(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】メタンリッチガスを製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 1/12 20060101AFI20241015BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20241015BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20241015BHJP
B01J 23/42 20060101ALI20241015BHJP
B01J 23/46 20060101ALI20241015BHJP
C07C 7/148 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
C07C1/12
C07C9/04
C01B32/50
B01J23/42 Z
B01J23/46 301Z
B01J23/46 311Z
C07C7/148
(21)【出願番号】P 2020101206
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】池本 清司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 郷紀
(72)【発明者】
【氏名】横山 公一
(72)【発明者】
【氏名】田中 幸男
(72)【発明者】
【氏名】清澤 正志
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0022121(US,A1)
【文献】特開平11-086892(JP,A)
【文献】特開平11-199206(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第1255473(GB,A)
【文献】特開2007-75816(JP,A)
【文献】特開2012-250143(JP,A)
【文献】特開2008-264781(JP,A)
【文献】特表2009-526627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/12
C07C 9/04
C07C 7/148
C01B 32/50
B01J 23/42
B01J 23/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含有するガスに水素を加え、CO
2メタネーション反応させて、主にメタンと従に一酸化炭素とを含有するガスを得、
得られたガスに酸素を加え、CO選択酸化触媒の存在下で、一酸化炭素の酸化反応を行うことを含
み、
前記CO選択酸化触媒の温度が80℃から120℃の範囲である、メタンリッチガスを製造する方法。
【請求項2】
前記CO選択酸化触媒に供されるガスにおける一酸化炭素酸素に対する酸素の容積濃度比が2~10である、請求項1に記載のメタンリッチガスを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタンリッチガスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素の固定化などを目的として、二酸化炭素と水素とを反応させてメタンを合成する技術が、種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、CO2を含有するガスにH2を添加し、無機酸化物よりなる多孔質担体にロジウムが担持され、該ロジウムの(111)面が露出している触媒の存在下で、反応開始温度を200~550℃、反応圧力を大気圧として反応させてCO2を水素化してメタンを得るための方法を開示している。
【0004】
特許文献2は、二酸化炭素を含有する原料ガスに水素を供給し、メタンを含むガスを生成するメタネーション反応装置において、原料ガスと水素の一部を供給する第1反応器と、第1反応器から来る反応混合ガスに水素の残部を供給し、かつ、反応に必要な水素量を調整する第2反応器と、第2反応器から来る生成ガスの組成を調整する第3反応器を含み、第1反応器の反応温度を、同反応器への水素供給量を調整することにより調整することを特徴とするメタネーション反応装置を開示している。
【0005】
特許文献3は、二酸化炭素と水素からメタンを合成する方法であって、二酸化炭素と水素を反応させて、一酸化炭素を得る第一反応工程と、第一反応工程により生成した一酸化炭素と水素を反応させて、メタンを得る第二反応工程と、を含むことを特徴とする二酸化炭素と水素からメタンを合成する方法を開示している。
【0006】
特許文献4は、二酸化炭素及び水素を含むガスから触媒を用いてメタンを製造する方法であって、第一のメタネーション反応(CO2+4H2→CH4+2H2O)工程と、その後のシフト反応(CO+H2O→CO2+H2)工程と、その後の第二のメタネーション反応工程と、を含むことを特徴とするメタン製造方法を開示している。なお、シフト反応は水を添加しながら約220℃前後の温度で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-142513号公報
【文献】特開2013-136538号公報
【文献】特開2012-140382号公報
【文献】特開2015-124217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
二酸化炭素と水素を反応させて得られる合成メタンには、H2、CO2、COなどが少なからず残留している。特にCOは有毒なガスとして知られている。合成メタンを、例えば、都市ガス原料として用いる場合、未反応残留成分(H2、CO2、CO)の分離、回収等のコストを低減化することが必要である。
本発明の課題は、一酸化炭素濃度の低いメタンリッチガスを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく検討した結果、以下のような態様を包含する本発明を完成するに至った。
【0010】
〔1〕 二酸化炭素を含有するガスに水素を加え、CO2メタネーション反応させて、主にメタンと従に一酸化炭素とを含有するガスを得、
得られたガスに酸素を加え、CO選択酸化触媒の存在下で、一酸化炭素の酸化反応を行うことを含み、
前記CO選択酸化触媒の温度が80℃から120℃の範囲である、
メタンリッチガスを製造する方法。
【0011】
〔2〕 前記CO選択酸化触媒に供されるガスにおける一酸化炭素酸素に対する酸素の容積濃度比が2~10である、〔1〕に記載のメタンリッチガスを製造する方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法によると、一酸化炭素とメタンとを含有するガスから一酸化炭素を減らすことができ、一酸化炭素濃度の低いメタンリッチガスを製造することができる。本発明の装置は、メタンリッチガスの製造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】CO選択酸化反応装置の一例を示す図である。
【
図2】メタンリッチガスの製造装置の一例を示す図である。
【
図3】メタンリッチガスの製造装置の別の一例を示す図である。
【
図4】SOFCからの排出ガスをCO
2源として利用する際に用いる装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、これらは説明のための単なる例示であって、本発明はこれら実施形態によって何等制限されるものではない。
【0017】
本発明のメタンリッチガスを製造する方法は、二酸化炭素を含有するガスに水素を加え、CO2メタネーション反応させて、主にメタンと従に一酸化炭素とを含有するガスを得、得られたガスに酸素を加え、CO選択酸化触媒の存在下で、一酸化炭素の酸化反応を行うことを含む。
【0018】
本発明のメタンリッチガスの製造装置は、CO2メタネーション反応装置、およびCO選択酸化反応装置を有し、二酸化炭素を含有するガスをCO2メタネーション反応装置に供給するライン、水素をCO2メタネーション反応装置に供給するライン、酸素をCO選択酸化反応装置に供給するライン、およびCO2メタネーション反応装置で生成したガスをCO選択酸化反応装置に供給するラインをさらに有する。
【0019】
二酸化炭素を含有するガスは、火力発電所や製鉄所などから排出されるもの、固体酸化物形燃料電池(SOFC : Solid Oxide Fuel Cell)などの燃料電池から排出されるものなどであることができる。燃料電池から排出されるガスは、
図4に示すように冷却器9にて冷やしてドレーンセパレータ8でドレーン21を除去し、CO
2源として使用できる。
水素を含有するガスは、水の電気分解で得られるもの、石油や天然ガスなどの化石燃料もしくはバイオマスで生成するメタノールやメタンガスの改質において得られるもの、製鉄所、化学工場等で副生されるものであってもよい。再生可能エネルギーによる発電などで生じる余剰電力で水素を作ってもよい。
【0020】
CO2メタネーション反応は、二酸化炭素と水素とからメタンを生成する化学反応(CO2 + 4H2 → CH4 + 2H2O)である。CO2メタネーション反応における温度は、通常、200~500℃、好ましくは220~400℃、より好ましくは250~300℃である。CO2メタネーション反応時の圧力は、特に制限されないが、好ましくは常圧(約0.1MPa)~0.9MPaである。
CO2メタネーション反応において、一酸化炭素を生成する化学反応(CO2 + H2 → CO + H2O)、メタノールを生成する化学反応(CO2 + 3H2 → CH3OH + H2O)が付随して生じることがある。
【0021】
CO2メタネーション反応装置は、二酸化炭素を含有するガスの流入口と水素を含有するガスの流入口と反応生成物(主にメタンと従に一酸化炭素とを含有するガス)の流出口とを有する反応器を具備する。反応器は管型または槽型であることができる。反応器には、反応器内の温度を調整するための設備を、通常、有する。温度調整のための設備は、通常、反応ガスとの間で熱交換するためのジャケットや伝熱管などと、交換される熱量をコントロールするための制御装置と、反応器内の温度を測定するための測定装置とを含んでなる。
【0022】
CO2メタネーション反応には、メタネーション触媒を用いることができる。メタネーション触媒としては、Ni系触媒、白金族金属系触媒、その他の貴金属系触媒等などを挙げることができる。メタネーション触媒の具体例としては、ニッケルアルミネート(NiAlxOy)、Ru/NiAlxOy、Ru/Al2O3、Ru/TiO2、Ni/TiO2、Ru-Ni/TiO2などを挙げることができる。メタネーション触媒として、粉末、顆粒、ペレット、平板、波板、コルゲート、ハニカムなどの形状のものを適宜用いることができる。メタネーション触媒は、反応器の内腔に装填もしくは充填してもよいし、反応器の内腔の内壁に付着させてもよい。
【0023】
CO
2メタネーション反応は、
図2に示すようにCO
2メタネーション反応装置を1段だけ繋いで行ってもよいし、
図3に示すようにCO
2メタネーション反応装置を複数段、直列に繋いで行ってもよい。また、CO
2メタネーション反応は、CO
2メタネーション反応装置を複数、並列に繋いで行ってもよい。
【0024】
CO2メタネーション反応で生成するガスには少なからず一酸化炭素が含まれている。一酸化炭素濃度は、特に制限されないが、100ppm以上であってもよい。本発明においてはCO2メタネーション反応で生成するガス中の一酸化炭素を、CO選択酸化触媒の存在下で、酸素を添加して、酸化反応(2CO + O2 → 2CO2)させる。CO選択酸化反応における温度は、上限が、通常、200℃、好ましくは150℃、より好ましくは120℃、さらに好ましくは100℃であり、下限が、通常、20℃、好ましくは35℃、より好ましくは50℃、さらに好ましくは80℃である。CO選択酸化反応における温度が高くなるほどメタンの酸化反応が生じやすくなる傾向がある。酸素の添加は、一酸化炭素(CO)に対する酸素(O2)のモル比が2~6となるように行うことが好ましい。CO選択酸化反応時の圧力は、特に制限されないが、好ましくは常圧(約0.1MPa)~0.9MPaである。
また、CO2メタネーション反応で生成するガスには、水素および水が含まれていることもある。この水素の一部は、酸素の添加によって、水に化学変化する。
【0025】
CO選択酸化反応装置は、CO2メタネーション反応で生成するガスの流入口と酸素を含有するガスの流入口と反応生成物(主にメタンを含有するガス)の流出口とを有する反応器を具備する。反応器は管型または槽型であることができる。反応器には、反応器内の温度を調整するための設備を、通常、有する。温度調整のための設備は、通常、反応ガスとの間で熱交換するためのジャケットや伝熱管などと、交換される熱量をコントロールするための制御装置と、反応器内の温度を測定するための測定装置とを含んでなる。また、温度調整のために、CO2メタネーション反応装置で生成したガスをCO選択酸化反応装置に供給するラインの途上に、CO2メタネーション反応装置で生成したガスを冷却する装置(熱交換器など)を有することが好ましい。この冷却によって水(H2O)を除去することができ、さらにCO選択酸化反応に適した温度に調整することができる。
【0026】
CO選択酸化反応に用いられるCO選択酸化触媒としては、酸化物触媒、白金族金属(Pt,Ru,Rh,Pdなど)系触媒、その他の貴金属系触媒、光触媒等などを挙げることができる。CO選択酸化触媒の具体例としては、Ru/Al2O3、Ru/C、Cox-Fe2O、Co3O4、Cu/CeO2-ZrO2、Ni/CeO2-ZrO2、Co/CeO2-ZrO2、Fe/CeO2-ZrO2、Pt/Al2O3、CuMn2O4、CuZnO、Pt/SiO2,Pd/Al2O3、Pt/SnO2、Pd/CeO2、Pt/TiO2、PdCl2-CuCl2/C、Au/TiO2、Au/Fe2O3などを挙げることができる。CO選択酸化触媒として、粉末、顆粒、ペレット、平板、波板、コルゲート、ハニカムなどの形状のものを適宜用いることができる。CO選択酸化触媒は、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2などの担体に,Pt,Ru,Rh,Pdなどの酸化機能を有する元素を担持してなるものであってもよい。CO選択酸化触媒は、反応器の内腔に装填もしくは充填してもよいし、反応器の内腔の内壁に付着させてもよい。
【0027】
CO選択酸化反応は、得られるメタンリッチガス中の一酸化炭素濃度が30ppm以下となるように行うことが好ましい。CO選択酸化反応装置の反応器における空間速度(GHSV)は、好ましくは4000~150000h-1、より好ましくは5000~10000h-1である。
【0028】
CO選択酸化反応によって、主にメタンと従に一酸化炭素とを含有するガスから、一酸化炭素を減らすことができ、その結果、メタンリッチガスが得られる。
【0029】
本発明によって得られるメタンリッチガスを燃料としてガスタービンに供給することができる。このガスタービンにより発電することができる。ガスタービンからの燃焼排ガスは、通常、二酸化炭素を含むので、これを上記メタンリッチガスの製造方法におけるCO2源として使用することができる。
【0030】
本発明の方法による一酸化炭素の除去性能を以下の実験例によって示す。
【0031】
〔実験例〕
図1に示すCO選択酸化反応装置を用意した。
γ-アルミナにルテニウムを担持してなる触媒(Ru/Al
2O
3、Ru含有量0.40%)、γ-アルミナに白金を担持してなる触媒(Pt/Al
2O
3、Pt含有量0.40%)、およびγ-アルミナにロジウムを担持してなる触媒(Rh/Al
2O
3、Rh含有量0.40%)を、粒子径範囲0.1mm~0.2mmとなるように篩い分けし、CO選択酸化反応器にそれぞれ充填した。
表1~4に示す成分を含む原料ガスSGを表1~4に示す入口温度、圧力および空間速度にて反応器に供給した。ガスクロマトグラフィ(GL-Science製GL-4000)を用いて生成ガスPGの成分分析を行った。結果を表1~4に示す。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【符号の説明】
【0036】
1:伝熱媒体流入路
2:マスフローメータ
3:CO選択酸化反応器
4:冷却器
5:背圧調整器
6:ガスクロマトグラフィ
7:伝熱媒体流出路
PG:メタンリッチガス
SG:原料ガス
D:ドレーン
19:第一伝熱媒体流入路
20:第一伝熱媒体流出路
29:第二伝熱媒体流入路
30:第二伝熱媒体流出路
110:第一CO2メタネーション反応器
210:第二CO2メタネーション反応器
12,22,32:熱交換器
9,15,25,35:冷却器
8,18,28,38:ドレーンセパレータ
21:ドレーン