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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】進入判定装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20241015BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
G06T7/00 650B
G08G1/16 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024022988
(22)【出願日】2024-02-19
【審査請求日】2024-04-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518126409
【氏名又は名称】株式会社アジラ
(74)【代理人】
【識別番号】100176256
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 隆敬
(72)【発明者】
【氏名】三村 完
(72)【発明者】
【氏名】チャン クアン サン
(72)【発明者】
【氏名】チャン クアン チュン
【審査官】秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-009107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影された映像を取得する取得部と、
前記所定範囲内における行動体の進入禁止領域と、車両が走行可能な走行領域と、前記映像に映った行動体の少なくとも一部を検出するための検出基準と、を記憶した記憶部と、
前記検出基準に基づき、前記映像内の行動体を検出可能な第1の検出部と、
前記映像内を走行する車両を検出可能な第2の検出部と、
前記進入禁止領域内で行動体が検出された場合に前記進入禁止領域への行動体の進入と判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、前記進入禁止領域と前記走行領域との重複領域を分割した複数の分割領域のうちの一の前記分割領域内で行動体と車両が共に検出されている状態では前記進入と判定しないことを特徴とする進入判定装置。
【請求項2】
撮影手段による撮影される所定範囲における行動体の進入禁止領域と、車両が走行可能な走行領域と、映像に映った行動体の少なくとも一部を検出するための検出基準と、を記憶したコンピュータで実行されるプログラムであって、
前記撮影手段により撮影された映像を取得するステップと、
前記検出基準に基づき、前記映像内の行動体を検出するステップと、
前記映像内を走行する車両を検出するステップと、
前記進入禁止領域内で行動体が検出された場合に前記進入禁止領域への行動体の進入と判定するステップと、
を備え、
前記判定するステップでは、前記進入禁止領域と前記走行領域との重複領域を分割した複数の分割領域のうちの一の前記分割領域内で行動体と車両が共に検出されている状態では前記進入と判定しないことを特徴とする進入判定プログラム。
【請求項3】
撮影手段による撮影される所定範囲における行動体の進入禁止領域と、車両が走行可能な走行領域と、映像に映った行動体の少なくとも一部を検出するための検出基準と、を記憶したコンピュータで実行される方法であって、
前記撮影手段により撮影された映像を取得するステップと、
前記検出基準に基づき、前記映像内の行動体を検出するステップと、
前記映像内を走行する車両を検出するステップと、
前記進入禁止領域内で行動体が検出された場合に前記進入禁止領域への行動体の進入と判定するステップと、
を備え、
前記判定するステップでは、前記進入禁止領域と前記走行領域との重複領域を分割した複数の分割領域のうちの一の前記分割領域内で行動体と車両が共に検出されている状態では前記進入と判定しないことを特徴とする進入判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像に映った進入禁止領域への行動体の進入を高精度に判定することが可能な進入判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、時系列画像に映った複数の関節に基づき、一の対象に属する関節群を識別し、当該関節群の変位に基づき、当該一の対象の行動を推定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6525179号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術を用いることで、映像内の進入禁止領域(例えば、駐車場のゲート付近や電車の線路等)への人間の進入を判定することも可能である。
【0005】
しかしながら、上記構成では、進入禁止領域を自動車や電車が走行した際に、その運転手や乗客まで検出してしまうこととなるため、自動車や電車が進入禁止領域を走行する際に“人間の進入”と誤って判定しまう問題が生じていた。
【0006】
そこで、本発明は、映像に映った進入禁止領域への行動体の進入を高精度に判定することが可能な進入判定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、所定範囲を撮影するように設置された撮影手段により撮影された映像を取得する取得部と、前記所定範囲内における行動体の進入禁止領域と、前記映像に映った行動体の少なくとも一部を検出するための検出基準と、を記憶した記憶部と、前記検出基準に基づき、前記映像内の行動体を検出可能な第1の検出部と、前記映像内を走行する車両を検出可能な第2の検出部と、前記進入禁止領域内で行動体が検出された場合に前記進入禁止領域への行動体の進入と判定する判定部と、を備え、前記判定部は、前記進入禁止領域内で行動体と車両が共に検出されている状態では前記進入と判定しないことを特徴とする進入判定装置を提供している。
【0008】
また、本発明の別の観点によれば、上記進入判定装置対応する進入判定プログラム及び進入判定方法を提供している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の進入判定装置によれば、映像に映った進入禁止領域への行動体の進入を高精度に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態による進入禁止領域への行動体の進入の判定の説明図
図2】本発明の実施の形態による進入判定装置のブロック図
図3】本発明の実施の形態による進入禁止領域の説明図
図4】本発明の実施の形態による重複領域及び走行領域の説明図
図5】本発明の実施の形態による分割領域の説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態による進入判定装置1について、図1図5を参照して説明する。
【0012】
進入判定装置1は、図1に示すように、撮影手段Xによって撮影された映像Y(図1では、映像を構成するフレーム)に映った進入禁止領域R1への行動体Z1の進入を判定するためのものである。本実施の形態では、行動体Z1として人間を採用し、理解容易のため、行動体Z1を骨格だけで簡易的に表示する。
【0013】
進入判定装置1は、図2に示すように、取得部2と、記憶部3と、第1の検出部4と、第2の検出部5と、判定部6と、報知部7と、を備えている。
【0014】
取得部2は、所定範囲を撮影するように設置された撮影手段Xにより撮影された映像Yを取得する。本実施の形態では、撮影手段Xによる撮影範囲の全てを所定範囲として設定しているものとする。
【0015】
記憶部3は、上記所定範囲内における行動体Z1の進入禁止領域R1と、映像Yに映った行動体Z1の少なくとも一部を検出するための検出基準と、を記憶している。
【0016】
本実施の形態では、進入禁止領域R1はユーザが記憶させるものとする。図3(a)は、駐車場のゲート付近を進入禁止領域R1として記憶させた例(車両Z2を斜め前方から見た図)を示しており、図3(b)は、電車の線路を進入禁止領域R1として記憶させた例(車両Z2を側方から見た図)を示している。
【0017】
また、本実施の形態では、検出基準として、“関節識別基準”と、“行動体識別基準”と、“行動識別基準”が記憶されている。
【0018】
“関節識別基準”は、行動体Z1の複数の関節(首、右肘、左肘、腰、右膝、左膝等)を識別するためのものであり、関節ごとに、それぞれを識別するための形状、方向、サイズ等を示したものである。
【0019】
“行動体識別基準”は、行動体Z1の様々なバリエーション(“歩行”、“直立”等)の “基本姿勢“、”各関節の可動域“、一の行動体Z1における”各関節間の距離“等を示したものである。
【0020】
“行動識別基準”は、行動体Z1が所定の行動を行った場合の各関節の動きを示したものであり、本実施の形態では、様々な種類の行動についての“行動識別基準”が記憶されている。
【0021】
更に、本実施の形態では、記憶部3は、車両Z2が走行可能な走行領域R2を更に記憶している(図4及び図5参照)。本実施の形態では、走行領域R2もユーザが記憶させるものとする。
【0022】
第1の検出部4は、上記検出基準に基づき、映像Y内の行動体Z1を検出可能である。
【0023】
行動体Z1の検出に当たっては、まず、映像Yに映った行動体Z1を特定する。
【0024】
本実施の形態では、記憶部3に記憶された“関節識別基準”に該当する複数の関節を検出した上で、“行動体識別基準”を参照して、一の行動体Z1に含まれる複数の関節を特定する。図1の例では、全ての関節が一の行動体Z1に含まれる関節であると特定され、一の行動体Z1が存在するものと特定される。
【0025】
第2の検出部5は、映像Y内を走行する車両Z2を検出可能である。図3(a)では、車両Z2として自動車を採用した例を示しており、図3(b)では、車両Z2として電車を採用した例を示している。本実施の形態では、背景差分を用いて車両Z2を検出するものとし、背景差分を用いた検出には、公知の背景差分法を用いることが考えられる。
【0026】
判定部6は、進入禁止領域R1内で行動体Z1が検出された場合に進入禁止領域R1への行動体Z1の進入と判定する。
【0027】
報知部7は、判定部6が“進入”と判定した場合に報知を行う。例えば、進入禁止領域R1付近に設置された音声出力手段により行動体Z1に対してアラートを行っても良いし、施設管理者等の情報端末に“進入”を報知しても良い。
【0028】
このような構成により、進入禁止領域R1への行動体Z1の進入を判定することが可能となるが、その一方で、図3(a)及び図3(b)に示すように、進入禁止領域R1を車両Z2が走行した際に、その運転手や乗客まで検出してしまうこととなるため、車両Z2が進入禁止領域R1を走行する際に“進入”と誤って判定しまう問題が生じていた。
【0029】
そこで、本実施の形態では、判定部6は、進入禁止領域R1内で行動体Z1と車両Z2が共に検出されている状態では、車両Z2の運転手や乗客を行動体Z1として誤って検出したものとみなし、“進入”と判定しないものとする。
【0030】
これにより、車両Z2が行動体Z1の進入禁止領域R1を走行した際に“進入”と誤って判定しまうことが防止される。
【0031】
但し、図4(a)に示すように、進入禁止領域R1内のうち車両Z2の走行領域R2以外に行動体Z1が存在する場合には“進入”と判定しなければならないところ、単純に「進入禁止領域R1内で行動体Z1と車両Z2が共に検出されている状態では、“進入”とは判定しない」という構成にすると、そのような場合に“進入”と判定し損なってしまう。
【0032】
そこで、本実施の形態では、判定部6は、進入禁止領域R1と走行領域R2との重複領域R3内で行動体Z1と車両Z2が共に検出されている状態では“進入”と判定しないものとする。
【0033】
これにより、図4(a)に示すように、進入禁止領域R1のうち車両Z2の走行領域R2以外に行動体Z1が存在する場合に当該行動体Z1の“進入”を判定し損なうことが防止される。
【0034】
また、図4に示すように、(分離した)複数の走行領域R2が存在する場合も想定され(図4では、自動車の入場ゲートと退場ゲート)、この場合には、重複領域R3も複数存在することとなる。この場合、図4(b)に示すように、上記構成では、一方の重複領域R31内に行動体Z1が存在し、他方の重複領域R32内に車両Z2が存在する場合に“進入”と判定し損なってしまう。
【0035】
そこで、本実施の形態では、記憶部3は、複数の走行領域R2を記憶しており、判定部6は、進入禁止領域R1と一の走行領域R2との重複領域R3内で行動体Z1と車両Z2が共に検出されている状態では“進入”と判定しないものとする。
【0036】
これにより、図4(b)に示すように、行動体Z1が車両Z2とは異なる重複領域R3に存在する場合に“進入”と判定し損なうことが防止される。
【0037】
更に、例えば、図5に示すように、一の重複領域R3が広く、行動体Z1と車両Z2が当該一の重複領域R3内の離れた位置に存在する状況も想定されるが、上記構成では、このような状況でも“進入”とは判定されないこととなる。
【0038】
そこで、本実施の形態では、重複領域R3を分割した複数の分割領域R4のうちの一の分割領域R4内で行動体Z1と車両Z2が共に検出されている状態では“進入”と判定しないものとする。分割の方法としては、所定のサイズで分割しても良いし、場所によって異なるサイズに変更しても良い。
【0039】
これにより、図5に示すように、一の重複領域R3内の離れた位置に行動体Z1と車両Z2が存在する場合等に“進入”と判定し損なうことが防止される。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態による進入判定装置1では、進入禁止領域R1内で行動体Z1と車両Z2が共に検出されている状態では“進入”と判定しない。
【0041】
このような構成によれば、車両Z2が行動体Z1の進入禁止領域R1を走行した際に“進入”と誤って判定しまうことが防止される。
【0042】
また、本実施の形態による進入判定装置1では、進入禁止領域R1と走行領域R2との重複領域R3内で行動体Z1と車両Z2が共に検出されている状態では、“進入”と判定しない。
【0043】
このような構成によれば、進入禁止領域R1のうち車両Z2の走行領域R2以外に行動体Z1が存在する場合に“行動体Z1の進入”と判定し損なうことが防止される。
【0044】
また、本実施の形態による進入判定装置1では、複数の走行領域R2を記憶しており、進入禁止領域R1と一の走行領域R2との重複領域R3内で行動体Z1と車両Z2が共に検出されている状態では“進入”と判定しない。
【0045】
このような構成によれば、行動体Z1が車両Z2とは異なる重複領域R3に存在する場合に“進入”と判定し損なうことが防止される。
【0046】
また、本実施の形態による進入判定装置1では、重複領域R3を分割した複数の分割領域R4のうちの一の分割領域R4内で行動体Z1と車両Z2が共に検出されている状態では“進入”と判定しない。
【0047】
このような構成によれば、一の重複領域R3内の離れた位置に行動体Z1と車両Z2が存在する場合等に“進入”と判定し損なうことが防止される。
【0048】
尚、本発明の進入判定装置は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0049】
例えば、上記実施の形態では、第2の検出部5は、背景差分を用いて車両Z2を検出したが、背景差分には、オプティカルフローを用いる場合も含まれる。また、背景差分以外にも物体検知等の他の方法により車両Z2を検出しても良い。
【0050】
また、上記実施の形態では、行動体Z1として人間を例に説明したが、動物やロボットについて使用することも可能である。
【0051】
また、上記実施の形態では複数の関節の動きに基づいて行動体の行動を検出したが、関節を検出することなく他の方法で行動体の行動を検出しても良い。
【0052】
また、本発明は、コントローラとしての各部材が行う処理に相当するプログラム及び方法や、当該プログラムを記憶した記録媒体にも応用可能である。記録媒体の場合、コンピュータ等に当該プログラムがインストールされることとなる。ここで、当該プログラムを記憶した記録媒体は、非一過性の記録媒体であっても良い。非一過性の記録媒体としては、CD-ROM等が考えられるが、それに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0053】
1 進入判定装置
2 取得部
3 記憶部
4 第1の検出部
5 第2の検出部
6 判定部
7 報知部
R1 進入禁止領域
R2 走行領域
R3 重複領域
R31 重複領域
R32 重複領域
R4 分割領域
X 撮影手段
Y 映像
Z1 行動体
Z2 車両
【要約】
【課題】映像に映った進入禁止領域への行動体の進入を高精度に判定することが可能な進入判定装置を提供する。
【解決手段】進入判定装置1は、所定範囲を撮影するように設置された撮影手段Xにより撮影された映像Yを取得する取得部2と、所定範囲内における行動体Z1の進入禁止領域R1と、映像Yに映った行動体Z1の少なくとも一部を検出するための検出基準と、を記憶した記憶部3と、検出基準に基づき、映像Y内の行動体Z1を検出可能な第1の検出部4と、映像Y内を走行する車両Z2を検出可能な第2の検出部5と、進入禁止領域R1内で行動体Z1が検出された場合に進入禁止領域R1への行動体Z1の進入と判定する判定部6と、を備えている。但し、判定部6は、進入禁止領域R1内で行動体Z1と車両Z2が共に検出されている状態では進入と判定しない。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5