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特許7570792ハイブリッド回転杭の施工方法及び杭施工用治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】ハイブリッド回転杭の施工方法及び杭施工用治具
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/28 20060101AFI20241015BHJP
   E02D 5/56 20060101ALI20241015BHJP
   E02D 5/72 20060101ALI20241015BHJP
   E02D 7/00 20060101ALI20241015BHJP
   E02D 7/22 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
E02D5/28
E02D5/56
E02D5/72
E02D7/00 A
E02D7/22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021173442
(22)【出願日】2021-10-22
(65)【公開番号】P2022069433
(43)【公開日】2022-05-11
【審査請求日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2020177833
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000179915
【氏名又は名称】ジェコス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 満郎
(72)【発明者】
【氏名】藤本 正貴
(72)【発明者】
【氏名】里城 義武
(72)【発明者】
【氏名】池田 篤則
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-272249(JP,A)
【文献】特開2012-214993(JP,A)
【文献】特開2010-138687(JP,A)
【文献】特開2003-253671(JP,A)
【文献】特開2007-205134(JP,A)
【文献】特開2020-070657(JP,A)
【文献】特開2015-200092(JP,A)
【文献】特開昭62-086228(JP,A)
【文献】実開平06-030224(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-2065742(KR,B1)
【文献】特開平05-033342(JP,A)
【文献】特開2016-217121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/28
E02D 5/56
E02D 5/72
E02D 7/00
E02D 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管からなる下部杭本体の外周に羽根を有する下部杭と、形鋼から形成され、前記下部杭の上端部に接合された上部杭とからなるハイブリッド回転杭を、地中に回転させながら圧入するハイブリッド回転杭の施工方法であって、前記上部杭が挿通可能な筒状に形成された治具本体と、当該治具本体の下端部に設けられ、前記下部杭本体の上端外周部に前記下部杭本体の軸方向に沿って柱状に設けられた被係合部の両側部に係合する係合部を有し、前記係合部は前記下部杭本体の軸方向に沿って柱状に垂設され、下端部に前記被係合部の下端側を前記下部杭本体の外周面に沿って前記下部杭本体の周方向に対向して突出するL字状のフックがそれぞれ設けられ、かつ前記被係合部は前記フックの先端部間に設けられた間隙部より前記係合部間に係合可能に設けられてなる杭施工用治具を用い、以下の工程を含むことを特徴とするハイブリッド回転杭の施工方法。
(1)前記下部杭を杭打機のリーダに沿って地盤面上に立設し、当該下部杭の上端部に前記リーダに沿って昇降する減速機を接続する工程。
(2)前記減速機を作動させ、前記減速機によって前記下部杭を回転させながら前記リーダに沿って地中に圧入する工程。
(3)前記下部杭の上端部を地上に一部残して前記減速機を一旦停止し、かつ前記下部杭の上端部から前記減速機を切り離す工程。
(4)前記下部杭の上端部に、予め前記上部杭を仕込んだ前記杭施工用治具を前記リーダに沿って立て付ける工程。
(5)前記下部杭の上端部に前記上部杭の下端部を接合する工程。
(6)前記下部杭上端部の被係合部の両側部に前記杭施工用治具の前記係合部を係合する工程。
(7)前記減速機を作動させて前記杭施工用治具を介して前記下部杭を回転させながら前記上部杭と共に地中に圧入する工程。
(8)前記下部杭と前記上部杭を支持層まで圧入したら、前記杭施工用治具のみを地中より引き抜く工程。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド回転杭の施工方法において、施工中、前記杭施工用治具を前記下部杭および前記上部杭と共に正逆回転させながら上げ下げする工程を含むことを特徴とするハイブリッド回転杭の施工方法。
【請求項3】
鋼管からなる下部杭本体の外周に羽根を有する下部杭と、形鋼から形成され、前記下部杭の上端部に接合された上部杭とからなるハイブリッド回転杭を、地中に回転させながら圧入するに用いられる杭施工用治具であって、前記上部杭が挿入可能な筒状に形成された治具本体と、当該治具本体の下端部に設けられ、前記下部杭本体の上端外周部に前記下部杭本体の軸方向に沿って柱状に設けられた被係合部の両側部に係合する係合部を有し、前記係合部は前記下部杭本体の軸方向に沿って柱状に垂設され、下端部に前記被係合部の下端側を前記下部杭本体の外周面に沿って前記下部杭本体の周方向に対向して突出するL字状のフックがそれぞれ設けられ、かつ前記被係合部は前記フックの先端部間に設けられた間隙部より前記係合部間に係合可能に設けられていることを特徴とする杭施工用治具。
【請求項4】
請求項3記載の杭施工用治具において、前記治具本体は前記下部杭本体の上端部および前記被係合部に外接可能な内径を有し、かつ前記係合部およびL字状のフックは、前記治具本体の内側部に設けられていることを特徴とする杭施工用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド回転杭の施工方法及び当該杭の施工方法に用いられる杭施工用治具に関し、鋼管からなる下部杭本体の外周に羽根を有する下部杭の上端部に、上部杭としてH形鋼などの形鋼を接合したハイブリッド回転杭を地中に回転させながら圧入する際に、下部杭と上部杭との接合部が過大な回転力の悪影響を受けないようにし、また、施工中に生じた杭の傾き等を容易に修正できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
建築・土木の分野では、主体工事に先行して建設機械の作業スペースや、建設資材の仮置き等のスペースを確保する目的で、仮設構台が構築され(図11(a),(b)参照)、その際、仮設構台の構台杭として一般にH形鋼杭が用いられる。
【0003】
また、鋼製の既製杭として、鋼管からなる杭本体の先端支持部の外周に一乃至複数の羽根を備えた回転杭(特許文献1,2)や、先端支持部の外周に羽根を有する下部杭(回転杭)の上端部に上部杭としてH形鋼などの形鋼杭を接合した回転杭(特許文献3)が知られている。
【0004】
この種の回転杭は、羽根が本来の掘進羽根の働きを有するだけでなく、施工後は周辺地盤に対する抵抗羽根としての働きを有することで、本来の支持層より浅い中間層の場合でも、下部杭の羽根によって一定の支持力を確保できることから杭長を短くすることができ、また、削孔に伴う廃土量を抑制できる等のメリットもあり、今後の需要が期待される。
【0005】
ところで、この種の回転杭は、地盤面上に杭打機のリーダに沿って立て付けられ、減速機によって回転させながら地中に押し込むことにより地中に設置されるが、特に後者の回転杭には、下部杭と上部杭との接合部が過大な回転力の悪影響を受けやすいとう課題があった。
【0006】
このような問題を解決する方法として、例えば、特許文献3には、先端にオーガスクリューを有する型鋼杭と、当該型鋼杭を外嵌して地中に回転掘進する外嵌鋼管を備えた型鋼杭の建込み装置の発明が開示されている。
【0007】
簡単に説明すると、型鋼杭は、オ-ガスクリュ-のシャフトと型鋼のウェブが一体をなし、かつ型鋼の先端に前記外嵌鋼管に内接する先端支持板兼回転安定板を固設すると共に、外嵌鋼管に掛合する回転力受を設けた構成を有し、他方、前記外嵌鋼管はその上部において作業車のクレ-ンに吊下したモ-タ-で回動可能とし、その下部において前記回転力受に掛合して外嵌鋼管の回転力をオ-ガスクリュ-に伝導して回転掘進し、然もオ-ガスクリュ-の回転直径を外嵌鋼管の回転直径より大径に構成されている。
【0008】
また、特許文献4には、基礎杭の先端に用いられ、建築物の基礎として機能する掘削部材と、当該掘削部材の上端に接続される管体部との間の接続構造の発明が開示されている。
【0009】
簡単に説明すると、掘削部材は、下端が閉塞した筒状の基体と、当該基体の外周面に、当該基体と共に軸周りに回転して土壌を掘削する回転羽根を備え、また、前記基体の外周面にその径方向外向きに突出する円柱状の突起部を備えている。
【0010】
前記管体部は、筒状の管本体と、当該管本体の下端部に、下向きに突出する当接部を備え、当該当接部は互いに交差してL字形をなす第一延伸部と第二延伸部とから構成され、当該両延伸部が交差して構成される内角に斜め上向きの面法線を有する当接面が形成されている。
【0011】
当該当接面に前記突起部を当接して当接力を作用させることにより、前記掘削部材が前記管体部に押し付けられるため、前記掘削部材と前記管体部の継ぎ目に生じる隙間が無くなり、この隙間から土砂等の流入が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2016-079619号公報
【文献】特開2015-129386号公報
【文献】特開平6-272249号公報
【文献】特開2015-200092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献3の発明は、モーターの回転力は、クラッチ機構によってスクリューオーガーに伝達される構成になっているため、構造的に複雑で高価な杭の建込み装置になることがあった。
【0014】
また、特許文献4の発明は、管本体の下端部に突出するL字形の当接部は、掘削部材の基体の外周面に突出する突起の片方側にしか形成されていないことから、管本体の一方向の回転力しか掘削部材に伝達できないため、掘削部材を正・逆自由に回転できないという課題があった。
【0015】
本発明は、これらの課題を解決するためになされたもので、特に、ハイブリッド回転杭を時計回り反時計回りのいずれの方向にも自由に回転させることができ、しかも引き抜きも可能にすることによりハイブリッド回転杭を所定の深さに、無理なくきわめて効率的に設置できるようにしたハイブリッド回転杭の施工方法及び当該杭の施工方法に用いられる杭施工用治具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、鋼管からなる下部杭本体の外周に羽根を有する下部杭と、形鋼から形成され、前記下部杭の上端部に接合された上部杭とからなるハイブリッド回転杭を、地中に回転させながら圧入するハイブリッド回転杭の施工方法であって、前記上部杭が挿通可能な筒状に形成された治具本体と、当該治具本体の下端部に設けられ、前記下部杭の上端外周部に設けられた被係合部に係合する係合部を有し、かつ前記係合部は前記下部杭本体の外周面に沿って前記被係合部の両側に垂設されてなる杭施工用治具を用い、以下の工程を含むことを特徴とするものである。
(1)前記下部杭を杭打機のリーダに沿って地盤面上に立設し、当該下部杭の上端部に前記リーダに沿って昇降する減速機を接続する工程。
(2)前記減速機を作動させ、前記減速機によって下部杭を回転させながら前記リーダに沿って地中に圧入する工程。
(3)前記下部杭の上端部を地上に一部残して前記減速機を一旦停止し、前記下部杭の上端部から前記減速機を切り離す工程。
(4)前記下部杭の上端部に、予め上部杭を仕込んだ前記杭施工用治具を前記杭打機の前記リーダに沿って立て付け、前記下部杭の上端部に前記上部杭と前記杭施工用治具の下端部をそれぞれ接合する工程。
(5)前記減速機を作動させ、前記杭施工用治具を介して前記下部杭を回転させながら前記上部杭と共に地中に圧入する工程。
(6)前記下部杭と前記上部杭を支持層まで圧入したら、前記杭施工用治具のみを地中より引き抜く工程。
【0017】
特に、杭施工用治具の係合部を前記下部杭本体の外周面に沿って前記被係合部の両側に垂設することで、前記下部杭を時計回り、反時計回りの両方向に自由に回転させることができ、また、前記係合部の下端部に前記被係合部の下端側を前記下部杭本体の外周面に沿って前記下部杭本体の周方向にL字状に突出するフック(水平部)を設けることで、杭施工用治具を介して前記下部杭を引き抜くこともできるため、硬質地盤も容易に掘進することができ、また、掘進中に発生した下部杭本体の傾きも容易に修正することができる。さらに、下部杭を回転することにより、下部杭と上部杭との接合部に過大な回転力が作用するのを回避することができる。
【0018】
また、前記杭施工用治具の治具本体を前記下部杭本体の上端部および前記被係合部に外接可能な(前記下部杭本体の上端部および前記被係合部を内包可能な)内径に形成し、かつ前記係合部を前記治具本体の内側部に設けることで、前記係合部を前記下部杭本体上端部の被係合部に容易に係合することができる。
【0019】
すなわち、治具本体の下端部を下部杭本体の上端部と被係合部に外接させてから、杭施工用治具をその軸回りに回転させると、被係合部と間隙部wが一致する位置で、被係合部は係合部間に自動的に挿入される。
【0020】
なお、被係合部が係合部間に挿入された時点で、治具本体の下端部が下部杭本体の上端部に取り付けられた最上段の羽根の上に載置させることで、杭施工用治具は下部杭本体の上端部に保持することができ、下部杭本体の下方に落下することはない。また、治具本体の下端部を受けるストッパーを下部杭本体の上端部外周面に別途取り付けてあってもよい。
【0021】
また、係合部は治具本体内に収納され、治具本体の周囲および下端部に突出しないため、ハイブリッド回転杭の圧入に際して孔壁の抵抗体になることもないので、ハイブリッド回転杭を地中にきわめて効率的に圧入することができる。また、杭施工用治具の据付けや運搬等の取扱いに際して、係合部の破損を防止することもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、鋼管からなる下部杭と当該下部杭の上端部に接合された、H形鋼などの形鋼からなる上部杭とからなるハイブリッド回転杭を施工する際に、下部杭を回転させて圧入することにより、下部杭と上部杭との接合部に過大な回転力をかけずに地中に圧入することができる。
【0023】
また、杭施工用治具の下端部に設けられた係合部が、下部杭の上端部に設けられた被係合部の両側に下部杭杭本体の外周面に沿って垂設されていることで、前記下部杭を時計回りと反時計回りの両方向に自由に回転させることができ、また、前記係合部の下端部に前記被係合部の下側を前記下部杭本体の外周面に沿って前記下部杭本体の周方向にL字状に突出するフックが設けられているため、下部杭を引き抜くこともできるため、硬質地盤も容易に掘進することができ、また掘進中に発生した杭の傾きも容易に修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態であり、鋼管と形鋼からなるハイブリッド回転杭を地中に回転圧入して設置する際に用いられる杭施工用治具の正面図である。
図2】図(a)はハイブリッド回転杭と杭施工用治具の一部拡大図、図(b)は図(a)におけるイ-イ線断面図である。
図3】ハイブリッド回転杭の下部杭上端部に杭施工用治具の下端部が係合された状態を示す正面図である。
図4】ハイブリッド回転杭の一例を図示したものであり、図(a)は正面図、図(b)は図(a)におけるロ-ロ線拡大断面図である。
図5】杭施工用治具の他の実施形態であり、図(a)はハイブリッド回転杭と杭施工用治具の一部拡大図、図(b)は図(a)におけるハ-ハ線断面図である。
図6】ハイブリッド回転杭の下部杭上端部に杭施工用治具の下端部が係合された状態を示す正面図である。
図7】杭施工用治具の他の実施形態であり、図(a)はハイブリッド回転杭と杭施工用治具の一部拡大図、図(b)は図(a)におけるニ-ニ線断面図である。
図8】ハイブリッド回転杭の下部杭上端部に杭施工用治具の下端部が係合された状態を示す正面図である。
図9】杭施工用治具の他の実施形態であり、図(a)はハイブリッド回転杭と杭施工用治具の一部拡大図、図(b)は図(a)におけるホ-ホ線断面図である。
図10】図(a)~(d)は、杭施工用治具を用いたハイブリッド回転杭の施工手順を示す説明図である。
図11】構台杭にハイブリッド回転杭を用いた仮設構台であり、図(a)は一部斜視図、図(b)は一部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1-9は本発明の一実施形態であり、ハイブリッド回転杭と当該ハイブリッド回転杭を地中に回転させながら圧入する際に、杭打機に据え付けられた減速機の回転力をハイブリッド回転杭に伝達する杭施工用治具を図示したものである。
【0026】
図において、ハイブリッド回転杭1は、下部杭2と当該下部杭2の上端部に接合された上部杭3とから形成され、下部杭2は鋼管からなる下部杭本体4と当該下部杭本体4の外周に取り付けられた一乃至複数の羽根5を有し、下部杭本体4の上端外周面に後述する杭施工用治具6の下端部に形成された係合部7が係合する被係合部8が形成されている。
【0027】
被係合部8は縦長直方体形の鋼製ピースから形成され、当該鋼製ピースは下部杭本体4の上端外周面に下部杭本体4の管軸方向に沿って溶接または取付けボルトによって取り付けられ、また、下部杭本体4の周方向に等間隔(例えば45°または90°間隔)に取り付けられている。
【0028】
また、被係合部8としての鋼製ピースは、上端側部(例えば上半分)が下部杭本体4の上端面より上方に所定長突出して取り付けられ、かつ下部杭本体4の直径方向に互いに対向して取り付けられている。
【0029】
なお、ボルト付けされた鋼製ピースは脱着可能とされ、下部杭2に伝達される回転力の大きさに応じて最適断面径、長さの鋼製ピースが取り付けられている。
【0030】
羽根5は下部杭本体4の先端部に一枚、先端部より上方に一枚乃至複数枚が等間隔に取り付けられている。また、羽根5は下部杭本体4の周方向に一回転連続する円盤状または下部杭本体4の周方向に数回転連続するスパイラル状に取り付けられている。
【0031】
さらに、羽根5は下部杭本体4の外周面に溶接または取付けボルトによって取り付けられ、特にボルト付けされた羽根5は脱着可能とされ、杭先端地層の支持力に応じて外径、数量および/または間隔を変更することにより、本来の支持層より浅い中間層においても所定の支持力が得られるようになっている。
【0032】
上部杭3は、H形鋼、I形鋼または溝形鋼などの形鋼、或いは十字形鋼から形成され、下部杭本体4の上端部に溶接または取付けボルトによって接合されている。
【0033】
また、上部杭3は、支持層の深さに応じて継ぎ足すことにより杭長を任意に延長可能とされ、また、上部杭3にH形鋼などの形鋼や十字形鋼が用いられていることで、下部杭2との接合および上部杭3どうしの接合は、上部杭3のフランジおよび/またはウェブを利用して溶接または接合ボルトによって容易に接合することが可能とされ、さらに、上部杭3を地上に仮設柱として立ち上げ、梁やブレース等の部材もフランジおよび/またはウェブを継手として容易に接合することが可能とされている。
【0034】
杭施工用治具6は、治具本体9と当該治具本体9の下端部に形成された複数の係合部7を有し、治具本体9は下部杭2の下部杭本体4とほぼ同径の外径を有し、かつ上部杭3が挿通可能な内径を有する鋼管から形成されている。
【0035】
係合部7は矩形断面形をなし、かつ縦長L字形状をなす鋼製ピースから形成され、当該鋼製ピースは治具本体9の下端部外周面に溶接または取付けボルトによって取り付けられ、かつ治具本体9の周方向に所定間隔に取り付けられている。
【0036】
また、各係合部7は、下端側部(例えば下半分)が治具本体9の下端面より下方に一定長突出して取り付けられ、また、治具本部9の周方向に隣り合う2個の係合部7,7毎に対をなし、かつ対ごとに片方の鋼製ピースが逆L字形取り付けられている。
【0037】
さらに、下端部のフック(水平部)7a,7aが対向し、かつ対向するフック7a,7a間に被係合部8の横幅よりやや広い間隙部wを有するように取り付けられている。
【0038】
そして、杭施工用治具6が下部杭2の上端部に立て込まれると同時に、下部杭2の被係合部8,8が各対の係合部7,7間にフック7a,7a間の間隙部wより挿入されるようになっている。
【0039】
また、各対の係合部7,7間に被係合部8が挿入された状態で、杭施工用治具6がその軸回りに回転すると同時に、係合部7,7の一方と被係合部8が杭施工用治具6の周方向に係合(当接)することにより、下部杭2が杭施工用治具6と共に時計回りまたは反時計回りに回転するようになっている。
【0040】
さらに、被係合部8が係合部7,7の一方側に位置し、かつ被係合部8の下端部8aが係合部7,7の一方のフック7aと係合(当接)することで、下部杭2は杭施工用治具8と共に引き上げられるようになっている。
【0041】
このような構成により、被係合部8が係合部7,7間に挿入された状態で、杭施工用治具6を時計回り・反時計回りに交互に回転させたり、上げ下げすることにより、下部杭2を杭施工用治具6と共に時計回り・反時計回りに回転させたり、上げ下げするすることができ、これにより下部杭2と上部杭3との接合部に過大な回転力をかけることなく、下部杭2を上部杭3と共にきわめて効率的に所定の深さまで回転圧入することができる。
【0042】
図5,6は、杭施工用治具の他の実施形態を図示したものであり、各対の係合部7,7は下端部のフック(水平部)7a,7aが無く、矩形断面形に形成され、かつ下部杭2の軸方向に沿って連続する単純な柱状に形成されているため容易に製作することができる。
【0043】
また、各対の係合部7,7の下端部の対向面に、下端方向に八の字状に広がる末広がりのテーパ面7b,7bが対向して形成してあれば、係合部7,7の間隙部wが狭くても、下部杭2の被係合部8を係合部7,7間にスムーズに挿入させることができる。
【0044】
図7,8は、同じく、本発明の他の実施形態を図示したものであり、杭施工用治具6の治具本体9が下部杭2の下部杭本体4の上端部および被係合部8に外接可能な内径を有し、かつ係合部7,7が治具本位9の下端部の内周面に形成されている。
【0045】
また、治具本体9の周方向に隣接する各係合部7,7間に、ガイドリブ10が、間隙部Wの区間を除いてそれぞれ取り付けられている。ガイドリブ10は、治具本体9の内周面に沿って弧状をなす鋼製ピースから形成され、当該鋼製ピースは、各係合部7,7のフック7a,7aと同一レベルで取り付けられ、かつ治具本体9の内周面に沿って水平に取り付けられている。
【0046】
図9は、同じく本発明の他の実施形態を図示したもので、杭施工用治具6の治具本体9が下部杭2の下部杭本体4および被係合部8に外接可能な内径を有し、かつ係合部7,7が治具本体9の下端部の内周面に形成されている。また、係合部7にフック7aが無く、係合部7は下部杭本体4の軸方向に柱状に形成されている。
【0047】
また、治具本体9の周方向に隣接する各係合部7,7間に、ガイドリブ10が、間隙部Wの区間を除いてそれぞれ取り付けられている。ガイドリブ10は、各係合部7,7の下端部と同一レベルに取り付けられ、かつ治具本体9の内周面に沿って水平に取り付けられている。
【0048】
図7-図9のいずれの実施形態も、係合部7,7は治具本体9内に取り付けられ、治具本体9の下端部に突出しないため、杭施工用治具6の下端部を下部杭2の上端部に容易に係合することができる。
【0049】
すなわち、治具本体9の下端部を下部杭本体4の上端部と被係合部8に外接させ、治具本体9をその軸回りに回転させることにより、被係合部8と間隙部wの位置が一致する位置で、被係合部8は係合部7,7間に挿入される。
【0050】
なお、治具本体9の下端部が下部杭本体4の上端部および被係合部8に外接する状態では、係合部7のフック(水平部)7aおよびガイドリブ10と被係合部8の上端部が上下に当接することにより、治具本体9が落下することがないため、杭施工用治具6は下部杭本体4の上端部において軸回りに自由に回転させることができる。
【0051】
また、被係合部8が係合部7,7間に挿入された時点で、治具本体9の下端部が下部杭本体4の上端部に取り付けられた羽根5の上に載置されることで、杭施工用治具6がそれ以上落下することはない。なお、治具本体9の下端部を受けるストッパー(図省略)が、下部杭本体4の上端部外周面に別途取り付けてあってもよい。
【0052】
また、係合部7,7は治具本体9内に収納され、治具本体9の下端部に突出しないため、杭施工用治具6の取扱いに際して、係合部7,7の破損を防止することができる。
【0053】
このように形成された杭施工用治具6は、杭打機11の減速機12に接続され、減速機12によって回転しながら減速機12と共にリーダ13に沿って昇降するようになっている(図10参照)。
【0054】
次に、本発明の杭施工用治具6を用いたハイブリッド回転杭の施工方法について説明する(図10(a)~(d)参照)。
(1)最初に、下部杭2を杭打機11のリーダ13に沿わせて地盤面上に鉛直に立て付け、当該下部杭2の上端部に減速機12を接続する。
(2)次に、減速機12を作動させ、当該減速機12によって下部杭2を回転させながらリーダ13に沿わせて地中に圧入する。そして、下部杭2の上端部を地上に一部残して減速機12を一旦停止させ、減速機12を下部杭2の上端部から一旦切り離す。
(3)次に、予め上部杭3を中に挿入して仕込んだ杭施工用治具6を下部杭2の上端部に、リーダ13に沿わせて鉛直に立て付ける。そして、下部杭2の上端部に上部杭3の下端部を接合し、かつ杭施工用治具6の下端部を下部杭2の上端部に係合する。
この場合、下部杭2の上端部に杭施工用治具6を立て込むと同時に、下部杭2の被係合部8が杭施工用治具6の係合部7,7間にフック7a,7a間の間隙部wより挿入されることにより、杭施工用治具6の下端部は下部杭2の上端部に係合される。また、上部杭3の下端部は下部杭2の下部杭本体4の上端部に溶接または接合プレートと接合ボルトによって接合すればよい。
なお、上部杭3を下部杭2の上端部に先行して立て付け、その後杭施工用治具6を上部杭3の上に被せ、下端部を下部杭2の上端部に係合してもよい。
【0055】
(4)次に、再び減速機12を作動させ、杭施工用治具6と共に下部杭2を回転させながら上部杭3と共に地中に圧入する。下部杭2の施工中、硬質地層に突き当たる等して下部杭2をスムーズに圧入できないとき、或は下部杭2が斜めに傾いたとき等には、杭施工用治具6を下部杭2と共に、数回時計回り反時計回りに回転させたり、或は正逆回転させながら上げ下げすることにより、下部杭2をスムーズに圧入することができ、また下部杭2の傾きを容易に修正することができる。
(5)そして、下部杭2と上部杭3を所定の地層に設置できたら、杭施工用治具6のみを下部杭2の上端部から切り離し、地中より引き抜いてハイブリッド回転杭1の施工は完了する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、鋼管からなる下部杭本体の外周に羽根を有する下部杭と、形鋼から形成され、前記下部杭の上端部に接合された上部杭とからなるハイブリッド回転杭を、下部杭と上部杭との接合部に過大な回転力をかけずにきわめて効率的に地中に回転圧入することができ、また施工中に生じたハイブリッド回転杭の傾き等を容易に修正することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 ハイブリッド回転杭
2 下部杭
3 上部杭
4 下部杭本体
5 羽根
6 杭施工用治具
7 係合部
7a フック(水平部)
7b テーパ
8 被係合部
8a 下端部
9 治具本体
10 ガイドリブ
11 杭打機
12 減速機
13 リーダ
w 間隙部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11