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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】被検体を検査するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20241015BHJP
   G01N 29/32 20060101ALI20241015BHJP
   G01N 29/34 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N29/32
G01N29/34
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021538845
(86)(22)【出願日】2020-01-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 IB2020050025
(87)【国際公開番号】W WO2020141479
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】19150400.0
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521289397
【氏名又は名称】クサリオン レーザー アコースティクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パンザー ニールス
(72)【発明者】
【氏名】ローリンガー ウォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー ルーカス バルタザール
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-192160(JP,A)
【文献】特表2012-502576(JP,A)
【文献】特表2008-545123(JP,A)
【文献】特開2016-129659(JP,A)
【文献】特開2014-113496(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0048135(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03173781(EP,A1)
【文献】特開2013-094499(JP,A)
【文献】VERES et al,Golay code modulation in low-power laser-ultrasound,Ultrasonics,2012年04月24日,Vol.53,p.122-129
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01B 17/00-17/08
A61B 8/00-8/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体(40、140、240、340、440)を検査するための装置(10、100、200、250、300、400)であって、
前記被検体に広帯域超音波パルスを生成する励起システム(13、113、213、243、313、413)と、
前記被検体の広帯域超音波パルス(12’、112’、212’、312’、412’)によって生成され、前記被検体によって放射される超音波(21、121、221、321、421)を検出する検出システム(20、120、220、320、420)と、
検出された前記超音波を処理するための処理部(30、130、330、430)と、を備え、
前記励起システム(13、113、213、243、313、413)は、熱音響放射器またはパルスレーザのうちの1つであり、
前記検出システム(20、120、220、320、420)は、広帯域検出システムであり、前記広帯域検出システムは、2つの部分反射非可動ミラーを有する第1のメンブレンフリー光学マイクロフォンを少なくとも含み、前記2つの部分反射非可動ミラーは、前記2つの部分反射非可動ミラーのキャビティ内でレーザを反射させ、
前記励起システム(13、113、213、243、313、413)は、前記励起システム(13、113、213、243、313、413)の励起波(12、112、212、312、412)を時間的に変調することによって前記広帯域超音波パルス(12’、112’、212’、312’、412’)を変調するための変調器(11、111)を備え、
前記装置(10、100、200、250、300、400)は、ファイバ束(16’、216’、416’)を介して前記励起システム(13、113、213、243、313、413)に接続される励起ヘッドをさらに備え、前記ファイバ束(16’、216’、416’)のファイバは、特定の空間励起パターンを生成するために選択可能である、装置(10、100、200、250、300、400)。
【請求項2】
前記処理部(30、130、330、430)は、基準信号と放射された前記超音波(21、121、221、321、421)との間の相関指数を計算することができる、請求項1に記載の装置(10、100、200、250、300、400)。
【請求項3】
前記基準信号は生成された前記超音波パルス(12’、112’、212’、312’、412’)であり、前記処理部(30、130、330、430)は前記励起システム(13、113、213、243、313、413)および/または前記広帯域検出システム(20、120、220、320、420)に接続され、特に、前記広帯域超音波パルス(12’、112’、212’、312’、412’)は、コード配列、特にゴレイコード配列またはバーカーコード配列の形態を取る、請求項2に記載の装置(10、100、200、250、300、400)。
【請求項4】
前記励起システム(13、113、213、243、313、413)はいくつかの波長を放射する1つのパルスレーザであり、あるいは、前記励起システム(13、113、213、243、313、413)はそれぞれ単一の波長を放射するいくつかのパルスレーザを備え、代替的または補完的には、前記広帯域検出システム(20、120、220、320、420)は、メンブレンフリーマイクロフォンの、特に光学マイクロフォンの、2次元アレイを備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置(10、100、200、250、300、400)。
【請求項5】
前記ファイバ束のファイバはアレイ状に前記励起ヘッド内に配置され、前記装置(10、100、200、250、300、400)は少なくとも前記広帯域検出システムを遮蔽するハウジング要素(217、317、417)を備え、前記ハウジング要素(217、317、417)は特に、前記励起システム(13、113、213、243、313、413)を前記広帯域検出システム(20、120、220、320、420)から分離する分離要素(443)を備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置(10、100、200、250、300、400)。
【請求項6】
前記広帯域検出システム(20、120、220、320、420)および前記励起システム(13、113、213、243、313、413)はピッチキャッチモードでの測定を行うことができるように配置されるか、または前記広帯域検出システム(20、120、220、320、420)および前記励起システム(13、113、213、243、313、413)がパルスエコーモードでの測定を行うことができるように配置される、請求項1から5のいずれか1項に記載の装置(10、100、200、250、300、400)。
【請求項7】
前記広帯域検出システム(20、120、220、320、420)が前記励起ヘッド内に配置され、前記ファイバ束(16’、216’、416’)が前記広帯域検出システム(20、120、220、320、420)を通って導かれることを特徴とする、請求項6に記載の装置(10、100、200、250、300、400)。
【請求項8】
特に請求項1から4のいずれか1項に記載の装置によって実行される、被検体(40、140、240、340、440)を検査する方法であって、
前記被検体(40、140、240、340、440)内に励起システム(13、113、213、243、313、413)によって、広帯域超音波パルス(12’、112’、212’、312’、412’)を生成する工程と、
前記被検体内の広帯域超音波パルス(12’、112’、212’、312’、412’)を介して生成され、前記被検体(40、140、240、340、440)によって放射される超音波を前記検出システムによって検出する工程と、
検出された前記超音波(21、121、221、321、421)を、前記処理部(30、330、430)で処理する工程と、
特定の空間励起パターンを生成するために、励起ヘッドの前記ファイバ束(16’、216’、416’)のファイバを選択する工程と、
を含み、
前記励起システム(13、113、213、243、313、413)は時間的に変調され、前記励起システム(13、113、213、243、313、413)は熱音響放射器またはパルスレーザのうちの1つであり、
前記検出システム(20、120、220、320、420)は、広帯域検出システムであり、前記検出システム(20、120、220、320、420)は、2つの部分反射非可動ミラーを有する第1のメンブレンフリー光学マイクロフォンを少なくとも含み、レーザが前記2つの部分反射非可動ミラーのキャビティ内で反射される、方法。
【請求項9】
検出された前記超音波(21、121、221、321、421)は基準信号と相関され、相関指数が計算される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記広帯域超音波パルス(12’、112’、212’、312’、412’)は、コード配列、特にゴレイコード配列またはバーカーコード配列の形態で生成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
広帯域超音波パルス(12’、112’、212’、312’、412’)の前記励起が、超音波パルス(12’、112’、212’、312’、412’)の空間パターンを提供するために、2次元アレイ中で実行され、および/または、前記超音波(21、121、221、321、421)が、2次元アレイ中で検出される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
請求項8に記載の方法ステップは第1の測定点について行われ、少なくとも第2の測定点について繰り返され、各測定点についての相関指数が計算され、各相関指数が表示部(35、135、235、335、435)上にプロットされる、請求項9から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法はパルスエコーモード、ピッチキャッチモード、または透過モードのうちの1つで実行され、前記広帯域超音波パルス(12’、112’、212’、312’、412’)ならびに前記超音波(21、121、221、321、421)がフーリエ変換を使用することによってスペクトル信号に変換され、前記スペクトル信号は相関指数を提供するために互いに相関される、請求項9から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記被検体内の前記広帯域超音波パルス(12’、112’、212’、312’、412’)または前記広帯域超音波パルス(12’、112’、212’、312’、412’)を介して生成される前記超音波(21、121、221、321、421)が、少なくとも部分的に接触流体を介して透過される、請求項9から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記励起システム(13、113、213、243、313、413)および前記広帯域検出システム(20、120、220、320、420)のうち少なくとも一方が、前記被検体(40、140、240、340、440)の上方で移動している間に、前記方法が実行される、請求項9から14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体を検査するための装置および被検体を検査するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業において、製造された製品の継続的な品質管理が必要とされている。いくつかの産業では、例えば、隠れた亀裂または介在物または他の材料欠陥がないことが保証されるように、特に安全上の理由で、各製品およびすべての製品を検査しなければならない。また、2つの材料の間に適切な接触が存在するかを検査する必要があり、このような接触は、例えば、接着層、または、はんだ接続であり得る。
【0003】
場合によっては、製品サンプルを時々検査すれば十分であり、場合によっては製品の検査を継続する必要がある。以下で使用されるように、被検体は、製品サンプルまたは最終製品であり得る。さらに、被検体は、生体組織、血管、または神経、または組織内の構造であってもよい。
【0004】
この理由から、いくつかの非破壊検査方法が開発されている。非破壊検査(NDT)は材料またはサンプルに永久的に影響を及ぼすことなく、または材料またはサンプルを物理的に破壊することさえも必要とせずに、材料またはサンプルの検査を記述する、様々な産業における広範かつ十分に確立された技術分野である。ラジオグラフィー、渦電流検査、サーモグラフィー、視覚検査、シアログラフィー、音波および超音波検出技術を含む多くの技術が開発されている。
【0005】
他のほとんどの技術とは対照的に、超音波検出技術は、広範囲の材料および欠陥に適している。
【0006】
従来技術で知られているような超音波検査システムの典型的な装置は、圧電トランスデューサ(PET)、または超音波生成器および受信器の両方としての圧電トランスデューサの原理を備える。典型的には、PETがサンプルの音響インピーダンスをPETトランスデューサの音響インピーダンスに結合するために、液浸液などの結合剤と組み合わせて使用される。
【0007】
液体の使用は望ましくないか、時には多くの工業的用途には不可能であるので、空中超音波を送受信するためのカップリング剤なしにPETを使用するいくつかの試みがなされてきた。このような構成は、気体-固体材料界面において高いインピーダンス不整合を有する。これは、音波の関連する反射をもたらし、従って非常に顕著な信号減衰をもたらす。
【0008】
空中超音波の場合、超音波信号は、上述のように気体―固体界面で強く減衰(反射)される。従って、超音波信号はノイズレベルよりも低くなり、もはや検出できない単一信号としている。
【0009】
このような空中超音波のサンプルへの結合効率、およびこのような空中超音波の検出限界は非常に低い。
【0010】
この構成の感度は圧電トランスデューサの高い共振設計を通して改善することができるが、通常は中心周波数の数%以内の制限された周波数範囲をもたらす。さらに、このような共振設計は、パルス後の発振による(生成および検出の両方のための)インパルス状信号の実質的な延長につながる。
【0011】
このような空気結合PETトランスデューサは、通常50kHz~500kHzの異なる周波数に対して利用可能であり、ここで、各トランスデューサは、特定の、不変の中心周波数で動作している。
【0012】
超音波検査には、透過モードと片側モードの2つの主な設定がある。透過モードではセンサと検出器の両方が材料サンプルの反対側に配置されるが、片面モードでは測定は片面アクセスで行われる。片側モードは、パルスエコー構成またはピッチキャッチ構成で行うことができる。パルスエコー構成では、超音波が典型的には被検体の表面に対して垂直に放射され、被検体またはその欠陥からのエコーは同じ経路に沿って受信される。ピッチキャッチ構成では、表面波またはRayleigh-Lamb波が、被検体の材料中で励起され、この波は今度が生成場所に隣接して受け取ることができる。
【0013】
空中結合型PETトランスデューサの既に述べた欠点に加えて、これらのトランスデューサには、さらなる欠点がある。高い空間分解能のためには、小さな素子が必要であり、一方、必要な感度を達成するためには大きな素子が必要である。
【0014】
感知部品の機械的振動により、いわゆるリンギングが生成する。
【0015】
可動質量の慣性により、圧電材料は励起後も長時間にわたって動き続ける。これは、通常、電気励起波の持続時間と比較して少なくとも20因子のオーダーで信号のかなりの延長につながる。これにより、信号励起と検出の両方における時間分解能が制限される。材料欠陥から反射されたエコーは、時間的に分離することができず、したがって検出することができない。
【0016】
工業材料検査および医用画像の両方における超音波撮像方法は、撮像コントラストおよび浸透深さを増大させるために、高い信号対雑音比(SNR)に絶対的に依存する。また、SNRは材料欠陥を検出し、区別するためのNDTにおける重要なパラメータである。SNRの増加は、常に超音波イメージング技術のための開発の焦点であった。
【0017】
SNR向上のためのいくつかのアプローチが、過去数年にわたって開発されてきた。米国特許出願公開第2014/0291517号明細書は、測定中に放射システムと受信システムの両方の焦点を動的に変更することによって、深度分解能を増大させる動的焦点調節を開示している。米国特許第7,537,567B2号は、複数の独立した画像を組み合わせて画像品質を向上させる概念である合成を開示している。
【0018】
信号増強のための方法は符号化された励起である。米国特許出願公開第2007/0239002号明細書は、符号化された(またはコード化された)励起が既に使用されている用途がフェーズドアレイを用いた医療用超音波画像であることを開示している。ここでは、いくつかの励起源を採用して、異なるビーム角度を達成し、連続する信号放射によって空間的および時間的変調を達成する。機能原理は、明確な信号パターンの発光および検出が誘導信号とランダムノイズとの間のより良い分化を可能にし、SN比の増加をもたらすという事実に基づいている。
【0019】
従来技術の空気結合超音波NDT、例えばPETでは、信号の延長と、上述したようなポストパルス発振およびリンギングとのために、符号化された信号(符号化信号)励起が実施可能ではない。
【0020】
US2011/048135A1は、超音波の連続レーザ生成の方法およびシステムを示している。前記システムは、連続波光ビームを放射するためのファイバレーザと、前記光ビームを操縦するための可動ミラーと、検査材料とを含み、前記光ビームによって超音波が励起される。前記超音波は、前記検査材料から放射され、さらなる連続波レーザの測定光ビームと相互作用する。前記測定光ビームは、前記測定光ビームを部分的に偏向させることによって前記超音波と相互作用する。前記偏向された光ビームは、集束レンズによって位置敏感型光検出器に集束される。
【0021】
KIMとHOU、「広帯域全光学超音波トランスデューサ(Broadband all-optical ultrasound transducers)」、Applied Physics Letters 91、073507、2007は、高分解能超音波イメージングのためのシステムと方法を示している。短レーザパルスを用いて超音波信号を生成し、超音波信号検出のために、エタロンキャビティからの反射強度を観測した。このエタロンキャビティはポリマー層で満たされ、入射音響超音波に従って機械的にその厚さを変えるように設計されている。エタロンキャビティの長さの変化、すなわちエタロンの2つのミラー間の距離が光信号の変化につながる。エタロン長さのこの変化は音響周波数の関数であるポリマー層の機械的性質に依存し、従って、超音波検出器の感度応答は非線形であり、入射音響周波数に依存する。前記設計では、超音波がエタロンキャビティを形成する光学ミラーに平行に入射する。
【0022】
前記開示の少なくとも1つの欠点は、前記超音波の前記検出が前記ポリマー層の振動および/または変形に依存し、したがって、エタロンキャビティの材料特性に依存することである。
【0023】
VERES、Golay code modulation in low-power laser-Ultrasonics、Ultrasonics 53、122-129、2013は、CW(パルス波とは対照的な連続波)モードでレーザダイオードを使用した、超音波検出のためのシステムおよび方法を示す。レーザダイオードの強度は、テレコム適用においてしばしば使用される技術であるゴレイ符号配列に従って変調される。音響信号検出のために、試料の表面にレーザビームを向け、試料の動きと振動を検出する。試料からの反射レーザ光、表面の運動によってドップラーシフトされた光は、レーザドップラー振動計として知られるレーザ干渉計で検出される。
【0024】
前記開示の少なくとも1つの欠点は、音響信号の検出が表面の光学特性、具体的には表面の反射特性および表面粗さに依存することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、従来技術の欠点の少なくともいくつかを回避すること、特に、SNRを向上させ、かつ/または検査中にリンギング効果が生じない、被検体を検査するための装置を提供すること、および/または被検体を検査するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記課題の少なくともいくつかは、独立請求項による装置および方法によって達成される。
【0027】
特に、本発明による被検体を検査するための装置は、被検体内に広帯域超音波パルスを生成するための励起システムと、被検体内の広帯域超音波パルスを通して生成され、被検体によって放射される超音波を検出するための検出システムとを備える。
【0028】
本出願の範囲内で理解されるように、「広帯域超音波パルスによって生成される」という用語は、超音波パルスが被検体と相互作用することを意味する。したがって、検出超音波は、被検体内および被検体との広帯域超音波パルスの相互作用によって生成することができる。
【0029】
本出願の範囲内で理解されるように、被検体において広帯域超音波パルスを生成するという用語は、被検体の表面において広帯域超音波パルスを生成することも含む。
【0030】
さらに、超音波は、被検体の外部で生成され、その後、被検体上に放射させることもできる。
【0031】
さらに、装置は、検出された超音波を処理するための処理部を備える。
【0032】
励起システムは、少なくとも励起波を放射し、熱音響放射器またはパルスレーザのうちの1つである。熱音響放射器が超音波パルス、すなわち言い換えれば音響パルスを放射する間、レーザはパルスレーザビームを放射する。
【0033】
パルスレーザが励起システムとして使用される場合には、パルスレーザビームが音響伝播媒体、例えば空気中に、その後に被検体の上及び/又は中に放射される。パルスレーザビームは、熱弾性効果により、または表面アブレーション後の急速な圧縮および応力緩和により、被検体内の広帯域超音波パルスを励起する。
【0034】
熱音響放射器が励起システムとして使用される場合、広帯域超音波パルスまたは広帯域超音波パルスのコード配列が、音響伝播媒体、例えば空気中に放射され、および/または被検体中に放射される。広帯域超音波パルスは、被検体物の境界における被検体物の波長及び/又は強度を変化させることができる。
【0035】
励起システムは、励起波を変調し、従って広帯域超音波パルスを変調するための変調器を備える。広帯域超音波パルスは、超音波生成が生じる前に、変調器によって変調される。これは、励起波の時間的および/または空間的変調によるものであり得る。時間変調とは、信号の時間的符号化を意味し、SN比向上のための信号相関を可能にする。空間変調は、SN比向上のための信号相関を可能にする空間信号パターンの生成、または、測定器具の機械的な動きなしに、被検体上の関心領域をスキャンする広帯域超音波パルスの逸脱のいずれかを意味する。
【0036】
検出システムは、広帯域検出システムである。
【0037】
本出願の範囲内で理解されるように、広帯域という用語は、励振システムおよび広帯域検知システムの両方について、少なくとも1MHzの周波数帯域幅を意味する。したがって、大きな帯域幅が利用可能であり、一方、励起および広帯域検出システムの両方は、少なくとも100kHz程度の低い周波数を生成および受信することが可能である。当業者に知られているように、炭素ファイバ強化ポリマーのような複合材料の場合、超音波信号の反射および透過は、周波数に非常に依存する。
【0038】
空気結合PETは非常に限られた周波数帯域幅を有し、特定の材料または特定の検査物体にのみ使用することができる。
【0039】
広帯域励起システムおよびさらに広帯域検出システムの使用は装置および/または材料の構成とは無関係に、様々な種類の材料のために装置を使用することを可能にする。カップリング流体の必要性は、時代遅れになる可能性がある。
【0040】
励起システムとして熱音響放射器またはパルスレーザを使用することにより、短いパルス長、好ましくは熱音響放射器では1μs程度、レーザ励起では10ns程度のパルスを生成することができる。更に、このような励起システムは可動部分を持たず、従ってパルスおよび単一パルス間の休止を短縮することを可能にする干渉リンギング効果がない。
【0041】
レーザ誘起超音波検査では、パルスレーザを使用して、検査中の被検体内および/または被検体の表面上に、広帯域超音波を生成することができる。
【0042】
コリメートされた又は集束されたレーザパルスが被検体の表面に当たると、光子のエネルギーは材料に吸収され、これが加熱誘起された局所的な熱膨張を引き起こし、従って、被検体に超音波を生成させる。
【0043】
Thermoacoustic EmitterはEP3173781A1に記載されているように、電気-熱-音響透過器とも呼ばれ、熱-音響効果を利用して広帯域超音波パルスを生成する。熱音響効果は加熱表面と周囲の空気分子との相互作用により、表面の高速逐次加熱と冷却が空気中に超音波パルスを生成させることを意味する。可動機械部品が存在しないため、機械的動作原理に基づくトランスデューサの物理的制約が解決される。広帯域超音波パルスは空気または任意の他の気体媒体を通って伝播し、その後、被検体に導入される。
【0044】
被検体内に広帯域超音波パルスを生成した後、この広帯域超音波パルスは被検体と相互作用し、超音波が生成される。超音波は、材料バルクおよび熱膨張係数、局所欠陥、構造、層などの表面特性に強く依存する。超音波生成の材料依存性は、各材料に対して特定の周波数パターンを引き起こす。このパターンは、ユニークであると考えることができる。
【0045】
広帯域検出システムの使用により、前記パターンは、スペクトル分析及び/又は様々な被検体を対象とする装置の使用を可能にする広い帯域幅にわたって検出することができる。
【0046】
このユニークなパターンを利用して、好ましくは、参照スペクトルとのスペクトル相関を用いて、欠陥情報を明らかにすることができる。
【0047】
好ましくは、処理部が基準信号と放射された超音波との間を相関させることができる。好ましくは、相関指数が計算される。参照信号は生成された超音波パルスであることが好ましく、ここで、処理部は接続された励起システムおよび/または広帯域検出システムであることが好ましい。
【0048】
基準信号を測定信号、すなわち放射された超音波と相関させることにより、信号対雑音比が著しく増加し、材料の欠陥が明らかになる。放射された広帯域の超音波パルスと受信された超音波とを相関させることによって、または、受信された超音波を被検体との相互作用の前後で相関させることによって、ノイズに埋もれた信号を取り出すことができる。
【0049】
好ましくは、この相関の出力が、測定が行われる各点に対する相関指数である。例えば、ピアソン相関係数計算の場合、値は0から1に達する。0の値は、比較されたパラメータ間に一致がないことを示す。1の値は100%の一致を示す。計算された相関指数は、C-Scanのように表示することができる。ここで、振幅は相関指数の値に置き換えられる。用語「C-Scan」は2次元スキャン領域の測定データを表示する方法を指し、好ましくは、領域内の各点の振幅がカラースケールの特定の色によって表される。相関データを表示する他の適切な方法が存在する。それらは、A-スキャン画像(時系列プロット)、B-スキャン画像(時間対位置プロット)、散布図、相関行列プロット、関数プロット、3Dプロット、およびその他を含む。
【0050】
前記A-スキャンは好ましくは単一のスキャン、言い換えれば、被検体内に単一の広帯域超音波パルスを生成するための前記励起システムを使用することによる単一ショット測定を含み、前記単一の広帯域超音波パルスは、その後、前記広帯域検出システムを使用することによって検出される。前記処理部は、その後、前記被検体の選択された測定点上で検出された信号のスペクトル相互相関を行う。そのようなA-スキャンはいかなるスキャニングモードも含まず、その結果、有利なことに、非常に高い体積の被検体の迅速な検査方法がもたらされる。この場合、前記被検体は例えば、はんだ付け接合、はんだ付けバンプ、および/または古いパッケージまたは欠陥の層間剥離を検査するための半導体、半導体部品、または電子チップ、またはウェハベースの部品であってもよい。A-スキャンは、好ましくは振幅および時間または周波数によって表示される。さらに、前記A-スキャンは、前記計算された相関指数を使用してフォールスカラー画像によって表示されてもよい。
【0051】
励起システムと処理部との接続により、処理部から励起システムに基準信号を直接、送信することができる。さらに、処理部と広帯域検出システムとの間の接続は、信号を検出システムに直接送信すること、および/または処理部の信号に従って検出システムをトリガすることを可能にする。
【0052】
広帯域パルスは、コード配列、特に時間コード配列、好ましくはゴレイコード配列又はバーカーコード配列又は擬似ランダム系列の形態とすることができる。配列は、その自己相関がディラック関数に等しい場合、特に適している。
【0053】
広帯域パルスが配列の形で導入される場合、処理部は生成された超音波をそれぞれのコード配列と比較することができ、したがって、生成されたノイズ内のそれぞれの配列を見つけることができる。
【0054】
配列は、規定された量のパルス及び休止を含む。パルスの持続時間は配列内の全てのパルスに対して同じであってもよく、またはパルス毎に変化してもよく、これはパルス間の休止についても当てはまる。両方の励起システム、すなわち、パルスレーザおよび熱音響放射器が短いパルスを生成することができるので、パルス長は1μsよりもさらに短くすることができる。これは、符号化信号の相関による信号対雑音改善が信号配列の繰り返し率が測定された信号の周波数成分と同じ大きさであれば、最良に動作する可能性があるので、重要であり得る。パルス間の休止時間が1μsの場合、パルス長が1μsの場合、繰り返し率は500kHzである。検出システムは単一Hzから数MHzの範囲の周波数を測定できるので、0.5μsのパルス長と休止がこの範囲をカバーするのに十分である。
【0055】
エコー、すなわち、材料欠陥または材料界面から影響を受ける超音波は、時間的に分離され、したがって検出されることができる。符号化信号の励起または検出がうまく行える。
【0056】
バーカー符号およびゴレイ符号の使用は、これらが両方とも、デジタル通信で最初に使用された誤り訂正符号であるため、有利である。バイナリ・ゴレイ・コード全体は12次元ベクトル空間からなり、各いわゆるコード・ワードは、前方へシフトされる。バーカーコードは、2~13ビット長であり得る一次元完全バイナリコード配列である。長さ7のバーカーコードは例えば[1 1 1 -1 -1 1 -1]であるが、それらのコードは信号対雑音比の最高利得を約束するが、信号と休止の任意の他の組み合わせを適用することもできる。
【0057】
このコード配列の生成のために、レーザ及び熱音響放射器は、それぞれ、被検体を検査するための装置が備えることができる制御部によってトリガされる。信号生成後、超音波は、制御部または処理部にも接続されている検出システムによって検出される。制御部は、処理部の一部であってもよい。この信号配列を相関させるために、測定された信号は、基準信号として一旦測定される。これは、被検体を通じて送信される信号、または放射器からの直接空中信号である場合がある。あるいは、オリジナル信号(生成前)が相関のための基準信号として機能することができる。
【0058】
好ましくは、広帯域検出システムが少なくとも第1のメンブレンフリーマイクロフォン、特に光学マイクロフォンを備える。メンブレンフリーマイクロフォンの第1の実施形態はEP3173781A1に記載されており、この開示は、本明細書に完全に組み込まれる。EP3173781A1のメンブレンフリーマイクロフォンは、可動部分を有さない光学マイクロフォンである。光学マイクロフォンは、超音波内の圧力差によって生じる空気中の屈折率の変化を直接測定する。屈折率の変化は干渉計、いわゆるファブリ・ペロー・エタロンで検出され、そこではレーザが2つの部分反射ミラーのキャビティ内で反射される。レーザの波長は、正の干渉条件を確立するためにミラーの距離に調整される。キャビティ内の媒質の屈折率を変更させることは、干渉条件を変更させ、レーザの透過強度を変更させ、これはフォトダイオードによって測定される。キャビティ内の屈折率は、超音波の影響により変化する。超音波は封入媒体の密度に直接影響を及ぼし、封入媒体の密度は光の速度に直接影響を及ぼす。ファブリ・ペロー・エタロンのミラーは固定されており、移動不能である。したがって、ファブリ・ペロー・エタロンからの透過(または反射)光の変化は、キャビティ媒体の屈折率変化の関数であるが、ミラー距離は変更されないため、ミラー距離の関数ではない。音圧によって誘起される媒質の光屈折率の変化は音響周波数の関数ではないので(しかし、その振幅の関数ではある)、トランスデューサの感度は検出帯域幅全体にわたって線形であり、音響周波数には依存しない。音波はFabry‐Pペロト‐エタロンを形成する光学ミラーに直交して入射する。また、音波は、ミラーに直交する角度に近い角度で入射してもよい。しかし、音波がミラーに平行に入射すると、非可動ミラーから反射され、ファブリ・ペロー・エタロンを透過することが妨げられるため、検出器は波を検出しない。従って、入ってくる音響波はミラーに平行に入射しないことがある。
【0059】
励起システムは、1つまたは複数の波長を放射する1つのパルスレーザであることが好ましい。様々なレーザ波長のパルスレーザは、様々な効率を有する様々な材料に結合する。
【0060】
あるいは、励起システムが、各々が単一の波長を放射するいくつかのパルスレーザを備える。被検体の欠陥を検出するために、いくつかのパルスレーザを被検体の周りの様々な場所に配置することができる。
【0061】
装置の広帯域検出システムは、少なくとも第2のメンブレンフリーマイクロフォン、特に光学マイクロフォンを備えることができる。第1のメンブレンフリーマイクロフォンおよび第2のメンブレンフリーマイクロフォンは非平行に、特に少なくとも10°の角度で、好ましくは少なくとも45°の角度で、特に互いに直交して配置することができる。
【0062】
このような構成は、被検体の空間分解能を受け入れることができる超音波の空間分解能を提供することを可能にし、特に、被検体に対する検出された欠陥の空間分解能を観察することができる。
【0063】
好ましい実施形態では、メンブレンフリーマイクロフォンのレーザがプリズムを通して方向を変えることができる。これにより、メンブレンフリーマイクロフォンを好ましい方法で、特に最小限の空間要件で配置することが可能になる。広帯域検出システムの配置は、超音波の実際の広帯域検出システムが行われるエアスペース型ファブリペローエタロンが90°プリズムに直接取り付けられ、接着され、その結果、エアスペース型のファブリペローエタロンに入射するメンブレンフリーマイクロフォンのレーザビームがエアスペース型のファブリペローエタロン内のレーザビームと90°の角度を形成するようにすることができる。
【0064】
好ましくは、エアスペース型ファブリペローエタロンを通る透過レーザ強度ではなく、反射レーザビームが、検出信号としてモニタされる。
【0065】
好ましくはプリズムの使用とは無関係に、エアスペース型のファブリペローエタロンはレーザビームをエアスペース型のファブリペローエタロン内に送出するためのガイダンスとして機能する光ファイバと結合されてもよい。同じ光ファイバを使用して、エアスペース型のファブリペローエタロンからの反射信号を広帯域検出システム上に送出してもよい。
【0066】
代替的に、第2の光ファイバが、反射された又は透過された信号のために使用されてもよい。ラムダ/2プレート、ラムダ/4(Quarter-Wave-Plate(QWP))プレート、複屈折結晶、偏光子、偏光維持ファイバ、光サーキュレータ、光アイソレータおよびファラデー回転子などの偏光光学系を使用して、エアスペース型のファブリペローエタロンに入射し、そこから戻るレーザビームを分離してもよい。これらの構成要素は、プリズムとエアスペース型のファブリペローエタロンとの間、またはプリズムと光ファイバの1つとの間に配置することができる。例えば、ファブリペローエタロンからの入射及び出射レーザビームは、ファイバ、コリメータレンズ、複屈折結晶、QWP及びファブリペローエタロンを続いて配列することによって、2つの別個のレーザビーム経路で分離されてもよい。この特定の実施形態では、2つの別個の光ファイバを使用することができ、1つはファブリペローエタロンへのレーザビーム送達用であり、1つはレーザビームをメンブレンフリーマイクロフォンへ導くためである。
【0067】
特定の角度の下での被検体に対するメンブレンフリーマイクロフォンの配置は、装置の特定の使用によって引き起こされる。角度自体が空間分解能を高めることを可能にする。45°および/または90°における好ましい角度は、エアスペース型のファブリペローエタロンの内側のレーザビームの直線と、被検体の内側の超音波の伝播の直線との間に形成され、単純かつ再現可能な配置を提供し、さらに相関を単純化する。
【0068】
代替または相補的な実施形態では、装置の広帯域検出システムがメンブレンフリーマイクロフォン、特に光学マイクロフォンのアレイ、好ましくは2次元アレイを備えることができる。
【0069】
このような実施形態は、検出された超音波の空間分解能を提供することも可能にする。また、異なる位置で検出された超音波の並列評価を可能にする。ビーム形成または合成アパーチャアルゴリズムを実行することができ、必要であれば、被検体内の検出された欠陥のトポグラフィに関するアサーションを行うことができる。
【0070】
この実施形態は、1つの励起システムと、複数のマイクロフォンを有する検出システムとを備えることができる。以下にさらに説明するように、実施形態は、複数の励起レーザを有する1つの励起システムを備えることもできる。
【0071】
装置は、好ましくは励起システムでファイバ束に接続された励起ヘッドを備えることができる。ファイバ束のファイバは励起ヘッド内に1次元または2次元アレイで、好ましくは2次元アレイで配置することができ、またはファイバを被検体の上方に移動させて検査試料をスキャンすることができる。
【0072】
これらの構成は、広帯域超音波パルスを空間的に導入することを可能にする。このような構成は、医療目的での使用、例えば、画像診断での使用に有利である。
【0073】
レーザ励起システムは、様々な位置で超音波を励起するために、被検体を横切って移動させることができる。したがって、本発明の別の態様は、医療目的のための本明細書に記載されるような装置の使用を対象とする。
【0074】
好ましい実施形態では、励起ヘッドが患者の上に置かれるか、または固着されることができるパッドであってもよい。
【0075】
これにより、特定の欠陥がある被検体の領域、または被検体が動物または人間である場合には、特定の器官があるはずの被検体の領域に超音波パルスを導入することが可能になる。
【0076】
したがって、好ましい実施形態では、本明細書に記載される装置が、ファイバ束のアレイを有する励起ヘッドを有し、ファイバの各々はレーザパルスを提供することができ、メンブレンフリーマイクロフォンのアレイを有する。メンブレンフリーマイクロフォンおよびファイバの数量または配置は、必ずしも一致する必要はない。
【0077】
好ましい実施形態では、装置が少なくとも広帯域検出システムを遮蔽するハウジング要素を備える。ハウジングは、広帯域検出システムの少なくとも検出部分を覆う。したがって、広帯域検出システムの検出部分には直光が入らない。
【0078】
好ましくは、ハウジング要素が励起システムの少なくとも発光部をさらに備える。励起システムの発光部と同様に、広帯域検出システムの検出部分を覆うことは、非常にコンパクトな検査装置につながる。
【0079】
好ましくは、ハウジング要素が電気フィードバックループに接続されるインターロック要素を含む。電気フィードバックループはハウジング要素のインターロック要素と被検体との間の接続を監視し、ハウジング要素と被検体との間の断線が発生した場合には、励起システムのスイッチをオフにすることが好ましい。更に、インターロック要素は好ましくは機械的スイッチ、フィーラ、感知装置、例えば光感知装置又は音響感知装置であり、ハウジング要素が回収され又は被検体の表面から離れるとすぐに、励起レーザをインターロックする。機械的スイッチまたは押しボタンは、インターロック要素が被検体の表面との物理的接触を失うと直ちにインターロック要素が作動するように接続された、被検体の表面に押し付けるばね上に取り付けられた、少しの車輪または滑空機の実施形態を有することができる。これは、安全要件を改善する。
【0080】
特に、ハウジング要素は、励起システムを広帯域検出システムから分離するための分離要素を含む。分離要素は、第1の表面からの寄生波、例えば構造伝搬波または空気伝搬波が広帯域検出システムに到達するのを防止する少なくとも1つの壁を備える。これにより、被検体の欠陥や吸収体からの寄生波と超音波との干渉効果を回避することができる。さらに、前記測定された信号は前記処理部においてより容易に進行することができ、線形当てはめ、オフセット切断、ガウス当てはめ及びその他のようないくつかの評価技術を使用することができる。
【0081】
ピッチキャッチモードでの測定を行うことができるように、広帯域検出システム及び励起システムを配置することができ、又は、パルスエコーモードでの測定を行うことができるように検出システム及び励起システムを配置することができる。
【0082】
この構成により、被検体の片側から測定を行うことができる。
【0083】
好ましくは、励起システムまたは広帯域検出システムのいずれかは被検体上で移動可能である。広帯域検出システムが被検体上を移動している場合、励起システムは、被検体近くの固定位置に留まり、励起システムが被検体上を移動している場合、広帯域検出システムは、被検体近くの固定位置に留まる。このため、被検体の広い領域をスキャンすることができる。
【0084】
あるいは、励起システムおよび広帯域検出システムが被検体上で一緒に移動可能である。この構成は、様々なサイズの被検体をスキャンすることができる柔軟なテストシステムを含む。
【0085】
広帯域検出システムは、好ましくは励起ヘッド内またはその隣に配置され、好ましくはファイバ束の端部が広帯域検出システムを通って導かれる。換言すれば、検出システムのメンブレンフリーマイクロフォンは、励起および検出が同じ位置で行われるように、ファイバ束と組み合わせることができる。
【0086】
このような構成では、スペース要件が最小限に低減される。
【0087】
あるいは、励起ヘッドを広帯域検出システムのすぐ隣に、しかし隣接して配置する。励起ヘッドと検出器との間の好ましい距離は、5~10mmである。好ましくは、この実施形態のために、励起ヘッドと広帯域検出システムの両方が同じハウジング要素の内側に配置される。このピッチ-キャッチ実施形態は、一方では表面生成され、緩やかに進行する空気結合超音波と、他方では構造結合され、速く進行する超音波との間の、より良い時間的分離を可能にする。少なくとも50mmの厚さを有する被検体については、励起ヘッドと広帯域検出システムとの間の距離を増大させることができる。
【0088】
代替の実施形態では、広帯域検出システムおよび励起システムが透過モードでの測定が実行され得るように構成され得る。
【0089】
この構成は透過モードでの測定を可能にし、これは、例えば、細長い材料の製造におけるような、装置の静止した実施形態に有用であり得る。
【0090】
少なくとも1つの広帯域検出システムまたは励起システムは、接触流体を介して被検体と接触させることができる。
【0091】
いくつかの被検体は接触流体に関して感度が低く、従って、超音波パルスおよび超音波の伝達は、接触流体の使用を通して高めることができる。
【0092】
別の態様によれば、本発明は、特に本明細書に記載されるような装置によって実行される、被検体を検査するための方法を対象とする。
【0093】
この方法は、
励起システムによって被検体内に広帯域超音波パルスを生成させる工程と、
被検体内の広帯域超音波パルスを通して生成され、かつ、検出システムによって被検体によって放射される超音波を検出する工程と、
検出された超音波を処理部によって処理する工程とを含む。ここで、前記励起システムは変調され、好ましくは熱音響放射器またはパルスレーザの1つである。
【0094】
検出システムは、広帯域検出システムである。
【0095】
広帯域超音波パルスの生成、従って超音波の生成は装置及び/又は材料の構成とは無関係に、様々な種類の材料を検査するための方法を使用することを可能にする。
【0096】
好ましくは、検出された超音波が基準信号と相関され、相関指数が計算され、前記基準信号は生成された広帯域超音波パルスであることが好ましい。
【0097】
測定された信号を基準信号と相関させると、信号対雑音比が著しく増加し、材料の欠陥が明らかになる。
【0098】
有利には、基準信号が処理部に直接結合される。これは、広帯域超音波パルスの生信号を相関させること、および/または生信号に基づいて処理部をトリガすることを可能にする。
【0099】
放射された信号、すなわち広帯域超音波パルスと受信信号、すなわち超音波とを相関させることによって、またはサンプルとの相互作用の前後に受信信号を相関させることによって、雑音に埋もれた信号を取り出すことができる。
【0100】
広帯域超音波パルスは、コード配列、特に時間コード配列の形態で生成することができる。コード配列の使用は、応答におけるそれぞれの信号の検出を容易にする。換言すれば、広帯域超音波パルスと超音波との間の相関が容易になる。
【0101】
広帯域超音波パルスは、好ましくゴレイコード配列またはバーカーコード配列の形態で生成される。
【0102】
上述のように、これらの符号は、信号対雑音比の高い利得を約束する。
【0103】
コード配列、言い換えればパルスの時間系列を有することにより、材料欠陥の影響を受けたエコーを時間的に分離し、したがって検出することができる。符号化信号の励起または検出がうまく行える。
【0104】
好ましい実施形態では、広帯域超音波パルスの励起がアレイ状に、好ましくは二次元アレイで実行され、および/または超音波はアレイ状に、好ましくは二次元アレイで検出される。
【0105】
好ましくは、広帯域超音波パルスの励起が1つまたはいくつかの波長を放射する1つのパルスレーザによって実行される。様々なレーザ波長の熱は様々な効率で様々な材料に結合する。
【0106】
あるいは、広帯域超音波パルスの励起がそれぞれ単一の波長を放射するいくつかのパルスレーザによって実行される。被検体の欠陥を検出するために、いくつかのパルスレーザを被検体の周りの様々な場所に配置することができる。
【0107】
これにより、広帯域超音波パルスを被検体の領域に導入することができ、したがって被検体の別個の領域に超音波を生成することができる。
【0108】
レーザ励起システムによる超音波パルス生成は、被検体上に向けられた多くの光ファイバを引き続いて励起することによって実現することができる。これにより、広帯域超音波パルスが、被検体の表面上に分布した様々な位置で生成される。被検体内の欠陥の潜在的に不均一な分布のために、被検体から生成される超音波は、超音波パルス励起の位置に依存する。例えばガルバノメータミラーシステムの手段によって、励起レーザファイバ束システムをスキャンすることにより、検査装置を被検体の表面上に物理的に移動させる必要なく、高速検査装置を可能にし、これは、ある最小の測定時間に関連し得る。
【0109】
別の実施形態は、特定の空間パターンを同時に照射することを含む。励起レーザファイバ束システムは、例えば、10.000ファイバ以上から構成することができる。選択された数のこれらのファイバは同時に励起レーザパルスを搬送し、これによって特定の空間励起パターンを生成することができる。このパターンは後続のパルスに対して同じままであってもよいし、変化してもよい。
【0110】
アレイ、好ましくは2次元アレイにおける超音波の検出は、付加的にまたは代替的に、空間的な方法で、すなわち別個の領域にわたって特定のパターンを検出することを可能にする。
【0111】
少なくとも1つのメンブレンフリーマイクロフォン、特に本明細書に記載されるマイクロフォンを提供することが有利であり得る。超音波の空間検出が可能になるように、少なくとも第2のメンブレンフリーマイクロフォンを設け、第1のメンブレンフリーマイクロフォンに対してある角度をなして配置することができる。
【0112】
好ましい実施形態では、広帯域超音波パルスが5ps未満、好ましくは2μs未満、特に1μs未満の長さを有する。2つのパルス間の休止は、好ましくは5μs未満、好ましくは2μs未満、特に1μs未満である。このような短いパルスおよび/または休止は時間的および符号化励起を可能にし、さらにSN比を増加させる。
【0113】
超音波とは、米国国家規格協会の周波数が20kHzを超える音によると、周波数が16kHzを超える音と定義されることが多い音のことである。
【0114】
公知技術による空気結合圧電トランスデューサを使用して、例えば、10個のパルスおよび10個のパルス間の休止からなるコード配列を発光および検出すると、公知技術の圧電トランスデューサでは既に下限にある20μsのパルスおよび休止期間を考慮して、400μsの配列長が得られる。これは、配列の単一パルスに対しては25kHzの繰り返し速度を、配列全体に対しては2.5kHzの繰り返し速度をもたらす。25kHzの繰り返し率は超音波の下限に近いため、SN比を上げるだけでは不十分である。
【0115】
ブロードバンドの超音波パルスと長さ5μs未満の休止を持つと、100kHz以上の周波数となり、測定可能な超音波の帯域幅が増加し、SNRが増大する。
【0116】
さらに、配列全体の高い繰り返し率は、測定速度を向上させる。
【0117】
本方法の好ましい実施形態では、本明細書に記載の方法ステップが、第1の測定点について行われ、少なくとも第2の測定点について繰り返される。各測定点に関する相関指数が計算され、好ましくは、各相関指数が装置上、好ましくは表示部上にプロットされる。
【0118】
これにより、被検体上の空中または空間の概観が可能になり、特に、被検体内で見つかった欠陥の空間座標を定義することが可能になる。
【0119】
処理部は、基準信号を、各測定点上の測定された超音波の時間トレースと相関させる。この相関の出力は、測定点ごとの相関指数である。ピアソン相関係数計算の場合、値は0から1に達する。0の値は、比較されたパラメータ間に一致がないことを示す。1の値は100%の一致を示す。算出された相関指数はC-スキャンとして表示部され、振幅は相関指数の値によって置き換えられる。データを表示する他の方法は、特定の測定状況に従って選択されてもよく、これには1、2、または3Dデータプロットおよびグラフフォーマット、色分けされたプロット、および他が含まれる。
【0120】
広帯域超音波パルスならびに超音波は、好ましくはフーリエ変換を使用することによって、スペクトル信号に変換することができ、前記スペクトル信号は、相関指数を提供するために互いに相関される。
【0121】
フーリエ変換を用いることにより、検出された超音波はスペクトル信号に伝達される。上記で説明した時間的相関と同様に、この参照スペクトルは各測定点のスペクトルと相関があり、その結果、各測定点の相関指数が得られる。この指標値は、C-Scanに従って表示することができる。
【0122】
前述の信号解析および信号相関は、広帯域検出システムによって捕捉される信号長全体、またはスペクトル帯域幅全体に対して実行されてもよい。あるいは、信号長またはスペクトル帯域幅が好ましくはオペレータによって選択された開始点および終了点によって切り捨てられてもよい。
【0123】
さらに、被検体からの透過または反射または放射された超音波をスペクトル解析することによって、様々な特性が様々な周波数で広帯域超音波パルスと相互作用するので、関心対象の様々な特性(例えば、層厚、層間剥離、ディスボンド、多孔度、溶接品質、接着層品質および他の特性)を観察することができる。従来の狭帯域空気結合PETでは、広帯域システム(広帯域超音波パルスおよび広帯域検出システム)では、異なる周波数で被検体のスキャンを、後で数回実行しなければならないが、単一のスキャンのみで足りる。
【0124】
さらに、この方法は、材料欠陥によって生じ得るスペクトルの変化を明らかにすることを可能にする。従って、音響分光法を介して被検体を調べる方法である。すなわち、材料内部の欠陥又は材料特性によって誘発されるような、透過(反射)周波数スペクトルの変化を測定する方法である。また、この方法は時間信号に時間シフトをもたらす粗い表面の制限を克服し、従ってピアソン係数を介して時間系列相関を制限することを可能にする。この方法はパルスエコーモード、ピッチキャッチモードまたは透過モードのいずれかで実行できる。
【0125】
上記各モードは利点を有する。透過モードでは、センサと検出器の両方が被検体の反対側に配置されるのに対して、パルスエコーモードまたはピッチキャッチモードでは測定は片側アクセスで行われる。各モードの使用は、とりわけ、被検体の形状に依存する。
【0126】
この方法は、接触流体を使用することによって実行することができる。特に、被検体内の広帯域超音波パルス、または広帯域超音波パルスを介して生成される超音波は、接触流体を介して少なくとも部分的に透過することができる。
【0127】
接触流体の使用は、広帯域超音波パルスまたは超音波の透過を強化する。これは、第1に、空気中の非常に高い超音波周波数の実質的な吸収のためであり、第2に、被検体と空気との間の超音波インピーダンス不整合のためである。
【0128】
圧力勾配の検出の他に、検出装置は、検出装置の検出原理による温度勾配を測定するために使用することができる。屈折率は光媒体の圧力と温度の両方に依存する。したがって、圧力および温度の変化の両方が、検出装置で測定される光路長を変化させる。
【0129】
好ましい実施形態では、この方法は、励起システムおよび/または広帯域検出システムが被検体上を移動している間に実行される。広帯域検出システムが被検体上を移動している場合、励起システムは、被検体の近くの固定位置に留まり、または被検体が励起システムの近くの固定位置に留まる。このため、被検体の広い領域をスキャンすることができる。そのような構成は、異なるサイズの被検体をスキャンすることができる柔軟な検査システムを備える。
【0130】
以下、実施の形態および図面によって、本発明のさらなる利点を説明する。以下の図面では、概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0131】
図1】被検体を検査するための装置の第1の実施形態を示す。
図2】被検体を検査するための装置の第2の実施形態を示す。
図3】時間コード配列を示す。
図4】いくつかのファイバを有するファイバ束を示す。
図5】被検体を検査するための装置の第3の実施形態を示す。
図6】被検体を検査するための装置の第4の実施形態を示す。
図7】被検体を検査するための装置の第5の実施形態を示す。
図8】被検体を検査するための装置の第6の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0132】
図1は、被検体40を検査するための装置10の第1の実施形態を示す。装置10は、励起システム13としてのパルスレーザと、検出システム20としての光学マイクロフォンとを含む。励起システム13と検出システム20とは、透過モードで配置されている。励起システム13は励起波12を変調し、続いて広帯域超音波パルス12’を変調するための変調器11を含む。変調器11は、励起波12及び/又は広帯域超音波パルス12’を時間的及び/又は空間的に変調することができる。従って、被検体は、前記励起システム13と前記検出システム20との間に配置される。検出システム20及び処理部30への電気的接続を有する励起システム13は、処理部30とワイヤを介して接続されている。処理部30は、表示部35にワイヤを介して電気的に接続される。
【0133】
被検体40内には、材料欠陥41が示されている。前記材料欠陥41は例えば、層間剥離、多孔度、または不均一な材料分布によって引き起こされ得る。
【0134】
図1の装置10は、以下のように動作する(1つの基本的な動作原理):
励起システム13は、励起波12-パルスレーザの場合にはパルスレーザ光が出射されて-この場合には空気である音響伝播媒体中に出射する。パルスレーザビームは被検体40の第1の表面42に衝突し、熱弾性効果により、または表面アブレーション後の急速な圧縮および応力緩和により、広帯域超音波パルス12’を生成する。広帯域超音波パルス12’は被検体40を通って伝播し、被検体40内の材料欠陥41によって影響を受ける可能性がある。広帯域超音波パルス12’は材料欠陥41または関心領域と干渉することによって誘発され、超音波21を生成し、一方、被検体40を通って被検体40の第2の表面43に伝播する。超音波21は、第2の表面43で被検体40から出て、周囲の音響伝播媒体に入る。その後、超音波21は検出システム20によって検出され、この検出システムはメンブレンフリー光学マイクロフォンである。この場合、メンブレンフリー光学マイクロフォンは、EP3173781A1に記載されているような光学マイクロフォンである。
【0135】
したがって、光学マイクロフォンは、超音波21を介して生じる音響伝播媒体の密度の変化を検出する。
【0136】
代替の実施形態では、音響伝播媒体が例えば、不活性ガスまたは液体とすることができる。
【0137】
処理部30はハードウェアおよびソフトウェアからなり、励起システム13をトリガするために使用され、信号励起ならびに信号検出および変調を整合させる。詳細には、処理部30のハードウェアが信号生成器と、信号処理部を有する信号解析ハードウェアとを備える。
【0138】
処理部30は、測定されたデータに基づいて相関を検査することができる。この相関は、時間的、空間的又はスペクトルデータ分析又は信号分析に基づくことができる。相関に使用される基準信号は、1)励起信号自体、2)サンプルAの測定データがサンプルBと相関するC-スキャンデータまたは時間信号であり得る異なるサンプルのスキャンデータ、または3)励起システム13が規定されたコード配列で処理部30によってトリガされる検出装置20で測定される超音波応答(例えば、図3参照)であり得る。続いて、励起システム13は、コード配列に従って第1の超音波パルス12’を生成する第1の励起波12を、被検体40の第1の測定点(材料欠陥を有さないと考えられる)上に送る。
【0139】
前述の相関選択肢のポイント3)に関して、相関は以下のように実行される:
被検体40の超音波応答、すなわち、生成された超音波41は、基準信号として保存される。
【0140】
被検体の各点で測定された時間信号は、SNRを増加させるために基準信号と相関される。
【0141】
スペクトル分析を実行するために、前記測定点で記録された超音波応答のスペクトルが参照信号として使用される。この基準信号は、被検体の各点で測定されたスペクトルと相関させることができる。これらのステップは、複数の測定点について繰り返すことができる。信号形状の違いは、時間的および空間的方向の両方で、より低い相関指数をもたらす。相関指数が低い場合は、基準信号と比較された信号の差異を示す。基準信号が健全な構造を表すと仮定される場合、低い相関指数は欠陥を示す。
【0142】
広帯域超音波パルス12’が、例えば、励起ヘッドを有するアレイで生成される場合、複数の測定点の測定を同時に行うことができ、好ましくは、アレイでも検出することができる。これにより、プロセスが短縮され、複数の信号の評価を同時に行うことができる。
【0143】
表示部35は、データ記録およびさらなる分析に使用されるコンピュータの一部とすることができる。さらに、処理部30は、コンピュータの一部であってもよい。
【0144】
図2は、被検体140を検査するための装置100の第2の実施形態を示す。装置100は、励起波112を放射する励起システム113としてのパルスレーザと、検出システム120としての光学マイクロフォンとを備える。励起システム113と検出システム120は、被検体の片側にピッチキャッチモードで並んで配置される。検出システム120および励起システム113は、処理部130に電気的に接続される。処理部130は、表示部135と共にワイヤを介して電気的に接続される。
【0145】
あるいは励起システム113および検出システム120をパルス-エコーモードで配置することができ、これは検出システム120を励起システム113の光路内に直接配置することができることを意味する。この実施形態では、被検体140の第1の表面142から反射された超音波122と、材料欠陥141によって影響された超音波121とが、検出システム120内で検出可能である。検出システム120及び処理部130への電気的接続を有する励起システム113は、処理部130とワイヤを介して接続される。処理部130は、ワイヤを介して、または無線技術によって、表示部135と電気的に接続される。
【0146】
図1で説明したような装置100の動作原理および代替例は、図2の装置100に適用可能であり、その差は、図2にかかる第2の実施形態において、検出された超音波121の少なくとも一部が図1にかかる第1の実施形態のように反射され、透過されないことにある。
【0147】
超音波121は被検体140を通って伝播し、被検体140内の材料欠陥141によって影響を受けることができる。超音波121は、材料欠陥141との干渉、すなわち反射によって誘起され、被検体140を通って被検体140の第2の表面143に伝播する間に変化する。変更された超音波121は、再び第1の表面142で被検体140を出て、周囲の音伝播媒体に入る。その後、超音波121は、検出システム120によって検出され、検出システム120は、その場合、メンブレンフリー光学マイクロフォンである。この場合、メンブレンフリー光学マイクロフォンは、EP3173781A1に記載されているような光学マイクロフォンである。
【0148】
図3は、励起システム13(図1及び図2参照)によって放射される可能な時間コードを示す。このコードは、定義されたパルスの数、定義されたパルス当たりの長さL、L’、L’’、L’’’、定義された各パルス間の一時停止P、P’と、定義されたパルス形状とで構成されている。
【0149】
使用するパルス長は可変である。選択したパルス長が信号周波数の期待される範囲と同じ大きさであれば、信号対雑音比の最も顕著な改善を観測することができる。信号周波数は逆パルス長に比例することができる。すなわち、短いパルスは広い周波数の信号をもたらすことになるが、長いパルスは、第1に、より低い周波数を含む信号をもたらすことになる。
【0150】
パルス配列は、それぞれが同じパルス長を有するか、または異なるパルス長を有する、規定された数のパルスからなることができる。パルス間の休止は、各休止又は交互の持続時間に対して一定の持続時間を有することができる。
【0151】
図4は、空間的に符号化された信号を実現するための装置10、100(図1または図2)の上述の実施形態に適用可能ないくつかの単一ファイバ16を有するファイバ束16’を示す。空間符号化信号は変調器11、111によって生成されるが、単一ファイバ16のいくつかはレーザビーム(暗いファイバ)で照射され、単一ファイバ16のいくつかは照射されない(明るいファイバ)。ファイバ束16’は、被検体(図示せず)の表面に向けられ、特定の空間励起パターンを生成するために使用される。
【0152】
図5は、上記の実施形態(図1または図2)で基本的に説明した、被検体240を検査するための装置200の第3の実施形態を示す。また、装置200の基本的な動作原理は特に図2図4に記載されており、励起システム213は、励起波212としてレーザパルスを生成させる。光学装置215、例えばコリメータは、レーザビーム214をファイバ束216’の各単一ファイバ216に向け直す。ファイバ束216’は例えば、腹腔鏡装置、内視鏡装置、または胸腔鏡装置とすることができる医療装置217を通って導かれる。さらに、レーザビーム214は、いくつかの単一ファイバ2016’に向け直される。広帯域超音波パルス212’は、レーザビーム214によって生成され、好ましくはカップリング剤218、例えば液体を使用して被検体240に結合され、広帯域超音波パルス212’を生成する。被検体240内で、生成された広帯域超音波パルス212’は、熱弾性膨張によって超音波221を生成している吸収器241によって吸収される。この超音波221は、検出装置240で反射され、検出される。検出された信号は、コンピュータの表示部235に表示される。コンピュータは、上記処理部をコンピュータに備える。
【0153】
図6は被検体240を検査するための装置250の第4の実施形態を示し、これは、基本的に、開示された実施形態200(図5)の特徴のいくつかと、上述の動作原理との組み合わせを説明する。さらに、装置250の機能性は、基本的に図2図5に記載されており、励起システム243は、パルスレーザビーム244を放射するレーザである。パルスレーザビーム244は、ガルバノメータミラーシステム245に、後でレーザ束216’に送られる。レーザ束216’は、被検体240の表面に向けられる。これにより、広帯域超音波パルスは、(図5に記載されるように)被検体240の表面にわたって分布された様々な位置で生成される。被検体240内の欠陥の潜在的に不均一な分布のために、被検体240から生成される超音波は、超音波パルス励起の位置に依存する。例えばガルバノミラーシステム245の手段によってレーザファイバ束216’をスキャンすることは、被検体240の表面上で検査装置を物理的に移動させる必要なしに、高速検査装置250を可能にする。
【0154】
この実施形態は一度に、同時に、被検体240上の特定の空間パターンを照射することを可能にする。レーザファイバ束216’は例えば、10.000本のファイバからなる。選択された数のこれらのファイバはレーザパルスを同時に運ぶことができ(図4参照)、これにより、特定の空間励起パターンを生成することができる。このパターンは後続のレーザパルスに対して同じままであってもよいし、変化してもよい。
【0155】
図7は被検体340を検査するための装置300の第5の実施形態を示し、これは、基本的に、開示された実施形態10、100、200、250(図1図6)の特徴のいくつかと、上述の動作原理との組み合わせを説明する。加えて、装置300の機能性は基本的には図1から図6に記載されている。励起システム313が励起波312としてレーザパルスを生成し、これは、最終的に広帯域超音波パルス312’を生成し、被検体340の第1の表面342において、または被検体340内の吸収器341によって、吸収および超音波321に変換される。ハウジング要素317は、周囲領域を反射レーザ光から遮蔽する。ハウジング要素317は、被検体340の電気フィードバックループ接続318を介した処理部330への接触を保証するために、被検体340に接続されたインターロック要素319を備える。ハウジング要素317が、被検体340と切断される場合、処理部330への信号は、励起システム313のトリガを停止する。検出された信号は、コンピュータの表示部335に表示される。前記インターロック要素319は、前記被検体340と前記ハウジング要素317との間の距離を測定するための、レーザ距離センサのような距離測定センサを備えることができる。
【0156】
図8は被検体440を検査するための装置400の第6の実施形態を示し、これは、基本的に、上述の実施形態のさらなる実施形態を説明する(図5図7)。さらに、装置400の機能は、基本的に図2から図7および上述の動作原理に記載されている。励起システム413及び広帯域検出システム420は、ハウジング要素417内に配置され、ファイバ束416’を介して処理部430に接続される。ハウジング要素417は、励起システムを広帯域検出システムから分離するための分離要素443、例えば壁を備える。励起システム413は励起波412としてレーザパルスを生成し、これは、超音波パルス412’として生成し、その後伝搬する。超音波パルス412’は、被検体440の第1の表面442において、または被検体440内の吸収器441によって、吸収され、超音波421に変換される。分離要素417は第1の表面442からの寄生波、例えば、構造伝播波または空気伝播波が広帯域検出システム420に到達するのを防止する。ハウジング要素417は摺動接点のような接点要素419を備え、これは、被検体440の電気フィードバックループ接続418を介した処理部430への接触を保証するために、被検体440に接続される。ハウジング要素417が被検体440から離れると、処理部440への信号は、励起システム413のトリガを停止する。検出された信号は、コンピュータの表示部435に表示される。前記接触要素またはインターロック要素419は、前記被検体340と前記ハウジング要素317との間の距離を測定するための、レーザ距離センサのような距離測定センサを備えてもよい。
【0157】
装置10、100、200、250、300、400の実施形態では、パルスレーザは熱音響送信機に交換可能である。熱音響送信機は金属化ガラス表面の短時間加熱によって超音波パルスを生成し、それによって周囲のガス分子の移動を誘起する。熱音響送信機は、最小1μsの信号持続時間を有する広帯域「ディラック形状」の短絡広帯域超音波パルスを放射する。放射されるパルスは、単一パルス又はパルス配列とすることができる。これらのパルスは、ガス中を伝搬して被検体に入る。以降の信号処理は、図1から図8の説明に従う。
【0158】
特許請求の範囲および参照リストは、本開示の一部である。
【符号の説明】
【0159】
10,100,200,250,300,400 装置、11,111 変調器、12,112,212,312,412 励起波、12’,112’,212’,312’,412’ 広帯域超音波パルス、13,113,213,243,313,413 励起システム、16,216,416 (単一)ファイバ、16’,216’,246’,416’ ファイバ束、20,120,220,320,420 検出システム、21,121,221,321,421 超音波、30,130,330,430 処理部、35,135,235,335,435 表示部、40,140,240,340,440 被検体、41,141 材料欠陥、42,142,342,442 第1の表面、43,143 第2の表面、443 分離要素、122 反射超音波、214,244 レーザ光、215 光デバイス、217 医療機器、218 カップリング剤、241,341,441 吸収器、245 ガルバノミラーシステム、317,417 ハウジング要素、318,418 フィードバックループ接続、319,419 インターロック要素、L-L’’’ パルス当たりの異なる長さ、P,P’ 各パルス間の異なる一時休止。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8