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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】拡散レンズおよびこれを含むランプ
(51)【国際特許分類】
   F21V 5/00 20180101AFI20241015BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20241015BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20241015BHJP
   F21S 41/20 20180101ALI20241015BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20241015BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20241015BHJP
   G02B 3/02 20060101ALI20241015BHJP
   F21W 102/10 20180101ALN20241015BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241015BHJP
【FI】
F21V5/00 510
F21V5/00 320
F21V5/04 100
F21S41/143
F21S41/20
H01L33/58
G02B5/02 C
G02B3/02
F21W102:10
F21Y115:10
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020076265
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021128927
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】10-2020-0016234
(32)【優先日】2020-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】507098483
【氏名又は名称】ヒュンダイ・モービス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アン,ソン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】グォン,ギュン チュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,チェ ウン
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-195377(JP,A)
【文献】特表2018-519630(JP,A)
【文献】特開2010-028043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 5/00
F21V 5/04
F21S 41/143
F21S 41/20
H01L 33/58
G02B 5/02
G02B 3/02
F21W 102/10
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードに接し、前記発光ダイオードから発光する光の直進方向である光軸を基準として互いに対称となり、凸面を有する複数の拡散部を含み、
前記拡散部の凸面は、曲率中心が異なる2つ以上の曲面から形成され、
前記拡散部の凸面は、
前記曲率中心が異なる第1曲面および第2曲面と、
前記第1曲面および前記第2曲面の間の第3曲面と、
前記第1曲面と前記第2曲面との間に前記第1曲面および前記第2曲面と反対方向の屈曲を有する凹カット面と、を含み、
前記凹カット面は、前記凸面の最高点部を切り欠いた形状であることを特徴とする拡散レンズ。
【請求項2】
前記拡散部の凸面は、曲率中心が異なる前記第1曲面および前記第2曲面と、前記第1曲面および前記第2曲面の間の前記第3曲面と、を含み、
前記光軸から前記第1曲面、前記第3曲面、および前記第2曲面の順に一方向に順次につながるように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の拡散レンズ。
【請求項3】
前記第3曲面の曲率が、前記第1曲面の曲率および前記第2曲面の曲率より大きいことを特徴とする請求項2に記載の拡散レンズ。
【請求項4】
前記第1曲面の曲率が、前記第2曲面の曲率より小さいことを特徴とする請求項2に記載の拡散レンズ。
【請求項5】
前記第1曲面と、前記第1曲面と隣り合う他の拡散部の第1曲面と、の間に形成され、前記第1曲面と反対方向に屈曲する変曲面が形成されたことを特徴とする請求項2に記載の拡散レンズ。
【請求項6】
前記変曲面の最低点を中心として前記隣り合う各拡散部の最高点間の角度θ1は、5度乃至80度であることを特徴とする請求項5に記載の拡散レンズ。
【請求項7】
前記発光ダイオードから前記変曲面の最低点までの高さをH1、前記発光ダイオードの上面から前記隣り合う各拡散部の最高点までの高さをH2とした時に、H1:H2=1:1乃至2であることを特徴とする、請求項5に記載の拡散レンズ。
【請求項8】
前記発光ダイオードから前記隣り合う各拡散部の最高点までの水平距離をA、前記発光ダイオードから前記第2曲面の末端までの水平距離をCとした時、A:C=1:1乃至4であることを特徴とする請求項5に記載の拡散レンズ。
【請求項9】
前記第1曲面と、前記第1曲面と隣り合う他の拡散部の第1曲面との間に形成され、前記第1曲面と反対方向の屈曲を有する変曲面が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の拡散レンズ。
【請求項10】
前記変曲面の最低点を中心として隣り合う各拡散部の最高点間の角度θ1は、5度乃至80度であることを特徴とする請求項9に記載の拡散レンズ。
【請求項11】
前記発光ダイオードから前記変曲面の最低点までの高さがH1であり、前記発光ダイオードの上面から前記隣り合う各拡散部の最高点までの高さがH2である時、H1:H2=1:1乃至2であることを特徴とする請求項9に記載の拡散レンズ。
【請求項12】
前記発光ダイオードから前記拡散部の最高点までの水平距離をA、前記発光ダイオードから前記第2曲面の末端までの水平距離をCとした時、A:C=1:1乃至4であることを特徴とする請求項9に記載の拡散レンズ。
【請求項13】
前記凹カット面の最低点を中心として前記拡散部の最高点と前記第2曲面の最高点との間の角度θ2は、7度乃至80度であることを特徴とする請求項9に記載の拡散レンズ。
【請求項14】
前記発光ダイオードから前記変曲面の最低点までの高さがH1、前記発光ダイオードの上面から前記凹カット面の最低点までの高さがH3の時、H3は、前記H1以上の高さであることを特徴とする請求項9に記載の拡散レンズ。
【請求項15】
プリント基板と、
前記プリント基板に実装される発光ダイオードと、
前記発光ダイオードに接し、前記発光ダイオードから発光する光の直進方向である光軸を基準として互いに対称となり、凸面を有する複数の拡散部を含む拡散レンズとを含み、
前記拡散部の凸面は、曲率中心が異なる2つ以上の曲面から形成され、
前記拡散部の凸面は、
前記曲率中心が異なる第1曲面および第2曲面と、
前記第1曲面および前記第2曲面の間の第3曲面と、
前記第1曲面と前記第2曲面との間に前記第1曲面および前記第2曲面と反対方向の屈曲を有する凹カット面と、を含み、
前記凹カット面は、前記凸面の最高点部を切り欠いた形状であることを特徴とするランプ。
【請求項16】
前記拡散レンズの材質は、液状シリコーン樹脂(LSR)であることを特徴とする請求項15に記載のランプ。
【請求項17】
前記拡散レンズと前記発光ダイオードとの間にはエアギャップ(air-gap)がないことを特徴とする請求項16に記載のランプ。
【請求項18】
前記拡散レンズは、前記プリント基板に一体に射出形成されることを特徴とする請求項16に記載のランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散レンズおよびこれを含むランプに係り、より詳しくは、光損失を低減することができ、屈曲のある基板にも適用可能であり、光を水平に効率的に拡散させることができる発光ダイオード用拡散レンズおよびこれを含むランプに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード用の拡散レンズは、従来は主に液晶表示装置及びテレビなどのバックライトユニットに用いられ、発光ダイオードが有する直進性の光を全方向の広い角度に広げることにより、液晶表示パネル全体に光が均一に分散するようにした。したがって、発光ダイオード用の拡散レンズは、光を拡散させて輝点および暗部が発生しない照明装置を実現するものである。
【0003】
自動車用ランプは、通常、発光ダイオードと拡散レンズとからなり、発光ダイオードの個数と間隔とを最適化して均一な線状イメージを示すランプであるが。しかし自動車用ランプ部品において、拡散レンズは発光ダイオードの光を広い角度に広げることだけにとどまらず、線照明実現のために水平に広げることにも重点を置く。
【0004】
図1~4は、従来技術による拡散レンズを示すものである。
図1に示すように、拡散レンズに係る従来技術として、発光ダイオードに出射面と垂直断面上上方に膨らんだ形状を有し、平面上円形の帯形状を有する第1凸部と第2凸部とからなる発光ダイオードレンズが開示されている。また、下部と締結されるレッグ部を介して発光ダイオードとレンズがと1:1対からなる構造である(例えば特許文献1を参照)。
特許文献1の問題点は、図2のBに示すように、発光ダイオードの光軸近くのホットスポット部と暗部とを緩和させる程度にとどまるという限界があり、また、プラスチックレンズ締結のために別の締結部を有し、発光ダイオード部にエアギャップ(Air-gap)が形成されるという点にある。
【0005】
また、図3図4に示すように、拡散レンズに係る従来技術として、光を拡散させる一次元リニアバットウィングレンズを含むレトロフィットスタイルのランプに係る技術が開示されている(例えば特許文献2を参照)。本技術は、複数の発光ダイオード上に凹部と湾曲したエッジとが対称をなす形状の、図3のようなリニアバットウィングレンズからなる。本技術の記載は、図4のように、発光ダイオードの個数に関係なく1つのリニアバットウィングレンズからなっていて発光ダイオードに最適化されていないという問題点がある。
【0006】
特に、自動車用ランプの場合は、拡散レンズを用いることにより発光ダイオードの個数を低減させ、均一な線状イメージを実現することが重要であるが、これに焦点が当てられていないという問題点がある。自動車ランプで用いようとする光拡散レンズは水平に光を広げるレンズでなければならないが、特許文献2の技術を用いる場合、発光ダイオードの個数と間隔に関係なく光を広げるので、自動車ランプが均一でないことがある。また、本技術は、プラスチックレンズからなっていて別の締結部が必要になり、よって、エアギャップが発生して光損失が発生する。
【0007】
また、これまでの従来技術はすべて、液晶表示装置あるいは線状ランプにおいて発光ダイオードの光を拡散させるために各種形態を有する光拡散レンズを組立てる方式を用いる。したがって、工程および製造費用が上昇するだけでなく、発光ダイオードとレンズとの間のエアギャップによって光損失が発生するという欠点が存在する。
【0008】
以上の背景技術に記載の事項は、発明の背景に対する理解のためのものであって、この技術の属する分野における通常の知識を有する者にすでに知られた従来技術でない事項を含むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国公開特許公報第10-2018-0001791号
【文献】韓国公開特許公報第10-2012-0104599号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決すべくなされたものであって、本発明は、光損失を低減することができ、屈曲のある基板にも適用可能であり、光を水平に効率的に拡散させることができる拡散レンズおよびこれを含むランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様による拡散レンズは、発光ダイオードに接し、前記発光ダイオードから発光する光の直進方向である光軸を基準として互いに対称となり、凸面を有する複数の拡散部を含む。
特に、拡散部の凸面は、曲率中心が異なる2つ以上の曲面から形成されることを特徴とする。
【0012】
より具体的には、前記拡散部の凸面は、曲率中心が異なる第1曲面および第2曲面と、前記第1曲面および第2曲面の間の第3曲面とを含み、前記光軸から前記第1曲面、前記第3曲面、および前記第2曲面の順に一方向に順次につながるように形成されたことを特徴とする。
ここで、前記第3曲面の曲率が、前記第1曲面の曲率および前記第2曲面の曲率より大きいことを特徴とする。
【0013】
また、前記第1曲面の曲率が、前記第2曲面の曲率より小さいことを特徴とする。
さらに、前記第1曲面と、前記第1曲面と隣り合う他の拡散部の第1曲面との間に形成され、前記第1曲面と反対方向の屈曲する変曲面が形成されたことを特徴とする。
ここで、前記変曲面の最低点を中心として前記隣り合う各拡散部の最高点間の角度θ1は、5度~80度であることを特徴とする。
【0014】
そして、前記発光ダイオードから前記変曲面の最低点までの高さをH1、前記発光ダイオードの上面から前記拡散部の最高点までの高さをH2とした時に、H1:H2=1:1~2であることを特徴とする。
また、前記発光ダイオードから前記拡散部の最高点までの水平距離をA、前記発光ダイオードから前記第2曲面の末端までの水平距離をCとした時、A:C=1:1~4であることを特徴とする。
【0015】
一方、前記拡散部の凸面は、曲率中心が異なる第1曲面および第2曲面と、前記第1曲面および第2曲面の間の第3曲面と、前記第1曲面と前記第3曲面との間に設けられ前記第1曲面および前記第3曲面と反対方向に屈曲を有する凹カット面とを含むことができる。
【0016】
ここで、前記拡散部の凸面には、前記凹カット面が複数形成される。
そのため、前記複数の凹カット面は、平行であることを特徴とすることができる。
あるいは、前記複数の凹カット面のうち隣り合う凹カット面は、互いに面対称であってもよい。
【0017】
さらに、前記第1曲面と、前記第1曲面と隣り合う他の拡散部の第1曲面との間に形成され、前記第1曲面と反対方向の屈曲を有する変曲面が形成されたことを特徴とする。
ここで、前記変曲面の最低点を中心として前記隣り合う各拡散部の最高点間の角度θ1は、5度~80度であることを特徴とする。
【0018】
そして、前記発光ダイオードから前記変曲面の最低点までの高さがH1であり、前記発光ダイオードの上面から前記拡散部の最高点までの高さがH2である時、H1:H2=1:1~2であることを特徴とする。
【0019】
また、前記発光ダイオードから前記拡散部の最高点までの水平距離をA、前記発光ダイオードから前記第2曲面の末端までの水平距離をCとした時、A:C=1:1~4であることを特徴とする。
よりさらに、前記凹カット面の最低点を中心として前記拡散部の最高点と前記第2曲面の最高点との間の角度θ2は、7度~80度であることを特徴とする。
【0020】
また、前記発光ダイオードから前記変曲面の最低点までの高さがH1、前記発光ダイオードの上面から前記凹カット面の最低点までの高さがH3の時、H3は、前記H1以上であることを特徴とする。
【0021】
次に、本発明の一態様によるランプは、プリント基板と、前記プリント基板に実装される発光ダイオードと、前記発光ダイオードに接し、前記発光ダイオードから発光する光の直進方向である光軸を基準として互いに対称となり、凸面を有する複数の拡散部を含む拡散レンズとを含む。
ここで、前記拡散レンズの材質は、液状シリコーン樹脂(LSR:Liquid silicone Rubber)であることを特徴とする。
【0022】
そのため、前記拡散レンズと前記発光ダイオードとの間にはエアギャップ(air-gap)がないことを特徴とする。
また、前記拡散レンズは、前記プリント基板に一体に射出形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の拡散レンズは、液状シリコーン樹脂(LSR)によって発光ダイオードが実装された基板をインサートして射出製造が可能なため、発光ダイオードとレンズとの間にエアギャップ(air-gap)を無くし、別の接着剤を必要としないので、光損失を低減することができる。
【0024】
そして、一体に射出可能なため、屈曲のある基板にも形成可能であり、光を水平的に優れて拡散させることが可能で、最小限の発光ダイオードによっても自動車ランプとしての面発光機能を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】従来技術による拡散レンズを示すものである。
図2】従来技術による拡散レンズを示すものである。
図3】従来技術による拡散レンズを示すものである。
図4】従来技術による拡散レンズを示すものである。
図5】本発明によるランプを示すものである。
図6】本発明による拡散レンズを概念的に示すものである。
図7】本発明による拡散レンズの第1実施例を示すものである。
図8】本発明による拡散レンズの第2実施例を示すものである。
図9】本発明による拡散レンズの第3実施例を示すものである。
図10】本発明による拡散レンズの第2実施例の平面形状を示すものである。
図11】本発明による拡散レンズの第2実施例の側断面形状を示すものである。
図12】比較例による拡散レンズを示すものである。
図13】比較例および本発明の実施例1~3による指向角を示すものである。
図14】比較例および本発明の実施例1~3による指向角を示すものである。
図15A】比較例による指向角を示すものである。
図15B】本発明の実施例1による指向角を示すものである。
図15C】本発明の実施例2による指向角を示すものである。
図15D】本発明の実施例3による指向角を示すものである。
図16A】比較例による簡易ランプのイメージを示すものである。
図16B】本発明の実施例1による簡易ランプのイメージを示すものである。
図16C】本発明の実施例2による簡易ランプのイメージを示すものである。
図16D】本発明の実施例3による簡易ランプのイメージを示すものである。
図17】本発明の応用例による拡散レンズを概略的に示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明と本発明の動作上の利点および本発明の実施によって達成される目的を十分に理解するためには、本発明の好ましい実施例を例示する添付図面および添付図面に記載の内容を参照しなければならない。
本発明の好ましい実施例を説明するにあたり、本発明の要旨を不必要にあいまいにし得る公知の技術や繰り返される説明はその説明を縮小または省略する。
【0027】
図5は、本発明によるランプを示すものであり、図6は、本発明による拡散レンズを概念的に示すものである。
図5、6に示すように、本発明のランプは、プリント基板11と、プリント基板11上に実装される発光ダイオード12と、発光ダイオード12およびプリント基板11上に積層結合されて、発光ダイオード12から発光した光を拡散させる拡散レンズ20と、を含む。
【0028】
本発明の拡散レンズ20は、液状シリコーン樹脂(LSR)を用いて、主剤と硬化剤とからなる材料を1~3:1で混合して射出される。主剤と硬化剤との反応によって速やかな硬化が行われる熱硬化性レンズを作製する場合は、発光ダイオードが実装されたプリント基板を金型に入れて直接射出しても、発光ダイオードに大きなダメージを与えない。
【0029】
したがって、発光ダイオードとシリコーン材料とが密着した形態で射出されるため、エアギャップ(air-gap)が発生せず、光損失を低減させることが可能で光量を大きくできる。これに対し、既存のプラスチック材料を用いて射出成型する場合は、熱可塑性樹脂を使用するため、光ダイオードが高い金型温度に長時間露出されてダメージを受けることがある。
【0030】
そして、従来技術は、プラスチックレンズと記載され、別の締結部を有するため、平板状の基板にのみ締結が容易であったが、本発明技術は、プリント基板を射出成型してランプを構成するため、平板状のみならず、曲率を有する基板にも適用可能になる。
【0031】
また、拡散レンズ20を、発光ダイオード12が装着されたプリント基板11に射出することにより、発光ダイオード12それぞれに拡散レンズ20が射出されるだけでなく、図6に示すように、非球面形態に構成し発光ダイオードの光の直進性を広く広げて水平に拡散させることが可能である。
【0032】
そして、従来の拡散レンズは、主に締結部を別途に作製して発光ダイオード上に固定する構造であり、チップの上部に接着剤で接着しなければならなかったため、プラスチック材質が使用されていた。しかし、本発明の拡散レンズは、別途の締結部を用いないのでエアギャップがなく、光損失が低減され、光を水平に拡散させることが可能であり、曲面の形成が可能な面発光構造を実現することができるので、自動車ランプのデザイン曲面に適用可能である。
【0033】
本発明の拡散レンズは、特に自動車ランプとしての機能のために、拡散性能を向上させたレンズである。このために、後述するように、拡散レンズを非球面形状などで形成することで拡散性能が向上するようにしたが、このようなデザイン的自由度は、液状シリコーン素材を適用して射出作製することによって可能になった。
【0034】
図7は本発明によるランプ用拡散レンズの第1実施例、図8は第2実施例、図9は第3実施例を示すものである。
そして、図10は第2実施例の平面形状、図11は第2実施例の側断面形状を示すものである。
【0035】
これらの図面を参照して、本発明の拡散レンズの第1実施例および第2実施例を先に説明し、次いで第3実施例を説明するが、第1実施例と第2実施例とに同一に適用される構成は、第2実施例を通じてより詳しく説明する。
本発明による拡散レンズは、発光ダイオード12およびプリント基板11上に射出形成され、プリント基板11に接するベース部130と、ベース部130の上部に相当し、発光ダイオード12から発光された光の直進方向である光軸を基準として対称となる凸面を有する複数の拡散部が複数構成される。ベース部130は、発光ダイオード12の高さを考慮した構成であるが、省略可能である。
【0036】
図7の第1実施例による拡散レンズ100は、プリント基板11に接するベース部130と、凸面を有する拡散部110、120とが光軸を基準として対称な構造で形成される。
【0037】
しかし、拡散部110、120の凸面は、単一の曲率を有する曲面では形成されず、曲率中心が異なる2つ以上の曲面から形成され、各拡散部は、非対称的な非球面形状を有する。
すなわち、拡散部の凸面は、第1曲面111、第2曲面112、及び第3曲面113から形成される。
【0038】
第1曲面111は、光軸に近接し、第2曲面112は、光軸から遠く配置され、第1曲面111と第2曲面112との間には、第3曲面113が形成される。
第1曲面111、第2曲面112、及び第3曲面113は、互いに曲率中心(曲率半径)が異なっていてもよいが、屈曲方向はすべて同一に構成される。
【0039】
そして、第1曲面111、第3曲面113、及び第2曲面112の順に光軸から同一方向に順次に形成され、第1曲面111と第2曲面112との曲率の設定によっては、第3曲面113は無視できる。すなわち、第3曲面113の曲率は、第1曲面111または第2曲面112、好ましくは第2曲面112の曲率と等しくてもよいのである。
【0040】
しかし、第3曲面113の曲率が、第1曲面111、第2曲面112の曲率より大きいことがより好ましく、第1曲面111の曲率が、第2曲面112の曲率より小さいことがより好ましい。
【0041】
さらに、第1曲面111と隣り合う拡散部の第1曲面とは変曲面140によって連結され、変曲面140は、第1曲面111とは反対方向の屈曲を有する。すなわち、第1曲面111が凸状であるのに対して変曲面140は凹んだ屈曲を有するようになる。
上記のような第1実施例の拡散レンズに関するより具体的な幾何学的説明は、後述する第2実施例の拡散レンズに関する幾何学的説明に含まれる。
【0042】
次に、図8図10および図11に示すように、第2実施例による拡散レンズ200は、プリント基板11に接するベース部230と、光軸を基準とする対称構造の凸面を有する拡散部210、220と、で形成される。
【0043】
しかし、拡散部210、220の凸面は、単一曲率を有する曲面では形成されず、各拡散部は、非対称的な非球面形状を有し曲率中心が異なる2つ以上の曲面から形成される。
すなわち、拡散部の凸面は、第1曲面211、第2曲面212、および第3曲面213から形成される。
【0044】
第1曲面211、第2曲面212、第3曲面213、および変曲面240の形状は、先に説明した第1実施例と同一であるので、その説明を省略する。
ただし、第2実施例の拡散レンズ200の拡散部210には、凹カット面214が形成される。
図示するように、凹カット面214は、第1曲面211と第2曲面212との間に、これらの曲面とは反対方向に屈曲された曲面で形成されることにより、図示するように、側面視略V字形状に凹んで形成されるものである。
【0045】
V字形状に比べて緩やかな凹形状であってもよいし、また、凹カット面214が複数形成され、この時、変曲面240も1つの凹カット面214であると考えられる。
その場合、複数の凹カット面214は、互いに同じ形状の凹面、すなわち平行な関係で順次に形成される。
あるいは、隣り合う凹カット面214が互いに面対称的な、凹カット面214の全体としては非対称的な形状で実現できる。
【0046】
次に、図11を参照して、第2実施例の拡散レンズについての幾何学的な特徴を説明する。ここで、第2実施例の拡散レンズについての幾何学的な特徴は、凹カット面に関連する事項を除けば、第1実施例の拡散レンズにも同一に適用され得て、このような拡散レンズの幾何学的形状によって後述する面発光適合的な効果を発揮できる。
【0047】
図11において、H1は発光ダイオード(LED)から変曲面240の最低点までの高さであり、H2は発光ダイオードの上面から凸面の最高点までの高さであり、H3は発光ダイオードの上面から凹カット面214の最低点までの高さである。
そして、Aは発光ダイオードから最高点H2までの水平距離、Bは発光ダイオードから凹カット面H3までの水平距離、Cは発光ダイオードから第2曲面212の末端までの水平距離である。
【0048】
ここで、H2は、H1より高く、H1:H2=1:1~2の範囲を有することができる。
また、H3は、H1より高いか、等しい。
さらに、A:Cは1:2~4以内、B:Cは約1:2以内の比率を有することが好ましい。
【0049】
両拡散部間で形成される凹部の角度、つまり、変曲面240の最低点を中心として両拡散部の最高点間の角度θ1は、6~70度であり、凹カット面214の角度、つまり凹カット面214の最低点を中心とする拡散部の最高点と第2曲面212の最高点との間の角度θ2は、7~80度であることが好ましい。
【0050】
上記のように、凹部とVカットの末端とはR値を有しなければならず、図10のように上方から見た時、発光ダイオードの上下方向に凹んでオプティック(optic)を形成して上下120度に発散する発光ダイオードの光を左右に送るようにする。そして、図8のように斜め上方から見たとき、凸面の中心付近にVカットが形成されることにより、拡散レンズ200の中央部に光を拡散させることができる。
【0051】
次に、図9は、本発明の第3実施例による拡散レンズ300を示すものである。図9に示すように、第3実施例の拡散レンズ300は、第1、第2実施例の拡散レンズと同様に光軸を基準として同心円上に凸面を有する複数の拡散部310、320、330が形成される。
ただし、上記の実施例とは異なり、各拡散部310、320、330は、単一曲率を有することを特徴とし、対称的な4つの拡散部から構成されることが好ましく、図9は、その一部を省略して示すものである。
【0052】
次に、図12は、本発明の第1実施例の拡散レンズをシミュレートして、光軸を基準として対称的であり、凸面を有する拡散部410、420から構成した拡散レンズ400からなる比較例1である。
そして、図13および図14は、比較例および本発明の実施例1~3による拡散レンズの指向角を示すものである。
【0053】
図15A図15Dは、比較例および本発明の実施例1~3による指向角を順次に示すものであり、図16A図16Dは、比較例および本発明の実施例1~3による簡易ランプのイメージを順次に示すものである。
次の表1にまとめたものを参照して、比較例1、第1実施例、第2実施例、第3実施例の効果を比較説明する。
【0054】
【表1】
【0055】
θ1が90度以上の比較例1の場合は、図16Aの簡易ランプのイメージのように、光が中央部に集まって光が左右に広がらない。また、表1から確認できるように、50度の指向角が既存の発光ダイオードの指向角(60度)に比べて減少した角度である。これは、発光ダイオードの光が中央に集中して現れた現象である。
【0056】
しかし、θ1が90度以下である本発明の第1実施例、第2実施例、および第3実施例の場合は、それぞれ図16B図16C図16Dのような光拡散効果が確認される。
【0057】
すなわち、本発明の拡散レンズの場合、従来技術のレンズより光拡散性能に優れ、エアギャップがないのでエアギャップによる光損失が少なく、表1のように、最高輝度が既存の発光ダイオード光量より高くなる。
【0058】
指向角も、1つの角度のみ有していた比較例1とは異なり、複数の指向角を有し、多様な角度に光を拡散させ得ることが分かる。表1から確認できるように、第2実施例の場合は、指向角が87度、66度、および57度で3つの指向角を有し、比較例1より高い角度で水平に光が拡散することを意味する。これは、自動車ランプ部品において少ない個数の発光ダイオードの使用を可能にし、均一な線状イメージの実現を可能にする。
【0059】
従来技術は、比較例1のように、凹部の角度θ1が90度以上、レンズ内の最高点の位置であるA:Cの比率が1:3以上になった場合は、緩やかな形態の山状を呈して光が左右に拡散できなくなる。したがって、比較例1の場合は、発光ダイオードの既存の指向角形態のように円形の120度角度で広く拡散させることが不可能である。
【0060】
これに対し、第1実施例のように、凹部の角度θ1が90度以下、レンズ内の最高点の位置であるA:Cの比率が1:3以下にした場合には、表1及び図13、14に示すように、指向角が±40度付近に光量が集中する形態で光が発散する。したがって、第1実施例のレンズは、発光ダイオードの垂直部の光量を減少させ、左右に広く拡散させることが可能である。
【0061】
そして、第2実施例は、第1実施例の最高点に凹カット面を形成した形態で指向角が±10度、±40度、および±80度の角度で光量を増加させる形態である。既存の120度の円形指向角を多様な角度で広く広げながら水平角度で最大の拡散を示して光を広く拡散させる。これは、自動車ランプにおいて光均一度を向上させ、イメージを改善することができ、発光ダイオードの個数も節減可能である。
【0062】
最後に、第3実施例は、凸部が2箇所ではなく、同心円上に対称的に4箇所に形成されて十字形の形態で光を拡散させる。これも、既存の指向角より広く広げて左右方向に拡散させる。上下方向は指向角グラフから確認することが困難である。
【0063】
同時に、本発明の場合は、従来技術とは異なり、1つの発光ダイオードあたり1つのレンズが存在していて、1つの発光ダイオードあたり最大に発光ダイオード光を拡散させて発光ダイオードの個数を低減することができる。また、シリコーン射出工程により一度に射出するので締結を必要としないだけでなく、エアギャップが存在せず、光損失が少ない。一方、図17のように、拡散レンズ20とプリント基板11との間に0.5mm~2.0mmの薄い接着層30を射出によって形成させることができ、これによって、レンズとプリント基板との間の接着力を向上させて曲率を有するランプに適用可能である。
【0064】
そして、本発明の拡散レンズはシリコーン材質であるので、弾性に優れ、接着力が強く、曲率を有するランプの拡散レンズとして優れた性能を発揮することができる。
【0065】
以上のような本発明は、例示された図面を参照して説明されたが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の思想および範囲を逸脱することなく多様に修正および変形可能であることは、この技術分野における通常の知識を有する者に自明である。したがって、そのような修正例または変形例は、本発明の特許請求の範囲に属するというべきであり、本発明の権利範囲は添付した特許請求の範囲に基づいて解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0066】
11 プリント基板
12 発光ダイオード
100、200、300 拡散レンズ
110、120、210、220、310、320、330 拡散部
111、211 第1曲面
112、212 第2曲面
113、213 第3曲面
214 凹カット面
130、230 ベース部
140、240 変曲面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図16A
図16B
図16C
図16D
図17