(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】食品生地の分割装置
(51)【国際特許分類】
A21C 5/02 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
A21C5/02
(21)【出願番号】P 2021120917
(22)【出願日】2021-07-21
【審査請求日】2024-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】516245139
【氏名又は名称】株式会社工揮
(74)【代理人】
【識別番号】100114498
【氏名又は名称】井出 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 信行
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-144488(JP,U)
【文献】特開昭59-140826(JP,A)
【文献】国際公開第2010/064908(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練された食品生地を収容するホッパーと、
前記ホッパーから食品生地を受け入れるシリンダと、
前記シリンダ内に互いに並行に配列されて当該シリンダ内を進退し、前進時に前記シリンダの生地排出口から生地玉を押し出す複数のピストンと、
前記複数のピストンを前記シリンダ内で進退させる第一アクチュエータと、
前記複数のピストンを前記第一アクチュエータに対して選択的に連結し、連結されなかった残余のピストンを前記シリンダに対して固定するピストン連結機構と、
前記シリンダの生地排出口の下方に設けられて、当該生地排出口から排出された生地玉を受け止めて次工程へ送るコンベアベルトと、
を備えたことを特徴とする食品生地の分割装置。
【請求項2】
前記コンベアベルトは、前記ピストンによる生地玉の押出方向に回転方向を合致させて配設されると共に、前記生地排出口から同時に排出された複数の生地玉を次工程に受け渡す際に、個々の生地玉の受け渡しタイミングに時間差を形成する搬送調整手段を有することを特徴とする請求項1記載の食品生地の分割装置。
【請求項3】
前記搬送調整手段は、前記コンベアベルト上に覆い被さって当該コンベアベルトに対して生地玉を強制的に転がす面状部材であることを特徴とする請求項2記載の食品生地の分割装置。
【請求項4】
前記コンベアベルトは、並列に配列されて同時に回転する複数基の分割ベルトから構成され、
前記搬送調整手段は、前記生地玉搬送方向における前記分割ベルトの終端高さを調整する高さ調整機構であることを特徴とする請求項2記載の食品生地の分割装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば混練されたパン生地等の食品生地をホッパーから受け入れ、それを所定量に分割して供給する分割装置に係り、特に、小麦粉等の穀粉に対して加える水分の割合が極めて多量な高加水生地の分割にも対応可能な分割装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製パン工程においては、混練された大量のパン生地を所定量の生地玉に小分けした後、焼成工程前の中間発酵へと工程を進めており、パン生地から生地玉に小分けにする自動化機械として、例えば特許文献1示される分割装置が用いられている。
【0003】
前記分割装置は、混練後の大量のパン生地を投入するホッパーと、前記ホッパーの直下に設けられると共に当該ホッパーからパン生地が落とし込まれるシリンダと、前記シリンダの一端開口に面して設けられると共に複数の分割ポケットを有するスライドヘッドと、前記シリンダに落下したパン生地を前記スライドヘッドの分割ポケットに押し込んで前記生地玉を生成する主ラムと、前記スライドヘッドの各分割ポケットから前記生地玉を排出するピストンと、を有している。そして、前記分割ポケットに対するパン生地の押し込みと、かかる分割ポケットからの生地玉の排出を繰り返することにより、前記分割ポケットの容積に応じた大きさの生地玉を連続的に生産することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される分割装置では、前記スライドヘッドに対して複数の分割ポケットが設けられており、パン生地の押し込み方向に関するこれら分割ポケットの深さを調整することで、当該分割ポケットの容量を変更し、生産する生地玉の大きさを調整している。
【0006】
しかし、パン生地の押し込み方向に関する各分割ポケットの断面積は常に一定であり、前記分割ポケットの深さを調整するのみでは、生産する生地玉の大きさを極端に変更することはできず、パン工場で生産される多種類のパン製品に対して柔軟に対応することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、大量に混練された食品生地から所定サイズの生地玉を連続的に生成することが可能であると共に、当該生地玉のサイズの変更に柔軟に対応することが可能な食品生地の分割装置を提供することにある。
【0008】
すなわち、本発明の分割装置は、混練された食品生地を収容するホッパーと、前記ホッパーから食品生地を受け入れるシリンダと、前記シリンダ内に互いに並行に配列されて当該シリンダ内を進退し、前進時に前記シリンダの生地排出口から生地玉を押し出す複数のピストンと、前記複数のピストンを前記シリンダ内で進退させる第一アクチュエータと、前記複数のピストンを前記第一アクチュエータに対して選択的に連結し、連結されなかった残余のピストンを前記シリンダに対して固定するピストン連結手段と、前記シリンダの生地排出口の下方に設けられて、当該生地排出口から排出された生地玉を受け止めて次工程へ送るコンベアベルトと、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
このような本発明によれば、シリンダ内に互いに並行に配列された複数のピストンの中から生地玉の押出しに使用するピストンを任意に選択して進退させることができ、単にピストンのストローク量を変化させて生地玉の大きさを調整する以上に、生地玉の生成に使用される前記シリンダの容積を大きく変化させることが可能となる。従って、大量に混練された食品生地から所定サイズの生地玉を連続的に生成するにあたり、かかる生地玉のサイズの変更に対して柔軟に対応することができ、例えばパン工場で生産される多種類のパン製品に対して柔軟に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明を適用したパン生地の分割装置の実施形態の一例を示す概略図である。
【
図2】図に示した分割装置のシリンダ、ピストン及び入口シャッターの位置関係を示す概略斜視図である。
【
図3】ピストンを第一アクチュエータに接続する連結機構の概略を示す平面図である。
【
図4】第二ピストンとコネクティングプレートとの接続状態を示す断面図である。
【
図5】第一ピストンをベースプレートに固定した状態を示す断面図である。
【
図6】シリンダから生地玉を排出した状態を示す図である。
【
図7】生地玉の排出後に出口シャッターを閉じた状態を示す図である。
【
図8】ホッパーからシリンダ内へパン生地を吸引した状態を示す図である。
【
図9】ピストンを目標位置へ前進させてシリンダ内をパン生地で満たした状態を示す図である。
【
図10】入口シャッターの進出によってシリンダ内のパン生地がホッパー内のパン生地から分断された状態を示す図である。
【
図11】コンベアベルトに対して搬送調整手段としての面状部材を配置した状態を示す側面図である。
【
図12】コンベアベルトを二基の分割ベルトで構成した様子を示す平面図である。
【
図13】分割ベルトの搬送ローラの配設高さを搬送調整手段としての高さ調整機構で変更した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明を適用した食品生地の分割装置の実施形態を説明する。
【0012】
図1は本発明を適用したパン生地の分割装置の一例を示す概略図である。この分割装置は混練されたパン生地を小分けにして搬出するものであり、ホッパー1から投入されたパン生地Rを所定サイズの生地玉に分割し、かかる生地玉をコンベアベルト2によって次工程、例えば、生地玉の丸めを行うラウンダーや、生地玉の最終成形及びガス抜きを担うモルダーに受け渡すように構成されている。この分割装置はパン生地に対して過度のストレスを与えることなく、当該パン生地を生地玉に分割することを目的として案出されたものであり、例えは、加水率が90%以上の高加水率のパン生地の分割作業を自動化することも可能である。尚、
図1は本発明の概略構成を示すための便宜上のものであり、装置の骨格となるフレーム等は省力されているが、通常は作業性の観点から、前記コンベアベルト2は装置フレームによって作業者の腰の高さ程度に設置されている。
【0013】
前記分割装置は、生地投入口が開口するホッパー1と、このホッパー1の直下で水平方向に延びると共に生地導入口10を介して当該ホッパー1と連通しているシリンダ3と、このシリンダ3内を水平方向へ往復運動して、当該シリンダの生地排出口から生地玉を押し出すピストン4と、前記シリンダ3から生地玉が排出される際に鉛直方向へ往復運動して、前記シリンダ3の生地排出口30を開閉する出口シャッター5と、前記シリンダ3内におけるピストン4の進退に伴って前記生地導入口10を開閉する入口シャッター6と、を備えている。
【0014】
図2は前記シリンダ3、前記ピストン4及び前記入口シャッター6の位置関係を示す概略図である。前記シリンダ3、前記ピストン4及び前記入口シャッター6の間の隙間を小さくして気密性を高めるため、前記シリンダ3及びピストン4は耐摩耗性に優れた樹脂材料(例えばPEEK材やポリエチレンテレフタレート等)によって形成されている。前記シリンダ3はベースプレート31と、このベースプレート31の両端に位置する一対のサイドプレート32を備えており、前記ピストン4はこれらベースプレート31及び一対のサイドプレート32によって形成された通路内を往復運動する。前記ベースプレート31及び一対のサイドプレート32は図示外のステンレス製筐体に対して固定されている。
【0015】
前記ピストン4は、中央に位置する第一ピストン4aと、この第一ピストン4aの両側に配置された一対の第二ピストン4bとから構成されている。これら第一ピストン4a及び一対の第二ピストン4bは後述する連結機構42によって第一アクチュエータ40に接続されている。この実施形態において、前記第一アクチュエータ40はボールねじとサーボモータを組み合わせた電動アクチュエータであり、前記ピストン4の移動量を検出するためのエンコーダを内蔵している。このため、前記エンコーダの出力信号に基づいて前記サーボモータの回転量を制御することにより、前記シリンダ3内における前記第一ピストン4a及び一対の第二ピストン4bの移動量を任意に制御することが可能となっている。
【0016】
図3乃至
図5は前記第一ピストン4a及び前記一対の第二ピストン4bを前記第一アクチュエータ40に接続する連結機構42を示す概念図であり、
図3は前記一対の第二ピストン4bのみを前記第一アクチュエータ40に接続した状態を示す平面図、
図4は前記第二ピストン4bと前記第一アクチュエータ40との連結状態を示す図、
図5は前記第一ピストン4aを前記ベースプレート31に固定した状態を示す図である。
【0017】
前記連結機構42は、前記第一アクチュエータ40のキャリッジに固定されたコネクティングプレート43と、前記第一ピストン4a及び前記一対の第二ピスン4bの後端に設けられると共に連結ピン44を介して前記コネクティングプレート43と結合される係止プレート45と、から構成されている。前記連結ピン44は前記第一ピストン4a及び前記一対の第二ピスン4bの夫々に対して設けられており、前記コネクティングプレート43と前記係止プレート45とが重なった状態で前記連結ピン44を貫通孔46に挿入すると各ピストン4a,4bと前記コネクティングプレート43を選択的に結合することができる。また、前記連結ピン44を抜き取ると各ピストン4a,4bと前記コネクティングプレートの結合が選択的に解除されるようになっている。また、各ピストン4a,4bの係止プレート45には固定ピン47の取付け孔48が設けられており、当該取付け孔48に固定ピン47を挿入することで、各ピストン4a,4bを選択的に前記ベースプレート31に対して固定できるようになってい。
【0018】
この連結機構42によって前記第一ピストン4a及び前記一対の第二ピストン4bの双方を前記第一アクチュエータ40と個別に接続または解除可能である。すなわち、前記第一ピストン4a及び前記一対の第二ピストン4bの双方に対して前記第一アクチュエータ40のキャリッジの進退をそのまま伝達することもできるし、前記第一ピストン4a又は前記一対の第二ピストン4bのいずれか一方のみに対して前記第一アクチュエータ40のキャリッジの進退を伝達することもできる。
【0019】
一方、前記入口シャッター6は前記ピストン4と前記一対のサイドプレート32に摺接しながら、これらの上を進退する。前記入口シャッター6は図示外の連結機構によって第二アクチュエータ60に接続されている。この実施形態において、前記第二アクチュエータ60は、前記第一アクチュエータ40と同様、ボールねじとサーボモータを組み合わせた電動アクチュエータであり、前記入口シャッター6の移動量を検出するためのエンコーダを内蔵している。このため、前記エンコーダの出力信号に基づいて前記サーボモータの回転量を制御することにより、前記シリンダ3に対する前記入口シャッター6の移動量を任意に制御することが可能となっている。
【0020】
また、前記入口シャッター6と前記ホッパー1の間には、前記生地導入口30を有するアッパープレート7が設けられている(
図1参照)。このため、前記入口シャッター6は前記ピストン4と前記アッパープレート7の間に設けられた隙間を進退する。前記入口シャッター6と前記アッパープレート7との間の気密性を高めるため、前記アッパープレート7も前記入口シャッター6と同様に耐摩耗性に優れた樹脂材料(例えばPEEK材やポリエチレンテレフタレート等)によって形成されている。
【0021】
前記ホッパー1は前記生地導入口10と連通する角筒状に設けられて前記アッパープレート7上に設置されている。このホッパー1は前記生地導入口10に連通する下部に対して上部が拡開したテーパー状に形成されている。但し、角筒状に形成された前記ホッパー1の四つの側面のうち、前記生地排出口30の上方に位置する前部側面11は前記ピストンの移動方向に対して垂直に起立している。
【0022】
前記入口シャッター6は前記アッパープレート7に摺接しながら前記シリンダ3に対して進退し、最も後退した際には前記生地導入口10を完全に開放し、最も進出した際には前記生地導入口10を塞ぐように構成されている。そして、前記入口シャッター6の進出方向の先端には斜めに切り欠かれた刃61が設けられており、前記シンリンダ3内に進出して前記生地導入口10を塞ぐ際には、前記ホッパー1からシリンダ3内に連続するパン生地をこの刃61によって切断するようになっている。
【0023】
更に、前記出口シャッター5は前記シリンダ3の一端に開口する生地排出口30を塞ぐように設けられている。この出口シャッター5は図示外の連結機構によって第三アクチュエータ50に接続されており、鉛直方向に上下動して前記生地排出口30の開放又は閉塞を行う。前記出口シャッター5は前記ベースプレート31、前記一対のサイドプレート32、前記アッパープレート7と摺接しており、これら部材との間の気密性を高めるため、前記出口シャッター5も前記入口シャッター6と同様に耐摩耗性に優れた樹脂材料(例えばPEEK材やポリエチレンテレフタレート等)によって形成されている。また、前記第三アクチュエータ50には出口センサが設けられており、出口シャッター5が前記生地排出口30の閉塞位置に設定されたことが検出される。
【0024】
一方、前記コンベアベルト2は前記シリンダ3の下方に位置すると共に一対の搬送ローラ20,21に張り渡された無端ベルトであり、前記シリンダ3から生地玉が押し出される方向(
図1中の矢線A方向)へ回動している。前記一対の搬送ローラ20,21のうち、その一方は搬送モータ22によって回転駆動されており、前記搬送モータ22の回転速度を変化させることにより、前記コンベアベルト2の回転速度を生地玉の生産速度(単位時間当たりの生産個数)に合わせて調整することが可能となっている。
【0025】
また、前記コンベアベルト2の移動方向に関して前記生地玉の落下位置よりも上流側には、当該コンベアベルト2に対して打ち粉を散布する粉ふり器8が設けられている。前記粉ふり器8は生地玉の生産速度などに応じて打ち粉の量を適宜調整可能であり、前記シリンダ3から排出された生地玉が前記コンベアベルト2にこびり付くのを防止している。
【0026】
次に、
図6~
図10を用いてこの分割装置における生地玉の生産工程を説明する。
【0027】
図6は前記シリンダ3の生地排出口30から前記コンベアベルト2に対して生地玉Pを押し出した直後の状態を示すものである。このとき、前記出口シャッター5は前記生地排出口30を開放しており、前記ピストン4は前記シリンダ3内を生地玉Pの押出位置まで前進している。前記入口シャッター6は前記シリンダ3と前記ホッパー1との連通を遮断した閉塞位置に設定されている。すなわち、前記生地導入口10は前記入口シャッター6によって閉じられた状態にあり、前記ホッパー1内のパン生地Rは前記ピストン4内に落下することなく、前記入口シャッター6で堰き止められている。
【0028】
前記シリンダ3から生地玉Pの排出が終了すると、
図7に示すように、前記出口シャッター5は降下して前記シリンダ3の生地排出口30を閉鎖する。前記出口シャッター5による前記生地排出口30の閉塞が完了すると、
図8に示すように、前記ピストン4及び前記入口シャッター6が前記シリンダ3内を後退し、生地玉Pの目標質量に対応した位置(以下、「目標位置」という)を超えて動作準備位置にセットされる。このように、前記ピストン4及び前記入口シャッター6が動作準備位置に設定されると、当該シリンダ3の生地導入口10が開放され、前記ホッパー1内のパン生地Rは前記シリンダ3内へ自重で落下する。また、前記ピストン4がシリンダ3内を後退すると、当該シリンダ3内は一時的に若干の負圧となり、ホッパー1内のパン生地Rは前記ピストン4の後退に伴って前記シリンダ3内に吸引される。これにより、前記ホッパー1内のパン生地Rは前記シリンダ3に充填される。
【0029】
前記シリンダ3内にパン生地Rを吸引したら、
図9に示すように、前記ピストン4は動作準備位置から前記生地排出口30に向けて目標位置まで前進し、前記シリンダ3内の容積を生地玉Pの目標質量に対応した容積まで減じる。また、前記入口シャッター6も前記ピストン4の進出に伴って前記シリンダ3内を前記生地排出口30に向けて前進し、前記生地導入口10を完全に閉塞しない位置で停止する。この動作により、前記シリンダ3内の隙間がパン生地Rで埋められると共に、前記シリンダ3の容積に対して余剰なパン生地Rが前記生地導入口10を介して前記ホッパー1に押し戻され、前記シリンダ3から排出する生地玉Pの大きさの安定性が確保される。
【0030】
この後、
図10に示すように、前記生地導入口10は前記入口シャッター6によって完全に閉塞され、前記ホッパー1からシリンダ3内に連続するパン生地Rは前記入口シャッター6によって切断される。これにより、前記シリンダ3の容積に応じた大きさの生地玉Pがホッパー1内のパン生地Rから分割される。
【0031】
最後に、前記出口シャッター5を前記生地排出口30から引き上げて前記シリンダ3を開放すると共に、前記ピストン4を目標位置から押出位置まで進めると、生地玉Pが前記シリンダ3内から前記コンベアベルト2の上に排出される。生地玉Pの排出が完了すると、前記ピストン4、前記入口シャッター6及び前記出口シャッター5は、既に説明した
図6の位置に設定されている。以降は
図6~
図10を用いて説明した動作を繰り返すことにより、前記シリンダ3から所定の大きさの生地玉Pを繰り返し排出することができる。
【0032】
このような生地玉Pの連続的な生産にあたり、例えば
図3乃至
図5に示すように、前記一対の第二ピストン4bのみを前記第一アクチュエータ40のキャリッジに結合し、前記第一ピストン4aは前記ベースプレート31に対して固定するようにしてもよい。この場合、前記一対の第二ピストン4bのみが前記シリンダ3の内部を同時に往復運動するので、前記シリンダ3の生地排出口30からは当該一対の第二ピストン4bの往復運動に伴って二個の生地玉が同時に且つ並列的に前記コンベアベルト2上に排出される。また、これとは逆に、第一ピストン4aのみを前記シリンダ3の内部で往復運動させ、前記一対の第二ピストン4bを前記ベースプレート31に対して固定しておくと、前記シリンダ3の生地排出口30からは当該第一ピストン4aの往復運動に伴って生地玉が同時に前記コンベアベルト2上に排出される。
【0033】
このように、前記第一ピストン4a及び前記一対の第二ピストン4bの駆動を選択的に行うことにより、生地玉の生成に使用される前記シリンダ3の容積を変化させ、前記ホッパー1からシリンダ3内に落下させるパン生地の分量を変化させることが可能である。この実施形態において、前記一対の第二ピストン4bのそれぞれの断面積は前記第一ピストン4aの断面積の半分に設定されている。従って、前記一対の第二ピストン4bを前記シリンダ3に対して固定し、前記第一ピストン4aのみを駆動した場合、これら第一ピストン4a及び一対の第二ピストン4bを同時に駆動した場合と比較して、ピストン4のストローク量が同じであれば、前記生地排出口30から押し出される生地玉の大きさは半分に減じられる。これとは逆に、前記第一ピストン4aを前記シリンダ3に対して固定し、前記一対の第二ピストン4bのみを駆動した場合、前記生地排出口30からは前記一対の第二ピストン4bに対応して二個の生地玉が押し出され、各生地玉の大きさは、前記第一ピストン4aのみを駆動した場合の半分に減じられる。また、これと併せて、前記第一アクチュエータ40のキャリッジの移動量を変更することで、前記ホッパー1から前記シリンダ3に吸引されるパン生地の量を変更し、前記生地排出口30から押し出される生地玉の大きさを調整することが可能である。
【0034】
前記生地排出口30から排出された前記コンベアベルト2上に排出された生地玉は当該コンベアベルト2によって次工程へ送られるが、前述したように、同時に二個(複数個)の生地玉が同時に且つ並列的に前記コンベアベルト2上に押し出された場合に、これら生地玉が前記コンベアベルト2の回動に伴ってそのまま次工程へ受け渡されると、次工程の入口で生地玉同士がくっついて、所謂二個玉を形成してしまう懸念がある。このため、同時に複数個の生地玉Pが前記シリンダ3からコンベアベルト2上に排出された場合に、これら生地玉Pの次工程への受け渡しタイミングに任意の時間差を形成することができると都合がよい。
【0035】
図11はそのための搬送調整手段の一例を示すものである。前記コンベアベルト2上には可撓性を有する面状部材24が垂れ下がっており、かかる面状部材24は前記コンベアベルト2上に覆い被さっている。また、この面状部材24は矢線A方向へ回動するコンベアベルト2と摺接している。但し、前記面状部材24は前記コンベアベルト2の幅方向(紙面垂直方向)の全域に設けられているのではなく、例えば前記シリンダ3から同時に排出される二個の生地玉の一方のみの搬送経路と重なる位置に設けられている。
【0036】
前記コンベアベルト2上に排出された生地玉Pは当該コンベアベルト2の回動に伴って図中の破線矢印のように次工程へ搬送されるが、その際に、前記面状部材24と接触した生地玉Pは当該面状部材24とコンベアベルト2の間に入り込み、両者の間で自転することになる。前記面状部材24に接して自転している生地玉Pの搬送速度はコンベアベルト2の移動速度の約1/2となる。このため、前記コンベアベルト2上に同時に二個の生地玉Pが排出されたとしても、一方の生地玉Pは面状部材24と接することによって、他方の生地玉Pの搬送速度よりも遅い速度で搬送され、これら二個の生地玉Pが前記コンベアベルト2から次工程(例えばラウンダ)へ受け渡される際には、受け渡しタイミングに時間差が設けられることになる。これにより、前記シリンダ3から同時且つ並列的にコンベアベルト2上に排出された複数の生地玉Pを当該コンベアベルト2で搬送して次工程に受け渡す際に、生地玉同士がくっついて一体化してしまう所謂二個玉の形成を防止することが可能となる。
【0037】
図12及び
図13は前記搬送調整手段、すなわち生地玉Pの次工程への受け渡しタイミングに任意の時間差を形成する手段の他の例を示すものである。同図に示す例では、前記コンベアベルト2を二基の分割ベルト2a,2bから構成している。これら二基の分割ベルト2a,2bは並列的に設けられて、これら分割ベルト2a,2bの一端は搬送モータ22に接続された搬送ローラ21に架け回されている。すなわち、これら二基の分割ベルト2a,2bは互いに同期して同じ速度で矢線A方向へ回転する。
【0038】
また、二基の分割ベルト2a,2bの他端はそれぞれが搬送ローラ20a,20bに架け回されている。各搬送ローラ20a,20bは生地玉Pの搬送経路に終端に位置しており、図示外のブラケットを介して前記装置フレームに回転自在に支承されている。前記搬送ローラ20aを支承するブラケットは高さ調整機構25を介して装置フレームに支持されており、この高さ調整機構を操作することにより、
図13中に一点鎖線で示すように、前記装置フレームに対する搬送ローラ20aの配設高さを他方の搬送ローラ20bのそれに対して異ならせることが可能である。
【0039】
例えば、前記一対の第二ピストン4bのみを前記シリンダ3に対して進退させ、前記コンベアベルト2上に二個の生地玉Pを同時に且つ並列的に排出した場合、一方の生地玉Pは分割ベルト2aの上に排出され、他方の生地玉Pは分割ベルト2bの上に排出される。このとき、生地玉Pの搬送経路の終端に位置している搬送ローラ20a,20bの配設高さが互いに異なっていれば、分割ベルト2aの終端から次工程に受け渡される生地玉と分割ベルト2bの終端から次工程に受け渡される生地玉とで、受け渡しタイミングに時間差を形成することが可能になる。従って、このような搬送ローラ20a,20bの高さ調整機構を設けることで、生地玉同士がくっついて一体化してしまう所謂二個玉の形成を防止することが可能となる。
【0040】
また、生地玉Pの次工程への受け渡しタイミングに任意の時間差を形成する手段としては、前述した面状部材24と前記高さ調整手段25を組み合わせて使用しても良い。
【0041】
以上説明してきたように、本発明を適用した分割装置によれば、大量に混練された食品生地から所定サイズの生地玉を連続的に生成するにあたり、前記シリンダ3内に配置された複数のピストン4の中から生地玉の押出しに使用するピストン4を任意に選択することで、単にピストン4のストローク量を変化させる以上に、生地玉の生成に使用される前記シリンダ3の容積を変化させることが可能となる。従って、生地玉のサイズの変更に対して柔軟に対応することができ、パン工場で生産される多種類のパン製品に対して柔軟に対応することが可能となる。
【0042】
尚、図を用いて説明した本発明の実施形態では、本発明をパン生地の分割装置に適用した例を説明したが、前記実施形態を適宜設計変更することにより、他の食品生地の分割装置に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…ホッパー、2…コンベアベルト、3…シリンダ、4…ピストン、5…出口シャッター、6…入口シャッター