節部分を固定化する機構の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について
図1~
図8を参照して説明すれば以下の通りである。
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図3を参照して説明すれば以下の通りである。本実施形態においては、バイタルサインの測定対象である測定対象者に接近して測定器を差し出すロボットについて説明する。
【0011】
〔1.ロボット1の構成〕
図1及び
図2を参照して本実施形態の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係るロボット1の機能ブロック図である。また、
図2は、ロボット1の外観図である。
【0012】
ロボット1は、例えば施設内で医療介護等の用途に用いられるロボットであって、制御部10、アーム11、検知部13、走行部14、通信部18及び記憶部19を備えている。
【0013】
制御部10は、ロボット1全体を統括する制御装置である。制御部10は、例えば、測定器12が測定対象者に近づくようにアーム11を制御する近接処理と、測定器12に測定対象者のバイタルサインを測定させる測定処理とを実行する。
【0014】
また、制御部10は、検知部13の検知結果に含まれる人物を識別する。制御部10が人物を識別する方法は、従来技術を用いてもよい。また、制御部10が、ニューラルネットワーク機構を備え、人物の識別について機械学習を行う構成でもよい。
【0015】
また、制御部10は、図示しないスピーカー等を介して、例えば測定対象者の姿勢変更を促すアナウンスを行う機能を有していてもよい。
【0016】
アーム11は、1又は複数の関節を有するロボットアームであって、測定器12を備えている。また、アーム11は、ロボット1が狭い場所を通れるように、コンパクトに折り畳むことができることが望ましい。また、アーム11の詳細な構成例については後述する。
測定器12は、測定対象者のバイタルサインを測定する機器である。上述したバイタルサインとは、測定対象者の体温、血圧、脈拍、呼吸、或いは血中酸素濃度等に例示される、測定対象者の生体活動に関する情報である。また、測定器12が位置する場所は、特に限定されないが、アーム11の先端付近であることが望ましい。
【0017】
また、測定器12は、測定部位に対して、非接触検知と接触検知との一方又は双方が可能であってもよい。非接触検知の一例としては、身体の表面の体温、呼吸変動、又は外観から推定可能な情報の検知等が挙げられる。接触検知の一例としては、脈拍、血圧、又は血中酸素濃度等が挙げられる。
【0018】
検知部13は、ロボット1の周囲の人物を検知する。以下、検知部13は、ロボット1の周囲を撮像するカメラを備えるものとして説明する。
【0019】
走行部14は、ロボット1を移動させる機能を有する車輪等の部材である。なお、走行部14は、例えばキャタピラ等によって実現される構成でもよい。
【0020】
通信部18は、サーバ等の外部の装置との通信処理を行う。記憶部19は、各種データを保持する記憶装置である。記憶部19は、上述した機械学習における各種パラメータ等、制御部10が人物を識別する場合に参照する情報、各人物の身長や体重及び負傷箇所等を示す情報、並びにバイタルサインの測定結果等を、例えばデータベース形式で格納する。
【0021】
なお、ロボット1が備える各部材は単数であることに限定されず、複数の当該部材を備える構成でもよい。また、各部材における上述した処理の一部が、他の部材によって実行されてもよい。また、ロボット1が備える各部材における上述した一部の処理が、当該外部の装置によって実行される構成でもよい。
【0022】
〔2.処理の流れ〕
以下、ロボット1が測定対象者に接近して測定器12を差し出す処理の流れについて、
図1及び
図3を参照して説明する。
図3は、本実施形態に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【0023】
(ステップS101)
ステップS101において、制御部10は、検知部13にロボット1の周囲の画像を撮像させる。そして、一態様において、予め設定された測定対象者の方へ移動するように走行部14を制御してロボット1を適宜移動させる。例えば、記憶部19に各人のベッドの位置を示す情報が格納されており、制御部10が、当該情報を参照してロボット1を移動させる方向を決定してもよい。また、他の態様において、予め設定された巡回ルートに従って移動するように走行部14を制御してロボット1を適宜移動させてもよい。
【0024】
なお、制御部10が検知部13にロボット1の周囲の画像を撮像させて周囲の物体を認識する処理は、以降のステップにおいても継続する。
【0025】
また、各測定対象者におけるバイタルサインの測定頻度は互いに異なっていてもよい。例えば、深刻な健康状態にある測定対象者に対しては、そうでない測定対象者によりも高い頻度でバイタルサインの測定を行ってもよい。
【0026】
(ステップS102)
続いて、ステップS102において、制御部10は、ステップS101における検知部13の検知結果、つまり撮像画像と、記憶部19とを参照して、当該撮像画像内に測定対象者が存在するか否かを判定する。撮像画像内の測定対象者を特定した場合は、続いてステップS103の処理が実行され、そうでない場合は、再度ステップS101の処理が実行される。
【0027】
また、本ステップ又は以降の任意のタイミングにおいて、制御部10は、測定対象者の顔に応じた判定、又は呼吸状態についての判定を行ってもよい。ここで、顔に応じた判定とは、例えば、顔によって人物を識別する判定、又は表情、顔色、若しくは顔の表面の体温等の異常の有無についての判定等を意味する。また、呼吸状態についての判定とは、例えば呼吸音、又は胸郭領域若しくは胸郭変動の異常の有無についての判定を意味する。
【0028】
また、制御部10は、検出した測定対象者の顔色と、記憶部19に格納された、健康状態にある当該測定対象者の顔色、又は健康状態にない当該測定対象者の顔色とを比較し、判定結果、つまり顔色の状態又は良し悪しを記憶部19に格納してもよい。
【0029】
また、制御部10は、顔によって推定した人物を確認するための声掛けであって、例えば「~さんですか?」と名前を呼びかける声掛けを行ってもよい。また、制御部10は、測定対象者の顔画像から抽出した表情や色相に異常があれば、例えば「気分がよくないですか?」などと声掛けを行ってもよい。また、制御部10は、顔画像から推定される、又は図示しないサーモグラフによって測定される顔の表面の温度に異常があれば、例えば「熱っぽいですか?」などと声掛けを行ってもよい。また、制御部10は、測定対象者の呼吸状態に異常があれば、例えば「呼吸が苦しいですか?」などと声掛けを行ってもよい。
また、測定対象者から健康状態の異常を自覚する旨の返答があった場合、制御部10はその旨を通知する情報を外部の装置に送信してもよい。
【0030】
なお、制御部10は、予め設定された測定対象者以外の人物に対しても上述した顔に応じた判定等を行い、異常があると判定した場合には声掛けを行ってもよい。
【0031】
(ステップS103)
続いて、ステップS103において、制御部10は、ステップS102において特定した測定対象者に近づくように走行部14を制御する。
【0032】
一態様において、制御部10は、ステップS102において特定した測定対象者に応じた方向から、当該測定対象者に近づくように走行部14を制御してもよい。例えば、測定対象者が半身麻痺である場合、制御部10は、当該測定対象者の体に不自由の無い方向から近づくように走行部14を制御してもよい。また、一態様において、測定対象者が隻眼である場合、制御部10は、当該測定対象者の不自由が無い目の方向から近づくように走行部14を制御してもよい。上記の構成によれば、測定対象者の不安感を抑制できることに加え、安全性が向上する。
【0033】
なお、制御部10は、必ずしも測定対象者ごとに近づく方向を制御しなくともよい。例えば、制御部10は、測定対象者に対して一律で最短距離となる方向から当該測定対象者に近づくように走行部14を制御する構成でもよい。
【0034】
(ステップS104)
続いて、ステップS104において、制御部10は、測定器12が測定対象者に近づくようにアーム11を制御する近接処理を実行する。好ましくは、制御部10は、測定器12が測定対象者の測定部位に近づくようにアーム11を制御する。
【0035】
一態様において、制御部10は、ステップS101において特定した測定対象者に応じた位置に測定器12が位置するように、アーム11を制御する。例えば、制御部10は、測定対象者に応じて異なる高さにアーム11を差し出すように制御してもよい。また、一態様において、測定対象者が負傷している場合、制御部10は、アーム11が当該負傷箇所にぶつからないように避けてアーム11を差し出すように制御してもよい。
【0036】
このように、ロボット1が備える制御部10は、近接処理において、測定対象者に応じた位置に測定器12が位置するように、アーム11を制御してもよい。上記の構成によれば、測定対象者ごとの好適な場所に測定器12を移動させることができる。
【0037】
なお、ステップS103におけるロボット1が測定対象者に近づく方向、及び本ステップにおけるアーム11の差し出し位置は、毎回一律でなくともよい。例えば、制御部10は、利用者の身体、性格、嗜好の事前情報や、測定対象者の姿勢、例えば、測定対象者がベッドに寝ているか車椅子に座っているか等の状態に応じて当該方向などを変化させてもよい。
【0038】
なお、制御部10は、必ずしも測定対象者ごとに対応する位置に測定器12が位置するようにアーム11を制御しなくともよい。例えば、制御部10は、測定対象者に対して一律で、測定するバイタルサインの種別に応じた位置にアーム11を制御してもよい。
【0039】
また、
図3のフローチャートでは、ステップS104は、ステップS103の後に行うようになっているが、ステップS103とステップS104とは、一部または全部を並行して行う構成であってもよい。
【0040】
(ステップS105)
続いて、ステップS105において、制御部10は、測定器12に、測定対象者のバイタルサインを測定させる測定処理を実行する。また、制御部10は、測定処理を行う場合に、身体を動かさないように当該測定対象者に対してアナウンスしてもよい。また、制御部10は、アーム11の一部を用いて、測定対象者が身体を動かさないように支えてもよい。そして、制御部10は、測定処理の測定結果を、後程参照可能となるように記憶部19に格納する。また、後述するように、制御部10が通信部18を介して、当該測定結果を外部の装置に送信する構成でもよい。また、ロボット1は、当該測定結果を例えば音声によって測定対象者に対して提示してもよい。
【0041】
(ステップS106)
続いて、ステップS106において、制御部10は、測定対象者に近づけていたアーム11を元に戻し、測定対象者から離れるように走行部14を制御する。以上が、
図3のフローチャートに基づく処理の流れである。
【0042】
上述したように、本実施形態に係るロボット1は、測定対象者のバイタルサインを測定する測定器12が搭載されたアーム11と、制御部10と、備え、制御部10は、測定器12が測定対象者に近づくようにアーム11を制御する近接処理と、近接処理の後、測定器12に測定対象者のバイタルサインを測定させる測定処理と、を実行する。
【0043】
上記の構成によれば、測定対象者の負担を軽減することができるロボット1を実現できる。また、上記の構成を備えるロボット1による計測は、測定対象者がリストセンサ等のウェアラブルデバイスを付帯するウェアラブル計測と比較して以下の利点がある。
【0044】
(1)測定対象者がウェアラブルデバイスを着脱する必要が無い。
【0045】
(2)顔の表情等、測定対象者の外観から得られる情報に応じた測定が容易である。
【0046】
(3)刺激応答型の計測、例えばアームを差し出した場合の眼の動き、認知状態の計測等が容易である。
【0047】
(4)物理的な計測、例えば、アームを握る握力、手先の到達範囲、又は腕の可動範囲等の計測が容易である。
【0048】
(5)測定対象者の姿勢を変更させる誘導、例えば計測する腕の高さを胸の高さに引き上げる誘導等が容易である。
【0049】
なお、制御部10は、通信部18を介してバイタルサインの測定結果、上述した顔色等の状態、及び後述する認知運動に関する測定結果等を、サーバや施設の職員が保持する端末等の外部の装置に送信してもよい。そして、当該サーバは、ロボット1から受信した当該測定結果を、例えばデータベース形式に集約して保存してもよい。
【0050】
また、ロボット1から当該サーバに保存された情報を参照してもよい。例えば、当該サーバが、測定対象者の顔の特徴を示す情報等を保存し、制御部10が、通信部18を介して当該情報を参照する構成でも構わない。
【0051】
〔実施形態1の変形例〕
検知部13が、カメラに替わり測域センサ又は赤外線センサ等を備え、制御部10は、当該センサの検出結果を参照して、測定対象者の位置を把握する構成でもよい。上記構成においては、制御部10は、例えば、各人が所持する又は各人が所持する杖や車椅子等に備えられる、識別信号を発するビーコン、ICタグ、ARマーカのような機器や、人の声によって、測定対象者を識別してもよい。また、制御部10は、それらの機器による識別と、上述した撮像画像による識別とを併用してもよい。
【0052】
つまり、制御部10は、上述した方法によって測定対象者を特定し、当該測定対象者に応じた方向から近づくように走行部14を制御し、当該測定対象者に応じた近接処理を行っても構わない。
【0053】
なお、本変形例における検知部13が、カメラに替わり測域センサ又は赤外線センサ等を備える構成は、以降の実施形態に対しても適用可能である。
【0054】
〔実施形態1の変形例2〕
ステップS101、S102の処理によって、例えば所定の時間以上、測定対象者が特定されない場合、或いは測定対象者が予め設定されていない場合には、例えばロボット1の巡回ルート上に位置する人物に対して、ステップS103以降の処理に相当する、バイタルサインの測定処理を実行し、且つ任意のタイミングで顔画像を取得して、後でバイタルサインの測定結果と当該顔画像とを手動で紐づけることが可能な構成でもよい。
【0055】
なお、上述した実施形態1の変形例1、2は、後述する各実施形態に対しても適用可能である。
【0056】
(アーム11の構成例1)
アーム11の構成例ついて
図7及び
図8を参照して説明する。
図7の各図は、アーム11が有する機構の一例を示す図である。
図7に示すように、アーム11は、ボールジョイント22a、22b、ワイヤ23、及び滑車24を備えている。ボールジョイント22a、22bは、先端部分に球体状の形状を有し、アーム11の関節として機能する。また、ボールジョイント22a、22bは、関節部分が動かないように固定化する機構を有する。また、当該機構の詳細については後述する。ワイヤ23は、アーム11の周囲に沿うように配置されているワイヤである。ワイヤ23が、アーム11の外部に位置する、図示しない牽引機構によって所定の方向に牽引されることにより、当該方向に応じてアーム11の姿勢が変更される。滑車24は、アーム11の先端付近に配置された滑車であり、自身の周囲にワイヤ23をかけることができる溝と、回転軸とを有する。
【0057】
図7(a)は、ボールジョイント22aに対応する関節部分が固定化されてワイヤ23の一方が矢印の方向に牽引された場合における動作を示している。また、
図7(b)は、ボールジョイント22bに対応する関節部分が固定化されてワイヤ23の一方が矢印の方向に牽引された場合における動作を示している。また、
図7(c)は、双方の関節部分が固定化されない状態でワイヤ23の一方が矢印の方向に牽引された場合における動作を示している。
【0058】
また、アーム11に対して一定以上の負荷がかかった場合、ワイヤ23が外れることによってアーム11が脱力するような構成でもよい。これにより、安全性を向上させることができる。
【0059】
次に、アーム11の関節部分を固定化する機構について、
図8を参照して説明する。
図8の各図は、当該機構の一例を示す断面図である。
図8に示すように、アーム11の関節部分は、ボールジョイント22、受け部27、バネ28、及びソレノイド29を有している。
【0060】
ここで、
図8(a)は、関節部分が固定化された場合における動作を示している。具体的には、受け部27が、バネ28の作用によってボールジョイント22を抑え込んで動かないように固定することによって、関節部分を固定化する。また、
図8(b)は、関節部分が固定化されない場合における動作を示している。具体的には、ソレノイド29が、バネ28の作用よりも強い力で受け部27を引き寄せることによって、ボールジョイント22と受け部27との間の摩擦を解消し、関節部分を曲げることができるようにする。
【0061】
なお、別の態様として、ソレノイド29がプッシュソレノイドとして機能し、ソレノイド29が受け部27を、
図8における上方に押すことによってボールジョイント22を抑え込んで動かないように固定化する構成でもよい。
【0062】
また、アーム11の関節部分が、受け部27、バネ28およびソレノイド29に替わり、超音波モータを備える構成でもよい。
【0063】
上述したように、
図7及び
図8に例示したアーム11は、複数の関節部分と、前記複数の関節部分のそれぞれについて固定化するか否かを制御可能な機構と、前記複数の関節部分のうち固定化されていない関節部分を曲げるワイヤ23とを備えている。上記の構成によれば、アーム11を軽量化し、少ないワイヤ数で多関節を制御することができる。
【0064】
(アーム11の構成例2)
アーム11の構成例1においては、ソレノイド29に対する制御を介してアーム11の関節部分を固定化する機構について説明したが、関節として機能するボールジョイント22を固定化する機構は、磁場の変化や電圧の印加などの外部刺激により特性を変化させる機能性流体を介してなされる構成でもよい。ここで、上述した機能性流体の一例としては、磁性流体およびMR流体(Magneto Rheological Fluid)等が挙げられる。
【0065】
例えば、粘性を可逆的に制御することができる機能性流体をボールジョイント22の周囲の空間に充填し、当該機能性流体の粘性を上昇させてボールジョイント22に対するブレーキとして作用させることにより、アーム11の関節部分を固定化する機構を実現してもよい。本例の構成においても、アーム11を軽量化し、少ないワイヤ数で多関節を制御することができる。
【0066】
〔実施形態2〕
本発明の第2の実施形態について、
図1、
図3及び
図4を参照して説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。本実施形態においては、ロボットが、測定処理の前にアームの位置を調整する構成について説明する。
【0067】
〔1.ロボット1の構成〕
本実施形態においても、
図1に示す構成を用いる。
【0068】
〔2.処理の流れ〕
以下、ロボット1が、測定処理の前にアーム11の位置を調整する処理の流れについて、
図1、
図3及び
図4を参照して、ステップごとに説明する。
図4は、本実施形態に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【0069】
(ステップS101~S103)
ステップS101~S103においては実施形態1と同様の処理を行う。ステップS103の処理が実行されたのち、続いてステップS204の処理が実行される。
【0070】
(ステップS204)
続いて、ステップS204において、制御部10は、測定対象者が掴める位置までアーム11を移動させる処理を行う。結果的に、測定器12が測定対象者に近づくので、上記処理は、上述した近接処理であるとも解釈してよい。そして制御部10は、測定対象者に対して、アーム11の例えば先端部分の把持を促す旨のアナウンスを行う。
【0071】
また、本ステップ又は以降の各ステップにおけるアナウンスにおいて、制御部10は、当該アナウンスに対する測定対象者の反応を、認知運動に関する測定結果として記憶部19に記録してもよい。例えば、制御部10は、測定対象者が当該アナウンスに対する反応に所定の時間以上の時間を要するようであれば、認知運動に関する能力が低下していることを示す情報を、記憶部19に記録するか、図示しないサーバに送信してもよい。
【0072】
(ステップS205)
続いて、ステップS205において、制御部10は、測定対象者がアーム11を掴んだか否かの判定を行う。ここで、制御部10は、アーム11に対する荷重が加わった場合に、測定対象者がアーム11を掴んだものと判定してもよい。又は、アーム11自体に圧力センサが備えられており、制御部10が当該圧力センサの検知結果を参照して当該判定を行ってもよい。なお、上述の圧力センサは、例えば力覚センサなどに置き換えられてもよい。
【0073】
制御部10が、測定対象者がアーム11を掴んだものと判定した場合、続いてステップS206の処理が実行され、そうでない場合には、ステップS204におけるアナウンス処理を再度実行する。
【0074】
また、本ステップにおいて、制御部10は、測定対象者がアーム11を掴む場合における握力、又は指先の動き等についての判定を行ってもよい。また、制御部10は、探索的に測定対象者から遠い位置や、握りづらい位置にアーム11を差出し、アーム11が備える圧力センサの計測値を参照して、当該測定対象者のファンクショナルリーチ等の身体機能を計測してよい。そして制御部10は、当該測定対象者の握力やファンクショナルリーチ等を示す情報を記憶部19に記憶するか、図示しないサーバに送信してもよい。また、制御部10は、当該情報、又は当該情報の推移を参照して、当該測定対象者におけるフレイルの発生又は進行についての予想を示す情報を記憶部19に記憶するか、図示しないサーバに送信してもよい。また、制御部10がフレイルの発生又は進行を予想する方法は特定の方法に限定されず、例えば、所定の身体機能を示す値が所定期間以上減少傾向にあれば、フレイルが発生し得るものと予想してもよい。
【0075】
(ステップS206)
続いて、制御部10は、アーム11操作によって、測定対象者の四肢等を適宜押すことにより、測定対象者がより測定処理に適した姿勢となるように補助又は誘導する。そして、制御部10は、測定器12が測定対象者に近づくようにアーム11を制御する。次いで制御部10は、測定器12の位置を調整するようにアーム11を制御してもよい。ここで、上述した測定器12の位置には、測定器12の角度も含まれる。
【0076】
例えば、一態様において、制御部10は、測定対象者の手元までアーム11を移動させたのち、測定器12の位置を測定に適した位置、例えば血圧を測定する場合には測定対象者の心臓よりも高い位置に測定器12が位置するようにアーム11を調整し、測定処理を行ってもよい。
【0077】
なお、上述の記載は、制御部10は、血圧を測定する場合に測定対象者の心臓よりも高い位置に測定器12を位置させなければならないことを意味しない。また、制御部10は、測定器12の位置に応じて血圧の測定結果を補正してもよい。
【0078】
このように、制御部10は、近接処理の後、測定処理の前に、測定器12の位置を調整するようにアーム11を制御する調整処理を実行してもよい。また、上記調整処理には、上述したような、制御部10がアーム11を介して測定対象者が姿勢変更するように補助又は誘導する処理も含まれる。
【0079】
また、測定対象者が姿勢変更するように補助又は誘導する処理は、必ずしも測定対象者にアーム11を掴ませることを伴う構成に限定されない。例えば一態様において、制御部10がアナウンスしたのち、又はアナウンスしながら、アーム11を測定対象者の脇の下に差し込み、姿勢変更を促す構成でもよい。また、制御部10は、測定対象者の姿勢変更を行わない場合にも、測定処理の前に上述した調整処理をおこなってよい。
【0080】
上記の構成によれば、測定器12を、測定対象者に対してより好適な位置に移動させることができる。上述した処理が実行されたのち、続いてステップS105の処理が実行される。
【0081】
(ステップS105、S106)
ステップS105、S106においては、実施形態1と同様の処理を行う。ただし、制御部10は、ステップS106の開始前に適宜アナウンスしてアーム11を制御し、測定対象者を元の姿勢に戻すように誘導してもよい。以上が
図4のフローチャートに基づく処理の流れである。
【0082】
〔実施形態3〕
本発明の第3の実施形態について、
図1、
図5及び
図6を参照して説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。本実施形態においては、所定の場所に位置するロボットが、測定器を測定対象者に差し出す構成について説明する。
【0083】
〔1.ロボット1aの構成〕
図5を参照して本実施形態の構成について説明する。
図5は、本実施形態に係るロボット1aの機能ブロック図である。ロボット1aは、
図1に示すロボット1が、走行部14を備えない構成である。本実施形態においては、ロボット1aは所定の位置に配置されており、測定対象者が、ロボット1aの近傍に適宜移動してバイタルサインの測定処理が行われる。
【0084】
〔2.処理の流れ〕
以下、ロボット1aが測定器12を差し出す処理の流れについて、
図5及び
図6を参照して、ステップごとに説明する。
図6は、本実施形態に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【0085】
(ステップS301)
測定対象者は、ロボット1aの近傍であって、少なくともアーム11が届く範囲に適宜移動する。そして、ステップS301において、制御部10は、検知部13に測定対象者を撮像させる。なお、検知部13による撮像はロボット1aの稼働中、常に行われる構成でもよいし、測定対象者の操作や声等に起因して行われる構成でもよい。
【0086】
また、本ステップ又は以降のタイミングにおいて、制御部10は、測定対象者の顔色を判定してよい。具体的には、制御部10は、検出した測定対象者の顔色と、記憶部19に格納された、健康状態にある当該測定対象者の顔色、又は健康状態にない当該測定対象者の顔色とを比較し、判定結果を測定結果の一部として記憶部19に格納してよい。
【0087】
(ステップS302)
続いて、ステップS302において、制御部10は、ステップS301における検知部13の検知結果、つまり撮像画像を参照して、当該撮像画像内の測定対象者を識別して特定する。なお、当該撮像画像内の人物に関する情報が記憶部19に格納されていない等の要因によって、制御部10が測定対象者を特定できなかった場合には、
図6のフローチャートに基づく処理を終了する。
【0088】
(ステップS104、S105)
ステップS104、S105においては、実施形態1と同様の処理を行う。ステップS105の処理が実行されたのち、続いて、ステップS306の処理が実行される。
【0089】
(ステップS306)
続いて、ステップS306において、制御部10は、測定対象者に近づけていたアーム11を元に戻すように制御する。以上が
図6のフローチャートに基づく処理の流れである。なお、実施形態1で上述したように、ロボット1は、バイタルサインの測定結果等を、外部のサーバに送信する構成でもよい。
【0090】
〔実施形態2の変形例〕
ロボット1aは、記憶部19に情報が格納されていない、つまり登録されていない人物がバイタルサインの測定を試みた場合、上述したように一連の処理を終了する構成でもよいし、バイタルサインの測定を行い、その場で測定結果を提示する構成でもよい。
【0091】
〔ソフトウェアによる実現例〕
ロボット1(1a)の制御ブロック(特に制御部10)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0092】
後者の場合、ロボット1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0093】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0094】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るロボット(1、1a)は、測定対象者のバイタルサインを測定する測定器(12)が搭載されたアーム(11)と、制御部(10)と、を備え、前記制御部は、前記測定器が前記測定対象者に近づくように前記アームを制御する近接処理と、前記近接処理の後、前記測定器に前記測定対象者のバイタルサインを測定させる測定処理と、を実行する構成である。上記の構成によれば、測定対象者の負担を軽減することができるロボットを実現できる。
【0095】
本発明の態様2に係るロボットは、上記の態様1において、前記制御部は、前記近接処理において、前記測定対象者に応じた位置に前記測定器が位置するように、前記アームを制御する構成としてもよい。上記の構成によれば、測定対象者ごとの好適な場所に測定器を移動させることができる。
【0096】
本発明の態様3に係るロボットは、上記の態様1又は2において、走行部(14)を更に備え、前記制御部は、前記近接処理の前に、または、前記近接処理と並行して、前記測定対象者に応じた方向から前記測定対象者に近づくように前記走行部を制御する構成としてもよい。上記の構成によれば、測定対象者の不安感を抑制できることに加え、安全性が向上する。
【0097】
本発明の態様4に係るロボットは、上記の態様1~3のいずれか一項において、前記制御部は、前記近接処理の後、前記測定処理の前に、前記測定器の位置を調整するように前記アームを制御する調整処理を実行する構成としてもよい。上記の構成によれば、測定器を、測定対象者に対してより好適な位置に移動させることができる。
【0098】
本発明の態様5に係るロボットは、上記の態様1~4のいずれか一項において、前記アームは、複数の関節部分と、前記複数の関節部分のそれぞれについて固定化するか否かを制御可能な機構と、前記複数の関節部分のうち固定化されていない関節部分を曲げるワイヤ(23)とを備えている。上記の構成によれば、アームを軽量化し、少ないワイヤ数で多関節を制御することができる。
【符号の説明】
【0099】
1、1a ロボット
10 制御部
11 アーム
12 測定器
13 検知部
14 走行部
19 記憶部