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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】送風椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/74 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
A47C7/74 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021064788
(22)【出願日】2021-04-06
(65)【公開番号】P2022160183
(43)【公開日】2022-10-19
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504119262
【氏名又は名称】株式会社グローバルアーツ
(73)【特許権者】
【識別番号】591280186
【氏名又は名称】株式会社オリバー
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】吉見 弘美
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-250660(JP,A)
【文献】特表2019-526493(JP,A)
【文献】実開平02-031543(JP,U)
【文献】実開昭58-121258(JP,U)
【文献】中国実用新案第210227468(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/74
B60N 2/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と背面部とを有し、背面部内送風と背面部外送風を両立した間接的な送風機構を有する椅子であって、
前記送風機構は、室内気を給気して主送風管に送風する駆動部と、前記駆動部から前記背面部内に上下方向に向けて左右一対に配される主送風管と、前記主送風管に前方に向けて開口した開口部とを有する背面部外送風の送風機構と、
前記主送風管に左右内方に伸びる複数の副送風管を有し、前記副送風管の先端開口部より背面部に送風する背面部内送風の送風機構と、を有することを特徴とする送風椅子。
【請求項2】
主送風管の上管部と副送風管は、背面部内の背面基部に配される低通気層と、前記背面部の外皮材の内側に配される高通気層との間に配されることを特徴とする請求項1に記載の送風椅子。
【請求項3】
座部と背面部の背当部とに配される電熱機構を有し、
送風機構の主送風管は、箱状の背面基部内に配される中管部と、前記背面基部から露出する上管部と、を有するものであって、
前記主送風管が前記背面基部から露出する露出位置は、前記背面部の電熱機構よりも上方に位置することを特徴とする請求項2に記載の送風椅子。
【請求項4】
給気位置は、座部の下方に位置する収容部の前面部側に位置することを特徴とする請求項1、2および3のいずれか一項に記載の送風椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接的な送風機能を有する椅子に係る発明である。
【背景技術】
【0002】
背中への送風による温度調整可能な椅子として、特許文献1は立体表皮とクッション材とシートフレームからなり、シートフレームに吹出口を形成した運転席を開示している。シートフレームは、内部が通気路からなる四角形状の中空枠とした座席枠と、内部が通気路からなる四角形状の中空枠とした背もたれ枠とにより構成し、通気路から中空枠に先端を開口した送風パイプを延ばし、送風パイプ先端を立体表皮の裏面側に向けて吹出口としている。また特許文献2のように、ヒータによる暖房と通気孔からの送風による冷房とを備えた温度調整椅子も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-250660号公報
【文献】実開昭60-115052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の運転席は、自動車用のもので、吹出口を立体表皮に向けて形成しており、着座者に効率よく吹き出すことを効果とするものである。このように冷房機構を備えた椅子は従来から存在しているが、着座者に向けて直接冷風を吹き付けるものであった。このような直接吹き付けは直接着座者を冷却する効果は高いものであるが、着座者からすると冷風を直接吹き付けられることへの不快感を受ける場合があり、自然な状態で快適に着座できる送風椅子が求められていた。
【0005】
そこで、本発明は、冷房装置と連結して直接冷風や温風を背面部から着座者に直接射出するものではなく、室内の空気を循環させて着座者の周囲に送風する間接送風であって、背面部内の空気を循環させる送風を行うことで着座者に爽快感をもたらす椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の椅子は、座部と背面部とを有し、背面部内送風と背面部外送風を両立した間接的な送風機構を有する椅子であって、前記送風機構は、室内気を給気して主送風管に送風する駆動部と、前記駆動部から前記背面部内に上下方向に向けて左右一対に配される主送風管と、前記主送風管に前方に向けて開口した開口部とを有する背面部外送風の送風機構と、前記主送風管に左右内方に伸びる複数の副送風管を有し、前記副送風管の先端開口部より背面部に送風する背面部内送風の送風機構と、を有することを特徴とするものである。
【0007】
また、主送風管の上管部と副送風管は、背面部内の背面基部に配される低通気層と、前記背面部の外皮材の内側に配される高通気層との間に配されることが好ましい。
【0008】
また、座部と背面部の背当部とに配される電熱機構を有し、送風機構の主送風管は、箱状の背面基部内に配される中管部と、前記背面基部から露出する上管部と、を有するものであって、前記主送風管が前記背面基部から露出する露出位置は、前記背面部の電熱機構よりも上方に位置することが好ましい。
【0009】
また、給気位置は、座部の下方に位置する収容部の前面部側に位置することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明により、着座者の周囲に吹き出す背面部外送風と椅子の背面部内で送風する背面部内送風とからなる送風機構を両立することで、背面部内送風による背面部内の空気の籠りをなくして爽快感をえることができる。また、主送風管から着座者の周囲に吹き出す背面部外送風を両立することで、背面部内送風の空気が両側の背面部外送風に引っ張られるようにゆっくりとミスト状に背面部表面からにじみ出るようにしている。このような間接送風を行うことで、着座者に冷風を吹き付ける直接送風の場合よりもより爽快感を得る間接送風機構を設けた椅子を提供することが可能になる。
【0011】
請求項2に記載の発明により、背面基部側の低通気層と外皮側の高通気層との間に通風機構を配することにより、背面部内の送風がなされるとともに着座者の背中に送風機構による違和感をなくすことができる。これに加え、背面基部側に低通気層があることで、背面部の後側に背面部内送風の空気が流出せずに背面部の前側(正面側)がにじみ出るようにしている。
【0012】
請求項3に記載の発明により、座部の背面部の下側に電熱機構を設けて着座者の下半身を温めて座り心地をよくしているが、この電熱機構が配される部位の主送風管を箱状の背面基部内に位置させることで、電熱機構による主送風管が温められて不快感を与える温風が生ぜず、爽快感を得る送風機構を実現することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明により、給気位置を座部下方に配することで、夏場は冷房などの空調装置の外気を給気できるとともに、冬場は足元ヒーター等の外気を給気できる。これらの外部空気と同じ温度の空気を給気することで、着座者に違和感のない送風を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の椅子の空調設備を模式的に示した正面図である。
図2図1に示す椅子の平面図である。
図3図2のZ-Z線で切断した側面説明図である。
図4】副送風管による送風を模式的に示した上管部周辺の拡大正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る椅子の実施形態を添付の図面に基づいて説明する。本発明は、以下の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形、付加等が可能である。なお、以下の説明において、前後、上下方向などは実施形態を説明する便宜上用いたものに過ぎず、本発明の椅子の設置、使用姿勢などを限定するものではない。
【0016】
本実施形態の椅子は図1に示すように、着座者を保持する座部1及び背面部2と、座部1を下方から支持する脚部4、4と、脚部4、4から上方に向けて連続して形成される肘掛け部5、5を有する。椅子は脚部4、4下面部にキャスター41、41を有し、キャスター41、41により所望の場所に容易に移動自在としている。なお、座部1に背面部2を連結するリクライニング機構を設けて、背面部2と座部1との相対角度を調整自在としてもよい。
【0017】
本実施形態の椅子は、自動車の運転席のような所定位置に固定されたものではなく、部屋の所定場所に移動させて使用する室内用の椅子である。また、空調装置と連結して直接的に冷風や温風を背面部2から着座者に射出するものではなく、室内の空気を循環させ、着座者の周囲に送風する間接送風、背面部2の内部の空気を循環させる送風を行うことで背面部2に接する着座者に爽快感をもたらすものである。本説明において直接送風とは着座者に送風口を向けて空気を直接着座者に吹き付けることをいう。これに対して本実施形態の間接送風とは、主送風管の開口部の開口方向と副送風管の開口方向が着座者(特に体幹部分)に向いておらず送風を直接着座者に吹き付けるものでなく、着座者の周囲に送風して着座者に爽快感を与えるものをいう。
【0018】
座部1は、図2に示すように周囲に丸みを持たせた平面視四角形状とし、図3に示すように上方に膨らむ前端部から後方下向きに傾斜した座面を有し、着座者の尻部や太ももなどを下方から支持している。座部1は、木質素材からなる箱状の座基部11と、座基部11を覆うウレタン材や綿素材からなる座面クッション材12と、座面クッション材12の表面を覆うレザー素材からなる座面表皮材13とからなる。
【0019】
また、座部1両側に肘掛け部5、5を有し、肘掛け部5により着座者の前腕や肘を保持可能としている。肘掛け部5は、木質素材により形成した肘フレーム(図示しない)と、ウレタン素材や綿素材などにより形成したクッション材(図示しない)と、レザー素材により形成した外皮材とからなる。
【0020】
背面部2は、図1及び図3に示すように縦長の隅を丸めた略四角形状とし、背面部2の横幅は着座者の肩幅よりも広い幅方向長さを有している。背面部2は、下方の座面1から上方やや後方に向けて立ち上がる腰当部25と、腰当部25から上方に連続するものであって前方に向けて凸となる背当部26と、背当部26から上方に連続するものであって後方に向けて凹みが形成される肩当部27と、肩当部27から上方に連続するものであって背当部26と同じ程度に前側に凸となるように湾曲し、背面部2の上辺となる頭当部28とからなる。
【0021】
腰当部25は、着座者の腰付近が当たる位置を示すものであり、背面部2の上下長さの約5分の2の上下長さを有する。背当部26は、着用者の背中が当たる位置を示すものであり、肩当部27は着用者の肩や背中のうちの脇下部分が凹みに当たる位置を示すものである。背当部26と肩当部27とは上下長さをほぼ同じくしている。頭当部28は、着用者の頭を当てる位置であって、湾曲する前側で着用者の首が当たり、着用者が頭を後方に倒すと頭当部28の湾曲する上側に自然に載る位置としている。
【0022】
背面部2は、荷重を支える縦長の背面基部30を有し、背面基部30の後側に内クッション材31を配し、内クッション材31の後側に外クッション材32を配し、外クッション材32の後側に外皮材33を配している。背面基部30の前側には、内クッション材31を配し、内クッション材31の前側に外クッション材32、32を二重に配している。二重に配した外クッション材32、32の前側に後述の送風機構60を配し、送風機構60の前側に通気クッション材34を配し、通気クッション材34の前側に外皮材33を配している。
【0023】
背面部2は、背面基部30の下方から帯状の内クッション材31、外クッション材32を掛け渡し、背面基部30の上縁で折り返して、前側と後側に内クッション材31と外クッション材32が配されるようにしている。そのため、背面基部30の上側にも上記内クッション材31、外クッション材32が配されている。
【0024】
背面基部30は、背面部2の内部に配される木製の箱型フレームである。具体的には、両側に直方体の木材を配し、両木材の前面側と後面側に木製板を配することで、内部に空洞を有する箱状フレームとしている。
【0025】
内クッション材31は、厚みが1cm程度の非通気性のクッションであり、硬質のウレタン繊維が高密度に配される通気性の無いまたは極めて低い素材により形成することで低通気層を形成している。外クッション材32は、厚みを2cm弱とする軟質のウレタン素材としている。外クッション材32に用いる軟質のウレタン素材は、軟質のウレタン繊維を配しており、通気性はあるが低いものであり中通気層を形成している。
【0026】
通気クッション材34は、高い通気性を有したクッションであり、厚みを2cm程度とする綿素材を用いている。綿素材は、高い通気性を有しつつ、クッション性を有するもので、高通気層を形成している。
【0027】
外皮材33は、背面部2の全面を覆うもので、格子状に通気口が複数形成されて通気性が高いメッシュ材を用いる。
【0028】
次に、送風椅子の送風機構60について説明する。送風機構60は、外気を取り込み、風を発生させるサーキュレーターである駆動部61と、電源部62と、吹出口を有する主送風管63と、副送風管64とからなり、駆動部61において取り込んだ外気を電源部62の電力により主送風管63、副送風管64を通じて吹出口から吹出可能としている。駆動部61及び電源部62は、両側の脚部4、4の間であって座部1の下方に位置する箱型木枠状の収容部42に収容して取り付けている。駆動部61の詳細は図示しないが送風ファン及び制御手段とからなり、送風ファンは斜流形状のインペラからなるロータリ式とし、電源部62はモバイルバッテリなどの小型の電源手段としているが外部電源から電力供給を受けるものでもよい。収容部42の前表面は、座面1の前端下方に位置し、メッシュ材を外皮にした送風ファンにより外気を取り入れる給気口67(給気位置)が形成されている。
【0029】
給気口67から外気を取り入れて送風する送風機構60を用いることで、室内の空気(外気)と同じ自然な温度の空気を送風することになり、直接的な冷房ではなく、間接的な送風による爽快感の実現を果たすことができる。また、冬場など室内で別機による暖房をとっている場合や、足元にヒータを置いている場合には、その暖房効果を有する外気を給気して送風することで外気と同じ温度の温かい空気を送風することができ、間接的な送風による爽快感の実現を果たすことが可能になる。
【0030】
主送風管63は、駆動部61から外気を送風するものであり、駆動部61から二手に分かれて座部1の後方から箱型の背面基部30の内部の両側を通り、腰当部25の位置で背面基部30の内部から前側に折曲して露出位置30aで背面部2内に露出し、背面部2の上下方向に沿って形成されている。主送風管63は、背面基部30の前側の内クッション材31、二重の外クッション材32、32の前側に位置し、通気クッション材34との間に位置している。また、主送風管63は、背面部2内の左右両側の一対に配されるところ、背面部2内の左右端に配することが好適である。主送風管63の開口部65からの送風が着座者の肩位置よりもさらに外方に位置して直接送風が当たらないようにしている。
【0031】
主送風管63は、駆動部61に接続して背面部2の背面基部30内に至るまでの下管部63aと、背面基部30内に位置する中管部63bと、背面基部30の露出孔30a(露出位置)から露出して、外クッション材32と通気クッション材34との間にある上管部63cとを有する。主送風管63は、内側の直径(内径)を19mmとする軟質塩化ビニル製のパイプやゴムホースにより形成している。
【0032】
本実施形態の背面部外送風について説明する。主送風管の上管部63cは、図3または図4に示すように、前方に向けて複数の開口部65、65を有し、送風の第1吹出口としている。複数の開口部65、65は背当部26、肩当部27、頭当部28に掛けて適宜複数開口されており、本実施形態は片側で11カ所ずつ等間隔に開口されている。最下位の開口部65は背当部26の最も突出した部位に位置し、最上位の開口部65は頭当部28の最も突出した部位に位置している。
【0033】
上管部63cの開口部65は、前側に向けているが、真正面よりも若干内側にずらした方向として具体的には5度内側に傾けた方向にしている。この開口部65により、上管部63cを通じて送風された外気は、通気クッション材34と外皮材33を通じて、着座者側に送風される。開口部65が着座者よりも左右外方に位置し、開口部65を若干内側にずらしたことにより、着座者の前方で交差するように向けて送風するようにしている(図2の矢印線A)。この開口部65、65は、直径を主送風管63の内径より小さい寸法8mmとしている。開口部65から送風される外気は、背面部2の外皮材33に手を当てると風があることが認識できる程度の送風量としている。
【0034】
次に、本実施形態の背面部内送風について説明する。左右両側の上管部63c、63cの各々の内側から、他方の上管部63c、63cに向けて複数の副送風管64、64を接続し、副送風管64の開口した先端を第2の吹出口としている。副送風管64は基端を主送風管63と連通して形成し、内径を主送風管63の内径より小さい寸法としているが、開口部65の開口面積と同じくしており、背面部内送風は背面部外送風と同じか圧力損失により減ぜられる程度の送風量としている。副送風管64も主送風管63と同じ素材である軟質塩化ビニル製パイプやゴムホースにより形成している。
【0035】
副送風管64は、上管部63cから他方の主送風管63に向けて左右方向に沿うように直線状に形成している。左右に向かい合う副送風管64、64はその先端(第2吹出口)を上下方向に若干ずらして左右方向に対向している。副送風管64、64から吹き出した外気は、外クッション材32と通気クッション材34との間で、各々左右方向に向けて送風され、背面部2内の空気を循環させるようにしている(図4の矢印線B)。副送風管64、64による送風により、背面部2内に着座者の熱が籠ることを防止し、熱の籠りによる外皮材33の表面体感温度を低くするようにしている。すなわち、外皮材33に手を当てると常に熱が籠っていない爽快感を得るようにしている。
【0036】
副送風管64、64は、上管部63cの長手方向に等間隔に並び、その間隔を開口部65、65の間隔より広い寸法とし、左右対称に形成している。最下位の開口部65より上方に最下位の副送風管64を取り付け、最上位の開口部65の直下に最上位の副送風管64を取り付け、肩当部27の最も凹む部位にも開口部65と並ぶように副送風管64を取り付けている。
【0037】
副送風管64は上下方向に6本並んでおり、肩当部27の最も凹む部位に位置する副送風管64は他の5本の副送風管64、64より中央付近に至るまで長く形成している。肩当部27の最も凹む位置に位置する副送風管64、64を長く配しているのは、着座者の脇下部分に位置することとなり、特に着座者のリンパ腺がある脇下部分の中央部分の送風状態を高めて、より外皮材33に手を当てると常に熱が籠っていない爽快感を得るようにしている。
【0038】
上記背面部外送風と背面部内送風を両立することで、着座者にさらなる爽快感を与えることができる。すなわち、背面部外送風により左右の開口部65、65から吹き出される外気の作用、外気への送風に応じて、背面部内送風により背面部2内で送風されている空気が外皮材33の広範囲からミストのようににじみ出るようにしている。出願人が3名の体感実験を行ったところ、送風なし、背面部外送風のみ、背面部内送風のみ、背面部外送風と背面部内送風を両立したものを比較実験したところ、背面部外送風と背面部内送風を両立させたものがもっとも爽快感を得ることができる結果となった。
【表1】
【0039】
副送風管64、64は、外クッション材32と通気クッション材34との間の空間を循環させるように通気している。副送風管64、64の後側は低通気層となる内クッション材31、中通気層となる外クッション材32、32となり、後側に循環させる外気が排出されず、外部には前側の高通気層となる通気クッション材34を通じてメッシュ材(外皮材33)を介して通気するようにしている。このようにすることで、副送風管64、64より吹き出される外気は、背面部2内で通気し、その後に背面部2の裏側ではなく、自然に背面部2の前側(着座者側)に向かうようにしている。
【0040】
また、送風機構60を有する側(前側)の外クッション材32は、後側に比して二重のクッション材が配され、送風機構60の前側に通気クッション材34が配されている。このようにすることで、送風機構60が内部に配された背面部2となるが、外クッション材32に送風機構の一部がうまりこみ、前側に通気クッション材34の存在により、着座者が背面部2に背中を当てても、送風機構60が当たって違和感を受けないようにしている。
【0041】
電熱機構70について説明する。電熱機構70は、図2及び図3に示すように、座部1を加温する座面電熱部71と、背面部2を加温する背面電熱部72とを有し、電源を送風機構60と共用して発熱するものであって、送風機構60より送風される部位の下方の座面や背面を温めるものである。
【0042】
座面電熱部71は背面部2より前方から座部1の最も膨れた部位までの範囲に亘る形状とし、座面表皮材13の下に配されている。座面電熱部71は柔軟性を有した面状のヒータからなり、座面表皮材13と座面クッション材12との間に取り付けて、着座による座面表皮材13の変形に追従して変形し、座面クッション材12によるクッション性能を妨げないよう形成している。
【0043】
背面電熱部72は、背面部2の腰当部25から背当部26の一部に亘る範囲とし、その上端は上管部63cが背面基部30から露出する露出位置30aより下方に位置している。背面電熱部72は柔軟性を有した面状のヒータからなり、外皮材33と通気クッション材34との間に取り付けて、着座による外皮材33の変形に追従して変形し、内クッション材31及び外クッション材32、32によるクッション性能を妨げないよう形成している。
【0044】
電熱機構70を有することで、着用者の座面と背面のうち腰当部25とを温めることができ、着座者の下半身を温めて快適な椅子とすることができる。また、電熱機構70が配される範囲では、主送風管63の中管部63bが背面基部30の内部に配されることで、電熱機構70の熱が主送風管63内の外気に影響を与えることを防止し、主送風管63による外気の送風を温めることがないようにしている。
【符号の説明】
【0045】
1…座部、2…背面部、26…背当部、30…背面基部、31…内クッション材(低通気層)、34…通気クッション材(高通気層)、42…収容部、60…送風機構、61…駆動部、62…電源部、63…主送風管、63b…中管部、63c…上管部、64…副送風管、65…開口部、70…電熱機構。
図1
図2
図3
図4