(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】床版用排水構造
(51)【国際特許分類】
E01D 19/08 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
E01D19/08
(21)【出願番号】P 2021080385
(22)【出願日】2021-05-11
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592151166
【氏名又は名称】橋梁技建株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】藤代 勝
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 公生
(72)【発明者】
【氏名】一宮 利通
(72)【発明者】
【氏名】中西 正継
(72)【発明者】
【氏名】切山 貴文
(72)【発明者】
【氏名】杉本 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】増田 恵美
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-001493(JP,A)
【文献】特開2013-019445(JP,A)
【文献】特開2019-113155(JP,A)
【文献】特開2001-131916(JP,A)
【文献】特開2019-138062(JP,A)
【文献】特開2005-248426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床版の上面で凹んだ凹部を有し、前記凹部により、前記床版の上方に設けられた舗装の上面の水が流入する排水桝を支持する排水桝受台部と、
前記排水桝受台部の下方で、前記排水桝受台部の前記凹部と連通し、前記排水桝から前記排水桝受台部の前記凹部を介して流入した水を前記床版の下面に導出する導出管部と、
前記導出管部の下端に設けられ、前記導出管部により前記床版の下面に導出された水を前記床版の下方に排出する排出管のフランジと接続可能なフランジ部と、
を備え
、
前記フランジ部は、前記床版に埋設された複数のボルト受部を有し、前記ボルト受部にボルトが螺入されることにより、前記フランジ部にゴムパッキンを介して前記排出管の前記フランジが固定される、
床版用排水構造。
【請求項2】
前記排水桝受台部及び前記導出管部は、前記床版に埋設されており、平面視で円形状を有する、請求項1に記載の床版用排水構造。
【請求項3】
前記床版は、超高強度繊維補強コンクリートにより形成されている、請求項1又は2に記載の床版用排水構造。
【請求項4】
前記床版は、厚さが180mm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の床版用排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床版用排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
床版の上方に設けられた舗装の上面の水を排水するための構造が提案されている。例えば、特許文献1には、床版の上面に開口しつつ床版の上方に設けられた舗装の上面の水が流入する排水桝(グレーチング受)を収容する上部筒体と、上部筒体の下方で上部筒体及び排水桝を支持する本体部の上部と、円管状の本体部の下部と、円管状の本体部の下部の周囲をその内周面で囲繞するように配置された型枠管とが、床版の内部に埋設されている構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、材料の向上等により床版の厚さが薄くなる傾向がある。しかし、上記のような構造では、床版の薄さに対応することが難しいという欠点がある。
【0005】
そこで本発明は、床版の薄さに対応できる床版用排水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、床版の上面で凹んだ凹部を有し、凹部により、床版の上方に設けられた舗装の上面の水が流入する排水桝を支持する排水桝受台部と、排水桝受台部の下方で、排水桝受台部の凹部と連通し、排水桝から排水桝受台部の凹部を介して流入した水を床版の下面に導出する導出管部と、導出管部の下端に設けられ、導出管部により床版の下面に導出された水を床版の下方に排出する排出管のフランジと接続可能なフランジ部とを備え、フランジ部は、床版に埋設された複数のボルト受部を有し、ボルト受部にボルトが螺入されることにより、フランジ部にゴムパッキンを介して排出管のフランジが固定される。
【0007】
この構成によれば、床版の上面で凹んだ凹部を有し、凹部により、床版の上方に設けられた舗装の上面の水が流入する排水桝を支持する排水桝受台部と、排水桝受台部の下方で、排水桝受台部の凹部と連通し、排水桝から排水桝受台部の凹部を介して流入した水を床版の下面に導出する導出管部とを備えた床版用排水構造において、導出管部の下端に設けられ、導出管部により床版の下面に導出された水を床版の下方に排出する排出管のフランジと接続可能なフランジ部をさらに備えるため、短い距離で導出管部と排出管とを接続でき、床版の薄さに対応できる。
【0008】
この場合、排水桝受台部及び導出管部は、床版に埋設されており、平面視で円形状を有することが好適である。
【0009】
この構成によれば、排水桝受台部及び導出管部は、床版に埋設されており、平面視で円形状を有し、角部が無く、最小限の外周長を有するため、打設された床版のコンクリートに埋設される際に、コンクリートの収縮によるひび割れが生じ難い。
【0010】
また、床版は超高強度繊維補強コンクリートにより形成されていてもよい。
【0011】
この構成によれば、床版は強度に優れる超高強度繊維補強コンクリートにより形成されており、床版が薄くされ易いため、本発明の床版用排水構造が有用である。
【0012】
また、床版は厚さが180mm以下であってもよい。
【0013】
この構成によれば、床版は厚さが180mm以下と薄いため、本発明の床版用排水構造が有用である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の床版用排水構造によれば、床版の薄さに対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(A)は実施形態に係る床版用排水構造の平面図であり、(B)は(A)のα線による縦断面図であり、(C)は(A)のβ線による縦断面図である。
【
図2】(A)は実施形態に係る排水桝受台部及び導出管部を示す平面図であり、(B)は(A)のγ線による縦断面図であり、(C)は(A)の底面図であり、実施形態に係るフランジ部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態に係る床版用排水構造について詳細に説明する。
図1(A)、
図1(B)及び
図1(C)に示されるように、本実施形態の床版用排水構造1は、例えば、道路橋等における床版100の上方に設けられた舗装200の上面201を流れる路面排水R及び舗装200と床版100の上面101との間を流れる橋面排水Bを排水するために適用される。床版100は、例えば、超高強度繊維補強コンクリート(UFC:Ultrahigh strength Fiber reinforce Concrete)により形成されているUFC床版である。床版100は、例えば、厚さが180mm以下である。床版用排水構造1は、排水桝10、排水桝受台部20、導出管部30、フランジ部40及び排出管50を備える。
【0017】
排水桝10は、床版100の上方に設けられた舗装200の上面201の路面排水Rが流入する。排水桝10は、SS400等の鋼材により形成されている。排水桝10は、平面視で長方形状を有する。排水桝10は、舗装200の上面201で長方形状に凹んだ第1凹部11を有する。排水桝10は、第1凹部11によりグレーチング5を支持する。グレーチング5は、路面排水Rが通過可能なように第1凹部11を塞ぐ蓋である。グレーチング5は、SS400等の鋼材が格子状に組み立てられることにより形成されている。排水桝10は、第1凹部からさらに円形状に凹んだ第2凹部12を有する。第2凹部12は、後述する導出管部30と連通し、路面排水Rを導出管部30に導出するための円形状の開口部14を含む。排水桝10は、第1凹部11と第2凹部12との境界の一部に、路面排水Rが開口部14に排出され易いように斜面部13を有する。
【0018】
図1(A)、
図1(B)、
図1(C)、
図2(A)、
図2(B)及び
図2(C)に示されるように、排水桝受台部20、導出管部30及びフランジ部40は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)等の合成樹脂により形成され、床版100のコンクリートの打設時に床版100に埋設されている。
図2(A)、
図2(B)及び
図2(C)に示されるように、排水桝受台部20、導出管部30及びフランジ部40は、平面視で円形状を有する。
【0019】
図1(A)、
図1(B)、
図1(C)、
図2(A)、
図2(B)及び
図2(C)に示されるように、排水桝受台部20は、床版100の上面101で円形状に凹んだ凹部21を有する。排水桝受台部20は、凹部21により、床版100の上方に設けられた舗装200の上面201の路面排水Rが流入する排水桝10を支持する。排水桝10の第2凹部12を区画する鋼板の外面と、排水桝受台部20の凹部21の内面とは、互いに嵌合する。排水桝10の第2凹部12を区画する鋼板の外面と、排水桝受台部20の凹部21の内面との間には、橋面排水Bが通過可能な程度の隙間が存在する。
【0020】
排水桝受台部20は、凹部21に複数のボルト受部22を有する。排水桝10の第2凹部12に形成された不図示のボルト孔部を介して、ボルト受部22にボルト23が螺入されることにより、排水桝受台部20に排水桝10が固定される。排水桝10の第2凹部12を区画する鋼板の下面と、排水桝受台部20の凹部21との間において、ボルト23はワッシャ24に挿通されつつ、ボルト受部22に螺入されている。ワッシャ24の枚数を調節することにより、排水桝受台部20に対する排水桝10の高さが調整される。排水桝受台部20は床版100のコンクリートの打設時に床版100に埋設されており、排水桝受台部20の上端は床版100の上面101と一致する。
【0021】
図1(A)、
図1(B)、
図1(C)、
図2(A)、
図2(B)及び
図2(C)、特に
図1(B)に示されるように、導出管部30は、排水桝受台部20の下方で、排水桝受台部20の凹部21と連通し、排水桝10から排水桝受台部20の凹部21を介して流入した路面排水Rを床版100の下面102に導出する。また、導出管部30は、排水桝10の第2凹部12を区画する鋼板の外面と、排水桝受台部20の凹部21の内面との間の隙間を介して流入した橋面排水Bを床版100の下面102に導出する。導出管部30は、排水桝10の開口部14の大きさ及び形状に対応した大きさ及び形状を有する円管である。
【0022】
図1(A)、
図1(B)、
図1(C)、
図2(A)、
図2(B)及び
図2(C)に示されるように、フランジ部40は、導出管部30の下端に設けられ、導出管部30により床版100の下面102に導出された路面排水R及び橋面排水Bを床版100の下方に排出する排出管50のフランジ51と接続可能である。フランジ部40は、床版100に埋設された複数のボルト受部41を有する。排出管50のフランジ51に形成された不図示のボルト孔部及びゴムパッキン52に形成された不図示のボルト孔部を介して、ボルト受部41に不図示のボルトが螺入されることにより、フランジ部40にゴムパッキン52を介して排出管50のフランジ51が固定される。
【0023】
排出管50は、繊維強化プラスチック等の合成樹脂により形成された円管であり、フランジ51を有する。なお、本実施形態では、路面排水R及び橋面排水Bの排出の便宜から、排出管50の内径は、導出管部30の内径よりも大きい。しかし、排出管50の内径は、導出管部30の内径と同径でもよい。
【0024】
本実施形態の床版用排水構造1の道路橋への設置時には、例えば、
図2(A)、
図2(B)及び
図2(C)に示されるような排水桝受台部20、導出管部30及びフランジ部40が埋設された床版100が道路橋に架設される。床版100の架設後に、排水桝受台部20に排水桝10が固定される。排水桝受台部20への排水桝10の固定後に、床版100の上面101に舗装200が設けられる。
【0025】
本実施形態によれば、床版100の上面101で凹んだ凹部21を有し、凹部21により、床版100の上方に設けられた舗装200の上面201の路面排水Rが流入する排水桝10を支持する排水桝受台部20と、排水桝受台部20の下方で、排水桝受台部20の凹部21と連通し、排水桝10から排水桝受台部20の凹部21を介して流入した路面排水Rを床版100の下面102に導出する導出管部30とを備えた床版用排水構造1において、導出管部30の下端に設けられ、導出管部30により床版100の下面102に導出された路面排水Rを床版100の下方に排出する排出管50のフランジ51と接続可能なフランジ部40をさらに備えるため、短い距離で導出管部30と排出管50とを接続でき、床版100の薄さに対応できる。
【0026】
また、本実施形態によれば、排水桝受台部20及び導出管部30は、床版100に埋設されており、平面視で円形状を有し、角部が無く、最小限の外周長を有するため、打設された床版100のコンクリートに埋設される際に、コンクリートの収縮によるひび割れが生じ難い。
【0027】
また、本実施形態によれば、床版100は強度に優れる超高強度繊維補強コンクリートにより形成されており、床版100が薄くされ易いため、本実施形態の床版用排水構造1が有用である。
【0028】
また、本実施形態によれば、床版100は厚さが180mm以下と薄いため、本実施形態の床版用排水構造1が有用である。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、上記の排水桝受台部20、導出管部30及びフランジ部40の形状及び材質は、適宜変更され得る。また、フランジ部40は、必ずしも床版100に埋設されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…床版用排水構造、5…グレーチング、11…第1凹部、12…第2凹部、13…斜面部、14…開口部、10…排水桝、20…排水桝受台部、21…凹部、22…ボルト受部、23…ボルト、24…ワッシャ、30…導出管部、40…フランジ部、41…ボルト受部、50…排出管、51…フランジ、52…ゴムパッキン、100…床版、101…上面、102…下面、200…舗装、201…上面、R…路面排水、B…橋面排水。