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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】乳化ハイドロゲル粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20241015BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20241015BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20241015BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20241015BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241015BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20241015BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20241015BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20241015BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241015BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241015BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20241015BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241015BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/86
A61Q19/00
A61Q1/00
A61Q5/00
A61K9/107
A61K9/06
A61K47/36
A61K47/44
A61K47/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020087146
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021120366
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2020013553
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000119472
【氏名又は名称】一丸ファルコス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】喜多 剛志
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-191453(JP,A)
【文献】特開2003-049089(JP,A)
【文献】特開2021-004236(JP,A)
【文献】特開2012-071220(JP,A)
【文献】特開2002-020227(JP,A)
【文献】特開2011-136983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/73
A61K 8/02
A61K 8/34
A61K 8/86
A61Q 19/00
A61Q 1/00
A61Q 5/00
A61K 9/107
A61K 9/06
A61K 47/36
A61K 47/44
A61K 47/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、寒天及びアルギン酸又はその塩を含む水性成分と、油性成分と、乳化剤と、を含む乳化されたハイドロゲル粒子であって、
前記アルギン酸又はその塩は、ハイドロゲル粒子の全量に対して0.30~2.50質量%含まれ、
前記寒天は、ハイドロゲル粒子の全量に対して0.2質量%以上2.5質量%以下含まれ、
さらに2価金属塩を出し入れ可能に含有し、その濃度変化に依存して、粒子の破断強度が1.3倍以上変化し、
前記2価金属塩が、カルシウム塩である、前記乳化ハイドロゲル粒子。
【請求項2】
前記乳化剤のHLB値が、8~14である請求項1に記載の乳化ハイドロゲル粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乳化ハイドロゲル粒子を含む皮膚外用剤。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の乳化ハイドロゲルの製造方法で、
寒天及びアルギン酸又はその塩を含む水溶液と、油性成分と、乳化剤と、を混合及び加熱して混合液を調製する工程、
前記混合液を、ノズルを介して2価金属塩水溶液又は水と非混和性の溶媒中に滴下して液滴を形成する工程、並びに
前記液滴を回収及び洗浄する工程、
含み、
前記液滴に2価金属塩を付加するか、又は前記液滴から2価金属塩を除去する工程をさらに含み、それによって前記粒子の破断強度を所望の大きさに調整し、
前記2価金属塩が、カルシウム塩である、前記乳化ハイドロゲル粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化ハイドロゲル粒子及びその製造方法並びにこの乳化ハイドロゲル粒子を含む皮膚外用剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油分と水分とを含む乳化型化粧料は、湿潤効果及びエモリエント効果を付与することができる化粧料として種々の形態のものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水中油型エマルションを内包したカプセルを含有する化粧料であって、カプセル膜がカプセル全量に対し0.1~1.0重量%のアルギン酸カルシウムからなる、エマルション内包カプセル含有化粧料が開示されている。また、特許文献2には、アルギン酸塩の少なくとも一部がバリウム塩を必須成分とする多価金属塩の形で存在しているアルギン酸バリウムカプセルが、pH調整されたカルボキシビニルポリマーの水溶液からなる外相中に存在しているカプセル入り化粧料が開示されている。さらに、特許文献3には、非架橋型ハイドロゲルを含む連続相および油性成分を含む分散相を有し、油性成分が固体脂および/または液体油からなるハイドロゲル粒子が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2で使用されるアルギン酸塩系カプセルは、例えば、水溶性アルギン酸塩と水溶性カルシウム塩とを反応させて水不溶性のアルギン酸カルシウムを生成させることによって製造されているため、皮膚に適用したときにカプセルのカスが皮膚上に残留して違和感が生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平2-117610号公報
【文献】特開平11-29433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、例えば、皮膚に塗布した際に、伸びが良好でカス残りの無い新たなハイドロゲル粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行った結果、油性成分と、寒天等のゲル形成剤を含む水溶液とを混合乳化させる際に、所定量のアルギン酸又はその塩を含有させることによって、崩壊しやすい乳化されたハイドロゲル粒子が得られることを見出した。すなわち、本発明は、以下の実施形態を含む。
【0008】
(1)水と、寒天及びアルギン酸又はその塩を含む水性成分と、油性成分と、乳化剤と、を含む乳化されたハイドロゲル粒子であって、アルギン酸又はその塩は、ハイドロゲル粒子の全量に対して0.30~2.50質量%含まれる乳化ハイドロゲル粒子。
(2)乳化剤のHLB値が、8~14である(1)に記載の乳化ハイドロゲル粒子。
(3)さらに2価金属塩を出し入れ可能に含有し、その濃度変化に依存して、粒子の破断強度が1.3倍以上変化する、(1)又は(2)に記載の乳化ハイドロゲル粒子。
(4)2価金属塩が、カルシウム塩又はバリウム塩である(1)~(3)のいずれか記載の乳化ハイドロゲル粒子。
(5)(1)~(4)のいずれか記載の乳化ハイドロゲル粒子を含む皮膚外用剤。
(6)寒天及びアルギン酸又はその塩を含む水溶液と、油性成分と、乳化剤と、を混合及び加熱して混合液を調製する工程、この混合液を、ノズルを介して2価金属塩水溶液又は水と非混和性の溶媒中に滴下して液滴を形成する工程、並びにこの液滴を回収及び洗浄する工程、を含む乳化ハイドロゲル粒子の製造方法。
(7)液滴に2価金属塩を付加するか、又は液滴から2価金属塩を除去する工程をさらに含み、それによって粒子の破断強度を所望の大きさに調整する、(6)に記載の乳化ハイドロゲル粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、乳化された状態の油性成分を含むため、伸びが良好でカス残りの無い新たなハイドロゲル粒子が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(乳化ハイドロゲル粒子)
一実施形態の乳化ハイドロゲル粒子は、(A)水と、(B)寒天及びアルギン酸又はその塩を含む水性成分と、(C)油性成分と、(D)乳化剤と、を含む。ここで、「乳化ハイドロゲル粒子」とは、ハイドロゲル中に所望の成分を乳化または分散させた1個乃至複数個の粒子をいう。また、本明細書において「ハイドロゲル」とは、主として水を溶媒として寒天及びアルギン酸を含むゲル形成剤から得られたゲルをいう。
【0011】
乳化ハイドロゲル粒子の形状は、特に限定されるものではないが、形状の安定性および美観の観点から、球状体であることが好ましい。ここでいう球状とは、真球だけでなく、断面が楕円のものであってもよいが、真球が好ましい。
【0012】
乳化ハイドロゲル粒子の平均粒径は、特に制限されないが、好ましくは下限が0.05mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは0.6mm以上であり、好ましくは上限が10mm以下、より好ましくは6.0mm以下、更に好ましくは4.0mm以下である。乳化ハイドロゲル粒子の平均粒径は、レーザー回折/散乱式または篩法により測定することができる。レーザー回折/散乱式による方法は、粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所社製、型番:LA-920)を用いてメジアン径を測定し、それを平均粒径とするものである。篩法は、各種目開きのフルイを用い、乳化ハイドロゲル粒子100gを水中で湿式分級して余分な水分をろ紙で除去した後の質量を測定し、その重量平均粒径を平均粒径とするものである。
【0013】
また、使用時における感触を向上する観点から、乳化ハイドロゲル粒子は、肌に塗布したときに皮膚上でスムーズに崩壊することが好ましい。一方、粒子の形状を維持して皮膚外用剤や化粧品等により配合しやすくする観点で、乳化ハイドロゲル粒子は、ある程度の破断強度を有することが必要である。このため、乳化ハイドロゲル粒子は、2価金属塩を出し入れ可能に含有し、その濃度変化に依存して、粒子の破断強度が1.3倍以上変化することがより好ましい。この破断強度の変化率は、より好ましくは1.5倍以上であり、さらに好ましくは3倍以上である。2価金属塩及びその粒子内への出し入れ方法については後に詳述する。
【0014】
なお、ここで破断強度とは、ゲル試料に圧縮荷重を加えた時に、ゲル試料が破断するときの最大荷重又は最大応力のことをいう。最大荷重とは、球状のゲル試料に対して、1軸荷重をかけた時の圧縮力(N)であり、最大応力とは、これをその軸に垂直な断面積で割った値(kPa(N/m))である。破断強度測定機器としては、たとえば、サン科学社製の圧縮試験機(Rheo Meter:CR-3000EX)があげられる。本実施形態において規定する破断強度は、以下に示す実施例に記載の測定方法によって測定された値である。
【0015】
本明細書において、「2価金属塩の濃度に依存」するとは、2価金属塩濃度のみが異なる2つの乳化ハイドロゲル粒子が、異なる破断強度を有することをいう。すなわち、ある濃度の2価金属塩を含む乳化ハイドロゲル粒子に対し、それよりも高濃度の2価金属塩を付加したときの当該乳化ハイドロゲル粒子の破断強度が少なくとも1.3倍増加すればよい。
【0016】
乳化ハイドロゲル粒子には、所望の成分を内包させることができ、また、本発明の効果を損わない限り任意成分を含んでもよい。以下、本実施形態の乳化ハイドロゲル粒子の配合成分について詳細に説明する。
【0017】
<(A)水>
水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。本実施形態のハイドロゲル粒子中における水の含有量(含水率)は50質量%以上であることが好ましい。また、粒子をつぶしたときの滑らかな感触を有するようにする観点で、本実施形態の乳化ハイドロゲル粒子中における水の含水率は、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量以下であり、更に好ましくは70質量%以下である。
【0018】
<(B)水性成分>
(B1)寒天
寒天は、天草やオゴノリなどの紅藻類から熱水抽出され、ろ過精製し、ゲル化後脱水乾燥させた乾物である。この乾物状の寒天は、一般に75℃以上の熱水に溶解しゾルとなり、30~45℃に冷却すると構造転移してゲルとなるハイドロコロイドである。このゲルは、再加熱により溶解してゾルに戻る熱可逆性の性質を有する。本実施形態で用いられる寒天としては、通常の寒天のほか、様々な寒天を用いることができるが、使用時の感触がよいという観点から、そのゼリー強度が、好ましくは19.6kPa(200g/cm)以上、より好ましくは50.0kPa(510g/cm)以上の寒天である。また、同様の観点から、ゼリー強度が好ましくは147kPa(1500g/cm)以下、より好ましくは127kPa(1300g/cm)以下である。寒天のゼリー強度は、日寒水式法により求めることができる。具体的には、寒天のゼリー強度は、寒天の1.5質量%水溶液を調製し、その水溶液を20℃で15時間放置して凝固させたハイドロゲルに、日寒水式ゼリー強度測定器((株)木屋製作所製)により荷重をかけ、20℃においてハイドロゲルが20秒間その荷重に耐えるときの表面積1cmあたりの最大質量(g)として測定される。
【0019】
本実施形態のハイドロゲル粒子中における寒天の含有量は、ハイドロゲル粒子の皮膚外用剤や化粧料への配合時における壊れを防止する観点から、0.2質量%以上が好ましく、0.4質量%以上がより好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましい。また、水溶液中で均一に分散および溶解するために2.5質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましい。
【0020】
(B2)アルギン酸またはその塩
アルギン酸は、コンブ、ワカメ、アラメなどの褐藻類に含まれる多糖類で、β-D-マンヌロン酸(M)とα-L-グルロン酸(G)がブロック重合したポリマーである。アルギン酸またはその塩は、海藻抽出物を使用することが可能であり、主な工業的原料としては、マクロシスティス、アスコフィリウム、ダービリア、レソニア、ラミナリアなどの褐藻類から抽出され、精製、乾燥、粉砕された乾物を用いることができる。
【0021】
また、アルギン酸塩としては、アルギン酸中のカルボキシル基の水素が、ナトリウムやカリウム、マグネシウム、アンモニウムなどの各イオンと置換されて、水溶性のアルギン酸塩として製品化されたものを用いることができる。
【0022】
アルギン酸またはその水溶性塩は、カルシウムイオンなどの二価金属イオンの存在下でゲル化し、寒天やゼラチンなどの熱可塑性ゲルと異なり、温度に依らないゲルを形成する。このアルギン酸ゲルの物理化学的性質は、MとGの比率、ブロック組成、二価金属イオンの種類およびその結合度によって変化する。GGブロックの割合が大きいほど二価金属イオンとの結合度は大きく、そのゲルの粘弾性も大きくなる。カルシウムイオンを添加して架橋ゲル化したアルギン酸ゲルにゲルの形成に関与しないナトリウムイオンなどの対イオンを添加すると、橋かけ領域内のグルロン酸ブロック間にスタッキングされたカルシウムイオンが対イオンにより交換されることにより橋かけ構造は崩壊し、溶解することが報告されている。
【0023】
本実施形態の乳化ハイドロゲル粒子中におけるアルギン酸またはその塩の含有量は、粒子の形状を維持する観点から、0.3質量%以上が好ましく、0.4質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。また、水溶液中で均一に分散および溶解するために2.5質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.8質量%以下がさらに好ましい。
【0024】
<(C)油性成分>
油性成分は、固体脂及び/又は液体油からなる。ここで、本明細書にいう固体脂とは、融点が35℃以上である油性成分をいい、また液体油とは融点が35℃未満である油性成分をいう。油性成分は、乳化ハイドロゲル粒子からの油性成分の漏出を防止する観点から、固体脂と液体油との混合油を含有することが好ましい。
【0025】
固体脂としては、固体のセラミド、固体のスフィンゴ脂質、固形パラフィン、固体の高級アルコール、ワセリン、固体のシリコーン、固体の油剤及び固体の香料からなる群より選ばれた1種以上であって、融点が35℃以上であるものが挙げられる。これらのなかでは、皮膚を保護する観点から、固体のセラミド、固体の高級アルコール、ワセリン、固体のシリコーン及び固体の香料が好ましく、固体のセラミドがより好ましい。
【0026】
固体のセラミドの例としては、糖セラミド、タイプI~タイプVIの天然セラミド、N-(2-ヒドロキシ-3-ヘキサデシロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルヘキサデカナミド、N-(2-ヒドロキシ-3-ヘキサデシロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルデカナミド、N-(テトラデシロキシヒドロキシプロピル-N-ヒドロキシエチルデカナミド等のセラミドの脂肪族アミド誘導体等が挙げられる。
【0027】
固体の高級アルコールの例としては、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール及びベヘニルアルコールからなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。これらのなかでは、乳化ハイドロゲル粒子から油性成分が漏出するのを抑制する観点から、セチルアルコール、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコールから選ばれた1種以上が好ましい。
【0028】
固体の油剤としては、硬化油及び高級脂肪酸が挙げられる。硬化油の例としては、原料油がヤシ油、パーム油及び牛脂からなる群より選ばれた1種以上である硬化油が挙げられる。高級脂肪酸の例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸及びステアリン酸からなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。固体の香料としては、メントール及びセドロールから選ばれた1種以上が挙げられる。
【0029】
液体油の例としては、液体の皮膚保護剤、液体の油剤及び液体の香料からなる群より選ばれた1種以上であって、融点が35℃未満であるものが挙げられる。なお、液体油には、皮膚を保護する観点から、液体の皮膚保護剤が含有されていることが好ましい。液体の皮膚保護剤は、皮膚を柔軟にしたり、平滑にすることにより、肌荒れを防止する成分である。液体の皮膚保護剤の例としては、液体のパラフィン、液体のエステル油、液体の高級アルコール、液体のスクワラン、液体のグリセライド等の液体油脂類;液体のセラミド;液体のスフィンゴ脂質;アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、エーテル系ポリマー、エステル系ポリマー又はシリコーン系ポリマーのエマルジョン及びサスペンジョンからなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。
【0030】
液体のセラミドの例としては、セチロキシプロピルグリセリルメトキシプロピルミリスタミド等が挙げられる。液体のスフィンゴ脂質の例としては、1-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-3-イソステアリルオキシ-2-プロパノール等が挙げられる。
【0031】
液体の油剤は、揮発性及び不揮発性のいずれであってもよい。その例としては、液体の炭化水素油、液体の植物油、液体の脂肪酸等;液体のエチレングリコールジ脂肪酸エステル(脂肪酸の炭素数は12~36)、液体のジアルキルエーテル(炭素数は12~36)等の液体の油脂類;及び液体のシリコーン類からなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。
【0032】
液体の植物油としては、大豆油、ヤシ油、パーム核油、アマニ油、綿実油、ナタネ油、キリ油、ヒマシ油等が挙げられる。液体の脂肪酸としては、オレイン酸、カプリル酸等が挙げられる。液体の香料としては、従来使用されているものであればよく、特に限定がない。
【0033】
油性成分におけるこれらの固体脂及び/又は液体油の含有量は、乳化ハイドロゲル粒子から油性成分が漏出するのを抑制する観点及び皮膚上での延ばしやすさの観点から、0.5~10質量%が好ましく、1~8質量%がより好ましく、1.5~5質量%が更に好ましい。
【0034】
<(D)乳化剤>
本実施形態の乳化ハイドロゲル粒子は、特定のHLB値を有する乳化剤を含有することが好ましい。乳化ハイドロゲル粒子が、特定のHLB値を有する乳化剤を含有することにより、上記油性成分が水性成分中に均一に分散し、皮膚上で潰したときにカス残りがなく滑らかな感触を得ることができる。具体的には、当該乳化剤のHLB値は、好ましくは4以上であり、より好ましくは6以上であり、特に好ましくは8以上である。当該乳化剤のHLB値の上限は特に制限されないが、好ましくは20以下であり、より好ましくは16以下であり、特に好ましくは14以下である。
【0035】
本明細書において「HLB値」は、親水親油バランス(hydrophile-lipophile balance)を表し、W.C.Griffinによって提唱された計算式(W.C.Griffin,J.Soc.Cosmetic Chemists,1,311(1949)参照)に従って求められるものである。
【0036】
特定のHLB値を有する乳化剤の種類は、食用又は化粧料用であれば特に制限されないが、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド等)、有機酸グリセリン脂肪酸エステル(クエン酸モノオレイン酸グリセリン等)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(デカオレイン酸デカグリセリン、ペンタオレイン酸デカグリセリン、デカステアリン酸デカグリセリン、ヘキサステアリン酸ペンタグリセリン等)、ポリグリセリンポリリシノレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの乳化剤は、単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
特定のHLB値を有する乳化剤の含有量は、油性成分を均一に分散させるという観点から、乳化ハイドロゲル粒子の全質量に対して、好ましくは0超であり、より好ましくは0.10質量%以上であり、特に好ましくは0.50質量%以上である。その含有量の上限は、乳化ハイドロゲル粒子に含有される油性成分の含有量にも依存するため特に制限されないが、乳化ハイドロゲル粒子に対して、好ましくは2.50質量%以下であり、より好ましくは2.30質量%以下であり、特に好ましくは2.10質量%以下である。
【0038】
<その他の成分>
また、本実施形態の乳化ハイドロゲル粒子は、任意に以下の成分を含んでもよい。(1)2価金属塩
本実施形態の乳化ハイドロゲル粒子は、場合により、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、硫酸銅、硫酸亜鉛、塩化ストロンチウム等の2価金属塩を含むことができる。好ましい実施形態における乳化ハイドロゲル粒子は、アルギン酸またはその塩を含む水溶液の液滴を、カルシウムイオンを含む溶液に滴下することによって、アルギン酸カルシウムとなりゲル球を形成することができる。このとき用いるカルシウム塩としては、例えば、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、酪酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、グルコン酸カルシウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ゲル形成速度に優れる点で、塩化カルシウムがより好ましい。
【0039】
また、ゲル化した乳化ハイドロゲル粒子を水で洗浄することにより、粒子中に含まれるカルシウムイオンの濃度を低下させること又はカルシウムイオンをなくすことができる。これにより、ゲル化したアルギン酸の一部が再可溶化されてもよい。
【0040】
他の実施形態において、乳化ハイドロゲル粒子は、2価金属塩を含まずに製造することもできる。この場合は、保存した粒子を2価金属塩の水溶液に浸漬することによって2価金属塩を粒子中に付加することができる。後から付加された2価金属塩は、粒子中で可溶化しているアルギン酸と結合してゲル化し、粒子の硬度を調整することができる。なお、粒子が硬くなりすぎないようにする観点等で、浸漬する水溶液中の2価金属塩濃度と浸漬時間を適宜調整することが好ましい。
【0041】
(2)内包させる所望の物質
本実施形態の乳化ハイドロゲル粒子は、所望の物質を内包させることができる。この内包物は、必要に応じて、香粧学的活性または薬理活性を示す活性成分が含まれていてもよい。このような活性成分としては、特に制限されないが、例えば、水溶性のビタミン、油溶性のビタミン、グリチルリチン酸、アスタキサンチン、コエンザイムQ10、α-リポ酸、セラミド、リノール酸、アルブチン、トラネキサム酸、コウジ酸、酵素、ペプチド、ホルモン、各種サイトカイン、ヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチン、糖類等の生理活性物質またはそれらの誘導体、各種動植物抽出物、微生物による発酵で得られる物質、ステロイド剤、抗ヒスタミン、局所麻酔剤、抗炎症剤、抗菌剤、抗菌剤、鎮痒剤、皮膚保護剤、血行促進剤、ステロール類等が挙げられる。これらの活性成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
一実施形態において、ハイドロゲル粒子を皮膚に塗布したときに冷涼感又は温感を付与することを目的として、上記活性成分には冷温感剤を含んでもよい。冷感剤とは、例えば冷感を引き起こすTRPM8などの受容体チャネルの刺激剤等であり、例えば、メントール、カルボン、アネトール、オイゲノール、シネオール、チモール、サリチル酸メチル、プレゴン、メントン、ピネン、リモネン、メンチルアセテート等の合成香料の他、ペパーミント油、スペアミント油、ハッカ油などのミント油;レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライムなどの柑橘油;ユーカリ、セージ、ローズマリー、タイム、ローレル、バジル、シソ、ベイ、エストラゴン、パセリ、セロリ、コリアンダーなどのハーブ油;シナモン、ペッパー、ナツメグ、メース、クローブ、ジンジャー、カルダモン、アニスなどのスパイス油等の天然精油、アップル、バナナ、メロン、グレープ、ピーチ、ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックカラント、ライチ、スターフルーツ、パッションフルーツ、プラム、パイナップル、マスカットなどのフルーツフレーバー等が挙げられる。これらの中でも、メントール又はその誘導体、カルボン、ペパーミント油、スペアミント油、ハッカ油、シネオール、オレンジ油、ピネン等が好ましい。
【0043】
また、温感剤としては、例えばTRPチャネルの活性化剤、例えば、TRPV1レセプターに対するアゴニスト、TRPV3レセプターに対するアゴニスト等が挙げられる。この温感剤は、皮膚に塗布したときの安全性の観点から、植物由来の化合物であることが好ましく、例えば、カプシコシド、カプサイシン、カプサイシノイド類(ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ノニバミド等)、カプサンチン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸β-ブトキシエチル、N-アシルワニルアミド、ノナン酸バニリルアミド、多価アルコール、唐辛子末、唐辛子チンキ、唐辛子エキス、ノナン酸バニリルエーテル、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体(例えば、バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル、バニリルペンチルエーテル、バニリルヘキシルエーテル)、イソバニリルアルコールアルキルエーテル、エチルバニリルアルコールアルキルエーテル、ベラトリアルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコールアルキルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ショウガエキス、ジンジャーオイル、ジンゲロール、ジンゲロン、ヘスペリジン、及びピロリドンカルボン酸、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0044】
これらの冷温感剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。また、これらを内包した乳化ハイドロゲル粒子を含む皮膚外用剤は、皮膚に塗布したときに容易につぶれて高い効果を発揮するとともに、保存時においては内包される冷温感剤が漏れることなく安定に存在することができる。
【0045】
他の任意成分として、皮膚外用剤や化粧料等に通常使用される各種の成分(例えば、着色剤、防腐剤、油剤、界面活性剤、増粘剤、粉体、キレート剤、pH調整剤、等)を、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜配合してもよい。
【0046】
着色剤としては、顔料および染料が挙げられる。これらの着色剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。顔料としては、例えば、カーボンブラック、タルク、カオリン、雲母、雲母チタン、ベンガラ、オキシ塩化ビスマス、珪酸マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、群青等の無機顔料、および赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色219号、赤色228号、赤色404号、黄色205号、黄色401号、だいだい色401号、青色404号等の有機顔料が挙げられる。染料としては、油溶性染料、建染染料、レーキ染料等が挙げられる。油溶性染料としては、例えば、赤色505号、赤色501号、赤色225号、黄色404号、黄色405号、黄色204号、だいだい色403号、青色403号、緑色202号、紫色201号等が挙げられる。建染染料としては、例えば、赤色226号、青色204号、青色201号等が挙げられる。レーキ染料としては、例えば、種々の酸性染料をアルミニウムやバリウムでレーキしたもの等が挙げられる。
【0047】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、イソプロピルメチルフェノール、エタノール、フェノキシエタノール、デヒドロ酢酸およびその塩類、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、エチルアルコール等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0048】
(乳化ハイドロゲル粒子の製造方法)
本実施形態の乳化ハイドロゲル粒子の製造方法は、例えば、寒天及びアルギン酸又はその塩を含む水溶液と、油性成分と、乳化剤と、を混合および加熱して混合液を調製する工程、この混合液を、ノズルを介して2価金属塩水溶液又は水と非混和性の溶媒中に滴下して液滴を形成する工程、及びこの液滴を回収および洗浄する工程、を含む。水性成分を含む水溶液を調製する工程は、最初に、アルギン酸またはその塩を水中にて1~数時間攪拌混合してアルギン酸を十分に溶解することが好ましい。続いてゲル化剤である寒天を投入し、75~85℃程度まで加熱して寒天を溶解させる。ハイドロゲル粒子に内包させる水溶性物質は、最初から加えてもよいし、あるいは寒天を完全にゲル化してから添加してもよい。温度安定性の低い物質は、寒天を溶解させたゲル化液を50℃程度まで冷却した保温液中に添加することが好ましい。
【0049】
別に、1又は複数の油性成分同士を混合し、加熱溶解する。ゲル化温度以上の温度で、水性成分と油性成分とを混合し、水中油型分散液を調製する。水中油型分散液を調製する方法には特に限定がない。水中油型分散液を調製する際には、各種攪拌機、分散機等を用いた公知の技術を用いることができる。なお、分散液の安定性の観点から、水性成分及び/又は油性成分に乳化分散剤を添加することが好ましく、油性成分に乳化分散剤を添加することが更に好ましい。
【0050】
このようにして得られた乳化分散液から一般的な滴下法および攪拌法により、乳化ハイドロゲル粒子を製造する。なお、粒子からの油性成分の漏れ防止の観点から、乳化ハイドロゲル粒子は、滴下法で製造することが好ましい。滴下法は、孔から分散液を吐出し、吐出された乳化分散液がその表面張力または界面張力によって液滴になる性質を利用して製造する方法である。孔から吐出される乳化分散液には、ハイドロゲル粒子の粒径の均一性の観点から、振動を与えてもよい。滴下法により形成された液滴は、空気等の気相中または液相中で冷却固化され、粒子となる。
【0051】
滴下法において、液滴を生成させる溶媒は、乳化分散液と実質的に混ざり合わない液体であれば特に限定されず、水性溶液又は非水性溶液のいずれであてもよい。水性溶液の場合、2価金属塩水溶液を用いることが好ましい。この2価金属塩濃度を調整することにより、所望の硬さの粒子を得ることができる。なお、粒子のゲル形成の速度を遅くする場合は、このカルシウム塩の溶液にキレート剤(例えば、EDTA)を含有する場合もある。
【0052】
また、乳化分散液を滴下する液相として、水と非混和性の溶媒を用いてもよい。適切な「水と非混和性溶媒」としては、炭素数が5以上である置換もしくは非置換の直鎖状アルカン、分枝状アルカン又は環状アルカン;芳香族炭化水素;四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、トリクロロエタン、ヒドロフルオロカーボン、塩素化ベンゼン(モノ、ジ、トリ)、トリクロロフルオロメタンなどのハロゲン化溶媒;エーテル;エステル;ケトン;モノ-、ジ-もしくはトリ-グリセリド;ネイティブな油;アルコール;直鎖状シリコーン又は環状シリコーン、ヘキサメチルジシロキサン、またはこれらの溶媒の任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
攪拌法は、乳化分散液とは実質的に混じり合わない性状を有し、かつ寒天のゲル化温度以上の温度に調整した液に乳化分散液を投入し、攪拌によるせん断力により乳化分散液を微粒化させ、界面張力によって液滴になる性質を利用して製造する方法である。攪拌法により形成された液滴は、乳化分散液とは実質的に混ざり合わない液中で冷却固化され、粒子となる。
【0054】
吐出時または投入時の乳化分散液の温度は、特に限定されないが、寒天のゲル化温度以上の温度でかつ100℃以下が好ましい。また、美観に優れた球状の粒子の製造のしやすさの観点から、乳化分散液の温度は、ゲル化温度+10℃以上、好ましくはゲル化温度+20℃以上であることが望ましい。なお、温度の上限値は、水の沸点以下である100℃であることが望ましい。
【0055】
乳化分散液の粘度は、B型粘度計で測定することができる。分散液の粘度は、特に限定されないが、その吐出時または投入時の温度において、通常、0.1~1000mPa・s、好ましくは1~800mPa・sであることが望ましい。
【0056】
さらなる実施形態において、乳化ハイドロゲル粒子の製造方法は、上述した方法で作製した液滴に、さらに2価金属塩を付加するか、又はこの液滴から2価金属塩を除去する工程を含む。本工程により、乳化ハイドロゲル粒子の破断強度を所望の大きさに調整することができる。2価金属塩を付加するためには、上記液滴を所望の濃度の2価金属塩の水溶液に、所望の時間浸漬すればよい。一方、2価金属塩を除去するためには、ゲル化した乳化ハイドロゲル粒子を水で洗浄するか、あるいはキレート剤に浸漬してもよい。
【0057】
(用途)
本発明のハイドロゲル粒子は、例えば、皮膚外用剤(例えば、毛髪や体毛に塗布するための剤(染毛剤、育毛剤、脱毛防止剤、除毛剤など)、口腔(唇など)に塗布等により投与するものも含む)として、クリーム、乳液、美容液等のスキンケア化粧料、石鹸、クレンジングクリーム、クレンジングローション、洗顔料等の皮膚洗浄料、シャンプー、リンス、トリートメント等の洗髪用化粧料や、ヘアクリーム、ヘアスプレー、ヘアトニック、ヘアジェル、ヘアローション、ヘアオイル、ヘアエッセンス、ヘアウォーター、ヘアワックス、ヘアフォーム等の整髪料、育毛・養毛料、ファンデーション、アンダーメーク、フェイスカラー、チークカラー、アイカラー、リップカラー等のメークアップ化粧料、薬用化粧品、外用医薬部外品,外用医薬品等が挙げられる。
【0058】
皮膚外用剤は、化粧品、医薬部外品および医薬品等に慣用される他の成分、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて配合し、常法により製造することもできる。
【0059】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。なお、以下の実施例において、乳化ハイドロゲル粒子を構成する各成分の含有量を示す数値の単位%は、質量%を意味する。
【実施例
【0060】
(乳化ハイドロゲル粒子の作製)
本実施例で使用した原料は以下のとおりである。
・IL-6G:株式会社キミカ製アルギン酸ナトリウム、粘度65mPa・s
・PS-6:伊那食品工業株式会社製寒天、ゼリー強度860
・塩化カルシウム:キシダ、塩化カルシウム
・コスモール168V:日清オイリオ、ジペントエリトット脂肪酸エステル
・EMALEX DSG:日本エマルション、ジイソステアリン酸ポリグリセリル(HLB値:4)
・NIKKOL MGS-BSEV:日光ケミカルズ、グリセリン脂肪酸エステル(HLB値:8)
・EMALEX HC-60:日本エマルション、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HLB値:14)
・カルコール220-80:花王、ベヘニルアルコール
・メチルポリシロキサン(シリコーン):信越化学、KF-96A-10CS
・1,3-BG:ダイセル、ブチレングリコール
・濃グリセリン:イワキ、グリセリン
【0061】
[実施例1~3、参考例1、比較例1~4]
<水性成分の調製>
事前に溶解しておいたアルギン酸水溶液(2%アルギン酸(IL-6G)、1%フェノキシエタノール)に、表2に示す各終濃度となるように精製水を加え、湯浴により85℃まで加温した。これに、終濃度が0.80%となるように寒天(PS-6)を投入し、スリーワンモーターにて5分間攪拌して寒天の溶解を確認した。
<油性成分の調製>
それぞれ4gの1,3-ブチレングリコール(1,3-BG)及びグリセリンに、0.8gのHC-60を混合し、90℃に設定した湯浴中で加温した。HC-60の溶解を確認したあと、0.8gのカルコールを投入し、その溶解を確認した。
【0062】
<乳化>
上記で調製し85℃に保温した水性成分34.4gに、上記90℃の油性成分5.6gを投入し、5分間攪拌して乳化物を調製した(全量40g)。
<造粒及びサンプル作製>
60℃まで冷却した上記乳化物を、内径約1mmのスポイトを用いて、液滴の形成を確認し、氷冷したシリコーンオイル(KF-96A-10CS、信越化学工業)へ滴下して1時間浸漬後、乳化ハイドロゲル粒子を目開きが3.35mmの篩で通した後、目開きが2mmの篩で回収し、回収した乳化ハイドロゲル粒子を0.001%又は0.5%の塩化カルシウム水溶液に24時間浸漬した。当該浸漬の後、2mmの篩で当該粒子を回収し、当該粒子の質量の約10倍量の精製水で洗浄した。当該洗浄後のハイドロゲル粒子を、1質量%のフェノキシエタノール水溶液に50質量%となるように浸漬し、25℃にて常温保存した。
【0063】
[実施例4]
参考例1で作製した乳化ハイドロゲル粒子を、乳化ハイドロゲル粒子の2倍量の5%クエン酸三ナトリウム水溶液(例えば、ハイドロゲル粒子が10gであれば、20gの5%クエン酸3三ナトリウム水溶液)に4時間浸漬後、目開きが3.35mmの篩で通した後、目開きが2mmの篩で回収し、当該回収した乳化ハイドロゲル粒子の質量の約10倍量の精製水で洗浄した。当該洗浄後のハイドロゲル粒子を、1質量%のフェノキシエタノール水溶液に50質量%となるように浸漬し、25℃にて常温保存した。
【0064】
[実施例5~10]
実施例1と同様の方法により、油性成分、乳化剤及びポリオールの種類及び添加量を表4に記載した組成に代えて乳化物を調製した(全量40g)。内径約1mmのスポイトを用いて、液滴の形成を確認し、0.5%の塩化カルシウム溶液に滴下し、ハイドロゲル粒子を形成させ、1分以内に目開きが3.35mmの篩で通した後、目開きが2mmの篩を用いて回収し、当該回収後のハイドロゲル粒子の質量の約10倍量の精製水で洗浄した。当該洗浄後のハイドロゲ粒子を、1質量%のフェノキシエタノール水溶液に50質量%となるように浸漬し、25℃にて常温保存した。
【0065】
(試験評価方法)
<破断強度(最大荷重)>
乳化ハイドロゲル粒子の破断強度は、サン科学社製のレオメーター(RHEO METER、MODEL:CR-3000EX)を用いて測定した。実施例および比較例で作製した粒子を測定前に粒重量の10倍量の精製水で洗浄し、表面の水分を拭き取って測定した。なお、この破断強度の測定は、直径12mmの治具を取り付けたレオメーターを用い、レオメーターの測定部の円盤状の試料台上にサンプルを置いて10mm/分の速度で上昇させた。進入距離2.2mmにて圧縮して破断させた。この時、目視、感触で破断を確認するとともに、荷重-歪み曲線から最大荷重を求め、この測定を5個のサンプルについて繰り返し、その平均値を求めた。
【0066】
<官能評価>
5人のパネラーにより、乳化ハイドロゲル粒子を手に取って皮膚の上で潰したときの感触を、以下の評価基準で官能評価し、その平均値を求め、4以上を○、2以上4未満を△、2未満を×として示した。
【0067】
〔評価基準〕
【表1】
【0068】
(評価結果)
実施例及び比較例で作製した乳化ハイドロゲル粒子の組成と、その評価結果を、以下の表2~表4に示す。表2に示した結果より、0.60質量%以上のアルギン酸ナトリウムを含有する実施例1~3の乳化ハイドロゲル粒子は、比較例1~4に比べて、カルシウム濃度による硬度変化及び感触官能評価の何れにおいても優れていた。また、表3に示した結果より、実施例4で作製した乳化ハイドロゲル粒子は、キレート剤浸漬により破断強度が大きく低下した。
さらに、表4に示した結果から、HLB値が8以上の乳化剤を用いた場合には、潰した後のカス残りが少なく、感触官能評価においてより優れていることが分かった。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
[実施例11~18]
皮膚に塗布したときに冷感又は温感を感じるような冷温感剤を添加して以下の方法にて乳化ハイドロゲル粒子を作製した。これを水性媒体(外層液)に分散させた処方品を調製し、皮膚に塗布して冷温感及び感触を確認した。本実施例で用いた冷温感剤の成分は以下のとおりである。
【0073】
・メントール(l-MENTHOL):高砂香料
・メントキシプロパンジオール(COOLACT 10):高砂香料
・イソプレゴール(COOLACT P):高砂香料
・メンタンジオール(p-Menthane-3,8-diol):高砂香料
・バニリルブチル(VANILLYL BUTYL ETHER):高砂香料
【0074】
1.混合溶液の調製(溶解)
(水層A)
精製水を入れたビーカーを攪拌しつつ、アルギン酸ナトリウム(IL-6G)を投入して溶解した。このアルギン酸ナトリウム水溶液が60~70℃になったときに、寒天(PS-6)を投入し分散した。この分散液を85℃まで加温した後、85℃付近で10分間攪拌して寒天を溶解した。その後、グリセリンを投入して溶解した。この水層Aを攪拌しながら80℃~85℃の温度に維持した。
【0075】
(油層B)
ブチレングリコール(1,3-BG)を入れたビーカーを攪拌しつつ、または手攪拌でモノグリセリド(NIKKOL MGS-BSEV)を投入し、90℃まで加温して溶解した。その後、この溶液を攪拌しながらカルコール(ベヘニルアルコール)を投入して溶解した。その後、表5のC欄に記載した所定の冷温感剤を投入し、均一にした。この油層(B+C)を85℃~90℃の温度に維持した。
【0076】
2.乳化
水層Aを強く攪拌しつつ、この中に油層(B+C)を投入した。5分間、80℃以上を保ちながら攪拌、乳化した。その後、この乳化液を攪拌しながら65℃まで冷却し、そのまま65℃を保った。
【0077】
3.造粒
0.6%の塩化カルシウム水溶液を用意し、ポリスポイトを用いて、上記で乳化したゲル種液を塩化カルシウム水溶液に滴下してハイドロゲル粒子を作製した。
【0078】
4.洗浄
滴下造粒後、素早く粒子を回収し、20~25℃の精製水中に30分浸漬させ、ハイドロゲル粒子を硬化させた。
【0079】
5.ゲル粒子物性評価
ハイドロゲル粒子の圧縮破断強度は、サン科学社製のレオメーター(RHEO METER、MODEL:CR-3000EX)を用い、測定前にキムタオル等で粒子表面の水分を拭き取って測定した。測定サンプルは、進入距離を2.8mmとし、10mm/分の設定で測定した。測定に用いたハイドロゲル粒子の厚みを測定してサンプルの粒径とし、この粒径から断面積を算出し、先に測定した最大荷重(N)を、断面積で除して破断強度(kPa)を求めた。
【0080】
その結果を以下の表5に示す。実施例11~18で作製した乳化ハイドロゲル粒子は、0.8%のアルギン酸ナトリウムを含んでいるため、造粒時のカルシウム水溶液中への滴下時間を短縮することで、適度な最大荷重及び破断強度を有するゲル粒子となることが確認された。
【0081】
【表5】
【0082】
6.水性ゲル処方品による冷温感評価
ヒトモニター試験により、水性ゲル処方品による冷温感評価を行った。以下試験方法等を記載する。
(1)試験試料
実施例12、17及び18で作製した乳化ハイドロゲル粒子を用いて以下の処方により水性ゲルを作製し、化粧品用ポンプ容器に詰めた。処方品をポンプによって吐出した際にハイドロゲル粒子が潰れて出てくるのを確認し、官能試験に供した。なお、処方品1には、冷感剤としてメントールを使用した実施例12のハイドロゲル粒子を、処方品2には、温感剤としてバニリルブチルを使用した実施例17のハイドロゲル粒子を、そして対照としての比較処方品1及び2には、実施例18で作製したハイドロゲル粒子を使用した。
【0083】
処方品を作製するための増粘液Dは、以下の成分をそれぞれ以下の割合で混合して調製した。
・(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー(商品名Pemulen TR-1、日本ルーブリゾール株式会社製):0.7
・水酸化ナトリウム(NaOH):0.35
・フェノキシエタノール:2
・精製水:96.95
【0084】
表6に示した割合でハイドロゲル粒子、増粘液D及び精製水を混合し、試験試料を作製した。
【表6】
【0085】
(2)評価方法
(2-1)冷感評価
処方品サンプルを充填したポンプを前腕内側に3プッシュ(約60μg)とり、前腕内側全体に塗布した直後から1分、1分~10分、10~20分の間に冷感があるかを以下基準で評価した。この評価(ヒトモニター試験)におけるモニターは6名(25歳から50歳の男性5名と女性1名)であった。
【0086】
3点:強い冷感をおぼえる
2点:冷感をおぼえる
1点:わずかに冷感をおぼえる
0点:まったく冷感をおぼえない
【0087】
(2-2)温感評価
処方品サンプルを充填したポンプを前腕内側に1プッシュ(約20μg)とり、前腕内側全体に塗布した直後から1分、1分~10分、10~20分の間に冷感があるかを以下基準で評価した。この評価(ヒトモニター試験)におけるモニターは6名(25歳から50歳の男性5名と女性1名)であった。
【0088】
3点:強い温感をおぼえる
2点:温感をおぼえる
1点:わずかに温感をおぼえる
0点:まったく温感をおぼえない
【0089】
(2-3)試験結果
少なくとも処方品1と処方品2では、冷感又は温感が継続して存在したことを確認した。よって、少なくとも実施例12及び実施例17のハイドロゲル粒子は、それぞれの冷温感成分(メントール又はバニリルブチル)を保持していた。このことから、ハイドロゲル粒子に機能性成分を配合することで、多様な処方にあわせてそれぞれの機能を与えることが可能になる。また、塗布直後~1分後で処方品と比較品の差があまりみられていないのは、水による気化熱や塗布時の摩擦熱の影響が考えられる。
【0090】
【表7】