(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】セル不良の非破壊検出方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
H01M10/48 A
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2023552241
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 KR2022018344
(87)【国際公開番号】W WO2023101283
(87)【国際公開日】2023-06-08
【審査請求日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】10-2021-0171212
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヨンドク・キム
(72)【発明者】
【氏名】デソ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョンヒョン・カン
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-085690(JP,A)
【文献】特開2016-109654(JP,A)
【文献】特開2014-143164(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0350637(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
G01R 11/00-11/66
G01R 21/00-22/10
G01R 35/00-35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル不良の非破壊検出方法であって、
(a)負極活物質として炭素系物質を含むセルを準備するステップと、
(b)前記セルを充電するステップと、
(c)前記充電されたセルを負極の端部から内側にXRDスキャンするステップと、を含み、
前記XRDスキャンで負極集電体の信号が出た後の領域での負極のLiC
6 peakが観察されるか否かを確認することである、セル不良の非破壊検出方法。
【請求項2】
前記ステップ(b)のセルの充電は、4V以上で行われる、請求項1に記載のセル不良の非破壊検出方法。
【請求項3】
前記ステップ(c)は、負極の一端部から内側に1回行われるか、一端部から内側におよび他端部から内側に2回行われる、請求項1に記載のセル不良の非破壊検出方法。
【請求項4】
前記LiC
6 peakの観察は、LiC
6 peak強度とLiC
12 peak強度との和に対するLiC
6 peak強度(I
LiC6/(I
LiC6+I
LiC12))で測定されることである、請求項1から3のいずれか一項に記載のセル不良の非破壊検出方法。
【請求項5】
前記XRDスキャンで負極集電体の信号が出た後の領域での負極のLiC
6 peak強度が、負極の端部から内側に行くにつれて減少する場合、不良と判断する、請求項4に記載のセル不良の非破壊検出方法。
【請求項6】
前記XRDスキャンで負極集電体の信号が出た直後、LiC
6 peakが観察される場合、不良と判断する、請求項1に記載のセル不良の非破壊検出方法。
【請求項7】
前記XRDスキャンで負極集電体の信号が出た直後、前記LiC
6 peak強度とLiC
12 peak強度との和に対するLiC
6 peak強度(I
LiC6/(I
LiC6+I
LiC12))が0.3以上の領域が観察される場合、不良と判断する、請求項6に記載のセル不良の非破壊検出方法。
【請求項8】
前記ステップ(b)のセルの充電は、SOC80%以上で行われ、前記負極集電体の信号が出た後の領域での前記LiC
6 peak強度とLiC
12 peak強度との和に対するLiC
6 peak強度(I
LiC6/(I
LiC6+I
LiC12))が0.8以上の領域が観察される場合、不良と判断する、請求項1に記載のセル不良の非破壊検出方法。
【請求項9】
前記セル不良は、オーバーハングセルまたはスライディングセルを意味する、請求項1に記載のセル不良の非破壊検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(等)との相互引用
本出願は、2021年12月2日付け韓国特許出願第10-2021-0171212号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、セル不良の非破壊検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するにつれて、エネルギー源としての二次電池に対して需要が急激に増加しており、それらの二次電池の中でも高いエネルギー密度と作動電位を示し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化されて広く使用されている。
【0004】
また、最近は、電子デバイスのデザイン自体が需要者の製品の選択において非常に重要な要素として作用し、消費者の好みに応じて電子デバイスがますます小型化、薄形化していく傾向である。そのために、電子デバイスの内部空間の不必要な浪費を最少化するために、リチウム二次電池もまた、小型化、薄形化が要求され、リチウム二次電池の形状も電子デバイスの形状に応じて多様に実現される必要がある。最近、フレキシブル(flexible)電池を含めて曲がった形状の電池に対する需要が高まっている。
【0005】
このようなリチウム二次電池は、正極と負極を製造し、これを分離膜とともに積層して電極組立体を形成し、このような電極組立体を二次電池ケースに電解液とともに組み込むことによって製造される。
【0006】
前記二次電池の電極は、製造過程中で電極活物質スラリーのコーティングによって生じるスライディング現像で、位置別のローディングが異なることによって、前記スライディング発生部位で正極と負極との比率(ratio)の逆転が発生するスライディング不良の発生が起きることもある。
【0007】
また、正極と負極の組立時に正極が負極より面積が大きくなり、正極と負極との比率(ratio)の逆転が発生するオーバーハング不良も発生する。
【0008】
このような不良セルの場合、サイクルが進行されるにつれて、当該部位にリチウム析出が加速化し、リチウム析出が激しい場合、発火にまで繋がることもあるので、安全性を向上させるためには現場に出る前にオーバーハングやスライディング不良の問題を有するセルを選別して除去する過程が必要である。
【0009】
しかし、従来は、このような判断のためにセルを分解する必要があったので、工程性・コスト的な面で非常に非効率的であった。
【0010】
したがって、このような問題を解決できる不良セルを検出する技術の開発が切実な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、セルを分解しなくても速やかにオーバーハングやスライディング不良を検出できるセル不良の非破壊検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施例に係るセル不良の非破壊検出方法は、
(a)負極活物質として炭素系物質を含むセルを準備するステップと、
(b)前記セルを充電するステップと、
(c)前記セルを負極の端部から内側にXRDスキャンするステップと、を含み、
前記XRDスキャンで負極集電体の信号が出た後の領域での負極のLiC6 peakが観察されるか否かを確認することを特徴とする。
【0013】
ここで、前記ステップ(b)のセルの充電は、4V以上で行われてもよい。
【0014】
また、前記ステップ(c)は、負極の一端部から内側に1回行われるか、一端部から内側におよび他端部から内側に2回行われてもよい。
【0015】
前記LiC6 peakの観察は、LiC6 peak強度とLiC12 peak強度との和に対するLiC6 peak強度(ILiC6/(ILiC6+ILiC12))で測定されることであってもよい。
【0016】
このとき、前記XRDスキャンで負極集電体の信号が出た後の領域での負極のLiC6 peak強度が、負極の端部から内側に行くにつれて減少する場合、不良と判断することであってもよい。
【0017】
または、前記XRDスキャンで負極集電体の信号が出た直後、LiC6 peakが観察される場合、不良と判断することであってもよい。具体的には、前記XRDスキャンで負極集電体の信号が出た直後、前記LiC6 peak強度とLiC12 peak強度との和に対するLiC6 peak強度(ILiC6/(ILiC6+ILiC12))が0.3以上の領域が観察される場合、不良と判断することであってもよい。
【0018】
または、前記ステップ(b)のセルの充電は、SOC80%以上で行われ、前記負極集電体の信号が出た後の領域での前記LiC6 peak強度とLiC12 peak強度との和に対するLiC6 peak強度(ILiC6/(ILiC6+ILiC12))が0.8以上の領域が観察される場合、不良と判断することであってもよい。
【0019】
前記セル不良ということは、オーバーハングセルまたはスライディングセルを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、比較例1に係るオーバーハングセルを模式的に示した斜視図である。
【
図2】
図2は、スライディングセルを模式的に示した斜視図である。
【
図3】
図3は、実施例1に係る正常セルを模式的に示した斜視図である。
【
図4】
図4は、実験例1に係る充電SOCによるLiC
6ピーク強度グラフである。
【
図5】
図5は、実験例2に係る充電SOCによるLiC
6ピーク強度および黒鉛d-spacingグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書および特許請求の範囲において使用された用語や単語は、通常的かつ辞典的な意味に解釈されてはならず、発明者らはその自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義できるという原則に立って、本発明の技術的な思想に合致する意味と概念で解釈されなければならない。したがって、本明細書に記載された実施例と図面に示された構成は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想を全て代弁するのではないので、本出願時点においてこれらを代替できる多様な均等物と変形例があり得るし、本発明の範囲が以下に記述する実施例に限定されるものではない。
【0022】
本明細書および特許請求の範囲において使用された用語や単語は、通常的または辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者はその自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義できるという原則に立って、本発明の技術的な思想に合致する意味と概念で解釈されなければならない。
【0023】
また、以下、本明細書に記載された実施例と図面に示された構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想を全て代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替できる多様な均等物と変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0024】
本発明は一実施例によると、セル不良の非破壊検出方法であって、
(a)負極活物質として炭素系物質を含むセルを準備するステップと、
(b)前記セルを充電するステップと、
(c)前記セルを負極の端部から内側にXRDスキャンするステップと、を含み、
前記XRDスキャンで負極集電体の信号が出た後の領域での負極のLiC6 peakが観察されるか否かを確認することであるセル不良の非破壊検出方法が提供される。
【0025】
ここで、セル不良は、オーバーハングセルまたはスライディングセルを意味する。
【0026】
前記で説明したように、従来には
図1に示しているように、端部で分離膜103を挟んで対向する正極102が負極101より面積が大きく形成され、正極と負極との比率(ratio)が逆転するオーバーハングセル100、
図2に示しているように、スラリーコーティングによる電極の特性上、負極202の端部がスライディングして当該領域で分離膜203を挟んで対向する正極201に対して、負極202のローディングが低くなるスライディングセル200のようなセル不良を判断するために、セルを分解して組立不良を把握するしかなかった。
【0027】
しかし、このような判断方法は、セルを分解する過程が必須的に必要であるので、工程上、コスト上、非効率的であった。
【0028】
そこで、本出願の発明者らは、セルを分解しなくてもこのようなセル不良を検出する方法を研究し、セルを所定充電しながらin situ XRD分析を用いるとセルを分解せず、オーバーハングやスライディングのようなセルの組立不良を選別できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0029】
具体的に、炭素系物質、特に黒鉛を含む負極を用いる場合、LiC6 peakの観察を通じて不良セルを検出することができる。
【0030】
黒鉛の場合、リチウムが挿入される時に、黒鉛層にリチウムが挿入されていないstage IVの結晶構造から、黒鉛層二個おきにリチウムが挿入されているstage III、黒鉛層一個おきにリチウムが挿入されているstage II、そして、さらに充電が行われると、黒鉛層の全てにリチウムが挿入されているstage Iまで変化する。
【0031】
このとき、黒鉛層一個おきにリチウムが挿入されているstage IIの場合、XRDでLiC12 peakが観察され、すべての黒鉛層にリチウムが挿入されているstage IはXRDでLiC6 peakが観察される。
【0032】
したがって、一般に
図3に示しているように、分離膜303を挟んで形成される負極301の面積が正極302の面積よりさらに広く形成され、よく組み立てられた正常セル300の場合、充電時に負極の端部はほとんど充電されず、したがって、前記負極の端部をXRDで測定すると、充電時に中間部でみられるLiC
6 peakが観察されない。
【0033】
しかし、
図1および
図2に示しているようなオーバーハングセルやスライディングセルは、負極端部の領域で負極と正極との比率(ratio)の逆転が起り、負極のローディングが正極のローディングより低くなり、充電時に負極の端部で非常に過充電の状態となり、そのために負極端部をXRDで測定するとLiC
6 peakが非常に明確に観察される。
【0034】
より具体的に、オーバーハングセルやスライディングセルでは、負極の端部でリチウムが負極に充電される挙動としてのLiC6 peak強度が、負極の中間部でリチウムが負極に充電される挙動としてのLiC6 peak強度より急速に増加するものと観察される。
【0035】
したがって、このような相違に基づいて、本願は非破壊的にセル不良を検出することができ、in situ XRD測定時間の3~5分内で不良を検出することができ、工程上、コスト上、非常に効率的である。
【0036】
ただし、前記観察のためには、前記負極は負極活物質として炭素系物質、特に黒鉛を含まなければならない。
【0037】
また、ある程度充電が行われた状態のセルに基づいて判断可能である。
【0038】
したがって、前記ステップ(b)のセルの充電は、4V以上で行われ、SOC基準にSOC50以上で行われてもよい。
【0039】
前記のように充電されると、中間部分でLiC6 peakが観察できるほど負極で十分なリチウムの挿入が起こるため、セル不良を判断するのに十分である。
【0040】
このように充電されるセルに対して、別途の分解過程なしにin situ XRD測定を行う。
【0041】
このようなXRDスキャンは25℃の常温で行われ、X-rayの出力条件は前記60kv、35mAであり、測定方式はstatic mode(2Theta:7-14度)で行った。スキャン時間は充電過程と同時に4分間隔で固定して行った。
【0042】
このようなXRDスキャンは負極の端部から内側に行われるが、オーバーハングやスライディングなどの不良は負極の端部で起こるためである。より具体的には、前記ステップ(c)は、負極の一端部から内側に1回行われるか、一端部から内側におよび他端部から内側に2回行われてもよい。
【0043】
スライディングやオーバーハングは一側の端部だけで発生するのではないので、両端部をいずれも判断することによって、さらに正確度を高めることができる。
【0044】
そのために、負極の端部から内側にXRDスキャンを行って負極のLiC6 peakが観察されるか否かを確認して行われる。
【0045】
このとき、負極集電体の信号は、XRDで負極集電体に用いられた金属のpeakが観察されるので容易に分かる。
【0046】
前記LiC6 peakの観察は、具体的に、LiC6 peak強度とLiC12 peak強度との和に対するLiC6 peak強度(ILiC6/(ILiC6+ILiC12))で測定されることであってもよい。
【0047】
そして、これに基づいて不良を検出する方法は、一つの例として、具体的に、前記XRDスキャンで負極集電体の信号が出た後の領域での負極のLiC6 peak強度が、負極の端部から内側に行くにつれて減少する場合、不良と判断することであってもよい。
【0048】
つまり、オーバーハングやスライディングセルの場合、負極端部では、過充電によってLiC6 peak強度が強く現れ、むしろ内側に行くにつれてその強度が減少する傾向を示す。これに対し、正常セルでは、負極端部ではリチウムの吸放出が起きないため、LiC6 peakが現れず、内側に行くにつれてリチウムの挿入がよく起こり、LiC6 peak強度が増加する。これに基づいて不良であるか否かを検出することができる。
【0049】
または、前記XRDスキャンで負極集電体の信号が出た直後、LiC6 peakが観察される場合、不良と判断することであってもよく、より具体的には、前記XRDスキャンで負極集電体の信号が出た直後、前記LiC6 peak強度とLiC12 peak強度との和に対するLiC6 peak強度(ILiC6/(ILiC6+ILiC12))が0.3以上、詳細には0.3超過、より詳細には0.3ないし0.9の領域が観察される場合、不良と判断することであってもよい。一方、0に近い値、例えば、0.3未満の値であれば、正常のセルと判断される。
【0050】
再び説明すると、オーバーハングやスライディングセルの場合、負極端部では過充電によってLiC6 peak強度が強く現れるのに対し、正常セルでは、負極端部ではリチウムの吸放出が起きないため、LiC6 peakが現れないので、端部でのLiC6 peakを観察することだけでも十分に不良セルを検出可能である。
【0051】
最も正確に検出するためには、前記ステップ(b)のセルの充電は、SOC80%以上で行われ、前記負極集電体の信号が出た後の領域での前記LiC6 peak強度とLiC12 peak強度との和に対するLiC6 peak強度(ILiC6/(ILiC6+ILiC12))が0.8以上の領域が観察される場合、不良と判断することであってもよい。
【0052】
オーバーハングやスライディングセルの場合、正常的な領域、つまり負極内側の中間部より、むしろ負極端部で過充電が起り、リチウムが析出されるほどのリチウムが集まる現象が起こる。したがって、端部でのLiC6 peak強度が非常に大きい。
【0053】
これに対し、正常セルでは、全体としてリチウムの挿入が均一に起こるので、LiC6 peak強度が大きく現れる特定の部位がない。したがって、XRDスキャンによりLiC6 peak強度(ILiC6/(ILiC6+ILiC12))が0.8以上の領域が観察される場合、これは不良セルとして判断することができる。
【0054】
このように、本発明によると、非常に簡単な方法でセルを分解することなくセル不良を判断することができる。
【0055】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。
【0056】
<比較例1>
負極活物質として人造黒鉛、バインダー(SBRおよびCMCが2:1重量比で混合)、導電材としてカーボンブラックを重量比95:3.5:1.5で混合した混合物と、分散媒として水を用いて、混合物と分散媒との重量比を1:2で混合した活物質層用スラリーを準備した。
【0057】
スロットダイを用いて、厚さが10μmの負極集電体の銅(Cu)薄膜の一面に前記活物質層用スラリーをコートして、130℃真空下で1時間の間乾燥して、活物質層を形成した。このように形成された活物質層をロールプレシング(roll pressing)方式で圧延して、80μm厚さの活物質層を備えた負極を製造した。
【0058】
正極活物質としてLiNi0.4Mn0.3Co0.3O2、導電材としてカーボンブラックおよびバインダーとしてPVDFを、N-メチルピロリドン溶媒中で重量比で92.5:3.5:4の比率で混合して正極活物質層用スラリーを製造し、スロットダイを用いて、厚さが10μmの正極集電体のアルミニウム(Al)薄膜の一面に前記正極活物質層用スラリーをコートし、130℃真空下で1時間の間乾燥して、活物質層を形成した。このように形成された活物質層をロールプレシング(rollpressing)方式で圧延して、80μm厚さの活物質層を備えた正極を製造した。
【0059】
前記のように製造された前記正極と前記負極との間に多孔性ポリエチレンの分離膜を介在して電極組立体を製造し、前記電極組立体をケース内部に位置させた後、ケース内部に電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。
【0060】
このとき、前記正極の両端が負極の端部から外れるように積層し、
図1のように、一端部で正極の面積が負極の面積より大きいオーバーハングセルになるように製造した。
【0061】
前記電解液は、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート(EC/DMC/EMCの混合体積比=3/4/3)からなる有機溶媒に1.15M濃度のリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)を溶解して製造した。
【0062】
<実施例1>
前記リチウム二次電池の製造時に、前記正極の両端が負極の両端の内側に位置するように積層し、
図3のように正常セルになるように製造した。
【0063】
<実験例1>
比較例1で製造されたリチウム二次電池に対して、25℃、定電流/定電圧(CC/CV)の条件、4.35V/38mAまで1Cで充電を行いながら、XRDスキャンを行った。
【0064】
前記XRDスキャンは25℃の常温で行われ、X-rayの出力条件は前記60kv、35mAであり、測定方式はstatic mode(2Theta:7-14度)で行った。スキャン時間は充電過程と同時に4分間隔で固定して行った。
【0065】
充電の状態に応じて、
図1の(1)、(2)、(3)領域でのLiC
6 peak強度とLiC
12 peak強度との和に対するLiC
6 peak強度(I
LiC6/(I
LiC6+I
LiC12))を求めて
図4に示した。
【0066】
前記LiC6 peak強度とLiC12 peak強度との和に対するLiC6 peak強度(ILiC6/(ILiC6+ILiC12))は、LiC6として定義されるpeakの面積とLiC12として定義されるpeakの面積とを計算して、これらの比率(ratio)を計算することによって求めることができる。
【0067】
図4で
図1の(1)でのLiC
6 peak強度を赤色(●)、(2)でのLiC
6 peak強度を黄色(◆)、(3)でのLiC
6 peak強度を青色(▲)で示した。
【0068】
<実験例2>
実施例1で製造されたリチウム二次電池に対して25℃、定電流/定電圧(CC/CV)の条件、4.35V/38mAまで1Cで充電を行いながら、XRDスキャンを行った。
【0069】
前記XRDスキャンは25℃の常温で行われ、X-rayの出力条件は前記60kv、35mAであり、測定方式はstatic mode(2Theta:7-14度)で行った。スキャン時間は充電過程と同時に4分間隔に固定して行った。
【0070】
このとき、充電の状態に応じて、
図3の(4)領域でのLiC
6 peak強度とLiC
12 peak強度との和に対するLiC
6 peak強度(I
LiC6/(I
LiC6+I
LiC12))および黒鉛(001)の層間間隔、つまり、結晶格子値を求めて
図5に示した。
【0071】
実験例1および実験例2を検討すると、オーバーハングセルの場合、
図1の(1)領域、つまり負極の端部で充電が進行されるにつれてLiC
6 peak強度が急激に増加し、SOC80%以上では0.8以上の値を示すことを確認できるのに対し、正常セルの場合、充電が進行されても
図3の(4)領域、つまり負極の端部でLiC
6 peakが観察されないことを確認することができる。
【0072】
したがって、このような実験を通じてセルを分解しなくても正常セルおよび不良セルを検出することができる。
【0073】
本発明の属した分野における通常の知識を有する者であれば、上記の内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用および変形を行うことが可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係るセル不良の非破壊検出方法は、充電が所定の程度行われたセルをXRDで測定し、オーバーハングやスライディングが発生し得る負極の端部でのLiC6 peakを観察する非常に簡単な方法であり、セルを分解しなくても急速にオーバーハングやスライディングのセル不良を検出することができ、工程性およびコスト的な面で効率的である。
【符号の説明】
【0075】
100 オーバーハングセル
101 負極
102 正極
103 分離膜
200 スライディングセル
201 正極
202 負極
203 分離膜
300 正常セル
301 負極
302 正極
303 分離膜