(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】ナトリウム含有飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/38 20210101AFI20241015BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
A23L2/38 B
A23L2/00 B
(21)【出願番号】P 2020082027
(22)【出願日】2020-05-07
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】中山 早紀
(72)【発明者】
【氏名】長尾 愛美
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-076067(JP,A)
【文献】特開2020-171257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウム含有量が20~80mg/100mLであり、
塩化ナトリウムと、無機酸のナトリウム塩と、を含有し、
無機酸のナトリウム塩由来のナトリウム含有量(Y)に対する有機酸のナトリウム塩由来のナトリウム含有量(X)の比率X/Yが、0以上5以下であ
り、
前記無機酸のナトリウム塩が、リン酸塩であり、
前記有機酸のナトリウム塩が、クエン酸塩及びグルコン酸塩からなる群より選択される1種以上である、ナトリウム含有飲料。
【請求項2】
リン酸ナトリウムを含有しており、
前記飲料中のナトリウム含有量に占めるリン酸ナトリウム由来のナトリウム量が10質量%以上である、請求項1
に記載のナトリウム含有飲料。
【請求項3】
電解質補給用飲料である、請求項1
又は2に記載のナトリウム含有飲料。
【請求項4】
ナトリウム含有量が20~80mg/100mLであるナトリウム含有飲料において、
ナトリウム原料として、少なくとも塩化ナトリウムと無機酸のナトリウム塩と用い、
飲料の無機酸のナトリウム塩由来のナトリウム含有量(Y)に対する有機酸のナトリウム塩由来のナトリウム含有量(X)の比率X/Yを、0以上5以下に調整
し、
前記無機酸のナトリウム塩が、リン酸塩であり、
前記有機酸のナトリウム塩が、クエン酸塩及びグルコン酸塩からなる群より選択される1種以上である、塩味の低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム含有量が高く、主に電解質補給のために摂取される飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、運動による発汗などにより失われた水分や塩分等を補うために、スポーツ飲料が飲用されている。また、熱中症の予防などのために飲用される電解質補給用飲料も知られている。電解質としては、ナトリウムイオン、塩素イオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンが挙げられるが、特に、ナトリウムイオンは、身体の浸透圧の調節や神経伝達等に重要な働きをしており、多くの電解質補給用飲料は、ナトリウム含有量を高く、例えば20mg/100mL以上に調整されている。
【0003】
一定量のナトリウムを配合したナトリウム含有飲料では、ナトリウムイオンと塩素イオンの両方を摂取できることから、一般的にナトリウム源として食塩(塩化ナトリウム)が用いられている。しかし、食塩は強い塩味を呈し、後味に特有のぬめり感が出る。このため、食塩含有量が高い飲料は、嗜好性はあまり高くない。
【0004】
ナトリウム含有飲料の塩味を低減させて嗜好性を改善する試みがなされている。例えば、特許文献1には、ナトリウムイオン濃度が20~800mg/100mLであるナトリウム含有飲料に、アルギン酸と、重合度4以上の分岐オリゴ糖をそれぞれ一定範囲で含有させることにより、塩味を低減させて嗜好性を改善できることが記載されている。また、特許文献2には、食塩とクエン酸及び/又はその塩とを含有し、ナトリウム濃度が40mg/100mL以上、可溶性固形分量が4%未満、且つpH4.0未満である飲料において、クエン酸濃度(A)とリン酸濃度(B)の比率(A)/(B)を一定の範囲内に調節することにより、感じられる塩味を抑えることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-107070号公報
【文献】特開2019-076067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明においては、塩味が低減されたナトリウム含有飲料、及びナトリウム含有飲料において、該飲料を飲んだときに感じられる塩味を低減する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ナトリウム含有飲料において、ナトリウム原料として塩化ナトリウムに加えて少なくとも無機酸のナトリウム塩を含有させ、かつ飲料中の無機酸のナトリウム塩由来のナトリウム含有量(Y)に対する有機酸のナトリウム塩由来のナトリウム含有量(X)の比率X/Yを特定の範囲内に調整することによって、ナトリウム原料として塩化ナトリウムのみを含む飲料やX/Yが前記特定の範囲外である飲料よりも、塩味が抑えられることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明に係るナトリウム含有飲料、及び塩味の低減方法は、下記[1]~[5]である。
[1] ナトリウム含有量が20~80mg/100mLであり、
塩化ナトリウムと、無機酸のナトリウム塩と、を含有し、
無機酸のナトリウム塩由来のナトリウム含有量(Y)に対する有機酸のナトリウム塩由来のナトリウム含有量(X)の比率X/Yが、0以上5以下である、
ナトリウム含有飲料。
[2] 前記無機酸のナトリウム塩が、リン酸塩であり、
前記有機酸のナトリウム塩が、クエン酸塩及びグルコン酸塩かならなる群より選択される1種以上である、前記[1]のナトリウム含有飲料。
[3] リン酸ナトリウムを含有しており、
前記飲料中のナトリウム含有量に占めるリン酸ナトリウム由来のナトリウム量が10質量%以上である、前記[1]又は[2]のナトリウム含有飲料。
[4] 電解質補給用飲料である、前記[1]~[3]のいずれかのナトリウム含有飲料。
[5] ナトリウム含有量が20~80mg/100mLであるナトリウム含有飲料において、
ナトリウム原料として、少なくとも塩化ナトリウムと無機酸のナトリウム塩と用い、
飲料の無機酸のナトリウム塩由来のナトリウム含有量(Y)に対する有機酸のナトリウム塩由来のナトリウム含有量(X)の比率X/Yを、0以上5以下に調整する、塩味の低減方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ナトリウム源を食塩のみとする飲料よりも、塩味が低減された飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るナトリウム含有飲料は、ナトリウム含有量が20~80mg/100mLである。一般的な清涼飲料のナトリウム含有量はせいぜい10mg/100mL程度であるのに対して、本発明に係るナトリウム含有飲料は高濃度のナトリウムイオンを含有する。このため、本発明に係るナトリウム含有飲料は、主にナトリウムイオンの補給を目的として喫飲される、いわゆる電解質補給用飲料として好適である。
【0011】
本発明に係るナトリウム含有飲料のナトリウム含有量としては、20~80mg/100mLの範囲内であれば特に限定されるものではないが、本発明による塩味低減効果がより強く得られることから、20~70mg/100mLが好ましく、20~60mg/100mLがより好ましく、30~50mg/100mLがさらに好ましい。
【0012】
本発明及び本願明細書において、飲料中のナトリウム濃度は、原材料の組成に基づき算出することができる。そのほか、飲料中のナトリウムイオン自体を、原子吸光度法により測定することもできる。
【0013】
本発明に係るナトリウム含有飲料は、ナトリウム源(ナトリウム原料)として、少なくとも、塩化ナトリウムと無機酸のナトリウム塩とを含有する。無機酸のナトリウム塩としては、可食性の無機酸塩であれば特に限定されるものではなく、例えば、リン酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等が挙げられる。リン酸塩としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、無水リン酸三ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等が挙げられる。炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。硝酸塩としては、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム等が挙げられる。硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。本発明に係るナトリウム含有飲料としては、塩味との相性が比較的良好であり、本発明に係る塩味低減効果をより発揮しやすい点から、ナトリウム源として、リン酸塩(リン酸ナトリウム)を含有していることが好ましく、リン酸水素二ナトリウムを含有していることがより好ましい。
【0014】
本発明に係るナトリウム含有飲料は、ナトリウム源として、有機酸のナトリウム塩を含有していてもよい。有機酸のナトリウム塩としては、可食性の有機酸塩であれば特に限定されるものではなく、例えば、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム等のクエン酸塩;グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム等が挙げられる。また、アミノ酸や核酸のナトリウム塩であってもよい。本発明に係るナトリウム含有飲料が有機酸ナトリウムを含有する場合、本発明に係る塩味低減効果をより発揮しやすい点から、クエン酸塩及びグルコン酸塩かならなる群より選択される1種以上を含有していることが好ましく、クエン酸三ナトリウム及びグルコン酸ナトリウムかならなる群より選択される1種以上を含有していることがより好ましい。
【0015】
本発明に係るナトリウム含有飲料は、無機酸のナトリウム塩由来のナトリウム含有量(Y)に対する有機酸のナトリウム塩由来のナトリウム含有量(X)の比率X/Yが、0以上5以下(0≦X/Y≦5)である。X/Yが前記範囲内となるように、飲料中の無機酸のナトリウム塩と有機酸のナトリウム塩の含有量が調節されていることにより、食塩のみをナトリウム源として含む、等量のナトリウム濃度であるナトリウム含有飲料よりも、塩味を低減させることができる。本発明に係るナトリウム含有飲料としては、0≦X/Y≦4.5であることが好ましく、0.5≦X/Y≦4.5がより好ましい。
【0016】
本発明に係るナトリウム含有飲料におけるXとYは、0≦X/Y≦5であれば特に限定されるものではないが、飲料中のナトリウム含有量に占めるYの割合(Y/[飲料中のナトリウム含有量]×100%)が、2.5質量%以上であることが好ましく、3.5質量%以上であることがより好ましく、6.0質量%以上であることがさらに好ましく、7.5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。例えば、無機酸のナトリウム塩がリン酸ナトリウムの場合、本発明に係るナトリウム含有飲料中のナトリウム含有量に占めるリン酸ナトリウム由来のナトリウム量は、7.5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。
【0017】
なお、本発明に係るナトリウム含有飲料におけるXとYは、原料として配合された有機酸ナトリウムや無機酸ナトリウムの組成に基づいて算出することができる。その他、飲料中の有機酸や無機酸の量を測定し、得られた測定値に基づいて算出することもできる。例えば、本発明に係るナトリウム含有飲料が、無機酸ナトリウムとしてリン酸ナトリウムを含有しており、かつ飲料中にはリン酸ナトリウム以外に由来するリン酸が含有されていない場合には、飲料中のリン酸濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって測定し、得られたリン酸濃度から原料として配合されたリン酸ナトリウムに由来するナトリウム量を算出することができる。本発明に係るナトリウム含有飲料が、クエン酸ナトリウムやグルコン酸ナトリウムを含有しており、かつ飲料中にはこれらの有機酸ナトリウム以外に由来するクエン酸やグルコン酸が含有されていない場合にも、同様にして、HPLC法による有機酸分析によって飲料中のクエン酸やグルコン酸の濃度を求め、得られた有機酸濃度から原料として配合されたクエン酸ナトリウムやグルコン酸ナトリウムに由来するナトリウム量を算出することができる。
【0018】
本発明に係るナトリウム含有飲料の酸度と甘味度は、製造するナトリウム含有飲料の目的の製品品質に合わせて適宜調整することができる。本発明に係るナトリウム含有飲料の酸度と甘味度としては、酸度が0.01~0.50%、甘味度が1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。本発明に係るナトリウム含有飲料の酸度としては、特に、0.10~0.35%であることが好ましく、0.10~0.30%であることがより好ましい。飲料を飲んだ際に感じられる塩味の強さは、甘味や酸味の強さにも影響されるが、本発明に係るナトリウム含有飲料としては、酸度と甘味度が前記範囲内であることにより、呈味性が良好であり、X/Yを一定範囲に調整することによる塩味低減効果もより十分に発揮される。
【0019】
なお、本明細書において、酸度とは、0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液を用いた電位差滴定法により算出される、クエン酸換算での酸の濃度(%)を意味する。酸度は、フェノールフタレイン指示薬を用いて水酸化ナトリウムで滴定し、クエン酸の相当量として以下のように算出することができる。まず、試料5~15gを200mL容三角フラスコに正確にはかり取り、水で適宜希釈して1%フェノールフタレイン指示薬数滴を加え、25mL容ビューレットに入れた0.1M 水酸化ナトリウムで振り混ぜながら滴定する。30秒間赤色が持続する点を終点とする。水素イオン濃度計を用いる場合は、マグネティックスターラーでかき混ぜながら同様に滴定し、pHが8.1になったときを終点とする。
【0020】
酸度は次の式(1)によって算出することができる。式(1)中、DAは酸度(%)を、Aは0.1M 水酸化ナトリウム溶液による滴定量(mL)を、fは0.1M 水酸化ナトリウム溶液の力価を、Wは試料質量(g)を意味している。また、0.0064は0.1M 水酸化ナトリウム溶液1mLに相当する無水クエン酸の質量(g)である。
【0021】
DA = A × f × 100 / W × 0.0064 ・・・(1)
【0022】
本明細書において、飲料の甘味度とは、ショ糖の甘味の強さを標準とし、甘味の強さが同じショ糖水溶液のショ糖濃度に相当する。例えば、甘味度1とは、20℃における1g/100mL ショ糖水溶液と同じ甘味の強度であることを意味する。高甘味度甘味料を配合した飲料では、配合した高甘味度甘味料の甘味度の換算係数と配合比率に基づいて算出することができる。
【0023】
飲料のpHは、酸味に影響する。本発明に係るナトリウム含有飲料のpHとしては、呈味性と、本発明における塩味低減効果の点から、4.0未満が好ましく、2.0以上4.0未満がより好ましく、2.5以上4.0未満がさらに好ましく、3.0以上4.0未満がよりさらに好ましい。
【0024】
本発明に係るナトリウム含有飲料は、食塩、無機酸ナトリウム、有機酸ナトリウムに加えて、通常の飲料に用いられる甘味料、酸味料、香料(フレーバー)、果実、果汁、野菜汁、酸化防止剤、ナトリウムイオン以外の電解質、苦味料、着色料、栄養強化剤、pH調整剤、消泡剤、乳化剤などを含んでもよい。
【0025】
なお、一般的に飲料に配合される成分には、ナトリウムイオンが含まれているものもある。例えば、ナトリウム含有量の多い果実の果汁や、ナトリウムを含有する添加物等のナトリウムを含有する成分を配合した飲料は、当該成分に由来するナトリウムイオンが含まれるが、その含有量は一般的にせいぜい数mg/100mL程度である。
【0026】
本発明に係るナトリウム含有飲料が含有する甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、砂糖(ショ糖やグラニュー糖を含む)、果糖、高果糖液糖、ぶどう糖、オリゴ糖、乳糖、はちみつ、水飴(麦芽糖)、糖アルコール、高甘味度甘味料等が挙げられる。糖アルコールとしては、例えば、還元水飴(還元澱粉加水分解物)、エリスリトール、トレハロース、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、イソマルト、マンニトール、ラクチトール、還元パラチノース、グリセリン等が挙げられる。高甘味度甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、スクラロース、ネオテーム、アラビノース、カンゾウ抽出物、キシロース、ステビア、タウマチン、ラカンカ抽出物、ラムノース及びリボースが挙げられる。これら甘味料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
【0027】
酸味料としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、コハク酸、氷酢酸、フマル酸、フィチン酸、リン酸及びそれらの塩が挙げられる。これら酸味料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
【0028】
果汁としては、一般的に飲料の原料として使用されるものであれば特に限定されるものではない。果汁としては、柑橘系果汁が好ましく、柑橘系以外の果汁であってもよい。柑橘系果汁としては、例えば、レモン、グレープフルーツ、ゆず、ライム、シイクワシャー、オレンジ、みかん等が挙げられ、レモンが特に好ましい。柑橘系以外の果汁としては、例えば、リンゴ、もも、ブドウ、メロン、イチゴ、マンゴー、パインアップル、カシス、バナナ等が挙げられる。これら果汁は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。また、本発明に係るナトリウム含有飲料の果汁率は、特に限定されるものではないが、止渇性の観点から50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0029】
野菜汁の野菜の種類としては、野菜ジュースの原料として一般的に用いられるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、トマト、ニンジン、ホウレン草、キャベツ、メキャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、セロリ、レタス、パセリ、クレソン、ケール、大豆、ビート、赤ピーマン、カボチャ、小松菜等の野菜汁を用いることができる。これら野菜汁は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
【0030】
香料としては、天然香料であってもよく、合成香料であってもよい。具体的には、フルーツフレーバー、植物フレーバー、ミルクフレーバー、ヨーグルトフレーバー、茶フレーバー、紅茶フレーバー、コーヒーフレーバー、ココアフレーバー、ビールフレーバー、ワインフレーバー、シードルフレーバー、又はこれらの混合物が挙げられる。フルーツフレーバーにおける「フルーツ」や果汁が由来する「フルーツ」としては、例えば、前記の果実が挙げられる。これら香料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
【0031】
栄養強化剤としては、ヒトをはじめとする動物が摂取することによりいずれかの生理機能が改善することが期待される成分であれば特に限定されるものではない。当該成分としては、例えば、水溶性食物繊維、ポリフェノール、カテキン類、微生物菌体等が挙げられる。これら栄養強化剤は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
【0032】
水溶性食物繊維とは、水に溶解し、かつヒトの消化酵素により消化されない又は消化され難い炭水化物を意味する。水溶性食物繊維としては、例えば、大豆食物繊維(可溶性大豆多糖類)、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、ガラクトマンナン、イヌリン、グアーガム分解物、ペクチン、アラビアゴム等が挙げられる。
【0033】
消泡剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン系消泡剤等が挙げられる。
【0034】
乳化剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート等が挙げられる。
【0035】
本発明に係る飲料が容器詰飲料である場合、本発明に係るナトリウム含有飲料を充填する容器としては、特に限定されるものではない。具体的には、ガラス瓶、缶、可撓性容器等が挙げられる。可撓性容器としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の可撓性樹脂を成形してなる容器が挙げられる。可撓性容器は、単層樹脂からなるものであってもよく、多層樹脂からなるものであってもよい。
【0036】
本発明に係るナトリウム含有飲料は、一般的には、各原料を混合する方法(調合法)によって製造できる。本発明に係るナトリウム含有飲料が容器詰飲料の場合には、例えば、各原料を混合することにより、調合液を調製する調合工程と、得られた調合液を容器に充填する充填工程と、により製造できる。
【0037】
まず、調合工程において、原料を混合することにより、調合液を調製する。調合工程においては、全ての原料を混合した調合液を調製することが好ましい。各原料を混合する順番は特に限定されるものではない。原料水に、全ての原料を同時に添加してもよく、先に添加した原料を溶解させた後に残る原料を添加する等、順次原料を添加してもよい。また、例えば、原料水に、固形(例えば粉末状や顆粒状)の原料を混合してもよく、固形原料を予め水溶液としておき、これらの水溶液、必要に応じて原料水を混合してもよい。さらに、原料水に原料を加熱したものを入れてもよく、調製した調合液を加熱してもよい。
【0038】
調合工程において調製された調合液に、不溶物が生じた場合には、充填工程の前に、当該調合液に対して濾過等の不溶物を除去する処理を行うことが好ましい。不溶物除去処理は、特に限定されるものではなく、濾過法、遠心分離法等の当該技術分野で通常用いられている方法で行うことができる。本発明においては、不溶物は濾過除去することが好ましく、濾過法により除去することがより好ましい。
【0039】
次いで、得られた調合液を、容器に充填し、密閉する。得られた容器詰飲料は、必要に応じて、加熱殺菌処理を行うことができる。なお、容器充填後の加熱殺菌処理に代えて、調合工程で得られた調合液を加熱殺菌処理した後、容器に充填・密閉してもよい。容器への充填及び密閉、加熱殺菌処理は、常法により行うことができる。
【0040】
本発明に係るナトリウム含有飲料が炭酸飲料の場合には、前記調合工程の後、充填工程の前に、得られた調合液に炭酸ガスを加えるガス導入工程を行うことにより製造することができる。炭酸ガスの添加は、常法により行うことができる。例えば、調合工程により得られた調合液、及び炭酸水を混合してよく、調合工程により得られた調合液に炭酸ガスを直接加えて溶け込ませてもよい。
【実施例】
【0041】
次に実施例及び参考例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。
【0042】
<飲料の塩味の官能評価>
飲料の塩味の強さについて、4人の専門パネルにより、7段階(1点が最も感じられない、4点が基準液と同程度に感じられる、7点が最も感じられる)で評価した。評価は、酸度、甘味度、総ナトリウム濃度が同じであり、かつナトリウム源として食塩とクエン酸三ナトリウムのみを使用した飲料の塩味の強度を基準、すなわち評価点4として、比較評価した。4人の専門パネルによる評価点の平均点を、各試験区の評価点とした。
【0043】
[実施例1]
ナトリウム含有量が約40mg/100mLとなるように、糖酸液に、食塩、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムを添加した。各試験区について、Brix、pHを測定し、官能評価(塩味)を行った。結果を表1~3に示す。試験区1-1~1-13は、試験区1c-1を基準液として評価した。試験区1-14~1-16は、それぞれ試験区1c-4~1c-6を基準液として評価した。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
この結果、有機酸ナトリウムの種類を変えたが、無機酸ナトリウムを含有していない試験区1c-2は、基準液とした試験区1-c1と同様に評点が4.00であった。また、無機酸ナトリウムを含有しており、X/Yが0.00~4.10である試験区1-1~1-13の飲料は評点が2.25~3.75であり、基準液とした試験区1c-1よりも塩味が低減されていた。一方で、X/Yが5.75である試験区1c-3の飲料は、無機酸ナトリウムを含有しているものの、塩味の評点が4.50であり、試験区1c-1、1c-2よりも塩味が増強されていた。
【0048】
ナトリウム含有量が20、60、又は80mg/100mLの飲料においても、リン酸ナトリウムを配合してX/Yが0.93~1.49である試験区1-14~1-16の飲料は、無機酸ナトリウムを含有していない試験区1c-4~1c-6の飲料よりも明らかに塩味が低減されていた。
【0049】
[実施例2]
市販品の果汁飲料(オレンジ果汁20%、ナトリウム量0mg/100mL、酸度0.29%)に、ナトリウム含有量が約40mg/100mLとなるように、食塩0.6g/Lとクエン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムを添加した。なお、各試験区のナトリウム含有量は、後添した食塩、クエン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムに由来する。各試験区について、Brix、pH、酸度を測定し、官能評価(塩味)を行った。結果を表4に示す。
【0050】
【0051】
この結果、X/Yが3.42である試験区2-1の飲料は、無機酸ナトリウムを含有していない試験区2c-1の飲料よりも塩味が低減された。
【0052】
[実施例3]
ナトリウム含有量が約40mg/100mLとなるように、高甘味度甘味料を含有する糖酸液(酸度0.12%、甘味度3.8)に、食塩、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムを添加した。各試験区について、Brix、pHを測定し、官能評価(塩味)を行った。結果を表5に示す。試験区3-1~3-2は、試験区3c-1を基準液として評価した。試験区3-3~3-4は、試験区3c-2を基準液として評価した。
【0053】
【0054】
高甘味度甘味料を含有する飲料においても、リン酸ナトリウムを配合してX/Yが0.00~2.36である試験区3-1~3-4の飲料は、無機酸ナトリウムを含有していない試験区3c-1~3c-2の飲料よりも明らかに塩味が低減されていた。