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特許7570709親油性により分散されるフェノール系ポリマー粒子
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  • 特許-親油性により分散されるフェノール系ポリマー粒子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】親油性により分散されるフェノール系ポリマー粒子
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20241015BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20241015BHJP
   A61K 8/85 20060101ALI20241015BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20241015BHJP
   A61K 8/88 20060101ALI20241015BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20241015BHJP
   A61K 8/68 20060101ALI20241015BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20241015BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20241015BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20241015BHJP
   A61K 8/84 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
C08J3/12 A
A61K8/37
A61K8/85
A61K8/87
A61K8/88
A61K8/55
A61K8/68
A61K8/33
A61Q17/04
A61Q1/00
A61K8/84
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2022516315
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 US2020049742
(87)【国際公開番号】W WO2021050436
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】16/570,944
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518040194
【氏名又は名称】ナノフェーズ テクノロジーズ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Nanophase Technologies Corporation
【住所又は居所原語表記】1319 Marquette Drive Romeoville, Illinois 60446 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】サーカス ハリー ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ボファ クリストファー シー.
(72)【発明者】
【氏名】クレトン ケビン
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-116465(JP,A)
【文献】特表2022-532294(JP,A)
【文献】特表2004-522751(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0182155(US,A1)
【文献】特表2005-522529(JP,A)
【文献】特開2017-095297(JP,A)
【文献】中村浩,高分子沈降剤によるリグニン回収法,高分子,日本,1958年,第7巻,467-469,https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/7/9/7_9_467/_pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28;99/00
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子が固体状態であり、フェノール系ポリマーが複数のOH置換フェニル基を含む水溶性ポリマーであり、かつ
シラン化フェノール系ポリマー粒子である、親油性フェノール系ポリマー粒子。
【請求項2】
フェノール系ポリマー粒子と、前記フェノール系ポリマー粒子上の界面活性剤とを含む、親油性フェノール系ポリマー粒子と、担体媒体とを含む、分散体であって、
前記粒子が固体状態であり、前記フェノール系ポリマーが複数のOH置換フェニル基を含む水溶性ポリマーであり、かつ
前記フェノール系ポリマー粒子が、リグノスルホン酸ナトリウム粒子であり、
前記担体媒体が、親油性の、化粧品として許容される流体を含み、
前記リグノスルホン酸ナトリウム粒子が、0.1~1.0ミクロンの粒径を有し、
前記分散体が、非常に耐水性であり、かつ
前記分散体が、流動性である、
前記分散体。
【請求項3】
フェノール系ポリマー粒子と、前記フェノール系ポリマー粒子上の界面活性剤とを含む、親油性フェノール系ポリマー粒子と、担体媒体とを含む、分散体であって、
前記粒子が固体状態であり、前記フェノール系ポリマーが複数のOH置換フェニル基を含む水溶性ポリマーであり、かつ
前記分散体が超光安定性である、
前記分散体。
【請求項4】
フェノール系ポリマー粒子と、前記フェノール系ポリマー粒子上の界面活性剤とを含む、親油性フェノール系ポリマー粒子と、担体媒体とを含む、分散体であって、
前記粒子が固体状態であり、前記フェノール系ポリマーが複数のOH置換フェニル基を含む水溶性ポリマーであり、かつ
前記分散体がフリーラジカルクエンチ試験に合格する、
前記分散体。
【請求項5】
界面活性剤が、ジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2を含み、
担体媒体が、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルを含み、
リグノスルホン酸ナトリウムが、1.0~40.0重量%の量で存在し、かつ
前記ジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2が、15.0~50.0重量%の量で存在する、
請求項2に記載の分散体。
【請求項6】
散体と、
UV線防御剤とを含み、
前記分散体が、フェノール系ポリマー粒子と、前記フェノール系ポリマー粒子上の界面活性剤とを含む、親油性フェノール系ポリマー粒子と、
担体媒体とを含み、
前記粒子が固体状態であり、前記フェノール系ポリマーが複数のOH置換フェニル基を含む水溶性ポリマーである、
日焼け止め剤組成物。
【請求項7】
UV線防御剤が、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)、p-アミノ安息香酸(PABA)、パディメートO、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、シノキサート(p-メトキシケイ皮酸2-エトキシエチル)、ジオキシベンゾン(ベンゾフェノン-8)、オキシベンゾン(ベンゾフェノン-3)、ホモサレート(サリチル酸ホモメチル)、アントラニル酸メンチル(メラジメート)、オクトクリレン(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸)、メトキシケイ皮酸オクチル(オクチノキセート)、サリチル酸オクチル(サリチル酸2-エチルヘキシル)、スリソベンゾン(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、3-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-6-メトキシベンゼンスルホン酸、ベンゾフェノン-4)、サリチル酸トロラミン(サリチル酸トリエタノールアミン)、アボベンゾン(1-(4-メトキシフェニル)-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパン-1,3-ジオン)、エカムスル(テレフタリリデンジカンフルスルホン酸)、酸化セリウム(CeO)、ドロメトリゾールトリシロキサン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ビスオクトリゾール、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項に記載の日焼け止め剤組成物。
【請求項8】
フェノール系ポリマー粒子が、リグニン、フミン酸塩、タンニン、水溶性及び/又は水分散性成分を含有する植物抽出物並びにそれらの組合せからなる群から選択される物質を含む、請求項3または4に記載の分散体。
【請求項9】
界面活性剤が、脂肪アルコール及びポリオール;脂肪酸;ポリグリセリルエステル;ポリグリセリルポリエステル;親和性ヒドロキシル、アミン又はアミド基を有するポリエステル;親和性ヒドロキシル、アミン又はアミド基を有するポリウレタン;親和性ヒドロキシル、アミン又はアミド基を有するポリアミド;親和性ヒドロキシル、アミン又はアミド基を有するポリアクリレート;リン酸エステル;ポリマーリン酸塩;リン脂質;セラミド;スフィンゴシン;それらの組合せ、それらのコポリマー、並びにそれらのクロスポリマーからなる群から選択される物質を含む、請求項2、3または4に記載の分散体。
【請求項10】
フェノール系ポリマー粒子が0.001~10.0ミクロン(μm)の粒径を有する、請求項3または4に記載の分散体。
【請求項11】
フェノール系ポリマー粒子が0.001~10.0ミクロン(μm)の粒径を有する、請求項6または7に記載の日焼け止め剤組成物。
【請求項12】
担体媒体が、トリグリセリド、エステル、天然油及びバター、アルカン、シリコーン、並びにそれらの組合せからなる群から選択される物質を含む、請求項2、3または4に記載の分散体。
【請求項13】
担体媒体が、トリグリセリド、エステル、天然油及びバター、アルカン、シリコーン、並びにそれらの組合せからなる群から選択される物質を含む、請求項6または7に記載の日焼け止め剤組成物。
【請求項14】
フェノール系ポリマー粒子が、0.1~75.0重量%の量で存在し、かつ
界面活性剤が、前記フェノール系ポリマー粒子の質量の1.0~100.0%の量で存在する、請求項2、3または4に記載の分散体。
【請求項15】
フェノール系ポリマー粒子が、0.1~75.0重量%の量で存在し、かつ
界面活性剤が、前記フェノール系ポリマー粒子の質量の1.0~100.0%の量で存在する、請求項6または7に記載の日焼け止め剤組成物。
【請求項16】
皮膚への酸化的損傷を処置又は予防することにおいて使用するための、請求項2~5のいずれかに記載の分散体であって、
前記処置又は予防することが、前記親油性フェノール系ポリマー粒子を前記皮膚に適用することを含む、前記分散体。
【請求項17】
ケラチン物質を保護することにおいて使用するための、請求項2~5のいずれかに記載の分散体であって、
前記保護することが、前記親油性フェノール系ポリマー粒子を前記ケラチン物質に適用することを含み、
前記ケラチン物質が、毛髪、手指の爪、足指の爪及び皮膚の外層からなる群から選択される、前記分散体。
【請求項18】
ヒト皮膚を保護することにおいて使用するための、請求項2~5のいずれかに記載の分散体であって、
前記保護することが、前記親油性フェノール系ポリマー粒子を前記ヒト皮膚に適用することを含む、前記分散体。
【請求項19】
皮膚における脂質過酸化を抑制することにおいて使用するための、請求項2~5のいずれかに記載の分散体であって、
前記抑制することが、前記親油性フェノール系ポリマー粒子を
前記皮膚に適用すること
を含む、前記分散体。
【請求項20】
皮膚のしわ及びリンクルの出現を予防又は低減することにおいて使用するための、請求項2~5のいずれかに記載の分散体であって、
前記予防又は低減することが、前記親油性フェノール系ポリマー粒子を前記皮膚に適用すること
を含む、前記分散体。
【請求項21】
皮膚の弾力の喪失を予防することにおいて使用するための、請求項2~5のいずれかに記載の分散体であって、
前記予防することが、前記親油性フェノール系ポリマー粒子を前記皮膚に適用すること
を含む、前記分散体。
【請求項22】
皮膚の菲薄化を予防することにおいて使用するための、請求項2~5のいずれかに記載の分散体であって、
前記予防することが、前記親油性フェノール系ポリマー粒子を前記皮膚に適用すること
を含む、前記分散体。
【請求項23】
皮膚の色素黒ずみを予防することにおいて使用するための、請求項2~5のいずれかに記載の分散体であって、
前記予防することが、前記親油性フェノール系ポリマー粒子を、前記皮膚に適用することを含む、前記分散体。
【請求項24】
皮膚へのHEV線曝露を減弱することにおいて使用するための、請求項2~5のいずれかに記載の分散体であって、
前記減弱することが、前記親油性フェノール系ポリマー粒子を前記皮膚に適用することを含む、前記分散体。
【請求項25】
ケラチン物質におけるフリーラジカルをクエンチすることにおいて使用するための、請求項2~5のいずれかに記載の分散体であって、
前記クエンチすることが、前記親油性フェノール系ポリマー粒子を前記ケラチン物質に適用すること
を含み、前記ケラチン物質が毛髪又は皮膚を含む、前記分散体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
フェノール系ポリマーは、複数のOH置換フェニル基の存在を特徴とする種類の有機ポリマーである。フェノール系ポリマーは、いくつかの独特の特性、例えば、酸化防止剤又は皮膚コンディショニング剤として機能する能力を有する。これらの特性により、フェノール系ポリマーは、局所的に適用される製剤、例えば、化粧品及び皮膚科用調合剤に含められるようになった。フェノール系ポリマーの周知の例としては、リグニン、リグノスルホン酸塩、フミン酸塩及びタンニンが挙げられる。
【0002】
リグニンは、その遍在性のため、特に望ましいフェノール系ポリマーである。最新の製紙プロセスは、リグノセルロースからのリグニンの除去を含む。世界的な製紙産業では、年間約40~50,000,000トンのリグニンが廃棄物として生成されている(The International Lignin Institute, "About lignin", available online at www.ili-lignin.com/aboutlignin.php (accessed August 30, 2019))。リグニンは、木材パルプからリグニンを除くための亜硫酸塩蒸解の副産物としても生成される。廃リグニンは典型的には、それを発生した製紙プラントにエネルギーを供給するために焼却される。廃リグノスルホン酸塩及びクラフトリグニンを有用な商品に変える方法が開発されている。例えば、LIGNOBOOST(登録商標)プロセス又はLIGNOFORCE(商標)プロセスを使用して製紙のためのクラフトプロセスにおいて製造された黒液から高品質のリグニンを得ることができる。しかし、有用な化学製品に変換される可能性のある廃リグニンが、毎年数千万トン生成されている。
【0003】
原料としてのそれらの入手しやすさにもかかわらず、配合の課題がフェノール系ポリマーの需要を制限している。リグニン及び他のフェノール系ポリマーは、水へ溶解性が高い。その結果、フェノール系ポリマーは製剤の水相にのみ含められている。フェノール系ポリマーは水に曝露されると使用者の皮膚から洗い流されるので、フェノール系ポリマーの高い水溶性はまた、それらを固体状態で局所製剤に含ませることを制限している。これらの溶解性についての懸念により、フェノール系ポリマーの有用な特性を十分に利用する製造業者の能力が制限されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】The International Lignin Institute, "About lignin", available online at www.ili-lignin.com/aboutlignin.php (accessed August 30, 2019)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、本発明はフェノール系ポリマー粒子と前記フェノール系ポリマー粒子上の界面活性剤とを含む組成物である。
【0006】
第2の態様において、本発明は、リグノスルホン酸ナトリウム粒子と界面活性剤と担体媒体とを含む分散体である。リグノスルホン酸ナトリウム粒子は、0.1~1.0ミクロンの粒径を有する。分散体は流動性である。
【0007】
第3の態様において、本発明は、シラン化フェノール系ポリマー粒子と担体媒体とを含む分散体である。
【0008】
第4の態様において、本発明は、親油性フェノール系ポリマー粒子である。
【0009】
定義
「フェノール系ポリマー」という用語は、複数のOH置換フェニル基を含む水溶性ポリマーを意味する。フェノール系ポリマーの例としては、リグニン、フミン酸塩、タンニン、水溶性及び/又は水分散性成分を含有する植物抽出物が挙げられる。
【0010】
「紫外線」という用語は、10~400nmの波長を有する電磁線を意味する。紫外線は、紫外光、UV線又はUV光とも称する。「UV」という略語は、本出願において「紫外光」という表現と同義で使用する。
【0011】
「高エネルギー可視線」又は「HEV線」という用語は、400~490nmの波長を有する電磁線を意味する。HEV線は、可視スペクトルの青色及び紫色の光として認知される。
【0012】
「粒径」という用語は、特に明記しない限り、数分布に基づいて静的光散乱(ISO 13320:2009 Particle Size Analysis - Laser Diffraction Methods)によって決定された(D50)粒径の中央値を意味する。
【0013】
「非常に耐水性である」という用語は、曝露前のその単色防御指数(MPF,monochromatic protection factor)とインビトロで80分間の水浸シーケンス後のそのMPFとの間に50%未満のMPFの変化を示す組成を意味する(Cosmetics Europe, "Guidelines for evaluating sun product water resistance", available online at www.cosmeticseurope.eu/files/7914/6407/7400/Guidelines_for_Evaluating_Sun_Product_Water_Resistance_-_2005.pdf, 15 pages (2005))。
【0014】
「修正DPPH光安定性試験」とは、活性物質の光安定性の基準である。修正DPPH光安定性試験は、米国特許出願公開第2018/0291210号に記載されているDPPH光安定性試験より高感度の試験であり、酸化亜鉛以外の組成について検証されている。最初に、0.025g±0.001gの活性物質を、4つの50mL使い捨てプラスチックビーカーに加える。0.0125%のジ(フェニル)-(2,4,6-トリニトロフェニル)イミノアザニウム(DPPH,di(phenyl)-(2,4,6-trinitrophenyl)iminoazanium;ジフェニルピクリルヒドラジルとも称する;CAS番号1898-66-4)のエチレングリコールブチルエーテル(BCS,ethylene glycol butyl ether)中溶液を調製する。0.0125%のDPPHのBCS中溶液19.975g±0.001gを、活性物質を含有する各ビーカーに加えて、被検混合物を形成する。被検混合物をガラス撹拌棒で念入りに撹拌し、各被検混合物を20秒間超音波処理して、活性物質を確実に十分に分散させる。超音波処理後、各被検混合物をラベル付きシンチレーションバイアルに移す。被検混合物の吸光度を、較正した比色計で測定して、照射前測定値を得る。測定値を取った後、被検混合物を、Q-Labs QUV Weatherometerで0.35Wm-2-1のUVA電球を使用して50℃の一定温度において10分間UV光に曝露する。照射後、被検混合物の吸光度を、比色計で測定する。UV曝露後の光安定度を、520nmにおける染料の吸収帯による紫色の持続性によって決定する。
【0015】
光安定度は、指定されたUV曝露時間の間の標準に対する総色変化(L色空間のΔE)として表すことができる。ΔEは、International Commission on Illumination Standard CIE76の定義に従って、下記の式1:
【0016】
【数1】
【0017】
[式中、L* 、a* 及びb* は照射後の被検混合物の色座標であり、L* 、a* 及びb* は照射前の被検混合物の色座標である]
から算出する。データは、4つの試料の平均ΔE値として報告する。
【0018】
「超光安定性」という用語は、修正DPPH光安定性試験に供した場合にΔE≦4.5を有する物質を意味する。
【0019】
「フリーラジカルクエンチ試験」は、フリーラジカルをクエンチする活性物質の能力の基準である。最初に、二酸化チタン(35nm、ルチル相)の光安定度を、修正DPPH光安定性試験に従って測定して、参照光安定度(ΔE参照)を確定する。次に、参照光安定度を確定するのに使用したのと同じ重量パーセントの二酸化チタンと等量の活性物質とを含有する被検混合物を調製する。次いで、被検混合物の光安定度を、修正DPPH光安定性試験に従って測定して、試験光安定度(ΔE試験)を確定する。次いで、参照光安定度(ΔE参照)と試験光安定度(ΔE試験)とのパーセント差を算出して、活性物質のフリーラジカルクエンチ能力を決定する。活性物質は、二酸化チタンによって生成されたフリーラジカルの少なくとも70%をクエンチする(ΔE試験がΔE参照より少なくとも70%小さい)場合、フリーラジカルクエンチ試験に合格する。
【0020】
特に明記しない限り、全てのパーセント(%)は、重量/重量パーセントである。
【0021】
本発明は、以下の図面及び説明を参照することにより、よりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】界面活性剤によって修飾されているフェノール系ポリマー粒子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、親油性となるように修飾されているフェノール系ポリマー粒子を含む。親油性フェノール系ポリマー粒子は、粒子に表面処理剤を加えることによって又は粒子をシラン化剤と反応させることによって形成し得る。親油性修飾により、フェノール系ポリマーを製剤の油相中に固体状態で存在させることができる。例えば、フェノール系ポリマー粒子及び界面活性剤を親油性担体媒体中に分散させてもよい。油相にフェノール系ポリマー粒子を使用できることにより、これらの粒子の可能な用途が大幅に拡大される。
【0024】
実験により、親油性フェノール系ポリマー粒子を含む調合剤がいくつかの望ましい物理的及び化学的特性を有することが明らかになっている。これらの調合剤は非常に耐水性であり、強力なHEV光遮断剤である。このことは、これらが日焼け止め製剤への使用によく適していることを示している。調合剤はまた、修正DPPH光安定性試験に供した場合に超光安定性である。加えて、調合剤はフリーラジカルクエンチ試験に合格し、これは、それらの強力な酸化防止能力を示している。
【0025】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、これらの特性は固体状態のフェノール系ポリマーの存在に起因すると考えられる。フェノール系ポリマー分子間の物理的相互作用は、芳香族基のパイ(π)スタッキングをもたらし、これが、これらの分子が軌道混合のより電子を受容する能力を改善する。パイスタッキングは、フェノール系ポリマーが溶液中にある場合に起こり得るが、溶液は十分に高い濃度を有さなければならない。フェノール系ポリマーを粒子として(すなわち、固体状態で)送達することにより、それらが確実にパイスタッキングを有するようになる。
【0026】
フェノール系ポリマー粒子を含む調合剤はまた、いくつかの商業的利点を提供する。フェノール系ポリマー、特にリグニンは、廃棄物としてかなりの量で入手可能であるので、経済的に好都合な原料である。そうでない場合には燃焼されることになる廃棄物を取得することは、炭素放出を防ぐので、環境に優しい方法である。天然源に由来するフェノール系ポリマーは、天然産物として販売されることがあり、これは消費者にとって特に魅力的である。さらに、フェノール系ポリマー粒子の分散体は、高価な反応体、極端な温度、長い反応時間又は危険な反応体を必要とせずかつ危険な廃物を生成しない、従来の化学処理技術を使用して製造できる。これらの利点は全て、製造業者が市販製剤にフェノール系ポリマーを含めるよう促すであろう。
【0027】
図1は、界面活性剤によって修飾されているフェノール系ポリマー粒子の模式図を示している。組成物100は、フェノール系ポリマー粒子110と前記粒子の表面上の界面活性剤120とを含む。界面活性剤は、フェノール系ポリマー粒子を親油性にし、水への溶解に対して耐性にする表面処理剤である。分散体は、フェノール系ポリマー粒子、界面活性剤及び担体媒体を合わせることによって調製してもよい。好ましくは、分散体は流動性である。
【0028】
フェノール系ポリマー粒子は、複数のOH置換フェニル基を有する任意のポリマーであってよい。好ましくは、フェノール系ポリマー粒子は、リグニン、フミン酸塩、タンニン、水溶性及び/若しくは水分散性成分を含有する植物抽出物又はそれらの組合せである。適切なリグニンの例としては、リグノスルホン酸塩;クラフトリグニン;スルホン化クラフトリグニン;オキシリグニン;スルホン化オキシリグニン;アクリレート、アクリル酸、アクリルアミド、スチレンスルホネート、及びナフタレンスルホネート誘導体等のモノマーと共重合されたリグノスルホン酸塩;アゾリグノスルホン酸塩;アゾリグニン;リグノスルホン酸塩-ホルムアルデヒド縮合物;リグニンホルムアルデヒド縮合物;疎水性修飾リグノスルホン酸塩;疎水性修飾リグニン;カチオン修飾リグノスルホン酸塩;カチオン修飾リグニン;アミノリグノスルホン酸塩;アミノリグニン;アルキル化リグノスルホン酸塩;アルキル化リグニン;架橋リグノスルホン酸塩;及び架橋リグニン;が挙げられる。適切なフミン酸塩としては、スルホン化フミン酸塩、フミン酸塩-ホルムアルデヒド縮合物、疎水性修飾フミン酸塩、カチオン修飾フミン酸塩、アミノフミン酸塩及びアルキル化フミン酸塩が挙げられる。適切なタンニンの例としては、タンニン酸塩、スルホン化タンニン酸塩、タンニン酸塩-ホルムアルデヒド縮合物、疎水性修飾タンニン酸塩及びカチオン修飾タンニン酸塩が挙げられる。
【0029】
水溶性及び/又は水分散性成分を含有する植物抽出物の例としては、アカシア属(Acacia)、アフゼリア属(Afzelia)、シンセパルム・ドゥルキフィカム(Synsepalum duloificum)、アルビジア属(Albizia)、ハンノキ(例えば、ヨーロッパハンノキ(Alnus glutinosa)及びレッドアルダー(Alnus rubra))、アップルウッド、イチゴノキ属(Arbutus)、トネリコ(例えば、ニグラトレニコ(別名ブラックアッシュ)(F. nigra)、ブルーアッシュ(F. quadrangulata)、セイヨウトネリコ(F. excelsior)、グリーンアッシュ(F. pennsylvanica lanceolata)、オレゴンアッシュ(F. latifolia)、パンプキンアッシュ (F. profinda)及びアメリカトネリコ(別名ホワイトアッシュ)(F. americana))、ポプラ(例えば、ポプラ・グランディデンタタ(P. grandidentata)、ポプラ・トレムラ(P. tremula)、ポプラ・トレムロイデス(P. tremuloides))、オーストラリアンチャンチン(トーナノキ(Toona ciliata))、アヤン(モハンギ(Distemonanthus benthamianus))、バルサ(オクロマ・ピラミデール(Ochroma pyramidale))、バスウッド(例えば、T.アメリカーナ(T. Americana)及びT.ヘテロフィラ(T. heterophylla))、ブナノキ(例えば、ヨーロッパブナ(F. Sylvatica)及びアメリカブナ(F. grandifolia))、カバノキ(例えば、グレイカバ(Betula populifolia)、リバーバーチ(B.nigra)、ホワイトバーチ(B.papyrifera)、アメリカミズメ(B. lenta)、イエローバーチ(B. alleghaniensis/B. lutea)、フィンランドバーチ(B.pendula)及びヨーロッパダケカンバ(B.pubescens))、ブラックビーン、ブラックウッド、ボコテ、ボックスエルダー、ボックスウッド、ブラジルボク、ブビンガ、トチノキ(例えば、セイヨウトチノキ(Aesculus hippocastianum)、オハイオトチノキ(Aesculus glabra)及びキバナトチノキ(Aesculus flava/Aesculus octandra))、バターナット、キササゲ、サクラ(例えば、ブラックチェリー(Prunus serotina)、レッドチェリー(Prunus pennsylvanica)及びセイヨウミザクラ(Prunus avium))、クラブウッド、クリ、コーチウッド、ココボロ、コークウッド、コットンウッド(例えば、バルサムポプラ(Populus balsamifera)、ヒロハヤマナラシ(Populus deltoides)、ポプラ・サルゲンティイ(Populus sargentii)及びポプラ・ヘテロフィラ(Populus heterophylla))、ビリンビ、ミズキ(例えば、ハナミズキ(Cornus florida)及びセイガンハナミズキ(Cornus nuttallii))、コクタン(例えば、ジオスピロス・クルジイ(Diospyros kurzii)、ジスピロス・メラニダ(Diospyros melanida)及びアフリカンエボニー(Diospyros crassiflora))、ニレ(例えば、アメリカニレ(Ulmus americana)、オウシュウニレ(Ulmus procera)、ロックエルム(Ulmus thomasii)、ウルムス・ルブラ(Ulmus rubra)及びセイヨウニレ(Ulmus glabra))、ユーカリ、グリーンハート、グラナディラ、ガム(例えば、ニッサ・シルバティカ(Nyssa sylvatica)、ユーカリノキ(Eucalyptus globulus)、モミジバフウ(Liquidambar styraciflua)及びニッサアク・アクアティカ(Nyssa aquatica))、ヒッコリー(例えば、カリア・アルバ(Carya alba)、カリア・グラブラ(Carya glabra)、カリア・オバタ(Carva ovata)及びカリア・ラシニオサ(Carya laciniosa))、ホーンビーム、ホップホーンビーム、イペ、イロコ、鉄樹(例えば、バランキライ(Bangkirai)、アメリカシデ(Carpinus caroliniana)、モクマオウ(Casuarina equisetifolia)、コリクバンガルピア・スバルゲンテア(Choricbangarpia subargentea)、コパイフェラ属種(Copaifera spp.)、ボルネオテツボク(Eusideroxylon zwageri)、ユソウボク(Guaiacum officinale)、グアイアクム・サンクツム(Guaiacum sanctum)、タキアン(Hopea odorata)、ブラックアイアンウッド(Krugiodendron ferreum)、リオノタムヌス・イボニイ(Lyonothamnus ivonii)(カタリナアイアンウッド(L. floribundus))、セイロンテエツボク(Mesua ferrea)、オレア属種(Olea spp.)、オルネヤ・テソタ(Olneya tesota)、アメリカアサダ(Ostrya virginiana)、ペルシャテツボク(Parrotia persica)及びタベブイア・セラティフォリア(Tabebuia serratifolia))、ジャカランダ、ホホバ、レースウッド、ゲッケイジュ、リンバ、リグナム・ビタエ(Lignum vitae)、ニセアカシア(例えば、ハリエンジュ(Robinia pseudacacia)及びハニーローカスト(Gleditsia triacanthos))、マホガニー、カエデ(例えば、サトウカエデ(Acer saccharum)、ブラックメープル(Acer nigrum)、トネリコバノカエデ(Acer negundo)、アメリカハナノキ(Acer rubrum)、ギンヨウカエデ(Acer Saccharinum)及びセイヨウカジカエデ(Acer pseudoplatanus))、メランチ、アメリカンブラックウッド、オーク(例えば、バーオーク(Quercus macrocarpa)、アメリカンホワイトオーク(Quercus alba)、ボストオーク(Quercus stellata)、スワンプホワイトオーク(Quercus bicolor)、サザンライブオーク(Quercus virginiana)、スワンプチェストナットオーク(Quercus michauxii)、チェストナットオーク(Quercus prinus)、チンカピンオーク(Quercus muhlenbergii)、キャニオンライブオーク(Quercus chrysolepis)、オーバーカップオーク(Quercus lyrata)、ヨーロッパナラ(Quercus robur)、セシルオーク(Quercus petraea)、アメリカンオーク(Quercus rubra)、ブラックオーク(Quercus velutina)、オーバーカップオーク(Quercus laurifolia)、スパニッシュレッドオーク(Quercus falcata)、ウォーターオーク(Quercus nigra)、ウィローオーク(Quercus phellos)及びクエルクス・テキサナ(Quercus texana))、オベチェ、オクメ、オレゴンマートル、カルフォルニアベイローレル、セイヨウナシ、ポプラ(例えば、バルサムポプラ(P. balsamifera)、ヨーロッパヤマナラシ(P. nigra)及び雑種ポプラ(カナダポプラ(PopulusXcanadensis)))、ラミン、レッドシダー、ローズウッド、サラノキ、サンダルウッド、ササフラス、インドシュスボク、シノブノキ、フサアカシア、インドジャボク、サワーウッド、スペインスギ、アメリカスズカケノキ、チーク、クルミ(例えば、ブラックウォルナット(Juglans nigra)及びウォルナット(Juglans regia))、ヤナギ(例えば、サニックス・ニグラ(Salix nigra)及びホワイトウイロー(Salix alba))、イエローポプラ(ユリノキ(Liriodendron tulipifera))、ナンヨウスギ属(Araucaria)(例えば、フープパイン(A. cunninghamii)、パラナマツ(A. angustifolia )及びチリマツ(A. araucana))、針葉樹スギ(例えば、エンピツビャクシン(Juniperus virginiana)、アメリカネズコ(Thuja plicata)、ニオイヒバ(Thuja occidentalis)、アトランティクホワイトシダー(Chamaecyparis thyoides)及びカリトロプシス・ノオトカテンシス(Callitropsis nootkatensis))、イトスギ(例えば、ヒノキ属(Chamaecyparis)、カプレスス・タキソジウム(Cupressus taxodium)、アリゾナイトスギ(Cupressus arizonica)、ラクウショウ(Taxodium distichum)、ヒノキ(Chamaecyparis obtusa)、ローソンサイプレス(Chamaecyparis lawsoniana)及びホソイトスギ(Cupressus semperviren))、ロッキーマウンテンダグラスファー(Rocky Mountain Douglas fir)、ヨーロッパイチイ(European yew)、モミ(例えば、バルサムモミ(Abies balsamea)、ヨーロッパモミ(Abies alba)、ノーブルモミ(Abies procera)及びウツクシモミ(Abies amabilis))、ベイツガ(例えば、カナダツガ(Tsuga canadensis)、マウンテンヘムロック(Tsuga mertensiana)及びベイツガ(Tsuga heterophylla))、カウリ、カヤ、カラマツ(例えば、オウシュウカラマツ(Larix decidua)、カラマツ(Larix kaempferi)、アメリカカラマツ(Larix laricina)、ウェスタンラーチ(Larix occidentalis)及びオウシュウカラマツ(Larix europea))、マツ(例えば、ヨーロッパクロマツ(Pinus nigra)、バンクスマツ(Pinus banksiana)、コントルタマツ(Pinus contorta)、ラジアータマツ(Pinus radiata)、ポンデローサマツ(Pinus ponderosa)、アカマツ(Pinus resinosa)、ヨーロッパアカマツ(Pinus sylvestris)、ストローブマツ(Pinus strobus)、モンティコーラマツ(Pinus monticola)、サトウマツ(Pinus lambertiana)、テーダマツ(Pinus taeda)、ダイオウマツ(Pinus palustris)、リギダマツ(Pinus rigida)及びエチナータマツ(Pinus echinata))、レッドウッド、リーム、トウヒ(例えば、ドイツトウヒ(Picea abies)、クロトウヒ(Picea mariana)、アカトウヒ(Picea rubens)、シトカトウヒ(Picea sitchensis)及びカナダトウヒ(Picea glauca)))、スギ、並びにそれらの混合物/雑種として公知の植物に由来する抽出物が挙げられる。水溶性及び/又は水分散性成分を含有する好ましい植物抽出物としては、ドイツトウヒ(ノルウェートウヒ(Norway spruce)及びオウシュウトウヒ(European spruce)としても知られる)、オウシュウカラマツ(カラマツ又はヨーロッパカラマツとしても知られる)、並びにカエデ種であるサトウカエデ、ギンヨウカエデ及びトネリコバノカエデの混合物に由来する抽出物が挙げられる。
【0030】
界面活性剤は、フェノール系ポリマー粒子との強い酸-塩基相互作用を有し、粒子上に親油性表面処理を提供する、任意の界面活性剤であってよい。適切な界面活性剤の例としては、脂肪アルコール及びポリオール(例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール及びセテアリルアルコール)、脂肪酸(例えば、ステアリン酸及びオレイン酸)、アミノ酸(例えば、ラウロイルリジン及びミリストイルグルタメート)、ポリグリセリルエステル(例えば、リシノレイン酸ポリグリセリル-3、リシノレイン酸ポリグリセリル-6、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10及びオレイン酸ポリグリセリル-4)、ポリグリセリルポリエステル(例えば、(ジイソステアリン酸/ポリヒドロキシステアリン酸/セバシン酸)ポリグリセリル-4、ジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2及びポリグリセリル-3ステアレート/イソステアレート/ダイマージリノレエートクロスポリマー)、親和性ヒドロキシル、アミン又はアミド基を有するポリエステル(例えば、ポリヒドロキシステアリン酸)、親和性ヒドロキシル、アミン又はアミド基を有するポリウレタン、親和性ヒドロキシル、アミン又はアミド基を有するポリアミド、親和性ヒドロキシル、アミン又はアミド基を有するポリアクリレート、リン酸エステル(例えば、トリラウレス-4リン酸及びトリセテアレス-4リン酸)、ポリマーリン酸塩(例えば、1,2-エタンジアミン、アジリジンを含むポリマー、N-[3-[(2-エチルヘキシル)オキシ]-3-オキシプロピル]誘導体及びポリエチレン-ポリプロピレングリコールを含む化合物)、リン脂質、セラミド、スフィンゴシド(sphingoside)(例えば、レシチン、リゾレシチン及びセラミド3)、親和性基を有する置換シリコーン(例えば、セチルジグリセリルトリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチコン、CAS番号104780-66-7(シロキサン及びシリコーン,ジ-Me,3-ヒドロキシプロピル基末端)、CAS番号102782-61-6(シロキサン及びシリコーン,ジ-Me,3-ヒドロキシプロピルMe)、及びCAS番号106214-84-0(シロキサン及びシリコーン、ジメチル、3-アミノプロピル))、並びにそれらの組合せが挙げられる。
【0031】
あるいは、親油性フェノール系ポリマー粒子は、粒子をシラン化剤と反応させることによって形成してもよい。シラン化剤は、フェノール系ポリマー粒子の表面に官能基化ポリシロキサンを提供する任意の物質であってよい。適切なシラン化剤の例としては、反応性シリコーン及びシラン疎水化表面処理剤(例えば、トリエトキシカプリリルシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、水素ジメチコン(CAS番号68037-59-2/69013-23-6/70900-21-9)及びCAS番号69430-47-3(シロキサン及びシリコーン、ジ-Me、Me水素シロキサン及び1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンとの反応生成物))が挙げられる。
【0032】
担体媒体は、親油性である、任意の化粧品として許容される流体又はワックスであってよい。適切な担体媒体の例としては、トリグリセリド(例えば、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル[caprylic/capric triglycerides])、エステル(例えば、安息香酸アルキル(C12-C15)、ラウリン酸イソペンチル、イソステアリン酸イソプロピル、カプリル酸ヤシ油アルキル、イソノナン酸エチルヘキシル、サリチル酸トリデシル、イソノナン酸エチルヘキシル、サリチル酸イソデシル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、サリチル酸ブチルオクチル、ホホバエステル及びシア脂エステルズ)、天然油及びバター(例えば、シモンドシア・キネンシス(Simmondsia chinensis)(ホホバ)種子油、シア脂、アルガニア・スピノサ(Argania spinosa)(アルガン)油、ポンガミ(pongami)(カランジャ)油及びリムナンテス・アルバ(Limnanthes alba)(メドウフォーム)種子油)、アルカン(例えば、スクアラン、ヘミスクアラン、イソドデカン及びイソヘキサデカン)、シリコーン(例えば、ジメチコン、ベヘニルジメチコン、セチルジメチコン、セテアリルメチコン及びフェニルジメチコン)、ワックス(例えば、天然ワックス、合成ワックス及びシリコーンワックス)、並びにそれらの組合せが挙げられる。
【0033】
フェノール系ポリマー粒子は、重量で0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2.0%、3.0%、4.0%、5.0%、6.0%、7.0%、8.0%、9.0%、10.0%、15.0%、20.0%、25.0%、30.0%、35.0%、40.0%、45.0%、50.0%、55.0%、60.0%、65.0%及び70.0%を含む、0.1~75.0重量%の量で分散体中に存在し得る。好ましくは、フェノール系ポリマー粒子は、0.5~50.0重量%の量で存在する。より好ましくは、フェノール系ポリマー粒子は、1.0~40.0重量%の量で存在する。
【0034】
界面活性剤は、フェノール系ポリマー粒子の質量の1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、10.0%、15.0%、20.0%、25.0%、30.0%、35.0%、40.0%、45.0%、50.0%、55.0%、60.0%、65.0%、70.0%、75.0%、80.0%、85.0%、90.0%及び95.0%を含む、フェノール系ポリマー粒子の質量の1.0~100.0%の量で分散体中に存在してもよい。好ましくは、界面活性剤は、フェノール系ポリマー粒子の質量の10.0~60.0%の量に存在する。より好ましくは、界面活性剤は、フェノール系ポリマー粒子の質量の20.0~50.0%の量に存在する。
【0035】
分散体中の担体媒体の量は、分散体中に存在するフェノール系ポリマー粒子の量及び界面活性剤の量によって決まる。フェノール系ポリマー粒子と界面活性剤とを合わせた後、担体媒体は、所望の分散体を生成するのに必要な任意の適切な量で添加し得る。
【0036】
分散体は、従来の配合技術によって調製し得る。例えば、フェノール系ポリマー粒子、界面活性剤及び担体媒体を容器中で合わせ、均質になるまで撹拌してもよい。適当な混合条件、例えば、温度、撹拌速度及び混合時間は、所望の分散体を提供するように変更し得る。次いで、分散体をミル、例えば、メディアミルに移し、微粉砕して、所望の粒径を達成し得る。
【0037】
フェノール系ポリマー粒子は、0.002ミクロン(μm)、0.003μm、0.004μm、0.005μm、0.006μm、0.007μm、0.008μm、0.009μm、0.01μm、0.02μm、0.03μm、0.04μm、0.05μm、0.06μm、0.07μm、0.08μm、0.09μm、0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1.0μm、1.1μm、1.2μm、1.3μm、1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm、2.0μm、2.5μm、3.0μm、3.5μm、4.0μm、4.5μm、5.0μm、5.5μm、6.0μm、6.5μm、7.0μm、7.5μm、8.0μm、8.5μm、9.0μm及び9.5μmを含む、0.001~10.0μm(1~10,000nm)の粒径を有し得る。好ましくは、フェノール系ポリマーは、0.01~5.0μm(10~5,000nm)の粒径を有する。より好ましくは、フェノール系ポリマーは、0.1~1.0μm(100~1,000nm)の粒径を有する。皮膚上での粒子の認知を妨げかつ使用者にとって砂のような又はザラザラした質感を有する製剤を回避するためには、フェノール系ポリマー粒子の最大粒径は10.0μmである。
【0038】
親油性フェノール系ポリマー粒子は、フェノール系ポリマー粒子、界面活性剤及び担体媒体の分散体から、担体媒体を除去することによって、得てもよい。例えば、担体媒体は、周囲温度及び圧力で蒸発する揮発物質であり得る。同様に、担体媒体が除去されるまで、分散体を担体媒体の沸点を超えて加熱してもよい。
【0039】
親油性フェノール系ポリマー粒子はまた、分散体からの単離によってではなく、直接調製してもよい。最初に、フェノール系ポリマー粒子の粒径を、乾式微粉砕によって低減する。任意の適切な乾式微粉砕技術、例えば、高性能空気粉砕、振動粉砕、メディア粉砕、ハンマー粉砕及びジェット粉砕を使用し得る。微粉砕は、ニートで又は二次材料、例えば、ポリマー粒子若しくは酸化物(例えば、金属酸化物及びケイ酸塩、例えば、雲母又はシリカ)と合わせて実施し得る。次に、界面活性剤又はシラン化剤を適切な溶媒に溶解することによって、溶液を調製する。適切な溶媒の例としては、USPヘプタン、USPアセトン、USPイソプロパノール及びUSPエタノールが挙げられる。次いで、溶液をブレンダー/ミキサー中で撹拌しながら、微粉砕フェノール系ポリマー粒子に溶液を噴霧する。溶液及び微粉砕フェノール系ポリマー粒子は、任意に加熱して、界面活性剤又はシラン化剤を粒子に結合させるための反応を駆動してもよい。最後に、真空を適用して、溶媒を除去する。
【0040】
親油性フェノール系ポリマー粒子は、調合剤の油相中に存在してもよいし、又は粉末調合剤に添加してもよい。好ましくは、調合剤は局所適用に適切である。適切な調合剤の例としては、乳剤(水中油型及び油中水型乳剤)、スプレー剤、バーム剤、スティック剤、粉剤、粉末-クリーム調合剤、親油性調合剤及び無水調合剤が挙げられる。親油性フェノール系ポリマー粒子を含む調合剤は、1又は2以上の試験によって評価し得る。好ましくは、親油性フェノール系ポリマー粒子を含む調合剤は、非常に耐水性で、超光安定性であり、フリーラジカルクエンチ試験に合格する。
【0041】
親油性フェノール系ポリマー粒子を含有する調合剤は、種々の異なる用途で使用するために製剤化し得る。適切な製剤の例としては、化粧品(例えば、チーク、フェイスパウダー、ファンデーション、口紅、メイクアップベース及び頬紅)、スキンケア製品(例えば、皮膚用クレンジングクリーム、ローション、リキッド及びパッド;顔及び首用クリーム、ローション、パウダー及びスプレー;ボディ及び手用クリーム、ローション、パウダー及びスプレー;足用パウダー及びスプレー;保湿剤;ナイトクリーム、ローション、パウダー及びスプレー;ペーストマスク/泥マスク;並びにスキンフレッシュナー)、及び日焼け止め剤が挙げられる。日焼け止め剤は特に好ましい製剤である。製剤は、局所投与に適した任意の形態で、例えば、局所用懸濁剤、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、ヒドロゲル剤、フォーム剤、ペースト剤、チンキ剤、リニメント剤、噴霧可能な液剤、エアロゾル剤、スティック剤又は粉剤の形態で提供してもよい。製剤は任意で、不活性成分、補助剤並びに/又は添加剤、例えば、共乳化剤、脂肪、ワックス、安定剤、増粘剤、生物起源の活性成分、フィルム形成剤、香料、染料、真珠光沢剤、保存剤、顔料、電解質及びpH調整剤を含んでいてもよい。
【0042】
日焼け止め剤は、親油性フェノール系ポリマー粒子とUV線防御剤とを含み得る。UV線防御剤は、UV線を吸収し、反射し及び/又は散乱する任意の物質であってよい。日焼け止め剤は任意に、紫外線防御指数(sun protection factor)ブースター又は安定剤、例えば、メトキシクリレン及びポリエステル-8を含んでいてもよい。
【0043】
適切はUV線防御剤の例としては、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)、p-アミノ安息香酸(PABA)、パディメートO(ODーPABA、オクチルジメチル-PABA、σ-PABA)、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸(エンスリゾール、EUSOLEX(登録商標)232、PBSA、PARSOL(登録商標)HS)、シノキサート(p-メトキシケイ皮酸2-エトキシエチル)、ジオキシベンゾン(ベンゾフェノン-8)、オキシベンゾン(ベンゾフェノン-3、EUSOLEX(登録商標)4360、ESCALOL(登録商標)567)、ホモサレート(サリチル酸ホモメチル、HMS)、アントラニル酸メンチル(メラジマート)、オクトクリレン(EUSOLEX(登録商標)OCR、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸、2-エチルヘキシルエステル)、メトキシケイ皮酸オクチル(オクチノキサート、EMC、OMC、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ESCALOL(登録商標)557、2-エチルヘキシル-パラメトキシシンナメート、PARSOL(登録商標)MCX)、サリチル酸オクチル(オクチサレート、サリチル酸2-エチルヘキシル、ESCALOL(登録商標)587)、スリソベンゾン(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、3-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-6-メトキシベンゼンスルホン酸、ベンゾフェノン-4、ESCALOL(登録商標)577)、サリチル酸トロラミン(サリチル酸トリエタノールアミン)、アボベンゾン(1-(4-メトキシフェニル)-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパン-1,3-ジオン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、BMDBM、PARSOL(登録商標)1789、EUSOLEX(登録商標)9020)、エカムスル(MEXORYL(登録商標)SX、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸)、酸化セリウム(CeO)、ドロメトリゾールトリシロキサン(MEXORYL(登録商標)XL)、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(TINOSORB(登録商標)S)、ビソクトリゾール(TINOSORB(登録商標)M、MILESTAB(商標)360)、及びそれらのその組合せが挙げられる。好ましいUV線防御剤としては、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)及びそれらの組合せが挙げられる。好ましくは、UV線防御剤は、米国(米食品医薬品局又はFDA)、カナダ、欧州連合、オーストラリア、日本、韓国、中国、メルコスール、東南アジア諸国連合(ASEAN)、独立国家共同体(CIS)及び湾岸協力会議(GCC)の監督機関の少なくとも1つによって承認されている。
【0044】
親油性フェノール系ポリマー粒子を含む日焼け止め剤は、従来の日焼け止め剤と比較していくつかの利点を提供する。フェノール系ポリマー粒子を含めると、非常に耐水性の日焼け止め剤が生成される。加えて、フェノール系ポリマー粒子により、日焼け止め剤はUV線とHEV線の両方を遮断又は減弱することができる。フェノール系ポリマー粒子はまた、UV線及びHEV線による光誘起フリーラジカル発生に対して耐性がある。
【0045】
親油性フェノール系ポリマー粒子を含む製剤は、種々の健康上の利益を提供する。フェノール系ポリマー粒子は、フリーラジカルの中和において極めて効率的であるので、酸化防止剤として作用する。これらの特性により、フェノール系ポリマー粒子は、皮膚、毛髪及び爪への酸化的ストレス又は損傷を処置又は予防することができる。例えば、フェノール系ポリマー粒子を使用して、ケラチン物質(例えば、毛髪、手指の爪、足指の爪及び皮膚の外層)を防御する、ヒト皮膚を防御する、脂質過酸化を抑制する、皮膚上のしわ及びリンクルを予防又は低減する、皮膚の弾力の喪失を予防する、皮膚の菲薄化を予防する、並びに皮膚の色素黒ずみを予防することができる。これらの健康上の利益は、親油性フェノール系ポリマー粒子を含有する製剤を皮膚の領域に適用することによって得ることができる。
【0046】
[実施例]
[例1]
リグノスルホン酸ナトリウム及びジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2のトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル中分散体
30.0重量部のリグノスルホン酸ナトリウム(Vanisperse A、Borregaard LignoTech社)を10.5重量部のジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2及び59.5重量部のトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルと合わせた。混合物を、均質になるまで撹拌し、横型メディアミルに移し、0.5のスケールグラデーションを有する0~12ミクロンを指示するHegmanゲージで示される最大粒径が0.5ミクロン未満になるまで0.3mmのイットリア安定化ジルコニアメディアを使用して微粉砕した。得られた分散体は、流動性であった。分散体中のリグノスルホン酸ナトリウム粒子の粒径は、静的光散乱によって、0.169ミクロンと測定され、0.1ミクロン未満の粒子は検出されなかった。
【0047】
[例2]
リグノスルホン酸ナトリウム及びジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2のカプリル酸ヤシ油アルキル中分散体
30.0重量部のリグノスルホン酸ナトリウム(Vanisperse A、Borregaard LignoTech社)を13.5重量部のジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2及び56.5重量部のカプリル酸ヤシ油アルキルと合わせた。混合物を、均質になるまで撹拌し、横型メディアミルに移し、0.5のスケールグラデーションを有する0~12ミクロンを指示するHegmanゲージで示される最大粒径が0.5ミクロン未満になるまで0.3mmのイットリア安定化ジルコニアメディアを使用して微粉砕した。得られた分散体は、流動性であった。
【0048】
[例3]
リグノスルホン酸ナトリウム及びポリヒドロキシステアリン酸のカプリル酸ヤシ油アルキル中分散体
30.0重量部のリグノスルホン酸ナトリウム(Vanisperse A、Borregaard LignoTech社)を12.0重量部のポリヒドロキシステアリン酸及び58.0重量部のカプリル酸ヤシ油アルキルと合わせた。混合物を、均質になるまで撹拌し、横型メディアミルに移し、0.5のスケールグラデーションを有する0~12ミクロンを指示するHegmanゲージで示される最大粒径が0.5ミクロン未満になるまで0.3mmのイットリア安定化ジルコニアメディアを使用して微粉砕した。得られた分散体は、流動性であった。
【0049】
[例4]
リグノスルホン酸ナトリウム及びレシチンのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル中分散体
30.0重量部のリグノスルホン酸ナトリウム(Vanisperse A、Borregaard LignoTech社)を14.0重量部のレシチン及び56.0重量部のトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルと合わせた。混合物を、均質になるまで撹拌し、横型メディアミルに移し、0.5のスケールグラデーションを有する0~12ミクロンを指示するHegmanゲージで示される最大粒径が0.5ミクロン未満になるまで0.3mmのイットリア安定化ジルコニアメディアを使用して微粉砕した。得られた分散体は、流動性であった。
【0050】
[例5]
リグノスルホン酸ナトリウム及びジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2の安息香酸アルキル(C12-C15)中分散体
30.0重量部のリグノスルホン酸ナトリウム(Maracell XE、Borregaard LignoTech社)を13.5重量部のジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2及び56.5重量部の安息香酸アルキル(C12-C15)と合わせた。混合物を、均質になるまで撹拌し、横型メディアミルに移し、0.5のスケールグラデーションを有する0~12ミクロンを指示するHegmanゲージで示される最大粒径が0.5ミクロン未満になるまで0.3mmのイットリア安定化ジルコニアメディアを使用して微粉砕した。得られた分散体は、流動性であった。
【0051】
[例6]
リグノスルホン酸ナトリウム:リグノスルホン酸カルシウムの2:1混合物及びジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2のトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル中分散体
30.0重量部のリグノスルホン酸ナトリウム:リグノスルホン酸カルシウムの概ね2:1の混合物(Marasperse C-21、Borregaard LignoTech社)を13.5重量部のジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2及び56.5重量部のトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルと合わせた。混合物を、均質になるまで撹拌し、横型メディアミルに移し、0.5のスケールグラデーションを有する0~12ミクロンを指示するHegmanゲージで示される最大粒径が0.5ミクロン未満になるまで0.3mmのイットリア安定化ジルコニアメディアを使用して微粉砕した。得られた分散体は、流動性であった。
【0052】
[例7]
フミン酸カリウム及びジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2のトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル中分散体
30.0重量部のフミン酸カリウム(Borregro HA-2、Borregaard LignoTech社)を13.5重量部のジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2及び56.5重量部のトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルと合わせた。混合物を、均質になるまで撹拌し、横型メディアミルに移し、0.5のスケールグラデーションを有する0~12ミクロンを指示するHegmanゲージで示される最大粒径が0.5ミクロン未満になるまで0.3mmのイットリア安定化ジルコニアメディアを使用して微粉砕した。得られた分散体は、流動性であった。
【0053】
[例8]
リグノスルホン酸ナトリウム及びセチルジグリセリルトリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチコンのトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル中分散体
30.0重量部のリグノスルホン酸ナトリウム(Vanisperse A、Borregaard LignoTech社)を13.5重量部のセチルジグリセリルトリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチコン及び56.5重量部のトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルと合わせた。混合物を、均質になるまで撹拌し、横型メディアミルに移し、0.5のスケールグラデーションを有する0~12ミクロンを指示するHegmanゲージで示される最大粒径が0.5ミクロン未満になるまで0.3mmのイットリア安定化ジルコニアメディアを使用して微粉砕した。得られた分散体は、流動性であった。
【0054】
[例9]
(比較例)
リグノスルホン酸ナトリウム及びアルミナの水性スラリー
米国特許第6,500,411号明細書、米国特許第6,716,418号明細書及び米国特許出願公開第2010/0202985号に記載されるようにして、リグノスルホン酸ナトリウムの水溶液を調製した。30重量部のリグノスルホン酸ナトリウム(Vanisperse A、Borregaard LignoTech社)を、70重量部の脱イオン水に添加した。リグノスルホン酸ナトリウムが完全に溶解されるまで、溶液を撹拌した。この溶液に、60重量部のサブミクロン(静的光散乱で測定した場合、体積D50が0.42ミクロン)の板状アルミナ(E390、Saint-Gobain社)を添加した。得られたスラリーを、分散機ブレードを使用して30分間混合した。得られた水性スラリーは均質で、容易に流動性であった。
【0055】
[例10]
油相中にフェノール系ポリマーを含む保湿剤
保湿剤組成物を、油相中に例1の分散体を含む油中水型エマルジョンとして調製した。保湿剤組成物の成分を以下に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
コールドプロセスを使用して、油相の成分を合わせ、均質になるまで混合し、別個に、水相の成分を合わせ、均質になるまで混合した。次いで、2つの相を合わせ、Ross HSM-100LC1ホモジナイザーを使用して5,000RPMで4分間均質化した。得られたエマルジョンは、50℃で75日間エージング後に安定であり、非常に耐水性であった。親油性により分散されるフェノール系ポリマー粒子が油相中に存在することにより、HEV遮断及び酸化防止特性を有する保湿剤が生成された。
【0058】
[例11]
油相中にフェノール系ポリマーを含む保湿日焼け止め剤
日焼け止め剤組成物を、油相中に例1の分散体を含む油中水型エマルジョンとして調製した。日焼け止め剤組成物の成分を以下に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
コールドプロセスを使用して、油相の成分を合わせ、均質になるまで混合し、別個に、水相の成分を合わせ、均質になるまで混合した。次いで、2つの相を合わせ、Ross HSM-100LC1ホモジナイザーを使用して5,000RPMで4分間均質化した。得られたエマルジョンは、50℃で75日間エージング後に安定であり、非常に耐水性であった。親油性により分散されるフェノール系ポリマー粒子の存在により、HEV遮断及び酸化防止特性を有する保湿日焼け止め剤が生成された。
【0061】
[例12]
油相中にフェノール系ポリマーを含むコンシーラースティック(データの裏付けのない例)
コンシーラースティック組成物を、例1の分散体を含む無水組成物として調製する。コンシーラースティックの成分を以下に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
相Aを合わせ、高剪断条件下で混合する。相Bを相Aに添加し、混合物を高剪断条件下で85℃に加熱する。高剪断条件下で温度を85℃に維持しながら、相Cを混合物中に分散させる。次いで、このバッチを高剪断条件下で冷却する。混合物が65℃未満に冷えたら、相D及びEを混合物に、高剪断条件下で段階的に添加する。このバッチを、温度が60℃に達するまで、冷え続けさせる。次いで、このバッチを最終パッケージに計量分配する。親油性により分散されるフェノール系ポリマー粒子の存在により、HEV遮断及び酸化防止特性を有するコンシーラースティックが生成される。
【0064】
[例13]
HEV遮断の研究
例1の分散体と例9の比較の水性スラリーのHEV遮断を比較した。21 C.F.R.§201.327(Over-the-counter sunscreen drug products; required labeling based on effectiveness testing)及びISO 24443(Determination of sunscreen UVA photoprotection in vitro)に記載されている方法と同様な拡散透過法を使用して、HEV遮断を測定した。
【0065】
1.3mg/cmの例1の分散体を、粗面化された3次元表面トポグラフィーを有する光学グレードのポリメチルメタクリレート(PMMA,polymethylmethacrylate)基材(LabSphere HelioPlate HD6)の表面に適用した。分散体は、0.39mg/cmのフェノール系ポリマーの送達用量に相当するように基材の表面に均一に適用した。例9の水性スラリーを、同様にして、0.39mg/cmのフェノール系ポリマーの送達用量に相当するように基材に均一に適用した。
【0066】
試料を視覚的に検査したところ、試料は両方とも、HEV領域の光吸収に関連する特徴的な茶色を示した。次いで、試料を室温に1時間放置した。両試料及び対照ブランクの光学的グレードPMMA基材の吸光度を、LabSphere UV-2000S分光光度計を使用して450nmのHEV波長において測定した。正味の吸光度値は、基材上における試料の測定吸光度から対照ブランク基材の吸光度を引くことによって決定した。
【0067】
450nmにおける単色防御指数(MPF)は、(Bleasel, M.D. et al., "In vitro evaluation of sun protection factors of sunscreen agents using a novel UV spectrophotometric technique", International Journal of Cosmetic Science, Vol. 30, Issue 4, pp. 259-270 (2008))における手順に従って決定した。
MPFは、以下の式2:
【0068】
【数2】
【0069】
[式中、A(λ)は波長λにおける試料の正味吸光度である]
によって表すことができる。
【0070】
結果を以下の表に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
例1の分散体は、例9の水性スラリーよりも大きい正味吸光度及び大きいMPFを示した。これらの結果は、油相に分散されたフェノール系ポリマーが、フェノール系ポリマーの水性スラリーと比較して優れたHEV遮断を有することを示している。
【0073】
[例14]
耐水性の研究
例1の分散体と例9の比較の水性スラリーの耐水性を比較した。耐水性は、COLIPA 2005(Cosmetics Europe, "Guidelines for evaluating sun product water resistance", available online at www.cosmeticseurope.eu/files/7914/6407/7400/Guidelines_for_Evaluating_Sun_Product_Water_Resistance_-_2005.pdf, 15 pages (2005))と一致する80分間の水浸シーケンスを使用して測定したが、インビトロで行った。
【0074】
高さ22cm×直径16cmのステンレス鋼容器に脱イオン水を充填し、30~33℃の温度に維持した。容器は、試験期間の全体を通じて、直径5cmのフラットブレードインペラーを使用して350RPMにおいて撹拌した。例1の分散体及び例9の比較の水性スラリーの試料を容器中に容器壁近くで、適用された試料がインペラーに対向するようにして懸濁させた。80分間の浸漬後に試料を容器から取り出し、1時間乾燥させた。正味吸光度及び単色防御指数(MPF)を、例13に記載したようにして測定した。結果を以下の表に示す。
【0075】
【表5】
【0076】
例1の分散体は、正味吸光度(450nm)の95%を維持し、最初のMPF(450nm)値の88%を保持することができた。これらの結果は、例1の分散体が非常に耐水性であることを示している。視覚的検査から、例9の水性スラリーは、水浸シーケンスに入れて120秒で、HEV減弱と関連して特徴的な茶色の大部分を喪失していることが明らかになった。加えて、例9の水性スラリーは、非常に耐水性として分類される要件を満たさなかった。これらの結果は、油相中の、親油性により分散されるフェノール系ポリマー粒子が、フェノール系ポリマーの水性スラリーと比較して優れた耐水性を有することを示している。
【0077】
[例15]
フリーラジカルクエンチ及び光安定性の研究
例1の分散体のフリーラジカルクエンチ及び光安定性について検討した。光安定度は、修正DPPH光安定性試験(定義の部分を参照のこと)に従って決定した。フリーラジカルクエンチは、フリーラジカルクエンチ試験(定義の部分を参照のこと)に従って決定した。二酸化チタンは、実質的に非光安定性(光触媒性)であって、UV線への曝露時に大量の光誘起フリーラジカルを発生することが公知であるので、比較物質として使用した。
【0078】
5つの光安定性試験を、種々の量の、例1の分散体及び参照二酸化チタンを使用して行った。結果を以下の表に示す。
【0079】
【表6】
【0080】
試験1の結果は、例1の分散体が超光安定性であることを示している。これと比較して、等量の参照二酸化チタン(試験4)は超光安定性でなく、29倍の濃度のフリーラジカルを生成した。等量の例1の分散体及び二酸化チタンを含有する組成物(試験2及び3)は、超光安定性であった。これは、例1の分散体が、光活性の高い参照物質によって生成されたフリーラジカルを73.7%~94.7%活発にクエンチすることを示している。例1の分散体は、いずれの重量パーセントにおいてもフリーラジカルクエンチ試験に合格した。
【0081】
結果は、油相中の、親油性により分散されるフェノール系ポリマー粒子は超光安定性であり、フリーラジカルクエンチ試験に合格することを示している。フリーラジカルクエンチ能力は、親油性フェノール系ポリマーの酸化防止特性の指標である。結果はまた、親油性フェノール系ポリマー粒子を光活性の高い物質と合わせて、UVによって発生されるフリーラジカルから使用者を防御する超光安定性組成物を生成できることを示している。
【0082】
(参考文献)
1. U.S. Patent No. 6,500,411.
2. U.S. Patent No. 6,716,418.
3. U.S. Patent No. 8,309,063.
4. U.S. Patent No. 8,445,562.
5. U.S. Patent No. 8,911,976.
6. U.S. Patent No. 10,035,928.
7. U.S. Patent Application Publication No. 2007/0178057.
8. U.S. Patent Application Publication No. 2010/0202985.
9. U.S. Patent Application Publication No. 2015/0166836.
10. U.S. Patent Application Publication No. 2018/0291210.
11. International Patent Application Publication No. WO 2009/038477.
12. International Patent Application Publication No. WO 2014/144746.
13. International Patent Application Publication No. WO 2014/164418.
14. International Patent Application Publication No. WO 2017/197530.
15. Pan, X. et al., "Organosolv ethanol lignin from hybrid poplar as a radical scavenger: relationship between lignin structure, extraction conditions, and antioxidant activity", Journal of Agricultural and Food Chemistry, Vol. 54, pp. 5806-5813 (2006).
16. Cosmetics Europe, "Guidelines for evaluating sun product water resistance", available online at www.cosmeticseurope.eu/files/7914/6407/7400/Guidelines_for_Evaluating_Sun_Product_Water_Resistance_-_2005.pdf, 15 pages (2005).
17. Bleasel, M.D. et al., "In vitro evaluation of sun protection factors of sunscreen agents using a novel UV spectrophotometric technique", International Journal of Cosmetic Science, Vol. 30, Issue 4, pp. 259-270 (2008).
18. The International Lignin Institute, "About lignin", available online at www.ili-lignin.com/aboutlignin.php (accessed August 30, 2019).
図1