(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】断熱部材を含む電池モジュール及びこれを含む電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 10/658 20140101AFI20241015BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20241015BHJP
H01M 50/251 20210101ALI20241015BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20241015BHJP
H01M 50/503 20210101ALI20241015BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20241015BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M50/249
H01M50/251
H01M50/505
H01M50/503
H01M50/204 401H
H01M50/204 401F
(21)【出願番号】P 2022504694
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 KR2020012841
(87)【国際公開番号】W WO2021071138
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0125091
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ボム・チョ
(72)【発明者】
【氏名】スン・ジュン・キム
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-518638(JP,A)
【文献】特開2018-116805(JP,A)
【文献】特開2014-146613(JP,A)
【文献】特表2016-503228(JP,A)
【文献】特開2013-246920(JP,A)
【文献】特開2015-214821(JP,A)
【文献】特開2013-117310(JP,A)
【文献】特開2015-153616(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221004(WO,A1)
【文献】特開2018-098074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60 -10/667
H01M 50/00 -50/198
H01M 50/20 -50/298
H01M 50/50 -50/598
E04B 1/62 - 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが隣接して配列されて積層された電池セルスタックと、
前記電池セルスタックの外側に配置されたモジュールケースと、
前記電池セルの電気的連結のためのバスバーと、
前記バスバーに付加された断熱部材と、
を含
み、
前記断熱部材は、熱膨張特性を有する素材を含む、電池パック。
【請求項2】
複数の電池セルが隣接して配列されて積層された電池セルスタックと、
前記電池セルスタックの外側に配置されたモジュールケースと、
前記電池セルの電気的連結のためのバスバーと、
前記バスバーの外側に配置される断熱部材と、
を含み、
前記断熱部材は、熱膨張特性を有する素材を含み、
前記バスバーには、前記電池セルから突出した電極リードが通過することができるようにスリットが形成され、
前記断熱部材は、前記電極リードが通過するバスバーのスリットを完全に塞げるサイズに膨張する、電池パック。
【請求項3】
複数の電池セルが隣接して配列されて積層された電池セルスタックと、
前記電池セルスタックの外側に配置されたモジュールケースと、
前記電池セルの電気的連結のためのバスバーと、
前記バスバーに付加された断熱部材と、
を含み、
前記断熱部材は、電池パックの発火の際に発泡状に変形される性質を有する
、電池パック。
【請求項4】
複数の電池セルが隣接して配列されて積層された電池セルスタックと、
前記電池セルスタックの外側に配置されたモジュールケースと、
前記電池セルの電気的連結のためのバスバーと、
前記バスバーに付加された断熱部材と、
を含み、
前記断熱部材は、電極リードが通過するバスバーのスリットを完全に塞げるサイズに膨張する
、電池パック。
【請求項5】
複数の電池セルが隣接して配列されて積層された電池セルスタックと、
前記電池セルスタックの外側に配置されたモジュールケースと、
前記電池セルの電気的連結のためのバスバーと、
前記バスバーに付加された断熱部材と、
を含み、
前記断熱部材は、高弾性素材のパウチの内部に熱膨張特性を有する素材を収容した形態である
、電池パック。
【請求項6】
複数の電池セルが隣接して配列されて積層された電池セルスタックと、
前記電池セルスタックの外側に配置されたモジュールケースと、
前記電池セルの電気的連結のためのバスバーと、
前記バスバーに付加された断熱部材と、
を含み、
前記断熱部材は、熱膨張シート形態である
、電池パック。
【請求項7】
前記断熱部材は、黒鉛系素材を含む、請求項1または2に記載の電池パック。
【請求項8】
前記断熱部材は、シリコン素材を含む、請求項1または2に記載の電池パック。
【請求項9】
複数の電池セルが隣接して配列されて積層された電池セルスタックと、
前記電池セルスタックの外側に配置されたモジュールケースと、
前記電池セルの電気的連結のためのバスバーと、
前記バスバーの外側に配置される断熱部材と、
前記電池セルスタックの上部及び下部のそれぞれに配置される上部板及び下部板と、
前記電池セルスタックの両側面に配置され、前記バスバーと対向する側面板と、
を含み、
前記断熱部材は、熱膨張特性を有する素材を含み、
前記バスバーには、前記電池セルから突出した電極リードが通過することができるようにスリットが形成され、
前記断熱部材は、前記電極リードが通過するバスバーのスリットを完全に塞げるサイズに膨張し、
前記側面板のうち少なくとも第1側面板の内側には前記断熱部材が位置する、電池パック。
【請求項10】
電池セルスタックと側面板のうち第1側面板との間に断熱部材ユニットとして前記断熱部材が配置される、請求項9に記載の電池パック。
【請求項11】
前記断熱部材は、前記電池セルスタックと前記側面板のうち第1側面板との間に配置される一体型構造を有する、請求項9に記載の電池パック。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の電池パックを含む、デバイス。
【請求項13】
前記デバイスは、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、及び電力貯蔵装置のいずれか一つである、請求項12に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2019年10月10日付の韓国特許出願第2019-0125091号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容はこの明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は断熱部材を含む電池モジュール及びこれを含む電池パックに関し、具体的には、電極リードと連結されるバスバーの外側に断熱部材を付け加えることにより、電池モジュールの発火による火炎を事前に遮断することができる技術に関する。
【背景技術】
【0003】
二次電池は適用される分野または製品に要求される出力及び容量によって異なる構成を有している。例えば、携帯電話、デジタルカメラ、ノートブック型コンピュータなどのような小型モバイル機器は、当該製品の小型軽薄化の傾向に従ってそれに相応するようにデバイス1台当たり一つの電池セルまたは10個前後の電池セルを含んでいる小型電池パックが使われている。一方で、電気自転車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車などのような中大型デバイスには高出力及び大容量の必要性によって多数のバッテリーセルを電気的に連結した中大型電池パックが使われている。
【0004】
一般に、電池パックのサイズ及び重量は当該中大型デバイスなどの収容空間及び出力などに直接的な関連性があるので、製造業者は小型でありながら軽量の電池パックを製造しようと努力している。
【0005】
前記二次電池は、充放電の際に熱が発生して温度が増加し、異常作動状態または外部衝撃によって内部構造体が損傷される場合、燃焼及び発火を引き起こすことができる。
【0006】
特に、二次電池用電池セルにおいて電極端子部位は多くの熱が集中する部分であり、電池セルの高温化現象による発火の際に外部に火炎が流出することができる通路になる。
【0007】
一般に、電池パックは、内部に収容された電池セルまたは電池モジュールの電気的連結のためのバスバー、及び外部システムとの連結のためのコネクターなどが結合され、電池パックの内部の熱を排出するための放熱ファンを備えるなど、開放構造になる場合が多い。
【0008】
このように、電池パックは内部と外部との間の物質移動を完全に遮断しにくい構造であるので、電池パックの内部で発生した火炎が隣接区域に伝達されやすく、電池パックの外部の空気が電池パックの内部に供給されて発火状態が持続することができる。
【0009】
これに関連して、
図1は従来の電池パックから上部板を除去した状態の平面図、及び側面板を除去した状態の側面図を示す。
【0010】
図1を参照すると、電池パックは、電池パックケース11の内部に7個の電池モジュール21、22、23、24、25、26、27を収容している形態である。
【0011】
電池モジュール23を拡大した拡大図を参照すると、電池モジュール23は、複数の電池セルを含む電池セルスタックの外面にモジュールケース31が配置され、前記電池セルから延びた電極リード33はバスバー32に結合されて電池セル間の電気的連結をなすことができる。
【0012】
例えば、電池モジュール24が異常作動によって発火する場合、火炎は隣接した電池モジュールに矢印方向に伝達され、熱の拡散によってすべての電池モジュールを使うことができなくなるのみならず、火災による危険が増加するので安全性の問題が高くなることができる。
【0013】
したがって、最初に発火した電池モジュールから火炎が拡散しない構造が必要である。
【0014】
よって、関連業界では電池モジュール及び電池パックの発火及び熱拡散を防止するための多様な方法を模索している。特許文献1は、ケース内に複数の単電池が配置され、隣接した単電池の間には上下方向に延びた冷気通路を有するバッテリーパックを開示しており、前記バッテリーパックは、前記冷気通路の上方に、断熱性を有し、所定温度以上で熱膨張して冷気通路に流入する熱膨張性黒鉛から構成される発泡断熱材を備えることで、単電池間の熱暴走が拡がることを防止している。
【0015】
前記特許文献1は冷気通路が形成された電池パックに使用する技術であり、単電池の間が離隔するように配置される形態であるが、電池の容量及びエネルギー密度が減少する問題がある。
【0016】
特許文献2は、複数の電池モジュールを隣接して配置する電源装置に関し、電池を収納する耐火断熱ケースが金属板と断熱プレートの積層構造からなることにより、火炎及び熱を遮断することができる技術に関するものであり、個別電池セルが密着して配列された電池セルスタック構造を含む電池モジュールに適用しにくい構造である。
【0017】
特許文献3は、セルモジュール組立体、第1温度センサー、パックケース及び制御ボードを含むバッテリーパックに関し、電池内部の温度を制御するために追加的な温度センサー及び制御ボードを含むという点で軽量及び小型電池パックを製造しにくい形態である。
【0018】
このように、電池の容量減少及び電池モジュール及び電池パックのサイズ増加が問題にならなく、電池モジュール及び電池パックの発火及び爆発による火炎が隣接した電池モジュールに拡散することを防止することができる技術の必要性が高い実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】特開第2018-098074号公報
【文献】特開第2013-251127号公報
【文献】韓国公開特許第2018-0085123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は前記のような問題を解決するためのものであり、電極リードの電気的連結のためのバスバーの外側に断熱部材を配置するか、電池パックケースの少なくとも一部の内部に熱膨張特性を有する断熱部材を適用することにより、発火及び火炎が発生した電池モジュール及び電池パックの内部に燃焼のための最少酸素量より多い酸素が流入することを防止し、前記電池モジュール及び電池パックの内部の熱及び火炎が外部に拡散することを防止することができる電池モジュール及びこれを含む電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
このような目的を達成するための本発明による電池モジュールは、複数の電池セルが隣接して配列されて積層された電池セルスタックと、前記電池セルスタックを固定するように外面に配置されたモジュールケースと、前記電池セルから突出した電極リードの電気的連結のためのバスバーと、前記バスバーの外側に配置される断熱部材とを含む構造を有することができる。
【0022】
前記断熱部材は、熱膨張特性を有する素材を含む構造を有することができる。
【0023】
前記断熱部材は、電池モジュールの発火の際に発泡状に変形される性質を有することができる。
【0024】
また、前記断熱部材は、前記電極リードが通過するバスバーのスリットを完全に塞げるサイズに膨張することができる。
【0025】
前記断熱部材は、高弾性素材のパウチの内部に熱膨張特性を有する素材を収容した形態であることができる。
【0026】
もしくは、前記断熱部材は、熱膨張シート形態であることができる。
【0027】
前記断熱部材は、黒鉛系素材を含むことができる。
【0028】
本発明は前記電池モジュールを2個以上含む電池パックを提供し、前記電池パックは、単位電池モジュールを含む電池モジュールアセンブリーと、前記電池モジュールアセンブリーの上部及び下部のそれぞれに配置される上部板及び下部板と、前記電池モジュールアセンブリーの両側面に配置され、電池モジュールのバスバーと対向する側面板とを含み、前記側面板の内側には断熱部材が位置する構造を有することができる。
【0029】
前記個別単位電池モジュールと側面板との間に断熱部材ユニットが配置される構造の断熱部材を含むことができる。
【0030】
もしくは、前記断熱部材は、前記電池モジュールアセンブリーと側面板との間に配置される一体型構造を有することができる。
【0031】
また、本発明は、前記電池パックを含むデバイスを提供し、前記デバイスは、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、及び電力貯蔵装置のいずれか一つであることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】従来の電池パックから上部板を除去した状態の平面図、及び側面板を除去した状態の側面図である。
【
図3】断熱部材が付加された電池モジュールの部分断面図である。
【
図4】
図3の断熱部材が膨張した状態を示す図である。
【
図5】断熱部材が側面板に付加された電池パックの部分断面図である。
【
図6】
図5の断熱部材が膨張した状態を示す図である。
【
図7】電池パックに第1実施例による断熱部材が付加された状態を示す側面図である。
【
図8】電池パックに第2実施例による断熱部材が付加された状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面に基づいて本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施することができる実施例を詳細に説明する。ただ、本発明の好適な実施例の動作原理を詳細に説明するにあたり、関連した公知の機能又は構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不必要にあいまいにする可能性があると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。
【0034】
また、図面全般にわたって類似の機能及び作用をする部分に対しては同じ図面符号を使う。明細書全般で、ある部分が他の部分と連結されていると言うとき、これは直接的に連結されている場合だけではなく、その中間に他の素子を挟んで間接的に連結されている場合も含む。また、ある構成要素を含むというのは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0035】
また、従属項に記載した限定事項はこの明細書に記載されたすべての実施例に適用されることができる。
【0036】
構成要素を限定するか付け加えて具体化する説明は、特別な制限がない限り、すべての発明に適用されることができ、特定の発明に限定されない。
【0037】
本発明を図面を参照しながら詳細な実施例に基づいて説明する。
【0038】
本発明は、電池モジュール及び電池パックの内部で発火する場合、火炎が拡散することを防止するために、断熱部材が付加された構造の電池モジュール及び電池パックに関するものであり、具体的には、前記電池モジュールは複数の電池セルが隣接して配列されて積層された電池セルスタック、前記電池セルスタックを固定するように外面に配置されたモジュールケース、前記電池セルから突出した電極リードの電気的連結のためのバスバー、及び前記バスバーの外側に配置される断熱部材を含む構造を有することができる。
【0039】
前記電池モジュール内部の温度が増加するとき、電極タブ及び電極リードの温度が最も高く上昇するので、電極タブ及び電極リードで発火可能性が非常に高い。
【0040】
また、前記電極リードと結合して電気的に連結されたバスバーの温度も急激に増加する。
【0041】
したがって、前記断熱部材を前記バスバーの外側に密着して配置することにより、電池モジュール内部の熱が外部に排出されることを抑制する効率性を最大化させることができる。
【0042】
これに関連して、
図2は本発明による電池パックの斜視図を示す。
【0043】
図2を参照すると、電池パック100は、内部に複数の電池モジュール(図示せず)が直列及び/または並列に連結されるように配列され、このような配列のために電池モジュールから電極リードが延びる両側端にはバスバーフレーム及びバスバーが位置して電極リードが電気的に連結される。
【0044】
一般に、電池パックは、使われるデバイスの形態、出力条件などを考慮して、モノフレーム形またはUフレーム形または板形などの多様な形態の電池パックケースを備えることができる。
【0045】
電池パック100は、単位電池モジュールを含む電池モジュールアセンブリーの上部に位置する上部板111、電池モジュールアセンブリーの下部に位置する下部板112、及び両側面に配置される側面板113を含み、前記上部板、下部板及び側面板を除いた電池パックの長手方向の両端にはエンドプレートが結合されて密封される。
【0046】
しかし、電池パックは内部から発生する熱を外部に排出する放熱機能を有することができるが、電池パックの完全な密封は難しい状態である。
【0047】
図3は断熱部材が付加された電池モジュールの部分断面図、
図4は
図3の断熱部材が膨張した状態を示す図である。
【0048】
図3及び
図4を参照すると、電池モジュール210は、複数の電池セルが隣接して配列されて積層された電池セルスタック(図示せず)を固定するように、外面にモジュールケース213を含み、前記複数の電池セルから突出した電極リード212が通過することができるようにスリットが形成されたバスバー211が配置される。
【0049】
バスバー211の外側には断熱部材220が配置され、断熱部材220は熱膨張特性を有する素材を含む。
【0050】
具体的には、前記断熱部材は電池モジュールの発火の際に発泡形態に変形しながら膨張する性質を有するものであることができ、膨張した断熱部材によって外部から流入する酸素が供給される通路を塞げて燃焼に必要な酸素の流入を最少化することができる。また、前記断熱部材の膨張によって表面積が増加するので、火炎及び熱が拡散することを効果的に防止することができる。
【0051】
例えば、前記断熱部材は電極リードが通過するバスバーのスリットを完全に塞げるサイズに膨張することができ、前記スリットを通して酸素が電池モジュールの内部に流入することを最少化することができる。
【0052】
前記断熱部材は膨張しながら内部に微細気孔が形成されることができ、前記微細気孔を通して微量の酸素が電池モジュールの内部に流入することができるが、燃焼に必要な量の酸素より少ない量の酸素が流入する場合には、燃焼を抑制するか、電池モジュールで発生した火炎を消滅させることができ、前記火炎によって熱くなった電池モジュール内部の温度が外部に排出されることを遮断することができる。
【0053】
このような効果を有する断熱部材は、例えばシリコン素材及び黒鉛系素材を使うことができるが、一般的にシリコン系素材は断熱部材の膨張の後に飛散する現象が発生して酸素流入量を制御しにくいので、黒鉛系素材からなる断熱部材を使うことが好ましい。
【0054】
一具体例で、前記断熱部材は高弾性素材のパウチの内部に熱膨張特性を有する素材を収容した形態を有することができる。
【0055】
したがって、電池セル内部の温度増加によって熱膨張特性を有する素材が膨張しても、高弾性素材のパウチの内部に収容された状態であるから、膨張及び拡散の範囲が制限的である。よって、熱膨張特性を有する素材が電池パックの外部に排出されるか、電池モジュールと電池パックケースとの間に位置しながら正常状態の電池モジュール内部の熱排出を妨げることを防止することができる。
【0056】
他の一具体例で、前記断熱部材は熱膨張シート形態であることができる。
【0057】
前記熱膨張シートは、熱膨張特性を有する素材からなる平板状の構造を有する形態を有することができ、あるいは互いに異なるサイズの熱膨張係数を有する物質が層状に配列された形態を有する平板状の構造を有することができる。
【0058】
もしくは、前記熱膨張シートの全体形状は平板形の構造に限定されず、円形、楕円形または多角形を有することができる。
【0059】
図4ではバスバー211の外側に配置された断熱部材220が膨張した状態を示し、断熱部材220は矢印方向に膨張して電池パックの側面板230とバスバー211との間の空間を隙間なく満たすことができる。よって、外部の空気が電池モジュールの内部に流入することを抑制することができる。
【0060】
図5は断熱部材が側面板に付加された電池パックの部分断面図、
図6は
図5の断熱部材が膨張した状態を示す図である。
【0061】
図5及び
図6を参照すると、電池モジュール310は、電極リード312が連結されたバスバー311から離隔した位置に電池パックの側面板330が位置し、側面板330のバスバー方向の内側には断熱部材320が付着されている。
【0062】
電池モジュール310の内部温度の増加によって電極リードの温度が上昇すれば、断熱部材320に伝達された熱によって断熱部材320は
図6に示すように矢印方向に膨張する。膨張した断熱部材は、
図4に示す断熱部材のように、バスバーと側面板との間の空間を隙間なく満たすことができるので、外部空気が電池モジュールの内部に流入することを防止して発火を消滅させ、電池モジュール310の熱拡散を防止して隣接した電池モジュールに火炎が移動して大きな火災につながることを防ぐことができる。
【0063】
図7は電池パックにおいて第1実施例による断熱部材が付加された状態を示す側面図である。
【0064】
図7を参照すると、電池パック400は、上部板401、下部板402及びエンドプレート403、404で電池モジュールアセンブリーを取り囲む構造を有するが、理解の便宜のために側面板が除去された状態を示す。
【0065】
電池パック400の内部には単位電池モジュール410、420、430、440、450、460、470を含む電池モジュールアセンブリーが位置し、単位電池モジュール410、420、430、440、450、460、470と側面板(図示せず)との間には断熱部材ユニット411、421、431、441、451、461、471が配置される。
【0066】
具体的には、断熱部材ユニット411、421、431、441、451、461、471は単位電池モジュール410、420、430、440、450、460、470においてバスバーの外側面に配置された状態であることができ、または側面板の内側面に付着された形態であることができ、1個の単位電池モジュールの外面に1個の断熱部材ユニットが配置された形態を有することができる。
【0067】
図7は断熱部材ユニットがすべての単位電池モジュールの外面に配置された形態を示すが、断熱部材ユニットは一部の単位電池モジュールの外面のみに配置されることができるというのは言うまでもない。
【0068】
このような場合には、熱膨張して寿命が尽きた断熱部材が発生すれば、これを交替して使うことができる。
【0069】
図8は電池パックにおいて第2実施例による断熱部材が付加された状態を示す側面図である。
【0070】
図8を参照すると、電池パック500の内部には単位電池モジュール510、520、530、540、550、560、570を含む電池モジュールアセンブリーが位置し、単位電池モジュール510、520、530、540、550、560、570と側面板(図示せず)との間には断熱部材581が配置されている。
【0071】
図7の断熱部材ユニットとは違い、
図8の断熱部材は電池モジュールアセンブリーと側面板との間に配置されるように長い一体型の構造を有する。
【0072】
したがって、ある一つの単位電池モジュールで発火する場合、電池モジュールアセンブリーと側面板との間の空間を隙間なく満たすことができるので、ある電池モジュールで発生した火炎が他の電池モジュールに拡散することをより効果的に防止することができる。
【0073】
このように、本発明による電池モジュール及び電池パックは、最も発熱が激しい部分に熱膨張特性の素材を含む断熱部材を配置しているので、速かに発泡状に変形して火炎が拡散することを効果的に防止することができる。
【0074】
本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば前記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形をなすことが可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上で説明したように、本発明による電池モジュールは、内部で発生した火炎が外部に排出されることができない構造を有するので、隣接した電池モジュールに火炎が流出すると熱が拡散して連鎖的に発火することを防止することができる。
【0076】
また、火炎で取り囲まれた電池モジュールの内部に酸素が流入することを遮断することができるので、早くて簡単に発火を鎭火することができる。
【0077】
また、熱膨張特性を有する素材を高弾性パウチに収納する形態の断熱部材を電池モジュールに適用する場合、熱膨張特性を有する素材が膨張する範囲が前記高弾性パウチの膨張限界に限定されるので、発火可能性が高い部分に配置して確かな発火抑制効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0078】
100、400、500 電池パック
11 電池パックケース
21、22、23、24、25、26、27、210、310、410、420、430、440、450、460、470、510、520、530、540、550、560、570 電池モジュール
31 モジュールケース
32 バスバー
33、212、312 電極リード
111、401 上部板
112、402 下部板
113、230、330 側面板
211、311 バスバー
213 モジュールケース
220、320、581 断熱部材
403、404 エンドプレート
411、421、431、441、451、461、471 断熱部材ユニット