(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】エチレンポリマーと、モノパーオキシカーボネートと、t-アルキルヒドロパーオキシドとを含む硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 31/04 20060101AFI20241015BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20241015BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20241015BHJP
C08K 5/3415 20060101ALI20241015BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20241015BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
C08L31/04 S
C08K5/103
C08K5/14
C08K5/3415
C08K5/3492
C08L23/00
(21)【出願番号】P 2019513374
(86)(22)【出願日】2017-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2017072659
(87)【国際公開番号】W WO2018046700
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-09-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リュー,シャオ
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】近野 光知
【審判官】松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-140588(JP,A)
【文献】特開2013-170193(JP,A)
【文献】国際公開第2016/151385(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00~101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも一種のエチレンポリマー、
(b)100重量部の成分(a)に対して2重量部未満の少なくとも一種のモノパーオキシカーボネート、
(c)100重量部の成分(b)に対して0.4
重量部以上4重量部未満の少なくとも一種のt-アルキルヒドロパーオキシド
を含む硬化性組成物。
【請求項2】
エチレンポリマーがエチレン/酢酸ビニル共重合体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
エチレンポリマーがポリオレフィンエラストマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
モノパーオキシカーボネートがOO-t-アルキル-O-アルキルモノパーオキシカーボネートである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
OO-t-アルキル-O-アルキルモノパーオキシカーボネートがOO-t-ブチルO-2-エチルヘキシルモノパーオキシカーボネート(TBEC)、OO-t-ブチルO-2-イソプロピルモノパーオキシカーボネート(TBIC)、OO-t-アミル-O-2-エチルヘキシルモノパーオキシカーボネート(TAEC)、OO-t-アミル-O-2-イソプロピルモノパーオキシカーボネート(TAIC)およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
モノパーオキシカーボネートが100重量部の成分(a)に対して0.1
重量部以上2重量部未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
t-アルキルヒドロパーオキシドがt-ブチルヒドロパーオキシド(TBHP)、t-アミルヒドロパーオキシド(TAHP)、t-ヘキシルヒドロパーオキシド(THHP)、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパーオキシド(TOHP)、パラメタンヒドロパーオキシド(PMHP)、2,5-ジメチル-2,5-ジ-ヒドロパーオキシド(2,5-2,5)およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
100重量部の(b)成分に対して0.5~3.5重量部の成分(c)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、N、N’-m-フェニレンジマレイミド、トリアリルトリメリテート、トリメチロールプロパーントリアクリレートおよびトリメチロールプロパーントリメタアクリレートからなる群から選択される、一種の
助剤を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
(a)少なくとも一種のエチレンポリマーと(b)100重量部の成分(a)に対して2重量部未満の少なくとも一種のモノパーオキシカーボネートとを含む硬化性組成物のスコーチを防止するためのt-アルキルヒドロパーオキシドの使用であって、t-アルキルヒドロパーオキシドが100重量部の(b)に対して0.4
重量部以上4重量部未満を表す、使用。
【請求項11】
(a)少なくとも一種のエチレンポリマーと(b)100重量部の成分(a)に対して2重量部未満の少なくとも一種のモノパーオキシカーボネートとを含む硬化性組成物のスコーチを防止する方法であって、上記組成物に100重量部の(b)に対して0.4
重量部以上4重量部未満の少なくとも一種のt-アルキルヒドロパーオキシドを添加する工程を含む、方法。
【請求項12】
エチレンポリマーを含むスコーチから保護される材料の製造方法であって、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を硬化させる工程(a)を含む、方法。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物の成形、押出、及び射出からなる群から選択される工程(a')を前工程および/または同時に有する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程(a')を80~150℃の温度で行う請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン/酢酸ビニル共重合体のようなエチレンポリマーを含む硬化性組成物に関するものである。本発明はさらに、そうしたエチレンポリマーを含む硬化性組成物のスコーチイング(焼け、scorchin g)を防止する方法にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン/酢酸ビニル(EVA)は広く使用されている共重合で、特にソーラーパーネルで太陽電池(特にその内部に収容された半導体)を室外環境要素、特に水分とUV照射から保護するための封入材料および電気絶縁材料として広く使用されている。EVAは優れた透明性を有し、太陽光発電(PV)モジュールの基材への接着性に優れ、高い抵抗性と優れた湿気バリア効果を有している。これらの特性は合わせガラスの製造でも使用することができる。
【0003】
EVAコポリマーの熱安定性、特にクリープ強度、基材への密着性および耐候劣化性を向上させるために、EVAコポリマーは一般に架橋(crosslink)される。そのためにEVAの製造時に種々の架橋剤が使用されている。この架橋剤は一般に過酸化物で、例えばジクミルパーオキサイド(DCP)、パーオキシエステル、パーオキシケタール、パーオキシカーボネートおよびこれらの混合物である。この目的のために使用されるモノパーオキシカーボネートの例はOO-t-ブチル-O-2-エチルヘキシル-モノパーオキシカーボネート(TBEC)である。この過酸化物はDCPより架橋温度が低く、得られた生成物が黄変しないということが証明されており、太陽電池モジュールの製造で使用されている([非特許文献1](K. Thaworn et al, Open Journal of Polymer Chemistry, 2012, 2, 77-85)参照))。
【0004】
本出願人は、TBECにOO-t-アミル-O-2-エチルヘキシルモノパーオキシカーボネート(TAEC)を加えることで反応時間を短縮でき、EVAの架橋密度を向上でき、それによって架橋したEVAから作られた製品の引張強度および高弾性率が増加するということを示した([特許文献1](国際公開第WO2010/007315号パーンフレット))。
【0005】
PVモジュールの積層プロセスでは、EVA組成物を最初にフロントシート上に塗布し、太陽電池を載せ、その上に再び塗布し、次いでバックシートを取り付けてPVモジュールとし、それを所定の高温度で加圧下に所定時間加熱してEVA組成物を硬化させる。
【0006】
EVA組成物は、上記の積層体を形成する前に、EVA組成物を加工する押出機のバレル中またはヘッドダイ中で早期架橋(早過ぎる架橋、premature crosslinking)し易いということが分かっている。この現象は「焼け」と呼ばれ、形成されたEVAシートを不均一にし、PVモジュールの外観および特性を損なう。また、押出機中の圧力が上昇して押出プロセスを中断する必要がある場合もある。これはEVAが相対的に低いメルトフローインデックスを有し、および/または、比較的狭い分子量分布を有する場合に特に観察される([特許文献2](米国特許第US-4015058号明細書))。しかし、その一方では、商業的に実行可能な処理速度を達成するためには、成形されたEVAシートを過酸化物の熱分解温度以上に加熱し、可能な限り迅速に架橋処理してプロセスの経済性を上げ、副反応を最小限に抑える必要もある。
【0007】
この早期架橋の現象はEVAの代わりにポリオレフィンエラストマー(POE)を用いた場合にも同じように観察されている。
【0008】
EVA組成物のスコーチイング(焼け、scorching)を防止するための解決策はこれまでにも種々提案されている。例えば、EVA組成物に重合禁止剤を追加することが提案されているが、望ましくない黄変が起こる。[特許文献2](米国特許第US-4015058号明細書)ではジクミルパーオキシド(DCP)に少なくとも1重量%のクメンヒドロパーオキシドおよび/またはtert-ブチルヒドロパーオキシドを加えることを提案している。しかし、PVモジュールの製造では、DCPが存在するためこの系で得られる架橋速度は工業的用途には十分な速さにならない。また、DCPの芳香族構造に起因する黄変の問題も残っている。
【0009】
[特許文献3](特開2011-140588号公報)にはPVモジュールの製造に適していると記載された別の解決策が提供されている。この特許では100重量部のモノパーオキシカーボネート、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタールおよびパーオキシエステルから選択される有機過酸化物に対して4~50重量部のヒドロパーオキシド、例えばt-ブチルヒドロパーオキシドを加える。この解決策でDCPの使用に伴う欠点を克服することができるが、上記の量のヒドロパーオキシドはEVAの架橋密度にマイナスの影響を及ぼすことが[特許文献3](特開2011-140588号公報)から分かる。この点に関してこの特許文献ではモノパーオキシカーボネートに対するヒドロパーオキシドの比率を一定すなわち約20%に維持したままモノパーオキシカーボネートおよびパーオキシドの合計量を増加させることを提案している(表1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第WO2010/007315号パーンフレット
【文献】米国特許第US-4015058号明細書
【文献】特開2011-140588号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】K. Thaworn et al, Open Journal of Polymer Chemistry, 2012, 2, 77-85
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
驚くべきことに、本発明者はモノパーオキシカーボネートに対するヒドロパーオキシドの重量比を特定の範囲すなわち0.4~4重量%以下にすることによってEVAまたはPOEの架橋密度を向上させることができるということを見出した。さらに、[特許文献3](特開2011-140588号公報)の記載から期待されることとは逆に、架橋剤の量を少なくしても、架橋反応の速度を損なわずに、上記の低重量比でヒドロパーオキシドのスコーチ防止効果が顕著に増加するということを見出した。しかも、十分なフィルム(製膜)の均一性が得られ、実質的に気泡を含まないことも観察した。この点に関しては、100℃以上の押出温度ではフィルム中の封入水が蒸発して気泡が生じ、表面欠陥となり、形成されたフィルムの抵抗率に悪影響を与えるということに留意する必要がある。この現象はフィルムをPVモジュールの封止材として使用する場合には特に有害である。
【0013】
従って、本発明ではEVAのようなエチレンポリマーと上記過酸化物とを含む組成物を押出機でスコーチング無しに高速な吐出速度で加工することができる。
【0014】
さらに、モノパーオキシカーボネートは他のエチレンポリマー、例えばポリオレフィンエラストマー、例えばエチレン-プロピレン-ジエン(EPDM)エラストマーを含むポリジエンエラストマーおよび低密度および高密度ポリエチレンを含むポリエチレンの架橋にも有用であるという点に留意すべきである。これらの材料はワイヤーおよびケーブルの絶縁、パーイプおよびホース(例えば、自動車のラジエータ、飲料水および床暖房用パーイプを含む)、ローラーカバー、回転成形品および発泡製品の製造で使用されている。従って、本発明組成物は電気導体上に絶縁被覆として組成物を押出す用途においてスコーチングを防止するために有用である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
具体的には、本発明は下記(a)~(c)を含む硬化性組成物に関するものである:
(a)少なくとも一種のエチレンポリマー、
(b)100重量部の成分(a)に対して2重量部以下の少なくとも一種のモノパーオキシカーボネート、
(c)100重量部の成分(b)に対して0.4~4重量部以下の少なくとも一種のt-アルキルヒドロパーオキシド。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明で成分(a)として用いられるエチレンポリマーはエチレンのホモポリマーまたはエチレンの共重合体で、好ましくはエチレンの共重合体である。例えば、エチレン共重合体はエチレンモノマーと少なくとも1種の他のモノマーとで構成され、この他のモノマーは少なくとも1つの不飽和基を有する炭化水素、例えばメチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ブタジエン、イソプレンおよびスチレン;アクリルモノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アルキルメタクリレートおよびアルキルアクリレート(アルキル基は例えばメチル、エチル、プロピルまたはブチルから選択される);ビニルモノマー、例えば酢酸ビニルから選択される。一般に、これらの共重合体は少なくとも30重量%のエチレンと最大で70重量%の他のモノマーとを含む。
【0017】
好ましい実施形態では、エチレン系共重合体はエチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマーである。EVA共重合体は酢酸ビニル(VA)モノマーを15~60重量%、好ましくは25~45重量%含ことができる。EVA共重合体の例はARKEMA社から「EVATANE下(登録商標)18-150」および「EVATANE(登録商標)40-55」の商品名で入手可能である。
【0018】
本発明で使用可能なる他のエチレンポリマーは例えば[特許文献4]に開示されている。
【文献】欧州特許第EP2242647号公報 これらのエチレンポリマーは官能化ポリオレフィンからなり、無水マレイン酸またはグリシジルメタクリレートをグラフトまたは共重合して官能化したエチレンのホモポリマーまたはエチレンとアルキル(メタ)アクリレートまたは酢酸ビニルとの共重合体にすることができる。この官能化ポリオレフィンは必要に応じてエチレン/カルボン酸ビニルエステルの共重合体、例えばEVAと混合することができる。
【0019】
好ましい実施形態では、本発明のエチレン重合体はポリオレフィンエラストマーである。
【0020】
「ポリオレフィン」はオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテンから誘導されるポリマーである。「から誘導される」とはポリマー骨格中および/またはポリマー分岐鎖中の単位がそのポリマーが作られるモノマーの重合または共重合の結果であることを意味する。ポリオレフィンはポリオレフィンエラストマーであるのが好ましい。
【0021】
「ポリオレフィンエラストマー」(POE)という用語はオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテンから誘導されたエラストマーポリマーを意味する。
【0022】
「エラストマー」とは周囲温度で一軸変形可能なポリマー、好ましくは15分間で少なくとも20%一軸変形し、応力を除去した後に初期寸法を回復でき、好ましくは残留変形量が初期寸法の5%以下であるポリマーを意味する。
【0023】
ポリオレフィンエラストマーのα-オレフィン含有量はポリマーの重量の少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%、さらにより好ましくは少なくとも25重量%であるのが好ましい。
【0024】
ポリオレフィンエラストマーのα-オレフィン含有量はポリマーの重量の50重量%以下、好ましくは45重量%以下、より好ましくは40重量以下、さらにより好ましくは35重量%以下であるのが好ましい。
【0025】
アルファ-オレフィン含有量はRandall (Rev. Macromol Chem. Phys., C29 (2 and 3))に記載の13C核磁気共鳴(NMR)分光法によって測定できる。
【0026】
α-オレフィンは炭素数3~20の直鎖、分岐鎖または環状のα-オレフィンであるのが好ましい。
【0027】
炭素数3~20のα-オレフィンの例にはプロペン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセンおよび1-オクタデセンが含まれる。α-オレフィンは環状構造、例えばシクロヘキサンまたはシクロペンタンを含むことができ、3-シクロヘキシル-1-プロペン(アリルシクロヘキサン)およびビニルシクロヘキサン等のα-オレフィンにすることもできる。
【0028】
本発明では、いくつかの環状オレフィン、例えばノルボルネンおよびその関連オレフィンをα-オレフィンとみなすことができ、上記α-オレフィンの一部または全てをこれに代えて使用することができる。
【0029】
ポリオレフィンエラストマーとしてはエチレン/プロピレン、エチレン/1-ブテン、エチレン/1-ヘキセン、特に、超低密度ポリエチレン(VLDPE)(例えば、Dow Chemical Company社のFLEXOMER(登録商標)エチレン/1-ヘキセンポリエチレン)、エチレン/1-オクテン、エチレン/スチレン、エチレン/プロピレン/1-オクテン、エチレン/プロピレン/1-ブテン、エチレン/1-ブテン/1-オクテンおよびエチレン/1-ブテン/スチレンを挙げることができる。
【0030】
より好ましいポリオレフィンコポリマーは均一に分枝した直鎖および実質的に直鎖のエチレンコポリマーである。実質的に直鎖のエチレン共重合体が特に好ましく、それは下記特許文献に記載されている。
【文献】米国特許第5272236号明細書
【文献】米国特許第5278272号明細書
【文献】米国特許第5986028号明細書
【0031】
均一に分枝した直鎖のエチレン/α-オレフィン共重合体は三井石油化学株式会社のTAFMER(登録商標)、Exxon Chemical Company社のEXACT(登録商標)、Dow Chemical Company社のAFFINITY(登録商標)およびENGAGE(登録商標)である。
【0032】
本発明のポリオレフィンエラストマーにはプロピレン、1-ブテンおよびその他のアルケンベースのコポリマー、例えば主成分がプロピレンから誘導される単位で、少数成分が他のα-オレフィン(エチレンを含む)に由来する単位であるコポリマーが含まれる。本発明の実施に有用な典型的なポリプロピレンにはThe Dow Chemical Company社から入手可能なVERSIFY(登録商標)ポリマーおよびExxon Mobil Chemical Company社から入手可能なVISTAMAXX(登録商標)ポリマーが含まれる。
【0033】
本発明のポリオレフィンエラストマーのASTM規格D-3418-03の手順に従って示差走査熱量測定(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)は-35℃以下、好ましくは-40℃以下、より好ましくは-45℃以下、さらに好ましくは-50℃以下である。
【0034】
本発明のポリオレフィンエラストマーのASTM規格D-1238の手順で測定したメルトインデックス(MI(190℃/2.16kg)は100g/10分以下、好ましくは75g/10分以下、より好ましくは50g/10分以下、さらにより好ましくは35g/10分以下である。
【0035】
本発明のポリオレフィンエラストマーのメルトインデックスは少なくとも1g/10分、好ましくは少なくとも5g/10分である。
【0036】
本発明のポリオレフィンエラストマーの密度は0.90g/cc以下、好ましくは0.89g/cc以下、より好ましくは0.885g/cc以下、さらにより好ましくは0.88g/cc以下、さらにより好ましくは0.875g/cc以下である。
【0037】
本発明のポリオレフィンエラストマーの密度は0.85g/cc以上、より好ましくは0.86g/cc以上である。
【0038】
上記密度はASTM規格D-792の手順で測定するのが好ましい。
【0039】
エチレンポリマーは少なくとも一種のモノパーオキシカーボネートと混合する。この過酸化物化合物はOO-t-アルキル-O-アルキルモノパーオキシカーボネートにすることができ、好ましくは、OO-t-ブチル-O-2-エチルヘキシルモノパーオキシカルボナート(TBEC)、OO-t-ブチル-O-2-イソプロピルモノパーオキシカーボネート(TBIC)、OO-t-アミル-O-2-エチルヘキシルモノパーオキシカーボネート(TAEC)、OO-t-アミル-O-2-イソプロピルモノパーオキシカーボネート(TAIC)およびこれらの混合物からなる群から選択するのが好ましい。これらのモノパーオキシカーボネートはARKEMA社からLuperox(登録商標)またはLupersol(登録商標)の商品名で市販されている。
【0040】
好ましいモノパーオキシカーボネートはTAEC、TBECおよびこれらの混合物およびTAECとTAICの混合物である。より好ましいモノパーオキシカーボネートはTAECとTBECである。本発明の実施形態では成分(b)としてTBECとTAECの混合物を使用する。
【0041】
O,O-tert-ブチル-O-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TBEC)とO,O-tert-アミル-O-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TAEC)との混合物を使用する場合には、O,O-tert-アミル-O-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TAEC)に対するO,O-tert-ブチルO-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TBEC)の質量比は0.1:99~60:40、好ましくは1:99.9~50:50、より好ましくは10:90~30:70、より好ましくは15:85~25:75、より好ましくは約20:80にするのが好ましい。
あるいは、この比を約50:50にすることができる。
【0042】
O,O-tert-アミル-O-2-イソプロピルモノパーオキシカーボネート(TAIC)とO,O-tert-アミル-O-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TAEC)との混合物を使用する場合には、O,O-tert-アミル-O-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TAEC)に対するO,O-tert-アミル-0-2-イソプロピルモノパーオキシカーボネート(TAIC)の質量比を20:80~99:1の範囲、好ましくは30:70~80:20、より好ましくは50:50~70:30、さらにより好ましくは55:45~65:35、さらにより好ましくは約60:40にするのが好ましい。
あるいは、この比を約50:50にすることができる。
【0043】
本発明組成物中の成分(b)の量は成分(a)100重量部に対して0.1~2重量部以下の範囲、好ましくは0.2~1.5重量部、より好ましくは0.3~1重量部、より好ましくは、0.4~1重量部、より好ましくは0.4~0.7重量部、さらに好ましくは約0.5重量部である。
【0044】
本発明組成物の第三成分(c)はt-アルキルヒドロパーオキシドで、これはt-ブチルヒドロパーオキシド(TBHP)、t-アミルヒドロパーオキシド(TAHP)、t-ヘキシルヒドロパーオキシド(THHP)、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパーオキシド(TOHP)、パーラヒドロパーオキシド(PMHP)、2,5-ジメチル-2,5-ジ-ヒドロパーオキシド(2,5~2,5)およびこれらの混合物からなる群から選択することができる。t-アルキルヒドロパーオキシドはTAHPであるのが好ましい。
【0045】
本発明組成物中の成分(c)の量は100重量部の成分(b)に対して0.4~4重量部の範囲、好ましくは0.5~3.5重量部、好ましくは0.5~3重量部、好ましくは0.5~2重量部、さらにより好ましくは約1重量部の少なくとも一種のt-アルキルヒドロパーオキシドである。
【0046】
本発明組成物は有機過酸化物ではない助剤(coagent)をさらに含むことができる。
【0047】
この助剤は少なくとも一種カルバメート、マレイミド、アクリレート、メタクリレートまたはアリル官能基を有するのが有利である。アリルカルボキシレートも使用でき、これはアリル、ジアリルおよびトリアリルタイプの群から選択することができる。
【0048】
上記助剤はジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、α-メチルスチレン、α-メチルスチレンダイマー、エチレングリコールジメタクリレート、フェニレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート、ポリエチレングリコール400ジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,12-ドデカンジオールジメタクリレート、1,3-グリセロールジメタクリレート、ジウレタンメタクリレート、トリメチロールプロパーントリメタクリレート、ビスフェノールAエポキシジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール600ジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールエトキシレートジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、脂肪族ウレタンジアクリレート、トリメチロールプロパーントリアクリレート、トリメチロールプロパーンエトキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパーンプロポキシレートトリアクリレート、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート、脂肪族ウレタントリアクリレート、トリメチロールプロパーントリアクリレートらジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリアリルシヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、Ν、Ν'm-フェニレンジマレイミド、ブタジエン、クロロプレンおよびイソプレンからなる群から選択することができる。
【0049】
より好ましくは、助剤はトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、N、N'-m-フェニレンジマレイミド、トリアリルトリメリテート、トリメチロールプロパーントリアクリレートおよびトリメチロールプロパーントリメタクリレートからなる群から選択され、好ましくは、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチロールプロパーントリアクリレート(TMPTA)およびトリメチロールプロパーントリメタクリレート(TMPTMA)からなる群から選択され、さらにより好ましくはトリメチロールプロパーントリアクリレート(TMPTA)である。
【0050】
上記助剤は組成物の全重量に対して0.05%~30%重量%、好ましくは0.1~10重量%存在することができる。
【0051】
本発明組成物で助剤を使用する主たる目的は架橋レベルを増加させることにある。助剤はさらに、同じ過酸化物の分解中の残留ガスの排出を低下させ、最終的に封止フィルム中の気泡の数を減少させることができる。
【0052】
助剤と有機過酸化物との質量比は1:10~10:1の範囲、好ましくは1:3~3:1の範囲であるのが好ましい。
【0053】
本発明の組成物は添加剤、例えば、カップリング剤、UV安定剤、UV吸収剤、充填剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、染料およびこれらの混合物をさらに含むことができる。カップリング剤の例はモノアルキルチタネート、(ビニル)トリクロロシランおよび(ビニル)トリアルコキシシランで、これはエチレンポリマーの重量に対して0.01~5重量%の比率で存在できる。UV吸収剤はヒンダードアミン光安定剤(HALS)の中から選択でき、UV安定剤は例えばベンゾフェノン、トリアジンおよびベンゾトリアゾールから選択できる。これらの化合物はエチレンポリマーの重量に対して0.01~3重量%の比率で存在できる。機械的強度を上げるために無機充填剤、例えば二酸化ケイ素、アルミナ、タルク、炭酸カルシウムを添加することもできる。透明性をよくするためにはナノメートルクレー(nanometric clays)を添加するのが好ましい。可塑剤の例はパーラフィン系または芳香族系の鉱物油、フタル酸エステル、アゼライン酸、アジピン酸等である。酸化防止剤之例はフェノール系、リン系または硫黄系の酸化防止剤である。あるいは、酸化防止剤として1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリンなどのキノリン系を使用することもできる。
【0054】
本発明の好ましい実施形態では、本発明組成物はジクミルパーオキシドのような芳香族の過酸化物を含まない。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、本発明組成物は少なくとも一種のモノパーオキシカーボネート(b)と、少なくとも1種のt-アルキルヒドロパーオキシド(c)以外の過酸化物を含まない。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、組成物中の過酸化物の合計量は100重量部の成分(a)に対して2重量部以下、より好ましくは100重量部の成分(a)に対して1.5質量部以下である。
【0057】
さらに好ましくは、本発明組成物は上記成分(a)、(b)および(c)と、オプシッンとしての以下の少なくとも一つの添加剤とで構成される:カップリング剤、UV安定剤、UV吸収剤、充填剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、染料、助剤およびこれらの混合物。
【0058】
本発明の別の観点から、本発明は上記定義の組成物の製造方法にも関するものである。本発明方法は上記成分(a)、(b)および(c)を混合する工程を含む。この工程は従来の装置、例えば連続ミキサーおよび押出機で、好ましくは本発明の過酸化物の分解温度より低い温度で行なうのが有利である。
【0059】
本発明はさらに、(a)少なくとも1種のエチレンポリマーと(b)少なくとも一種のモノパーオキシカーボネートとを含む硬化性組成物のスコーチを防止するためのt-アルキルヒドロパーオキシドの使用にも関するもので、この場合、t-アルキルヒドロパーオキシドの量は100重量部の成分(b)に対して0.4~4重量部以下であり、好ましくは、100重量部の成分(b)に対して成分(c)は0.5~3.5重量部、好ましくは0.5~3重量部、より好ましくは0.5~2重量部、さらにより好ましくは約1重量部テある。
【0060】
本発明はさらに、(a)少なくとも1種のエチレンポリマーと(b)少なくとも一種のモノパーオキシカーボネートとを含む硬化性組成物のスコーチを防止するための方法にも関するもので、この方法は、組成物中に少なくとも一種のt-アルキルヒドロパーオキシドを100重量部の部分(b)に対して少なくとも一種のt-アルキルヒドロパーオキシドを0.4~4重量部以下、好ましくは0.5~3.5重量部、好ましくは0.5~3重量部、より好ましくは0.5~2重量部の比率で添加する工程を含み、さらにより好ましくは約1重量部の少なくとも一種のt-アルキルヒドロパーオキシド添加する工程を含む。
【0061】
別の観点から、本発明はエチレンポリマーを含むスコーチ保護材料の製造方法にも関するものであり、特に、カプセル化材料またはシーラント、特に太陽電池の封止材またはシーラント、ワイヤーおよびケーブルの絶縁材、パーイプやホース(例えば自動車のラジエータ用配管、飲用水用および床暖房用を含む)、ローラー被覆材(roller coverings)、回転成形品および発泡製品なる群から選択されるスコーチ保護材料の製造方法に関するものであり、この方法は組成物を硬化させる上記定義の工程(a)を含む。このスコーチ保護材料は太陽電池のカプセル化材またはシーラントであるのが好ましい。
【0062】
組成物を硬化させる上記工程(a)は積層工程であるのが好ましい。
【0063】
工程(a)は130~180℃の温度、より好ましくは140~165℃の温度で行うのが好ましい。
【0064】
工程(a)は6~25分間、好ましくは4~30分間続けるのが好ましい。あるいは、工程(a)を6~25分間、より好ましくは8~30分間続けることもできる。
【0065】
本発明方法は、上記定義の組成物の型成形、押出成形および射出成形からなる群から選択される前工程および/または同時工程(a')をさらに含むのが好ましい。製品が太陽電池の封止材料またはシーラントの場合には、上記工程(a')は押出成形工程であるのが好ましい。
【0066】
工程(a')は50~2000μmの厚さを有するシート、好ましくは例えば100~1000μmの厚さのシートが得られるような方法で行うことができる。
【0067】
工程(a')はTダイ押出機または2本ロールミルと組み合わせた二軸スクリュー押出機を用いて行うことができる。
【0068】
工程(a')は80~150℃の温度、好ましくは90~120℃の温度で行うのが好ましい。
【0069】
工程(a')中には架橋をさせないのが好ましい。
【0070】
特定の実施形態では、工程(a')と工程(a)とを単一の工程で行う。
【0071】
別の実施形態では、本発明は太陽電池モジュールの製造方法に関するもので、この方法は下記(1)~(5)のラミネート(積層体)を押圧する工程を含む:
(1)フロントシート(例えば、ガラス板やPMMAシート)、
(2)本発明組成物を含むシート、
(3)少なくとも一つの太陽電池(好ましくは結晶シリコンまたは有機太陽電池から作られる)、
(4)本発明組成物を含む別のシート、
(5)バックシート(例えば多層PVDF/PETフィルムまたはガラス板またはPMMAシート)。
【0072】
上記積層体は次いで従来技術によって加熱および/または真空下で、例えば、真空下で130~180℃の温度、好ましくは140~165℃の温度、で押圧される。硬化時間は4~30分、例えば6~25分の範囲にすることができる。あるいは、工程(a)を8~30分間、より好ましくは6~25分間続けることもできる。本発明組成物はこのプレス工程中に架橋されてもよい。本発明方法は加圧と硬化を単一の同時ステップで行なうのが好ましい。
【0073】
本発明の別の観点から、本発明は上記定義の方法で得られるエチレンポリマーを含むスコーチ保護材料にも関するものテある。
【0074】
エチレンポリマーを含むこのスコーチ保護材料は封入材料またはシーラント、特に太陽電池の封入材料またはシーラント、ワイヤーおよびケーブルの絶縁体、パーイプおよびホース(例えば、自動車のラジエータのためのパーイプ、飲用水および床暖房用の拝観を含む)、ローラー被覆材、回転成形品および発泡製品からなる群から選択されるのが好ましい。
【0075】
より好ましくは、エチレンポリマーを含むスコーチ保護材料はフィルムであり、好ましくはEVAフィルム、より好ましくは封入材料またはシーラントであり、さらにより好ましくは太陽電池のカプセル化材料またはシーラントである。
【0076】
エチレンポリマーを含む本発明のスコーチ保護材料は、エチレンポリマーの架橋密度を改善できるとともに、スコーチの問題を無くすか、著しく減らすことができる。それによって表面欠陥がなく、優れた抵抗性を有するフィルムが得られる。
【0077】
さらに別の観点から、本発明は上記定義のスコーチ保護材料、好ましくは太陽電池封止材料含む太陽電池モジュールにも関するものである。
【0078】
本発明は以下の実施例を参照することによってより良く理解できよう。しかし、以下の実施例は単なる例示のためのものであって本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって定義される。
【実施例】
【0079】
実施例1
スコーチ防止効果
本発明の組成物は、エチレン/酢酸ビニル(EVA)共重合体(住友から供給されたCosmothene(登録商標)EVA KA-40、28%のVAを含む)を、OO-t-アミル-O-2-エチルヘキシルモノパーオキシカルボナート(Arkema社から市販のLuperox(登録商標)TAEC)およびt-アミルヒドロパーオキシド(Arkema社から市販のLuperox(登録商標)TAHP)と一緒に、Haake密閉式ミキサーで50回転/分の撹拌速度で35℃で12分間混合して調製した。次いで、ポリマー混合物を60℃に設定したオープンミルに通して厚さ約2mmのシートを製造した。
【0080】
サンプルの硬化特性を測定してその結果を分析することができるソフトウェアを含むGOTECH社の移動ダイレオメーター(die rheometer、MDR)のプレート上に上記組成物の約2~3gのサンプルを載せた。各サンプルは2つのダイの間の温度制御キャビティ内に配置され、下側のダイは振動してサンプルに反復応力または歪みを与え、一方、上側のダイはトルクセンサに接続されていてサンプルの変形トルク応答を測定する。時間を関数として剛性(stiffness)を連続的に記録する。サンプルの剛性は加硫(硬化)工程が進行するにつれて増加する。
【0081】
この装置は特に、国際規格(ASTM規格D5289およびISO規格6502)で定義のML(最小トルク)、MH(最大トルク)、tc10(10%硬化状態までの時間)およびtc90(90%硬化状態までの時間)の計算値を与える。
【0082】
上記MDRは115℃および145℃でサンプルに0.5°の振動振幅(変形度)を30分間加える。スコーチ時間は全硬化の10%に達するのに必要な時間、すなわちtc10として定義される。
【0083】
下記のサンプルに対して実験を行った。モノパーオキシカーボネートの量は100重量部のEVA樹脂に対する重量部(PHR)で表し、TAHPの量は100重量部のモノパーオキシカーボネートに対する重量部で表した。
【0084】
【0085】
[表1]から、スコーチ時間(tc10)はTAHPの量と共に増加するので、TAHPがスコーチ防止剤として作用していることが分かる。TAHPの量がTAECに対して0.4重量%以下になると、望ましくないことに架橋が115℃(MH値を参照)で開始する。しかし、架橋時間(tc90)は劇的に増加し、従って、架橋速度が遅く、TAECに対してTAHPが4重量%になると、架橋密度(MH)も低くなる。TAECに対してTAHPの値が4重量%以下になると、良好な架橋速度(tc90)を維持しながらスコーチを効果的に防止でき、架橋密度(MH-ML)も良い。
【0086】
実施例2
この実験は、TAEC単独の代わりに、20%のO,O-tert-ブチル-O-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TBEC)と、80%のO,O-tert-アミル-O-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TAEC)との混合物を用いた以下は実施例1と同じ条件で行った。結果を[表2]に示す。
【0087】
【0088】
実施例1と同様に、TAEC+TBECに対して後者が4重量%に達すると、架橋時間が劇的に増加(tc90)する。
【0089】
実施例3
この実験も実施例1と同じ条件で行ったが、TAEC単独の代わりに50%のO,O-tert-ブチルO-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TBEC)と、50%のO,O-tert-アミル-O-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TAEC)との混合物を用いた。結果は[表3]に示す。
【0090】
【0091】
前の実施例と同様に、TAEC+TBECに対して後者が4重量%に達すると架橋時間が劇的に増加する(tc90)。
【0092】
実施例4
この実験はTAHPの代わりにLUP(登録商標)TBHP(t-ブチルヒドロパーオキシド)を用いた以外は実施例1と同じ条件で行った。結果は[表4]に示す。
【0093】
【0094】
前の実施例と同様に、TAECに対して後者が4重量%に達した時に架橋時間(tc90)が劇的に増加する。
【0095】
実施例5
この実験は実施例4と同じ条件で行ったが、TAECだけではなく20%のO,O-tert-ブチルO-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TBEC)と、80%のO,O-tert-アミル-O-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TAEC)との混合物を使用した。結果は[表5]に示した。
【0096】
【0097】
前の実施例と同様に、TAEC+TBECに対して後者が4重量%に達すると、架橋時間が劇的に増加する(tc90)。
【0098】
実施例6
この実験も実施例4と同じ条件で行ったが、TAECだけでなく、50%のO,O-tert-ブチル-O-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TBEC)と、50%のおよびO,O-tert-アミル-O-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TAEC)との混合物を独使用した。結果は[表6]に示す。
【0099】
【0100】
前の実施例と同様に、TAEC+TBECに対して後者が4重量%に達すると、架橋時間が劇的に増加する(tc90)。
【0101】
実施例7
この実験は実施例1と同じ条件で行ったが、TAECの代わりに、OO-t-アミル-O-2-イソプロピルモノパーオキシカーボネート(TAIC)を使用した。結果を[表7]に示す。
【0102】
【0103】
この[表7]から、TAECに対してTAHPを少なくとも0.4重量%添加することで、スコーチが効果的に防止でき、しかも、高い架橋速度(tc90)と良好な架橋密度(MH-ML)が維持できることが分かる。
【0104】
実施例8
この実験は実施例1と同じ条件で行ったが、TAEC単独の代わりに、60%のO,O-t-アミル-O-2-イソプロピルモノパーオキシカーボネート(TAIC)と、40%のおよびO,O-tert-アミル-O-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TAEC)との混合物を使用した。結果は[表8]に示す。
【0105】
【表8】
[表8]から分かるように、TAICに対して少なくとも0.4重量%のTAHPを添加すると、スコーチを効果的に防止でき、高い架橋速度(tc90)と良好な架橋密度(MH-ML)を維持できる。
【0106】
実施例9
この実験は実施例1と同じ条件で実施したが、EVAの代わりにポリオレフィンエラストマー(JAPAN POLYETHYLENE CORPORATION社のKJ640T27255C)を使用した。結果は[表9]に示す。
【0107】
【0108】
この[表9]からTAECに対してTAHPを少なくとも0.4重量%添加することでスコーチを効果的に防止でき、しかも、高い架橋速度(tc90)と良好な架橋密度(MH-ML)を維持できることが分かる。
【0109】
実施例10
この実験は実施例9と同じ条件で行ったが、O,O-tert-アミル-O-(2エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TAEC)の代わりにO,O-tert-ブチル-O-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TBEC)を使用した。結果は[表10]に示す。
【0110】
【0111】
この[表10]から、TBECに対して少なくとも0.4重量%のTBHPを添加すると、スコーチを効果的に防止でき、しかも、高い架橋速度(tc90)と良好な架橋密度(MH-ML)を維持できることが分かる。
【0112】
実施例11
この実験も実施例9と同じ条件で実施したが、Ο,Ο-tert-アミル-O-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシ(TAEC)の代わりにΟ,Ο-t-アミル-Ο-2-イソプロピルモノパーオキシカーボネート(TAIC)を使用した。結果は[表11]に示す。
【0113】
【0114】
この[表11]から、TAICに対して少なくとも0.4重量%のTAHPを添加することで、スコーチを効果的に防止でき、しかも、高い架橋速度(tc90)と良好な架橋密度(MH-ML)を維持することができることがわかる。
【0115】
実施例12
この実験も実験例9と同じ条件で行ったが、O,O-tert-アミル-O-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシ(TAEC)の代わりにO,O-t-ブチル-O-2-イソプロピルモノパーオキシカーボネート(TBIC)を使用した。結果は[表12]に示す。
【0116】
【0117】
この[表12]から、TBICに対して少なくとも0.4重量%のTBHPを添加することでスコーチを効果的に防止でき、しかも、高い架橋速度(tc90)と良好な架橋密度(MH-ML)を維持できることがわかる。