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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】扇子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A45B 27/00 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
A45B27/00 C
A45B27/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024015490
(22)【出願日】2024-02-05
【審査請求日】2024-04-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000180346
【氏名又は名称】四国団扇株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 雄馬
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-285206(JP,A)
【文献】特開昭63-209605(JP,A)
【文献】特公昭14-3391(JP,B1)
【文献】特開昭59-32406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扇面と、2本の親骨と複数の中骨と2本の前記親骨および複数の前記中骨とを連結する要とを含む骨部とを具備する扇子を製造する方法であって、
2本の前記親骨と複数の前記中骨とが前記要により事前に接続された前記骨部において相互に隣接する前記中骨同士が所望する角度をなすように、全ての前記中骨を治具で固定する固定工程と、
相互に対向する表面が熱溶着層でそれぞれ形成された上紙と下紙との間に、前記治具により固定された全て前記中骨を配置する配置工程と、
前記治具により固定された全ての前記中骨が間に配置された前記上紙と前記下紙とを溶着することで、前記中骨同士が所望する角度をなした状態で全ての前記中骨を固定する溶着工程と、
前記上紙および前記下紙に、前記骨部における2本の前記親骨をそれぞれ接着する接着工程とを具備し、
前記治具は、全ての前記中骨のそれぞれの角度を決める支持部を有し、
前記固定工程において、前記支持部は、複数の前記中骨のうち前記要側に位置する
製造方法。
【請求項2】
前記配置工程では、一部が事前に溶着された前記上紙と前記下紙との間に、前記治具により固定された全ての前記中骨を配置する
請求項1の製造方法。
【請求項3】
前記配置工程では、前記上紙および前記下紙のうちの一方を把持することで当該上紙と当該下紙との間隔を形成し、当該間隔から全ての前記中骨を挿入する
請求項2の製造方法。
【請求項4】
前記配置工程において、前記上紙と前記下紙との間に全て前記中骨が挿入される方向に直交する方向における一方側の端部と他方側の端部が溶着されている
請求項の製造方法。
【請求項5】
複数の前記中骨は、2本であり、
前記配置工程において、前記上紙および前記下紙のうち本の前記中骨の間の領域が溶着されている
請求項2の製造方法。
【請求項6】
前記固定工程において、2本の前記親骨は、前記上紙および前記下紙に重ならない位置になるように前記治具により固定される
請求項の製造方法。
【請求項7】
前記溶着工程の後に、前記上紙および前記下紙を扇状に裁断し、かつ、折り線を形成する加工工程を含む
請求項1の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扇子を製造するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、扇子は、職人の手作業により製造されていた。概略的には、扇状に打ち抜いた扇面(芯紙と皮紙との合わせ紙)に型を使って折り線を付けた後、糊を付着させた中骨を差し込み接着し、その後に親骨を扇面に接着することで製造していた。しかし、職人による手作業では、大量生産が難しいという問題があった。
【0003】
そこで、特許文献1では、機械を用いて扇子を製造する技術が提案されている。具体的には、特許文献1では、複数の中骨と当該中骨を上下方向において挟みこむ2枚の被覆紙(熱溶着層が表面に設けられている紙)とを被覆貼付装置を用いて溶着した後に、被覆紙を扇状に打ち抜き、プレス型を用いて被覆紙に折り目を付け、親骨を取り付ける。複数の中骨は、適切な位置および角度で被覆紙に接着するために、連結片により相互に連結している。連結片は、事前に中骨と一体に形成する必要がある。そして、複数の中骨が被覆紙に接着された後に、連結片を切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭63-209605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、連結片を成形する工程や中骨を被覆紙に接着した後に連結片を切断および除去する工程が必要である。したがって、特許文献1においては、扇子の製造に手間がかかっていた。ひいては、扇子を簡便に製造するという観点からは、改良の余地があった。以上の事情を考慮して、本発明では、簡便に扇子の製造方法を簡便にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]扇面と、親骨と複数の中骨と当該親骨および当該複数の中骨とを連結する要とを含む骨部とを具備する扇子を製造する方法であって、前記複数の中骨のうち相互に隣接する2本の中骨が所望する角度をなすように治具で固定する固定工程と、相互に対向する表面が熱溶着層でそれぞれ形成された上紙と下紙との間に、前記治具により固定された複数の中骨を配置する配置工程と、前記上紙と前記下紙とを溶着する溶着工程とを具備する製造方法。
【0007】
[2]前記配置工程では、一部が事前に溶着された前記上紙と前記下紙との間に、前記治具により固定された複数の中骨を配置する[1]の製造方法。
【0008】
[3]前記配置工程では、前記上紙および前記下紙のうちの一方を把持することで当該上紙と当該下紙との間隔を形成し、当該間隔から前記複数の中骨を挿入する[2]の製造方法。
【0009】
[4]前記配置工程において、前記上紙と前記下紙との間に前記複数の中骨が挿入される方向に直交する方向における一方側の端部と他方側の端部が溶着されている[2]または[3]の製造方法。
【0010】
[5]前記配置工程において、前記上紙および前記下紙のうち前記相互に隣接する2本の中骨の間の領域が溶着されている[1]から[3]の製造方法。
【0011】
[6]前記固定工程において、前記親骨は、前記上紙および前記下紙に重ならない位置になるように前記治具により固定される[1]から[4]の製造方法。
【0012】
[7]前記溶着工程の後に、前記上紙および前記下紙を扇状に裁断し、かつ、折り線を形成する加工工程を含む[1]から[5]の製造方法。
【0013】
[8]前記複数の中骨は、2本の中骨である[1]の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る扇子の製造方法によれば、扇子の製造方法を簡便にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の製造方法で製造される扇子(開状態)の一例に係る平面図である。
図2】本実施形態の製造方法で製造される扇子(閉状態)の一例に係る平面図である。
図3】本実施形態の扇子の製造方法の第1工程を説明する工程図である。
図4】本実施形態の扇子の製造方法の第2工程を説明する工程図である。
図5】本実施形態の扇子の製造方法の第3工程を説明する工程図である。
図6】本実施形態の扇子の製造方法の第4工程を説明する工程図である。
図7】本実施形態の扇子の製造方法の第5工程を説明する工程図である。
図8】本実施形態の扇子の製造方法の第6工程を説明する工程図である。
図9】本実施形態の扇子の製造方法の第7工程を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態に係る発明は、扇子100の製造方法に係る発明である。図1は、本実施形態の製造方法で製造される扇子100の一例に係る平面図である。図1に例示される通り、扇子100は、扇面20と骨部30とを含む。骨部30は、複数の骨(複数の中骨31および2本の親骨32)とで構成される。複数の骨(31,32)は、要Gにより相互に連結される。本実施形態では、2本の中骨31を具備する扇子100を製造する場合を例示する。要Gを中心軸として各骨(31,32)が離れる方向および近づく方向に移動可能である。各骨が離れた方向に移動すると扇面20が開かれた状態(図1)になる。一方で、各骨が重なるように移動すると、扇面20が閉じられた状態(図2)になる。
【0017】
本実施形態に係る扇子100の製造方法は、第1工程~第9工程を含む。
【0018】
[第1工程]
図3の第1工程は、扇面20となる2枚の紙(上紙21,下紙22)を部分的に溶着させる工程である。上紙21および下紙22は、例えばそれぞれ長尺状である。上紙21および下紙22は、一方側の表面に熱溶着層が設けられている。上紙21の熱溶着層と下紙22の熱溶着層が対向するように、上紙21と下紙22とは配置される。熱溶着層は、例えば熱可塑性の合成樹脂からなり、加熱により溶ける。上紙21と下紙22とは、加熱して加圧することで相互に接着することが可能である。図3には、X方向(各紙21,22の長尺方向)と、X方向に直交するY方向(各紙21,22の短手方向)とが表記されている。
【0019】
図3では、便宜的に、第1工程において上紙21と下紙22とを溶着させる領域R1(領域R11,R12)を網掛けで図示している。図3に例示される通り、第1工程では、上紙21と下紙22とについて、短手方向の一方側の端部の領域R11および他方側の端部の領域R11とを接着させる。上紙21および下紙22のうちX方向の負側の端部およびX方向の正側の端部が溶着されているとも換言できる。具体的には、各紙について、短手方向の一方側の端部(縁)をY方向に沿って接着し、短手方向の他方側の端部(縁)をY方向に沿って溶着する。
【0020】
なお、短手方向の一方側の端部と他方側の端部をY方向の全長にわたり溶着することは必須ではなく、少なくとも一部が溶着されていればよい。本実施形態では、図3に例示される通り、上紙21と下紙22とについて、短手方向の一方側(X方向の負側)および他方側(X方向の正側)の端部(縁)のうちY方向の負側の端部側の領域Kは、接着しない。Y方向の負側は、後述する第4工程において中骨31を挿入する側になる。すなわち、上紙21と下紙22とについて、短手方向の一方側および他方側の端部のうち中骨31を挿入する側における端部側の領域Kを接着しないとも換言できる。
【0021】
また、本実施形態では、上紙21および下紙22との中央付近の領域R12においても溶着される。後述する第4工程(図6)において、上紙21と下紙22との間に2本の中骨31を挿入するが、当該2本の中骨31の間に位置するように領域R12を設ける。すなわち、第1工程では、相互に隣接する2本の中骨31の間に対応する領域R12において溶着される。第1工程により上紙21と下紙22とが部分的に溶着された積層紙20aが得られる。第1工程は、例えば、加熱および圧着が可能なプレス機により行われる。
【0022】
なお、第1工程において、後述する第4工程(図6)において中骨31を配置する際に妨げになる領域は溶着しないようにする。例えば、上紙21と下紙22のうち扇面20の下部(地)に対応する部分から中骨31を差し込むため、当該部分は溶着しない。
【0023】
[第2工程]
図4の第2工程は、第1工程で得れた積層紙20aを扇面20の下部(地)Bとなる部分が得られるように切断する工程である。下部の形状は、任意であるが、例えば弧状になるように積層紙20aを切断する。第2工程は、例えば公知の裁断機により行われる。
【0024】
[第3工程]
図5の第3工程は、骨部30の位置を固定する工程である。本実施形態の第2工程では、親骨32と、複数の中骨31とが要Gにより事前に接続され骨部30が用いられる。
【0025】
具体的には、第3工程(「固定工程」の例示)では、骨部30のうち2本の中骨31が所望する角度(例えば30°前後)をなすように固定する。なお、骨部30のうち2本の親骨32は、後述する第4工程(図6)において積層紙20aに重ならない位置に固定されるようにする。図5では、2本の親骨32は、相互に重なる位置にあり、要Gを起点として中骨31とは反対側の領域(例えば2本の中骨31がなす角度の2等分線の延長線上)に固定される。
【0026】
第3工程においては、治具50により各骨(31,32)の位置を固定する。治具50は、各中骨31を位置決めするための要素であるとも換言できる。図5に例示される通り、治具50は、中骨31を固定するための2個の支持部51と、親骨32を固定するための2個の支持部52とを具備する。支持部51と支持部52とは、例えば設置板53から突出する部材である。支持部51は、2本の中骨31を所望の角度で配置するための部材であり、支持部52は、親骨32を2本重ねた状態で固定するための部材である。
【0027】
支持部51は、中骨31毎に設けられる。一方の中骨31について支持部51aが設けられ、他方の中骨31について支持部51bが設けられる。支持部51aと支持部51bとは、2本の中骨31が所望する角度で開くように設置される。具体的には、支持部51aと支持部51bとの間において、一方の中骨31が支持部51aに当接し、他方の中骨31が支持部51aに当接するまで、2本の中骨31を開くと(相互に離れるように移動させたときに)、当該2本の中骨31が所望する角度で開く。
【0028】
2個の支持部52は、当該親骨32の幅に応じた間隔で相互に対向する位置に設けられる。治具50に骨部30を固定する際は、2個の支持部51と2個の支持部52との間の領域に要Gが位置し、2個の支持部52の間に2本の親骨32が重なって位置し、2個の支持部51の間に2本の中骨31が位置する。
【0029】
本実施形態の第3工程では、治具50を用いることで、複数の中骨31に加えて、親骨32も治具50により固定されるから、中骨31を治具50に固定しやすくなるという利点がある。
【0030】
[第4工程]
図6の第4工程(「配置工程」の例示)は、第2工程後の積層紙20aの上紙21と下紙22との間に、第3工程で固定された骨部30の中骨31を配置する工程である。例えば、作業台の上に配置された2本の中骨31に向かって、積層紙20aをY方向の負側に移動(スライド)させることで、2本の中骨31を上紙21と下紙22との間に配置する。例えば、上紙21のうち下紙22とは反対側の表面を把持して、当該積層紙20aを中骨31に向かって移動させる。具体的には、上紙21を把持することで、上紙21と下紙22との間隔を形成し(上紙21と下紙22とのうち接着していない領域が相互に離間するように)、当該間隔から2本の中骨31を挿入する。なお、下紙22と上紙21との間に複数の中骨31が挿入される方向(積層紙20aが移動する方向)がY方向であるとも換言できる。積層紙20aのY方向の負側から正側に向かって中骨が挿入される。
【0031】
第4工程では、上紙21のみを把持した状態で積層紙20aを移動させるが可能である任意の装置(例えば上紙21の表面を吸盤により吸引により把持する装置)が使用される。第4工程では、2本の中骨31の間に領域R12が位置するように当該2本の中骨31が配置される。すなわち、積層紙20aのX方向の正側の端部における領域R11と領域R12との間に一方の中骨31が位置し、積層紙20aのX方向の負側の端部における領域R11と領域R12との間に他方の中骨31が位置する。なお、下紙22を把持することで上紙21と下紙22との間隔を形成してもよい。すなわち、本実施形態の第4工程では、上紙21および下紙22のうちの一方を把持することで当該上紙21と当該下紙22との間隔を形成し、当該間隔から複数の中骨31を挿入する。
【0032】
第1工程において領域K(中骨31を挿入する側における端部側の領域)を敢えて接着しなかったことで、第4工程では、中骨31を挿入する側において上紙21と下紙22とを開きやすくすることができるという利点がある。また、第1工程において領域R12(積層紙20aの中心部の領域)を接着したことで、2本の中骨31の位置決めがしやすくなるという利点や、積層紙20aに挿入した後に中骨31がずれることを防止できるという利点がある。また、領域R12を設けたことで、第4工程において上紙21と下紙22とが過度に開くことを抑制でき、積層紙20aに対する中骨31の位置がずれることを防止することができる。
【0033】
以上の説明から理解される通り、第4工程は、相互に対向する表面が熱溶着層でそれぞれ形成された上紙21および下紙22のうち一部が溶着された積層紙20aにおける当該上紙21と当該下紙22との間に、第3工程で治具50により固定された複数の中骨31を配置する工程である。なお、積層紙20aを中骨31に向かって(Y方向の負側に)移動させることで上紙21と下紙22との間に中骨31を配置したが、中骨31を積層紙20aに向かって(Y方向の正側に)移動させることで上紙21と下紙22との間に中骨31を配置してもよい。
【0034】
[第5工程]
図7の第5工程は、第4工程で配置された中骨31を積層紙20aに仮付けする工程である。第5工程では、2本の中骨31が大きく移動しない程度に積層紙20a(上紙21および下紙22)を部分的に溶着できればよい。したがって、上紙21および下紙22の全体にわたり溶着する必要はない。図7には、第5工程において溶着させる領域R2が図示されている。例えば、2本の中骨31に重なり、積層紙20aの長手方向(X方向)に沿った帯状に領域R2が設けられる。少なくとも2本の中骨31をX方向において跨ぐように領域R2を設けることが好ましい。2本の中骨31を跨ぐように領域R2を設けることで、特に中骨31がX方向に沿ってずれることを防止することができる。ただし、領域R2の形状は、2本の中骨31が移動しない程度に上紙21と下紙22とを溶着できれば任意である。例えば、各中骨31の周囲に領域R2を設ける構成や各中骨31を挟み込む複数の領域R2を設ける構成も採用される。なお、領域R2は、領域R1と重なってもよいし、重ならなくてもよい。第5工程は、例えば、加熱および圧着が可能なプレス機(例えば特許文献1に記載の装置)により行われる。
【0035】
[第6工程]
図8の第6工程(「溶着工程」の例示)は、積層紙20aの上紙21と下紙22とを全体にわたり溶着する工程である。なお、第6工程では、積層紙20aのうち少なくとも扇面20になる領域の全体が溶着されていればよい。第6工程は、例えば、加熱および圧着が可能なプレス機(例えば特許文献1に記載の装置)により行われる。
【0036】
[第7工程]
図8の第7工程は、積層紙20aを扇状に裁断し、かつ、折り線Lを形成する工程である。例えば、積層紙20aを裁断する刃と、折り線Lに対応する凸部との双方が設けられた金型が用いられる。この金型を積層紙20aに向かって下げるが、刃の先端は凸部の先端よりも当該下げる方向に位置する。なお、折り線Lは、扇面20を複数の領域(扇片)に区分したときに全ての領域が重なるように形成する。なお、図8では7つの扇片に区分し、中心に位置する扇片の両隣に位置する扇片のそれぞれに中骨31が溶着されている。
【0037】
本実施形態では、製造方法の簡素化の観点から、裁断機の機能とプレス機の機能とが一体となった装置を用いて、積層紙20aの裁断と折り線Lの形成とが並行して行われることが好ましい。ただし、積層紙20aを裁断する工程と、折り線Lを形成する工程とは、独立した装置により、別工程として(すなわち時間的に前後して)行ってもよい。積層紙20aを裁断する工程と、折り線Lを形成する工程との先後は、任意である。第7工程の後に治具50から骨部30を取り外す。なお、第3工程から第7工程は、治具50をコンベアに載せて移動させることで順次に行うことができる。
【0038】
[第8工程]
第8工程は、第7工程で設けた折り線Lに沿って扇面20を折りたたむ工程である。折り線Lに沿って扇面20を折りたたんだ後に(図2の状態になるように折りたたんだ後)に、治具50を用いて強く挟み込むことで、折り線Lに強く癖付けをする。なお、第3工程は、扇子100を折り畳んだ状態(図2)で、2本の中骨31が重なるように治具50で2本の中骨31を配置する工程であるとも換言できる。
【0039】
[第9工程]
第9工程は、2本の親骨32を扇面20に接着する工程である。親骨32を扇面20に接着する方法は、任意であるが、例えば両面テープが用いられる。両面テープは、例えば親骨32のうち扇面20に対向する面に事前に設けられる。2本の親骨32は、扇面20のうち相互に反対側の端部に位置する扇片に接着される。各親骨32は、扇面20のうち相互に反対側の表面に接着される。なお、第8工程と第9工程との順番は逆でもよい。
【0040】
以上の説明から理解される通り、本実施形態では、治具50により複数の中骨31が所望する角度をなすように治具50で固定されるから、特許文献1の技術と比較して、中骨31を連結する連結片を成形する工程や当該連結片の切断および除去する工程が不要になる。したがって、扇子100を簡便に製造することが可能である。
【0041】
また、治具50により固定された複数の中骨31が、一部が溶着された積層紙20aにおける上紙21と下紙22との間に配置される。すなわち、中骨31に向かって積層紙20aを移動させることで、上紙21と下紙22との間に配置することが可能である。すなわち、中骨31に対して上紙21と下紙22とを個別に配置する必要がない。なる。ひいては、扇子100をより簡便に製造することが可能である。
【0042】
本実施形態では、第3工程において、上紙21および下紙22のうちの一方を把持することで当該上紙21と当該下紙22との間隔を形成し、当該間隔から複数の中骨31が挿入されるから、簡単に中骨31を上紙21と下紙22との間に配置することができる。
【0043】
本実施形態の第3工程では、第1工程において上紙21および下紙22のうちX方向における一方側の端部(領域R11)と他方側の端部(領域R11)が溶着された積層紙20aが用いられるから、例えば、上紙21および下紙22の中心部の一部のみが接着されているような場合と比較して、上紙21および下紙22のうちの一方を把持して積層紙20aを移動させる際に、当該積層紙20aの全体を移動させやすいという利点がある。
【0044】
<変形例>
以上に例示した形態は多様に変形され得る。前述の形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0045】
(1)前述の形態では、2本の中骨31を具備する扇子100を製造する場合を例示したが、中骨31の本数は2本には限定されない。ただし、中骨31の本数が2本であると、治具50を用いた中骨31の位置決めが容易になり、製造方法がさらに簡便になるという利点がある。なお、治具50の形態は、中骨31の本数に関わらず、各中骨31が所望する位置に配置されるように、中骨31毎に支持部51が設けられる構成が好ましい。
【0046】
(2)第1工程から第9工程は、以上の例示には限定されない。また、第1工程から第9工程の何れかが省略される場合や他の工程を含む場合も例示される。例えば、第1工程において事前に下部Bに対応する箇所を切断した上紙21と下紙22とを溶着する場合には、第2工程は省略される。また、第7工程においては、第1工程において事前に所望の扇状に裁断していた上紙21と下紙22とを使用する場合には、積層紙20aを扇状に裁断することは省略される。
【0047】
(3)固定工程において、複数の中骨31のうち相互に隣接する2本の中骨31がなす角度は、中骨31の本数や扇子100の開き角度に応じて適宜に相違し得る。
【0048】
(4)前述の形態において、第1工程において上紙21と下紙22との一部を溶着させることは必須ではない。したがって、例えば、第3工程では、下紙22を配置した後に、当該下紙22の上に治具50で固定した骨部30を配置して、中骨31の上にさらに上紙21を設置してもよい。
【0049】
(5)本発明は、扇面20となる2枚の紙(上紙21,下紙22)を部分的に溶着させる第1工程(部分溶着工程)を含む、扇子の製造方法としても観念できる。以上の製造方法によれば、上紙21に対する中骨31の位置決めと下紙22に対する中骨31の位置決めとを同時にできるという利点がある。したがって、扇子の製造工程を簡素化できる。また、本発明は、全ての中骨31を跨ぐように積層紙20a(上紙21および下紙22)を接着させることで、当該中骨31を仮付けする第5工程(仮付工程)を含む扇子の製造方法としても観念できる。以上の製造方法によれば、中骨31がずれることを防止することができる。
【符号の説明】
【0050】
20 :扇面
20a :積層紙
21 :上紙
22 :下紙
30 :骨部
31 :中骨
32 :親骨
50 :治具
51,52:支持部
53 :設置板
100 :扇子
G :要
L :折り線
【要約】
【課題】扇子の製造方法を簡便にすることができる。
【解決手段】扇面と、親骨と複数の中骨と当該親骨および当該複数の中骨とを連結する要とを含む骨部とを具備する扇子を製造する方法であって、前記複数の中骨のうち相互に隣接する2本の中骨が所望する角度をなすように治具で固定する固定工程と、相互に対向する表面が熱溶着層でそれぞれ形成された上紙と下紙との間に、前記治具により固定された複数の中骨を配置する配置工程と、前記上紙と前記下紙とを溶着する溶着工程とを具備する製造方法。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9