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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】導電膜及び導電部材
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/66 20060101AFI20241015BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20241015BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20241015BHJP
   B82Y 99/00 20110101ALI20241015BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20241015BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20241015BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20241015BHJP
   C30B 29/46 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
C30B29/66
B82Y40/00
B82Y30/00
B82Y99/00
H01B5/14 A
H01B5/00 H
H01B13/00 503B
C30B29/46
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020079285
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021172570
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】宮田 耕充
(72)【発明者】
【氏名】中西 勇介
(72)【発明者】
【氏名】リム ホン エン
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 尚彦
(72)【発明者】
【氏名】安藤 千里
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0048873(KR,A)
【文献】米国特許第05958358(US,A)
【文献】特開2018-123039(JP,A)
【文献】国際公開第2019/171622(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/173347(WO,A1)
【文献】特表2018-525516(JP,A)
【文献】HAN Shuming, et al.,RSC Advances,2015年,vol. 5,p.68283 - p.68286,DOI:10.1039/c5ra13733k
【文献】LIN Junhao, 他,ACS NANO,2016年01月18日,No.10,p.2782 - p.2790,DOI: 10.1021/acsnano.5b07888
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/00
B82Y 40/00
B82Y 30/00
B82Y 99/00
H01B 5/14
H01B 5/00
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絡み合った複数の細線を有し、
前記複数の細線はそれぞれ、タングステンとカルコゲン元素とが、化学両論組成でWX(Xはカルコゲン元素)で表記される形で結合したナノワイヤーを含み、
前記複数の細線のそれぞれは、主として第1方向に配向している、導電膜。
【請求項2】
前記複数の細線はそれぞれ、前記ナノワイヤーの束である、請求項1に記載の導電膜。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の導電膜と、
前記導電膜を支持する基板と、を備える、導電部材。
【請求項4】
前記基板の前記導電膜を支持する表面にアルカリ金属元素を含む、請求項3に記載の導電部材。
【請求項5】
請求項1に記載の導電膜と、
前記導電膜を支持する基板と、を備え、
前記基板は、石英又はサファイアである、導電部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜及び導電部材に関する。
【背景技術】
【0002】
フラーレン、ナノチューブ、グラフェン、遷移金属ダイカルコゲナイドなどの低次元材料は、特異な性質を有し、注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、カルコゲンと遷移金属とからなり、層状の二次元金属カルコゲナイド、及び、その製造方法が記載されている。また特許文献3には、V族遷移金属ダイカルコゲナイド結晶からなるナノファイバーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2019-522106号公報
【文献】特許第3302108号公報
【文献】国際公開第2004/108593号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カルコゲナイドは、その特異な性質により、様々な用途への適用が期待されている。カルコゲナイドの新たな構造、用途の探索がされている。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、導電性を有し、薄い新たな導電膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)第1の態様にかかる導電膜は、絡み合った複数の細線を有し、前記複数の細線はそれぞれ、遷移金属元素とカルコゲン元素とが結合したナノワイヤーを含む。
【0008】
(2)上記態様にかかる導電膜において、前記複数の細線はそれぞれ、前記ナノワイヤーの束であってもよい。
【0009】
(3)上記態様にかかる導電膜において、前記複数の細線のそれぞれの配向方向がランダムであってもよい。
【0010】
(4)上記態様にかかる導電膜において、前記複数の細線のそれぞれは、主として第1方向に配向していてもよい。
【0011】
(5)上記態様にかかる導電膜において、前記遷移金属元素は、周期表の第5族又は第6族の元素であってもよい。
【0012】
(6)第2の態様にかかる導電部材は、上記態様にかかる導電膜と、前記導電膜を支持する基板と、を備える。
【0013】
(7)上記態様にかかる導電部材は、前記基板の前記導電膜を支持する表面にアルカリ金属元素を含んでもよい。
【0014】
(8)前記基板は、シリコン、石英、サファイアのいずれかであってもよい。
【0015】
(9)第3の態様にかかる導電膜の製造方法は、同一空間内で遷移金属化合物とカルコゲン前駆体とアルカリ金属化合物と基板とを加熱し、基板上に遷移金属元素とカルコゲン元素とが結合したナノワイヤーを結晶成長させる。
【0016】
(10)上記態様にかかる導電膜の製造方法において、前記基板の表面に、前記遷移金属化合物に含まれる遷移金属を含む溶剤を塗布してもよい。
【0017】
(11)上記態様にかかる導電膜の製造方法において、前記基板は、シリコン、石英、サファイアのいずれかであってもよい。
【0018】
(12)上記態様にかかる導電膜の製造方法において、前記同一空間内は、真空、不活性ガス雰囲気又は還元雰囲気であるであってもよい。
【0019】
(13)上記態様にかかる導電膜の製造方法において、前記加熱温度は、600℃以上1200℃以下でもよい。
【発明の効果】
【0020】
上記態様にかかる導電膜及び導電部材は、薄く、導電性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態にかかる導電部材の平面図である。
図2】第1実施形態にかかる導電膜を構成する細線の断面模式図である。
図3】第1実施形態にかかる細線を構成するナノワイヤーの模式図である。
図4】第1実施形態にかかる導電部材の製造方法を説明するための模式図である。
図5】第2実施形態にかかる導電部材の平面図である。
図6】細線の電気伝導率を測定する際の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0023】
まず方向について定義する。x方向及びy方向は、後述する基板の一面と略平行な方向である。x方向とy方向とは直交する。z方向は、基板の一面と直交する方向である。
【0024】
「第1実施形態」
図1は、第1実施形態にかかる導電部材10の平面図である。導電部材10は、基板Subと複数の細線1とを有する。図1における白線が細線1であり、黒色部が複数の細線1を支持する基板Subである。複数の細線1は、基板Sub上に広がっている。複数の細線1は、ネットワークを形成している。複数の細線1のそれぞれの配向方向は、ランダムである。複数の細線1は、それぞれ絡み合っている。細線1は、他の細線1と結合していてもよいし、他の細線を跨ぐように接していてもよい。
【0025】
複数の細線1は、絡み合うことで導電膜となる。導電膜は、絡み合った複数の細線1からなり、細線の間に空隙を有する。z方向から平面視した際の細線1の密度は、例えば、3%以上100%以下である。導電膜は、z方向に光透過性を有する。導電膜は、例えば、細線1の密度範囲が上記の範囲の場合に、1%以上の光を透過する。細線1の密度を下げることで、導電膜の光透過率を99%以上にすることもできる。導電膜は、柔軟性を有する。導電膜は、基板Subから剥離可能である。導電膜のx方向及びy方向の大きさは、特に問わない。
【0026】
図2は、第1実施形態にかかる導電膜を構成する細線1の断面模式図である。細線1は、導電性を有する。細線1の電気抵抗率は、例えば、1.0×10-5Ωm以下である。細線1は、例えば、1.0×10-6Ωm以下の電気抵抗率も実現しうる。細線1の直径は、例えば、1nm以上1000nm以下であり、10nm以上500nm以下でもよい。細線1は、例えば、複数のナノワイヤー2を含む。複数のナノワイヤー2は、例えば、束になって細線1となる。細線1は、例えば、2本以上20本以下のナノワイヤー2を含む。細線1の長さは、例えば、10nm以上10mm以下である。複数のナノワイヤー2の間には、原子が挿入されていてもよい。挿入される原子は、例えば、Li、Na、Kである。
【0027】
図3は、第1実施形態にかかる細線1を構成するナノワイヤー2の模式図である。ナノワイヤー2はそれぞれ、遷移金属元素とカルコゲン元素とを有する。ナノワイヤー2は、例えば、遷移金属元素とカルコゲン元素とが結合し、1次元に成長したものである。ナノワイヤー2は、遷移金属元素とカルコゲン元素とが空間的に規則的に配列した結晶である。
【0028】
ナノワイヤー2における遷移金属元素とカルコゲン元素との組成比は、略1:1である。ナノワイヤー2は、化学量論組成で、例えばMXと表記される。Mは遷移金属元素であり、Xはカルコゲン元素である。ナノワイヤー2は、必ずしも化学量論組成である必要はなく、わずかな組成比のずれは許容できる。わずかな組成比のずれとは、例えば、5%以内の組成比のずれである。
【0029】
遷移金属元素Mは、例えば、周期表の第5族又は第6族の元素である。遷移金属元素Mは、例えば、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wからなる群から選択されるいずれか一つ以上の元素であり、例えば、Mo又はWである。カルコゲン元素Xは、例えば、S、Se、Te、Poからなる群から選択される1つ以上の元素であり、例えば、S、Se、Teのいずれかであり、例えば、Teである。
【0030】
導電膜は、上述のように、例えば、基板Subで支持される。基板Subは、例えば、シリコン、石英、サファイアのいずれかである。ナノワイヤー2の配向方向がランダムな場合、基板Subは、例えば、アモルファスシリコンである。詳細は後述するが、ナノワイヤー2は、基板Subの表面状態の影響を受けて成長するためである。基板Subの導電膜を支持する側の面は、表面にアルカリ金属元素を含んでもよい。アルカリ金属元素は、例えば、K、Naである。
【0031】
次いで、導電部材の製造方法を説明する。図4は、第1実施形態にかかる導電部材の製造方法を説明するための模式図である。導電膜は、化学気相成長法(CVD法)を用いて基板Sub上に成膜できる。
【0032】
まず加熱管20内に、遷移金属化合物21とカルコゲン前駆体22とアルカリ金属化合物23と基板Subとを設置する。遷移金属化合物21とカルコゲン前駆体22とアルカリ金属化合物23と基板Subとは、同一空間Sp内に配置される。遷移金属化合物21とカルコゲン前駆体22とは、例えば、離間して配置する。遷移金属化合物21とカルコゲン前駆体22とを離間して配置すると、それぞれの昇華温度を制御しやすくなる。
【0033】
カルコゲン前駆体22は、例えば、遷移金属化合物21よりガスの流れ方向の上流に配置する。遷移金属化合物21より蒸気圧が高いカルコゲン前駆体22を上流側に配置することで、カルコゲンの蒸気を遷移金属化合物21に効率的に供給できる。
【0034】
遷移金属化合物21は、例えば、遷移金属の酸化物である。カルコゲン前駆体22は、例えば、カルコゲンの化合物、カルコゲンの単体である。アルカリ金属化合物23は、ハロゲン化アルカリであり、例えば、KBrである。アルカリ金属化合物23は、遷移金属化合物21の融点を下げ、ナノワイヤー2の成長を補助する。
【0035】
加熱管20におけるカルコゲン元素と遷移金属元素との供給比が例えば、1:1となるように、遷移金属化合物21及びカルコゲン前駆体22の重量比を設定する。加熱管20において、遷移金属元素の供給比に対するカルコゲン元素の供給比は、例えば、0.5倍以上1.5倍以下とすることが好ましく、0.7倍以上1.1倍以下とすることがより好ましい。またカルコゲン元素としてテルルを用いると、ナノワイヤーが一次元的に成長しやすい。
【0036】
基板Subは、例えば、シリコン、石英、サファイアのいずれかであり、基板Subは、例えば、アモルファスシリコンである。基板Subの表面には、遷移金属化合物に含まれる遷移金属を含む溶剤を塗布してもよい。溶剤に含まれる遷移金属元素が核となり、ナノワイヤー2の成長が促進される。溶剤における溶媒は、加熱の際に除去される。
【0037】
次いで、加熱管20を加熱する。加熱の際に空間Sp内は、例えば、真空、不活性ガス雰囲気又は還元雰囲気とする。例えば、窒素ガス及び水素ガスを加熱管20内にフローする。空間Sp内の雰囲気を上記にすると、原料及び生成されるナノワイヤー2の酸化を防止できる。
【0038】
加熱管20の加熱温度は、例えば、600℃以上1200℃以下である。加熱管20の加熱温度は、650℃以上900℃以下が好ましく、760℃以上800℃以下がより好ましい。加熱管20は、例えば、所定の温度まで10分以上かけて加熱した後、所定の温度で数分維持し、その後、室温まで急冷する。
【0039】
加熱管20を加熱すると、遷移金属化合物21及びカルコゲン前駆体22がガス化する。ガス化した遷移金属元素及びカルコゲン元素は、基板Sub上に到達し、基板Subの表面で成長する。ナノワイヤー2は、基板Subの影響を受けて成長する。基板Subが非晶質の場合は、基板Subの影響が少なく、図1に示すように細線1の配向方向がランダムになりやすい。
【0040】
上記の手順により、ナノワイヤー2の束である細線1が絡み合った導電膜を、基板Sub上に作製できる。
【0041】
上述のように、本実施形態にかかる導電膜は、遷移金属元素とカルコゲン元素との一次元結晶であるナノワイヤー2が絡み合ったものである。ナノワイヤー2はそれぞれ導電性を有するため、導電膜も導電性を有する。また導電膜はCVD法を用いて製造できるため、大きな基板Subを用いることで、大面積化が容易である。また一次元結晶は、単一構造の繰り返しであり、新たな物性、応用の探索に用いることができる。例えば、導電膜は、細線1の間に空間を有し、光透過性を有する透明導電膜として用いることができる。また導電膜は、トランジスタのチャネル、熱電素子の導電部等へ応用できる。
【0042】
「第2実施形態」
図5は、第2実施形態にかかる導電部材11の平面図である。導電部材11は、基板Subと複数の細線5とを有する。図5における白線が細線5であり、黒色部が複数の細線5を支持する基板Subである。第2実施形態にかかる導電部材11において、第1実施形態にかかる導電部材10と同様の構成については説明を省略する。
【0043】
第2実施形態にかかる導電部材11は細線5が一方向に配向している点が、第1実施形態にかかる導電部材10と異なる。細線5のその他の構造、構成は、上述の細線1と同様である。
【0044】
複数の細線5のそれぞれは、主として第1方向に配向している。ここで主としてとは、細線5が延びる主方向の第1方向に対する傾き角が20°以下という条件を満たす細線5の割合が全体の75%以上であることを意味する。細線5の一部は、第1方向と交差する方向に延びる。第1方向と交差する方向に延びる細線5が隣り合う細線5同士を繋ぐ。その結果、細線5の一部が互いに絡み合い、全体で導電膜となる。
【0045】
基板Subは、例えば、シリコン、石英、サファイアのいずれかである。図5に示すように、細線5の配向方向が揃っている場合、基板Subは、例えば、石英、サファイアである。サファイアは、例えば、表面にA面、C面又はR面が露出している。
【0046】
第2実施形態にかかる導電部材11の製造方法は、第1実施形態にかかる導電部材10の製造方法と同様である。細線5は、基板Subの表面状態の影響を受けて成長する。例えば、基板Subが結晶性を有すると、結晶面に沿って細線5が成長し、細線5の配向方向が揃う。
【0047】
第2実施形態にかかる導電部材11は、第1実施形態にかかる導電部材10と同様の効果が得られる。また導電部材11は、細線5の配向方向が揃っているため、第1方向と第1方向と直交する方向とで電気伝導性が異なり、電気抵抗率に異方性を有する導電膜として用いることができる。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述した。実施形態及び変形例における特徴的な構成は、それぞれ組み合わせてもよい。
【実施例
【0049】
(実施例1)
直径1.5cm、長さ6cmの石英管の中に、基板と100mgのWO(シグマアルドリッチ社製、純度99%以上)と10mgの無水KBr(シグマアルドリッチ社製、純度99%以上)とを設置した。WOと無水KBrとは、石英ボート内に設置した。基板は、一辺が2cmで、表面が酸化されたシリコン基板(SiO/Si)を用いた。
【0050】
次いで、石英管を直径3cm、長さ100cmの石英チャンバー内に挿入し、電気炉(アサヒ理化製作所製、ARF-30KC)の中心に設置した。次いで、アルミナボート内に、反応過剰量である3gのTe(シグマアルドリッチ社製、純度99.99%)を乗せ、石英ボートの上流側に設置した。
【0051】
そして、反応空間内をNで置換し、加熱した。Nガスの流量は、320sccmで固定した。基板を750℃、Teを650℃まで、15分かけて同時に加熱した。所定の温度に達した時点で、Hガスを10sccmで反応空間内に流入させ、5分維持した。その後、Hガスの供給をやめ、室温まで急冷した。
【0052】
その結果、図1に示す導電膜が得られた。導電膜のシート抵抗を測定したところ500Ω/sqであった。また図6に示すように、一つの細線を取り出し、電気抵抗率を測定した。細線の太さは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定し、約45nmであった。細線の電気抵抗率は、1.0×10-6Ωmであった。また細線のラマンスペクトルを入射線の偏向とナノワイヤー軸との角度を変えながら測定した。ラマンスペクトルは、偏向角度が変化するにつれて徐々に減少し、入射線がナノワイヤー軸に対して垂直となる場合に最小となった。当該特性は、カーボンナノチューブ等でも確認され、ナノワイヤーが一次元結晶となっていることを確認した。
【0053】
(実施例2)
実施例2は、基板として石英基板を用いた点が実施例1と異なる。その他の条件は、実施例1と同様とした。その結果、図5に示す導電膜が得られた。
【0054】
(実施例3)
実施例3は、基板としてサファイア基板を用いた点が実施例1と異なる。サファイア基板は、C面でカットし、C面を導電膜の成長面とした。その他の条件は、実施例1と同様とした。その結果、図5と同様の導電膜が得られた。またサファイアのA面、R面を用いた場合も同様の結果が得られた。
【0055】
(実施例4)
実施例4は、基板を石英管内に設置する前に、以下の処理を行った点が、実施例1と異なる。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0056】
まず基板の表面に30分間紫外線を照射した(PL16-110,セン特殊高原株式会社製)。そして、基板の表面に、スピンコートで溶液を塗布した。溶液は、5mg/mLのNaW・2HO(シグマアルドリッチ社製、純度99.995%)を用いた。スピンコートは、3000rpmで1分間行った。
【0057】
実施例4の場合でも、実施例1と同様に、図1と同様の導電膜が得られた。
【符号の説明】
【0058】
1、5 細線
2 ナノワイヤー
10、11 導電部材
20 加熱管
21 遷移金属化合物
22 カルコゲン前駆体
23 アルカリ金属化合物
Sub 基板
M 遷移金属元素
X カルコゲン元素
図1
図2
図3
図4
図5
図6