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特許7570752パーマネントバイオレットの連続合成のための硝化システム、合成システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】パーマネントバイオレットの連続合成のための硝化システム、合成システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/20 20060101AFI20241015BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20241015BHJP
   C07D 498/22 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
C09B67/20 A
B01J19/00 321
C07D498/22
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022083748
(22)【出願日】2022-05-23
(65)【公開番号】P2023068610
(43)【公開日】2023-05-17
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】202111287112.6
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522203178
【氏名又は名称】安徽申蘭華色材股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】汪 国建
(72)【発明者】
【氏名】殷 守華
(72)【発明者】
【氏名】孫 涛
(72)【発明者】
【氏名】陶 文大
(72)【発明者】
【氏名】胡 平
(72)【発明者】
【氏名】劉 邦坤
(72)【発明者】
【氏名】寧 亮
(72)【発明者】
【氏名】王 彬彬
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112724700(CN,A)
【文献】特開2009-062342(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111790331(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 67/20
B01J 19/00
C07D 498/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順に接続されたエチルカルバゾール溶解釜と、マイクロリアクターと、反応液受入タンクとを含み、前記エチルカルバゾール溶解釜にはエチルカルバゾール添加口とo-ジクロロベンゼン添加口とが設けられ、前記マイクロリアクターに硝酸添加口が設けられ、前記反応液受入タンクの排出口は3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む硝化生成物を送り出すために用いられ、
前記マイクロリアクターはアウターケーシングと、前記アウターケーシングの内部に設けられるインナーシリンダーとを含み、前記インナーシリンダーと前記アウターケーシングとの間にはマイクロリアクションチャネルが設けられ、前記マイクロリアクションチャネルが前記アウターケーシングを貫通して、前記マイクロリアクターの添加口及び排出口が形成され、前記インナーシリンダーと前記アウターケーシングの少なくとも一方に駆動装置が接続され、
前記マイクロリアクションチャネルの直径は10mm未満であり、長さは1000~1500mmであり、
前記マイクロリアクターの前記アウターケーシングと前記インナーシリンダーの相対回転速度は900~1500回転/分であることを特徴とするC.I.ピグメントバイオレット23の連続合成のための硝化システム。
【請求項2】
前記マイクロリアクションチャネルの直径は5~8mmであり、長さは1300~1500mmである、請求項1に記載の硝化システム。
【請求項3】
前記マイクロリアクターの前記アウターケーシングと前記インナーシリンダーの相対回転速度は1000~1450回転/分である、請求項1に記載の硝化システム。
【請求項4】
前記反応液受入タンクの排出口に水分離槽が接続され、前記水分離槽の排出口に水相排出口及び油相排出口が設けられ、前記油相排出口は3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む硝化生成物を送り出すために用いられる、請求項1に記載の硝化システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の硝化システムと水素化還元システムとを含み、前記水素化還元システムは順に接続された還元脱水釜と、水素化還元釜と、脱水釜と、縮合反応釜と、閉環反応釜とを含むことを特徴とするC.I.ピグメントバイオレット23の連続合成のための合成システム。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の硝化システムを立ち上げ、エチルカルバゾール及びo-ジクロロベンゼンを前記エチルカルバゾール溶解釜に加え、混合して前記エチルカルバゾールと前記o-ジクロロベンゼンの混合溶液を形成させ、前記混合溶液を前記マイクロリアクターに導入し、前記マイクロリアクターに希硝酸を加え、反応が終了した後、反応液を得て前記反応液受入タンクに導入し冷却して、3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む硝化生成物を得、
前記マイクロリアクターの添加口のエチルカルバゾールと硝酸とのモル比は1.00:(1.01~2.00)であり、
前記マイクロリアクターで反応温度は40~95℃であることを特徴とするC.I.ピグメントバイオレット23の連続合成のための硝化方法。
【請求項7】
前記反応液受入タンクの前記排出口に水分離槽が接続され、前記水分離槽の排出口に水相排出口及び油相排出口が設けられ、前記油相排出口で3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む硝化生成物を得、
前記反応液受入タンクの前記排出口で得た生成物を前記水分離槽に流して水分離し、水相物質を得て廃水処理システムに入れ、得られた油相物質中には3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む硝化生成物が含まれる、請求項6に記載の硝化方法。
【請求項8】
硝化反応の収率は80~90%であり、硝化反応の主生成物の含有量、即ち硝化生成物における3-ニトロ-エチルカルバゾールの含有量は80~95%である、請求項6に記載の硝化方法。
【請求項9】
硝化生成物における3-ニトロ-エチルカルバゾールの含有量は90~95%である、請求項6に記載の硝化方法。
【請求項10】
硝化方法により3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む物質を調製するステップを含み、
ここで、前記硝化方法が、請求項1~4のいずれか一項に記載の硝化システムを立ち上げ、エチルカルバゾール及びo-ジクロロベンゼンを前記エチルカルバゾール溶解釜に加え、混合して前記エチルカルバゾールと前記o-ジクロロベンゼンの混合溶液を形成させ、前記混合溶液を前記マイクロリアクターに導入し、前記マイクロリアクターに希硝酸を加え、反応が終了した後、反応液を得て前記反応液受入タンクに導入し冷却して、前記3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む硝化生成物の物質を得ることであり、
更に、C.I.ピグメントバイオレット23の連続合成のための合成システムを立ち上げ、
ここで、前記合成システムが、請求項1~4のいずれか一項に記載の硝化システムと水素化還元システムとを含み、前記水素化還元システムは順に接続された還元脱水釜と、水素化還元釜と、脱水釜と、縮合反応釜と、閉環反応釜とを含み、
前記3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む物質を前記還元脱水釜に導入し、減圧蒸留により水分を除去し、物質を得て前記水素化還元釜に導入して水素化還元を行い、脱水して前記縮合反応釜に入れ、テトラヒドロキノンと縮合反応し、生成物を前記閉環反応釜に導入し、ベンゼンスルホニルクロリドを加えて前留分を除去した後、C.I.ピグメントバイオレット23顔料を得るステップを含むことを特徴とするC.I.ピグメントバイオレット23の連続合成のための合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機顔料の製造の技術分野に関し、主に、C.I.ピグメントバイオレット23(パーマネントバイオレット(商標))製造の技術分野に関し、具体的には、パーマネントバイオレットの連続合成のための硝化システム、合成システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーマネントバイオレットRLのカラーインデックスはC.I.ピグメントバイオレット23で、その構造式は次のとおりである。
【化1】
パーマネントバイオレットRLは、世界で高価な顔料の1つであり、プラスチック業界で使用される紫色顔料の中で最も優れているものである。従来の紫色顔料の中で、C.I.ピグメントバイオレット23は着色力が最も高く、しかも優れた輝度、優れた耐熱性、耐透過性及び良好な耐光堅牢度を有する。フタロシアニンブルー顔料と組み合わせる場合に、調整した後も色調が保たれ良好な耐光堅牢度を有している。それを用いた浅色の製品でも、満足のいく耐候性を有している。C.I.ピグメントバイオレットを微量で使用する場合に白色塗料とプラスチック製品は実際よりも白く見えるため、増白効果がある。
【0003】
粗パーマネントバイオレットの合成では、カルバゾールを出発物質とし、相間移動触媒の存在下でブロモエタンと反応させてエチルカルバゾールを得、クロロベンゼン中でエチルカルバゾールを希硝酸で硝化して3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを得、水素化還元により3-アミノ-N-エチルカルバゾールを得、更にテトラクロロキノンとの縮合、閉環反応により粗パーマネントバイオレットRLを得る。N-エチル化反応の収率は96%以上に達しており、硝化反応の収率は70%未満で、還元反応の収率は95%以上に達し、縮合と閉環反応の収率は92%以上に達している。
【0004】
N-エチルカルバゾールの硝化は不均一反応であり、しかも反応の過程で固体が沈殿するため、今や国内のパーマネントバイオレット製造企業は硝化工程で釜内反応器を用いる断続操作プロセスで製造し、製造プロセスには主に次のいくつかの段階がある。(1)硝化:エチルカルバゾールのクロロベンゼン溶液を硝化釜に投入し、攪拌して冷却し、ゆっくりと硝酸溶液を滴下し、反応温度を所定の範囲に限定する。硝酸の滴下が終了したら保温し、サンプルを得て検出し、原料エチルカルバゾールの含有量が0.5%未満になると反応が終了し、10℃以下に冷却し、ゆっくりと水酸化ナトリウム溶液を滴下して反応系のpHを中性に調整する。遠心濾過、洗浄、遠心脱水、排出及び袋詰めを経て、ニトロ化物3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを得、使用に備える。母液をクロロベンゼン溶媒回収システムに入れてクロロベンゼンを回収する。(2)水素化還元:ニトロ化物3-ニトロ-N-エチルカルバゾールをo-ジクロロベンゼン溶媒に投入し、加熱して脱水させ、脱水が終了すると水素化還元釜に入れて水素化還元を行う。水素化還元が終了すると、反応物の縮合、閉環工程になり、最終的に粗パーマネントバイオレットを得る。ここで、硝化反応は強い発熱を伴う反応で、通常の釜内反応器で硝化反応を行う場合に、混合速度と熱交換効率がさほど高くないため、局所的な過熱現象がよく起こり、局所的な過熱が一般に副生成物の生成につながるため、収率と選択性が低下する。また、激しい反応で生成した多くの熱が直ちに排出できないと、反応物をかき乱して爆発事故が起こる恐れがある。また、通常の釜内反応では、反応が激しくなりすぎないよう反応物を徐々に滴下するのが一般的であるが、これによって先に入った反応物が長く滞留することになる。しかし多くの反応では、反応物、生成物又は中間状態の生成物は反応状態での滞留時間が長くなると、大量の副生成物が生成される。関連の化学反応式は次のとおりである。
【化2】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、従来のパーマネントバイオレット顔料の合成プロセスに次の欠点があると考えている。(1)硝化反応で激しく発熱し、釜内反応を採用する場合に熱暴走のリスクが高く、安全上のリスクが高い。(2)釜内反応では効果的に攪拌できず、硝酸を滴下する時に局所的な過熱があり、これは硝化の選択性を低下させ、反応副生成物を増やす。(3)釜内反応の効率が低く、多くの硝酸が使用され、モル数はエチルカルバゾールの2倍を超えている。熱暴走のリスクを低下させるために、硝酸の滴下速度と反応温度を制御するのが一般であるが、これによって反応時間が長くなり、反応効率が低下する。(4)物質が釜内に長く滞留すると、副生成物の含有量が増える。(5)硝化反応の目的生成物は3-ニトロ-N-エチルカルバゾールであり、従来の釜内反応の条件下では、硝化反応の主生成物の含有量が約80%で、異性体副生成物の含有量が12%を超え、ポリニトロ化物、特にジニトロ副生成物の含有量が2.5%を超えており、ポリニトロ化物の含有量が高いほど、反応系が爆発する可能性が高くなるため、ポリニトロ化物の生成を厳密に制御する必要がある。(6)反応の連続性が悪く、硝化反応終了後に、まず固液分離を行う必要があり、水素化還元を行う前にニトロ化物をo-ジクロロベンゼンに溶解するため、反応効率が明らかに低下する。また、固液分離工程で、一部のニトロ化物が溶媒に溶解して母液に入るため、物質が損失し収率が低下する。
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は次のとおりである。従来のパーマネントバイオレットの合成プロセスには熱暴走のリスクがあり、原料の消費が多く、反応時間が長く、副生成物が多く、反応の連続性が悪く、反応効率が低く、生成物の収率にも品質にも向上させる余地がある。
【0007】
本発明の目的は次のとおりである。マイクロリアクターの優れた物質移動・熱伝達効果を利用して、パーマネントバイオレット合成プロセスの安全性を向上させ、反応温度、時間などのパラメータの効果的な制御により、反応の転化率を向上させて、合成プロセスを連続的なものとし、生成物の収率を向上させる。
【0008】
具体的には、本発明は従来技術の欠点に対し、パーマネントバイオレット合成プロセスシステムにマイクロリアクターを加え、マイクロリアクターが非常に大きな比表面積を有するため、非常に高い熱交換効率を有し、反応中に一瞬で大量の熱が放出したとしても、それを直ちに吸収して反応温度を設定値以下に保持することができる。局所的な過熱が引き起こす副生成物の生成で反応収率と選択性に影響が及ぶことを効果的に避けるとともに、たとえ制御不能な状態になっても、システムの液体保持量が少ないため、危害が一定の範囲内に収まるため、反応システムの固有の安全性が大幅に向上する。また、マイクロリアクター技術ではマイクロチャネルでの連続フロー反応を採用しているため、反応条件下での物質の滞留時間を正確に制御することができ、最適な反応時間になるとすぐに次のステップの反応に移るか、又は反応を停止することで、反応時間が長いことによる副生成物の生成を効果的に解消することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特徴が以下のとおりであるパーマネントバイオレットの連続合成のための硝化システムであって、順に接続されたエチルカルバゾール溶解釜と、マイクロリアクターと、反応液受入タンクとを含み、前記エチルカルバゾール溶解釜にはエチルカルバゾール添加口とo-ジクロロベンゼン添加口とが設けられ、前記マイクロリアクターに硝酸添加口が設けられ、前記反応液受入タンクの排出口は3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む硝化生成物を送り出すために用いられる。
【0010】
ここで、前記マイクロリアクターはアウターケーシングと、アウターケーシングの内部に設けられるインナーシリンダーとを含み、前記インナーシリンダーとアウターケーシングとの間にはマイクロリアクションチャネルが設けられ、前記マイクロリアクションチャネルがアウターケーシングを貫通して、マイクロリアクターの添加口及び排出口が形成され、前記インナーシリンダーとアウターケーシングの少なくとも一方に駆動装置が接続される。
【0011】
好ましくは、前記硝化システムにおいて、前記マイクロリアクションチャネルの直径は10mm未満であり、好ましくは5~8mmであり、長さは1000~1500mmであり、好ましくは1300~1500mmである。
【0012】
好ましくは、前記硝化システムにおいて、前記マイクロリアクターのアウターケーシングとインナーシリンダーの相対回転速度は900~1500回転/分であり、好ましくは1000~1450回転/分である。
【0013】
好ましくは、前記硝化システムにおいて、前記マイクロリアクションチャネルの比表面積は10000~50000m/mに達している。
【0014】
好ましくは、前記硝化システムにおいて、前記反応液受入タンクの添加口はpH調整剤添加口を含む。
【0015】
好ましくは、前記硝化システムにおいて、前記反応液受入タンクの排出口に水分離槽が接続され、前記水分離槽の排出口に水相排出口及び油相排出口が設けられ、前記油相排出口は3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む硝化生成物を送り出すために用いられる。
【0016】
好ましくは、前記硝化システムにおいて、前記溶解釜のo-ジクロロベンゼン添加口にo-ジクロロベンゼン計量槽が接続され、溶解釜の排出口にエチルカルバゾール溶液取扱槽が接続され、前記硝酸添加口に希硝酸取扱槽が接続され、前記反応液受入タンクの添加口にアルカリ溶液(アルカリ性溶液)計量槽が接続される。
【0017】
本発明は特徴が以下のとおりであるパーマネントバイオレットの連続合成のための合成システムを更に提供する。前記硝化システムと、水素化還元システムとを含み、前記水素化還元システムは順に接続された還元脱水釜と、水素化還元釜と、脱水釜と、縮合反応釜と、閉環反応釜とを含む。
【0018】
好ましくは、前記合成システムにおいて、前記還元脱水釜の添加口が水分離槽の油相排出口に連通する。
【0019】
好ましくは、前記合成システムにおいて、前記縮合閉環反応釜の排出口に更に遠心分離機が接続される。
【0020】
本発明は特徴が以下のとおりであるパーマネントバイオレットの連続合成のための硝化方法を更に提供する。前記硝化システムを立ち上げ、エチルカルバゾール及びo-ジクロロベンゼンをエチルカルバゾール溶解釜に加え、混合してエチルカルバゾールとo-ジクロロベンゼンの混合溶液を形成させ、当該混合溶液をマイクロリアクターに導入し、マイクロリアクターに希硝酸を加え、反応が終了した後、反応液を得て反応液受入タンクに導入し冷却して、3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む硝化生成物を得る。
【0021】
好ましくは、前記硝化方法において、反応液受入タンクにpH調整剤を加えて、そのpHを6.5~7.5にする。
【0022】
好ましくは、前記硝化システムにおいて、前記マイクロリアクターの添加口のエチルカルバゾールと硝酸のモル比は1.00:(1.01~3.00)であり、好ましくは1.00:(1.01~2.00)である。
【0023】
好ましくは、前記硝化システムにおいて、前記マイクロリアクターで反応温度は30~100℃であり、好ましくは40~95℃である。
【0024】
好ましくは、前記硝化システムにおいて、前記エチルカルバゾール溶解釜でエチルカルバゾールの濃度は1.0~5.0kmol/Lであり、前記硝酸の濃度は1.0~10.0kmol/Lである。
【0025】
好ましくは、前記硝化方法において、マイクロリアクターでの反応時間は5~10分であり、反応液受入タンクで物質を0~10℃に冷却する。
【0026】
好ましくは、前記硝化方法において、前記反応液受入タンクの前記排出口に水分離槽が接続され、前記水分離槽の排出口に水相排出口及び油相排出口が設けられ、前記油相排出口で3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む硝化生成物を得る。
【0027】
反応液受入タンクの排出口で得た生成物を水分離槽に流して水分離し、水相物質を得て廃水処理システムに入れ、油相物質を得、その中には3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む硝化生成物が含まれる。
【0028】
好ましくは、前記硝化方法において、前記溶解釜のo-ジクロロベンゼン添加口にo-ジクロロベンゼン計量槽が接続され、溶解釜の排出口にエチルカルバゾール溶液取扱槽が接続され、前記硝酸添加口に希硝酸取扱槽が接続され、前記反応液受入タンクの添加口にアルカリ溶液計量槽が接続される。
【0029】
o-ジクロロベンゼンを計量槽より溶解釜に流し、溶解したらエチルカルバゾール溶液取扱槽に流し、更にマイクロリアクターに流し、硝酸溶液を酸調製釜、希硝酸取扱槽を経て、マイクロリアクターに流す。
【0030】
好ましくは、前記硝化方法において、硝化反応の収率は80~90%である。硝化反応の主生成物の含有量、即ち硝化生成物における3-ニトロ-エチルカルバゾールの含有量は80~95%であり、好ましくは90~95%である。異性体副生成物の含有量は10%未満であり、好ましくは5%未満であり、ポリニトロ副生成物は未満3.5%であり、好ましくは1%未満であり、より好ましくは0.25%未満であり、更に好ましくは0.15%未満である。
【0031】
本発明は特徴が以下のとおりであるパーマネントバイオレットの連続合成のための合成方法を更に提供する。前記硝化方法を含み、更に次のステップを含む。前記合成システムを立ち上げ、3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む物質を還元脱水釜に導入し、減圧蒸留により水分を除去し、反応物を得て水素化還元釜に導入して水素化還元を行い、脱水して縮合反応釜に入れ、テトラヒドロキノンと縮合反応し、生成物を閉環反応釜に導入し、ベンゼンスルホニルクロリドを加えて前留分を除去した後、パーマネントバイオレット顔料を得る。
【0032】
好ましくは、前記水素化反応工程は次のとおりである。還元脱水釜を経て脱水した後の物質をポンプで還元釜に輸送して、攪拌しながらフレーク状のラネーニッケル、アンモニア水を加え、窒素を流して還元釜内の空気を置換し、還元釜内の酸素含有量が安全要件に合致することを検出した後、窒素入口弁を閉じ、加熱し、水素入口弁を開き水素を流して、水素化還元を行う。
【0033】
好ましくは、還元終了後、冷却し、ゆっくりと排出して釜内の圧力がゼロになった後、窒素を流して2回置換する。反応物を濾過して、触媒を回収し、液体物質を次の工程に移す。
【0034】
好ましくは、前記アンモニア水の濃度は15~20%であり、脱水後の物質とラネーニッケル(Raney-Nickel)との質量比は(370~925):1である。前記脱水後の物質とアンモニア水との質量比は(60~95):1である。前記水素の流速は2~5m/hである。前記水素化還元反応の温度は120~130℃であり、反応時間は8~10時間である。
【0035】
好ましくは、前記水素化還元後の脱水工程は次のとおりである。反応物質は水素化釜(水素化還元釜)内の還元物質に由来し、脱水釜にo-ジクロロベンゼンを加え、真空で均質化釜の還元物質を脱水釜に移し、蒸気をジャケットにおいて加熱し蒸留して130℃になったら、受入タンクの真空弁をゆっくりと開いて負圧下で蒸留し140℃にして、70~80℃に冷却する。
【0036】
好ましくは、水素化還元釜の還元物質とo-ジクロロベンゼンとの重量比は(125~150):(650~750)である。
【0037】
好ましくは、前記縮合反応工程は次のとおりである。脱水釜で得た物質を真空で縮合反応釜に移し、テトラクロロキノンを投入し、酸結合剤を滴下し、40±1℃で5~10時間保温して縮合物を得る。
【0038】
好ましくは、前記酸結合剤はトリエチルアミンであり、前記水素化還元釜の還元物質とテトラクロロキノンとの重量比は(125~150):(65~95)であり、前記テトラクロロキノンと酸結合剤との重量比は(65~95):(85~105)である。
【0039】
好ましくは、前記閉環工程は次のとおりである。縮合釜内の縮合物に由来する反応物質を対応する閉環釜に入れ、ジャケットを介して熱伝導油で加熱してベンゼンスルホニルクロリドを加えて前留分を除去し、引き続き175℃に加熱して5時間保温して還流させ、130℃に冷却し、遠心排出を経て洗浄して、パーマネントバイオレットを得る。
【0040】
好ましくは、前記水素化還元釜の還元物質とベンゼンスルホニルクロリドとの重量比は(125~150):(18~35)である。ここで、本発明でマイクロリアクターのインナーシリンダーの外面はアウターケーシングの内面に密着し、密着した部位に、インナーシリンダーの外壁の回りに管状のギャップを設けて、マイクロリアクションチャネルが形成され、前記アウターケーシング又はインナーシリンダーに駆動装置が接続され、又は両方に駆動装置が接続されて、軸を中心に回転する。アウターケーシングは動かず、インナーシリンダーが回転してもよいし、又はインナーシリンダーは動かず、アウターケーシングが回転してもよく、又は両者が反対方向に回転し、両者の相対回転でマイクロチャネルの内部の物質を混合させる。アウターケーシングとインナーシリンダーの相対回転速度は両者の回転速度の差である。
【発明の効果】
【0041】
本発明の利点は次のとおりである。(1)固有の安全性が明らかに向上し、マイクロリアクターは物質移動・熱伝達効果に優れるため、熱の蓄積を効果的に避けることができ、また、連続的であるため、反応器内の液体保持量が少なく、硝化反応の固有の安全性が大幅に向上している。(2)反応温度、時間、原料比などの重要なパラメータを正確に制御できるため、反応の選択性を大幅に向上させ、副生成物の生成を減らすことができ、これによって原料の転化率が向上している。(3)ニトロ化物の固液分離工程を無くしているため、物質の損失が低減し、生成物の収率が効果的に向上している。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】実施例1-1に記載の硝化システムの模式図。
図2】実施例1-2に記載の硝化システムの模式図。
図3】実施例1-3に記載の硝化システムの模式図。
図4】実施例2-2に記載のパーマネントバイオレット合成システムの模式図。
図5】実施例3-1に記載の硝化反応生成物の液体クロマトグラム。
図6】比較例に記載の硝化システムの模式図。
図7】比較例に記載のパーマネントバイオレット合成システムの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
従来のパーマネントバイオレット合成プロセスにおける、熱暴走のリスク、反応時間が長い、反応効率が低い、連続的な製造ができないという課題を解決するため、本発明は、マイクロリアクターを含む合成システムを採用し、パーマネントバイオレットを連続的に製造できるため、生成物の品質と収率を向上させることができる。
【0044】
好ましい実施形態において、本発明に記載のパーマネントバイオレットの連続合成方法は次のステップを含む。(1)エチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液の調製:所定の量のエチルカルバゾールを適量のo-ジクロロベンゼンに溶解して、モル濃度1.0~5.0kmol/Lのエチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液を調製し、使用に備える。(2)希硝酸溶液の調製:所定の量の濃硝酸を適量の水に溶解して、モル濃度1.0~10.0kmol/Lの硝酸溶液を調製し、使用に備える。(3)硝化反応:マイクロリアクターを立ち上げ、較正を経て正確に計量できる計量ポンプを用いて、nエチルカルバゾール:n硝酸=1.00:(1.01~2.00)のモル比でエチルカルバゾール/o-ジクロロベンゼン溶液及び希硝酸溶液をそれぞれ連続的にマイクロリアクターに輸送し、充分な混合と効率的な物質移動・熱伝達を経て、反応温度、反応時間、混合効果などのパラメータを厳密に制御して、2種の原料をマイクロリアクター内で充分に反応させ、反応液が連続的に反応器から受入タンクに入り、反応液を受入タンク内において攪拌して、冷却しpHを調整して、硝化反応を完全に停止する。(4)受入タンク内の物質は水分離槽に入って水分離し、水相は廃水処理システムに入り、油相は還元脱水釜に入って残留した水分を減圧蒸留で除去し、脱水が終了した物質は水素化還元釜に入って水素化還元を行い、還元終了後に物質は縮合、閉環などの次の工程に入り、最終的に粗パーマネントバイオレットを得る。好ましくは、希硝酸の濃度範囲は1.0~10.0kmol/Lであり、反応温度は40~95℃である。
【0045】
本発明に記載のパーマネントバイオレットの連続製造システムは以下の特徴を有する。
【0046】
(1)本発明に記載のシステムでマイクロリアクターは反応界面を効果的に高めて、反応物質の移動を促すことができ、固体が生成する反応に用いると、粒子のサイズ分布が均一な固体を得ることができる。気液二相反応に適し、界面を効果的に高めて、気泡の合体を効果的に制限することができ、気泡と液相の相互作用の行程を延長して、一行程内における液相の吸収に役立つ。(2)反応温度、反応時間、混合効果を制御して硝化反応の選択性を向上させるという目的を達成し、硝化主生成物の含有量は90%を超えており、異性体副生成物の含有量は5%未満であり、ポリニトロ副生成物の含有量は0.25%未満であり、最終的に反応の転化率向上という目的を達成する。
【0047】
(3)プロセスを最適化している。硝化反応の段階で、クロロベンゼンの代わりにo-ジクロロベンゼンにエチルカルバゾールを溶解し、反応が終了した後、静置して層分離させ、下層の溶媒相が脱水釜に入って脱水してから還元釜に入り、上層の水相が汚水処理システムに入ることで、合成プロセスの連続化を実現し、遠心分離工程を無くしているため、ニトロ化物が溶媒に溶解して損失することが避けられ、生成物の収率が大幅に向上する。
【0048】
本発明はマイクロリアクター技術のパーマネントバイオレット合成プロセスへの適用を実現し、マイクロリアクターを利用してシステムの固有の安全性、反応選択性及び転化率を向上させ、クロロベンゼンの代わりにo-ジクロロベンゼンを使用し、遠心分離による固液分離工程を無くしており、プロセスの連続性を向上させるとともに物質の損失が低減し、生成物の収率を向上させている。システムで1種類の溶媒しかないため、溶媒の回収に役立ち溶媒混在の影響が避けられ、溶媒の消費が低減される。
【0049】
以下、具体的な実施例で本発明に記載のパーマネントバイオレットの連続合成のためのシステム及び方法を詳しく説明する。
【0050】
本発明で使用する化学試薬の提供は次のとおりである。o-ジクロロベンゼンは江蘇隆昌化工有限公司の製品で純度が99.0%以上であり、硝酸は寧夏潤夏能源化工有限公司の製品で純度が98%以上である。
【0051】
本発明で使用する装置の情報は次のとおりである。
液体クロマトグラフィーは島津製作所製のモデルLC-20Aである。
【0052】
実施例1:パーマネントバイオレットの連続合成のための硝化システム
(実施例1-1)
本実施例の硝化システムは、図1の模式図に示すとおり、順に接続されたエチルカルバゾール溶解釜と、マイクロリアクターと、反応液受入タンクとを含み、前記エチルカルバゾール溶解釜の物質入口はエチルカルバゾール添加口及びo-ジクロロベンゼン添加口を含み、前記マイクロリアクターの添加口は硝酸添加口及びエチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液添加口を含み、前記反応液受入タンクの添加口はpH調整剤添加口を含み、反応液受入タンクの物質出口で3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを得た。前記マイクロリアクターには耐食性材料の材質が使用され、本実施例で使用する材料はハステロイである。
【0053】
前記マイクロリアクターの構造はアウターケーシングと、アウターケーシングの内部に設けられるインナーシリンダーとを含み、前記インナーシリンダーとアウターケーシングとの間にマイクロリアクションギャップが形成され、前記ギャップの直径は10mm未満であり、前記インナーシリンダー及びアウターケーシングに駆動装置が接続されて、軸を中心に回転できる。物質をマイクロリアクションギャップに加える時、アウターケーシングとインナーシリンダーの相対運動で、物質の移動と拡散が行われ、均一に混合して、流体膜が形成され、反応過程はより効率的で安定的になり、また、アウターケーシングの内面及び/又はインナーシリンダーの外面には、物質を加熱するための加熱板が設けられる。好ましくは、アウターケーシングの内壁及びインナーシリンダーの外壁には防食材料がコーティングされている。
【0054】
前記硝化システムの操作手順は次のとおりである。エチルカルバゾール及びo-ジクロロベンゼンをエチルカルバゾール溶解釜に加え、混合してエチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液を形成し、マイクロリアクターに流し、マイクロリアクターに希硝酸を加え、マイクロリアクターを立ち上げ、エチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液と希硝酸との比を制御して、マイクロリアクターにおいて充分に混合させて、反応させ、反応液を得て反応液受入タンクに流して攪拌し、冷却し、pH調整剤を加えて反応液のpHを調整して、硝化反応が完全に停止し、3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む硝化生成物を得た。
【0055】
ここで、前記エチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液において、エチルカルバゾールの濃度は1.0~5.0kmol/Lであり、前記希硝酸の濃度は1.0~10.0kmol/Lであり、前記マイクロリアクターにおいて、原料中のエチルカルバゾールと硝酸とのモル比は1.00:(1.01~2.00)であり、前記マイクロリアクターのインナーシリンダーとアウターケーシングの相対回転速度は1000~1450回転/分であった。マイクロリアクターで反応温度は40~95℃であり、反応時間は5~10分であり、反応液受入タンクで物質を0~10℃に冷却し、pHを6.5~7.5に調整した。
【0056】
(実施例1-2)
本実施例に記載の硝化システムは実施例1-1に類似し、図2の模式図に示すとおり、実施例1-1との違いは次のとおりである。前記エチルカルバゾール溶解釜のo-ジクロロベンゼン添加口にはo-ジクロロベンゼンの添加量を正確に計量するためのo-ジクロロベンゼン計量槽が接続され、前記エチルカルバゾール溶解釜の排出口にエチルカルバゾール溶液貯蔵タンクが接続される。前記マイクロリアクターの添加口にアルキル化カルバゾール貯蔵タンク(エチルカルバゾール貯蔵タンク)及び希硝酸貯蔵タンクが接続され、前記希硝酸貯蔵タンクの添加口には所定の濃度の希硝酸を調製するための酸調製釜が接続され、前記反応液受入タンクのpH調整剤添加口にはアルカリ溶液の添加量を調整するためのアルカリ溶液計量槽が接続される。
【0057】
(実施例1-3)
本実施例に記載の硝化システムは実施例1-2に類似し、図3の模式図に示すとおり、実施例1-2との違いは次のとおりである。前記反応液受入タンクの排出口に水分離槽が接続され、前記水分離槽の排出口は水相排出口と油相排出口とを含み、前記水相排出口は廃水処理システムに接続され、前記油相排出口で3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む硝化生成物を得た。
【0058】
操作時に、反応液受入タンクの排出口で得た生成物を水分離槽に流して水分離し、水相物質を得て廃水処理システムに入れ、油相物質を得、その中には3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む硝化生成物が含まれる。
【0059】
好ましくは、前記油相排出口に脱水釜が接続され、減圧蒸留により油相から水分を更に除去する。
【0060】
実施例2:パーマネントバイオレット合成システム
(実施例2-1)
本実施例に記載のパーマネントバイオレット合成システムは実施例1-3に記載の硝化システムと水素化還元システムとを含み、前記水素化還元システムは順に接続された還元脱水釜と、水素化還元釜と、脱水釜と、縮合反応釜と、閉環反応釜とを含み、前記還元脱水釜の添加口が水分離槽の油相排出口に連通する。反応液受入タンクにおいて、硝化反応が停止し、水分離槽を設けると反応液受入タンクの使用効率を向上させることができ、物質と水の相容性と密度差を利用して直接的に殆どの水を除去することで、脱水効率を向上させ、エネルギー消費を低減することに役立つ。
【0061】
操作時に、水分離槽の油相物質を還元脱水釜に流し、減圧蒸留により水分を除去し、物質を得て水素化還元釜に流して水素化還元を行い、脱水釜での減圧蒸留により水分を除去した後、縮合反応釜、閉環反応釜に入り、テトラヒドロキノンとの縮合、閉環反応後に、粗パーマネントバイオレット顔料を得た。
【0062】
(実施例2-2)
本実施例に記載のパーマネントバイオレット合成システムは実施例2-1に類似し、図4の模式図に示すとおり、実施例2-1との違いは次のとおりである。前記縮合閉環反応釜の排出口に更に遠心分離機が接続され、縮合閉環反応後に得た物質を遠心分離した後、母液を得て溶媒回収システムに流し、粗パーマネントバイオレットを得て顔料化システムに流して、更なる加工を行った。
【0063】
(実施例2-3)
本実施例に記載のパーマネントバイオレット合成システムは実施例2-1に類似し、違いは次のとおりである。本実施例に記載の合成システムは実施例1-1に記載の硝化システムと水素化還元システムとを含み、前記還元脱水釜の添加口は反応液受入タンクの排出口に連通する。
【0064】
実施例3:パーマネントバイオレットの連続合成
(実施例3-1)
実施例2-1に記載のパーマネントバイオレット合成システムを用いて、パーマネントバイオレット顔料を合成した。ステップは具体的に次のとおりである。
(1)N-エチル化工程
エチルカルバゾールの合成工程は次のとおりである。
アルカリ溶液(濃度30%のNaOH溶液)2000kg、水酸化ナトリウム(NaOH)500kgを投入して溶解し、カルバゾール2500kg、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド50kgを反応釜に投入して、攪拌し、ゆっくりとブロモエタンを滴下して凝縮器において少し還流しながら反応させ、ブロモエタンの滴下が終了した後、65~85℃に保温して還流させて反応が終了した後、加熱蒸留でブロモエタンを受入タンクに回収し、蒸留終了後に釜内に静置し、下層のアルカリ溶液を層分離して水酸化ナトリウム溶液プールに移し、上層はエチルカルバゾールであり、使用に備える。検出した結果、エチルカルバゾールの純度は97.5%以上であった。
【0065】
(2)硝化工程
エチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液の調製:エチルカルバゾールをo-ジクロロベンゼンに溶解して、モル濃度5.0kmol/Lのエチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液を調製し、使用に備えた。
【0066】
希硝酸溶液の調製:濃硝酸を適量の水に溶解して、モル濃度10.0kmol/Lの希硝酸溶液を調製し、使用に備えた。
【0067】
硝化反応:マイクロリアクターを立ち上げ、較正を経て正確に計量できる計量ポンプを用いて、nエチルカルバゾール:n硝酸=1.00:2.00のモル比とし、エチルカルバゾール溶液の添加量は350L/hであり、希硝酸溶液の添加量は350L/hであった。エチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液及び希硝酸溶液をそれぞれ連続的にマイクロリアクターにポンプ輸送した。マイクロリアクターのギャップの直径は7mmで、長さは1150mmであり、アウターケーシングは動かず、インナーシリンダーの回転速度は1150回転/分であり、充分な混合と効率的な物質移動・熱伝達を経て、反応温度を41±1℃に、反応時間を6±1分に、そしてモーター周波数などのパラメータを厳密に制御して、2種の原料をマイクロリアクター内で充分に反応させた。反応液が連続的に反応器から受入タンクに入り、反応液を受入タンク内において攪拌して、7℃に冷却し、30%水酸化ナトリウム溶液を添加しpHを6.8に調整して、硝化反応が完全に停止した。
【0068】
液体クロマトグラフィー検出結果は次のとおりであった。目的生成物3-ニトロ-N-エチルカルバゾールの含有量は95.0443%であり、エチルカルバゾールの残留量は0.00%であり、異性体副生成物(2-ニトロ-N-エチルカルバゾールなど)の含有量は3.1945%であり、ポリニトロ副生成物(2,6-ジニトロ-N-エチルカルバゾールなど)の含有量は0.1802%であった。
【0069】
ここで、液体クロマトグラフィー検出の手順は次のとおりである。反応液受入タンクで得た物質と移動相で調製したサンプルをサンプラーで液体クロマトグラフに注入した。注入量は20μLであり、移動相Aはアセトニトリルで、移動相Bは水であり、移動相比はA:B=70:30である。クロマトグラフィーカラムはC18 4.6×250mm、5μmであり、カラム温度は25℃であり、検出波長は240nmであった。標準物質は3-ニトロ-N-エチルカルバゾールであり、純度は97.6164%であり、江蘇仁欣新材料有限公司より購入した。
【0070】
本実施例で得た硝化反応生成物の液体クロマトグラムは図5に示すとおりであり、結果は次の表に示すとおりである。
【表1】
【0071】
(3)水素化還元、縮合閉環工程
受入タンク内の物質を水分離槽に入れて水分離し、水相は廃水処理システムに入り、油相は還元脱水釜に入り、残留した水分を減圧蒸留で除去し、脱水が終了した物質は水素化還元釜に入って水素化還元を行い、還元終了後に物質が縮合、閉環などの次の工程に入り、最終的に粗パーマネントバイオレットを得た。
【0072】
ここで、水素化還元工程は次のとおりである。還元脱水釜で脱水後の物質(添加量1850kg)をポンプで還元釜に輸送し、攪拌しながらフレーク状のラネーニッケル5kg、アンモニア水30kg(濃度15%)を加え、窒素を流して還元釜内の空気を置換し、還元釜内の酸素含有量が安全要件に合致したことを検出した後、窒素入口弁を閉じ、加熱し、水素入口弁を開いて水素(流量2m/h)を流して水素化還元を行なった。130℃で10時間反応させ、還元が終了した後、冷却し、ゆっくりと排出して釜内の圧力がゼロになった後、窒素を流して2回置換する。反応物を濾過して、触媒を回収し、液体物質を次の工程に移した。
【0073】
縮合閉環工程は次のとおりである。反応物質は水素化釜(水素化還元釜)内の還元物質に由来し(添加量1500kg)、脱水釜に7500kgのo-ジクロロベンゼンを2回加え、真空で均質化釜の還元物質を脱水釜に移し、蒸気をジャケットにおいて加熱し蒸留して130℃になったら、受入タンクの真空弁をゆっくりと開いて負圧下で蒸留し140℃にして、80℃に冷却し、真空で縮合反応釜に移して、テトラクロロキノン(添加量950kg)を投入し、トリエチルアミン(添加量1050kg)を滴下して、40±1℃で10時間保温して縮合物を得た。縮合釜内の縮合物に由来する反応物質を対応する閉環釜に入れ、熱伝導油をジャケットにおいて加熱し、ベンゼンスルホニルクロリド(添加量350kg)を加えて前留分を除去し、引き続き175℃に加熱して5時間保温して還流させ、130℃に冷却し、遠心排出し洗浄してビスカルバゾールジオキサジン(粗パーマネントバイオレット)を得た。
【0074】
計算の結果では、パーマネントバイオレット生成物の合成総合収率は75.1%であり、N-エチル化反応の収率は96.2%であり、還元反応の収率は95.1%であり、縮合と閉環反応の収率は92.4%であった。硝化反応の収率は88.8%と推定した。
【0075】
収率は、実際の収量と理論収量との比を指し、計算式は次のとおりである。
M実際の収量×純度/M理論収量×100%
総合収率は、生成物パーマネントバイオレットのバッチ収量の理論収量に対する比を指し、式中Mはパーマネントバイオレットを指し、式中の理論収量は原料カルバゾールの注入量から算出される。
【0076】
硝化反応の収率は、3-ニトロ-N-エチルカルバゾールの実際の収量と理論収量との比を指し、硝化異性体が存在するため、目的生成物の理論収率が確定できず、以下の算式で推定した。:総合収率=N-エチル化反応の収率×硝化反応の収率×還元反応の収率×縮合閉環反応の収率
【0077】
N-エチル化反応の収率は、エチルカルバゾールの実際の収量の理論収量に対する比を指し、式中Mはエチルカルバゾールを指し、式中の理論収量は原料カルバゾールの注入量から算出される。
【0078】
還元反応の収率は、3-アミノ-N-エチルカルバゾールの実際の収量の理論収量に対する比を指し、式中Mは3-アミノ-N-エチルカルバゾールを指し、式中の理論収量は3-ニトロ-N-エチルカルバゾールの注入量から算出される。
【0079】
縮合閉環反応の収率は、パーマネントバイオレットの実際の収量の理論収量に対する比を指し、式中Mはパーマネントバイオレットを指し、式中の理論収量は3-アミノ-N-エチルカルバゾールの注入量から算出される。
【0080】
検出した結果、本実施例で得たパーマネントバイオレットの純度は98.5±0.5%であった。検出方法は次のとおりである。0.4gのサンプル(又は乾燥物基準で、精度0.0001g)を正確に秤量し、50mLビーカーに入れ、ピリジン30mL(3回)を加えて溶解してすすぎ、サンドコア漏斗(重量が0.0002gと一定になるまで)で濾過し、大量の蒸留水で濾液が無色になるまで洗浄し、オーブン温度を120℃に調整して1時間乾燥し、漏斗を重量が一定になるまで乾燥した。デシケーターに入れて常温に冷却した後、秤量した。計算式は次のとおりである。
純度X=(G3-G2)/G1×100%
式中、
G1:サンプル重量(g)
G2:一定重量のサンドコア漏斗の重量(g)
G3:抽出後に重量が一定になるまで乾燥したフィルターケーキ+サンドコア漏斗の重量(g)
X:粗パーマネントバイオレットRLの含有量(%)
【0081】
(実施例3-2)
実施例3-2は実施例3-1に類似するが、本実施例の硝化工程に違いがあり、当該工程は次のとおりである。
【0082】
エチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液の調製:エチルカルバゾールをo-ジクロロベンゼンに溶解して、モル濃度2.70kmol/Lのエチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液を調製し、使用に備えた。
【0083】
希硝酸溶液の調製:濃硝酸を適量の水に溶解して、モル濃度7.38kmol/Lの希硝酸溶液を調製し、使用に備えた。
【0084】
硝化反応:マイクロリアクターを立ち上げ、較正を経て正確に計量できる計量ポンプを用いて、nエチルカルバゾール:n硝酸=1.00:1.15のモル比とし、エチルカルバゾール溶液の添加量は350L/hであり、希硝酸溶液の添加量は147L/hであり、エチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液及び希硝酸溶液をそれぞれ連続的にマイクロリアクターにポンプ輸送した。マイクロリアクターのギャップの直径は8mmであり、長さは1000mmであり、アウターケーシングは動かず、インナーシリンダーの回転速度は1050回転/分であり、充分な混合と効率的な物質移動・熱伝達を経て、反応温度を55±1℃に、反応時間を5±1分に厳密に制御して、2種の原料をマイクロリアクター内で充分に反応させた。反応液が連続的に反応器から受入タンクに入り、反応液を受入タンク内において攪拌して、7℃に冷却し、NaOH溶液(質量濃度30%)を添加してpHを6.8に調整して、硝化反応が完全に停止した。
【0085】
水素化還元、縮合閉環工程
受入タンク内の物質を水分離槽に入れて水分離し、水相は廃水処理システムに入り、油相は還元脱水釜に入り、残留した水分を減圧蒸留で除去した。脱水が終了した物質は水素化還元釜に入って水素化還元を行い、還元終了後に物質が縮合、閉環などの次の工程に入り、最終的に粗パーマネントバイオレットを得た。
【0086】
ここで、水素化還元工程は次のとおりである。還元脱水釜で脱水後の物質(添加量1850kg)をポンプで還元釜に輸送し、攪拌しながらフレーク状のラネーニッケル2kg、アンモニア水20kg(濃度20%)を加えた。窒素を流して還元釜内の空気を置換し、還元釜内の酸素含有量が安全要件に合致したことを検出したら、窒素入口弁を閉じ、加熱し、水素入口弁を開いて水素(流量2m/h)を流して水素化還元を行い、120℃下で8時間反応させた。還元が終了した後、冷却し、ゆっくりと排出して釜内の圧力がゼロになった後、窒素を流して2回置換する。反応物を濾過して、触媒を回収し、液体物質を次の工程に移した。
【0087】
縮合閉環工程は次のとおりである。反応物質は水素化釜(水素化還元釜)内の還元物質に由来し(添加量1250kg)、脱水釜に6500kgのo-ジクロロベンゼンを2回加え、真空で均質化釜の還元物質を脱水釜に移し、蒸気をジャケットにおいて加熱し蒸留して130℃になったら、受入タンクの真空弁をゆっくりと開いて負圧下で蒸留し140℃にして、70℃に冷却し、真空で縮合反応釜に移して、テトラクロロキノン(添加量650kg)を投入し、トリエチルアミン(添加量850kg)を滴下し、40±1℃下で5時間保温して縮合物を得た。縮合釜内の縮合物に由来する反応物質を対応する閉環釜に入れ、熱伝導油をジャケットにおいて加熱してベンゼンスルホニルクロリド(添加量180kg)を加えて前留分を除去し、引き続き175℃に加熱して5時間保温して還流させ、130℃に冷却し、遠心排出し洗浄してビスカルバゾールジオキサジン(粗パーマネントバイオレット)を得た。
【0088】
(実施例3-3)
実施例3-3は実施例3-1に類似するが、本実施例の硝化工程に違いがあり、当該工程は次のとおりである。
【0089】
エチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液の調製:エチルカルバゾールをo-ジクロロベンゼンに溶解して、モル濃度1.0kmol/Lのエチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液を調製し、使用に備えた。
【0090】
希硝酸溶液の調製:濃硝酸を適量の水に溶解して、モル濃度1.0kmol/Lの希硝酸溶液を調製し、使用に備えた。
【0091】
硝化反応:マイクロリアクターを立ち上げ、較正を経て正確に計量できる計量ポンプを用いて、nエチルカルバゾール:n硝酸=1.00:1.05のモル比とし、エチルカルバゾール溶液の添加量は350L/hであり、希硝酸溶液の添加量は368L/hであり、エチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液及び希硝酸溶液をそれぞれ連続的にマイクロリアクターにポンプ輸送した。マイクロリアクターのギャップの直径は6mmであり、長さは1500mmであり、アウターケーシングは動かず、インナーシリンダーの回転速度は1450回転/分であり、充分な混合と効率的な物質移動・熱伝達を経て、反応温度を94±1℃に、反応時間を6±1分に、そしてモーター周波数などのパラメータを厳密に制御して、2種の原料をマイクロリアクター内で充分に反応させた。反応液が連続的に反応器から受入タンクに入り、反応液を受入タンク内において攪拌して、7℃に冷却し、そして30%水酸化ナトリウム溶液を添加してpHを6.8に調整して、硝化反応が完全に停止した。
【0092】
(実施例3-4)
実施例3-4は実施例3-1に類似するが、本実施例の硝化工程に違いがあり、当該工程は次のとおりである。
【0093】
エチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液の調製:所定の量のエチルカルバゾールを適量のo-ジクロロベンゼンに溶解して、モル濃度2.5kmol/Lのエチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液を調製し、使用に備えた。
【0094】
希硝酸溶液の調製:所定の量の濃硝酸を適量の水に溶解して、モル濃度5.0kmol/Lの希硝酸溶液を調製し、使用に備えた。
【0095】
硝化反応:マイクロリアクターを立ち上げ、較正を経て正確に計量できる計量ポンプを用いて、nエチルカルバゾール:n硝酸=1.00:1.50のモル比とし、エチルカルバゾール溶液の添加量は350L/hであり、希硝酸溶液の添加量は262.5L/hである。エチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液及び希硝酸溶液をそれぞれ連続的にマイクロリアクターにポンプ輸送した。マイクロリアクターのギャップの直径は5mmであり、長さは1350mmであり、アウターケーシングは動かず、インナーシリンダーの回転速度は1250回転/分であり、充分な混合と効率的な物質移動・熱伝達を経て、反応温度を65±1℃に、反応時間を6±1分に、そしてモーター周波数などのパラメータを厳密に制御して、2種の原料をマイクロリアクター内で充分に反応させ、反応液が連続的に反応器から受入タンクに入った。反応液を受入タンク内において攪拌して、7℃に冷却し、そして30%水酸化ナトリウム溶液を添加してpHを6.8に調整して、硝化反応が完全に停止した。
【0096】
実施例3-1~実施例3-4で得たパーマネントバイオレットの純度は98%以上であった。
【0097】
(実施例3-5)
実施例3-5は実施例3-1に類似するが、本実施例の硝化工程に違いがあり、当該工程は次のとおりである。
【0098】
エチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液の調製:所定の量のエチルカルバゾールを適量のo-ジクロロベンゼンに溶解して、モル濃度10.0kmol/Lのエチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液を調製し、使用に備えた。
【0099】
希硝酸溶液の調製:所定の量の濃硝酸を適量の水に溶解して、モル濃度5.0kmol/Lの希硝酸溶液を調製し、使用に備えた。
【0100】
硝化反応:マイクロリアクターを立ち上げ、較正を経て正確に計量できる計量ポンプを用いて、nエチルカルバゾール:n硝酸=1.00:0.5のモル比とし、エチルカルバゾール溶液の添加量は350L/hであり、希硝酸溶液の添加量は350L/hであり、エチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液及び希硝酸溶液をそれぞれ連続的にマイクロリアクターにポンプ輸送した。マイクロリアクターのギャップの直径は5mmであり、長さは1350mmであり、アウターケーシングは動かず、インナーシリンダーの回転速度は1350回転/分であり、充分な混合と効率的な物質移動・熱伝達を経て、反応温度を100±1℃に、反応時間を6±1分に、そしてモーター周波数などのパラメータを厳密に制御して、2種の原料をマイクロリアクター内で充分に反応させた。反応液が連続的に反応器から受入タンクに入り、反応液を受入タンク内において攪拌して、7℃に冷却し、そして30%水酸化ナトリウム溶液を添加してpHを6.8に調整して、硝化反応が完全に停止した。
【0101】
(実施例3-6)
実施例3-6は実施例3-1に類似するが、本実施例の硝化工程に違いがあり、当該工程は次のとおりである。
【0102】
エチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液の調製:所定の量のエチルカルバゾールを適量のo-ジクロロベンゼンに溶解して、モル濃度1.0kmol/Lのエチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液を調製し、使用に備えた。
【0103】
希硝酸溶液の調製:所定の量の濃硝酸を適量の水に溶解して、モル濃度6.0kmol/Lの希硝酸溶液を調製し、使用に備えた。
【0104】
硝化反応:マイクロリアクターを立ち上げ、較正を経て正確に計量できる計量ポンプを用いて、nエチルカルバゾール:n硝酸=1.00:3.0のモル比とし、エチルカルバゾール溶液の添加量は350L/hであり、希硝酸溶液の添加量は175L/hであり、エチルカルバゾールのo-ジクロロベンゼン溶液及び希硝酸溶液をそれぞれ連続的にマイクロリアクターにポンプ輸送した。マイクロリアクターのギャップの直径は8mmであり、長さは1100mmであり、アウターケーシングは動かず、インナーシリンダーの回転速度は1050回転/分であり、充分な混合と効率的な物質移動・熱伝達を経て反応温度を30±1℃に、反応時間を10±1分に、そしてモーター周波数などのパラメータを厳密に制御して、2種の原料をマイクロリアクター内で充分に反応させた。反応液が連続的に反応器から受入タンクに入り、反応液を受入タンク内において攪拌して、7℃に冷却し、そして30%水酸化ナトリウム溶液を添加してpHを6.8に調整して、硝化反応が完全に停止した。
【0105】
(実施例3-7)
実施例3-7は実施例3-1に類似するが、硝化反応工程で、アウターケーシングは動かず、インナーシリンダーの回転速度は900回転/分であることで違う。
【0106】
(実施例3-8)
実施例3-8は実施例3-1に類似するが、硝化反応工程で、アウターケーシングは動かず、インナーシリンダーの回転速度は1550回転/分であることで違う。
【0107】
実施例の硝化生成物の分析結果は次の表に示すとおりである。
【表2】
【0108】
実施例のパーマネントバイオレット合成プロセスの検出結果は次の表に示すとおりである。
【表3】
【0109】
(比較例)
比較例の硝化システムは図6に示すとおり、順に接続されたアルキル化釜と、硝化釜と、遠心分離機とを含み、前記アルキル化釜の添加口にクロロベンゼン計量槽が接続され、前記硝化釜の添加口に更に希硝酸計量槽が接続され、前記希硝酸計量槽の添加口に酸調製釜が接続され、前記遠心分離機の固相排出口で3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを得、液相排出口で母液を得て、溶媒回収システムに流した。
【0110】
操作手順は次のとおりである。カルバゾールがアルカリ性条件下でブロモエタンとアルキル化反応して、エチルカルバゾールを生成し、カルバゾールのアルキル化反応が終了した後、静置し、下層のアルカリ溶液相を除去し、上層の有機相を保持した。クロロベンゼンをアルキル化釜に加え、攪拌して、2.70kmol/Lのエチルカルバゾールのクロロベンゼン溶液を調製した。
【0111】
硝化釜を立ち上げて攪拌し、アルキル化釜内のエチル化物とクロロベンゼンの混合物1980Lを硝化釜に入れた。ジャケットを開いて循環水で45℃以下に冷却し、更に内側のコイルを開いて冷水(温度-15℃以下)で、温度を38±1℃に制御してゆっくりと希硝酸(濃度7.38kmol/L)を滴下し、滴下の過程で速度(0.15m/h)、滴下時間(8h)を厳密に制御した。滴下が終了したら38±1℃で2時間保温し、サンプルを得て検出した。検出して合格したものを、20~25℃に冷却して、ゆっくりと水酸化ナトリウム溶液を滴下してpH=7になるまで中和した。10℃以下に冷却して、排出して遠心分離し洗浄して3-ニトロ-N-エチルカルバゾール(ニトロ化物)を得て、ニトロ化物を包装し、サンプルを得て純度、固形分含有量を検出し、使用に備えた。
【0112】
液体クロマトグラフィー検出結果は次のとおりである。目的生成物3-ニトロ-N-エチルカルバゾールの含有量は81.3279%であり、エチルカルバゾールの残留は0.5322%であり、異性体副生成物の含有量は13.1477%であり、ポリニトロ副生成物の含有量は2.8974%であった。
【0113】
比較例のパーマネントバイオレット合成システムは図7に示すとおり、遠心分離機の固相排出口に包装袋が接続され、ニトロ化物を遠心分離して排出し、包装袋に入れ、そして包装袋を脱水釜に投入し、脱水釜の添加口に更にo-ジクロロベンゼン計量槽が接続され、脱水釜の排出口には水素化還元釜、第2脱水釜、縮合反応釜、閉環反応釜及び遠心分離機が順に接続される。
【0114】
o-ジクロロベンゼン計量槽から脱水釜に2500Lのo-ジクロロベンゼンを加え、脱水釜を立ち上げて攪拌した。脱水釜のマンホール蓋及び凝縮器の受入タンクの排気ガス弁を開いて、調製したニトロ化物を脱水釜に投入し、蓋をして密閉した。常圧蒸留システムを立ち上げ、ジャケットの蒸気弁を開いて、加熱して脱水し120℃にした。ゆっくりと受入タンクの真空弁を開いて-0.08~-0.06MPaで減圧蒸留を行って130℃とし、留分に水分がないことを確認したら、真空弁を閉じ、受入タンクの排出弁を開いて、90~100℃に冷却して窒素で水素化還元釜に押し入れて水素化還元を行い、還元が終了したら物質が脱水釜に入り、6500~7500kgのo-ジクロロベンゼンを2回添加して減圧蒸留を行い、生成物を縮合反応釜、閉環反応釜に流して次の工程を行い、最終的に粗パーマネントバイオレットを得た。生成物の合成総合収率は58.60%であり、N-エチル化反応の収率は95.9%であり、還元反応の収率は95.2%であり、縮合と閉環反応の収率は92.3%であった。硝化反応の収率は69.4%と推定した。
【0115】
上述した内容から分かるように、本発明に記載の硝化システム及び合成システムは、熱蓄積を効果的に回避し、硝化反応の固有の安全性を大幅に向上させ、原料の転化率を向上させ、生成物の収率を効果的に向上させることができる。
【0116】
(付記)
(付記1)
順に接続されたエチルカルバゾール溶解釜と、マイクロリアクターと、反応液受入タンクとを含み、前記エチルカルバゾール溶解釜にはエチルカルバゾール添加口とo-ジクロロベンゼン添加口とが設けられ、前記マイクロリアクターに硝酸添加口が設けられ、前記反応液受入タンクの排出口は3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む硝化生成物を送り出すために用いられ、
前記マイクロリアクターはアウターケーシングと、前記アウターケーシングの内部に設けられるインナーシリンダーとを含み、前記インナーシリンダーと前記アウターケーシングとの間にはマイクロリアクションチャネルが設けられ、前記マイクロリアクションチャネルが前記アウターケーシングを貫通して、前記マイクロリアクターの添加口及び排出口が形成され、前記インナーシリンダーと前記アウターケーシングの少なくとも一方に駆動装置が接続されることを特徴とするパーマネントバイオレットの連続合成のための硝化システム。
【0117】
(付記2)
前記マイクロリアクションチャネルの直径は10mm未満であり、好ましくは5~8mmであり、長さは1000~1500mmであり、好ましくは1300~1500mmである、付記1に記載の硝化システム。
【0118】
(付記3)
前記マイクロリアクターの前記アウターケーシングと前記インナーシリンダーの相対回転速度は900~1500回転/分であり、好ましくは1000~1450回転/分である、付記1又は2に記載の硝化システム。
【0119】
(付記4)
前記反応液受入タンクの排出口に水分離槽が接続され、前記水分離槽の排出口に水相排出口及び油相排出口が設けられ、前記油相排出口は3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む硝化生成物を送り出すために用いられる、付記1~3のいずれか一つに記載の硝化システム。
【0120】
(付記5)
付記1~4のいずれか一つに記載の硝化システムと水素化還元システムとを含み、前記水素化還元システムは順に接続された還元脱水釜と、水素化還元釜と、脱水釜と、縮合反応釜と、閉環反応釜とを含むことを特徴とするパーマネントバイオレットの連続合成のための合成システム。
【0121】
(付記6)
付記1~3のいずれか一つに記載の硝化システムを立ち上げ、エチルカルバゾール及びo-ジクロロベンゼンをエチルカルバゾール溶解釜に加え、混合して前記エチルカルバゾールと前記o-ジクロロベンゼンの混合溶液を形成させ、前記混合溶液を前記マイクロリアクターに導入し、前記マイクロリアクターに希硝酸を加え、反応が終了した後、反応液を得て反応液受入タンクに導入し冷却して、3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む硝化生成物を得ることを特徴とするパーマネントバイオレットの連続合成のための硝化方法。
【0122】
(付記7)
前記マイクロリアクターの添加口のエチルカルバゾールと硝酸とのモル比は1.00:(1.01~3.00)であり、好ましくは1.00:(1.01~2.00)である、付記6に記載の硝化方法。
【0123】
(付記8)
前記マイクロリアクターで反応温度は30~100℃であり、好ましくは40~95℃である、付記6又は7に記載の硝化方法。
【0124】
(付記9)
前記反応液受入タンクの前記排出口に水分離槽が接続され、前記水分離槽の排出口に水相排出口及び油相排出口が設けられ、前記油相排出口で3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む硝化生成物を得、
前記反応液受入タンクの前記排出口で得た生成物を前記水分離槽に流して水分離し、水相物質を得て廃水処理システムに入れ、得られた油相物質中には3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む硝化生成物が含まれる、付記6~8のいずれか一つに記載の硝化方法。
【0125】
(付記10)
硝化反応の収率は80~90%であり、硝化反応の主生成物の含有量、即ち硝化生成物における3-ニトロ-エチルカルバゾールの含有量は80~95%であり、好ましくは90~95%である、付記6~9のいずれか一つに記載の硝化方法。
【0126】
(付記11)
付記6~10のいずれか一つに記載の硝化方法を含み、更に、付記5に記載の合成システムを立ち上げ、3-ニトロ-N-エチルカルバゾールを含む物質を還元脱水釜に導入し、減圧蒸留により水分を除去し、物質を得て水素化還元釜に導入して水素化還元を行い、脱水して縮合反応釜に入れ、テトラヒドロキノンと縮合反応し、生成物を閉環反応釜に導入し、ベンゼンスルホニルクロリドを加えて前留分を除去した後、パーマネントバイオレット顔料を得るステップを含むことを特徴とするパーマネントバイオレットの連続合成のための合成方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7