(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】パワーサイクル試験装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/26 20200101AFI20241015BHJP
【FI】
G01R31/26 A
G01R31/26 H
(21)【出願番号】P 2020091516
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2019104417
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598014825
【氏名又は名称】株式会社クオルテック
(72)【発明者】
【氏名】阪田 茂男
(72)【発明者】
【氏名】梶西 孝博
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-017822(JP,A)
【文献】特開2015-014488(JP,A)
【文献】特開2007-033042(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108919085(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接続部と第2の接続部とゲート端子を有するパワー半導体素子を試験するパワーサイクル試験装置であって、
第3の接続部と第4の接続部を有し、試験電流または試験電圧を供給する電源装置と、
第1のスイッチ回路が実装または配置された第1のスイッチ回路基板と、
前記第1のスイッチ回路基板に取り付けられた第1の導体板および第2の導体板と、
第1の開口部と、
先端部が嵌合する第1の接続部材を具備し、
前記第1の接続部に前記第1の接続部材が接続され、
前記第1の接続部材を前記第1の開口部に挿入することにより、前記第1の接続部材と前記第1の導体板が嵌合されて接続され、
前記第2の導体板と前記第3の接続部が接続され、
前記第4の接続部と前記第2の接続部が接続または接地または基準電位にされ、
前記第1のスイッチ回路がオンすることにより、前記第1の導体板と前記第2の導体板が短絡し、前記第1の接続部に前記試験電流または試験電圧を供給することを特徴とするパワーサイクル試験装置。
【請求項2】
第1の接続部と第2の接続部とゲート端子を有するパワー半導体素子を試験するパワーサイクル試験装置であって、
第3の接続部と第4の接続部を有し、試験電流または試験電圧を供給する電源装置と、
第1のスイッチ回路が実装または配置された第1のスイッチ回路基板と、
第2のスイッチ回路が実装または配置された第2のスイッチ回路基板と、
前記第1のスイッチ回路基板に取り付けられた第1の導体板および第2の導体板と、
前記第2のスイッチ回路基板に取り付けられた第3の導体板および第4の導体板と、
第1の開口部と、
先端部が嵌合する第1の接続部材を具備し、
前記第2の導体板と前記第3の接続部が接続され、
前記第4の接続部と前記第2の接続部が接続または接地または基準電位にされ、
前記第3の導体板と前記第3の接続部が接続され、
前記第4の導体板と前記第4の接続部が接続され、
前記第1の接続部と前記第1の接続部材が接続され、
前記第1の接続部材を前記第1の開口部に挿入することにより、前記第1の接続部材と前記第1の導体板が嵌合されて接続され、
前記第1のスイッチ回路がオンすることにより、前記第1の導体板と前記第2の導体板が短絡し、前記第1の接続部に前記試験電流または試験電圧を供給し、
前記第2のスイッチ回路がオンすることにより、前記第3の導体板と前記第4の導体板が短絡し、前記第3の接続部と第4の接続部を短絡することを特徴とするパワーサイクル試験装置。
【請求項3】
第1の接続部と第2の接続部とゲート端子を有するパワー半導体素子を試験するパワーサイクル試験装置であって、
第3の接続部と第4の接続部を有し、試験電流または試験電圧を供給する電源装置と、
第1のスイッチ回路が実装または配置された第1のスイッチ回路基板と、
第2のスイッチ回路が実装または配置された第2のスイッチ回路基板と、
前記第1のスイッチ回路基板に取り付けられた第1の導体板および第2の導体板と、
前記第2のスイッチ回路基板に取り付けられた第3の導体板および第4の導体板と、
前記第1の導体板の位置に対応した第1の開口部と、
前記第3の導体板の位置に対応した第2の開口部と、
先端部が嵌合する第1の接続部材を具備し、
前記第1の接続部に前記第1の接続部材が接続され、
前記第2の導体板と前記第3の接続部が接続され、
前記第4の導体板と前記第3の接続部が接続され、
前記第4の接続部と前記第2の接続部が接続または接地または基準電位にされ、
前記第1の接続部材を前記第1の開口部に挿入することにより、前記第1の接続部材と前記第1の導体板が嵌合されて接続され、
前記第1の接続部材を前記第2の開口部に挿入することにより、前記第1の接続部材と前記第3の導体板が嵌合されて接続され、
前記第1のスイッチ回路がオンすることにより、前記第1の導体板と前記第2の導体板が短絡し、前記第1の接続部に前記試験電流または試験電圧を供給し、
前記第2のスイッチ回路がオンすることにより、前記第3の導体板と前記第4の導体板が短絡し、前記第1の接続部に前記試験電流または試験電圧を供給することを特徴とするパワーサイクル試験装置。
【請求項4】
第1の接続部と第2の接続部とゲート端子を有するパワー半導体素子を試験するパワーサイクル試験装置であって、
第3の接続部と第4の接続部を有し、試験電流または試験電圧を供給する電源装置と、
第1のスイッチ回路が実装または配置された第1のスイッチ回路基板と、
第2のスイッチ回路が実装または配置された第2のスイッチ回路基板と、
前記第1のスイッチ回路基板に取り付けられた第1の導体板および第2の導体板と、
前記第2のスイッチ回路基板に取り付けられた第3の導体板および第4の導体板と、
前記第1の導体板の位置に対応した第1の開口部と、
前記第4の導体板の位置に対応した第2の開口部と、
先端部が嵌合する第1の接続部材と、
先端部が嵌合する第2の接続部材を具備し、
前記第2の導体板と前記第3の接続部が接続され、
前記第3の導体板と前記第3の接続部が接続され、
前記第4の導体板と前記第4の接続部が接続され、
前記第1の接続部と第1の接続部材が第1の接続配線で接続され、
前記第2の接続部と第2の接続部材が第2の接続配線で接続され、
前記第1の接続部材を前記第1の開口部に挿入することにより、前記第1の接続部材と前記第1の導体板が嵌合されて接続され、
前記第2の接続部材を前記第2の開口部に挿入することにより、前記第2の接続部材と前記第4の導体板が嵌合されて接続され、
前記第1のスイッチ回路がオンすることにより、前記第1の導体板と前記第2の導体板が短絡し、前記第1の接続部に前記試験電流または試験電圧を供給し、
前記第2のスイッチ回路がオンすることにより、前記第3の導体板と前記第4の導体板が短絡し、前記第1の接続部に前記試験電流または試験電圧を供給することを特徴とするパワーサイクル試験装置。
【請求項5】
前記第1の導体板は、前記第1のスイッチ回路基板からはみ出るように配置され、
前記はみ出た部分に、前記第1の接続部材が接続されることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3または請求項4記載のパワーサイクル試験装置。
【請求項6】
前記第1の開口部の位置と前記第2の開口部の位置とは、高さ位置が異なり、
第1の開口部までの前記第1の接続配線と、前記第2の開口部までの第2の接続配線は、略並行位置に配置されていることを特徴とする請求項4記載のパワーサイクル試験装置。
【請求項7】
第1の基板を更に具備し、
前記パワー半導体素子は、第1の室に配置され、
前記第1のスイッチ回路基板は、第2の室に配置され、
前記第1の室と前記第2の室間に隔壁を有し、
前記第1の開口部は、前記隔壁に形成され、
前記第1のスイッチ回路基板は、前記第1の基板に接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3または請求項4記載のパワーサイクル試験装置。
【請求項8】
温度を調整するプレートと、
漏水センサ
と、
前記プレートに接続され、循環水を流す循環水パイプを更に具備し、
前記パワー半導体素子は、前記プレートに配置され、
前記漏水センサは、前記循環水パイプの循環水の漏れを検出し、
パワーサイクル試験装置を停止または警報を発することを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3または請求項4記載のパワーサイクル試験装置。
【請求項9】
端子電圧出力回路を更に具備し、
前記第1のスイッチ回路がオン状態で、前記第2のスイッチ回路がオンし、
次に、前記第2のスイッチ回路がオフした後に、
前記端子電圧出力回路が出力する、前記第1の接続部と第2の接続部間の端子電圧により、
パワーサイクル試験の制御変更あるいはパワーサイクル試験の停止することを特徴とする請求項2または請求項4記載のパワーサイクル試験装置。
【請求項10】
ゲートドライバ回路を更に具備し、
前記ゲートドライバ回路は、第1の電圧と第2の電圧と第3の電圧を周期的に、前記ゲート端子に印加することを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3または請求項4記載のパワーサイクル試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiC、IGBT、MOS-FET、Gan-FET、バイポーラトランジスタ、抵抗素子等の電気素子のパワーサイクル試験を行う電気素子試験装置、電気素子の試験方法等に関するものである。
【0002】
特に、半導体素子の実使用環境、実使用状態での故障モードに近いストレスを効率よく再現でき、高い精度でパワー半導体素子等の評価、試験を行うことができる電気素子試験装置および電気素子の試験方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
パワー半導体素子の寿命には、パワー半導体素子自体の発熱に起因した熱疲労現象による寿命と、パワー半導体素子の外部環境の温度変化に起因した熱疲労現象による寿命とがある。また、パワー半導体素子のゲート絶縁膜への印加電圧による電圧疲労による寿命等がある。
【0004】
一般的に、パワー半導体素子の寿命試験は、パワー半導体素子に通電オンオフを繰り返すことが行われている。パワー半導体素子のエミッタ端子(ソース端子)、コレクタ端子(ドレイン端子)等に電圧を印加し、また、試験電流を流し、ゲート端子に周期的なオンオフ信号(動作/非動作信号)を印加することにより半導体素子の試験が実施される。
【0005】
試験時に半導体素子に印加する電流は数百アンペアと大きい。そのため、発熱、電圧降下をさけるため低抵抗の接続配線等を必要とする。また、試験も多くの種類があり、試験の種類に対応させて接続配線の接続を変更する必要がある。接続配線の変更等に長時間を必要としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の半導体素子試験装置では、トランジスタ117をオンオフ動作させるとともに、定電流をトランジスタのチャンネル間に流すことにより、パワー半導体素子(トランジスタ等)の試験を実施している。
【0008】
半導体素子試験装置(パワーサイクル試験装置)で実施する試験項目は多種多様であり、試験項目に対応させて、トランジスタ117と試験回路との接続配線を変更する必要がある。
【0009】
トランジスタ等の半導体素子を試験するために印加する定電流は数百A以上の電流であることが多い。前記定電流を流す接続配線は低抵抗の太い線材を使用する必要がある。
【0010】
太い接続配線は硬く、柔軟性がない。試験項目に対応させる時の太い線材の接続配線の接続変更は、長時間を必要とする。また、接続配線はナット等の固定部材を用いて行うため、固定作業に時間を必要とし、所定のトルクで締め付ける等作業も複雑であった。また、配線の接続変更のための作業スペースあるいは接続配線の配線スペースを必要とするため、試験装置が大きくなるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の半導体素子試験装置は、試験をするトランジスタ117等を配置する半導体素子試験装置内の箇所(スペース)と、前記トランジスタ117等の試験電流の発生、制御信号の発生、試験結果の取得をする回路基板の配置箇所とを分離している。分離のための隔壁を設けている。
【0012】
なお、本明細書、本図面等において、接続部に用いるプラグ等の部材を接続プラグあるいはフォークプラグとして説明をする。接続プラグあるいはフォークプラグに限定するものではなく、脱着可能で、電気的接続が実現できるものであれば、いずれの形態、構成あるいは構造の部材でも良い。
【0013】
前記試験をするトランジスタと、スイッチ回路等を有する回路基板との接続は、隔壁214に設けた開口部216を介して、接続プラグ(フォークプラグ)205を挿入し、前記接続プラグ(フォークプラグ)215と前記回路基板に有する導体板204とを電気的に接触させることにより行う。
【発明の効果】
【0014】
トランジスタ117等を配置する半導体素子試験装置内の箇所(スペース)と、前記トランジスタ117等の試験電流の発生、制御信号の発生、試験結果の取得をする回路基板の配置箇所を分離する隔壁214、隔壁215を設けている。
【0015】
隔壁214等にはノイズを吸収するシールド板、シールドフィルム等を形成または配置する。シールド板等により、電源装置、試験回路、試験半導体素子の誤動作を抑制できる。
隔壁214に設けた開口部216を介して、フォークプラグ205を挿入し、前記フォークプラグ205と回路基板に有する導体板204とを接続する。
【0016】
試験を実施するいずれの半導体素子117と試験回路と接続するかは、開口部216に挿入するフォークプラグ205の位置を変更することにより、容易に変更することができる。また、フォークプラグ205は導体板204と適正な圧力で電気的接続を取ることができるため、ナット等のように締め付けトルクの管理も不要である。
【0017】
試験項目ごとの接続配線211の接続作業、あるいは接続変更は、フォークプラグ205位置の変更で行うため、容易であり、接続配線211、電源配線212の接続変更の時間を大幅に短縮できる。また、配線の接続変更のための作業スペース、接続配線211の配線スペースを必要としない。したがって、半導体素子試験装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】本発明の電気素子試験装置のフォークプラグ部の構成図である。
【
図6】本発明の電気素子試験装置のフォークプラグ部の説明図である。
【
図7】本発明の電気素子試験装置のフォークプラグ部の説明図である。
【
図8】本発明の電気素子試験装置のフォークプラグ部の説明図である。
【
図9】本発明の電気素子の試験方法における電気素子との接続状態の説明図である。
【
図10】本発明の電気素子試験方法における電気素子との接続状態の説明図である。
【
図11】本発明の電気素子試験方法における電気素子との接続状態の説明図である。
【
図12】本発明の電気素子試験装置の動作の説明図である。
【
図13】本発明の電気素子試験装置の動作の説明図である。
【
図14】本発明の電気素子の試験方法の説明図である。
【
図15】本発明の電気素子の試験方法の説明図である。
【
図16】本発明の電気素子の試験方法の説明図である。
【
図17】本発明の電気素子試験装置の動作の説明図である。
【
図18】本発明の電気素子試験装置の動作の説明図である。
【
図19】本発明の電気素子試験装置の動作の説明図である。
【
図20】本発明の電気素子の試験方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係るパワーサイクル試験等の半導体素子試験装置および半導体素子の試験方法を説明する。
【0020】
明細書で記載する実施形態では、電気素子としてのパワー半導体素子のうち、主としてIGBTを例にとって説明する。本発明はIGBTに限定されるものではなく、SiCトランジスタ、MOSFET、JFET、トランジスタ等の各種のパワー半導体素子に適用することができる。また、トランジスタだけに適用されるものではなく、サイリスタ、ダイオード等の半導体素子にも本発明は適用できる。
【0021】
また、パワー半導体素子に限定されるものではなく、低電力用の半導体素子、信号制御用の半導体素子、サーミスタ、ポジスタ等にも、本発明が適用できることは言うまでもない。
【0022】
また、半導体素子に限定されるものではなく、たとえば、抵抗素子、コンデンサ、コイル、水晶素子、ZNR等の半導体以外の電気素子あるいは電子素子にも本発明が適用できることは言うまでもない。
【0023】
発明を実施するための形態を説明するための各図面において、同一の機能あるいは類似性を有する要素は同一の符号を付する。説明に不要な事項は図面から省略する。また、説明を容易にするため図面等を簡略化あるいは模式化する場合がある。明細書においても説明を省略する場合がある。
本発明の実施例は、それぞれの実施例と組み合わせることができ、変更することができる。
【0024】
図2は本発明のパワーサイクル試験装置(半導体素子試験装置)の構成図である。パワーサイクル試験装置は、チラー(冷却・加温装置)136と、加熱冷却プレート134、加熱冷却プレート134とチラー136間を循環する循環水パイプ135を有する。加熱冷却プレート134には、試験をする試験サンプルとしてのトランジスタ117等が積載されている。トランジスタ117等は、加熱冷却プレート134と密着して配置される。
【0025】
試験をするトランジスタ117の温度情報Tjが所定値となるように、制御回路133は、電流Id、ゲート電圧Vg、電圧Vceを変化させて試験の条件を設定し、試験を実施する。
【0026】
温度情報Tjが変化あるいは所定値まで変化すると、トランジスタ117が劣化あるいは特性が変化していると判断し、トランジスタ117の試験を停止、あるいは制御方法を変更する。
【0027】
例えば、温度情報Tjの変化で、トランジスタ117の特性変化を判定あるいは判定する。また、電圧Vceが所定電圧になる時間、トランジスタ117の破壊までの時間等からトランジスタ117の特性変化、信頼性、寿命を評価する。
【0028】
本発明の半導体の試験方法において、トランジスタ117の劣化あるいは特性変化にあわせて外部条件を変える。例えば、トランジスタ117が発熱した場合は水温を下げる。水温を下げる、あるいはトランジスタ117に流れる電流を少なくすると、トランジスタ117の劣化、特性変化が進まず、結果、トランジスタ117の寿命が延びる。したがって、所定設定条件に対するトランジスタ117の寿命、信頼性特性を定量的に測定、判断することができる。
【0029】
チラー136の循環水を加温または冷却することにより、トランジスタ117の温度を規定値あるいは所定値に維持する。また、試験条件に対応してトランジスタ等の温度を周期的に変化させ、また、一定に冷却し、または加熱する。また、試験トランジスタの温度情報Tjを測定し、測定した温度情報Tjを一定値に維持するように、チラー136を制御する。
【0030】
チラー136は、水や熱媒体の液温度を管理しながら、熱媒体等を循環させることにより、機器等の温度を一定に保つ。チラー136は主に冷却に用いる場合が多いが、冷やすだけでなく温めることもできる。チラー136は、様々な温度の制御を実施できるように構成されている。
【0031】
制御ラック131には、トランジスタ117に試験電流、試験電圧を供給する電源装置132と、トランジスタ117を制御あるいは試験条件を設定する制御回路133を有している。
【0032】
制御回路133には、トランジスタ117の温度情報Tjが入力され、温度情報Tjに基づいて、チラー136を制御する。あるいは、温度情報Tjを所定値にするように、チラー136を制御する。
【0033】
なお、本明細書ではチラー136が循環水パイプ135内に循環させる冷却媒体は、水として説明するが、水に限定されるものではない。エチレングリコール、グリセリン等でも良い。また、冷却媒体として空気を使用する強制空冷であってもよい。
【0034】
チラー136は循環水パイプ135内の液体を、例えば、水温マイナス1℃からプラス100℃までの範囲で制御して試験ユニットの加熱冷却プレート134に供給する。加熱冷却プレート134は十分に大きな熱容量を持っている。
【0035】
上記実施形態では加熱冷却プレート134を使用したが、加熱プレートと冷却プレートを別体とし、加熱冷却プレート以外の熱源・冷熱源を用いて加熱・冷却するものであってもよい。
【0036】
図1は本発明の第1の実施例における電気素子試験装置(例えば、パワートランジスタを試験するパワーサイクル試験装置)の構成図である。また、
図12は半導体素子試験装置の等価回路図である。
【0037】
電源装置132は、トランジスタ117を試験するための大電流の定電流、あるいは電圧等を出力する。電源装置132は、電源回路121とスイッチ回路122を有する。
【0038】
電源装置132は、コントロール回路基板(コントローラ)111からの制御信号に同期させて電力(電流、電圧)を供給すると共に、供給された電力を用いて前記負荷を設定された定電流または定電圧を制御する。また、電源装置132は、出力する最大(リミット)電圧値を設定することができる。
【0039】
図1は本発明の電気素子試験装置の説明図である。スイッチ回路122(SWa)は、電源装置132が出力する定電流の供給をオン(供給、印加)オフ(遮断、オープン)させる。スイッチ回路122はコントロール回路基板(コントローラ)111からの信号に基づき、オン(定電流を出力)またはオフ(定電流を遮断)に設定または制御される。通常、スイッチ回路122は試験開始前にオンされ、半導体素子の試験中は常時、オン状態に維持される。
【0040】
図1において、1台の電源装置132を図示している。本発明の半導体素子試験装置において、電源装置132は1台に限定されるものではない。例えば、本発明の半導体素子試験装置において、2台以上の電源装置132を保有させてもよい。電源装置132の台数が増加するほど、多種多様な電流波形Idを発生させることができる。
本発明の実施例において、電源装置132として説明するが、電源装置132は定電流を出力するものに限定されるものではない。
【0041】
例えば、電源装置132に最大(リミット)電圧を設定できるものを使用する。一定の条件で、設定された最大電圧において、所定の定電流を出力できるように機能させることが例示される。また、定電流を出力する場合に、出力端子電圧を所定の最大電圧を設定できる構成にされることが例示される。
【0042】
本発明の半導体素子試験装置において、電源装置132は、定電流のみ出力する装置ではなく、電圧、電流を出力できる電源装置であってもよいことは言うまでもない。
【0043】
図1等の実施例において、電源装置132で電流Idを発生させるとして説明するが、電流Idは、トランジスタ117のオン抵抗の状態に応じて、印加電圧を調整することによっても実現できる。したがって、本発明の半導体素子試験装置において、電流を出力する電源装置132に限定するものではなく、電圧出力の電源装置で構成しても良いことは言うまでもない。
【0044】
電流Idは、トランジスタ117のゲート電圧の電圧値の制御によっても実現できる。本明細書では、電源装置132の制御によって、トランジスタ117に所定の電流を印加するとして説明する。しかし、これに限定するものはなく、トランジスタ117のゲート端子gの電圧、トランジスタ117のコレクタ端子cの電圧を調整あるいは制御することによりトランジスタ117に所定の電流を印加するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0045】
図1等の実施例において、トランジスタ117のコレクタ端子に接続されたフォークプラグ205e、電源装置132の一端子に接続されたフォークプラグ205dのように、各接続配線211、各電源配線212の一端にフォークプラグ205を構成、あるいは接続して、導体板204と接続するように図示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、フォークプラグ205dがなく、電源配線212を直接に導体板204cと電気的に接続してもよいことは言うまでもない。
【0046】
なお、本明細書、図面において導体板204として説明するが、板に限定されるものではなく、棒状のものであってもよい。フォークプラグ205等の構造物と接合できるものであればいずれの形状等であってもよい。たとえば、ソケット、コネクタ等の構造物であってもよい。また、導体板204をフォークプラグ形状とし、フォークプラグ205と前記フォークプラグとを接続してもよい。
【0047】
本発明は、試験を実施するトランジスタ117等において、少なくとも1つの端子にフォークプラグ205を形成または配置し、前記フォークプラグ205と導体板204などの接続対象と電気的接続を取るものであればいずれの構成あるいは方式であっても良い。
【0048】
また、フォークプラグ205は隔壁214等の空間を分離する構成物あるいは構造に接続物であるフォークプラグ205を挿入するとして説明するが、これに限定するものではない。たとえば、導体板204bにフォークプラグ205cを接続し、フォークプラグ205cを隔壁214から挿入して、トランジスタ117のエミッタ端子eと電気的に接続を取ってもよい。
【0049】
隔壁214、隔壁215は空間あるは領域を区分あるいは分離するものであればいずれのものであっても良い。壁状、板状、メッシュ状、フィルム状、箔状等、多種多様な構成あるいは構造が該当する。
【0050】
フォークプラグ205は、導体板204等の対象物に圧入、圧接、挿入、圧着、挟持、嵌合等により電気的に接続ができる構成、構造、形態、形式、方法のいずれのものであっても良い。
【0051】
以上の事項は、明細書、図面に記載する他の実施例にも適用されることは言うまでもない。また、本発明の実施例は、他の実施例と一部または全部を組み合わせることができることは言うまでもない。
本発明の第1の半導体素子の試験方法の実施例では、試験するトランジスタ117に流
【0052】
す電流をIdとして説明をする。また、電源装置132が電流Idを発生させるとして説明をする。なお、電流Idは試験の種類、トランジスタ117の試験状態に応じて可変される。
【0053】
トランジスタ117に流す電流Idは電源装置132を動作させることにより供給する。電源装置132はコントロール回路基板(コントローラ)111からの信号により動作/非動作(オン/オフ)制御される。また、電流Idの出力と非出力とが切り替えられる。デバイス制御回路基板209はコントロール回路基板(コントローラ)111によりタイミング制御される。
【0054】
トランジスタ117のエミッタ端子eは接地(グランド)されている(接地ラインと接続されている)として説明をする。トランジスタ117のゲート端子gには、ゲートドライバ回路113が接続されている。
【0055】
サンプル接続回路203内には、ゲートドライバ回路113、可変抵抗回路125、定電流回路118、オペアンプ(バッファ回路)116が配置または形成されている。サンプル接続回路203は、試験を行うトランジスタ117に近い位置に配置できるように、デバイス制御回路基板209から分離されて配置されている。
【0056】
サンプル接続回路203は、コネクタ202の接続ピン206でトランジスタ117と接続されている。ゲートドライバ回路113とトランジスタ117のゲート端子g間は、30mm以下の短距離となるように配置されている。ゲートドライバ回路113とトランジスタ117のゲート端子g間が長いとゲート端子gにノイズ等が重畳され、ノイズによりトランジスタ117が誤動作してトランジスタ117の破壊に直結する。
【0057】
図1に図示すようにゲートドライバ回路113からトランジスタ117のゲート端子gに試験信号を印加する。ゲートドライバ回路113はオペアンプを有しており、出力インピーダンスはほぼ0Ωである。
【0058】
図3に図示するように、デバイス制御回路基板209は半導体素子試験装置の筐体210のB室に配置される。筐体210は半導体素子試験装置の電源装置132、駆動回路、加熱冷却プレート134が組み込まれたフレームあるいは装置本体である。
【0059】
サンプル接続回路203は、試験するトランジスタ117に近い位置に配置するため、半導体素子試験装置の筐体210のC室に配置される。サンプル接続回路203は筐体210の側面に配置されたコネクタ208と接続される。コネクタ208の接続ピン206に接続された配線は、B室のデバイス制御回路基板209と接続されている。
【0060】
サンプル接続回路203はコネクタ208の接続ピン206によりデバイス制御回路基板209と接続されている。サンプル接続回路203は試験する各トランジスタ117に対応して個別に配置され、サンプル接続回路203は容易に取り外しが可能なように構成されている。
【0061】
定電流回路118はトランジスタ117のチャンネル間に配置または形成されたダイオードDiに定電流Icを供給する。オペアンプ回路116はダイオードDiの端子電圧をバッファリング(出力インピーダンスを低く)してVi電圧として出力する。Vi電圧は、アナログ-デジタル変換される。
【0062】
ダイオードDiの端子電圧Viは温度測定回路115に印加される。温度測定回路115は端子電圧Viからトランジスタ117の温度情報Tjを求め、コンローラ111に転送する。温度情報はデバイス制御回路基板209のコネクタ213からマザー基板207に出力され、コントロール回路基板111に送られる(
図6等参照)。
【0063】
ゲートドライバ回路113からは、設定された周波数(オンオフ周期)、かつ、設定されたオン電圧の印加時間でトランジスタ117のゲートをオンさせるオン電圧Vgが出力される。一例として、
図14(a)に図示するように、トランジスタ117のオンオフ周期はtcycleであり、オン時間はton、オフ時間はtoffである。
【0064】
図14(a)のオン信号電圧Vgsに基づいて、トランジスタ117はオンオフ制御される。ゲートドライバ回路113はゲート信号制御回路112により制御される。
電源装置132は定電流Idを出力し、定電流Idがトランジスタ117の試験または駆動電流として供給される。
【0065】
ゲートドライバ回路113から出力されるVgs信号電圧により、トランジスタ117は動作/非動作(オンオフ)動作し、トランジスタ117がオンしている期間にトランジスタ117のチャンネル間に電流Idが流れる。
【0066】
ゲートドライバ回路113は、可変抵抗回路125を有している。可変抵抗回路125の値は、0(Ω)から500(Ω)間で、所定値に、あるいは時間的にステップ的、ランプ的に設定できるように構成されている。ゲート端子gの波形を観察しながら、コントロール回路基板(コントローラ)111からの制御信号により可変抵抗回路125の抵抗値を設定してもよい。
【0067】
トランジスタ117のゲート端子gとエミッタ端子eまたは、コレクタ端子c間に抵抗R(図示せず)を配置してもよい。抵抗Rの値を調整することにより、ゲート信号の立ち上がりおよび立ち下がり電圧波形の傾斜角度を調整できる。
【0068】
可変抵抗回路125の抵抗値が大きい場合は、トランジスタ117のゲート端子に印加するトランジスタ117のゲート信号の立ち上がり波形/立ち下がり波形の傾斜が緩やかになる。
【0069】
可変抵抗回路125の抵抗値が小さい場合は、ゲート信号の立ち上がり/立ち下がり波形の傾斜が急峻になる。可変抵抗回路125の抵抗値を変更あるいは所定値に設定することにより、トランジスタ117のオン時間を調整できる。
【0070】
ゲートドライバ回路113は、トランジスタ117のゲート端子gに印加するゲート電圧において、立ち上がり波形の傾斜(立ち上がり時間Tr)と立ち下がり波形の傾斜(立ち下がり時間Td)を設定できる。立ち上がり時間Trと立ち下がり時間Tdを別々に調整することによりトランジスタ117のオン時間等を任意に調整できる。
【0071】
可変抵抗回路125の抵抗値は、コントロール回路基板(コントローラ)111により設定する。設定する抵抗は、一定値であることに限定されない。ゲートドライバ回路113の立ち上がり波形の傾斜(立ち上がり時間Tr)と立ち下がり波形の傾斜(立ち下がり時間Td)での抵抗値、抵抗値の変化割合を異ならせてもよい。ゲート信号の立ち上がり時の抵抗値と、立ち下がり時の抵抗値とを変化させてもよい。また、リアルタイムあるいはステップ状に抵抗値を可変制御してもよい。可変抵抗回路125を可変制御することにより、トランジスタ117のオン状態が安定する。
【0072】
ゲート信号の立ち上がり時の抵抗値を小さくすると、トランジスタ117のゲート端子に印加されるオン電圧の波形が急峻になり、高速にトランジスタ117がオンする。ゲート信号の立ち上がり時の抵抗値を大きくすると、トランジスタ117のゲート端子に印加されるオン電圧の波形が緩やかになり、緩やかにトランジスタ117がオンする。
【0073】
ゲート信号の立ち下がり時の抵抗値を小さくすると、トランジスタ117のゲート端子に印加されるオン電圧の波形が急峻になり、高速にトランジスタ117がオフする。ゲート信号の立ち下がり時の抵抗値を大きくすると、トランジスタ117のゲート端子に印加されるオン電圧の波形が緩やかになり、徐々にトランジスタ117がオフする。
【0074】
以上のように、本発明の半導体素子試験装置および試験方法は、トランジスタ117のゲート端子に接続された可変抵抗回路の値、あるいはゲートドライバ回路113の立ち上がり時間/立ち下がり時間を制御あるいは調整または設定することができる。また、ゲートドライバ回路113の機能として、トランジスタ117に発生させる突入電流Is、サージ電圧Vsを変化させること、変更することができる。
【0075】
トランジスタ117の動作は、トランジスタ117のゲート端子のオン電圧の制御だけでなく、電源装置132がトランジスタ117に供給する定電流Idあるいは電圧Vmの値を変化あるいは設定できることは言うまでもない。
【0076】
ゲートドライバ回路113の可変抵抗回路125はコントロール回路基板(コントローラ)111により制御される。
図14に図示するゲートドライバ回路113が出力するゲート信号の周期時間tcycle、オン時間tonあるいはオフ時間toffはゲート信号制御回路112が制御し、ゲート信号がトランジスタ117のゲート端子に印加される。また、ゲート信号制御回路112はコントロール回路基板(コントローラ)111により制御される。
【0077】
図1等において、ゲートドライバ回路113の可変抵抗回路125の抵抗値は、可変としたがこれに限定するものではない。例えば、可変抵抗回路125を外付け抵抗素子とし、抵抗素子をコネクタ(図示せず)等によりトランジスタ117のゲート端子に接続してもよいことは言うまでもない。
接続する抵抗素子の値は、トランジスタ117のゲート端子の波形、チャンネル電流Idの波形を観察して設定する。
【0078】
図1等において、トランジスタ117のコレクタ端子cとエミッタ端子e間には定電流回路118が接続されている。定電流回路118は、所定の定電流Icを流す。定電流IcはダイオードDiに印加される。トランジスタ117の温度が変化するとダイオードDiの端子電圧が変化する。ダイオードDiの端子電圧をモニターすることにより、トランジスタ117の温度変化を測定あるいは観察することができる。
【0079】
なお、IGBTを例示して本明細書は説明するため、トランジスタ117の端子はゲート端子g、コレクタ端子c、エミッタ端子eである。MOSトランジスタ117の場合は、トランジスタ117の端子はゲート端子g、ドレイン端子d、ソース端子sとなる。
【0080】
トランジスタ117には、ボディダイオードあるいはチャンネルダイオードDiが形成または構成されている。なお、ダイオードDiはトランジスタ117が形成された半導体チップに実装された別の半導体チップのダイオードであってもよい。
【0081】
ダイオードDiは、トランジスタ117の形成時に副次的に形成されるダイオード(寄生ダイオード)を利用してもよい。寄生ダイオードはトランジスタ117の層構造により副次的に形成される。ダイオードDiは、構造上、トランジスタ117のチャンネル部の近傍に形成される。
【0082】
ダイオードDiは、トランジスタ117を動作させている時には動作しないものであれば、いずれの素子でもよい。例えば、ダイオードに限定されるものではなく、トランジスタをダイオード接続して使用しても良いことは言うまでもない。
【0083】
また、ダイオード等の半導体に限定されるものではなく、抵抗等のデバイスでもよい。抵抗等のデバイスに定電流Icを印加することにより、抵抗の端子電圧を測定する。この電圧を電圧Viとして測定あるいは取得する。
【0084】
本発明の実施例では、温度を取得する素子は、ダイオードDiとして説明する。しかし、温度を取得する半導体等のデバイスだけでなく、抵抗等のデバイスでもよいことは言うまでもない。電流を流すことにより温度を測定する素子端子間の電圧値を取得できるデバイス、あるいは電圧を印加することにより電流値を取得できるデバイスであればいずれのデバイスでも温度モニター素子として使用できる。
ダイオードDiはトランジスタ117の発熱によりダイオードDiの温度が変化し、ダイオードDiの端子間電圧が変化する。
【0085】
ダイオードDiに定電流Icを流すと、ダイオードDiの抵抗値の変化に対応してダイオードDiの端子間の電圧が変化する。端子間の電圧をモニターあるいは測定すれば、トランジスタ117の温度、または温度の変化を知ることができる。
トランジスタ117の温度をダイオードDiの電圧からモニターするためには、温度係数を予め取得しておく必要がある。
【0086】
温度係数は、トランジスタ117を恒温槽で所定温度に設定し、ダイオードDiに定電流Icを流して、ダイオードDiの端子電圧を測定する。前記所定温度を変化させ、かつダイオードDiの端子電圧を測定することにより、温度に対するダイオードの端子電圧を取得できる。したがって、温度に対するダイオードDiの端子電圧からトランジスタ117の温度係数Kを求めることができる。
【0087】
温度係数Kは、トランジスタ117の各生産ロットで異なる場合があるが、一般的には生産ロットで一定の値を示す。したがって、各生産ロットで、試験を行うトランジスタ117を抜き取り、温度係数Kを求めておけば、他のトランジスタ117の温度係数Kにも使用できる。
【0088】
精度よく、温度係数Kを取得するには、同じロットでも、各トランジスタ117の温度係数Kを個別に測定することが好ましい。温度係数Kの測定時の温度調整は、恒温槽を使用して行うことには限定されない。例えば、トランジスタ117を実装したヒートシンクに流す水温を変えてトランジスタ117の温度を変化させ、温度係数Kを取得してもよい。
【0089】
試験時は、トランジスタ117に間欠的に、試験電流Idを印加する。試験電流Idをオフした直後あるいは、オフした後、短時間の所定時間の経過後、定電流回路118から、温度測定用の定電流Icを流す。
【0090】
定電流Icでトランジスタ117が発熱することを防止するため、あるいは定電流Icの影響がないようにするため、定電流Icはトランジスタ117のチャンネルに流す定電流Idよりも十分に小さい電流値にする。定電流Idは、温度測定に影響を与える発熱しない程度の電流を流す。
【0091】
具体的には、定電流Icは試験時にトランジスタ117に流す電流Idの1/1000以下に設定する。好ましくは、トランジスタ117に流す電流Icは電流Idの1×106の1以上1×104の1以下にする。定電流Icは0.1mA以上100mA以下にする。
【0092】
チャンネル電流Idを変化させ、ダイオードDi電圧(トランジスタ117のコレクタ-エミッタ端子間電圧)を測定して、温度係数Kを求める。求められた温度係数Kは、温度測定回路115に記憶させる。
【0093】
温度を測定する時、ダイオードDiがトランジスタ117と同一チップ内に形成されている場合、ゲート電圧Vgsによって飽和電圧のVn電圧が変化する場合がある。ゲート電圧Vgsはゼロ(0)電圧または負電圧(マイナス電圧)とすることが好ましい。
【0094】
図2に示すように、温度情報Tjに基づいて、コントロール回路基板(コントローラ)111はチラー136を制御する。チラー136は循環水(循環溶液)の温度を調整し、加熱冷却プレート134の温度を調整する。
【0095】
以上の実施例では、予め、温度係数Kを求めるとしたが、本発明の半導体試験方法はこれに限定するものではない。なお、温度係数とダイオード端子電圧等からトランジスタ117の温度情報Tjを求める。
トランジスタ117と加熱冷却プレート134に密着して配置し、加熱冷却プレート134の温度が、トランジスタ117と略一致するように構成する。
【0096】
コントロール回路基板(コントローラ)111はチラー136を制御して、加熱冷却プレート134の温度を所定温度にし、トランジスタ117に定電流Icを印加して、ダイオードDiの端子電圧を測定あるいは取得する。
【0097】
端子間電圧Viの測定結果から、温度係数Kを求める。加熱冷却プレート134の温度は、複数の温度に設定し、それぞれの温度での温度係数Kを求め、温度係数の精度を向上させる。
【0098】
温度係数Kは、トランジスタ117を加熱冷却プレート134で所定温度にし、ダイオードDiに定電流Icを流して、端子電圧を測定する。前記所定温度を変化させ、かつダイオードDiの端子電圧を測定することにより、温度に対するダイオードDiの端子電圧を取得できる。
したがって、温度に対するダイオードDi、Dm、Dsの端子電圧からトランジスタ117の温度係数Kを求めることができる。
【0099】
トランジスタ117の試験時は、定電流Icは、チャンネル電流Idが流れていない時にダイオードDiに流す。つまり、トランジスタ117がオンしていない時に、定電流Icを流してダイオードDiの端子間電圧を測定する。
オペアンプ回路(バッファ回路)116は、ダイオードDiの端子電圧Vi(端子c-端子e)を出力する。
【0100】
なお、オペアンプ回路116は、オペアンプ素子から構成されるものに限定されない。入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低いものであればいずれのものでもよい。
温度測定回路115は保持されている温度係数Kと電圧Viから、試験を実施しているトランジスタ117の温度情報Tjを求める。
【0101】
求められた温度情報Tjはコントロール回路基板(コントローラ)111に送られる。コントロール回路基板(コントローラ)111は、温度情報Tjが所定設定値以上になった場合、トランジスタ117が所定のストレス状態、あるいは劣化状態となったと判断し、試験の制御変更あるいは試験の停止等を行う。
【0102】
試験でトランジスタが劣化する箇所は主として、トランジスタ117内の接合部であることが多い。半導体層そのものが劣化することは少なく、トランジスタ117の接合部(ボンディング、ダイボンド等)が劣化し、接合部の抵抗値が高くなる場合が多い。抵抗値が高くなることにより、電圧Vceが高くなり、発熱してトランジスタ117の温度が上昇する。
【0103】
半導体素子が劣化する場合は、トランジスタ117のゲート酸化膜(絶縁膜)の劣化である場合が多い。ゲート酸化膜の劣化が発生した場合は、酸化膜(絶縁膜)の短絡状態になり、電圧Vceは下がる。または、トランジスタ117がオフ状態となり、トランジスタ117には電流は流れず、電圧Vceは電源電圧の最大値まで上昇する。
【0104】
図14(h)で示す温度情報Tjは、試験開始時は、最低温度T1から最高温度T2の間を変化する。試験によりトランジスタ117にストレスがかかると、トランジスタ117のVce電圧が変化し、通常は温度情報Tjが高くなる方向に変化する。
したがって、
図15(c)に図示するように、最低温度は、温度T1より上昇し、最高温度は温度情報Tm(Tjmax)に近づく。
本発明の半導体素子試験装置、半導体素子の試験方法では、試験の終了は下記のいずれかの条件で停止する。
・温度情報Tjが所定範囲内から外れた場合。
・チャンネル電圧Vceが所定の電圧範囲から外れた場合。
・熱抵抗が所定の範囲内から外れた場合。
【0105】
図1等の実施例において、スイッチ回路Ssa124a、スイッチ回路Sab124bはスイッチ回路の記号を使用している。スイッチ回路Ssa124a、スイッチ回路Sab124b等のスイッチ回路は、クローズ(オン)した時の抵抗(オン抵抗)が小さいものであれば、いずれの素子でもスイッチ回路として使用できる。例えば、トランジスタ、メカニカルリレー、ホトトランジスタ、ホトダイオードスイッチ、ホトMOSリレー等が例示される。
【0106】
図13は本発明の第1の実施例における半導体素子試験装置の等価回路図である。本実施例では、スイッチ回路Ssa、スイッチ回路Sabは、
図13に図示するようにパワーMOSFET124を使用している。パワーMOSFETはチャンネル間の電圧(Vsd)が小さい。
スイッチ回路Ssa、スイッチ回路SabはパワーMOSFETだけでなく、パワートランジスタ等であっても良いことはいうまもない。
【0107】
パワーMOSFET124bのオン時のチャネル電圧(Vsdb)は、パワーMOSFET124aのオン時のチャネル電圧(Vsda)以下となるものを選定する。つまり、パワーMOSFET124bのオン時のチャネル電圧(Vsdb)は、パワーMOSFET124aのオン時のチャネル電圧(Vsda)よりも小さくなるようにする。スイッチ回路124bがオンした時、電源装置132の端子間を短絡して、電流Imを安定して流すためである。
以上の事項は、スイッチ回路124がパワートランジスタ等の場合も同様である。パワートランジスタ124の場合は、チャンネル電圧はVceとなる。
スイッチ回路124aがオンすることにより、電源装置132が出力する電流Idが試験電流Idとしてトランジスタ117に供給できるようになる。
【0108】
スイッチ回路124はスイッチ回路基板201に実装されている。スイッチ回路124は導体板204に接続されている。導体板204は、一例として厚み5mm、幅50mmの銅からなる板である。導体板204の長さは、スイッチ回路基板幅+フォークプラグ205を接続する幅を有している。
【0109】
図5はフォークプラグ205およびフォークプラグ205と導体板204の接続(接触)状態を図示している。
図5(a)は、スイッチ回路などが形成されたスイッチ回路基板(プリント基板)201に導体板204が取り付けられ、フォークプラグ205を導体板204に接続した状態を上方向から模式的に図示した図である。
図5(b)は導体板204の一端にフォークプラグ205を挟持させた状態での断面図である。
【0110】
図1等で模式的に図示するように、スイッチ回路基板201には2枚の導体板204が取り付けられている。スイッチ回路基板201は全面アース層(図示せず)を有し、全面アース層と導体板204とは放熱が良好となるように熱的に接続されている。全面アース層と導体板204とは電気的に絶縁されている。導体板204に電流Idが流れることによる発熱は、前記全面アース層を介して放熱される。導体板204とスイッチ回路基板201はネジ止めされる。
【0111】
スイッチ回路124は、2枚の導体板に接続されている。
図13に図示するようにスイッチ回路124がMOSトランジスタの場合は、ドレイン端子とソース端子が異なる導体板204に接続される。スイッチ回路124は、バイポーラトランジスタの場合は、コレクタ端子とエミッタ端子が異なる導体板204に接続される。スイッチ回路124がオンすることにより、2つの導体板204が電気的に接続される。スイッチ回路124として、IGBTも使用できる。
【0112】
フォークプラグ205と導体板204とは機械的(メカニカル)に接続、接触、圧接、嵌合させることにより電気的接続を実現する。フォークプラグ205のU字部は、導体板204に差し込まれる際、わずかにU字部が広がり、良好にフォークプラグ205と導体板204が接合される。良好に接合、嵌合等されることにより接続部の電気抵抗は極めて小さくなり、接続部に大きな電流が流れる場合であっても、発熱あるいは電圧降下は発生しない。
フォークプラグ205には接続ボルト219が取り付けられている。接続ボルト219に接続配線211が接続される。
【0113】
図5(a)のAA’での断面を
図5(b)に示す。導体板204とフォークプラグ205とは、フォークプラグ205に形成された接触部220a、接触部220bで接触される。接触部220の表面は金メッキあるいは銀メッキが施されている。メッキにより接触部220の電気的安定度が格段に向上する。接触部220はリン青銅、ニッケル合金で構成され、ばね性、密着性を有している。
本実施例では、導体板204の表面はフォークプラグ205と接触する部分には銀メッキが施されている。
【0114】
フォークプラグ205と導体板204とは、
図4等に図示するように、隔壁214の開口部216からフォークプラグ205を差し入れることにより電気的に接触(接続)される。接触時は、フォークプラグ205のU部が導体板204により広げられ、強固に接触される。
【0115】
図3に本発明の半導体素子試験装置の各構成部材の配置図を示す。半導体素子試験装置の筐体210は、3つの部分に分離されている。筐体の下部は、A室とB室に分離されている。A室には電源装置132が配置される。A室とB室とは隔壁215で分離されている。
【0116】
各室は、静電シールド、電磁シールド等がされている。電源装置132、スイッチ回路基板201、トランジスタ117は動作/非動作を繰り返すことにより大きなノイズを発生する。ノイズにより、回路基板等が誤動作する。各室をシールドすることにより誤動作を防止する。シールドは、導通を有する板、導電板、導電フィルム、金属板、金属フィルム、金網を各室の周りあるいは隔壁214、隔壁215外部あるいは内部に取り付ける、または配置することにより実現する。
【0117】
C室には、
図2に示す加熱冷却プレート134、循環水パイプ135等が配置され、加熱冷却プレート134上に試験をするトランジスタ117が配置される。隔壁は壁に特定されるものではなく、空間を区切る分離部であれば良い。C室とA室、C室とB室間には隔壁214が形成されている。C室の加熱冷却プレートの周囲には漏水センサ(図示せず)が配置されている。循環水(冷却媒体)等が漏れると漏水センサが働き、半導体素子試験装置を停止または警報を発するように構成されている。
【0118】
加熱冷却プレートの周囲には、排水用の溝が形成され、加熱冷却プレートから循環水(冷却媒体)が漏れると排水用の溝に、循環水(冷却媒体)が流れ込み、半導体素子試験装置外に排出されるように構成されている。
加熱冷却プレート134はトレイ(図示せず)に搭載され、トレイは隔壁214から脱着できるように構成されている。
以上のように、隔壁214は循環水パイプ135が損傷しても、下側のA室、B室に循環水(冷却媒体)等が漏れないように構成されている。
【0119】
電源装置132が配置されたA室と、駆動回路系が配置されたB室間には隔壁215が形成されている。隔壁215には静電シールド板が配置され、電源装置132のノイズが遮蔽され、ノイズはB室の駆動回路系には印加されない。
【0120】
本発明の実施例では、C室からフォークプラグ205を差し込み、B室の導体板204と接続するとして説明する。隔壁214にはフォークプラグ205を挿入する開口部216が形成されている。
【0121】
上側から下側にフォークプラグ205を挿入する動作は容易である。しかし、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、C室に導体板204が配置され、B室からフォークプラグ205を挿入して、フォークプラグ205と導体板204とを電気的に接続してもよい。
【0122】
なお、隔壁214、隔壁215とは、壁状の構造物、板状の構造物、フィルム状の物、メッシュ状の物等が例示される。隔壁とは、半導体素子試験装置の第1の部分と第2の部分とを分離するものであればどのような物でもよい。
【0123】
図6に図示するように、マザー基板207にコネクタ213が取り付けられている。マザー基板207のコネクタ213にコントロール回路基板111、デバイス制御回路基板209、スイッチ回路基板201が取り付け、あるいは挿入されている。試験するトランジスタ117の個数に応じて準備するスイッチ回路基板201の枚数は、マザー基板207に取り付けるスイッチ回路基板201の枚数を変更することにより容易に実現できる。
【0124】
マザー基板207には、温度情報Tj、電圧Vi、可変抵抗回路125の制御信号、定電流回路118の制御信号等が伝送される。また、各回路の電源配線、グランド配線が形成され、コネクタ213を介して各回路基板に供給されている。
導体板204は、スイッチ回路基板201からはみ出るように配置されている。このはみ出た部分、延長された部分にフォークプラグ205が接続される。
【0125】
フォークプラグ205aはスイッチ回路基板201aの導体板204aと接続される。電源配線212は隔壁215の開口部216を介して、スイッチ回路基板201aと接続される。
【0126】
フォークプラグ205dはスイッチ回路基板201bの導体板204cと接続される。電源配線212は隔壁215の開口部216を介して、スイッチ回路基板201bと接続される。フォークプラグ205bはスイッチ回路基板201aの導体板204bと接続される。電源配線212は隔壁215の開口部216を介して、スイッチ回路基板201aと接続される。
【0127】
図1、
図12等に図示するように、スイッチ回路基板201bの導体板204dと導体板204c間にはスイッチ回路124aが配置され、導体板204dと導体板204c間を電気的に短絡する。電気的に短絡することにより、電源装置132が出力する電流Idが試験電流Idとしてトランジスタ117に供給される。
【0128】
図12に図示するように、スイッチ回路基板201aの導体板204aと導体板204b間にはスイッチ回路124bが配置されている。スイッチ回路124bがオンすることにより、導体板204aと導体板204b間が電気的に短絡する。電気的に短絡することにより、電源装置132が出力する電流Idが放電電流Imとしてグランドに流れる。そのため、トランジスタ117のチャンネル間に電圧が印加されることはなく、また、トランジスタ117に電流が流れることはない。当然、トランジスタ等の電気素子に過電圧、過電流が印加されることがない。
【0129】
導体板204bには、フォークプラグ205cが接続される。導体板204aにはフォークプラグ205bが接続される。また、導体板204dには、フォークプラグ205eが接続される。導体板204cにはフォークプラグ205dが接続される。
【0130】
図5はフォークプラグ205の構成図である。
図5(a)はスイッチ回路基板201に取り付けられた導体板204とフォークプラグ205とが結合された状態を示している。
図5(b)は
図5(a)のAA’線での断面を矢印方向から見たときの、導体板204とフォークプラグ205の結合状態を示している。
【0131】
フォークプラグ205の材質はアルミニウム等の金属で構成されている。フォークプラグ205は下地にニッケルメッキ処理し、表面に銀メッキが施されている。
フォークフラグ205はネジ溝が形成されており、接続ボルト219で接続配線211をフォークプラグ205に取り付けができるように構成されている。
【0132】
凸状の接触部220は、リン青銅、銅合金で形成または構成されている。また、接触部220の表面は銀メッキが施されている。フォークプラグ205の導体板204への挿入力は40以上60N以下になるように構成されている。一例として、
図6は、2枚のスイッチ回路基板201を図示している。同時あるいは順次、試験をするトランジスタ117数によりスイッチ回路基板201は2枚以上を必要とする。スイッチ回路基板201はマザー基板207のコネクタ213と接続される。
【0133】
図4に図示するように、フォークプラグ205cは、C室とB室間に設けられた隔壁214の開口部216から差し込まれ、導体板204bとフォークプラグ205cとが接続される。
【0134】
図3に図示するように、C室には試験するトランジスタ117、加熱冷却プレート134が配置され、B室にはトランジスタ117の試験のための駆動回路等が配置されている。C室とB室とは隔壁214で分離されているため、加熱冷却プレート134等から冷媒液が漏れたとしてもB室に漏れることはない。
【0135】
なお、加熱冷却プレート134の周辺には漏水センサ(図示せず)が配置されている。また、冷却液が流出した場合、冷却液を試験装置外に排出する溝が形成されている。
【0136】
隔壁214には電磁シールド板、静電シールド板が配置、または形成され、トランジスタ117から発生したノイズにより、B室の駆動回路系が誤動作しないように構成されている。
【0137】
試験するトランジスタ117に流す電流は数百アンペアと大きいため、使用する接続配線211の太さも太い。そのため、太い接続配線211、電源配線212は摺動性がなく、また、接続配線211、電源配線212は硬く、接続配線211、電源配線212は接続変更が容易でない。
【0138】
本発明の半導体素子試験装置では、C室から挿入されたフォークプラグ205により、スイッチ回路基板201に接続できる。したがって、トランジスタ117の試験条件により使用するスイッチ回路基板201との接続変更は、接続配線211の結線変更する必要がなく、フォークプラグ205を挿入する開口部216位置の変更だけでよい。また、スイッチ回路基板201は、マザー基板207に接続するコネクタ213の位置の変更だけでよい。
【0139】
以上のように、トランジスタ117を試験する内容、試験するトランジスタ117の個数に応じて、マザー基板207に接続するスイッチ回路基板201、デバイス制御回路基板209を配置し、スイッチ回路基板201等と接続切り替えは、隔壁214の開口部216に挿入するフォークプラグ205位置を変更することにより実施する。
【0140】
図1、
図3、
図12、
図13等に図示するように、トランジスタ117に接続された接続配線211bはフォークプラグ205cに接続されている。トランジスタ117に接続された接続配線211aはフォークプラグ205eに接続されている。
【0141】
図19等に図示するように、電源装置132の出力を短絡するスイッチ回路基板201aは半導体素子試験装置に1つでよい。電源装置132の出力を短絡することにより、試験をする複数のトランジスタ117には電圧、電流が印加されないようにできるからである。
【0142】
つまり、試験をするトランジスタ117が複数であっても、スイッチ回路基板201aは1基板であっても用途として充足する。電源装置132の出力電流IdをImとしてグランドラインに流せば良いからである。
【0143】
スイッチ回路基板201bは、試験するトランジスタ117の個数に対応する枚数が必要である。たとえば、試験するトランジスタ117が12個であれば、スイッチ回路基板201bは12枚準備することが好ましい。スイッチ回路基板201aとスイッチ回路基板201bは同一の仕様とすることはコスト的にも有利である。
【0144】
スイッチ回路基板201には、スイッチ回路124としてのトランジスタ等を複数実装する。スイッチ回路124の個数が多いほど、2枚の導体板204間を短絡するインピーダンスが小さくなる。スイッチ回路124bのオン抵抗は、試験するトランジスタ117のオン抵抗よりも小さくなるように、スイッチ回路基板201aに実装するスイッチ回路124bの個数を決定する。
【0145】
図7、
図8は、隔壁214の開口部216にフォークプラグ205を挿入した状態を図示したものである。
図7は隔壁214の表面から見た図であり、
図8は隔壁214の裏面から見た図である。
【0146】
図7の導体板204bには、一例として、フォークプラグ205bと複数のフォークプラグ205c(フォークプラグ205c1~フォークプラグ205c5)が接続されている。導体板204d1にはフォークプラグ205e1、導体板204d2にはフォークプラグ205e2、導体板204d3にはフォークプラグ205e3、導体板204d4にはフォークプラグ205e4、導体板204d5にはフォークプラグ205e5が接続されている。
【0147】
フォークプラグ205cとフォークプラグ205e間にはそれぞれ試験するトランジスタ117が接続されている。試験するトランジスタ117の個数分のスイッチ回路基板201bがマザー基板207に実装される。開口部216はスイッチ回路基板201の導体板204の位置に対応して形成されている。
【0148】
なお、図示していないが、スイッチ回路基板201のスイッチ回路124がオンオフすることにより大きなノイズが発生する。この対策として、スイッチ回路基板201とスイッチ回路基板201間に金属板を配置し、この金属板はアース接地している。
【0149】
各図面では、スイッチ回路124はスイッチ回路基板201に1個を図示している。しかし、実際には導体板204間には、
図3のスイッチ回路基板201bに図示するように複数のスイッチ回路124が配置されている。スイッチ回路基板201に複数のスイッチ回路124を配置することにより導体板204間(たとえば、導体板204cと導体板204e間)を低抵抗で短絡することができる。
【0150】
スイッチ回路124の発熱は導体板204に放熱される。また、スイッチ回路124には放熱板(図示せず)が取り付けられている。スイッチ回路124のグランド端子はスイッチ回路基板201のグランドに接続される。導体板204の熱はスイッチ回路基板201のグランド銅箔を介しても放熱される。
【0151】
図3に図示するように、スイッチ回路基板201には、2つの導体板204が取り付けられ、2つの導体板204を短絡するようにスイッチ回路124が配置されている。
図12は第1の実施例における本発明の半導体素子試験装置の等価回路図である。
【0152】
図3、
図12に図示するように、スイッチ回路基板201aには導体板204a、導体板204bが取り付けられている。導体板204aは、フォークプラグ205aと接続されている。フォークプラグ205aは電源装置132の出力端子と接続されている。導体板204bはフォークプラグ205bと接続されている。フォークプラグ205bは電源装置132のグランド端子と接続されている。
【0153】
スイッチ回路124bがオンすると電源装置132の出力端子間が短絡され、短絡電流Imが流れる。そのため、電源装置132の出力電流はトランジスタ117には供給されない。スイッチ回路124bがオープンの時に、電源装置132の出力電流Idがトランジスタ117に供給される。
【0154】
スイッチ回路基板201bには導体板204c、導体板204dが取り付けられている。導体板204cは、フォークプラグ205dと接続されている。フォークプラグ205dは電源装置132の出力端子と接続されている。導体板204dはフォークプラグ205eと接続されている。フォークプラグ205eは試験を行うトランジスタ117のコレクタ端子と接続されている。
【0155】
図3、
図4、
図6、
図7等に図示するように、フォークプラグ205eは隔壁214に開口された開口部216に差し込まれて、導体板204dと結合(電気的に接続)されている。また、フォークプラグ205cは隔壁214に開口された開口部216に差し込まれて、導体板204dと結合される。
【0156】
スイッチ回路基板201bにはスイッチ回路124aが配置され、スイッチ回路124aがオンすると電源装置132からの出力電流Idがトランジスタ117に流す試験電流Idとして、トランジスタ117に供給される。
【0157】
スイッチ回路基板201bは筐体210のB室に配置されているが、C室から隔壁214の開口部216から差し込まれたフォークプラグ205により、スイッチ回路基板201bと試験を行うトランジスタ117が電気的に接続される。
【0158】
図4、
図7等に図示すように、フォークプラグ205と導体板204とが接続される。
図4において、スイッチ回路基板201は平行して配置されているように図示している。実際にはスイッチ回路基板201は基板ラックに並行した挿入されて配列されている。基板ラックの側面にはマザー基板が配置され、各回路基板への制御信号は、マザー基板から供給される。
【0159】
以上の実施例では、スイッチ回路基板201に導体板204が取り付けられているとして説明したが、これに限定するものではない。たとえば、導体板204を配置し、この導体板204とスイッチ回路基板201とを配線などで固定的に接続してもよいことは言うまでもない。
【0160】
図19に図示する実施例では、電源配線212bは接地(グランド電位あるいは基準電位)されている。複数の導体板204b(導体板204b1~導体板204bn)は、電源配線212bと電気的に接続されている。導体板204b(導体板204b1~導体板204bn)とフォークプラグ205c(フォークプラグ205c1~フォークプラグ205cb)とが電気的に接続されている。
【0161】
トランジスタ117Q1のコレクタ端子cはフォークプラグ205e1が接続され、フォークプラグ205e1はスイッチ回路基板201b1の導体板204d1と電気的に接続されている。
【0162】
トランジスタ117Q2のコレクタ端子cはフォークプラグ205e2が接続され、フォークプラグ205e2はスイッチ回路基板201b2の導体板204d2と電気的に接続されている。
【0163】
同様に、トランジスタ117Qn(nは3以上の整数)のコレクタ端子cはフォークプラグ205enが接続され、フォークプラグ205enはスイッチ回路基板201bnの導体板204dnと電気的に接続されている。
【0164】
導体板204b1~導体板204bnは電源配線212bと接続され、電源配線212bは接地されている。したがって、導体板204b1~導体板204bnを共通の導体板204bと置き換えてもよい。共通の導体板204bに、開口部216を介してフォークプラグ205c1~フォークプラグ205cnを挿入し、フォークプラグ205c1~フォークプラグ205cnと導体板204bとを電気的に接続をする。
【0165】
図19は、導体板204bは、複数の導体板204b1~導体板204bnと図示しているが、複数の導体板204b1~導体板204bnは接地されている。したがって、電気的には1つの導体板204bを配置し、導体板204bにフォークプラグ205c1~フォークプラグ205cnを接続すればよい。
フォークプラグ205e1~フォークプラグ205enは異なる導体板204d1~導体板204dnに接続をする。
【0166】
複数のトランジスタ117Q1~トランジスタ117Qnの試験は、導体板204d1~導体板204dnへのフォークプラグ205e1~フォークプラグ205enの接続変更と、導体板204bへのフォークプラグ205c1~フォークプラグ205cnの接続変更を実施することにより選択できる。
【0167】
図7、
図8では、導体板204bを共通にし、フォークプラグ205b、フォークプラグ205c1~フォークプラグ205c5を、導体板204bと電気的に接続している。
【0168】
フォークプラグ205e1は導体板204d1と電気的に接続し、フォークプラグ205e2は導体板204d2と電気的に接続し、フォークプラグ205e3は導体板204d3と電気的に接続し、フォークプラグ205e4は導体板204d4と電気的に接続のように、1つのフォークプラグ205eと1つの導体板204dとを電気的に接続している。また、1つの隔壁214に複数の開口部216を形成し、開口部216にフォークプラグ205を挿入する。
【0169】
図7、
図8の構成では、フォークプラグ205に取り付けられた接続配線211が煩雑になり、接続配線211が阻害してフォークプラグ205を開口部216に挿入が困難になる場合がある。特に接続配線211が太く、柔軟性がない場合に顕著になる。
【0170】
この課題に対して、本発明は
図9に図示するように、共通の導体板204に接続するフォークプラグ205の列と、1つまたは複数のフォークプラグ205を接続する導体板204の列を分離する。
【0171】
図9等は本発明の技術的思想を説明するための図面である。
図9では、一例として3つ以上のフォークプラグ205を接続する導体板204bを配置し、導体板204b複数のフォークプラグ205b、複数のフォークプラグ205dを取り付けている。また、2つのフォークプラグ205を接続する導体板204a1~導体板204a6を配置し、各導体板204a1~導体板204a6にフォークプラグ205a、フォークプラグ205cを取り付けている。導体板204a1~導体板204a6は直線状に配置している。また、導体板204bと導体板204aは略並行に配置している。
【0172】
図19で示す導体板204b1、導体板204b2~導体板204bnを、
図9で示す導体板204bと置き換えた状態と類似する。また、
図19で示す導体板204d1を
図9で示す導体板204a1、導体板204d2を導体板204a2、導体板204d3を導体板204a3、・・・・、導体板204d6を導体板204a6に置き換えた状態と類似する。
【0173】
図9において、トランジスタ117の端子電極226b(N端子)はフォークプラグ205aと電気的に接続され、トランジスタ117の端子電極226a(P端子)はフォークプラグ205cと電気的に接続されている。フォークプラグ205aは導体板204aと電気的に接続され、フォークプラグ205cは導体板204b4と電気的に結合されている。
【0174】
スイッチ回路基板201にはフォークプラグ205bとフォークプラグ205dが接続されている。フォークプラグ205bは導体板204aと電気的に接続され、フォークプラグ205dは導体板204bと電気的に接続されている。
【0175】
フォークプラグ205bとフォークプラグ205dは導体板204b接続されることにより電気的に共通に維持される。フォークプラグ205aとフォークプラグ205cは導体板204a接続されることにより電気的に共通に維持される。
トランジスタ117a~トランジスタ117eはそれぞれコネクタ202を介してコントロール回路基板111と接続される。
【0176】
図10に図示するように、フォークプラグ挿入板231aには開口部206bが形成され、フォークプラグ挿入板231bには開口部206bが形成されている。フォークプラグ挿入板231aの開口部206bは導体板204bに沿って配置される。フォークプラグ挿入板231aの開口部206bは導体板204aに沿って配置される。
【0177】
接続配線211a、接続配線211b、接続配線211c、接続配線211dは各々のフォークプラグ205と接続され、各接続配線211は各々が略並行位置となるように配置される。接続配線211を略並行位置に配置することにより、
図8、
図9に図示するような接続配線211との交差等がなくなり、フォークプラグ205が開口部206に挿入することが容易になる。したがって、トランジスタ117a~トランジスタ117eのいずれを試験するかを、フォークプラグ205の開口部206への挿入あるいは非挿入により切り替えすることが容易になる。
【0178】
図11に図示するように、フォークプラグ挿入板231aとフォークプラグ挿入板231bとは、垂直方向に高さHの段差があるように構成または形成されている。
【0179】
フォークプラグ挿入板231aとフォークプラグ挿入板231bには開口部216bが形成されている。隔壁214には開口部216aが形成されている。フォークプラグ205は開口部216a、開口部216bに挿入され、フォークプラグ205は開口部216a、開口部216b、および導体板204で支持される。したがって、フォークプラグ205の支持は強固なものになっている。
【0180】
図9に図示するように、フォークプラグ挿入板231aにはフォークプラグ205b、フォークプラグ205dが挿入され、フォークプラグ205bには接続配線211bが接続されている。フォークプラグ205aには接続配線211aが接続され、フォークプラグ205bには接続配線211bが接続されている。フォークプラグ205cには接続配線211c接続され、フォークプラグ205dには接続配線211dが接続されている。
【0181】
したがって、
図11に図示するように、接続配線211b、接続配線211dが下位置に配置され、接続配線211a、接続配線211cが上位置に配置される。そのため、接続配線211b、接続配線211dと、接続配線211a、接続配線211cとは配線位置空間が上下方向に異なり、配線交差等は発生しない。そのため、開口部216に挿入するフォークプラグ205の脱着、圧入等が容易になる。
以上の
図9、
図10、
図11等で説明した事項は本発明の他の実施例に適用すること、また、他の実施例と組み合わせることができることは言うまでもない。
【0182】
図12、
図13、
図14は、第1の実施例における本発明の半導体素子の試験方法の説明図である。
図14においてVgsは、試験をするトランジスタ117のゲート端子に印加するゲート信号である。電流Idは試験時にトランジスタ117に流す電流である。説明を容易にするため、トランジスタ117がオン時に定電流Idを流すとしている。
【0183】
図14(c)St1はダイオードDiに電流Icを流すタイミング信号であり、St1がHレベルの時、トランジスタ117のダイオードDiに電流が流れる。オペアンプ回路116はダイオードDiの端子間電圧を取得し、温度測定回路115は端子間電圧を温度情報Tjに変換する。温度情報Tjはコントロール回路基板(コントローラ)111に送られ、コントロール回路基板(コントローラ)111は温度情報Tjに基づいてトランジスタ117の試験を実施する。
【0184】
電流Idは試験を行うトランジスタ117に流れる電流であり、電源装置132が出力する電流である。St1、St2は温度測定用のダイオードに測定用電流を流す時間あるいは温度の測定時間である。
図14(e)Ssaはスイッチ回路124aのオンオフ信号、
図14(f)Sabはスイッチ回路124bのオンオフ信号である。
【0185】
図14(g)Vceはトランジスタ117のc端子の電圧(トランジスタ117のチャンネル電圧)、温度情報Tjは測定されたトランジスタ117の温度変化を示す。
【0186】
図14(a)に図示するように、ゲートドライバ回路113からゲート信号Vgsがトランジスタ117のゲート端子gに印加される。ゲート信号Vgsは周期時間tcycle、オン時間tonである。周期時間tcycle、オン時間tonはゲート信号制御回路112で任意の値に設定することができる。また、オン電圧Vgも任意の電圧に設定することができる。
【0187】
図14(d)St2は
図17に示す実施例において、ダイオードDsa、ダイオードDsbに電流Icを流すタイミング信号である。St2がHレベルの時、トランジスタ117のダイオードDsaまたはDsbに電流が流れる。トランジスタ117と独立したデバイス(ダイオード)に定電流Icを流して温度情報Tjを取得する場合である。
【0188】
図17の実施例では、オペアンプ回路116はダイオードDsaまたはDsbの端子間電圧を取得し、温度測定回路115は端子間電圧を温度情報Tjに変換する。温度情報Tjはコントロール回路基板(コントローラ)111に送られる。コントロール回路基板(コントローラ)111は温度情報Tjに基づいてトランジスタ117の試験を実施する。St2に関連する事項は、
図17等で説明する。
【0189】
理解を容易にするため、測定された温度情報Tjは
図14(h)で示すように、T1からT2の間を変化するとして説明する。温度情報Tjはトランジスタ117に通電されることにより高くなり、通電する電流が停止すると低下する。また、温度情報Tjはトランジスタ117の特性変化にともなって変化する。
【0190】
図14(e)Ssaはスイッチ回路Ssaのオンオフ制御信号のタイミングを示す。SsaがVonになるとスイッチ回路Ssaがクローズ(オン)する。0の場合は、スイッチ回路Ssaがオープン(オフ)になり、トランジスタ117への電流あるいは電圧の印加が遮断される。
【0191】
図14(f)Ssbはスイッチ回路Ssbのオンオフ制御信号のタイミングを示す。SsbがVonになるとスイッチ回路Ssbがクローズ(オン)する。0の場合は、スイッチ回路Ssbがオープン(オフ)になる。
【0192】
図14(g)Vceはトランジスタ117のチャンネル電圧(エミッタ端子とコレクタ端子間の電圧)である。トランジスタ117のオンオフにともなって、サージ電圧、ザージ電流が発生する。また、トランジスタ117のオン抵抗の変化にともないVce波形が時間的に複雑に変化する。また、ダイオードDiに電流Icが流れることにより、トランジスタ117のVce波形は変化する。
【0193】
本明細書、図面では、説明を容易にするため、あるいは作図を容易にするため、トランジスタ117がオンの時はチャンネル間電圧Vceが電圧Vnになるとし、トランジスタがオフの時はチャンネル間電圧Vceが電圧Veになるとして説明をする。
ゲート信号は、周期tcycle、オン時間ton、オフ時間toffで試験をするトランジスタ117のゲート端子に印加される。
【0194】
ゲート信号Vgsはトランジスタ117がNチャンネルの場合は、グランド(接地)電圧0(V)がオフ電圧であり、Vgがオン電圧である。トランジスタ117がPチャンネルの場合は、オン電圧の電位とオフ電圧の電位を変更する。
【0195】
トランジスタ117をオンする前のtn2期間は、オフ電圧よりもマイナス側のVt電圧にする。また、トランジスタ117をオフ後のtn1期間は、オフ電圧よりもマイナス側のVt電圧にする。
Vt電圧は、0(V)よりも低く、-4(V)よりも高い電圧である。したがって、Vtとは、-4(V)以上、かつ0(V)よりも低い電圧である。
なお、トランジスタ117がSiCの場合はオフ電圧をVt電圧とし、IGBTの場合は、オフ電圧を0(V)とする。
【0196】
以上のように、試験するトランジスタ117の種類に応じて、トランジスタ117に供給するオフ電圧を変更できるように本発明の半導体素子試験装置を構成している。
【0197】
Vt電圧が印加されている時に、St1(St2)をHレベルにしてトランジスタ117の温度を測定する。Vt電圧を印加している期間、あるいはトランジスタ117がオフ期間にダイオードDiに定電流Icを流す。また、St1(St2)のHレベルに期間には定電流Icを流す。
【0198】
トランジスタ117のゲート端子にVt電圧が印加されることにより、トランジスタ117のオフ状態が安定し、温度情報Tjの測定を安定して実施することができる。また、温度情報Tjの測定時にノイズが乗りにくく、温度情報Tjの測定精度が向上する。
【0199】
トランジスタ117のゲート端子にVt電圧を印加することにより、トランジスタ117のリーク電流が減少し、Vi電圧の測定精度が向上、また測定が安定する。
【0200】
ゲート信号Vgsは、tn1、tn2の時間にVt電圧にされる。一例としてtn1、tn2の時間は、0.2m秒以上2m秒以下の時間である。トランジスタ117は0(V)でオフする。
【0201】
したがって、トランジスタ117のゲート端子gには、Vg、0(V)、Vtの3電圧を印加する。Vtを印加している期間に、トランジスタのダイオードDiに電流を流して温度情報Tjを測定する。
【0202】
ダイオードDiに定電流Icを流すときには、スイッチ回路Ssaをオフして、電源装置132からの電流がトランジスタ117に印加されないように制御する。
【0203】
ダイオードDiに定電流Icを流すことにより、ダイオードDiの端子電圧を取得し、オペアンプ回路116は端子電圧に対応するVi電圧を出力する。Vi電圧は温度測定回路115に入力され、温度測定回路115はトランジスタ117の温度に対応する温度情報Tjを求める。
【0204】
温度情報Tjはコントロール回路基板(コントローラ)111に転送され、コントロール回路基板(コントローラ)111は温度情報Tjに基づいてトランジスタ117の試験の継続、停止、条件変更等、トランジスタ117の試験を制御する。
【0205】
図14(e)Ssaはスイッチ回路124aのオンオフ制御するタイミング信号である。
図14(f)Ssbはスイッチ回路124bのオンオフ制御するタイミング信号である。
【0206】
スイッチ回路124aは、トランジスタ117のVgs信号がVgになってから、tm2時間遅れてオンする。tm2時間はコントロール回路基板(コントローラ)111により変更設定できるように構成されている。
【0207】
スイッチ回路124aがオンする前のtb2時間前にスイッチ回路124bがオンする。スイッチ回路124aがオンしてからtb1時間後までスイッチ回路124bのオン状態は維持される。tb2時間、tb1時間は独立して変更設定できるように構成されている。
特に、tb1の設定は重要である。tb1の時間は、トランジスタ117のVce電圧の波形を観察して、適正に設定あるいは変更する。
【0208】
スイッチ回路124aは、トランジスタ117のVgs信号がVtになるtm1時間前にオフする。tm1時間はコントロール回路基板(コントローラ)111により変更設定できるように構成されている。
【0209】
スイッチ回路124aがオフする前のta2時間前にスイッチ回路124bがオンする。スイッチ回路124aがオフしてからta1時間後までスイッチ回路124bのオン状態は維持される。ta2時間、ta1時間は独立して変更設定できるように構成されている。
特に、ta1の設定は重要である。ta1の時間は、トランジスタ117のVce電圧の波形を観察あるいは測定して、適正に設定あるいは変更する。
【0210】
スイッチ回路Ssbがオンすることにより、電源装置132の出力端子がグランド(接地ライン)と短絡し、電荷が放電される。電荷が放電されることにより電源装置132の端子電圧は0(V)(グランド電圧)となる。また、電源装置132が出力する電流Idを、電流Imとして接地(グランド)へ流す。したがって、電流Idはトランジスタ117に印加されることはなく、また、トランジスタ117のコレクタ電圧が上昇することはない。
【0211】
tb2時間は、電源装置132の出力電圧が0(V)あるいは0(V)近傍になる時間、あるいは、電源装置132の出力電圧の方が、トランジスタ117のコレクタ電圧よりも低くなる時間を観察あるいは測定して設定する。
【0212】
上記の電圧の関係が所定値になった時刻(tb2経過後)で、スイッチ回路124aをオンさせて、電源装置132からの電流Idを印加する。このときは、スイッチ回路124bがオンしているため、電源装置132からの電流Idは、スイッチ回路124bを介して電流Imとしてグランド(接地ライン)に流れる。したがって、トランジスタ117には定電流Idは流れない。
スイッチ回路124aがオンしてから、tb1時間経過後、スイッチ回路124bがオフし、試験電流Idがトランジスタ117に供給される。
試験電流Idは、
図14のように、スイッチ回路124aに同期して、トランジスタ117に供給される。
【0213】
以上のようにスイッチ回路124a、124bを動作させることにより、トランジスタ117にはサージ電圧Vsあるいは突入電流Isが印加されない。または、サージ電圧Vsあるいは突入電流Isが抑制され、良好なトランジスタ117の試験を実施することができる。
【0214】
トランジスタ117への試験電流Idの停止時は、スイッチ回路124aのオフさせるta2前にスイッチ回路124bをオンさせる。スイッチ回路Ssbを介して、電源装置132が出力する定電流Idは電流Imとしてグランドに流れ、トランジスタ117には供給されない。
【0215】
ta2時間は、電源装置132の出力電圧が0(V)あるいは0(V)近傍になる時間、あるいは、電源装置132の出力電圧の方が、トランジスタ117のコレクタ電圧よりも低くなる時間を測定、あるいは観察して設定する。
【0216】
上記の電圧の関係が所定値になった時刻(ta2経過後)で、スイッチ回路124aをオフさせる。スイッチ回路124aがオフしてから、ta1時間経過後、スイッチ回路124bがオフされる。
【0217】
以上のようにスイッチ回路124a、124bを以上のように動作あるいは制御することにより、トランジスタ117にはサージ電圧Vsあるいは突入電流Isが印加されない。また、サージ電圧Vsあるいは突入電流Isが抑制され、良好なトランジスタ117の試験を実施することができる。
【0218】
トランジスタ117に定電流Idが供給されることにより、温度情報Tjは上昇する。トランジスタ117への定電流Idが停止することにより、温度情報Tjは下降する。温度情報TjはT1とT2間を変動する。試験によりトランジスタ117の特性が変動すると温度情報Tjは徐々に上昇する。
一定値の電流Idをトランジスタ117に印加するには、電源装置132を動作させ、トランジスタ117に電流Idを印加する。
【0219】
図1、
図12、
図13、
図15、
図17、
図18等に図示するように、ゲートドライバ回路113の可変抵抗回路125の抵抗値を設定あるいは変更することができる。抵抗値を設定あるいは変更することにより、ゲート信号Vgsの立ち上がり/立ち下がり波形は、
図15(a)の点線あるいは一点鎖線のように変化させることができる。
【0220】
ゲート信号Vgsの変化あるいは設定により、トランジスタ117に流れる電流Idも
図15(b)に図示するように、点線あるいは一点鎖線のように変化させることができる。
電流Idの立ち上り波形、立ち下り波形を変化させることにより、サージ電圧あるいは突入電流を調整あるいは抑制することができる。
【0221】
温度情報Tjは
図15(c)に図示するように、試験によりトランジスタ117の特性が変化すると、実線から点線、点線から一点鎖線に変化する。温度情報TjがTmのレベルに達した時に試験を停止する。あるいは、温度情報Tjの変化割合が設定された変化割合になったときに試験を停止する。または試験条件を変更する。
【0222】
図16に図示するように、スイッチ回路Ssa(スイッチ回路124a)がオフ状態の時に、St1信号をHにして、温度情報Tjを測定する。St1信号は、ゲート信号がVtの時に、Hレベルにする。tn2期間で、tc2の期間にHレベルにして、温度情報Tjを測定する。tn1期間で、tc1の期間に温度情報Tjを測定する。
【0223】
tc2の期間に測定した温度情報Tjは、トランジスタ117が冷却された時点の温度情報Tjとなる。tc1期間に測定した温度情報Tjは、トランジスタ117に電流Idを停止した直後の温度情報Tjとなる。
試験の停止、条件変更、制御の変更等は、tc2の期間に測定した温度情報Tjと、tc1期間に測定した温度情報Tjで判断する。
【0224】
tc1期間に測定した温度情報Tjがtc2の期間に測定した温度情報Tjに比較して変化率が大きい場合、tc1期間に測定した温度情報Tjがtc2の期間に測定した温度情報Tjとの絶対値差が大きい場合等、測定値温度情報Tjに対応して、試験を制御、変更する。
【0225】
また、tc2の期間に測定した温度情報Tjが標準値と所定値、異なっていると場合、トランジスタ117の接続状態、試験装置に問題があるかを判定し「試験を開始せず」の判断等を行う。
tc2あるいはtc1期間に、Viを複数回、測定し、Viに対する温度情報Tjを求める。
【0226】
図17の実施例は、本発明の第2の実施例における半導体素子試験装置および半導体素子の試験方法の説明図である。
図17におけるトランジスタ117は、温度測定用のダイオードDs(ダイオードDsa、ダイオードDsb)を別途設けている。ダイオードDsは、トランジスタ117と同一プロセスで形成される。
【0227】
図17の実施例では、
図14(d)のSt2信号のタイミングで温度情報Tjを測定する。スイッチ回路Ssa(スイッチ回路124a)がオフ状態の時に、St2信号をHにして、温度情報Tjを測定する。tn2期間で、tc2の期間にHレベルにして、温度情報Tjを測定する。tc1の期間は、tonの期間、tn1の期間にいずれの期間に温度情報Tjを測定してもよい。tc2の期間に測定した温度情報Tjと、tc1期間に測定した温度情報Tjは、平均を取り、温度情報Tjを求める。
【0228】
なお、tc2あるいはtc1期間に、Viを複数回測定し、Viに対する温度情報Tjを求める。
図14の他の信号あるいはスイッチ回路の動作は、
図1で説明した実施例と同一あるいは同様である。
以上の実施例は、トランジスタ117に付加する、あるいは形成されたダイオードで温度情報Tjを測定する実施例であった。
図17の実施例では、トランジスタ117にトランジスタとは接続されていない(独立した)ダイオードDsが形成された実施例である。
【0229】
ダイオードDsaは定電流Icを流す向きに形成されている。ダイオードDsbは定電流Ic’を流す向きに形成されている。定電流回路118(Pc)は定電流Icおよび定電流Ic’を発生する。
【0230】
ダイオードDsa、ダイオードDsbは温度測定用のダイオードである。ダイオードDsa、ダイオードDsbの構造は、
図1のダイオードDiと類似あるいは同一である。
【0231】
ダイオードDiがトランジスタ117の端子(端子c、端子e)と接続されているのに対して、ダイオードDsa、ダイオードDsbはトランジスタ117の端子とは接続されておらず、独立した端子に接続されている点、ダイオードDiは
図14(c)のSt1のタイミングで温度情報Tjが測定されるのに対し、ダイオードDsa、ダイオードDsbは
図14(d)St2のタイミングで温度情報Tjが測定される点以外は、同一動作あるいは同一構成である。
【0232】
図17の実施例では、トランジスタ117に電流Idを流している状態でもダイオードに定電流Icを流すことができる。したがって、温度情報Tjを測定する時間を自由に設定することができる。
図14(d)に図示するように、tc1、tc2の位置を設定することができる。
【0233】
ただし、tc2にあっては、
図14(d)に示すように、ゲート信号がVtの期間に配置あるいは設定する。tc2の期間で測定する温度情報Tjは、トランジスタ117が動作前の値として使用する。tc1の期間は、トランジスタ117の定電流Idを停止する直前が好ましい。なお、定電流Idの停止した直後でもよい。直前、直後とは1m秒以内の時間とすることが好ましい。
図14(d)のSt2はダイオードDs(Dsa、Dsb)の電流Ic(または電流Ic’)を流すタイミング信号である。
【0234】
St2がHレベルの時、トランジスタ117のダイオードDs(Dsa、Dsb)に電流が流れる。オペアンプ回路116はダイオードDsの端子間電圧を取得し、温度測定回路115は端子間電圧を温度情報Tjに変換する。
【0235】
温度情報Tjはコントロール回路基板(コントローラ)111に送られ、コントロール回路基板(コントローラ)111は温度情報Tjにしたがってトランジスタ117の試験を実施あるいは停止あるいは制御を変更する。
【0236】
St2がHレベルの時に、定電流回路118は定電流Icを流し、定電流IcはダイオードDsaに流れる。また、定電流回路118は定電流Ic’を流し、定電流Ic’はダイオードDsbに流れる。
【0237】
定電流Icと定電流Ic’は同一の大きさの電流である。ただし、ダイオードDsaとダイオードDsbの閾値電圧が異なる場合、ダイオードDsaとダイオードDsbの特性が異なる場合等は、定電流Icと定電流Ic’の大きさを異ならせることが好ましい。
【0238】
オペアンプ回路116はダイオードDsaまたはDsbの端子間電圧を取得し、温度測定回路115は端子間電圧を温度情報Tjに変換する。温度情報Tjはコントロール回路基板(コントローラ)111に送られ、コントロール回路基板(コントローラ)111は温度情報Tjに基づいてトランジスタ117の試験を実施する。
【0239】
定電流Icを流して求めた温度情報Tjと、定電流Ic’を流して求めた温度情報Tjとは、平均値をとる、あるいは重みづけ処理を行い、1つの温度情報Tjの値とする。この温度情報Tjを用いて、コントロール回路基板(コントローラ)111はトランジスタ117の試験を実施あるいは停止あるいは制御を変更する。
他の事項は、本明細書、図面で説明した事項あるいは内容と同一あるいは類似であるので説明を省略する。
【0240】
本発明はその要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。本明細書および図面に記載した事項あるいは内容は、相互に組み合わせることができることは言うまでもない。以上の事項は本明細書の他の実施例においても同様であることは言うまでもない。
【0241】
図18は本発明の第3の実施例における半導体素子試験装置および半導体素子の試験方法の説明図である。
図1との差異は、ダイオード接続されたトランジスタ117sが試験を行うトランジスタ117mに流す電流Idの経路に配置されている点である。他の箇所は同一であるので説明を省略する。
【0242】
トランジスタ117sは一例として、試験を実施するトランジスタ117と同一のトランジスタである。トランジスタ117sのゲート端子とエミッタ端子は接続され、トランジスタ117sは等価的にダイオードとみなせる。
【0243】
スイッチ回路124bがオンすると電流Imが流れ、電源装置132の電荷を放電する。あるいは、電源装置132が出力する電流Idはスイッチ回路124bを介して、グランドに流す。
【0244】
試験をするトランジスタ117mに突入電流Isが流れるとトランジスタ117mを突入電流Isあるいはサージ電圧Vsの発生によって、トランジスタ117mが破壊する。突入電流Isあるいはサージ電圧Vsの発生することを防止するため、スイッチ回路124a、124bのオンオフ制御、オンオフ順序を制御する。
【0245】
周期tcycleを速くして、トランジスタ117mの試験を実施する場合、スイッチ回路124a、スイッチ回路124bのオンオフを高速に実施する必要がある。この場合、スイッチ回路124のオンオフタイミングにより、突入電流Isあるいはサージ電圧Vsが発生する場合がある。
【0246】
トランジスタ117のコレクタ端子の電圧Vmの電圧が、電源装置の出力部の電圧Vpよりも高ければ、電流は電流Imとしてグランドに向かって流れ、トランジスタ117mには流れないか、わずかとなる。
【0247】
Vm > Vpの関係を作るため、
図18に示す実施例では、ダイオード接続したトランジスタ117sを電流Idの経路に配置している。トランジスタ117sに電流が流れる場合、トランジスタ117sのチャンネル電圧分だけ、電圧Vmに積み上がる状態になる。したがって、電圧Vpは、電圧Vmより低い状態となり、トランジスタ117mに突入電流は印加されなくなる。トランジスタ117mが突入電流Isあるいはサージ電圧Vsで破壊することはない。
【0248】
図19は、本発明の第4の実施例における半導体素子試験装置および半導体素子の試験方法の説明図である。
図19において、電源装置132に並列して、試験を行う複数のトランジスタ117(トランジスタ117Q1~トランジスタ117Qn)が接続されている。
【0249】
第4の実施例では、1枚のスイッチ回路基板201aと、n枚のスイッチ回路基板201b(スイッチ回路基板201b1~スイッチ回路基板201bn)を有している。同時あるいは順次に試験するトランジスタ117Qはn個(トランジスタ117Q1~トランジスタ117Qn)である。
【0250】
トランジスタQ1のコレクタ端子は、フォークプラグ205e1と接続され、トランジスタQ1のエミッタ端子は、フォークプラグ205c1と接続されている。
【0251】
トランジスタQ2のコレクタ端子は、フォークプラグ205e2と接続され、トランジスタQ2のエミッタ端子は、フォークプラグ205c2と接続されている。
【0252】
トランジスタQ3のコレクタ端子は、フォークプラグ205e3と接続され、トランジスタQ3のエミッタ端子は、フォークプラグ205c3と接続されている。
【0253】
以下同様で、トランジスタQnのコレクタ端子は、フォークプラグ205en(nは整数)と接続され、トランジスタQnのエミッタ端子は、フォークプラグ205cnと接続されている。
【0254】
定電流回路118の電流Icは、スイッチ回路Ssa1がオンすることにより、トランジスタ117Q1のダイオードDsに供給される。ダイオードDsの端子電圧は、オペアンプ(バッファ)116に印加され、オペアンプ回路116からVi1電圧として出力される。
【0255】
定電流回路118の電流Icは、スイッチ回路Ssa2がオンすることにより、トランジスタ117Q2のダイオードDsに供給される。ダイオードDsの端子電圧は、オペアンプ(バッファ)116に印加され、オペアンプ回路116からVi2電圧として出力される。
【0256】
同様に、定電流回路118の電流Icは、スイッチ回路Ssanがオンすることにより、トランジスタ117QnのダイオードDsに供給される。ダイオードDsの端子電圧は、オペアンプ(バッファ)116に印加され、オペアンプ回路116からVin電圧として出力される。
電圧Vi1から電圧Vinはセレクタ127で1つの電圧が選択され、Viとして出力されて温度測定回路115に入力される。
【0257】
温度測定回路115は温度情報Tjを求めて、コントロール回路基板111に出力する。なお、
図19の実施例において、定電流回路118は1つとしたがこれに限定するものではない。各トランジスタ117Qに定電流回路118を配置してもよい。また、各トランジスタ117Qに温度測定回路115を形成または配置してもよい。
電圧データVi、温度情報Tjはマザー基板207の配線を介して、コントロール回路基板111に送られる。
【0258】
図9、
図10等に図示するように、フォークプラグ205は、C室側から隔壁214に形成された開口部216を介してB室に差し込まれる。フォークプラグ205は差し込まれることによりスイッチ回路基板201の導体板204と接続される。フォークプラグ205を差し込む開口部216位置により、スイッチ回路基板201を選択できる。
【0259】
また、マザー基板207のコネクタ213に接続するスイッチ回路基板201位置を変更することによりフォークプラグ205で選択するスイッチ回路基板201を選択することができる。
【0260】
スイッチ回路基板201には導体板204が2枚配置されている。2枚の導体板204のうち、C室に近い側の導体板204とフォークプラグ205とが接続(接触)されるように、導体板204が配置される。
【0261】
なお、本発明の実施例において、フォークプラグ205と導体板204とを接触させて電気的に接続するとしたが、これに限定するものではない。機構的な動作により電気的に接続状態と、非接続状態とを変更できるものであればいずれでもよい。また、接続した状態を安定的に維持できるものであればいずれの構成であってもよい。たとえば、フォークプラグ205のかわりに、ロータリーコネクタ、ロータリージョイント、大電流コネクタ等であってもよい。
【0262】
導体板204の代わりに、ロータリーコネクタ、ロータリージョイント、大電流コネクタであってもよいし、円筒状の導体棒、角型の導体棒、くし型の導体板等であってもよい。
【0263】
なお、本明細書、図面において導体板204として説明するが、板に限定されるものではなく、棒状のものであってもよい。フォークプラグ205等の構造物と接合できるものであればいずれの形状等であってもよい。たとえば、ソケット、コネクタ等の構造物であってもよい。また、導体板204をフォークプラグ形状とし、フォークプラグ205と前記フォークプラグとを接続してもよい。
【0264】
図20は、
図19の動作を説明する本発明の実施例における半導体素子の試験方法の説明図である。トランジスタ117Q(トランジスタ117Q1~トランジスタ117Qn)が同時にオンさせて半導体試験を実施することは可能である。この場合、トランジスタ117Q(トランジスタ117Q1~トランジスタ117Qn)のすべてに定電流Idを流す必要がある。したがって、電源装置132には、トランジスタ117Qがn個あれば、Id×nの電流を出力できる必要がある。したがって、大容量の電源装置132が必要となる。
【0265】
トランジスタ117Qを順次オンさせて、定電流Idをトランジスタ117Qに印加して試験を実施すれば、電源装置132が出力する定電流はIdでよい。
図20は、トランジスタ117Qを順次オンさせて試験を実施する半導体素子試験装置の試験方法の実施例である。半導体素子は、定電流Idをオンオフさせる回数で変化する。
【0266】
図20のように半導体素子(トランジスタ117Q等)を順次オンさせることによる試験をすることにより、効率よく試験を実施でき、また、電源装置132の最大出力電流容量を小さくすることができる。
【0267】
図20において、オンさせるトランジスタ117Qは1個として説明するが、これに限定するものではない。たとえば、複数個のトランジスタ117Qを同時にオンさせてもよい。この場合、電源装置132が出力する定電流の最大値は、オンさせるトランジスタ117Qの個数×Idとなる。
【0268】
また、本発明の実施例において電源装置132は1台と図示しているが、これに限定するものではない。電源装置132は、別途、電源装置132bを設置してもよい。また、2台以上の電源装置132を設置してもよい。電源装置132を複数台、設置することより、トランジスタ117に流す電流Idをさまざまな波形とすることができる。
【0269】
図20(a)に図示するように、スイッチ回路St1(151s1)~スイッチ回路Stn(151sn)がオンすることにより、トランジスタ117に定電流Id1~定電流Idnが流れる。例えば、定電流Idの印加時間はtonであり、定電流Id1と定電流Id2とは時間tcycleの間隔で順次、トランジスタ117に印加される。トランジスタ117はオンすることにより、トランジスタ117Qのチャンネル電圧が順次、変化する(
図20(c))。
【0270】
たとえば、定電流Id1と定電流Id2とは時間的に重なりがない。そのため、電源装置132の出力容量は、1つのトランジスタ117Qの試験に必要とする出力容量でよい。
【0271】
定電流Id(Id1~Idn)は重ならないように制御する。また、好ましくは定電流Id(Id1~Idn)のそれぞれの電流Id間は、1μ秒以上の間隔をあけることが好ましい。なお、各トランジスタ117Qに対しては、
図12で説明した駆動方法、制御方法を実施する。
【0272】
また、
図19、
図20の実施例は、試験を行う複数のトランジスタ等の電気素子において、前記複数のトランジスタ等のうち、少なくとも同一タイミングで、1つ以上のトランジスタ等がオフ状態にすることを特徴とする。
【0273】
各トランジスタ117Qに供給する定電流Icは、スイッチ回路Ssa(Ssa1~Ssan)を順次オンさせて、各トランジスタ117QのダイオードDsに供給する。
【0274】
ダイオードDsの端子電圧に対応する電圧Vi(Vi1~Vin)はスイッチ回路Ssa(Ssa1~Ssan)に同期して、セレクタ127によって選択される。例えば、トランジスタ117Q1に電流Icが供給されている時は、セレクタ127はトランジスタ117Q1のダイオードDsの端子電圧を選択する。トランジスタ117Q3に電流Icが供給されている時は、セレクタ127はトランジスタ117Q3のダイオードDsの端子電圧を選択する。選択された電圧Viが温度測定回路115に供給される。
他の構成、動作は他の実施例で説明している構成、動作と同様であるので説明を省略する。
本発明の実施例において、トランジスタ117は、IGBTを例示して説明したが、これに限定するものではない。
【0275】
例えば、NチャンネルのJFET(
図21(a))、PチャンネルのJFET(
図21(b))、NチャンネルのMOSFET(
図21(c))、PチャンネルのMOSFET(
図21(d))、NチャンネルのバイポーラFET(
図21(e))、PチャンネルのバイポーラFET(
図21(f))であっても良いことは言うまでもない。
【0276】
また、3端子のデバイスに限定されるものではなく、
図21(g)に図示するダイオード等の2端子素子であってもよい。2端子素子では、ゲート信号Vgsは必要がない。電源装置132で定電流Idを流して試験することにより、本発明の半導体素子試験装置、半導体素子の試験方法を適用できることは言うまでもない。
【0277】
また、半導体素子だけでなく、コンデンサ、抵抗素子、水晶発振子、コイル等の電気素子にも、本発明の電気素子試験装置、電気素子の試験方法が適用できることは言うまでもない。
【0278】
以上、本明細書において、実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
本明細書および図面に記載した事項あるいは内容は、相互に組み合わせることができることは言うまでもない。
【0279】
例えば、
図13で示すスイッチ回路124a、スイッチ回路124bは、他の実施例にも適用できる。例えば、
図19、
図20の構成あるいは動作は、
図17、
図18等の他の実施例にも適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0280】
本発明は、トランジスタ等の半導体素子の試験内容、半導体素子の同時試験数に応じて、容易に接続変更でき、試験時に発生するノイズ対策を良好に実現できる半導体素子試験装置および半導体試験方法を提供できる。
【符号の説明】
【0281】
111 コントロール回路基板(コントローラ)
112 ゲート信号制御回路
113 ゲートドライバ回路
115 温度測定回路
116 オペアンプ(バッファアンプ)
117 パワートランジスタ
118 定電流回路
121 電源回路
122 スイッチ回路
124 スイッチ回路
125 可変抵抗回路
127 セレクタ
131 制御ラック
132 電源装置
133 制御回路
134 加熱冷却プレート
135 循環水パイプ
136 チラー
201 スイッチ回路基板
202 コネクタ
203 サンプル接続回路
204 導体板
205 フォークプラグ
206 接続ピン
207 マザー基板
208 コネクタ
209 デバイス制御回路基板
210 筐体
211 接続配線
212 電源配線
213 コネクタ
214 隔壁
215 隔壁
216 開口部
219 接続ボルト
220 接触部
231 フォークプラグ挿入板