(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】アンモニア燃料燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F23L 15/02 20060101AFI20241015BHJP
F23C 99/00 20060101ALI20241015BHJP
F23J 7/00 20060101ALI20241015BHJP
F23K 5/08 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
F23L15/02
F23C99/00 303
F23C99/00 317
F23K5/08 Z
(21)【出願番号】P 2021146920
(22)【出願日】2021-09-09
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】河本 祐作
(72)【発明者】
【氏名】田口 脩平
(72)【発明者】
【氏名】仲井 和成
(72)【発明者】
【氏名】大倉 莉奈
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-501104(JP,A)
【文献】特表2019-528418(JP,A)
【文献】特開2013-238356(JP,A)
【文献】特開2020-196646(JP,A)
【文献】特開2010-216274(JP,A)
【文献】特開平9-079568(JP,A)
【文献】特開平6-193860(JP,A)
【文献】特開平9-229350(JP,A)
【文献】特開平9-255305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L 15/00-15/04
F23K 5/00-5/22
F23C 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱部に収容された蓄熱材に蓄熱された熱により加熱された燃焼用空気と、燃料供給管から供給されるアンモニア燃料とを一方のバーナー部において混合させて炉内で燃焼させる一方、炉内における燃焼後の燃焼排ガスを他方のバーナー部を通して蓄熱材が収容された蓄熱部に導いて、燃焼排ガスの熱を蓄熱材に蓄熱させるようにし、各バーナー部において前記の燃焼と蓄熱とを交互に行うようにしたアンモニア燃料燃焼装置において、アンモニア燃料をバーナー部に導く前記の燃料供給管に、アンモニア燃料を改質器に導いて、アンモニア燃料の少なくとも一部を水素ガスと窒素ガスに分解させた改質アンモニア燃料をバーナー部に導く第1供給路と、アンモニア燃料を前記の蓄熱部を通して加熱させて、アンモニア燃料の少なくとも一部を水素ガスと窒素ガスに分解させた改質アンモニア燃料をバーナー部に導く第2供給路とを設けたことを特徴とするアンモニア燃料燃焼装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンモニア燃料燃焼装置において、前記の改質器は、アンモニア燃料を水素ガスと窒素ガスとに分解させる触媒を収容させた触媒部を有することを特徴とするアンモニア燃料燃焼装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のアンモニア燃料燃焼装置において、前記の燃料供給管に、アンモニア燃料をそのままバーナー部に導く第3供給路を設けたことを特徴とするアンモニア燃料燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア燃料を燃焼用空気と混合させて燃焼させるアンモニア燃料燃焼装置に関するものである。特に、アンモニア燃料(例えば、アンモニアガス)を燃焼用空気と混合させて燃焼させるにあたり、アンモニア燃料を改質させて燃焼性を高めることが低コストで行えるようにし、改質させた改質アンモニア燃料を燃焼用空気と混合させて安定した燃焼が行えるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料を燃焼用空気と混合させて燃焼させる燃焼装置においては、一般に、燃料として炭化水素系燃料を用いたものが使用されている。
【0003】
しかし、このように燃焼装置において炭化水素系燃料を燃焼用空気と混合させて燃焼させた場合、二酸化炭素などの温室効果ガスが多く発生するという問題があった。
【0004】
また、従来においては、特許文献1に示されるように、蓄熱部に収容された蓄熱材に蓄熱された熱により加熱された燃焼用空気と、燃料供給管から供給される炭化水素系燃料とを一方のバーナー部において混合させて炉内で燃焼させる一方、炉内における燃焼後の燃焼排ガスを他方のバーナー部を通して蓄熱材が収容された蓄熱部に導いて、燃焼排ガスの熱を蓄熱材に蓄熱させるようにし、各バーナー部において前記の燃焼と蓄熱とを交互に行うようにした蓄熱式の燃焼装置が知られている。
【0005】
そして、このような蓄熱式の燃焼装置において、一方のバーナーにおいて、蓄熱部に収容された蓄熱材に蓄熱された熱により加熱させた燃焼用空気を燃料供給管から供給される炭化水素系燃料とバーナー部において混合させて炉内で燃焼させるようにした場合、燃焼温度が高くなって、燃焼排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)の濃度が高くなる等の問題があった。
【0006】
また、近年においては、前記のように二酸化炭素などの温室効果ガスを削減することが要望され、燃料に炭化水素系燃料以外のものを用いることが検討されている。
【0007】
ここで、燃焼装置に使用する燃料として、従来から、特許文献2に示されるように、アンモニア燃料を用いることが知られている。
【0008】
しかし、アンモニア燃料は炭化水素系燃料に比べて燃焼性が悪く、完全燃焼させることが困難であり、低温での燃焼時に失火しやすい一方、アンモニア燃料を十分に燃焼させるように燃焼条件を良くすると、燃焼温度が高くなって、NOxが発生しやすくなるという問題があった。
【0009】
そして、従来においては、燃焼性が悪いアンモニア燃料を十分に燃焼させるために、特許文献3に示されるように、アンモニア燃料の一部を、触媒を用いた加熱分解器により水素ガスと窒素ガスとに加熱分解させ、このように分解された水素ガスと窒素ガスとを残りのアンモニア燃料と混合させた改質アンモニア燃料を、燃焼用空気と混合させて燃焼させるようにしたものが示されている。
【0010】
また、アンモニア燃料は、高温(約871℃)で水素と窒素に分解することも示されている。
【0011】
また、特許文献4においては、アンモニア燃料を水素ガスと窒素ガスとに分解させるアンモニア分解触媒が示されている。
【0012】
ここで、特許文献3に示されるように、アンモニア燃料の一部を、触媒を用いた加熱分解器により水素ガスと窒素ガスとに加熱分解させる場合、加熱分解器においてアンモニア燃料を加熱させるためのランニングコストが高くつくという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許第6483169号公報
【文献】特開2016-130619号公報
【文献】特開平7-331265号公報
【文献】特開2012-5926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、アンモニア燃料を燃焼用空気と混合させて燃焼させるアンモニア燃料燃焼装置における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0015】
すなわち、本発明は、前記のようにアンモニア燃料を燃焼用空気と混合させて燃焼させるにあたり、アンモニア燃料を改質させて燃焼性を高めることが低コストで行えるようにし、改質させた改質アンモニア燃料を燃焼用空気と混合させて安定した燃焼が行えるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るアンモニア燃料燃焼装置においては、前記のような課題を解決するため、蓄熱部に収容された蓄熱材に蓄熱された熱により加熱された燃焼用空気と、燃料供給管から供給されるアンモニア燃料とを一方のバーナー部において混合させて炉内で燃焼させる一方、炉内における燃焼後の燃焼排ガスを他方のバーナー部を通して蓄熱材が収容された蓄熱部に導いて、燃焼排ガスの熱を蓄熱材に蓄熱させるようにし、各バーナー部において前記の燃焼と蓄熱とを交互に行うようにしたアンモニア燃料燃焼装置において、アンモニア燃料をバーナー部に導く前記の燃料供給管に、アンモニア燃料を改質器に導いて、アンモニア燃料の少なくとも一部を水素ガスと窒素ガスに分解させた改質アンモニア燃料をバーナー部に導く第1供給路と、アンモニア燃料を前記の蓄熱部を通して加熱させて、アンモニア燃料の少なくとも一部を水素ガスと窒素ガスに分解させた改質アンモニア燃料をバーナー部に導く第2供給路とを設けた。
【0017】
そして、本発明に係るアンモニア燃料燃焼装置においては、前記のバーナー部において、蓄熱部に収容された蓄熱材の温度が低い状態では、アンモニア燃料を燃料供給管における第1供給路に導き、前記の改質器によってアンモニア燃料の少なくとも一部を水素ガスと窒素ガスに分解させた改質アンモニア燃料を、バーナー部に導いて燃焼させるようにする。このようにすると、燃焼排ガスの熱が蓄熱部に収容された蓄熱材に十分に蓄熱されず、蓄熱材の温度が低い状態であっても、前記の改質器によりアンモニア燃料の少なくとも一部を水素ガスと窒素ガスに分解させた改質アンモニア燃料を、バーナー部に導いて安定して燃焼させることができる。
【0018】
一方、本発明に係るアンモニア燃料燃焼装置においては、前記のバーナー部において、燃焼排ガスの熱が蓄熱部に収容された蓄熱材に十分に蓄熱されて、蓄熱材の温度が高くなった状態では、アンモニア燃料を燃料供給管における第2供給路に導き、アンモニア燃料を蓄熱材の温度が高くなった蓄熱部を通して加熱させて、アンモニア燃料の少なくとも一部を水素ガスと窒素ガスに分解させた改質アンモニア燃料を、バーナー部に導いて燃焼させるようにする。このようにすると、蓄熱部の蓄熱材に蓄熱された燃焼排ガスの熱を有効に利用して、アンモニア燃料の少なくとも一部を水素ガスと窒素ガスに分解させた改質アンモニア燃料を得ることができ、前記のように改質器によって、アンモニア燃料の少なくとも一部を水素ガスと窒素ガスに分解する操作を行う必要がなくなり、改質アンモニア燃料を得るためのコストを削減できる。
【0019】
ここで、本発明に係るアンモニア燃料燃焼装置においては、前記の改質器として、アンモニア燃料を水素ガスと窒素ガスとに分解させる触媒を収容させた触媒部を有するものを用いることができる。
【0020】
また、本発明に係るアンモニア燃料燃焼装置においては、前記の燃料供給管に対して、アンモニア燃料をそのままバーナー部に導く第3供給路を設けることができる。
【0021】
そして、このようにアンモニア燃料をそのままバーナー部に導く第3供給路を設けると、前記のようにアンモニア燃料の少なくとも一部を水素ガスと窒素ガスに分解させた改質アンモニア燃料を、蓄熱部における蓄熱材に蓄熱された熱によって加熱された燃焼用空気とバーナー部で混合させて炉内で燃焼させた結果、火炎の温度が上昇した場合に、前記の第3供給路を通してアンモニア燃料をそのままバーナー部に導いて、前記の燃焼用空気と混合させて炉内で燃焼させるようにすることができる。このようにすると、燃焼性の低いアンモニア燃料が燃焼されるようになって、火炎の温度が上昇するのが防止され、燃焼時におけるNOxの発生が抑制されるようになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明におけるアンモニア燃料燃焼装置においては、前記のように蓄熱部に収容された蓄熱材の温度が低い状態では、アンモニア燃料を燃料供給管における第1供給路に導き、改質器によりアンモニア燃料の少なくとも一部を水素ガスと窒素ガスに分解させた改質アンモニア燃料をバーナー部に導くようにする一方、蓄熱材の温度が高くなった状態では、アンモニア燃料を燃料供給管における第2供給路に導き、アンモニア燃料を蓄熱材の温度が高くなった蓄熱部において加熱させて、アンモニア燃料の少なくとも一部が水素ガスと窒素ガスに分解された改質アンモニア燃料をバーナー部に導くようにしたため、蓄熱材の温度が高くない時でも、改質アンモニア燃料を燃焼用空気と混合させて安定した燃焼が行えるようになり、また蓄熱材の温度が高くなった状態では、改質器を用いずに、低コストでアンモニア燃料を改質させて燃焼性を高めることができるようになる。
【0023】
この結果、本発明におけるアンモニア燃料燃焼装置においては、アンモニア燃料を燃焼用空気と混合させて燃焼させるにあたり、アンモニア燃料を改質させて燃焼性を高めることが低コストで行えるようになると共に、改質させた改質アンモニア燃料を燃焼用空気と混合させて安定した燃焼が行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係るアンモニア燃料燃焼装置において、一方のバーナー部において燃焼を行う一方、他方のバーナー部において燃焼排ガスの熱を蓄熱材に蓄熱させる状態を示した概略説明図である。
【
図2】前記の実施形態に係るアンモニア燃料燃焼装置において、(A)は燃料供給管からアンモニア燃料を第1供給路に導いて、第1供給路に設けた改質器によりアンモニア燃料の少なくとも一部を水素ガスと窒素ガスに分解させた改質アンモニア燃料にしてバーナー部に導き、燃焼用空気と混合させて燃焼させる状態を示した概略説明図、(B)は燃料供給管からアンモニア燃料を第2供給路に導いて、燃焼排ガスの熱が蓄熱材に蓄熱された蓄熱部においてアンモニア燃料の少なくとも一部を水素ガスと窒素ガスに分解させた改質アンモニア燃料にしてバーナー部に導き、燃焼用空気と混合させて燃焼させる状態を示した概略説明図である。
【
図3】前記の実施形態に係るアンモニア燃料燃焼装置において、前記の燃料供給管からアンモニア燃料を導く前記の第1供給路と第2供給路との他に、アンモニア燃料をそのままバーナー部に導く第3供給路を設けた変更例の概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係るアンモニア燃料燃焼装置を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係るアンモニア燃料燃焼装置は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0026】
この実施形態に係るアンモニア燃料燃焼装置においては、
図1に示すように、対になったバーナー部10(10a、10b)を工業炉からなる炉1の内部に向けて対向するように設けている。
【0027】
そして、対になった各バーナー部10(10a、10b)に対しては、それぞれ燃料供給管20(20a、20b)からアンモニア燃料NH3を供給させると共に、それぞれ空気供給管30(30a、30b)を通して燃焼用空気Airを蓄熱材xが収容された蓄熱部40(40a、40b)に導き、燃焼用空気Airを各蓄熱部40(40a、40b)に収容された蓄熱材xに蓄熱された熱により加熱して供給させるようにし、各バーナー部10(10a、10b)において、前記のアンモニア燃料NH3と燃焼用空気Airとを混合させて炉1内において燃焼させるようにしている。
【0028】
また、前記のように炉1内でアンモニア燃料NH3と燃焼用空気Airとを燃焼させた後の燃焼排ガスを、各バーナー部10(10a、10b)を通して蓄熱材xが収容された蓄熱部40(40a、40b)に導き、燃焼排ガスの熱をそれぞれ蓄熱部40(40a、40b)に収容された蓄熱材xに蓄熱させた後、排ガス案内管50(50a、50b)を通して燃焼排ガスを排気させるようにしている。
【0029】
ここで、
図1に示す場合には、一方のバーナー部10aにおいて、排ガス案内管50aに設けた排ガス排気弁51aを閉じる一方、空気供給管30aに設けた空気供給弁31aを開けて燃焼用空気Airを一方の蓄熱部40aに導き、この蓄熱部40aにおける蓄熱材xに蓄熱された熱によって加熱された燃焼用空気Airと、燃料供給管20aから供給されるアンモニア燃料NH
3とを混合させて炉1内で燃焼させる燃焼動作を行うようにしている。一方、他方のバーナー部10bにおいては、空気供給管30bに設けた空気供給弁31bを閉じる一方、排ガス案内管50bに設けた排ガス排気弁51bを開け、炉1内における燃焼後の燃焼排ガスを、他方のバーナー部10bを通して蓄熱材xが収容された他方の蓄熱部40bに導いて、燃焼排ガスの熱を蓄熱部40bにおける蓄熱材xに蓄熱させる蓄熱動作を行った後、排ガス案内管50bを通して排気させるようにしている。なお、
図1において、前記の空気供給弁31a,31b及び排ガス排気弁51a,51bについては、開けた状態を白抜きで、閉じた状態を黒塗りで示した。
【0030】
そして、前記の対になったバーナー部10(10a、10b)において、前記のような燃焼動作と蓄熱動作とを切り換えて交互に行うようにしている。
【0031】
ここで、燃料供給管20(20a、20b)からバーナー部10(10a、10b)に導かれるアンモニア燃料NH3は燃焼性が低く燃焼されにくいため、この実施形態に係るアンモニア燃料燃焼装置においては、各燃料供給管20(20a、20b)に対して、それぞれアンモニア燃料NH3を改質器60に導き、改質器60により、アンモニア燃料NH3の少なくとも一部を水素ガスH2と窒素ガスN2に分解させた改質アンモニア燃料(NH3+H2+N2)をバーナー部10(10a、10b)に導く第1供給路21(21a、21b)と、アンモニア燃料NH3を前記の蓄熱部40(40a、40b)を通して加熱させ、アンモニア燃料NH3の少なくとも一部を水素ガスH2と窒素ガスN2とに分解させた改質アンモニア燃料(NH3+H2+N2)をバーナー部10(10a、10b)に導く第2供給路22(22a、22b)とを設けている。
【0032】
また、前記の改質器60においては、アンモニア燃料NH3を水素ガスH2と窒素ガスN2とに分解させる触媒を収容させた触媒部61と、触媒を活性化させるために触媒部61を加熱させる電気ヒーター等の加熱部62とを設けている。
【0033】
そして、この実施形態に係るアンモニア燃料燃焼装置において、炉1の運転開始時や、長時間の燃焼停止からの再開時のように、各バーナー部10(10a、10b)において、燃焼排ガスの熱が蓄熱部40(40a、40b)に収容された蓄熱材xに十分に蓄熱されず、蓄熱材xの温度が低い状態で、アンモニア燃料NH
3を一方のバーナー部10aにおいて燃焼させるにあたっては、前記の
図1及び
図2(A)に示すように、前記の第1供給路21aに設けた第1供給弁23aを開ける一方、第2供給路22aに設けた第2供給弁24aを閉じて、アンモニア燃料NH
3を燃料供給管20aから第1供給路21aに導き、前記の改質器60によってアンモニア燃料NH
3の少なくとも一部を水素ガスH
2と窒素ガスN
2とに分解させた改質アンモニア燃料(NH
3+H
2+N
2)を、バーナー部10aに導いて炉1内で燃焼させるようにする。
【0034】
このようにすると、燃焼排ガスの熱が蓄熱材xに十分に蓄熱されずに、蓄熱部40aにおける蓄熱材xの温度が低い状態であっても、前記の改質器60によってアンモニア燃料NH3の少なくとも一部が水素ガスH2と窒素ガスN2とに分解された改質アンモニア燃料(NH3+H2+N2)を、バーナー部10aに導いて安定して燃焼できるようになる。
【0035】
一方、この実施形態に係るアンモニア燃料燃焼装置における各バーナー部10(10a、10b)において、燃焼排ガスの熱が各蓄熱部40(40a、40b)に収容された蓄熱材xに蓄熱されて、蓄熱材xの温度が高くなった状態で、アンモニア燃料NH
3を一方のバーナー部10aにおいて燃焼させるにあたっては、
図2(B)に示すように、前記の第1供給路21aに設けた第1供給弁23aを閉じる一方、第2供給路22aに設けた第2供給弁24aを開けて、アンモニア燃料NH
3を燃料供給管20aから第2供給路22aに導き、アンモニア燃料NH
3を蓄熱材xの温度が高くなった蓄熱部40aを通して加熱させて、アンモニア燃料NH
3の少なくとも一部を水素ガスH
2と窒素ガスN
2とに分解させた改質アンモニア燃料(NH
3+H
2+N
2)を、バーナー部10aに導いて炉1内で燃焼させるようにする。
【0036】
このようにすると、前記の蓄熱部40aにおける蓄熱材xに蓄熱された燃焼排ガスの熱を有効に利用して、アンモニア燃料NH3の少なくとも一部を水素ガスH2と窒素ガスN2とに分解させて改質アンモニア燃料(NH3+H2+N2)を得ることができ、前記のように改質器60によってアンモニア燃料NH3の少なくとも一部を水素ガスH2と窒素ガスN2とに分解させる操作を行う必要がなくなり、改質アンモニア燃料(NH3+H2+N2)を得るための電気ヒーター等にかかるランニングコストを削減できるようになる。
【0037】
なお、前記の
図2(A),(B)においても、前記の空気供給弁31a、排ガス排気弁51a、第1供給弁23a及び第2供給弁24aについては、開けた状態を白抜きで、閉じた状態を黒塗りで示した。
【0038】
また、前記の実施形態に係るアンモニア燃料燃焼装置においては、
図1に示すように、各燃料供給管20(20a、20b)に対して、それぞれアンモニア燃料NH
3を改質器60に導き、改質器60により、アンモニア燃料NH
3の少なくとも一部を水素ガスH
2と窒素ガスN
2に分解させた改質アンモニア燃料(NH
3+H
2+N
2)をバーナー部10(10a、10b)に導く第1供給路21(21a、21b)と、アンモニア燃料NH
3をそれぞれの蓄熱部40(40a、40b)を通して加熱させ、アンモニア燃料NH
3の少なくとも一部を水素ガスH
2と窒素ガスN
2とに分解させた改質アンモニア燃料(NH
3+H
2+N
2)をバーナー部10(10a、10b)に導く第2供給路22(22a、22b)とを設けただけであるが、
図3に示す変更例においては、燃料供給管20aからアンモニア燃料NH
3をそのままバーナー部10aに導く第3供給路25aを設けるようにしている。なお、この場合、図示していないが、他方の燃料供給管20bに対しても、アンモニア燃料NH
3をそのまま他方のバーナー部10bに導く第3供給路(図示せず)を設けるようにする。
【0039】
そして、前記のようにアンモニア燃料NH
3の少なくとも一部を水素ガスH
2と窒素ガスN
2とに分解させた改質アンモニア燃料(NH
3+H
2+N
2)を、蓄熱部40aに収容された蓄熱材xによって加熱された燃焼用空気Airとバーナー部10aにおいて混合させて、炉1内において燃焼させた結果、火炎の温度が上昇して、燃焼時におけるNOxの発生量が増加する場合には、
図3に示すように、前記の第1供給路21aに設けた第1供給弁23aと、第2供給路22aに設けた第2供給弁24aとを閉じて、アンモニア燃料NH
3を改質器60や蓄熱部40aに導かないようにし、前記の第3供給路25aを設けた第3供給弁26aを開けて、アンモニア燃料NH
3を燃料供給管20aから第3供給路25aを通してバーナー部10aに導き、前記のように蓄熱部40aに収容された蓄熱材xによって加熱された燃焼用空気Airとバーナー部10aにおいて混合させて、アンモニア燃料NH
3を炉1内で燃焼させるようにする。
【0040】
このように、アンモニア燃料NH3を燃料供給管20aから第3供給路25aを通してバーナー部10aに導き、蓄熱部40aにおいて加熱された燃焼用空気Airと混合させて、炉1内で燃焼させるようにすると、燃焼性の低いアンモニア燃料NH3が燃焼されることにより、火炎の温度が上昇するのが防止され、燃焼時におけるNOxの発生が抑制されるようになる。
【符号の説明】
【0041】
1 :炉
10(10a、10b) :バーナー部
20(20a、20b) :燃料供給管
21(21a、21b) :第1供給路
22(22a、22b) :第2供給路
23a :第1供給弁
24a :第2供給弁
25a :第3供給路
26a :第3供給弁
30(30a、30b) :空気供給管
31a、31b :空気供給弁
40(40a、40b) :蓄熱部
50(50a、50b) :排ガス案内管
51a、51b :排ガス排気弁
60 :改質器
61 :触媒部
62 :加熱部
Air :燃焼用空気
H2 :水素ガス
N2 :窒素ガス
NH3 :アンモニア燃料
NH3+H2+N2 :改質アンモニア燃料
x :蓄熱材