(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】エアリンス装置およびエアリンス方法
(51)【国際特許分類】
B08B 9/34 20060101AFI20241015BHJP
B08B 9/32 20060101ALI20241015BHJP
B65B 55/24 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
B08B9/34
B08B9/32
B65B55/24
(21)【出願番号】P 2019147183
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2021-12-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】古川 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】肥後 辰年
【合議体】
【審判長】北村 英隆
【審判官】長馬 望
【審判官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-170852(JP,A)
【文献】特開平6-254526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 9/34
B08B 9/32
B65B 55/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部を有する容器を、搬送しながら洗浄可能なエアリンス装置であって、
前記口部を下側に配置して前記容器を保持可能
かつ揺動可能な容器保持部と、
前記容器保持部に保持された前記容器を搬送可能な容器搬送部と、
前記容器搬送部によって搬送される前記容器の内部に所定の時間にわたって気体を射出可能なノズルと、を備え、
前記所定の時間の少なくとも一部の時間において、
前記容器保持部は、前記容器を保持した状態からいずれかの側に揺動させることによって、前記口部の中心と前記容器の底側の中心とを結ぶ容器の軸心と、前記ノズルの延長線と、がなす角である傾斜角
を制御して、前記容器と前記ノズルとの位置関係を制御し、
前記気体を噴射する前記所定の時間において、前記ノズルの延長線が前記容器の底面と交差する範囲内で前記傾斜角を制御するエアリンス装置。
【請求項2】
前記所定の時間の少なくとも一部の時間において、前記傾斜角が0°である姿勢と、前記傾斜角が0°を超える姿勢と、の間で交互に姿勢変更する請求項1に記載のエアリンス装置。
【請求項3】
口部を有する容器を、前記口部を下側に配置して保持した状態で搬送しながら、当該容器の内部に所定の時間にわたって気体を射出するエアリンス方法であって、
前記所定の時間の少なくとも一部の時間において、
前記容器を保持した状態からいずれかの側に揺動させることによって、前記口部の中心と前記容器の底側の中心とを結ぶ容器の軸心と、前記気体を射出するノズルの延長線と、がなす角である傾斜角
を制御して、前記容器と前記ノズルとの位置関係を制御し、
前記気体を噴射する前記所定の時間において、前記ノズルの延長線が前記容器の底面と交差する範囲内で前記傾斜角を制御するエアリンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルの内部を洗浄するエアリンス装置およびエアリンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器内の異物を除去する方法として、容器内に気体を吹き込み、当該気体により異物を吹き飛ばす方法が従来知られている。
【0003】
たとえば、特開2018-158294号公報(特許文献1)では、反転させた容器の口部に向けたノズル部材を、容器の軸心から幅方向一方向側にずらして配置した異物除去装置が開示されている。当該異物除去装置では、上記のノズル部材の配置により、容器内においてエアーの送り側と戻り側との流れを形成し、これによって容器内の異物を良好に除去できる。
【0004】
また、国際公開第2015/147261号(特許文献2)では、容器の内面に流量の変化するエアーを吹き付けるステップを備える洗浄方法が開示されている。当該洗浄方法では、流量の変換するエアーの吹き付けを行うことにより、容器内面から除去すべき成分を「拭き取る」かの如く除去することができ、これによって容器内面の洗浄効率を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-158294号公報
【文献】国際公開第2015/147261号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1および2のような技術を採用しても、依然として容器内の異物の除去が不十分な場合があった。そこで、より良好に容器内の異物を除去できる装置および方法の実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアリンス装置は、口部を有する容器を、搬送しながら洗浄可能なエアリンス装置であって、前記口部を下側に配置して前記容器を保持可能かつ揺動可能な容器保持部と、前記容器保持部に保持された前記容器を搬送可能な容器搬送部と、前記容器搬送部によって搬送される前記容器の内部に所定の時間にわたって気体を射出可能なノズルと、を備え、前記所定の時間の少なくとも一部の時間において、前記容器保持部は、前記容器を保持した状態からいずれかの側に揺動させることによって、前記口部の中心と前記容器の底側の中心とを結ぶ容器の軸心と、前記ノズルの延長線と、がなす角である傾斜角を制御して、前記容器と前記ノズルとの位置関係を制御し、前記気体を噴射する前記所定の時間において、前記ノズルの延長線が前記容器の底面と交差する範囲内で前記傾斜角を制御することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るエアリンス方法は、口部を有する容器を、前記口部を下側に配置して保持した状態で搬送しながら、当該容器の内部に所定の時間にわたって気体を射出するエアリンス方法であって、前記所定の時間の少なくとも一部の時間において、前記容器を保持した状態からいずれかの側に揺動させることによって、前記口部の中心と前記容器の底側の中心とを結ぶ容器の軸心と、前記気体を射出するノズルの延長線と、がなす角である傾斜角を制御して、前記容器と前記ノズルとの位置関係を制御し、前記気体を噴射する前記所定の時間において、前記ノズルの延長線が前記容器の底面と交差する範囲内で前記傾斜角を制御することを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、傾斜角が0°の場合に比べて良好に容器の内部を洗浄できる。また、容器の内部の全体にわたって、良好に容器の内部を洗浄できる。さらに、これらの構成によれば、傾斜角を制御する手段を容易に実装しやすい。ノズルは気体の供給源と接続されているためにその運動が制限される場合があるため、容器を揺動させることはノズルを揺動させることよりも容易であることが多いためである。
【0010】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0011】
本発明に係るエアリンス装置は、一態様として、前記所定の時間の少なくとも一部の時間において、前記傾斜角が0°である姿勢と、前記傾斜角が0°を超える姿勢と、の間で交互に姿勢変更することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、より良好に容器の内部を洗浄できる。
【0017】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】ボトルを正立姿勢で保持するときの容器保持部およびノズルの概略図
【
図3】ボトルを倒立姿勢で保持するときの容器保持部およびノズルの概略図
【
図4】ボトルを揺動姿勢で保持するときの容器保持部およびノズルの概略図
【
図5】ボトルの揺動角が0°のときの、ボトルとノズルとの位置関係の相違を示す図
【
図6】ボトルの揺動角が5°のときの、ボトルとノズルとの位置関係の相違を示す図
【
図7】ボトルの揺動角が10°のときの、ボトルとノズルとの位置関係の相違を示す図
【
図8】エアリンス装置が設置された充填設備を示す図
【
図9】エアリンス装置が洗浄対象とするボトルの概略図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るエアリンス装置およびエアリンス方法の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係るエアリンス装置を、ペットボトルの内部を洗浄するエアリンス装置1に適用した例について説明する。
【0020】
〔設備全体の概要〕
エアリンス装置1は、ペットボトルB(容器の例。以下、ボトルBと略称する。)に飲料製品を充填する充填設備Pの一部として配置されている(
図8)。充填設備Pは、工程順に、プリフォームからボトルBを成形する成形部M、成形部Mで成形されたボトルBを殺菌する殺菌部S、殺菌部Sで殺菌されたボトルBの内部を洗浄するエアリンス装置1、および、エアリンス装置1により洗浄されたボトルBに飲料製品を充填する充填部Fを備える。充填設備Pは、上記の各部によって、連続的に成形、殺菌、洗浄、および充填の各工程を実施するように構成されている。
【0021】
〔ボトルの概要〕
ボトルBは、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を主材料とする容器である。ボトルBは、熱可塑性樹脂の射出成形により得られるプリフォームの、二軸延伸ブロー成形によって成形される。ボトルBの容量は、280mL、350mL、500mL、1L、2Lなどが例示されるが、特に限定されない。なお、ボトルBに充填する液体は特に限定されず、たとえば、清涼飲料水(ミネラルウォーター、コーヒー、ココア、茶、炭酸飲料水、果汁など)、アルコール飲料、乳飲料などの飲料、スープなどの液体状食品、ソースや醤油などの液体調味料、などでありうる。
【0022】
図9に示すように、ボトルBは、内容物の出し入れ口となる口部Bsと、口部Bsと連続し底面方向に向かうにつれて徐々に拡大する肩部と、肩部と連続する胴部Bwと、ボトルBの底となる底面Bbと、から構成されている(
図9)。ボトルBは、口部Bsの中心と底面Bbの中心(容器の底側の中心の例)とを結ぶ軸心Xについて2回対称の形状を有する。なお、本実施形態における底面Bbは、口部Bsを上側に配置してボトルBを平面上に自立させたときに、当該平面に対向するためボトルBの側方から視認できなくなる範囲(
図9中に矢印で示した範囲)をいう。
【0023】
〔エアリンス装置の構成〕
まず、本実施形態に係るエアリンス装置1の構成について説明する。なお本実施形態では、ボトルBの容量が2Lである例について説明する。本実施形態に係るエアリンス装置1は、ホイール2(容器搬送部の例。)の周縁部に複数の容器保持部3およびノズル4が設けられた構造を有する(
図1)。ホイール2は一定速度で回転運動し、当該回転運動によって、殺菌部Sから受容したボトルBを、充填部Fに受け渡す位置まで搬送する。エアリンス装置1によるボトルB内部の洗浄は、当該搬送の間に行われる。すなわち、エアリンス装置1は、ボトルBを搬送しながら洗浄する装置である。
【0024】
容器保持部3は、ホイール2の径方向外側に延出している第一アーム31と、第一アーム31に回動可能に軸支される第二アーム32と、第二アーム32に支持されるクランプ33と、を有し、クランプ33はボトルBの口部Bsを保持可能である(
図2)。容器保持部3は、ボトルBを、口部Bsを上側に配置した正立姿勢(
図2)、および、口部Bsを下側に配置した倒立姿勢(
図3)で保持可能である。正立姿勢と倒立姿勢とにわたる姿勢変更は、第二アーム32の回動による。また、倒立姿勢において第二アーム32をわずかに回動させることによってボトルBを揺動可能であり、ボトルBの軸心Xと鉛直線とがなす角である揺動角の大きさを、ボトルBがエアリンス装置1の各構成部材に干渉しない範囲内で変更できる(
図4)。
【0025】
ノズル4は、ホイール2の周縁部に、容器保持部3と一体に配置されている。ノズル4は直管状の部材であり、鉛直方向に沿って配置されている。ノズル4は圧縮空気供給部(不図示)に接続されており、ノズル4からは連続的に空気が射出される。容器保持部3とノズル4との位置関係は、ボトルBを倒立姿勢で保持したときに、ノズル4がボトルBの口部Bsに挿入されるように設定されている(
図3)。また、前述のように第二アーム32の回動によってボトルBが揺動可能であるので、ボトルBとノズル4との位置関係は、第二アーム32の回動によって制御される。
【0026】
〔エアリンス装置を用いたエアリンス方法〕
次に、本実施形態に係るエアリンス方法、すなわちエアリンス装置1を用いたエアリンス方法について説明する。エアリンス装置1に到達したボトルBの内部には、上流工程に起因して異物が存在する場合がある。本実施形態に係るエアリンス方法では、かかる異物を取り除くことを目的とする。本実施形態に係るエアリンス方法は、概略として、殺菌部Sから正立姿勢で受容したボトルBを倒立姿勢に姿勢変更する段階、倒立姿勢のボトルBの内部に空気(気体の例)を射出し、当該空気がボトルBの内部に形成する乱流によって、ボトルBの内壁に付着した異物を当該内壁から離脱させるとともに、当該異物をボトルBの外部に排出する段階、および、倒立姿勢のボトルBを正立姿勢に姿勢変更して充填部Fに受け渡す段階、を含む。以上の各段階は、ホイール2の回転運動によってボトルBを搬送しながら行われる。
【0027】
容器保持部3は、エアリンス装置1が殺菌部Sから受容したボトルBを、正立姿勢(
図2)で保持する。続いて容器保持部3は、ボトルBを倒立姿勢(
図3)に姿勢変更させる。このとき、ノズル4がボトルBの口部Bsに挿入される。
【0028】
ボトルBの姿勢変更が完了すると、連続的に空気を射出するノズル4がボトルBの口部Bsに挿入されるので、ボトルBの内部に空気が連続的に射出される。このとき、ノズル4から射出される空気の流量は、公知のエアリンス装置と同等である。ボトルBの内部への空気の射出は、エアリンス装置1が、殺菌部Sから受容したボトルBを倒立姿に姿勢変更させた直後から、充填部Fに受け渡すためにボトルBを正立姿勢に姿勢変更させる直前までの時間(所定の時間の例)にわたって行われることになる。
【0029】
ノズル4から空気が射出される間、ボトルBは、ボトルBの軸心Xが鉛直方向に沿う倒立姿勢(
図3、
図5)と、軸心Xが鉛直方向から5°傾いた揺動姿勢(
図4、
図6)と、の間で交互に姿勢変更する。この姿勢変更は、第二アーム32の回動による。なお、前述の通りノズル4は鉛直方向に沿って配置された直管状の部材であるので、ボトルBが倒立姿勢のとき、ノズル4の延長線41と軸心Xとがなす角である傾斜角θは0°である。同様に、ボトルBが揺動姿勢のとき、傾斜角θは5°である。すなわち、倒立姿勢は傾斜角θが0°である姿勢であり、揺動姿勢は傾斜角θが0°を超える姿勢である。このような揺動運動によって、ノズル4から空気が射出される所定の時間のうち一部の時間(ボトルBが揺動姿勢を取る時間)において、傾斜角θが0°を超える。なお、上記より明らかなように、揺動姿勢においてボトルBを揺動させる角度である揺動角と、揺動姿勢における傾斜角θとは一致する。すなわち、傾斜角θの制御は、第二アーム32の回動により揺動角を制御することによって行われる。
【0030】
より詳細には、揺動姿勢(
図4)において、ノズル4の延長線41は、ボトルBの底面Bbと交差する(
図6)。これによって、ノズル4から射出された空気の大部分は、ボトルBの内部において、まず底面Bbに当たり、その後胴部Bwに当たる流れを形成する。このような流れが形成されることによって、ボトルBの内部の全体にわたって異物を除去しやすい。
【0031】
ボトルBがエアリンス装置1の終点に接近すると、空気の射出が停止する。そして、容器保持部3は、ボトルBを倒立姿勢(
図3)から正立姿勢(
図2)に姿勢変更させる。その後、ボトルBは充填部Fに受け渡される。
【実施例】
【0032】
以下では、ボトルとノズルとの位置関係と、ボトル内部からの異物を除去する効率との関係について、実施例を示して説明する。
【0033】
〔試験装置および運転方法〕
ボトルを倒立姿勢で保持可能な容器保持部と、当該容器保持部に保持されたボトルの内部に挿入可能なノズルを備える試験装置を用いた。当試験装置の容器保持部は、エアリンス装置1の容器保持部3における第二アーム32およびクランプ33と同等の構造および機能を有し、倒立姿勢で保持したボトルを揺動可能である。また、当試験装置のノズルは圧縮空気供給部に接続されており、エアリンス装置1のノズル4と同様の構造および機能を有する。
【0034】
〔評価方法〕
空のボトル(容量2L)に、平均粒径0.5mmの樹脂粉を100個投入した。これを試験装置の容器保持部に保持させ、試験装置のノズルから空気を射出して、エアリンスを行った。エアリンス後のボトルに純水を投入してボトル内部を洗浄し、洗浄後の洗浄水をフィルタでろ過した。その後、フィルタに補足された樹脂粉の数を目視により計数した。
【0035】
〔実施例1〕
エアリンスを開始した直後から0.5秒ごとに、揺動角0°の倒立姿勢と、揺動角5°の揺動姿勢との間で交互にボトルを姿勢変更した。揺動姿勢を15回取った後は、ボトルを倒立姿勢に維持した。洗浄後にフィルタに補足された樹脂粉は7個だった。すなわち、樹脂粉の除去率は93%だった。
【0036】
〔実施例2〕
エアリンスを開始した直後から0.5秒ごとに、揺動角0°の倒立姿勢と、揺動角5°の揺動姿勢との間で交互にボトルを姿勢変更した。揺動姿勢を2回取った後は、ボトルを倒立姿勢に維持した。洗浄後にフィルタに補足された樹脂粉は16個だった。すなわち、樹脂粉の除去率は84%だった。
【0037】
〔実施例3〕
エアリンスを開始した直後から2.5秒ごとに、揺動角0°の倒立姿勢と、揺動角5°の揺動姿勢との間で交互にボトルを姿勢変更した。揺動姿勢を2回取った後は、ボトルを倒立姿勢に維持した。洗浄後にフィルタに補足された樹脂粉は9個だった。すなわち、樹脂粉の除去率は91%だった。
〔実施例4〕
エアリンスを開始した直後から2.5秒ごとに、揺動角0°の倒立姿勢と、揺動角10°の揺動姿勢との間で交互にボトルを姿勢変更した。揺動姿勢を2回取った後は、ボトルを倒立姿勢に維持した。洗浄後にフィルタに補足された樹脂粉は18個だった。すなわち、樹脂粉の除去率は82%だった。
【0038】
〔比較例〕
ボトルを倒立姿勢で保持したまま、揺動を行わず、エアリンスを行った。洗浄後にフィルタに補足された樹脂粉は30個だった。すなわち、樹脂粉の除去率は70%だった。
【0039】
〔結果〕
実施例1~4および比較例の各試験条件および樹脂粉の除去率を表1に示した。実施例1~4のいずれの場合においても、揺動を行わなかった比較例に比べて、高い除去率が見られた。すなわち、揺動を行った実施例1~4では、揺動を行わなかった比較例に比べて、ボトル内部を良好に洗浄できたといえる。
【0040】
また、実施例1と実施例2との比較より、各回の揺動姿勢が維持される時間の長さが同一の場合、揺動回数が多いほうがボトル内部を良好に洗浄できたといえる。加えて、実施例2と実施例3との比較より、揺動回数が同一の場合、各回の揺動姿勢が維持される時間が長いほうがボトル内部を良好に洗浄できたといえる。これらの結果より、揺動姿勢を取る総時間が長いほうが、洗浄に有利だと考えられる。
【0041】
さらに、実施例3と実施例4との比較により、揺動回数および各回の揺動姿勢が維持される時間の長さが同一の場合、揺動角が5°の場合のほうが、揺動角が10°の場合よりもボトル内部を良好に洗浄できたといえる。
図5~7に示すように、揺動角が5°の場合は、ノズルの延長線41がボトルBの底面Bbと交差するが、揺動角が10°の場合は、延長線41がボトルBの胴部Bwと交差する(
図6、
図7)。そのため、揺動角が5°の場合は空気の流れがボトルBの内部の全体に行きわたりやすいのに対し、揺動角が10°の場合は、底面Bb付近に十分に空気の流れが行きわたりにくいと考えられる。このようなボトルBの内部における空気の流れの挙動の違いが、実施例3と実施例4との洗浄結果の違いに現れたと考えられる。
【0042】
【0043】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係るエアリンス装置およびエアリンス方法のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0044】
上記の実施形態では、ボトルBの軸心Xとノズル4の延長線41とがなす傾斜角θを、第二アーム32の回動によって、ボトルBを保持する揺動角を制御することによって変更するように構成された例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、容器の軸心とノズルの延長線とがなす角である傾斜角を変更する手段は特に限定されない。たとえば、上記の例ではボトルBを動かして傾斜角を変更したが、ノズルを動かして傾斜角を変更するように構成してもよい。なお、これらの傾斜角を変更する手段に係る駆動機構としては、容器保持部またはノズルを揺動させるように案内する部材(レールなど)を設ける方法、アクチュエータにより容器保持部またはノズルを駆動させる方法、など、公知の機構を利用できる。
【0045】
上記の実施形態では、傾斜角θが5°である構成および10°である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されず、本発明に係る傾斜角は、0°を超える限りにおいて特に限定されない。ただし、傾斜角θが5°である上記の例のように、ノズルの延長線が容器の底面と交差する範囲内で傾斜角が選択されることが好ましい。そのような条件を満たす傾斜角の範囲は、内容量、形状、および寸法などの容器に係る諸条件、および、ノズルの形状、寸法、容器に対する差込み位置などのノズルに係る諸条件に応じて、適宜設定される。
【0046】
上記の実施形態では、
図4に示したようにボトルBがホイール2の径方向外側に傾斜する構成を例として説明した。しかし、本発明において容器が傾斜する方向は特に限定されず、たとえば、容器保持部の側に傾斜してもよいし、容器が搬送される方向に沿って傾斜してもよい。なお、容器がいずれの方向に傾斜する場合であっても、本発明における傾斜角は、容器の軸心とノズルの延長線とがなす角の大きさを表す正の値として定義される。
【0047】
上記の実施形態では、ノズル4が鉛直方向に沿って配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係るノズルの向きは、口部を下側に配置して保持された容器の内部に気体を射出可能な範囲である限り、特に限定されない。
【0048】
上記の実施形態では、本発明に係る容器搬送部がホイール2として備えられている例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係る容器搬送部は、公知の搬送手段であってよい。
【0049】
上記の実施形態では、容器保持部3が、ボトルBの口部Bsを保持可能なクランプ33を有する構成を例として説明した。しかし、本発明に係る容器保持部が容器を保持する位置は、口部に限定されない。たとえば、本発明に係る容器保持部は、容器の胴部を保持可能であってもよいし、容器の底面を保持可能であってもよい。
【0050】
上記の実施形態では、容器が倒立姿勢と揺動姿勢との間で交互に姿勢変更される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明は、ノズルから気体が射出される所定の時間の間に、傾斜角が0°を超える姿勢を一度だけ取るように構成されてもよいし、傾斜角が0°を超える姿勢のみを取るように構成されてもよい。また、本発明において揺動姿勢を複数回取る場合、各回の揺動方向は同一であってもよいし、異なっていてもよい。たとえば、容器を振り子状に揺動させてもよい。なお、容器を複数の方向に揺動させる場合、その各回の傾斜角は、それぞれの回の揺動方向に関わらず、それぞれの回において容器の軸心とノズルの延長線とがなす角の大きさを表す正の値として定義される。
【0051】
上記の実施形態では、ノズル4から射出される気体が空気である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明においてノズルから射出される気体は、容器に充填される製品の品質に好ましくない影響を与える気体でない限り特に制限されず、たとえば窒素、二酸化炭素などであってよい。また、本発明においてノズルから射出される気体は、加熱されていてもよい。
【0052】
上記の実施形態では、ノズル4から空気が連続的に射出される構成を例として説明した。しかし、本発明において、ノズルから射出される気体は断続的に射出されてもよい。したがって、ノズルが容器の内部に向けられている時間のみノズルから空気が射出されるように構成されてもよいし、ノズルが容器の内部に向けられている時間の一部のみにおいてノズルから空気が射出されるように構成されてもよい。
【0053】
上記の実施形態では、ボトルBが2回対称の形状を有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係るエアリンス装置が洗浄対象とするボトルは、回転対称性を有さなくてもよいし、3回対称以上の対称性を有してもよい。
【0054】
上記の実施形態では、口部Bs、胴部Bw、および底面Bbを有するボトルBを洗浄対象とする例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係るエアリンス装置は、口部を有する容器である限り任意の容器の洗浄に使用しうる。したがって、本発明に係るエアリンス装置が洗浄対象とする容器は、たとえば底面が平坦でなくてもよい。本発明に係るエアリンス装置が洗浄対象とする容器としては、上記に例示したペットボトルの他に、缶、瓶、袋、パウチ袋体、プラスチック容器、金属容器、紙パックなどが例示される。
【0055】
上記の実施形態では、ボトルBの底面Bbが、口部Bsを上側に配置してボトルBを平面上に自立させたときに、当該平面に対向するためボトルBの側方から視認できなくなる範囲であると定義される例を説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係る容器の底面は、容器の底側の一定の範囲を有する領域でありうる。したがって、本発明に係る容器の底面は、たとえば、容器の底側の領域であって、容器の胴部と曲率が非連続である範囲でありうる。この例において、容器は必ずしも自立可能でなくてもよい。
【0056】
上記の実施形態では、エアリンス装置1の他に、成形部M、殺菌部S、および充填部Fを備える充填設備Pにおいて、エアリンス装置1を使用する例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係るエアリンス装置は、相互に容器を授受可能な装置である限り任意の装置前後で使用されてよい。したがって本発明に係るエアリンス装置は、上記に例示した他の任意の工程を有する設備において使用されうる。
【0057】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、たとえばペットボトルに飲料製品を充填する充填設備において、飲料を充填する前のペットボトルの内部を洗浄する用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 :エアリンス装置
2 :ホイール
3 :容器保持部
31 :第一アーム
32 :第二アーム
33 :クランプ
4 :ノズル
41 :ノズル4の延長線
B :ペットボトル(ボトル)
Bs :口部
Bw :胴部
Bb :底面
X :軸心
θ :傾斜角
P :充填設備
M :成形部
S :殺菌部
F :充填部