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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】導電シート
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20241015BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H01B5/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020023815
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021129056
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-11-16
【審判番号】
【審判請求日】2024-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】重村 清人
(72)【発明者】
【氏名】中村 一登
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 正之
(72)【発明者】
【氏名】松井 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】徳野 勝己
【合議体】
【審判長】馬場 慎
【審判官】丸山 高政
【審判官】衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-251619(JP,A)
【文献】特開平9-266365(JP,A)
【文献】特開2001-7469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K
H01B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する基材フィルムと、
前記基材フィルムの一方の面の、前記貫通孔の周囲に形成された第1導電層と、
前記第1導電層の一部を覆うように前記貫通孔に充填された導電材と、
前記第1導電層と前記導電材とを覆うように形成された第1保護層と
前記基材フィルムの他方の面の、前記貫通孔の周囲に形成され、一部が前記導電材に覆われた第2導電層と、
前記第2導電層と前記導電材とを覆うように形成された第2保護層とを備え、
前記第1導電層は、前記導電材に覆われていない部分に、前記導電材に重ならないように形成された第1切欠き部を有し、
前記第2導電層は、前記導電材に覆われていない部分に、前記導電材に重ならないように形成された第2切欠き部を有する、導電シート。
【請求項2】
前記切欠き部は、前記貫通孔の周方向に複数形成された、請求項1に記載の導電シート。
【請求項3】
前記切欠き部は、隣接する前記切欠き部との間隔が、前記貫通孔の中心を基準として240°以内である、請求項に記載の導電シート。
【請求項4】
前記切欠き部は、前記貫通孔を挟んで対向する位置に形成された、請求項に記載の導電シート。
【請求項5】
前記切欠き部は、前記貫通孔の半径方向に複数形成された、請求項1から請求項のいずれかに記載の導電シート。
【請求項6】
前記切欠き部は、前記導電材の外縁から、前記貫通孔の中心から前記導電材の外縁までの距離分オフセットされた領域に形成された、請求項1から請求項のいずれかに記載の導電シート。
【請求項7】
前記切欠き部の面積は、前記第1導電層から前記導電材を除いた領域の面積の50%以下である、請求項1から請求項のいずれかに記載の導電シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電シートに関し、特に導電材を充填した貫通孔を有する導電シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材に貫通孔を形成して導電性ペーストを充填することで、基材の表裏両面に形成された導電層を電気的に接続させるものがある。
【0003】
特許文献1に記載のフレキシブルプリント配線板では、絶縁ベースに設けた貫通穴の中に導電性ペーストを充填して回路接続部とし、絶縁ベース両面の配線回路を導通させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭63-136376
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリント基板等の貫通孔部分において、導電材料は貫通孔の中に充填されるとともに貫通孔周囲の導電層の一部を覆うように形成されるため、貫通孔の上の導電材料は凸形状となる。それらの導電材料の上から保護層を形成すると、導電材料と周囲の導電層又は基板との段差に起因して、周囲の導電層上に気泡が形成されることがある。これらの気泡により、場合によっては保護層と導電層との密着性が下がる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、導電層上に気泡が形成されることを抑制し、保護層と導電層との密着性が向上した導電シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、第1の発明は、貫通孔を有する基材フィルムと、基材フィルムの一方の面の、貫通孔の周囲に形成された第1導電層と、第1導電層の一部を覆うように貫通孔に充填された導電材と、第1導電層と導電材とを覆うように形成された第1保護層とを備え、第1導電層は、少なくとも導電材に覆われていない部分に切欠き部を有する、導電シートである。
【0008】
第2の発明は、第1発明において、基材フィルムの他方の面の、貫通孔の周囲に形成され、一部が前記導電材に覆われた第2導電層と、第2導電層と導電材とを覆うように形成された第2保護層とを更に備え、第2導電層は、少なくとも導電材に覆われていない部分に切欠き部を有する、導電シートである。
【0009】
このように構成すると、気泡が形成された場合でも気泡が導電層の切欠き部に分散して収容されるため、導電層上に気泡が形成されることを抑制することができる。それにより、保護層と導電層との密着性を向上させることができる。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、切欠き部は、一部が導電材の下に形成された、導電シートである。
【0011】
第4の発明は、第1から第3の発明において、切欠き部は、貫通孔の周方向に複数形成された、導電シートである。
【0012】
第5の発明は、第4の発明において、切欠き部は、隣接する切欠き部との間隔が、貫通孔の中心を基準として240°以内である、導電シートである。
【0013】
第6の発明は、第5の発明において、切欠き部は、貫通孔を挟んで対向する位置に形成された、導電シートである。
【0014】
第7の発明は、第1から第6の発明において、切欠き部は、貫通孔の半径方向に複数形成された、導電シートである。
【0015】
第8の発明は、第1から第7の発明において、切欠き部は、導電材の外縁から、貫通孔の中心から導電材の外縁までの距離分オフセットされた領域に形成された、導電シートである。
【0016】
第9の発明は、第1から第8の発明において、切欠き部の面積は、第1導電層から導電材を除いた領域の面積の50%以下である、導電シートである。
【0017】
このようにすると、気泡が複数の切欠き部に分散して収容されるので、より導電層上に気泡が形成されることを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、導電層上に気泡が形成されることを抑制でき、保護層と導電層との密着性が向上した導電シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態による導電シートの模式平面図である。
図2図1のII部分の拡大平面図である。
図3図2のIII-III線で切断した導電シートの断面図である。
図4図2のIV-IV線で切断した導電シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、発明の実施の形態について、図を参照しながら説明する。
<実施形態>
【0021】
図1を参照して、本発明の実施形態に係る導電シート1は、基材フィルム10の表面に第1電極11が左右方向に4本並べて形成され、裏面に第2電極12が上下方向に5本並べて形成されている。第1電極11からは第1引回し配線13が、第2電極12からは第2引き回し配線14がそれぞれ引き出されており、スルーホール部IIにより第2引回し配線14が基材フィルム10の表面に引き出されている。第1引回し配線13と、表面に集められた第2引き回し配線14とは端子部15に接続され、端子部15はフレキシブルプリント基板(図示せず)と接続される。フレキシブルプリント基板と接続された導電シート1はタッチセンサとして駆動し、ユーザーの指やスタイラス等の導体が近接又は離間した際に第1電極11と第2電極12に生じる静電容量の変化に応じて流れる電流を制御部で検知することで、ユーザーによるタッチ操作及びタッチ位置を検出することができる。
【0022】
図2から図4を参照して、導電シート1は、基材フィルム10と、基材フィルム10に設けられた貫通孔20と、基材フィルム10の表面の、貫通孔20の周囲に形成された第1導電層30と、第1導電層30の一部を覆うように貫通孔20に充填された導電材40と、第1導電層30と導電材40とを覆うように形成された第1保護層60とを備え、第1導電層30のうち導電材40に覆われていない部分に第1切欠き部31が形成されている。更に、基材フィルム10の裏面の貫通孔20の周囲には第2導電層50が形成されており、第2導電層50と導電材40とを覆うように第2保護層70が形成されている。第2導電層50のうち導電材40に覆われていない部分に第2切欠き部51が形成されている。
【0023】
図2を参照して、基材フィルム10に形成された貫通孔20と、貫通孔20の周囲に形成された第1導電層30の平面形状はともに円形状であり、第1導電層30は貫通孔20を囲むように形成されている。第1導電層30の一部を覆うように貫通孔20に充填された導電材40も略円形状である。第1導電層30のうち貫通孔20に近い部分が一部、導電材40に覆われている。貫通孔20、導電材40、及び第1導電層30は、貫通孔20の中心に対して同心円状に形成されている。第1導電層30は、基材フィルム10表面において右方向に延びる第2引回し配線14と接続されている。
【0024】
第2導電層50は基材フィルム10の裏面に、第1導電層30と同じく円形状に、貫通孔20を囲むように形成されている。第2導電層50のうち貫通孔20に近い部分が一部、導電材40に覆われている。貫通孔20、導電材40、及び第2導電層50は、貫通孔20の中心に対して同心円状に形成されている。第2導電層50は、基材フィルム10裏面において上方向に延びる第2引回し配線14と接続されており、第2引回し配線14は第2電極と接続される。基材フィルム10の裏面において第2電極から引き出された第2引回し配線14は、第2導電層50、導電材40、第1導電層30を経て基材フィルム10の表面へと引き出され、右方向へ延び、第1引回し配線13とともに端子部15に集約される。
【0025】
図2を参照して、第1切欠き部31は、第1導電層30のうち、導電材40に覆われていない部分に形成されている。第1切欠き部31の平面形状は、円弧状の切欠き部31aと矩形形状の切欠き部31bが組み合わされた形状である。円弧状の切欠き部31aは、第1導電層30の外縁に沿った、細長い円弧形状であり、矩形形状の切欠き部31bは、円弧状の切欠き部31aの中央から、第1導電層30の半径方向に延びた矩形形状である。第1切欠き部31は、第1導電層30の貫通孔20を挟んで対向する位置に2箇所形成されている。第1切欠き部31の矩形形状の切欠き部31b同士が貫通孔20を挟んで対向している。第2導電層50に形成される第2切欠き部51も同様である。
【0026】
基材フィルム10の材料は、フレキシブルなものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVA、環状オレフィン・コポリマー(COC)等のポリオレフィン類、ビニル系樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド(PI)、アクリル樹脂(PMMA)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリウレタン、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル等の樹脂フィルムを用いることができる。基材フィルム10の厚みは、5~500μmであり、好ましくは20~100μmである。
【0027】
貫通孔20は、基材フィルム10を貫通するように開けられた孔であり、基材フィルム10のうち第2引回し配線14を表面へと引き出したい箇所に形成する。貫通孔20の直径は、5~500μmであり、好ましくは20~100μmである。貫通孔20は、例えばレーザーを照射することにより形成することができる。
【0028】
第1導電層30及び第2導電層50の材料としては、銅や銀等の金属、金属ペースト、ITO等の金属酸化物、金属ナノワイヤ、金属メッシュ、PEDOT等の導電性ポリマー、グラフェン、カーボンナノチューブ等が挙げられる。また、第1導電層30及び第2導電層50は、複数の層で構成されていてもよい。
【0029】
以下、第1切欠き部31について説明するが、第2切欠き部51も同様である。第1切欠き部31の形状は、円形状、三角形状、矩形状、多角形状、曲線で組み合わされた形状、又はこれらを組み合わせた形状とすることができる。
第1切欠き部31は、第1導電層30を分断しないように形成される。第1切欠き部31の配置箇所としては、第1導電層30のうち導電材40に覆われていない部分に少なくとも1箇所形成されていればよい。第1切欠き部31は、一部が導電材の下に形成されていてもよい。第1切欠き部31が複数形成される場合は、貫通孔20を挟んで対向する位置に形成してもよいし、貫通孔の周方向又は半径方向に複数形成してもよい。貫通孔の周方向かつ半径方向に形成してもよい。なお、貫通孔の周方向に複数形成する場合には、隣接する切欠き部との間隔が、貫通孔20の中心を基準として240°以内であることが好ましく、150°以内であることが更に好ましい。
【0030】
第1切欠き部31の面積は、2000μm以上であり、第1導電層30から導電材40で覆われた部分を除いた領域の面積の50%以下であることが好ましく、5000μm以上で、第1導電層30から導電材40で覆われた部分を除いた領域の面積の30%以下であることが更に好ましい。
【0031】
第1切欠き部31は、導電材40の外縁を基準として、貫通孔20の中心から導電材40の外縁までの距離分オフセットした領域に形成されることが好ましい。つまり、貫通孔10から導電材40の外縁までの距離をrとすると、第1切欠き部31は導電材40の外縁から距離r以内の領域に配置されるのが好ましい。
【0032】
導電材40は、導電材料とバインダーとを含む導電性ペーストである。導電材料としては、例えば銀、銅、ニッケル、金、錫、ビスマスや、これらの合金を用いることができる。バインダーとしては、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂などの硬化性樹脂を用いることができる。
【0033】
第1保護層60及び第2保護層70は、エポキシ系、ウレタン系、アクリル系などの熱硬化性樹脂、ウレタンアクリレート系、シアノアクリレート系などの紫外線硬化性樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリエーテルスルフォン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂等を用いることができる。第1保護層60及び第2保護層70には、防錆剤が含まれていてもよい。防錆剤の材料としては、例えばイミダゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、ピラゾールなどを用いるとよい。また、これらのハロゲン、アルキル、フェニル置換体などの単環又は多環式のアゾール類、アニリンなどの芳香族アミン類、アルキルアミンなどの脂肪族アミン、これらの塩などを用いることもできる。
【0034】
第1保護層60及び第2保護層70は、感光性樹脂であってもよい。感光性樹脂とは、活性光線(具体的には、紫外線)によって化学的変化又は構造的変化を生じる性質を有する樹脂である。このような性質を有する感光性樹脂を構成する感光性樹脂組成物は、例えばバインダー樹脂と、エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、光重合開始剤とを含有する。 バインダー樹脂としては、例えばアクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、アミドエポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応で得られるエポキシアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂と酸無水物の反応で得られる酸変性エポキシアクリレート樹脂等を用いることができる。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物としては、例えば多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー、フタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を用いることができる。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
光重合開始剤としては、例えば芳香族ケトン、ベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン化合物、オキシムエステル化合物、ベンジル誘導体、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、アクリジン誘導体、N-フェニルグリシン、N-フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物、オキサゾール系化合物等のラジカル重合開始剤等を用いることができる。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
感光性樹脂組成物は、必要に応じて、各種の添加剤をさらに含有してもよい。添加剤としては、可塑剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤等を例示することができる。これらは、それぞれ単独で含有されてもよいし、2種以上が組み合わせて含有されてもよい。
【0038】
本実施形態に係る導電シート1の製造方法を説明する。まず、基材フィルム10の一方面に、第1電極11、第1導電層30、第1引回し配線13、及び第2引き回し配線14の一部を形成する。更に基材フィルム10の他方の面に第2電極12、第2導電層50、及び第2引き回し配線14の一部を形成する。基材フィルム10の一方面に形成される第2引き回し配線14は、第1導電層30から端子部15までの部分であり、基材フィルム10の他方面に形成される引き回し配線14は、第2電極12から第2導電層50までである。これらは、スクリーン印刷やフォトリソグラフィなど公知の方法によって形成することができ、基材フィルム10の両面に同時に形成してもよい。なお、第1電極11及び第2電極12は、例えば酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、及びITO等の金属酸化物、金、銀、銅、ニッケル、及びそれらの合金等からなる金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブ、グラフェン、金属メッシュ、導電性ポリマー等で構成することができる。
【0039】
第1導電層30及び第2導電層50に、貫通孔20を形成し、第1切欠き部31及び第2切欠き部51を形成する。第1切欠き部31及び第2切欠き部51は、レーザー加工やフォトリソグラフィなどの方法で形成することができる。これらの切欠き部は、第1導電層30及び第2導電層50と同時に形成してもよい。
【0040】
次に、導電材40を貫通孔20に充填する。導電材40は、第1導電層30及び第2導電層50の一部を覆うように形成される。導電材40と第1導電層30及び第2導電層50の電気的接続が安定するように、充填後に貫通孔20と第1導電層30及び第2導電層の一部を覆うように導電材40を塗布してもよい。充填後に塗布する導電材40は、先に充填した導電材と材料が異なっていてもよい。
【0041】
次に、第1保護層60及び第2保護層70を形成する。第1保護層60及び第2保護層70は、塗布、印刷等公知の方法で形成することができるが、感光性樹脂によって形成する場合は、電極、引回し配線、導電層、導電材が形成された基材フィルム10に感光性樹脂フィルムを加熱しながら圧着し、露光して感光性樹脂を硬化させる。
【0042】
本実施形態に係る導電シート1によれば、第1切欠き部31及び第2切欠き部51が存在することによって第1導電層30及び第2導電層に凹部が形成されるため、第1保護層60及び第2保護層70を形成した際に気泡が形成された場合でも、気泡が凹部である第1切欠き部31及び第2切欠き部51に収容される。よって、第1導電層30及び第2導電層上に気泡が形成されることを抑制でき、第1保護層60と第1導電層30、導電材40及び第1引き回し配線13との密着性を向上させることができる。第2保護層70も同様である。また、第1切欠き部31を複数箇所設けることによって、より気泡を分散して収容することができ、気泡による密着性の低下を防止することができる。基材フィルム10の両面にわたって第2引き回し配線14を形成するため、基材フィルム10の表面に全ての引き回し配線を集約することで基材フィルム10の両面でFPC(フレキシブルプリント基板)を接続する手間を省くことができる。
【0043】
上記実施形態では、基材フィルムの両面に電極や引回し配線が形成されていたが、基材フィルムの片面にこれらを形成し、2枚の基材フィルムを貼り合わせてもよい。この場合、片面に電極及び引回し配線を形成した基材フィルムを2枚準備し、電極及び引回し配線が形成されていない面同士を貼り合わせて、貫通孔を形成し、導電材を充填する。その後、保護層を形成することによって導電シートが完成する。
【0044】
上記実施形態では、第1電極と第2電極の形状は帯状であったが、電極の形状は、例えばダイヤモンドが連なった形状や櫛歯状など、他の形状であってもよい。第1電極と第2電極の本数も特に限定されない。
【0045】
上記実施形態では、第1切欠き部と第2切欠き部の形状が同一であったが、第1切欠き部と第2切欠き部の形状は異なっていてもよい。
【0046】
上記実施形態では、貫通孔は円形状であったが、楕円形状や矩形状など、他の形状であってもよい。
【0047】
上記実施形態では、感光性樹脂を硬化させることにより第1保護層60及び第2保護層70を形成しているが、これらの保護層の硬化後に、更にオートクレーブなどの加圧や加熱といった処理を加えてもよい。このような加圧・加熱処理により、気泡抑制効果を向上させることができる。
【0048】
上記実施形態では、第2引き回し配線が曲がる箇所に貫通孔を設けているが、貫通孔を設ける場所は限定されない。例えば、引き回し配線が直線状に延びている途中に貫通孔を設けてもよい。
【0049】
上記実施形態では、導電シートがタッチセンサの電極として用いられる場合について説明したが、導電シートの用途はタッチセンサに限定されない。例えば、アンテナ、ヒータ、圧力センサ、温度センサ、またはひずみセンサ等の配線で両面に形成されたものを接続する場合にも、本発明に係る導電シートを適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 導電シート
10 基材フィルム
11 第1電極
12 第2電極
13 第1引回し配線
14 第2引回し配線
20 貫通孔
30 第1導電層
31 第1切欠き部
40 導電材
50 第2導電層
51 第2切欠き部
60 第1保護層
70 第2保護層
図1
図2
図3
図4