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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】揺動椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 3/025 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
A47C3/025
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020194309
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022083070
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000114385
【氏名又は名称】株式会社クオリ
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100068663
【弁理士】
【氏名又は名称】松波 祥文
(72)【発明者】
【氏名】神谷 成昭
(72)【発明者】
【氏名】石川 直樹
【審査官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-037383(JP,A)
【文献】特開平07-313282(JP,A)
【文献】実開昭62-153936(JP,U)
【文献】国際公開第2007/010618(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0006936(US,A1)
【文献】特開2014-004324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 3/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座フレームと背もたれを脚部の上端に固設した支持フレームに取り付け、背もたれにもたれることにより該座フレームを前方上方へ移動させ、着座していないときは座フレームが自動的に最後部へ位置される移動手段を備えた椅子であって、
前記支持フレームは側面視概略L字状に形成され、その前部側には座フレームが移動手段によって前後方向へ移動可能に取り付けられているとともに、後部上端には背もたれが水平な取付ピンを支点として前後方向へ傾動可能に取り付けられており、該座フレームの移動手段は、該座フレームの後部を該支持フレームの後部に戻しバネで連結し、支持フレームの左右に、それぞれ、曲線状の溝を設けた案内レールを固設するとともに、それらの各案内レールの曲線状の溝に係合して転動する案内材を座フレームに軸支し、
該案内レールは、背もたれを後傾していない状態での座フレーム後端位置から座フレームが最前進した位置までの間を、半径3000mmの円内に座体を配置し、該円が上面の水平な面を所定の角度転動したときに案内材が描く軌跡であるトロコイド曲線でつないだ形状であるとともに、
前記トロコイド曲線は、背もたれにもたれることにより座フレームが最前進位置まで40~100mm移動し、かつ、最前進位置における座フレームの角度が水平面に対して前方に10度前後の傾斜となる曲線であり、
前記各案内レールが、それぞれ、前記案内材を係合させるための曲線状の溝を前後に2個ずつ設けたものであり、それらの前後の曲線状の溝の形状および寸法が異なるものであることを特徴とする揺動椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背もたれにもたれたとき、背もたれの後傾と連動して座面を前方上方へ押し上げるようにした軽量で簡素な揺動椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は、長時間着座していても、疲れが出にくく集中力が維持できる椅子としてロッキング機構付格納椅子(特許文献1)を開発している。この椅子は、座と背もたれを取り付けた座フレームを、中央脚柱の上端に固設した支持フレームに、前後方向に揺動できるとともに、離席時は格納位置へ自動的に格納されるように取り付けられている。
【0003】
そして、座フレームの左右の側面に中央部が高い弧状のガイド溝を前後方向に2個設けるとともに該ガイド溝に係合するガイドピンを該支持フレームにそれぞれ固設し、該ガイド溝は、脚に半径1000~3000mmの弧台を有するロッキングチェアのごとくに座を案内するようにしている。
【0004】
このように、構成されているので、かなり長時間すわっていても、あたかも、脚の下端に弧台を備えたロッキングチェアの如き動きが得られ、適宜ロッキングすることにより、疲れにくく、集中力を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-4324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1のロッキング機構付格納椅子は、適宜ロッキングすることにより、疲れにくく、集中力を維持することができる。
しかしながら、このように、背座が一体の椅子においては、これを一体成型で製造する製造設備を必要とし、金型も高価なものとなる。また、背もたれにもたれたときの弾力性を最良なものとするには種々のサイズのものを作って実験する必要があり、多額の費用と時間を必要とする。
【0007】
一方、高級な事務用椅子では、背もたれの後傾と連動して座面を沈み込ませるシンクロロッキング機構が使用されているが、構造が複雑で、重量が重く高価なものとなっている。特に、不特定多数が集まる会議室で使用される椅子は、リクライニングないしロッキングできるものは稀であり、必要時以外には折り畳んだり、スタッキングして格納されている。
しかし、このような簡素な椅子においてもリクライニングないしロッキングできる機構が付いたものが要望されている。
【0008】
そこで、本発明は、リクライニング機構を有する軽量で簡便かつ経済的な揺動椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を解決するため、本発明の椅子は、次のように構成した。すなわち、座フレームと背もたれを脚部の上端に固設した支持フレームに取り付け、背もたれにもたれることにより該座フレームを前方上方へ移動させ、着座していないときは座フレームが自動的に最後部へ位置される移動手段を備えた椅子であって、前記支持フレームは側面視概略L字状に形成され、その前部側には座フレームが移動手段によって前後方向へ移動可能に取り付けられているとともに、後部上端には背もたれが水平な取付ピンを支点として前後方向へ傾動可能に取り付けられており、該座フレームの移動手段は、該座フレームの後部を該支持フレームの後部に戻しバネで連結し、支持フレームの左右に、それぞれ、曲線状の溝を設けた案内レールを固設するとともに、それらの各案内レールの曲線状の溝に係合して転動する案内材を座フレームに軸支し、該案内レールは、背もたれを後傾していない状態での座フレーム後端位置から座フレームが最前進した位置までの間を、半径3000mmの円内に座体を配置し、該円が上面の水平な面を所定の角度転動したときに案内材が描く軌跡であるトロコイド曲線でつないだ形状であるとともに、前記トロコイド曲線は、背もたれにもたれることにより座フレームが最前進位置まで40~100mm移動し、かつ、最前進位置における座フレームの角度が水平面に対して前方に10度前後の傾斜となる曲線であり、前記各案内レールが、それぞれ、前記案内材を係合させるための曲線状の溝を前後に2個ずつ設けたものであり、それらの前後の曲線状の溝の形状および寸法が異なるものであることを特徴とする。
【0010】
この椅子は、会議用に限らず、オフィス用としても使用できる。
ここで、前部、前方、という用語は、着座者の向いている方を指すこととして使用している。
支持フレームは、脚部の上端に固設する。脚部はどんなタイプでもよく、特に限定しない。支持フレームの形状は、側面視概略L字状で前方側に座フレームをバネで連結して設けるとともに後方の上部へ立ち上がった上端に背もたれを後傾可能に取り付ける。
【0011】
座フレームは、支持フレームの前後方向に移動可能に置かれ、戻しバネで連結されている。背もたれは、支持フレームの後部上端に水平なピンで連結され、弾性体を介して後傾可能に取り付けられる。
【0012】
座フレームの移動手段は、支持フレームの左右に案内レールを固設するとともに、該案内レールそれぞれに係合して転動する案内材を座フレームに軸支している。なお、案内材は、ウレタンゴムなどの弾性部材を使うと静かで耐久性もよい。また、軸受部に転がり軸受を使用すれば座面をより滑らかに移動させることができる。
案内レールは、着座者が背もたれにもたれたときに、座フレームを前方上方へ予め定めた軌道を移動するように案内するもので、曲線状のパイプや、弧状溝を形成したものが簡便である。
【0013】
弧状溝の案内レールとする場合は、上記のように、支持フレームに固設してもよいが、請求項2に記載のように座フレームに固設し、案内材は、弧状溝に嵌合転動するように支持フレームに軸支したものとしてもよい。着座者の重量は、円弧状溝に嵌合する案内材によって支持されるので案内材を多くすれば、各案内材は小さくでき、安定性もよい。一般的には、前後左右に4個弧状溝と案内材を設けるのが望ましい。
【0014】
また、案内レールをパイプで構成する場合は、パイプと係合する案内材の軌跡が案内曲線になるように曲げたものとし、案内材は座フレームに固設したブラケットにピンで取り付けられ、該ピンは回転自在とすればよい。または、パイプの中心線上が案内曲線になるように曲げたものとし、案内材はパイプの中心線上をスライドするように座フレームに取り付けてもよい。
【0015】
案内レールの案内形状は、座面の動きのフィーリングに大きく影響する。発明者等はこれについて種々のものを作り、検討を行ったが、背もたれを後傾させてない状態での座面の位置から座面が最前進した位置までの間を、滑らかな動きになるようにするには特別な曲線とするのがよいことがわかった。
【0016】
この特別な曲線は、図5および図6で説明すると、半径3000mm(R3000)の円内に座体を配置し、この円が上面の水平な面を所定の角度だけ転動したときに案内材の始点の位置が描く軌跡(トロコイド曲線)である。これにより、着座者の重心移動により滑らかに前後移動する。この動きは、着座者が背もたれへもたれることにより座面が前進し、前側が上がることとなり、相対的に座面が沈み込むというシンクロロッキング機構の動きに近いものとなる。
なお、仮想円弧内に置かれる椅子の位置は、通常は外周寄りでよいが、仮想円弧の径および転動させる角度と、ガイド溝の長さとの関係を検討してフィーリングのよいものとすればよく、仮想円弧の中心寄りに置くことも可能である。また、移動距離は任意に採れるが、40~100mmが実用的である。案内レールは前後に2個設けた場合は、円弧状溝の形状および寸法は同じではなく、それぞれの案内材の始点が描く軌跡(トロコイド曲線)にする必要がある。
【0017】
図6(a)は、軸移動する場合(請求項1)の案内レールの弧状溝を示し、(b)は、案内レールが移動する場合(請求項2)の弧状溝を示したものである。
座面の角度は、最終位置において、水平面に対して前方に10度ぐらいの傾斜が適当である。また、着座したときの重心は、背もたれの連結部の手前側に配置し、背もたれにもたれると速やかに座フレームが前方上方へ移動するようにするとよい。
【0018】
座フレームは、着座していないときは支持フレームに連結した戻しバネで最後端に位置する。なお、戻しバネを付設した場合、座フレームを前進移動させると格納位置への方向の移動が速くなるので、請求項3に記載のように、支持フレームにラックを付設するとともに、座フレームに該ラックに噛み合うピニオンを備えたロータリーダンパーを設け、座フレームが格納位置側へ移動するときには抵抗をもたせ適度な速さで戻るようにするとよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の揺動椅子は、座フレームと背もたれを脚部の上端に固設した支持フレームに取り付け、背もたれにもたれることにより該座フレームを前方上方へ移動させ、着座していないときは座フレームが自動的に最後部へ位置される移動手段を備えた椅子であって、該座フレームの移動手段は、支持フレームの左右に固設した案内レールに、座フレームに設けた案内材を係合させ、該案内レールは、背もたれを後傾していない状態での座フレームの後端位置から座フレームが最前進した位置までの間を、半径3000mmの円内に座体を配置し、該円が上面の水平な面を所定の角度転動したときに案内材が描く軌跡であるトロコイド曲線でつないだものとしたので、着座者が背もたれにもたれ重心移動することにより前後に軽快に揺動でき、長時間座っていても疲れにくく、集中力を維持できる。
また、座フレームと背もたれが別々に作動するので、着座者の体格による調整が容易で、大きな金型を必要とせず経済的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】は、請求項1の発明の揺動椅子をオフィスでの事務用椅子として使用した実施の形態を示す側面図である。
図2】同、図1のAーA視図である。
図3】同、移動手段の拡大図である。
図4】同、揺動椅子の部品の展開図である。
図5】同、支持フレームの案内レールのガイド溝決めるための説明図である。
図6】同、ガイド溝の形状を示す拡大図で、(a)は軸が移動する(請求項1)場合を示し、(b)は、ガイド溝が移動する(請求項2)場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の揺動椅子の実施の形態を、事務用椅子とした例で説明する。
図1は、本発明の揺動椅子の実施の形態を示す側面図であり、図2は、そのAーA視図である。また、図3は、座フレーム2の移動手段10の拡大図で、図4は揺動椅子の構成部品を示す分解斜視図である。なお、図2図4では肘掛け6は省略している。
【0022】
この椅子は、上下伸縮しない4本の脚5bの上端に受台5aが設けられ、これに支持フレーム1が固設されている。そして、支持フレーム1の前寄りに座フレーム2が前後方向へ移動可能に取り付けられ、支持フレーム1の後部上端に背もたれ3が取り付けられている。また、座の中央側部には肘掛け6が取り付けられている。なお、図1において、2aはクッション、5cはキャスターである。
【0023】
背もたれ3は、クッション3aが取り付けられ、支持フレーム1の上端に水平な軸4aによって弾性体4bを押え板4cで挟んで前後方向へ傾動可能に組み付けられている。
また、肘掛け6は図4では省略したが、支持フレーム1の裏面に座の周縁より突出する支持材6aを固設し、これに肘掛け6を立設している。
【0024】
支持フレーム1は、図4に示すように、側面視概略L字状で、前部側には座フレーム2が前後に摺動自在に置かれ、後部上端には、背もたれ3を取り付けるブラケット1aが設けられている。
座フレーム2は、逆皿状で、上にはクッション2aが取り付けられ、後部にはバネ係止材21が付設され、支持フレーム1に戻しバネ20で連結されている。
【0025】
座フレーム2の移動手段10は、支持フレーム1に固設した案内レール11と、座フレーム2に設けた案内材13と、後部側が支持フレーム1に連結された戻しバネ20とで構成される。
案内レール11は、支持フレーム1の両側に固設され、弧状のガイド溝11aを前後方向に2個有している。
そして、それぞれのガイド溝11aに係合する案内材13は、座フレーム2に固設されたピン12に外嵌して転動するように構成されている。
【0026】
ガイド溝11aの形状は、背もたれ3にもたれたとき、後傾する過程において座フレーム2が約40mmスムーズに前方上方へ移動する軌跡を決めて、作成している。ここでは、円弧状溝11aは、半径3000mmの円内に座体を配置し、この円が上面の水平な面を所定の角度転動したときに円弧状溝に嵌合している案内材13の始点が描く軌跡(トロコイド曲線)を求めてこれを円弧状溝の中心線としている(図5参照)。
【0027】
このように構成されているので、椅子に着座していないときは、戻しバネ20によって、座フレーム2が格納位置である後方へ移動しており、このとき、案内材13は、それぞれ、ガイド溝11aの後端に位置する。
【0028】
着座者が背もたれ3にもたれると、重心が移動し、支持フレーム1は剛性があるので殆ど撓まないが、背もたれ3は取付ピン4aを支点として後傾し、同時に、座フレーム2が案内レール11にガイドされて前方上方(図1における点線の位置)へ移動する。これにより、着座者はリクライニング状態となる。
【0029】
離席する場合は、座フレーム2を後方へ移動させてない状態でも降りることができる。肘掛け6が、支持フレーム1に固定されているので、これに手をかけ容易に離席できる。この場合、椅子から離れると、座フレーム2は戻しバネ20によって後方へ移動する。
【0030】
なお、上記の実施形態の説明では、具体的な寸法を示して説明したが、発明をより理解しやすいようにするためであって、これに限定するものでないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0031】
1 支持フレーム
1a 軸
2 座フレーム
2a クッション
3 背もたれ
3a クッション
4a 取付ピン
4b 弾性体
4c 押へ板
5 脚部
5a 受台
5b 脚
5c キャスター
6 肘掛け
6a 支持材
10 揺動手段
11 案内レール
11a ガイド溝
12 ピン
13 案内材
15 ラック
16 ロータリーダンパー
20 戻しバネ
21 バネ係止材
図1
図2
図3
図4
図5
図6