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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】マイクロチューブの開栓器具
(51)【国際特許分類】
   B67B 7/02 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
B67B7/02
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021004809
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109479
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000153823
【氏名又は名称】株式会社八光
(72)【発明者】
【氏名】小田切 大輔
(72)【発明者】
【氏名】桂川 裕偉
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-030095(JP,A)
【文献】特開2009-107637(JP,A)
【文献】特開平10-152141(JP,A)
【文献】特表昭54-500105(JP,A)
【文献】実開昭62-155766(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0000471(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0000139(US,A1)
【文献】チューブオープナー操作方法,YouTube [online] [video],日本,株式会社ニチリョー[公式],2020年05月18日,[2024年4月30日検索] 、<https://www.youtube.com/watch?v=KhDn27oKKDU>,0:01~0:41
【文献】チューブオープナー(0.2mL~2mLチューブ用) 00-NTO-001 3個入り,日本,Amazon [online],2018年01月26日,[2024年4月30日検索] 、<https://www.amazon.co.jp/%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%96%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%8A%E3%83%BC-0-2mL-2mL%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%96%E7%94%A8-00-NTO-001-3%E5%80%8B%E5%85%A5%E3%82%8A-1-7897-11/dp/B079BZ363N>
【文献】チューブオープナー(0.2mL~2mLチューブ用) 3個入り,日本,アズワン [online],2024年04月30日,<https://as-kitchen.as-1.co.jp/shop/g/g1-7897-11/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67B 7/02
G01N 35/02 - 35/04
C12M 1/26
B25B 9/00
B25B 27/10 - 27/14
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロチューブのキャップを、てこの原理を利用して手動で開栓するための開栓器具において、
前記キャップ辺縁部に設けるリップ突起との係合部であり、キャップ開栓のための作用点を含む爪部と、前記キャップ上面との当接面であり、キャップ開栓のための支点を含むキャップ支持部とからなる切欠き部と、
前記切欠き部の設定部となる板状あるいは棒状の切欠き設定部と、
該切欠き設定部から延設するキャップ開栓のための力点を含む操作部とにより構成し、
前記切欠き部は、操作部より遠位側に、サイズや形態を違えて複数設けられ、該複数の切欠き部は、切欠き設定部の軸方向に直列に配置されることを特徴とするマイクロチューブの開栓器具。
【請求項2】
前記切欠き部の爪部は、切欠き設定部からフック状に突起させてなり、該切欠き設定部との隙間を切欠き溝として形成する請求項1のマイクロチューブの開栓器具。
【請求項3】
前記爪部の切欠き溝を形成する隙間の一方の側面を、壁として形成する請求項2のマイクロチューブの開栓器具。
【請求項4】
前記爪部の切欠き設定部との境界部であって、切欠き溝側の境界面を傾斜面、あるいは、R形成面とする請求項2乃至3のいずれかのマイクロチューブの開栓器具。
【請求項5】
前記爪部の切欠き溝の深さは、前記キャップのリップ突起より短く形成される請求項2乃至4のいずれかのマイクロチューブの開栓器具。
【請求項6】
前記切欠き部のキャップ支持部を挟んで、爪部と反対側に位置する切欠き設定部の下面を、下方に突起させて形成し、該突起のキャップ支持部から連続する面を、傾斜する曲面として形成する請求項1乃至5のいずれかのマイクロチューブの開栓器具。
【請求項7】
前記直列に設ける複数の切欠き部は、先端側の切欠き部の幅、及び、長さが操作部側の幅、及び、長さより小さく形成される請求項1乃至6のいずれかのマイクロチューブの開栓器具。
【請求項8】
前記直列に設ける複数の切欠き部は、爪部を共通とし、キャップ支持部を複数備える請求項1乃至6のいずれかのマイクロチューブの開栓器具。
【請求項9】
前記切欠き設定部は、操作部に対して水平方向への角度を自在に可変可能な請求項1乃至のいずれかのマイクロチューブの開栓器具。
【請求項10】
前記切欠き設定部は、操作部に対して水平方向に特定の角度を設けて形成される請求項1乃至のいずれかのマイクロチューブの開栓器具。
【請求項11】
前記切欠き部は、切欠き溝を先端側に向け、キャップ支持部が爪部より先端側に位置される請求項1乃至10のいずれかのマイクロチューブの開栓器具。
【請求項12】
前記切欠き部は、切欠き溝を操作部側に向け、爪部がキャップ支持部より先端側に位置される請求項1乃至10のいずれかのマイクチューブの開栓器具。
【請求項13】
前記操作部は、板状に形成される請求項1乃至12のいずれかのマイクロチューブの開栓器具。
【請求項14】
前記操作部には、手指に係合する係止手段を備える請求項1乃至12のいずれかのマイクロチューブの開栓器具。
【請求項15】
前記手指に係合する係止手段は、手指に挿着可能なリング、あるいは、手指に掛け留め可能なフックよりなる請求項14のマイクロチューブの開栓器具。
【請求項16】
前記切欠き部の爪部と、切欠き設定部または操作部との境界部であって、切欠き溝の無い裏面側の境界面は、前記切欠き設定部または操作部から爪部突端に向け傾斜する傾斜面として形成する請求項1乃至15のいずれかのマイクロチューブの開栓器具。
【請求項17】
前記切欠き設定部の切欠き部を設けない側となる背面は、操作部の背面から背面側に反って傾斜する反り面として形成される請求項1乃至16のいずれかのマイクロチューブの開栓器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCR等の生化学試験などに用いられる密閉型小型試験管(マイクロチューブ)のキャップを、てこの原理を利用して手動で開栓するためのマイクロチューブの開栓器具に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロチューブは、PCR等の生化学や分子生物学などの試験や実験に広く用いられるマイクロリットルからミリリットル程度の微量な試料を扱うための容量0.2ml~2ml程度の小型の試験管で、開口部はキャップにより密封可能に形成されており、用途により1本ごと単体のものと、複数本が連結された形態のものが市販されている。
【0003】
このマイクロチューブを用いた手動による試験では、試薬の注入など試料を調整するさいには、閉栓されているキャップを開栓する操作が必要となるが、このとき、操作を手指で行うと、チューブ開口部周辺と手指の接触により、試料が汚染される可能性や、手指に試料が付着し感染等を引き起こす懸念がある。
【0004】
そこで、手指をキャップに直接接触させることなく、手動で、あるいは、自動でキャップを開栓する器具が提案されている。大量の試料を扱う場合は、自動処理装置が推奨され非接触による操作が行われるが、少数の試料を扱う場面では、手動により、チューブ1本ごとに処理されることも多々あり、そのための開栓器具として、例えば、非特許文献1に記載されているマイクロチューブオープナー器具や、特許文献1のような密封容器開封器などの様に、マイクロチューブのキャップに設けられている、開栓のさいに手指をかける部位となるリップ突起に、開栓器具の先端に設ける、爪部と爪部と対面する押さえ部からなる切欠き部を係合させて、てこの原理を利用して栓抜きの要領でキャップを開栓する器具が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】インターネットURL:http://www.sarstedt.jp/product/pdctcatleaf.htm 総合カタログ2020-2021 139ページ(チューブオープナー) 検索日:2020年10月9日
【特許文献】
【0006】
【文献】特表平2-500265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記文献の器具によると、保持、操作部となるハンドルの先端に設けられた溝(切欠き部)をマイクロチューブのキャップのリップ突起に引掛けて栓抜きの要領で、ハンドルを上方に操作することで、マイクロチューブに直接手指を接触させることなく、手動で一本ごとにキャップを開栓することができる。
【0008】
しかし、マイクロチューブには前記したように容量により複数のサイズや様々な形態のものがあり、従来市販される汎用的な器具では、例えば、容量が小さい多連タイプのマイクロチューブに対して、開栓時に、切欠き部が隣接するチューブのキャップに干渉し、隣のチューブのキャップまで開栓してしまうなどといった問題が指摘されるなど、様々なマイクロチューブに対する汎用性の問題について従来の器具では対応ができない。
【0009】
また、このマイクロチューブを使用する試験や実験では、キャップの開栓操作と、マイクロピペットによる試薬等の注入操作を、一本一本繰り返す作業が必要となることがあり、この場合、試験者は、マイクロピペットを把持している手と同じ手の指の間に開栓器具を挟んだ状態で保持して、該キャップの開栓と試薬の注入等操作を行っており、試験者は、処理中、挟んだ指に力を入れ続けることで落下を防止する必要がある。
【0010】
そこで本発明は、マイクロチューブのキャップを手動で一本ごとに開栓するための開栓器具において、例えば、サイズの小さな連結タイプのチューブであっても隣のチューブに干渉することなく開閉操作ができるなど、異なる複数のサイズや形態のマイクロチューブに対して一つの器具で適用可能な開栓器具を提供することを課題とした。
【0011】
また、試料の調整等の処理を手作業によりマイクロチューブ一本ごとに実施するさい、マイクロピペット等の器具による処理操作とチューブのキャップの開栓操作を、器具の持ち替えをすることなく容易に操作することができるマイクロチューブの開栓器具を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のマイクロチューブの開栓器具は、マイクロチューブのキャップをてこの原理を利用して手動で開栓する器具であって、前記キャップ辺縁部に設けるリップ突起に係合するキャップ開栓のための作用点を含む爪部と、キャップ上面に当接するキャップ開栓のための支点を含むキャップ支持部とからなる切欠き部と、該切欠き部の設定部となる板状あるいは棒状の切欠き設定部と、該切欠き設定部から延設するキャップ開栓のための力点を含む操作部より構成し、前記切欠き部を、本体の操作部より遠位側に、サイズや形態を違えて複数設け、該複数の切欠き部を、切欠き設定部の軸方向に直列に配置して構成する。
【0013】
前記切欠き部の爪部は、切欠き設定部からフック状に突起させて形成し、該切欠き設定部と爪部の隙間を切欠き溝として形成する。また、該切欠き溝は、次のように形成されることが好ましい。
・切欠き溝を形成する隙間の一方の側面を壁として形成する。
・爪部の切欠き設定部との境界部であって、切欠き溝側の境界面を、傾斜面、あるいは、R形成面とする。
・切欠き溝の深さを、前記キャップのリップ突起より短く形成する。
【0014】
前記切欠き部のキャップ支持部を挟んで、爪部と反対側に位置する切欠き設定部の下面を、下方に突起させて形成し、該突起のキャップ支持部から連続する面を、傾斜する曲面として形成することが好ましい。
【0015】
記直列に設ける複数の切欠き部は、先端側の切欠き部の幅、及び、長さが操作部側の幅、及び、長さより小さく形成されることが好ましい。また、直列に設ける複数の切欠き部は、爪部を共通とし、キャップ支持部を複数備えるものとしても良い。
【0016】
前記切欠き設定部は、操作部に対して水平方向への角度を自在に可変可能なものとしても良く、また、操作部に対して水平方向に特定の角度を設けて形成されるものであっても良い。
【0017】
前記切欠き部は、切欠き溝を先端側に向け、キャップ支持部が爪部より先端側に位置されるか、あるいは、切欠き溝を操作部側に向け、爪部がキャップ支持部より先端側に位置されるかいずれかにより形成される。
【0018】
前記操作部は、板状に形成されても良く、また、手指に係合する係止手段を備えて形成されても良い。そして、具体的な係止手段としては、手指に挿着可能なリング、あるいは、手指に掛け留め可能なフックより形成することが好ましい。
【0019】
また、前記切欠き部の爪部と、切欠き設定部あるいは操作部との切欠き溝の無い裏面側の境界面は、該切欠き設定部あるいは操作部から爪部突端に向け傾斜する傾斜面として形成することが好ましく、また、前記切欠き設定部の切欠き部の無い側となる背面は、操作部の背面から背面側に反って傾斜する反り面として形成されることが好ましい。
【0020】
(作用)
本手段によると、ひとつの開栓器具に複数の切欠き部を備え、該切欠き部のサイズや形態を各々異なるマイクロチューブに対応するサイズや形態としておくことにより、ひとつの器具で異なる多種類のマイクロチューブに適用することができる。
【0021】
前記切欠き溝の一方の側面を壁として形成することで、小さなマイクロチューブの開栓のさい手振れによる係合の外れを防止することができる。また、切欠き溝の深さをリップ突起よりも短く形成することで、爪部をリップ突起に係合したさいにキャップの開口部に爪部が接触することを防止できる。更に、切欠き溝と切欠き設定部との境界面を傾斜面、あるいはR形成面とすることで、隙間空間が小さくなり、リップ突起が該隙間に深く入り込むことを防止し、結果、キャップ開口部への爪部の接触を防止できる。
【0022】
キャップ支持部を挟んで爪部と反対側となる位置に突起を備えると、開栓のさいにリップ突起と切欠き部との係合の後方への外れを防止することができる。また、突起の面を傾斜曲面とすることで、リップ突起への係合、及び、取り外すさいに引っ掛かりが無くスムーズな着脱ができる。
【0023】
複数の切欠き部を切欠き設定部の軸に直列に設けることで、前記多種類のマイクロチューブに適用できることに加え、操作部を持ち替えることなく複数種の開栓ができる。また、この複数の切欠き部のなかで、先端側のサイズを操作部側より小さく形成すると、開栓のさいに他の切欠き部による干渉を少なくすることができる。更に、爪部を共通とし、キャップ支持部を複数備える構成として、切欠き部の爪部を切欠き設定部の先端部に設けて、切欠き溝が操作部側を向くものに適用すると、爪部を複数設ける必要がなく、器具の長さを短く形成することができる。
【0024】
操作部に対する切欠き設定部の角度を水平方向に自在に可変できるものとすると、必要に応じ、軸方向、または、横方向での選択的開栓操作が可能で、更に、可変することで右利き、左利きのいずれの人にも使用できるものとなる。また、特定の角度が設定されると横方向への開栓等に適用可能な器具となる。
【0025】
爪部の作用点となる部位をキャップ支持部の支点となる部位より先端側に設けると、操作部を支点に対して下方に押し下げることで開栓され、逆に、爪部の作用点となる部位をキャップ支持部の支点となる部位より操作部側に設けると、栓抜きのように操作部を支点に対して上方に引き上げることで開栓される。
【0026】
操作部を板状に形成すると、開栓器具と同じ手に同時にマイクロピペットなどの他の器具を把持しても、開栓操作や試薬注入などの処理操作のさいに器具を指の間に挟んでおきやすい。また、操作部に係止手段を設けて手指に保持しておくことで、マイクロピペットなどを同時に把持しても、処理操作のさいに開栓器具の落下の懸念を小さくすることができる。そして、該係止手段として手指に挿着可能なリングやフックを設けると、器具を指輪のように手指に填めておくことができるため、器具の保持のために力を必要としない落下防止の手段となる。
【0027】
操作部と切欠き部の爪部の境界面を傾斜する曲面とすると、角部が無く手指で把持しやすい形状となり、切欠き設定部の背面を背面側に反って傾斜する反り面とすることで、複数の切欠き部を備えても、開栓操作のさい他の切欠き部が干渉しにくい構造とすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のマイクロチューブの開栓器具によると、器具に複数のサイズや形態の異なる切欠き部を備えることで、例えば、サイズの小さな連結タイプのマイクロチューブであっても隣接するチューブに干渉することなく開栓操作ができる、あるいは、サイズの大きなマイクロチューブであってもキャップと切欠き部が十分な幅で係合できるなど、マイクロチューブのサイズや形状の違いによらず、ひとつの器具で複数種のマイクロチューブに適用可能な汎用性が高い開栓器具を提供することができる。
【0029】
また、マイクロチューブを用いた試験や実験での試料の調整等のさい、マイクロピペット等の試験器具による操作と、開栓器具によるキャップ開栓操作が、それぞれの器具を同じ手に同時に把持した状態であっても、容易に操作できる使い勝手の良い開栓器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第一の実施の形態を示す、マイクロチューブの開栓器具の全体構成図(斜視図)。
図2】前記実施の形態の側面図及び底面図。
図3】前記実施の形態の切欠き部を示す拡大図。
図4】前記実施の形態の開栓器具によるキャップの開栓方法を示す模式図。
図5】本発明の第二の実施の形態を示す、マイクロチューブの開栓器具の全体構成図(斜視図)。
図6】前記実施の形態の側面図及び底面図。
図7】前記実施の形態の開栓器具によるキャップの開栓方法を示す模式図。
図8】本発明の第三の実施の形態を示す、マイクロチューブの開栓器具の全体構成図(斜視図)。
図9】前記実施の形態の側面図及び底面図。
図10】前記実施の形態の切欠き部を示す拡大図。
図11】前記実施の形態の開栓器具によるキャップの開栓方法を示す模式図。
図12】本発明に使用されるマイクロチューブの例を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明のマイクロチューブの開栓器具の実施の形態について図面を参考に詳細に説明する。
図12は、本発明の開栓器具に適用されるマイクロチューブの例で、Aが小さなサイズで、キャップ上面に突起部を有するチューブ、Bが比較的大きなサイズで、キャップ上面がフラットなロックタイプのチューブの閉栓及び開栓状態を示している。
マイクロチューブ90は、前記のとおりPCRなど生化学や分子生物学の試験や実験で汎用される、容量が0.2ml(PCR用)から2ml程度の微量あるいは少量サンプルを扱うための小型試験管容器で、容器開口部96は、サインプルを密閉して容易に開栓されないようにキャップ91により閉栓されている。該キャップ91としては、スクリュータイプのものもあるが、本形態の開栓器具が適用となるキャップ91は、チューブ90の開口部96に差し込まれ、嵌合により嵌着され密封するもので、該チューブ90の開口部辺縁97とキャップのフランジ98がヒンジ95により連結され一体化されている。そして、該フランジ98のヒンジ95が設けられた位置の向い側にあたるキャップ辺縁に、キャップ開栓のさいに手指や開栓器具を引掛ける部位となるリップ突起92が設けられている。
【0032】
また、このマイクロチューブ90には、上記した容量の範囲でいくつかのサイズや、次のような形状のタイプがある。
・チューブ90一本一本が独立したタイプと、複数のチューブ90を連結した多連タイプのチューブ。
・キャップ90の上面がリップ突起92上面と同一平面にあるものと、リップ突起92よりキャップ中央部が突出93しているチューブ。
・リップ突起92が比較的薄く平らで、チューブの開口部96がキャップ91の嵌合部911の嵌合力のみで閉栓を保持するタイプと、リップ突起92の下面が開口側に向け厚みを増すように傾斜94しており、開口部96の辺縁部97をキャップ90の嵌合部911と挟んで閉栓を保持するロック部分(掛け留め部)912を備えたロックタイプのチューブ。
これら様々な形態があるが、本発明の開栓器具は、いずれのタイプのチューブ90に対しても、キャップ91を手動操作で一本ずつ開栓する、てこの原理を利用した栓抜きタイプの開栓器具として提案される。
【0033】
図1は、本発明の第一の実施の形態を示す全体構成図の斜視図、図2は、Aが側面図、Bが底面図を示し、図3は、本形態の切欠き部の拡大図を示している。本形態のマイクロチューブの開栓器具は、板状に形成された切欠き設定部10と、該切欠き設定部10の一方側の面に設ける2つの切欠き部20A、20Bと、該切欠き設定部10に延設する本器具の把持部となる操作部30により構成される。そして、2つの切欠き部20A、20Bは、共に切欠き溝24A、24Bを遠位側に向けて、先端側(遠位側)20Aと操作部側(近位側)20Bに直列に形成してなる。
【0034】
本器具は、全体として板状に形成されており、遠位側が前記の通り切欠き部20が取り付けられる切欠き設定部10となり、近位側は器具を保持・操作する操作部30として形成される。本形態での本器具のサイズは、後記する切欠き部20のサイズに適合し設定されるが、その幅は、遠位側の切欠き設定部10が狭く、近位側の操作部30が把持のしやすさを考慮され広く設定されており、長さは、後記する2つの切欠き部20A、20Bの長さに、操作部30として把持及び操作がしやすい長さとして50mmを加えた長さ(本例においては、85mm)に設定される。また、操作部30の厚さは処理中常時手指に把持されることから、把持のしやすい3mmとして形成した。また、手指に当接する部位には滑り止め加工が施されても良い。
【0035】
切欠き部20A、20Bは、前記の通り、切欠き設定部10に2つを直列に連続して設けており、いずれの切欠き部20も切欠き設定部10の下面からフック状に突起する爪部21A、21Bを形成し、該爪部21が形成する隙間を切込み溝24A、24Bとして、マイクロチューブ90のキャップ91のリップ突起92を収容する係合部としている。そして、該爪部21A、21Bの上面と対面する切欠き設定部10の下面であって、切込み溝24A、24Bをリップ突起92に係合したさいに、該キャップ90の上面と当接する部位をキャップ支持部22A、22Bとし、爪部21A、21Bとともに切欠き部20A、20Bとして定義する。尚、本明細書で記載される上下の定義は、マイクロチューブ90のキャップ91のリップ突起92を切欠き部20に係合したさいに、マイクロチューブ90のキャップ91側を上とし、キャップの底部99側を下と定義して用いている。よって、切欠き設定部上面とは、本器具の切欠き部の無い側の背面を示し、下面とは、切欠き部20を設けた面を示す。
【0036】
また、前記切欠き設定部10の下面で、キャップ支持部22A、22Bを挟んで、爪部21A、21Bと反対側に位置する面を下方に向けて傾斜する傾斜曲面23A、23Bとし突起させて形成する。これにより、開栓操作のさい、切欠き部20A、20Bに係合されるキャップ91は、爪部21A、21Bと傾斜曲面23A、23Bとの間に位置され、該傾斜曲面23A、23Bにより後方への外れが防止される。また、傾斜曲面23A、23Bには、キャップ91との係合及び取り外しのさいに引っ掛かり部分がないことでスムーズな脱着操作ができる。なお、本形態においては、切欠き設定部10の先端部を先端側の切欠き部20Aの傾斜曲面23Aとし、先端側の切欠き部20Aの爪部21Aの裏面(切欠き溝の無い側の面)を操作部側の切欠き部20Bの傾斜曲面33Bとして、2つの切欠き部20A、20bB連続する構成としている。
【0037】
ここで前記2つの切欠き部20A、20Bは、異なったタイプのマイクロチューブ90に広く適合するように、各々異なったサイズや形態に形成される。本例においては、先端側の切欠き部20Aは、サイズ(容量)が小さく、キャップ91の上面がリップ突起92の上面より突起93している、多連チューブによく見られるタイプのマイクロチューブ90が好適となるものとして形成され、開栓時に、多連チューブの隣接するキャップ91に干渉しないように爪部21A、及び、キャップ支持部22Aの幅を5mmと小さく形成し、爪部21Aの上面とキャップ支持部22Aとなる面との隙間に、キャップ上面の突起93が収容できるように、切欠き溝24Aの高さを3mmに設定した。また、切欠き部20Aと傾斜曲面23Aで形成される切欠きの長さ、即ち、爪部21Aの立ち上がり部分からキャップ支持部22Aを含み、傾斜曲面23Aの終点までの長さを小サイズのマイクロチューブ90に適合して10mm程度に形成した。
【0038】
一方、操作部側の切欠き部20Bは、サイズ(容量)が比較的大きく、キャップ91の上面がフラットで、リップ突起92の下面が傾斜しているロックタイプのマイクロチューブに好適となるものとして、開栓時にリップ突起92と確実に係合するように爪部21Bの幅を、操作部30の幅と同じ15mmと大きめに形成し、切欠き溝24Bの高さ(爪部21B上面とキャップ支持部22Bとなる面との間隔)は、キャップ上面に突起がないため先端側の切欠き溝24Aより狭い間隔の2mmに設定した。また、キャップ支持部22Bの長さは、先端側より大きなサイズのマイクロチューブに適合する21mmとして形成した。そして、この切欠き部20Bの幅や長さは切欠き設定部10の幅や長さにも対応しており、該切欠き設定部10の先端側は操作側に比較して幅が細く形成され、先端側の切欠き部20Aの爪部21Aから操作部側の切欠き部20Bの爪部21Bまでは、徐々に径を大きくする左右対称な扇型25として形成された。このように、先端側の切欠き部20Aが細く短く、操作部側20Bが太く長く形成されることで、操作部側の切欠き部20Bでの開栓のさい、先端側の切欠き部20Aが干渉しにくい構造となっている。
【0039】
また、各々の切欠き部20A、20Bの切込み溝24A、24Bの深さは、長すぎると係合したさいにキャップ90の開口嵌合部911など試料と接触する可能性のある部位に接触してコンタミネーションを起こす可能性があるため、該開口嵌合部911に接触しない長さ、即ち、リップ突起92の中途で係合される長さで、かつ、短すぎることで開栓に不都合の無い長さとして2mmに設定された。
【0040】
そして、先端側の切欠き部20Aの切欠き溝24Aとなる隙間の一方の側面を壁211として形成する。この壁211は、サイズの小さなリップ突起92との係合のさい手振れ等により、この切欠き溝24Aからリップ突起92が外れてしまうことを防止するストッパーとして設けられている。一方、操作部側の切欠き部20Bの切欠き溝24Bは係合に十分な幅があるため、この壁211を必要としない。
【0041】
また、先端側の切欠き溝24Aとなる隙間の切欠き設定部10との境界面(爪部21Aの取り付け部の切欠き溝24A側の面)をR形成面212として形成する。これにより、溝24Aの容積を小さく、深さを浅くすることができ、キャップ90開栓時あるいは開栓後に、キャップ90のリップ突起92が切欠き溝24Aの内部に斜めに入る等により溝内深く入り込むことを防止することで、爪部21Aの先端がマイクロチューブの開口部96周囲に接触する可能性を小さくしている。一方、操作部側の切欠き部20Bの切欠き溝24Bは、溝24Bの高さが小さく設定されているため、リップ突起92が溝内深く入り込むことがないため、このようなR形成面212を必要としない。
【0042】
更に、各々の爪部21A、21Bの切欠き溝24A、24Bの無い側と、切欠き設定部10あるいは操作部30の下面との境界面は、該切欠き設定部10あるいは操作部30から爪部21A、21B突端に向けて傾斜するスロープ26として形成される。このように、スロープとして形成することで、先端側の爪部21Aの背面は、前記した通り、操作部側の切欠き部20Bの支点を含む傾斜曲面23Bとなり、一方、操作部側の爪部21B背面から操作部30の下面までのスロープ26は、把持したさい手指に引っ掛かり等の無い把持しやすい把持面となる。また、切欠き設定部10の背面は、操作部30の背面から背面側に反って緩やかに傾斜する反り面27として形成される。このように形成することで、操作部側の切欠き部20Bによる開栓操作のさいに先端側の切欠き部20Aが干渉しないように考慮されている。
【0043】
図4は、本形態の開栓器具を用いてマイクロチューブ90のキャップ91を開栓する様子を示しており、Aが、先端側の切込み部20Aにより、多連タイプなど小さなサイズで、キャップの上面に突起を備えるタイプのマイクロチューブのキャップを開栓する様子、Bが、操作部側の切込み部20Bにより、比較的大きなサイズで、キャップの上面がフラットなロックタイプのマイクロチューブのキャップを開栓する様子を示している。
【0044】
本器具を用いたマイクロチューブ90のキャップ91の開栓は、マイクロピペットと共に使用し、手動によりチューブ一本ごとに開栓を行う場合に好ましく用いられるもので、通常は、利き手側でマイクロピペットの把持操作に影響が少ない2本の指の間に本器具の操作部30を挟んで保持し、同じ手にマイクロピペットを把持した状態で、反対側の手に持ったマイクロチューブ90のキャップ91を開栓する。即ち、該キャップ90のリップ突起92に本器具の切欠き部20を係合するが、チューブの形態により先端側20A(図A)、あるいは、リング側20B(図B)のいずれかの切欠き部20が選択される。
【0045】
リップ突起92に切欠き部20A、20Bを係合すると、爪部21A、21Bの上面がリップ突起92の下面の中途部まで入り、その当接面が開栓の作用点となり、キャップ支持部22A、22Bの一部キャップ上面当接部が開栓の支点となり、指に挟んだ操作部30が開栓の力点となっており、この場合、支点が作用点より先端側に位置しているため栓抜きのように支点に対して操作部30を上方に引き上げることでキャップ91が開栓される。
【0046】
図5は、本発明の第二の実施の形態の全体構成図で斜視図を、図6は側面図及び底面図を示している。本形態のマイクロチューブの開栓器具は、板状あるいは棒状に形成された切欠き設定部10と、該切欠き設定部10の一方側の面に設ける2つの切欠き部20A、20Bと、該切欠き設定部10に延設する本器具の把持部となる操作部であって手指への係止手段となる指輪状のリング40により構成される。そして、2つの切欠き部20A、20Bは、切欠き溝24A、24Bを遠位側に向けて、先端側(遠位側)20Aと操作部側(近位側)20Bに直列に形成されてなる。なお、本形態の切欠き部20の構成は、第一の形態の切欠き部20とほぼ共通となるため、該共通部分の説明は省略する。
【0047】
本形態の切欠き設定部10は、前記リング40の周面から外方の一方に突出して延び、マイクロチューブ90のキャップ91を開栓するための軸となる板状あるいは棒状の部位で、作用点、支点を含む切欠き部20と力点を含むリング40とを繋ぐ軸棒となる。なお、切欠き設定部10のサイズは、特定するものではないが、先端側の切欠き部20Aの部分の幅は、多連タイプのマイクロチューブ90の開栓のさいに隣接するキャップ91に干渉することなく、また、操作に不都合の無い幅として5mm、リング側の切欠き部20Bの幅は、リップ突起92との係合に十分な10mmとして形成し、遷移部28はリング側から先端側に徐々に幅を小さくする先細り形状に形成される。また、長さは2つの切欠き部が直列に配置可能な長さとなる35mmに形成した。
【0048】
手指への係止手段となるリング40は、本器具の保持部であり手元操作部となる部位で、手指に指輪のように挿着され、容易に外れない大きさのリング40として形成される。なお、本例では、円形のリング40が例示されるが、指に填めることができる形状であれば、円形でなくても、また、一部が欠損したリングであっても良い。また、リングはひとつではなく、隣り合う2本の指に填め、器具を該2本指で挟んで保持するような、切欠き設定部10に対して翼状に形成される2つのリングであっても良い。なお、本例のリング40の幅は、前記リング側の切欠き設定部10と同様に10mm、厚さは把持しやすい2mmとし、リングの内径は、一般的な成人男性の指に十分適用可能な22mmに形成した。また、一部が欠損したリングには可撓性を設け、挿着により径が可変できるものとすると、より汎用的に用いられるものとなる。
【0049】
また、手指への係止手段はリング40ではなく、手指に引掛けて留め置けるようなフック状のものとしても良く、また、指の形状に沿った窪みなど容易に手指から離脱しないものであれば良い。
【0050】
前記リップ突起92に係合する切欠き部20A、20Bは、前記の通り、第一の実施の形態と同様であるため省略する。
【0051】
図7は、本形態の開栓器具を用いてマイクロチューブ90のキャップ91を開栓する様子を示しており、前記第一の実施の形態と同様にAが、先端側の切込み部20Aによる小さなサイズのマイクロチューブ90のキャップ91を開栓する様子、Bが、リング側の切込み部20Bによる比較的大きなサイズでロックタイプのマイクロチューブ90のキャップ91を開栓する様子を示している。
【0052】
本形態によるマイクロチューブ90のキャップ91の開栓は、第一の実施の形態と同様、手作業でチューブ一本ごとに開栓する場合に好適となる。通常は、利き手にマイクロピペットを把持し、同じ側の手の指に本開栓器具のリング40を挿着した状態で、反対の手に持つマイクロチューブ90を開栓する。このさい、リング40はマイクロピペットの把持・操作に極力影響がない指に取り付けられる。そして、キャップ91のリップ突起92に本器具の切欠き部20A、20Bを係合するが、チューブ90の形態により先端側(図A)、あるいは、リング側(図B)のいずれかの切欠き部20が選択される。
【0053】
リップ突起92に切欠き部20A、20Bの切欠き溝24A、24Bを係合すると、爪部21A、21B上面のリップ突起92との当接部が開栓の作用点となり、キャップ支持部22A、22Bのキャップ上面の当接部の一部が開栓の支点となり、指に嵌めたリング40が開栓の力点となっており、この場合、支点が作用点より先端側に位置しているため栓抜きのように支点に対してリング40を上方に引き上げることで開栓される。
【0054】
図8は、本形態の第三の実施の形態を示す全体構成図の斜視図で、図9が、その側面図及び底面図を示し、図10が本形態の切欠き部の拡大図を示している。本形態のマイクロチューブの開栓器具は、板状あるいは棒状に形成される切欠き設定部50と、器具の保持・操作部となる手指に挿着するリング40と、該リング40に対して切欠き設定部50の水平方向への角度を自在に可変可能な接続可動部70とにより構成し、前記切欠き設定部50には、切欠き部60として、先端部に切欠き溝64をリング側に向けて形成する爪部61と、該爪部61からの長さを違えて2ヵ所備えるキャップ支持部62A、62Bを設けて形成される。
【0055】
切欠き設定部50は、操作部となるリング40の周面から外方に、該リング40への接線を含む面が背面52となるように突出して延びる、板状あるいは棒状の開栓のための軸棒となる。なお、切欠き設定部50のサイズは、特定するものではないが、多連タイプのマイクロチューブ90の開栓のさいに隣接するキャップ91に干渉することなく、また、操作に不都合の無い幅として、細径部を5mm、長さは、比較的サイズの大きなマイクロチューブ90のキャップ91の長さに適合可能となる25mm程度(先端部から傾斜曲面63B終点まで)に形成される。
【0056】
手指への係止手段となるリング40は、前記第二の実施の形態と同様に指輪のように手指に填めるリング40として形成され、サイズは、幅5mm、厚さ2mmで内径を第二の実施の形態と同様に22mmとした。なお、本例では、円形のリング40が例示されるが、本形状以外でも、前記第二の形態の説明で示されたようなものであっても良い。
【0057】
切欠き部60は、爪部61が、切欠き設定部50の先端部分に切欠き溝64をリング側に向けたフック形状に突起する形態で形成される。そして、切欠き設定部50の下面であって、前記切欠き溝64をキャップ90のリップ突起92に係合したさいに、該キャップ90の上面と当接する部位をキャップ支持部62A、62Bとし、爪部61とともに切欠き部60として定義する。
【0058】
また、前記切欠き設定部50の下面で、キャップ支持部62A、62Bを挟んで、爪部61と反対側に位置する面を下方に向けて傾斜する傾斜曲面63とし突起させて形成するが、本形態においては、異なったタイプのマイクロチューブ90に広く適合できるように、該傾斜曲面63を、爪部61から長さの異なる位置に2ヵ所設けて形成した。これにより、ひとつの爪部61がサイズ(キャップの幅)の異なる複数のマイクロチューブ90に共用されることなる。
【0059】
前記2ヵ所の傾斜曲面63A、63Bは、爪部61から近い側を第一の傾斜曲面63Aとして、爪部61からの長さを、多連タイプのマイクロチューブ90に見られるサイズの小さなキャップ91に適合させ10mmとし、また、切欠き溝94の高さをキャップ上面に突起93があるものが収まるサイズとして3mmに設定した。一方、爪部61から遠い側を第二の傾斜曲面63Bとして、サイズが比較的大きなマイクロチューブ90に適合して爪部61からの長さを25mmとした。また、キャップ上面がフラットなものに適合するように、前記第一の傾斜曲面63Aの傾斜幅を段差とし、キャップ支持部62Bを形成し、段差分、切欠き設定部50を厚く形成して、結果、爪部61上面とキャップ支持部62Bとの高さを、第一の傾斜曲面63Aの傾斜の分小さく設定した。これにより、サイズや形態の異なるマイクロチューブ90であっても、共通のひとつの爪部61で適用することができる。
【0060】
また、第一、第二の実施の形態と同様に切欠き部60の爪部61の深さは、長すぎるとコンタミネーションを起こす可能性があるため、該開口嵌合部911に接触しない長さで開栓に不都合の無い長さとして2mmに設定される。
【0061】
接続可動部70は、前記した通り、操作部となるリング40に対する切欠き設定部50の水平方向への角度を自在に設定可能とする可動性の接続部で、本形態においては、切欠き設定部50、及び、リング40(共に、幅5mm)からそれぞれ延設部41、51を、幅を徐々に大きくする態様で延設して直径約15mmの円形接続面70A、70Bとして形成され、該円形接続面70A、70Bを互いに重ね合わせ、該重ねた円形の中心軸をボルトとナット等による締め付け手段71で締緩して、所望の角度に設定、及び、設定した角度に固定可能に形成した。
【0062】
また、本実施形態は、切欠き設定部50と操作部40は取り付け角度を自在に可動可能としているが、特定の角度が予め設定されたものでも良く、その場合は、接続可動部70は設けずに一体に成形されるものが好ましい。そして、この取り付け角度を90°に設定すると、軸方向への操作ではなく、横方向への操作によりキャップ91を開栓できる器具となる。また、角度を左右反対に設定すると、右利き、左利きのいずれにも適用することができる。
【0063】
図11は、本形態の開栓器具によるキャップの開栓方法を示し、Aが、サイズが小さく、キャップ上面が突起したマイクロチューブのキャップを開栓する様子、Bが、サイズが大きく、キャップ上面がフラットなロックタイプのキャップを開栓する様子を示している。
【0064】
本形態によるキャップ91の開栓は、第一及び第二の実施の形態と同様に、マイクロピペットと共に使用される一本ごと手動で操作する場合に好適に用いられる。手指に本器具のリング40を挿着し、キャップ91のリップ突起92に本器具先端の爪部61を係合すると、マイクロチューブ90のサイズにより、キャップの上面が、先端側に位置する第一のキャップ支持部62A(図A)あるいはリング側に位置する第二のキャップ支持部62B(図B)のいずれかに当接され、キャップ開栓のさいの支点となる。
【0065】
リップ突起92を切欠き部60に係合すると、爪部61の上面とリップ突起92の下面との当接部が開栓の作用点となり、前記キャップ支持部62A、62Bのキャップ91との当接面が開栓の支点となり、指に嵌めたリング40が開栓の力点となっており、この場合、作用点が支点より先端側に位置しているため支点に対してリング40を下方に押し下げることで開栓される。
【符号の説明】
【0066】
10. 50.切欠き設定部
20. 60.切欠き部
21. 61.爪部
211.壁
212.R形成面
22. 62.キャップ保持部
23. 63.傾斜曲面
24. 64.切欠き溝
26. スロープ
30. 操作部(プレート)
40. (操作部)リング
70. 接続可動部
90. マイクロチューブ
91. キャップ
92. リップ突起
93. (キャップ上面)突起
96. 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12