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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】熱電発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20241015BHJP
   F24S 23/75 20180101ALI20241015BHJP
【FI】
H02N11/00 A
F24S23/75
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023564112
(86)(22)【出願日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 JP2023030151
(87)【国際公開番号】W WO2024105954
(87)【国際公開日】2024-05-23
【審査請求日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2022181485
(32)【優先日】2022-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】517082009
【氏名又は名称】陽力熱電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中沼 忠司
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/099943(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
F24S 23/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源から熱を取り込む集熱部と、
前記集熱部に熱的に接触した第1の蓄熱体と、
一端部および他端部を有する熱電変換ユニットと、
前記第1の蓄熱体および前記熱電変換ユニットの前記一端部間に配置されて前記熱電変換ユニットの前記一端部の温度の調節を行う温度調節ユニットと、
前記熱電変換ユニットの前記他端部に熱的に接触した第2の蓄熱体と、
前記第2の蓄熱体に熱的に接触した放熱部と、
前記第1の蓄熱体、前記温度調節ユニットの少なくとも一部、前記熱電変換ユニットおよび前記第2の蓄熱体を被覆する断熱層と、
前記第1の蓄熱体の温度を測定する第1の温度センサと、
前記第2の蓄熱体の温度を測定する第2の温度センサと、を備え、
前記温度調節ユニットは、前記第1および前記第2の温度センサから受信した測定値に基づいて前記温度の調節を行うものであることを特徴とする熱電発電装置。
【請求項2】
前記温度調節ユニットは、
前記熱電変換ユニットの前記一端部に熱的に接触するとともに、前記断熱層によって被覆された第3の蓄熱体と、
前記第1および前記第3の蓄熱体間に配置されるとともに、前記断熱層によって被覆され、前記第1および前記第3の蓄熱体に接触して前記第1および前記第3の蓄熱体間で熱移動させるON位置と、前記第1および前記第3の蓄熱体のうちの一方から離間して前記熱移動を停止させるOFF位置との間で変化し得る熱流スイッチと、
前記第3の蓄熱体の温度を測定する第3の温度センサと、
前記熱流スイッチに作動的に接続されるとともに、前記第1および前記第2の温度センサから受信した前記測定値、および前記第3の温度センサから受信した測定値に基づいて前記熱流スイッチを制御する制御部と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の熱電発電装置。
【請求項3】
前記集熱部が、前記熱源との熱交換を遮断するための熱遮蔽機構を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱電発電装置。
【請求項4】
前記集熱部が、
前記第1の蓄熱体に熱的に接触するとともに、太陽光を受ける受光部と、
前記太陽光を前記受光部に集光する集光部と、を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱電発電装置。
【請求項5】
前記集熱部が、さらに、前記受光部、または前記受光部および前記集光部への前記太陽光の入射を遮るための遮光機構を有していることを特徴とする請求項4に記載の熱電発電装置。
【請求項6】
前記第1の蓄熱体が前記熱電発電装置から取り外して、再び前記熱電発電装置に組み込み可能になっており、さらに、
別の前記集熱部を有し、取り外された前記第1の蓄熱体を加熱する外部の加熱装置を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱電発電装置。
【請求項7】
第1の蓄熱体と、
一端部および他端部を有する熱電変換ユニットと、
前記第1の蓄熱体および前記熱電変換ユニットの前記一端部間に配置されて前記熱電変換ユニットの前記一端部の温度の調節を行う温度調節ユニットと、
前記熱電変換ユニットの前記他端部に熱的に接触した第2の蓄熱体と、
前記第1の蓄熱体、前記温度調節ユニットの少なくとも一部、前記熱電変換ユニットおよび前記第2の蓄熱体を被覆する断熱層と、
前記第1の蓄熱体の温度を測定する第1の温度センサと、
前記第2の蓄熱体の温度を測定する第2の温度センサと、を有し、
前記温度調節ユニットが、前記第1および前記第2の温度センサから受信した測定値に基づいて前記温度の調節を行うようにした装置本体を備え、
前記第1および前記第2の蓄熱体がそれぞれ前記装置本体から取り外して、再び前記装置本体に組み込み可能になっており、さらに、
取り外された前記第1の蓄熱体に熱的に接触し、熱源から熱を取り込む集熱部を有し、前記第1の蓄熱体を加熱する外部の加熱装置と、
取り外された前記第2の蓄熱体に熱的に接触する放熱部を有し、前記第2の蓄熱体を冷却する外部の冷却装置と、を備えたものであることを特徴とする熱電発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から取り込んだ熱エネルギーを、熱電変換ユニットを用いて電気エネルギーに変換することで発電を行う熱電発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、環境に接触し、環境の温度変化に応じて環境と熱交換し得る導熱体と、蓄熱体と、導熱体および蓄熱体間に配置された熱電変換ユニットと、導熱体と熱電変換ユニットとの対、または熱電変換ユニットと蓄熱体との対間に配置されて、当該対間の熱移動を制御する熱流調節ユニットと、一定の熱絶縁性を有し、蓄熱体を被覆する被覆層と、を備え、導熱体および蓄熱体間に生じる温度差を利用して、熱電変換ユニットから電気エネルギーを取り出す熱電発電装置が記載されている。
【0003】
この熱電発電装置を、例えば、昼夜で周期的に温度変化する屋外大気中に配置すると、導熱体は1日の気温の変化に伴って温度変化し、蓄熱体もそれに追従して温度変化するが、このとき、熱流調節ユニットが、導熱体の温度変化と蓄熱体の温度変化の間に一定程度の遅延を生じさせるように動作する。
【0004】
こうして、導熱体の温度変化サイクルと蓄熱体の温度変化サイクルの間に位相差が生じ、この位相差によって、1日を通じて導熱体および蓄熱体間に発電のための温度差が維持され、1日に2回、導熱体の温度が上昇するときと導熱体の温度が下降するときに、発電が行われる。
【0005】
そして、この熱電発電装置をワイヤレスセンサーやリモートモニター等の電子機器の電源として使用した場合には、商用電源から電子機器への電力供給線や電池の交換作業が不要な独立電源が得られ、これらの電子機器を必要な場所に自由に設置できる。
【0006】
しかし、この熱電発電装置によれば、1日のうちの気温の上昇時に蓄熱体に蓄えられた熱が当該1日のうちの気温の下降時に蓄熱体から放出され、その間に生じた導熱体との温度差に応じて発電が行われるので、低消費電力の電子機器の作動に必要な比較的小さな電力を供給することができるが、一般家庭での1日の消費電力等、より大きな電力を供給することはできなかった。
【0007】
さらには、この熱電発電装置によれば、熱電発電装置の設置場所、あるいは熱源の種類によっては、導熱体が熱電変換ユニットの動作保証温度を超える高温まで加熱されることもあり、かかる場合、熱電変換ユニットが導熱体から熱流調節ユニットを介して直接的に熱供給を受けるので、熱電変換ユニットがその動作保証温度以上に加熱され、熱電変換ユニットが動作不能になる、あるいは故障するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2013/099943号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、より大きな電力をより安定的に供給することができる熱電発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明によれば、熱源から熱を取り込む集熱部と、前記集熱部に熱的に接触した第1の蓄熱体と、一端部および他端部を有する熱電変換ユニットと、前記第1の蓄熱体および前記熱電変換ユニットの前記一端部間に配置されて前記熱電変換ユニットの前記一端部の温度の調節を行う温度調節ユニットと、前記熱電変換ユニットの前記他端部に熱的に接触した第2の蓄熱体と、前記第2の蓄熱体に熱的に接触した放熱部と、前記第1の蓄熱体、前記温度調節ユニットの少なくとも一部、前記熱電変換ユニットおよび前記第2の蓄熱体を被覆する断熱層と、前記第1の蓄熱体の温度を測定する第1の温度センサと、前記第2の蓄熱体の温度を測定する第2の温度センサと、を備え、前記温度調節ユニットは、前記第1および前記第2の温度センサから受信した測定値に基づいて前記温度の調節を行うものであることを特徴とする熱電発電装置が提供される。
【0011】
本発明の好ましい実施例によれば、前記温度調節ユニットは、前記熱電変換ユニットの前記一端部に熱的に接触するとともに、前記断熱層によって被覆された第3の蓄熱体と、前記第1および前記第3の蓄熱体間に配置されるとともに、前記断熱層によって被覆され、前記第1および前記第3の蓄熱体に接触して前記第1および前記第3の蓄熱体間で熱移動させるON位置と、前記第1および前記第3の蓄熱体のうちの一方から離間して前記熱移動を停止させるOFF位置との間で変化し得る熱流スイッチと、前記第3の蓄熱体の温度を測定する第3の温度センサと、前記熱流スイッチに作動的に接続されるとともに、前記第1および前記第2の温度センサから受信した前記測定値、および前記第3の温度センサから受信した測定値に基づいて前記熱流スイッチを制御する制御部と、を有している。
【0012】
本発明の別の好ましい実施例によれば、前記集熱部が、前記熱源との熱交換を遮断するための熱遮蔽機構を有している。
【0013】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記集熱部が、前記第1の蓄熱体に熱的に接触するとともに、太陽光を受ける受光部と、前記太陽光を前記受光部に集光する集光部と、を有しており、より好ましくは、前記集熱部が、さらに、前記受光部、または前記受光部および前記集光部への前記太陽光の入射を遮るための遮光機構を有している。
【0014】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記第1の蓄熱体が前記熱電発電装置から取り外して、再び前記熱電発電装置に組み込み可能になっており、前記熱電発電装置は、さらに、別の前記集熱部を有し、取り外された前記第1の蓄熱体を加熱する外部の加熱装置を備えている。
【0015】
上記課題を解決するため、また、本発明によれば、第1の蓄熱体と、一端部および他端部を有する熱電変換ユニットと、前記第1の蓄熱体および前記熱電変換ユニットの前記一端部間に配置されて前記熱電変換ユニットの前記一端部の温度の調節を行う温度調節ユニットと、前記熱電変換ユニットの前記他端部に熱的に接触した第2の蓄熱体と、前記第1の蓄熱体、前記温度調節ユニットの少なくとも一部、前記熱電変換ユニットおよび前記第2の蓄熱体を被覆する断熱層と、前記第1の蓄熱体の温度を測定する第1の温度センサと、前記第2の蓄熱体の温度を測定する第2の温度センサと、を有し、前記温度調節ユニットが、前記第1および前記第2の温度センサから受信した測定値に基づいて前記温度の調節を行うようにした装置本体を備え、前記第1および前記第2の蓄熱体がそれぞれ前記装置本体から取り外して、再び前記装置本体に組み込み可能になっており、さらに、取り外された前記第1の蓄熱体に熱的に接触し、熱源から熱を取り込む集熱部を有し、前記第1の蓄熱体を加熱する外部の加熱装置と、取り外された前記第2の蓄熱体に熱的に接触する放熱部を有し、前記第2の蓄熱体を冷却する外部の冷却装置と、を備えたものであることを特徴とする熱電発電装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、集熱部から取り込まれた熱源の熱が第1の蓄熱体に蓄えられる一方、第2の蓄熱体からは放熱部を通じて熱が放出されて、第1の蓄熱体が熱電変換ユニットの動作保証温度よりも高温に保たれるとともに、第1の蓄熱体には常時1日の発電に必要な量以上の熱エネルギーが蓄えられる。
【0017】
同時に、温度調節ユニットの制御によって、熱電変換ユニットの温度が動作保証温度以下で、かつ動作保証温度の近傍に保たれ、第2の蓄熱体を低温蓄熱体として、温度調節ユニットに接する熱電変換ユニットの高温側の一端部と、第2の蓄熱体に接する熱電変換ユニットの低温側の他端部との間に発電に必要な温度差が維持される。
【0018】
そして、日々、第1の蓄熱体から温度調節ユニットと熱電変換ユニットを通じて第2の蓄熱体に熱が移動せしめられ、熱電変換ユニットの高温側の一端部および低温側の他端部間に必要な温度差が維持され、熱電変換ユニットから電気エネルギーが取り出される。
【0019】
例えば、熱電発電装置の運転時の熱損失がゼロと仮定して、熱電発電ユニットの高温側の定格温度が200℃であり、180℃から200℃で発電が行われる場合、第1の蓄熱体は200℃から例えば500℃まで加熱されて、第1の蓄熱体に熱エネルギーが蓄えられる。
【0020】
また、温度調節ユニットによって、熱電変換ユニットの高温側が180℃~200℃に維持されるように制御がなされる(180℃以下になると、熱電変換ユニットの高温側に熱が供給されるが、200℃以上になると、熱電変換ユニットの高温側への熱供給が停止するように制御される)。
【0021】
この場合、200℃と500℃の温度差300℃と第1の蓄熱体の比熱容量との積が、熱電発電装置に蓄えられた熱エネルギーであり、第1の蓄熱体が200℃以上に加熱されることで、必要な日数分の熱エネルギーが蓄えられて安定的に発電が行われる。
【0022】
つまり、本発明による熱電発電は、河川をダムによって堰き止めてダムの上流側にダム湖を形成し、常時一定量(例えば、数か月分の河川流量)を貯水する一方、ダムからは1日の平均河川流量に相当する水量を放流することで、ダム湖水面とダム下流側の水面の間に一定程度の水位差を維持し、この水位差に応じた水の位置エネルギーを利用して発電を行う水力発電に例えることができる。
【0023】
こうして、本発明によれば、第1の蓄熱体を高温蓄熱体とし、第2の蓄熱体を低温蓄熱体として、熱電変換ユニットの高温側端部および低温側端部間に発電に適した十分な温度勾配を生じさせることができるので、家庭やオフィスで使用される電力を十分に賄えるだけの発電量が得られる。
また、第1の蓄熱体に複数日分の発電に必要な熱量を蓄えることができるので、蓄熱が十分に行えない日が数日続いたとしても、常に安定した発電が可能となる。
【0024】
また、第1の蓄熱体が熱電変換ユニットの動作保証温度以上に加熱される場合であっても、第1の蓄熱体および熱電変換ユニット間に温度調節ユニットが介在することで、熱電変換ユニットがその動作保証温度を超える温度まで加熱されることが防止され、それによって、熱電変換ユニットの安定した動作が保証される。
【0025】
そして、例えば、本発明の熱電発電装置を家庭やオフィス用の電源として屋外、または家屋やビルの屋根に設置し、第1の蓄熱体への蓄熱を主として日射エネルギーを利用して行うようにした場合には、昼夜、晴雨、季節等の影響を受けて大きく変動し、供給が不安定な再生可能エネルギーとされる太陽光を、熱エネルギーとして複数日分蓄えておき、日々の需要に応じて、電気エネルギーに変換して安定的に供給することが可能となる。
【0026】
また、熱源が太陽光であって、地域によって冬季に日射量が不足するような場合は、第1の蓄熱体を熱電発電装置から取り外して、再び熱電発電装置に組み込み可能にしておき、さらに、別の集熱部を有し、取り外した第1の蓄熱体を加熱する外部の加熱装置を備えることもできる。
この外部の加熱装置の熱源としては、例えば、バイオ燃料や化石燃料の燃焼による熱エネルギーを使用することができる。
【0027】
また、本発明によれば、上記の熱電発電装置から集熱部と放熱部を省略して装置本体とし、第1および第2の蓄熱体を装置本体から取り外して、再び装置本体に組み込み可能にしておき、この装置本体に加えて、さらに、取り外した第1の蓄熱体に熱的に接触し、熱源から熱を取り込む集熱部を有し、第1の蓄熱体を加熱する外部の加熱装置と、取り外した第2の蓄熱体に熱的に接触する放熱部を有し、第2の蓄熱体を冷却する外部の冷却装置と、を備えたことによって、熱電発電装置の発電部をコンパクト化することができる。
こうして、この装置本体を移動する機械装置や自動車に搭載して、動力源となる電気エネルギーを提供することができる。
【0028】
なお、取り出した電気エネルギーを、太陽光発電の場合と同様に、一旦蓄電池に蓄え、電力調整装置(Power Conditioning System、PCS)によって交流電力として提供することも可能であり、それによって、短い時間は熱電変換ユニットの出力よりも大きな電力を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の1実施例による熱電発電装置の概略構成を示す縦断面図である。
図2】熱流スイッチの具体例を示す図である。
図3】熱流スイッチの具体例を示す図である。
図4】本発明の別の実施例による熱電発電装置の概略構成を示す縦断面図である。
図5図4に示した熱電発電装置の変形例の概略構成を示す縦断面図である。
図6】本発明のさらに別の実施例による熱電発電装置の概略構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の構成を好ましい実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明の1実施例による熱電発電装置の概略構成を示す縦断面図である。
図1に示すように、本発明の熱電発電装置1は、熱源Qから熱を取り込む集熱部2と、集熱部2に熱的に接触した第1の蓄熱体(高温蓄熱体)3を備えている。
【0031】
熱源Qとしては、例えば、太陽光(日射エネルギー)、工業炉、地熱、内燃機関の排ガス、原子炉、およびそれらの熱エネルギーが蓄えられた蓄熱体等が利用できる。
【0032】
集熱部2は、熱源Qからの熱の取込み(熱の吸収)がより高い効率で行えるような構成を有していることが好ましい。
また、集熱部2は、好ましくは、熱源Qとの熱交換を遮断するための熱遮蔽機構を有している。そして、第1の蓄熱体3が所定温度以上に加熱されるおそれがある場合や、熱電発電装置のメンテナンスを行う場合等に、熱遮蔽機構が動作することによって、熱電発電装置の破壊が防止され、また作業者の安全が保証される。
【0033】
第1の蓄熱体3は、好ましくは、金属ブロック、または岩石、またはコンクリートブロック、または潜熱蓄熱材、または水等の液体(ゲル状のものを含む)で満たされた容器からなっており、この実施例では、アルミニウム塊またはコンクリート塊からなっている。
【0034】
本発明の熱電発電装置1は、さらに、一端部4aおよび他端部4bを有する熱電変換ユニット4と、第1の蓄熱体3および熱電変換ユニット4の一端部4a間に配置されて熱電変換ユニット4の一端部4aの温度を調節する温度調節ユニット5と、熱電変換ユニット4の他端部4bに熱的に接触した第2の蓄熱体(低温蓄熱体)6と、第2の蓄熱体6に熱的に接触した放熱部7と、第1の蓄熱体3、温度調節ユニット5の少なくとも一部、熱電変換ユニット4および第2の蓄熱体6を被覆する断熱層8と、第1の蓄熱体3の温度を測定する第1の温度センサ12と、第2の蓄熱体6の温度を測定する第2の温度センサ13と、を備えている。
【0035】
熱電変換ユニット4による熱電変換の方式は限定されず、ゼーベック効果によるもの、異常ネルンスト効果によるもの、熱電子発電(Thermionic Conversion、TIC)によるもの、スピン・ゼーベック効果によるもの等の他、熱から電気への直接発電ではないがバイナリー発電など、任意の方式のものが使用可能である。
【0036】
第2の蓄熱体6は第1の蓄熱体3と同様の構成を有している。
【0037】
温度調節ユニット5は、この実施例では、熱電変換ユニット4の一端部4aに熱的に接触するとともに、断熱層8によって被覆された第3の蓄熱体9と、第1および第3の蓄熱体3、9間に配置されるとともに、断熱層8によって被覆され、第1および第3の蓄熱体3、9に接触して第1および第3の蓄熱体3、9間で熱移動させるON位置と、第1および第3の蓄熱体3、9のうちの一方から離間して熱移動を停止させるOFF位置との間で変化し得る熱流スイッチ10と、第3の蓄熱体9の温度を測定する第3の温度センサ11と、熱流スイッチ10に作動的に接続されるとともに、第1および第2の温度センサ12、13から受信した測定値、および第3の温度センサ11から受信した測定値に基づいて熱流スイッチ10を制御する制御部14と、を有している。
【0038】
第3の蓄熱体9もまた第1の蓄熱体3と同様の構成を有している。
【0039】
熱流スイッチ10は、例えば、図2AおよびBに示すように、リニアアクチュエータ10aと、リニアアクチュエータ10aの操作ロッドの先端に連結された可動導熱ブロック10bとから構成される。
【0040】
そして、熱流スイッチ10がOFF状態のときは、図2Aに示すように、リニアアクチュエータ10aの操作ロッドは引っ込んだ位置にあって、可動導熱ブロック10bは第1および第3の蓄熱体3、9から離間しているが、熱流スイッチ10がON状態になると、図2Bに示すように、リニアアクチュエータ10aの操作ロッドが突き出し、可動導熱ブロック10bが第1および第3の蓄熱体3、9に接触し、それによって、第1の蓄熱体3および第3の蓄熱体9間において両者の温度差に応じて熱が移動する。
【0041】
別の実施例によれば、熱流スイッチ10は、図3AおよびBに示すように、回転型アクチュエータ10cと、回転型アクチュエータ10cによって回転駆動される可動導熱ブロック10dとから構成される。
【0042】
そして、熱流スイッチ10がOFF状態のときは、図3Aに示すように、可動導熱ブロック10dは、第1および第3の蓄熱体3、9から離間しているが、熱流スイッチ10がON状態になると、図3Bに示すように、可動導熱ブロック10dが回転型アクチュエータ10cによって回転せしめられて第1および第3の蓄熱体3、9に接触し、それによって、第1の蓄熱体3および第3の蓄熱体9間において両者の温度差に応じて熱が移動する。
【0043】
熱流スイッチ10の作動は、熱電発電装置1が出力する電力の一部を用いて、あるいは、その電力を蓄電池に蓄えた後に、蓄電池の出力する電力の一部を用いてなされる。
【0044】
温度調節ユニット5のこの構成によれば、第1の蓄熱体3が熱電変換ユニット4の動作保証温度以上まで加熱された場合でも、熱流スイッチ10のON/OFFの適当な切り替えにより、第3の蓄熱体9(よって、熱電変換ユニット4の一端部4a)の温度は常に熱電変換ユニット4の動作保証温度以下であって、第2の蓄熱体6(よって、熱電変換ユニット4の他端部4b)より高温となるように維持され、第3の蓄熱体9から熱電変換ユニット4に熱が移動し、発電が行われる。
こうして、第1の蓄熱体3から熱電変換ユニット4への熱移動の際に熱電変換ユニット4がその動作保証温度を超える温度まで加熱されることが防止され、それによって、熱電変換ユニット4の安定した動作が保証される。
【0045】
放熱部7は、例えば、河川や湖沼の水、または水道水によって冷却され得る構成、または適当な空冷手段によって冷却され得る構成、または気化熱(蒸発熱)によって冷却され得る構成、または放射冷却によって冷却され得る構成、またはそれらの構成の適当な組み合わせを有しており、第2の蓄熱体6を、常時、第3の蓄熱体9よりも低い温度に維持する。
【0046】
本発明の熱電発電装置1によれば、集熱部2から取り込まれた熱源Qの熱が第1の蓄熱体3に蓄えられる一方、第2の蓄熱体6からは放熱部7を通じて熱が放出されて、第1の蓄熱体3が熱電変換ユニット4の動作保証温度よりも高温に保たれるとともに、第1の蓄熱体3には常時1日の発電に必要な量以上の熱エネルギーが蓄えられる。
【0047】
同時に、温度調節ユニット5の熱流スイッチ10がON/OFFされて、温度調節ユニット5の第3の蓄熱体9(よって、熱電変換ユニット4の一端部4a)の温度が、熱電変換ユニット4の動作保証温度(以下、「最高設定温度H」とする)以下で、かつ、第2の蓄熱体6(よって、熱電変換ユニット4の他端部4b)との間に一定の熱電変換効率が保たれる温度差が生じる温度(以下、「最低設定温度L」とする)以上となるように維持される。
【0048】
すなわち、熱流スイッチ10がOFF状態で第3の蓄熱体9の温度が最低設定温度Lより低下した時、熱流スイッチ10がON状態に切り替わり、第1の蓄熱体3の熱エネルギーが第3の蓄熱体9に供給され、蓄熱体9の温度が上昇する。そして、熱流スイッチ10がON状態で第3の蓄熱体9の温度が最高設定温度Hより上昇した時、熱流スイッチ10がOFF状態に切り替わり、第3の蓄熱体9の温度は低下して行く。このように熱流スイッチ10の制御が繰り返される。
【0049】
こうして、例えば、熱電変換ユニット4の低温側端部が常温(100℃以下)で、熱電変換ユニット4の高温側端部が動作保証温度300℃の場合、最高設定温度Hを300℃とし、最低設定温度Lを270℃とすると、第3の蓄熱体9の温度は270℃から300℃の間を上下することになる。第1の蓄熱体3は、熱源Qから熱エネルギーを供給されて300℃以上の高温に加熱されるが、仮に500℃になっている場合は、その温度差(200℃)と第1の蓄熱体3の比熱容量の積が、蓄えられており供給可能な熱エネルギーとなる。
【0050】
この場合、熱源Qからの熱エネルギーの供給が順調で、第1の蓄熱体3の温度が運用最高温度(第1の蓄熱体3の安定な運用に支障をきたす恐れがある温度、例えば800℃)を超えて上昇した場合は、熱遮蔽機構によって、それ以上の温度上昇が制限される。
【0051】
こうして、例えば100℃を遥かに超えるような高温の熱源Qから熱エネルギーを得て、熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換する熱電変換ユニットにより発電する方法が提供される。そして、熱電変換ユニット4の高温側端部4aおよび低温側端部4b間に常時発生する温度差に応じて一日分の発電がなされる。
【0052】
なお、熱流スイッチ10を一定時間OFF状態にすることで、その間、熱電変換ユニット4への熱エネルギーの供給を停止し、発電動作を止めることが可能である。
こうして、発電電力量が消費電力量を上回って蓄電池が満杯になったときや、保守等で必要なときは、熱電発電装置を停止することができる。
【0053】
また、実施に当たっては、負荷あるいは用途に合わせて、出力される電力を一旦蓄電池に蓄え、電力調整装置(PCS)により交流電力として提供されることは、太陽光発電においてなされているのと同様である。
【0054】
つまり、本発明による熱電発電は、河川をダムによって堰き止めてダムの上流側にダム湖を形成し、常時一定量(例えば、数か月分の河川流量)を貯水する一方、ダムからは1日の平均河川流量に相当する水量を放流することで、ダム湖水面とダム下流側の水面の間に一定程度の水位差を維持し、この水位差を落差とし、水の位置エネルギーを利用して発電を行う水力発電に例えることができる。
【0055】
こうして、本発明によれば、第1の蓄熱体3が高温側蓄熱体を形成する一方、第2の蓄熱体6は低温側蓄熱体を形成することによって、熱電変換ユニット4の高温側端部4aおよび低温側端部4b間に発電に適した十分な温度勾配を生じさせることができ、家庭やオフィス等で使用される電力等を賄うのに十分な発電量が得られる。
また、第1の蓄熱体3に複数日分の発電に必要な熱量を蓄えることができるので、蓄熱が十分に行えない日が数日続いたとしても、常に安定した発電が可能となる。
【0056】
また、第1の蓄熱体3が熱電変換ユニット4の動作保証温度以上に加熱される場合であっても、第1の蓄熱体3および熱電変換ユニット4間に温度調節ユニット5が介在することで、熱電変換ユニット4がその動作保証温度を超える温度まで加熱されることが防止され、それによって、熱電変換ユニット4の安定した動作が保証される。
【0057】
図4は、本発明の別の実施例による熱電発電装置の概略構成を示す縦断面図である。
図4の実施例は、図1の実施例において、集熱部2の構成をより具体化したものである。よって、図4中、図1の構成要素と同じものについては同一の参照番号を付して、以下では、それらの詳細な説明は省略する。
【0058】
図4の実施例では、熱電発電装置1’の熱源Qとして太陽光(日射エネルギー)が用いられ、集熱部2’は、第1の蓄熱体3に熱的に接触するとともに、太陽光を受ける受光部15と、太陽光を受光部15に集光する集光部16を有している。
【0059】
受光部15は、受けた太陽光を効率的に吸収して熱に変換し得る構成を有していることが好ましい。そのため、できるだけ大きな受光部15の表面積を確保すべく、受光部15の表面が凹凸を有し、または粗面となり、また黒色等の濃い色を有していることが好ましく、さらには、受光部15は、降雨、降雪および砂塵等を遮り、強風による飛来物等の衝突によって破壊されない構造、形状を有していることが好ましい。
【0060】
集光部16は、日射を効率的に受け、受光部15に向けて反射させまたは集束させ得る公知の適当な構成を有している。
【0061】
別の実施例によれば、集熱部2’が、さらに、受光部15、または受光部15および集光部16への太陽光の入射を遮るための遮光機構を有している。
【0062】
そして、例えば、本発明の熱電発電装置1’を一般家庭用の電源として屋外または家屋の屋根に設置し、第1の蓄熱体3への蓄熱を日射エネルギーによって行うようにした場合は、昼夜、晴雨、季節等の影響を受けて大きく変動し、供給が不安定な再生可能エネルギーとされる太陽光を、熱エネルギーとして複数日分蓄えておき、日々の需要に応じて、電気エネルギーに変換して安定的に供給することが可能となる。
【0063】
図5は、図4に示した熱電発電装置の変形例の概略構成を示す縦断面図である。図5中、図1および図4に示したものと同じ構成要素には同一番号を付してある。なお、図5において、第1および第2の温度センサ12、13と、温度調節ユニット5の第3の温度センサ11および制御部14の描画は省略してある。
【0064】
図5に示すように、この実施例では、熱電発電装置1”の第1の蓄熱体3が、熱電発電装置1”から取り外して、再び熱電発電装置1”に組み込み可能になっている。
【0065】
さらに、熱電発電装置1”は、さらに、取り外された第1の蓄熱体3を加熱する外部の加熱装置17を備えている。
外部の加熱装置17は、第1の蓄熱体3を収容する断熱容器18と、断熱容器18に設けられて、熱源(例えば、バイオ燃料や化石燃料の燃焼による熱エネルギー)Qから熱を取り込み、第1の蓄熱体3と熱的に接触する別の集熱部2とを有している。
【0066】
この実施例によれば、熱電発電装置1”の設置場所では季節や天候により十分な蓄熱が行えない場合に、第1の蓄熱体3を熱電発電装置1”から取り外して外部の加熱装置17まで移動させ、加熱装置17の断熱容器18に収容し、集熱部2に接触させることで、第1の蓄熱体3を加熱する。
そして、第1の蓄熱体3への蓄熱が完了した後、第1の蓄熱体3を再び熱電発電装置1”に組み込んで発電を行う。
【0067】
図6は、本発明のさらに別の実施例による熱電発電装置の概略構成を示す縦断面図である。図6中、図1に示したものと同じ構成要素には同一番号を付してある。なお、図6において、第1および第2の温度センサ12、13と、調節ユニット5の第3の温度センサ11および制御部14の描画は省略してある。
【0068】
図6を参照して、この実施例では、熱電発電装置1'''は、第1の蓄熱体3と、一端部4aおよび他端部4bを有する熱電変換ユニット4と、第1の蓄熱体3および熱電変換ユニット4の一端部4a間に配置されて熱電変換ユニット4の一端部4aの温度の調節を行う温度調節ユニット5と、熱電変換ユニット4の他端部4bに熱的に接触した第2の蓄熱体6と、第1の蓄熱体3、温度調節ユニット5の少なくとも一部、熱電変換ユニット4および第2の蓄熱体6を被覆する断熱層8と、第1の蓄熱体3の温度を測定する第1の温度センサ(図示されない)と、第2の蓄熱体6の温度を測定する第2の温度センサ(図示されない)と、を有し、温度調節ユニット5が、第1および第2の温度センサから受信した測定値に基づいて温度の調節を行うようにした装置本体19を備えている。
【0069】
この場合、第1および第2の蓄熱体3、6がそれぞれ装置本体19から取り外して、再び装置本体19に組み込み可能になっている。
なお、温度調節ユニット5は、図1の実施例と同様の構成を有している。
【0070】
熱電発電装置1'''は、さらに、取り外された第1の蓄熱体3を加熱する外部の加熱装置20と、取り外された第2の蓄熱体6を冷却する外部の冷却装置22とを備えている。
【0071】
外部の加熱装置20は、第1の蓄熱体3を収容する断熱容器21と、断熱容器21に設けられて、熱源Qから熱を取り込み、第1の蓄熱体3と熱的に接触する集熱部2とを有している。
外部の冷却装置22は、第2の蓄熱体6を収容する断熱容器23と、断熱容器23に設けられ、第2の蓄熱体6と熱的に接触する放熱部7とを有している。
【0072】
この実施例によれば、第1の蓄熱体3を装置本体19から取り外して外部の加熱装置20まで移動させ、加熱装置20の断熱容器21に収容し、集熱部2に接触させることで、第1の蓄熱体3を加熱する。
一方、第2の蓄熱体6を装置本体19から取り外して外部の冷却装置22まで移動させ、冷却装置22の断熱容器23に収容し、放熱部7に接触させることで第2の蓄熱体6を冷却する。
【0073】
そして、加熱した第1の蓄熱体3および冷却した第2の蓄熱体6をそれぞれ装置本体19に組み込み、発電を行う。
この実施例によれば、熱電発電装置1’’’の発電部(装置本体19)をコンパクト化し、移動する機械装置や自動車に搭載することが可能になる。
【0074】
この場合、第1および第2の蓄熱体3、6をそれぞれ複数備え、予備の第1および第2の蓄熱体3、6をそれぞれ常時加熱および冷却しておき、交換しながら使用すれば、発電を継続的に行うことができる。
【0075】
以上、本発明の構成を好ましい実施例に基づいて説明したが、本発明の構成は上述の実施例に限定されず、当業者が本願の請求の範囲に記載した構成の範囲内で種々の変形例を案出し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0076】
1、1’、1”、1''' 熱電発電装置
2、2’ 集熱部
3 第1の蓄熱体(高温蓄熱体)
4 熱電変換ユニット
4a 一端部
4b 他端部
5 温度調節ユニット
6 第2の蓄熱体(低温蓄熱体)
7 放熱部
8 断熱層
9 第3の蓄熱体
10 熱流スイッチ
10a リニアアクチュエータ
10b 可動導熱ブロック
10c 回転型アクチュエータ
10d 可動導熱ブロック
11 第3の温度センサ
12 第1の温度センサ
13 第2の温度センサ
14 制御部
15 受光部
16 集光部
17 外部の加熱装置
18 断熱容器
19 装置本体
20 外部の冷却装置
21 断熱容器
22 冷却装置
23 断熱容器
Q 熱源
図1
図2
図3
図4
図5
図6