(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】保護カバー部材及びこれを備える部材供給用シート
(51)【国際特許分類】
B32B 3/04 20060101AFI20241015BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20241015BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241015BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20241015BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241015BHJP
【FI】
B32B3/04
B32B7/12
B32B27/30 D
B65D77/20 R
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2020115997
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2019130285
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020021525
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 悠一
(72)【発明者】
【氏名】紺谷 友広
(72)【発明者】
【氏名】井上 健郎
(72)【発明者】
【氏名】平井 文太
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-004397(JP,A)
【文献】国際公開第2009/011315(WO,A1)
【文献】特開2013-107969(JP,A)
【文献】特開2010-193439(JP,A)
【文献】国際公開第2010/084912(WO,A1)
【文献】特開2007-081881(JP,A)
【文献】特表2003-503991(JP,A)
【文献】特開2011-115687(JP,A)
【文献】特開2012-253480(JP,A)
【文献】特開2012-253481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
G09F 9/00
H05K 3/34
H04R 1/00
B65D 77/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する面を持つ対象物の前記面に配置されて、前記開口への異物の侵入を防ぐ保護カバー部材であって、
前記保護カバー部材が前記面に配置されたときに前記開口を覆う形状を有する保護膜と、
前記保護膜に接合された基材フィルムと、
前記保護カバー部材を前記面に固定する第1粘着層と、を含む積層体から構成され、
前記保護カバー部材の外周面は、前記積層体の積層方向に、前記外周面の周方向の一部の区間に形成された段差を有し、
前記保護カバー部材が前記面に配置されたときに前記段差よりも前記面から離れた側にある前記保護カバー部材の第1部分が、前記段差において、前記段差よりも前記面に近い側にある前記保護カバー部材の第2部分に比べて外方に突出しており、
前記保護膜及び前記基材フィルムは、前記第1部分に位置
し、
前記第1粘着層は、前記第2部分に位置し、
前記段差は、前記第1部分と前記第2部分との境界に位置し、
前記基材フィルムは、前記保護膜と前記第1粘着層との間に位置する、
保護カバー部材。
【請求項2】
前記保護膜は、厚さ方向の通気性を有する請求項1に記載の保護カバー部材。
【請求項3】
前記保護膜は、150℃以上の融点を有する耐熱性材料から構成される請求項1又は2に記載の保護カバー部材。
【請求項4】
前記保護膜は、ポリテトラフルオロエチレン延伸多孔質膜を含む請求項1に記載の保護カバー部材。
【請求項5】
前記基材フィルムは、前記積層方向に見て、前記保護膜の外周に一致する外周を有する請求項1~
4のいずれかに記載の保護カバー部材。
【請求項6】
前記基材フィルムは、150℃以上の融点を有する耐熱性材料から構成される請求項1~
5のいずれかに記載の保護カバー部材。
【請求項7】
前記保護膜と前記基材フィルムとは、第2粘着層により接合されている請求項1~
6のいずれかに記載の保護カバー部材。
【請求項8】
前記第1粘着層は、前記第2部分に位置する請求項1~
7のいずれかに記載の保護カバー部材。
【請求項9】
前記第1粘着層は、両面粘着テープにより構成される請求項1~
8のいずれかに記載の保護カバー部材。
【請求項10】
前記第1部分は、前記積層方向に見て、円、楕円又は正多角形であり、
前記段差は、前記第2部分の外周が前記第1部分の外周よりも内方に後退することにより形成されている請求項1~
9のいずれかに記載の保護カバー部材。
【請求項11】
前記保護膜の面積が175mm
2以下である請求項1~1
0のいずれかに記載の保護カバー部材。
【請求項12】
基材シートと、前記基材シート上に配置された1又は2以上の保護カバー部材と、を備え、
前記保護カバー部材は、請求項1~1
1のいずれかに記載の保護カバー部材である部材供給用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口を有する面を持つ対象物の当該面に配置されて上記開口への異物の侵入を防ぐ保護カバー部材と、当該部材を供給するための部材供給用シートとに関する。
【背景技術】
【0002】
開口を有する面を持つ対象物の当該面に配置されて上記開口への異物の侵入を防ぐ保護カバー部材が知られている。特許文献1には、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と記載)を主成分とし、音が通過することを許容しつつ水滴等の異物が通過することを阻止する多孔質膜と、多孔質膜を別部品に固定するために多孔質膜の少なくとも一方の主面上の制限された領域に配置された耐熱性両面粘着シートと、を備える部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製品としての対象物の使用時だけではなく、対象物の製造時や他の物品への組み込み時に開口への異物の侵入を防ぐ要請がある。この要請に応えるために、製品と同様に、保護カバー部材の配置が考えられる。ただし、配置した保護カバー部材は、製品とは異なり、(1)対象物の製造時や組み込み時に保護カバー部材が劣化する、(2)要求される保護カバー部材の性能が製品としての対象物の使用時とは異なる、及び(3)製品としての対象物の使用時には保護カバー部材は不要である、等の理由により、製造又は組み込み後に除去することが適切な場合がある。この除去は、治具や手で保護カバー部材を掴むことで機械的に実施することが考えられる。しかし、従来の部材では、除去について何も考慮されていない。このため、掴む際に破損した保護カバー部材の破片が開口に侵入して対象物が損傷したり、治具が保護カバー部材を適切に掴めずに対象物の面を傷つけたりすることがある。
【0005】
本開示は、対象物の損傷を抑えながら除去することが可能な保護カバー部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
開口を有する面を持つ対象物の前記面に配置されて、前記開口への異物の侵入を防ぐ保護カバー部材であって、
前記保護カバー部材が前記面に配置されたときに前記開口を覆う形状を有する保護膜と、
前記保護膜に接合された基材フィルムと、
前記保護カバー部材を前記面に固定する第1粘着層と、を含む積層体から構成され、
前記保護カバー部材の外周面は、前記積層体の積層方向に段差を有し、
前記保護カバー部材が前記面に配置されたときに前記段差よりも前記面から離れた側にある前記保護カバー部材の第1部分が、前記段差において、前記段差よりも前記面に近い側にある前記保護カバー部材の第2部分に比べて外方に突出しており、
前記保護膜及び前記基材フィルムは、前記第1部分に位置する、
保護カバー部材(第1保護カバー部材)、
を提供する。
【0007】
別の側面から、本開示は、
基材シートと、前記基材シート上に配置された1又は2以上の保護カバー部材と、を備え、
前記保護カバー部材は、上記第1保護カバー部材である部材供給用シート、
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
第1保護カバー部材は、当該部材が配置された対象物の面からより離れた位置において、第2部分に比べて外方に突出した、保護膜及び基材フィルムを含む第1部分を有する。この部材では、外方に突出した第1部分を掴むことによる除去が可能となる。これにより、より確実に部材を掴めると共に、掴む際の部材の破損が抑制される。また、保護膜に接合された基材フィルムにより、除去の際の保護膜の損傷が抑制される。したがって、対象物の損傷を抑えながら除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、第1保護カバー部材の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2A】
図2Aは、第1保護カバー部材の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3A】
図3Aは、第1保護カバー部材のまた別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4A】
図4Aは、第1保護カバー部材の更にまた別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5A】
図5Aは、第1保護カバー部材の上記とは別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、第1保護カバー部材の使用の態様の一例を模式的に示す工程図である。
【
図7A】
図7Aは、第2保護カバー部材の一例を模式的に示す断面図である。
【
図8A】
図8Aは、第2保護カバー部材の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図9A】
図9Aは、第2保護カバー部材のまた別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、第2保護カバー部材の更にまた別の一例を模式的に示す平面図である。
【
図11】
図11は、第2保護カバー部材の上記とは別の一例を模式的に示す平面図である。
【
図12】
図12は、第2保護カバー部材の上記とは別の一例を模式的に示す平面図である。
【
図13】
図13は、第2保護カバー部材の上記とは別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図14】
図14は、第2保護カバー部材の上記とは別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図15】
図15は、第2保護カバー部材の使用の態様の一例を模式的に示す工程図である。
【
図16】
図16は、本発明の部材供給用シートの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図17A】
図17Aは、比較例2で作製した保護カバー部材を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0011】
[第1保護カバー部材]
第1保護カバー部材の一例を
図1A及び
図1Bに示す。
図1Bは、
図1Aの保護カバー部材1(1A)を第1粘着層5側(対象物への配置面側)から見た平面図である。
図1Aには、
図1Bの断面A-Aが示されている。保護カバー部材1Aは、開口を有する面を持つ対象物の当該面に配置されて上記開口への異物の侵入を防ぐ部材である。保護カバー部材1Aは、保護膜2と、基材フィルム3と、第1粘着層5とを含む積層体から構成される。保護膜2は、保護カバー部材1Aが上記面に配置されたときに上記開口を覆う形状を有する。基材フィルム3は、第2粘着層4によって保護膜2に接合されている。基材フィルム3における保護膜2側とは反対側の面には、第1粘着層5が設けられている。基材フィルム3は、保護膜2と第1粘着層5との間に位置している。基材フィルム3により、上記面から保護カバー部材1Aを除去する際に保護膜2が補強される。保護カバー部材1Aは、第1粘着層5により、上記面に固定される。
【0012】
保護カバー部材1Aの外周面6は、保護膜2、基材フィルム3及び第1粘着層5を含む積層体の積層方向に段差7を有している。保護カバー部材1Aは、保護カバー部材1Aが上記面に配置されたときに段差7よりも当該面から離れた側にある第1部分8Aと、段差7よりも当該面に近い側にある第2部分8Bとを有している。第1部分8Aは、段差7において、第2部分8Bよりも外方に突出している。保護膜2及び基材フィルム3は、第1部分8Aに位置する。第1粘着層5は、第2部分8Bに位置する。なお、本明細書において外方とは、積層体の積層方向(以下、「積層方向」と記載)に見て、保護カバー部材の中心から離れる方向を意味する。また、内方とは、積層方向に見て、保護カバー部材の中心に近づく方向を意味する。「積層方向に見る」とは、積層方向に沿って見ることを意味する。
【0013】
保護カバー部材1Aの外周面6は、周方向の一部の区間に形成された段差7を有する。段差7は、積層方向に見て(
図1B)、第1部分8Aの外周9上の2つの点(P,Q)を直線状に結んでいる。外周9は積層方向に見て円であり、段差7は、当該円上の点(P,Q)を弦として結んでいる。点(P,Q)の中心角αは、約90°である。ただし、段差7の形状及び数は、この例に限定されない。段差7は、積層方向に見て点(P,Q)を非直線状に、例えば曲線状又はジグザグ状に、結んでいてもよい。また、中心角αは90°に限定されない。段差7の形状又は数が異なる保護カバー部材1の変形例を、
図2A及び
図2B、並びに
図3A及び
図3Bに示す。
【0014】
図2A及び
図2Bの保護カバー部材1Bは、段差7の数が異なる以外は、保護カバー部材1Aと同様の構成を有する。保護カバー部材1Bの外周面6は、2つの段差7A,7Bを有する。各々の段差7A,7Bは、外周面6の周方向の一部の区間に形成されている。段差7A,7Bは、積層方向に見て、保護カバー部材1Bの中心を挟んで対向している。保護カバー部材1Bでは、段差7Aにおいて外方に突出した第1部分8A及び/又は段差7Bにおいて外方に突出した第1部分8Aを掴むことによる除去が可能である。なお、
図2Bは、
図2Aの保護カバー部材1Bを、第1粘着層5側から積層方向に見た平面図である。
図2Aには、
図2Bの断面A-Aが示されている。
【0015】
図3A及び
図3Bに示す保護カバー部材1Cは、段差7の形状が異なる以外は、保護カバー部材1Aと同様の構成を有する。保護カバー部材1Cの段差7は、積層方向に見て、第1部分8Aの外周9上の2つの点(P,Q)の各々から内方に延びて交わる2つの線分(R,S)により構成される形状を有する。線分(R,S)は、それぞれ、多角形の1つの頂点Tから延びる辺の一部に相当する。多角形は正方形又は矩形であり、線分(R,S)の交わる角度∠PTQは約90°である。ただし、多角形は正方形及び矩形に限定されず、角度∠PTQは90°でなくてもよい。なお、
図3Bは、
図3Aの保護カバー部材1Cを、第1粘着層5側から積層方向に見た平面図である。
図3Aには、
図3Bの断面A-Aが示されている。
【0016】
保護カバー部材1A,1B,1Cの形状は、積層方向に見て円である。ただし、保護カバー部材1の形状は、上記例に限定されず、例えば、積層方向に見て、正方形及び長方形を含む多角形、並びに楕円であってもよい。多角形は、正三角形、正五角形、正六角形、正七角形及び正八角形等の正多角形であってもよい。多角形の角は、丸められていてもよい。
【0017】
長方形の形状を有する保護カバー部材1の一例を、
図4A及び
図4Bに示す。
図4A及び
図4Bの保護カバー部材1Dは、積層方向に見た形状が長方形である以外は、保護カバー部材1Aと同様の構成を有する。なお、保護カバー部材1Dの段差7は、積層方向に見て、長方形である第1部分8Aの外周9の短辺に平行に直線状に延びている。段差7の形状は、この例に限定されない。段差7は、例えば、積層方向に見て、外周9の短辺に非平行に直線状に延びていても、非直線状(例えば曲線状)に延びていてもよい。
【0018】
保護カバー部材1A,1B,1Cの第1部分8Aの形状は、積層方向に見て円であり、段差7は、第2部分8Bの外周10が第1部分8Aの外周9よりも内方に後退することにより形成されている。第1部分8Aの形状が積層方向に見て楕円又は正多角形である場合にも、段差7は、第2部分8Bの外周10が第1部分8Aの外周9よりも内方に後退することにより形成されていてもよい。これらの態様では、内方に後退した部分において第2部分8Bの幅(積層方向に見た幅)が狭くなっているため、第1部分8Aを掴むことによる除去をより確実かつ安定に実施できる。
【0019】
保護カバー部材1の上記とは別の一例を、
図5A及び
図5Bに示す。
図5A及び
図5Bの保護カバー部材1Eは、段差7の形状が異なる以外は、保護カバー部材1Aと同様の構成を有する。保護カバー部材1Eの第2部分8Bの外周10は、積層方向に見て円であり、段差7は、当該円上の2点(P,Q)を弧として結んでいる。段差7は、第1部分8Aの外周9が第2部分8Bの外周10よりも外方に突出することにより形成されている。第2部分8Bの形状が積層方向に見て楕円又は正多角形である場合にも、段差7は、第1部分8Aの外周9が第2部分8Bの外周10よりも外方に突出することにより形成されていてもよい。
【0020】
外周面6は、周方向の全区間にわたって形成された段差7を有していてもよい。
【0021】
第1部分8Aにおいて外方に突出している領域の奥行D1は、例えば0.1~20mmであり、0.5~20mm、1~15mm、更には1~10mmであってもよい。奥行D1は、積層方向に見て、上記領域における第1部分8Aの外周9と第2部分8Bの外周10との間の最大の距離に相当する。外周面6の周方向の一部の区間に形成された段差7について、上記領域の最大の幅(積層方向に見た幅)W1は、例えば0.1~20mmであり、0.5~20mm、1~15mm、更には1~10mmであってもよい。ただし、奥行D1及び幅W1は、保護カバー部材1が配置される対象物の種類によっては、より大きな値であっても構わない。なお、奥行D1及び/又は幅W1、特に奥行D1、が上記範囲にある場合には、保護カバー部材1の損傷を抑制しながらの対象物からの除去がより確実となる。また、上記領域について、高温下での処理によって後述のカールが生じる保護カバー部材1では、奥行D1及び/又は幅W1、特に奥行D1、が大きくなるほど、カールの程度(カール率)が増大する傾向を示す。
【0022】
第1部分8Aにおいて外方に突出している領域の奥行D1に対する幅W1の比W1/D1は、例えば0.1~10であり、0.5~8.0、更には1.0~5.0であってもよい。比W1/D1が上記範囲にある場合には、保護カバー部材1の損傷を抑制しながらの対象物からの除去がより確実となる。
【0023】
第1部分8Aにおいて外方に突出している領域の面積(積層方向に見た面積、以下同じ)は、第1部分8Aの面積を100%として、例えば3~50%であり、5~40%であってもよい。第1部分8Aが2以上の上記領域を有する場合は、各領域の面積の合計が上記範囲にあってもよい。上記領域の面積がこれらの範囲にある場合、保護カバー部材1の損傷を抑制しながらの対象物からの除去がより確実となる。
【0024】
保護膜2は、厚さ方向に非通気性であっても、厚さ方向の通気性を有していてもよい。保護膜2が厚さ方向の通気性を有する場合、保護カバー部材1の配置により、対象物の開口への異物の侵入を防ぎながら当該開口との間の通気性を確保できる。通気性の確保により、例えば、対象物の開口を介した圧力の調整や圧力の変動の緩和が可能となる。圧力の変動を緩和する一例を以下に示す。回路基板に設けられた貫通孔の一方の開口を覆うように半導体素子を配置した状態で、ハンダリフロー等の加熱処理を施すことがある。ここで、他方の開口を覆うように保護カバー部材1を配置することで、加熱処理時における貫通孔を介した素子への異物の侵入を抑制できる。保護膜2が厚さ方向の通気性を有すると、加熱による貫通孔内の圧力上昇が緩和されて、圧力上昇による素子の損傷を防ぐことができる。半導体素子の例は、マイクロフォン、圧力センサ、加速度センサ等の微小機械システム(以下、「MEMS」と記載)である。これらの素子は、通気又は通音可能な開口を有しており、当該開口が上記貫通孔に面するように回路基板に配置しうる。
【0025】
厚さ方向の通気性を有する保護膜2の当該通気度は、日本工業規格(以下、「JIS」と記載)L1096に定められた通気性測定B法(ガーレー形法)に準拠して求めた空気透過度(以下、「ガーレー通気度」と記載)により表示して、例えば100秒/100mL以下である。
【0026】
保護膜2を構成する材料の例は、金属、樹脂及びこれらの複合材料である。
【0027】
保護膜2を構成しうる樹脂の例は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、シリコーン樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フッ素樹脂である。フッ素樹脂の例は、PTFE、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)である。ただし、樹脂は上記例に限定されない。
【0028】
保護膜2を構成しうる金属の例は、ステンレス及びアルミニウムである。
【0029】
保護膜2は、耐熱性材料から構成されてもよい。この場合、保護カバー部材1を構成する他の層の材料によっては、ハンダリフロー等の高温下での処理に対してより確実な対応が可能である。耐熱性材料の例は、金属及び耐熱性樹脂である。耐熱性樹脂は、典型的には、150℃以上の融点を有する。耐熱性樹脂の融点は、160℃以上、200℃以上、250℃以上、260℃以上、更には300℃以上であってもよい。耐熱性樹脂の例は、シリコーン樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、PEEK及びフッ素樹脂である。フッ素樹脂は、PTFEであってもよい。PTFEは、耐熱性に特に優れている。
【0030】
厚さ方向の通気性を有する保護膜2は、延伸多孔質膜を含んでいてもよい。延伸多孔質膜は、フッ素樹脂の延伸多孔質膜、特にPTFE延伸多孔質膜、であってもよい。PTFE延伸多孔質膜は、通常、PTFE粒子を含むペースト押出物又はキャスト膜を延伸して形成される。PTFE延伸多孔質膜は、PTFEの微細なフィブリルにより構成され、フィブリルに比べてPTFEが凝集した状態にあるノードを有することもある。PTFE延伸多孔質膜によれば、異物の侵入を防ぐ性能及び通気性を高いレベルで両立させることが可能である。保護膜2には、公知の延伸多孔質膜を使用できる。
【0031】
厚さ方向の通気性を有する保護膜2は、双方の主面を接続する複数の貫通孔が形成された穿孔膜を含んでいてもよい。穿孔膜は、非多孔質の基質構造を有する原膜、例えば無孔膜、に複数の貫通孔が設けられた膜であってもよい。穿孔膜は、上記複数の貫通孔以外に、厚さ方向の通気経路を有していなくてもよい。貫通孔は、穿孔膜の厚さ方向に延びていてもよく、厚さ方向に直線状に延びるストレート孔であってもよい。貫通孔の開口の形状は、穿孔膜の主面に垂直に見て、円又は楕円であってもよい。穿孔膜は、例えば、原膜に対するレーザー加工、又は、イオンビーム照射及びこれに続く化学エッチングによる孔開け加工により形成できる。
【0032】
厚さ方向の通気性を有する保護膜2は、不織布、織布、メッシュ、ネットを含んでいてもよい。
【0033】
保護膜2は、上記例に限定されない。
【0034】
保護カバー部材1A~1C,1Eの保護膜2の形状は、積層方向に見て円である。保護カバー部材1Dの保護膜2の形状は、積層方向に見て長方形である。ただし、保護膜2の形状は上記例に限定されず、例えば、積層方向に見て、正方形及び長方形を含む多角形、並びに楕円であってもよい。多角形は、正多角形であってもよい。多角形の角は、丸められていてもよい。
【0035】
保護膜2の厚さは、例えば、1~100μmである。
【0036】
保護膜2の面積は、例えば、175mm2以下である。保護膜2の面積が当該範囲にある保護カバー部材1は、例えば、小径の開口を通常有するMEMSや回路基板への配置に適している。保護膜2の面積の下限は、例えば、0.20mm2以上である。ただし、保護膜2の面積は、保護カバー部材1が配置される対象物の種類によっては、より大きな値であってもよい。
【0037】
基材フィルム3を構成する材料の例は、金属、樹脂及びこれらの複合材料である。基材フィルム3を構成しうる材料の具体例は、保護膜2を構成しうる材料の具体例と同じである。保護膜2を構成する材料と、基材フィルム3を構成する材料とは、互いに異なっていてもよい。
【0038】
基材フィルム3は、耐熱性材料から構成されていてもよい。この場合、保護カバー部材1を構成する他の層の材料によっては、ハンダリフロー等の高温下での処理に対してより確実な対応が可能である。耐熱性材料の具体例は、保護膜2の説明において上述したとおりである。
【0039】
保護カバー部材1A~1Eの基材フィルム3は、積層方向に見て、保護膜2の外周に一致する外周を有している。また、保護カバー部材1A~1Eの基材フィルム3は、積層方向に見て、保護膜2の周縁部に対応する形状を有している。保護カバー部材1A~1C,1Eについてリング状であり、保護カバー部材1Dについて額縁状である。保護膜2の基材フィルム3側の面は、基材フィルム3が接していない領域において露出している。保護膜2が厚さ方向の通気性を有する場合には、当該領域を保護カバー部材1の通気領域とすることができる。ただし、基材フィルム3の形状は、上記例に限定されない。
【0040】
通気領域の面積は、例えば、20mm2以下である。通気領域の面積が当該範囲にある保護カバー部材は、例えば、小径の開口を通常有するMEMSや回路基板への配置に適している。通気領域の面積の下限は、例えば、0.008mm2以上である。ただし、通気領域の面積は、保護カバー部材1が配置される対象物の種類によっては、より大きな範囲であってもよい。
【0041】
基材フィルム3の厚さは、例えば、5~200μmである。
【0042】
保護カバー部材1A~1Eの基材フィルム3は、保護膜2と第1粘着層5との間に位置している。ただし、基材フィルム3の位置は、この例に限定されない。基材フィルム3は、保護膜2の上面に配置されていてもよい。なお、上面とは、保護カバー部材を対象物の面に配置したときに、対象物からより遠い側の面を意味する。下面とは、保護カバー部材を対象物の面に配置したときに、対象物により近い側の面を意味する。
【0043】
基材フィルム3は、保護膜2に比べて高い強度を有していてもよい。この場合、保護カバー部材1を除去する際の保護膜2の破損をより確実に抑制できる。強度は、例えば、引張破断強度又は凝集破壊強度として評価できる。
【0044】
保護カバー部材1A~1Eの保護膜2と基材フィルム3とは、第2粘着層4により接合されている。第2粘着層4は、例えば、粘着剤又は接着剤の塗布層である。粘着剤の例は、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤及びゴム系粘着剤である。高温下での保護カバー部材1の使用を考慮する必要がある場合には、耐熱性に優れるアクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤、特にシリコーン系粘着剤、を選択することが好ましい。
【0045】
アクリル系粘着剤は、例えば、特開2005-105212号公報に開示の粘着剤である。シリコーン系粘着剤は、例えば、特開2003-313516号公報に開示の粘着剤(比較例として開示のものを含む)である。
【0046】
第2粘着層4は、単層であっても、2以上の粘着層を含む積層構造を有していてもよい。
【0047】
第2粘着層4は、両面粘着テープであってもよい。両面粘着テープは、基材と、基材の双方の面に設けられた粘着層とを有する基材含有テープであってもよいし、基材を含まない基材レステープであってもよい。第2粘着層4は、基材及び基材の片面に設けられた粘着層を有する片面粘着テープと、基材における上記粘着層側とは反対側の面に粘着剤を塗布してなる更なる粘着層との積層構造を有していてもよい。
【0048】
粘着テープの基材及び粘着層を、それぞれ、基材フィルム3及び第2粘着層4として使用してもよい。基材フィルム3は、粘着テープに含まれる層ではなくてもよい。
【0049】
粘着テープの基材は、例えば、樹脂、金属又はこれらの複合材料のフィルム、不織布又はフォームである。粘着テープの基材は、耐熱性材料から構成されてもよい。この場合、保護カバー部材1を構成する他の層の材料によっては、ハンダリフロー等の高温下での処理に対してより確実な対応が可能である。耐熱性材料の具体例は、保護膜2の説明において上述したとおりである。
【0050】
保護カバー部材1A~1Eの第2粘着層4の形状は、積層方向に見て、基材フィルム3の形状と同じである。ただし、第2粘着層4の形状は、この例に限定されない。例えば、積層方向に見てドット状、格子状又は波状の形状を有する第2粘着層4により、保護膜2と基材フィルム3とが接合されていてもよい。
【0051】
保護膜2と基材フィルム3との接合方法は、上記例に限定されない。保護膜2と基材フィルム3とは、第2粘着層4を介することなく、加熱溶着及び超音波溶着等の各種の溶着法により接合されていてもよい。
【0052】
保護膜2及び基材フィルム3の組み合わせによっては、例えば、高温下での処理により、第1部分8Aにおける外方に突出している領域を、対象物の面から離れる方向(以下、当該方向を「上方」と記載)に撓ませる(カールさせる)ことができる。言い換えると、第1部分8Aは、段差7において外方に突出している領域が加熱により上方にカールしうる構成を有していてもよい。上方へのカールにより、保護カバー部材1の除去をより確実に実施できる。
【0053】
上方へのカールは、例えば、保護膜2及び/又は基材フィルム3を以下のように選択して生じさせることができる。ただし、カールを生じさせる手法は、これらの例に限定されない。
(1)熱膨張係数が相対的に小さな保護膜2と、熱膨張係数が相対的に大きな基材フィルム3とを選択する。接合された2つの層の間の熱膨張係数の相違により、カールが生じる。
(2)保護膜2として、空孔及び/又は貫通孔を有する膜を選択する。当該膜の具体例は、厚さ方向の通気性を有する膜である。空孔及び/又は貫通孔を有する膜は、熱により収縮しやすい。当該収縮により、カールが生じる。
【0054】
第1部分8Aが、積層方向に見て、円、楕円又は正多角形であり、段差7が、第2部分8Bの外周10が第1部分の外周9よりも内方に後退することにより形成されている場合に、カールが生じやすくなる。また、段差7が、積層方向に見て直線状に延びている場合に、カールが生じやすくなる。
【0055】
保護カバー部材1について、当該部材1をステンレス板の表面に固定し、25℃から260℃まで昇温速度1℃/秒で加熱処理したときに第1部分8Aにおける外方に突出した領域に生じるカールの程度は、カール率により表示して、110%以上であってもよく、130%以上、200%以上、250%以上、300%以上、350%以上、400%以上、更には450%以上であってもよい。カール率は、ステンレス板の上記表面を基準とした上記領域の最大高さ(加熱処理前をH0とし、加熱処理後をH1とする)から、式:カール率(%)=H1/H0×100により求められる。なお、保護カバー部材1のステンレス板への固定は、第1粘着層5により行う。
【0056】
第1部分8Aにおける外方に突出している領域の上面及び/又は下面は、非粘着性であることが好ましい。この場合、保護カバー部材1を除去する治具や手と当該領域との接着を防止でき、保護カバー部材1の除去をより確実かつ安定して実施できる。
【0057】
第1粘着層5は、その形状を除き、第2粘着層4と同様の構成を有しうる。例えば、第1粘着層5は、両面粘着テープにより構成されていてもよく、片面粘着テープと、当該テープにおける粘着層側とは反対側の基材の面に粘着剤を塗布してなる更なる粘着層との積層構造を有していてもよい。この場合、更なる粘着層は、保護膜2側に位置していても、対象物への配置面側に位置していてもよい。ただし、第1粘着層5は、対象物に接する側が弱粘着性の面であってもよい。この場合、保護カバー部材1の除去をより小さな力で実施できる。
【0058】
保護カバー部材1A~1Eの第1粘着層5は、第2部分8Bに位置する。ただし、第1粘着層5の位置は、この例に限定されない。第1粘着層5は、保護カバー部材1を対象物の面に配置したときに、第2部分8Bよりも対象物に近い位置にあってもよい。
【0059】
保護カバー部材1A~1Eの第1粘着層5は、保護カバー部材1を対象物の面に配置したときに、積層方向に見て、対象物の開口を囲む形状を有する。ただし、第1粘着層5の形状は、保護カバー部材1を対象物に固定できる限り、上記例に限定されない。
【0060】
第1粘着層5の厚さは、例えば、10~200μmである。
【0061】
保護カバー部材1の面積は、例えば、175mm2以下である。面積が当該範囲にある保護カバー部材1は、例えば、小径の開口を通常有するMEMSや回路基板への配置に適している。保護カバー部材1の面積の下限は、例えば、0.20mm2以上である。ただし、保護カバー部材1の面積は、配置される対象物の種類によっては、より大きな値であってもよい。なお、保護カバー部材1の面積が小さいほど、除去は困難である。このため、保護カバー部材1の面積が上記範囲にある場合に、本発明の効果は特に顕著となる。
【0062】
保護カバー部材1は、本発明の効果が得られる限り、上述した以外の任意の層を備えていてもよい。
【0063】
保護カバー部材1が配置されうる対象物は、例えば、上述の回路基板である。対象物は、MEMS等の半導体素子であってもよい。MEMSは、パッケージの表面に通気孔を有する非密閉系の素子であってもよい。MEMSの通気孔の孔径は、通常、小径である。非密閉系MEMSの例は、気圧、湿度、ガス、エアフロー等を検出する各種のセンサー及びスピーカーやマイクロフォン等の電気音響変換素子である。ただし、対象物は、上記例に限定されない。
【0064】
保護カバー部材1が配置されうる対象物の面は、典型的には、対象物の表面である。面は、平面であっても曲面であってもよい。また、対象物の開口は、凹部の開口であっても、貫通孔の開口であってもよい。
【0065】
保護カバー部材1が配置された対象物の処理は、高温下又は低温下の処理であってもよい。
【0066】
保護カバー部材1は、例えば、保護膜2、基材フィルム3及び第1粘着層5の形状加工及び積層により製造できる。
【0067】
保護カバー部材1は、剥離紙や剥離ライナー等の剥離シート上に配置した状態で供給できる。剥離シートには、複数の保護カバー部材1が配置されていてもよい。剥離シートへの配置には、保護カバー部材1が備える粘着層(例えば、第1粘着層5)を利用してもよい。また、剥離シートにおける保護カバー部材1を配置する面に弱粘着層を設け、当該弱粘着層を介して保護カバー部材1を配置してもよい。剥離シートが基材シートである部材供給用シートについては、後述する。
【0068】
保護カバー部材1を使用する態様の一例を
図6に示す。
【0069】
図6(a)に示すように、開口32を有する対象物31の表面33に、開口32を保護膜2が覆うように保護カバー部材1を配置する。保護カバー部材1は、通常、積層方向に見て、第1粘着層5が開口32にかからないように配置される。次に、保護カバー部材1が配置された対象物31に対して所定の処理が実施される(
図6(b))。処理後、保護カバー部材1は表面33から除去される(
図6(c))。
【0070】
保護カバー部材1を使用する態様は、上記例に限定されない。例えば、処理後、保護カバー部材1は必ずしも除去しなくてもよく、表面33に残留させてもよい。表面33に残留させたまま対象物31を流通させたり、使用することも可能である。保護カバー部材1は、対象物の流通及び/又は使用後における任意のタイミングで除去することができる。
【0071】
[第2保護カバー部材]
上記とは別の側面から、本開示は、
開口を有する面を持つ対象物の前記面に配置されて、前記開口への異物の侵入を防ぐ保護カバー部材であって、
前記保護カバー部材が前記面に配置されたときに前記開口を覆う形状を有する保護膜と、
前記保護カバー部材を前記面に固定する粘着層(第3粘着層)と、を含む積層体から構成され、
前記保護カバー部材における前記面への配置面の一部が低粘着面及び/又は非粘着面である、保護カバー部材(第2保護カバー部材)、
を提供する。
【0072】
第2保護カバー部材では、対象物への配置面の一部が低粘着面及び/又は非粘着面である。このため、低粘着面及び/又は非粘着面をきっかけとする、よりスムーズな対象物からの剥離によって、破損を抑えながら当該部材を除去できる。したがって、対象物の損傷を抑えながら除去することが可能となる。
【0073】
以下、第2保護カバー部材の実施形態を説明する。なお、第2保護カバー部材に含まれる層や部材のうち、第1保護カバー部材1と共通する層や部材については、同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0074】
第2保護カバー部材の一例を
図7A及び
図7Bに示す。
図7Bは、
図7Aの保護カバー部材51(51A)を第3粘着層52側(対象物への配置面60側)から見た平面図である。
図7Aには、
図7Bの断面A-Aが示されている。保護カバー部材51Aは、開口を有する面を持つ対象物の当該面に配置されて上記開口への異物の侵入を防ぐ部材である。保護カバー部材51Aは、保護膜2と、第3粘着層52とを含む積層体から構成される。保護膜2は、保護カバー部材51Aが上記面に配置されたときに上記開口を覆う形状を有する。保護膜2と第3粘着層52とは、互いに接合している。保護カバー部材51Aは、第3粘着層52により、上記面に固定される。
【0075】
保護カバー部材51Aにおける配置面60の一部(部分61)は、低粘着面及び/又は非粘着面であり、好ましくは、非粘着面である。なお、低粘着面とは、配置面60の他の部分62に比べて、粘着性の低い面を意味する。
【0076】
保護カバー部材51Aの部分61は、第3粘着層52における粘着性を低下させた処理面であってもよい。処理面は、粘着性を喪失させた失活面であってもよい。粘着層の処理面は、例えば、以下の方法により形成できる。ただし、処理面を形成する方法は、以下に示す例に限定されない。
[I]粘着層における処理面としたい部分をプラズマ処理する。プラズマ処理により当該部分に含まれる粘着剤が劣化し、これにより、処理面が形成される。
[II]粘着層における処理面としたい部分に含まれる粘着剤ポリマーに対してグラフト重合や共重合等の更なる重合処理を実施して、当該部分を変性させる。
[III]粘着層に紫外線吸収剤及び/又は熱発泡剤を含ませておき、処理面としたい部分に紫外線を照射及び/又は熱を印加して、当該部分を変性させる。
[IV]粘着層における処理面としたい部分に粘着性低下剤を接触させる。粘着性低下剤は、粘着剤層がアクリル系である場合、例えば、シリコーン化合物を含む溶液である。接触は、例えば、塗布や噴霧により実施できる。
【0077】
保護カバー部材51Aの部分61は、積層体の積層方向に見て、配置面60の外周63の一部の区間E-Fと、区間E-Fの両端(E,F)を結ぶ線64とにより囲まれている。線64は、部分61と部分62との境界を構成する。外周63は積層方向に見て円であり、直線である線64は、両端(E,F)を弦として結んでいる。両端(E,F)の中心角αは、約90°である。保護カバー部材51A及びその配置面60は、1つの部分61を有する。ただし、部分61の形状、数及び配置、外周63における両端(E,F)の位置、並びに線64の態様等は、上記例に限定されない。保護カバー部材51A及び配置面60は、2以上の部分61を有していてもよい。線64は、非直線、例えば曲線、であってもよいし、両端(E,F)をジグザグ状に結んでいてもよい。中心角αは90°に限定されない。
【0078】
部分61の最大の幅(積層方向に見た幅)W2は、例えば0.1~20mmであり、0.5~20mm、1~15mm、更には1~10mmであってもよい。部分61の奥行D2は、例えば0.1~20mmであり、0.5~20mm、1~15mm、更には1~10mmであってもよい。奥行D2は、積層方向に見て、外周63と線64との間の最大の距離に相当する。ただし、幅W2及び奥行D2は、保護カバー部材51Aが配置される対象物の種類によっては、より大きな値であっても構わない。なお、奥行D2及び/又は幅W2、特に奥行D2、が上記範囲にある場合には、保護カバー部材51の損傷を抑制しながらの対象物からの除去がより確実となる。また、部分61について、高温下での処理によって後述のカールが生じる保護カバー部材51では、奥行D2及び/又は幅W2、特に奥行D2、が大きくなるほど、カールの程度(カール率)が増大する傾向を示す。
【0079】
部分61の奥行D2に対する幅W2の比W2/D2は、例えば0.1~10であり、0.5~8.0、更には1.0~5.0であってもよい。比W2/D2が上記範囲にある場合には、保護カバー部材51の損傷を抑制しながらの対象物からの除去がより確実となる。
【0080】
部分61の面積(積層方向に見た面積、以下同じ)は、配置面60の面積を100%として、例えば3~50%であり、5~40%であってもよい。配置面60が2以上の部分61を有する場合は、各部分61の面積の合計が上記範囲にあってもよい。部分61の面積がこれらの範囲にある場合、保護カバー部材51の損傷を抑制しながらの対象物からの除去がより確実となる。
【0081】
第3粘着層52は、部分61を有する限り、第1保護カバー部材1の第1粘着層5及び/又は第2粘着層4と同様の構成を有しうる。なお、第1保護カバー部材1における第1粘着層5の配置面が部分61を有していてもよい。
【0082】
保護膜2の第3粘着層52側の面は、第3粘着層52が接していない領域において露出している。保護膜2が厚さ方向の通気性を有する場合には、当該領域を保護カバー部材51Aの通気領域とすることができる。通気領域の面積は、例えば、20mm2以下である。通気領域の面積が当該範囲にある保護カバー部材は、例えば、小径の開口を通常有するMEMSや回路基板への配置に適している。通気領域の面積の下限は、例えば、0.008mm2以上である。ただし、通気領域の面積は、保護カバー部材51Aが配置される対象物の種類によっては、より大きな範囲であってもよい。
【0083】
部分61の態様は、低粘着面及び/又は非粘着面である限り、上記例に限定されない。部分61の態様が異なる例を、
図8A~
図11に示す。
【0084】
図8A及び
図8Bの保護カバー部材51(51B)は、第3粘着層52における保護膜2側とは反対側の主面65に配置された部材53により部分61が構成される以外は、保護カバー部材51Aと同様の構成を有する。
【0085】
部材53は、主面65に配置された状態で、配置面60を構成する面に低粘着面及び/又は非粘着面を有する。部材53における配置面60を構成する面には、粘着層が形成されていなくてもよい。部材53は、低粘着性及び/又は非粘着性の材料により構成されていてもよい。低粘着性の材料とは、配置面60の他の部分62を構成する材料に比べて、低い粘着性を持つことを意味する。部材53は、例えばフィルムである。部材53を構成するフィルムは、その形状を除き、第1保護カバー部材1の基材フィルム3と同様の構成を有しうる。部材53は、耐熱性材料から構成されていてもよい。耐熱性材料の具体例は、保護膜2の説明において上述したとおりである。部材53の厚さは、例えば5~100μmである。
【0086】
図9A及び
図9Bの保護カバー部材51(51C)は、保護膜2の主面に見たときに、保護膜2の一部の領域66と重複して第3粘着層52が配置されており、保護膜2の他の一部の領域67と重複して第3粘着層52とは異なる部材54が配置されており、部分61が部材54により構成される以外は、保護カバー部材51Aと同様の構成を有する。
図9A及び
図9Bの配置面60は、第3粘着層52及び部材54により構成されている。ただし、配置面60は、第3粘着層52、部材54及び他の更なる部材により構成されていてもよい。
【0087】
部材54は、部材53と同様の構成を有しうる。部材54の厚さは、例えば5~100μmである。部材54の厚さは、第3粘着層52の厚さと同じであってもよい。
【0088】
図10の保護カバー部材51(51D)は、部分61の数及び配置が異なる以外は、保護カバー部材51Aと同様の構成を有する。保護カバー部材51Dの配置面60は、2つの部分61(61A,61B)を有する。各々の部分61A,61Bの形状は、保護カバー部材51Aの部分61と同じである。部分61A,61Bは、保護カバー部材51Dの中心を挟んで対向している。保護カバー部材51Dは、部分61A側及び部分61B側のいずれの側からも、よりスムーズな除去が可能である。
【0089】
図11の保護カバー部材51(51E)は、部分61の形状が異なる以外は、保護カバー部材51Aと同様の構成を有する。保護カバー部材51Eの部分61は、積層方向に見て、配置面60の外周63の一部の区間E-Fと、区間E-Fの両端(E,F)の各々から内方に延びて交わる2つの線分(H,G)により構成された両端(E,F)を結ぶ線64と、により囲まれている。線分(H,G)は、それぞれ、多角形の1つの頂点Iから延びる辺の一部に相当する。多角形は正方形又は矩形であり、線分(H,G)の交わる角度∠EIFは約90°である。ただし、多角形は正方形及び矩形に限定されず、角度∠EIFは90°でなくてもよい。
【0090】
保護カバー部材51A~51Eの形状は、積層方向に見て円である。ただし、保護カバー部材51の形状は、上記例に限定されず、例えば、積層方向に見て、正方形及び長方形を含む多角形、並びに楕円であってもよい。多角形は、正三角形、正五角形、正六角形、正七角形及び正八角形等の正多角形であってもよい。多角形の角は、丸められていてもよい。
【0091】
長方形の形状を有する保護カバー部材51の一例を、
図12に示す。
図12の保護カバー部材51Fは、積層方向に見た形状が長方形である以外は、保護カバー部材51Aと同様の構成を有する。保護カバー部材51Fの部分61は、積層方向に見て、長方形である。直線である線64は、積層方向に見て、保護カバー部材51Fの短辺の方向に延びている。部分61の形状は、この例に限定されない。また、線64は、積層方向に見て、上記短辺に非平行な直線であっても、非直線(例えば曲線)であってもよい。
【0092】
保護カバー部材51は、本発明の効果が得られる限り、上述した以外の任意の層を備えていてもよい。
【0093】
上述した以外の層を備える保護カバー部材51の一例を
図13に示す。
図13の保護カバー部材51Gの積層体は、基材フィルム55及び第4粘着層56を更に含む。基材フィルム55は、第4粘着層56によって保護膜2に接合されている。基材フィルム55における保護膜2側とは反対側の面には、第3粘着層52が設けられている。基材フィルム55は、保護膜2と第3粘着層52との間に位置している。基材フィルム55により、対象物の面から保護カバー部材51を除去する際に保護膜2が補強される。
【0094】
上述した以外の層を備える保護カバー部材51の別の一例を
図14に示す。
図14の保護カバー部材51Hは、第3粘着層52における基材フィルム55側とは反対側の主面65に配置された部材53により部分61が構成される以外は、保護カバー部材51Gと同様の構成を有する。部材53のとりうる構成は、上述のとおりである。
【0095】
基材フィルム55は、基材フィルム3と同様の構成を有しうる。第4粘着層56は、第2粘着層4と同様の構成を有しうる。
【0096】
保護カバー部材51の面積は、第1保護カバー部材1と同じ範囲をとりうる。ただし、保護カバー部材51の面積は、配置される対象物の種類によっては、上記範囲に比べて大きな値であってもよい。なお、保護カバー部材51の面積が小さいほど除去が困難である点は、第1保護カバー部材1と同じである。
【0097】
基材フィルム55を備える保護カバー部材51では、保護カバー部材1と同様に、保護膜2及び基材フィルム55の組み合わせによっては、例えば、高温下での処理により、部分61を上方に撓ませる(カール)させることができる。言い換えると、保護カバー部材51は、部分61が上方にカールしうる構成を有していてもよい。上方へのカールにより、保護カバー部材51の除去をより確実に実施できる。保護膜2及び基材フィルム55の組み合わせの例は、保護カバー部材1における保護膜2及び基材フィルム3の組み合わせの例と同じである。
【0098】
保護カバー部材51について、当該部材51をステンレス板の表面に固定し、25℃から260℃まで昇温速度1℃/秒で加熱処理したときに部分61に生じうるカールの程度は、カール率により表示して、110%以上であってもよく、130%以上、200%以上、250%以上、更には290%以上であってもよい。カール率は、ステンレス板の上記表面を基準とした部分61の最大高さ(加熱処理前をH0とし、加熱処理後をH1とする)から、式:カール率(%)=H1/H0×100により求められる。なお、保護カバー部材51のステンレス板への固定は、第3粘着層52により行う。
【0099】
保護カバー部材51が配置されうる対象物及び対象物の面、並びに保護カバー部材51が配置された対象物の処理等は、第1保護カバー部材1と同様である。
【0100】
保護カバー部材51は、例えば、保護膜2及び第3粘着層52の形状加工及び積層、並びに配置面60における部分61の形成により製造できる。
【0101】
保護カバー部材51は、第1保護カバー部材1と同様に、剥離紙や剥離ライナー等の剥離シート上に配置した状態で供給できる。その具体的な態様は、第1保護カバー部材1の場合と同様である。
【0102】
保護カバー部材51を使用する態様の一例を
図15に示す。
【0103】
図15(a)に示すように、開口32を有する対象物31の表面33に、開口32を保護膜2が覆うように保護カバー部材51を配置する。保護カバー部材51は、通常、積層方向に見て、第3粘着層52が開口32にかからないように配置される。次に、保護カバー部材51が配置された対象物31に対して所定の処理が実施される(
図15(b))。処理後、保護カバー部材51は表面33から除去される(
図15(c))。除去は、保護カバー部材51の配置面60における部分61側から実施できる。
【0104】
保護カバー部材51を使用する態様は、第1保護カバー部材1と同様に、上記例に限定されない。
【0105】
本開示は、以下の各項α~ζに示す第2保護カバー部材を開示する。
【0106】
[α]
開口を有する面を持つ対象物の前記面に配置されて、前記開口への異物の侵入を防ぐ保護カバー部材であって、
前記保護カバー部材が前記面に配置されたときに前記開口を覆う形状を有する保護膜と、
前記保護カバー部材を前記面に固定する粘着層(第3粘着層)と、を含む積層体から構成され、
前記保護カバー部材における前記面への配置面の一部が低粘着面及び/又は非粘着面である、保護カバー部材。
【0107】
[β]
前記配置面の一部は、前記粘着層における粘着性を低下させた処理面である、項αに記載の保護カバー部材。
【0108】
[γ]
前記配置面の一部は、前記粘着層における前記保護膜側とは反対側の主面に配置された更なる部材により構成される、項αに記載の保護カバー部材。
【0109】
[δ]
前記保護膜の主面に垂直に見たときに、
前記保護膜の一部の領域と重複して前記粘着層が配置されており、前記保護膜の他の一部の領域と重複して、前記粘着層とは異なる更なる部材が配置されており、
前記配置面の一部は、前記更なる部材により構成される、項αに記載の保護カバー部材。
【0110】
[ε]
前記更なる部材がフィルムである、項γ又はδに記載の保護カバー部材。
【0111】
[ζ]
前記配置面の一部は、前記積層体の積層方向に見て、前記配置面の外周の一部の区間と当該区間の両端を結ぶ線とにより囲まれている、項α~εのいずれかに記載の保護カバー部材。
【0112】
[部材供給用シート]
本発明の部材供給用シートの一例を
図16に示す。
図16の部材供給用シート11は、基材シート12と、基材シート12上に配置された複数の保護カバー部材1とを備える。部材供給用シート11は、保護カバー部材1を供給するためのシートである。部材供給用シート11によれば、例えば、対象物の面に配置する工程に対して、保護カバー部材1を効率的に供給できる。
【0113】
図16の例では、基材シート12上に2以上の保護カバー部材1が配置されている。基材シート12上に配置された保護カバー部材1の数は、1つであってもよい。
【0114】
基材シート12を構成する材料の例は、紙、金属、樹脂及びこれらの複合材料である。金属は、例えば、ステンレス及びアルミニウムである。樹脂は、例えば、PET等のポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィンである。ただし、基材シート12を構成する材料は、上記例に限定されない。
【0115】
保護カバー部材1は、当該部材1が備える粘着層(例えば、第1粘着層5)を介して基材シート12に配置されていてもよい。このとき、基材シート12における保護カバー部材1の配置面には、基材シート12からの離型性を向上させる離型処理が施されていてもよい。離型処理は、公知の方法により実施できる。
【0116】
保護カバー部材1は、基材シート12における保護カバー部材1の配置面に設けられた粘着層、典型的には弱粘着層、を介して基材シート12上に配置されていてもよい。
【0117】
基材シート12の厚さは、例えば、1~200μmである。
【0118】
図16の部材供給用シート11及び基材シート12は帯状である。複数の保護カバー部材1は、帯状の基材シート12上に一方向(基材シート12の延びる方向)に直列して配置されている。ただし、部材供給用シート11の形状、基材シート12の形状及び基材シート12における保護カバー部材1の配置の形態は、この例に限定されない。例えば、長方形及び正方形を含む多角形、円又は楕円等の各種の形状を有する枚葉状の部材供給用シート11及び/又は基材シート12であってもよい。この場合、複数の保護カバー部材1は、配置面に垂直に見て、千鳥状に配置されていてもよいし、保護カバー部材1の中心が配置面上の仮想の格子の交点(格子点)に位置するように規則的に配置されていてもよい。格子の例は、正方格子、斜方格子、菱形格子である。帯状の部材供給用シート11は、巻芯に巻回した巻回体(リール)としてもよい。なお、保護カバー部材1の中心は、基材シート12の表面に垂直に見たときの当該部材1の形状の重心として定めることができる。
【0119】
部材供給用シート11は、基材シート12上に保護カバー部材1を配置して製造できる。
【0120】
基材シート12上に配置された保護カバー部材は、第1保護カバー部材1に代わって、第2保護カバー部材51であってもよい。本発明の部材供給用シートがとりうる態様は、配置される保護カバー部材が第1保護カバー部材1の場合も、第2保護カバー部材51の場合も同じである。また、基材シート12上には、第1保護カバー部材1及び第2保護カバー部材51の双方が配置されていてもよい。本発明の部材供給用シートは、基材シート12と、基材シート12上に配置された1又は2以上の第1保護カバー部材1及び/又は第2保護カバー部材51とを備える。
【実施例】
【0121】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に示す態様に限定されない。
【0122】
本実施例において作製又は使用した保護膜、基材フィルム、粘着層及び保護カバー部材の評価法を説明する。
【0123】
[厚さ]
保護膜、基材フィルム及び粘着層の厚さは、3箇所の測定ポイントについてダイヤル式シックネスゲージ(ミツトヨ製、測定端子径Φ=10mm)により測定した値の平均値として求めた。測定温度は25±5℃、測定湿度は65±20%RHとした。
【0124】
[寸法]
保護カバー部材の寸法(奥行D1、D2及びD3並びに幅W1、W2及びW3)は、測定投影機(ミツトヨ製、PJ-H30)により測定し、確認した。測定温度は25±5℃、測定湿度は65±20%RHとした。また、面積A1、A2及びA3を、確認した各奥行及び各幅から算出した(面積A=奥行D×幅W)。
【0125】
[線膨張係数]
保護膜及び基材フィルムの線膨張係数α(160-200℃)は、熱分析装置(NETZSCH製、TMA4000SA)を用いた熱機械分析(TMA)により評価した。試験片の形状は、幅4mm×長さ25mmの長方形とした。準備した試験片を上記熱分析装置に取り付け、一定の引張荷重(0.5gf)を試験片の長さ方向に加えながら25℃から260℃まで昇温速度10℃/分で加熱して得たTMA曲線(横軸:温度、縦軸:試験片の長さ)から、以下の式により、線膨張係数を算出した。試験片を取り付けるチャック間の距離は20mmとした。また、保護膜及び基材フィルムのMD及びTDのそれぞれの方向を試験片の長さ方向として求めた線膨張係数の平均値を、保護膜及び基材フィルムの線膨張係数αとした。下記式におけるT1は160℃、T2は200℃、L0は試験片の初期長さ、L1は温度T1における試験片の長さ、L2は温度T2における試験片の長さである。
【0126】
【0127】
[通気度]
保護膜の厚さ方向の通気度は、JIS L1096に定められた通気性測定B法(ガーレー形法)に準拠して、ガーレー通気度として求めた。
【0128】
[カール率]
対象物の面に配置した保護カバー部材を加熱処理したときに、当該部材の一部の領域又は部分が対象物の面から離れる方向(上方)に撓む(カールする)程度であるカール率は、以下のように評価した。
【0129】
作製した保護カバー部材を、保護膜とは反対側の面において露出している粘着層を介してステンレス板の表面に固定した。次に、ステンレス板ごと保護カバー部材を静止型リフロー炉(奥原電気製、SAR500A)に収容し、25℃から260℃まで昇温速度1℃/秒で加熱処理した。加熱処理の前後における上記一部の領域又は部分のカールの程度を、保護カバー部材の側方より、デジタルマイクロスコープ(ニコン製、PMFSC)を用いて観察した。得られたマイクロスコープ像から、ステンレス板の上記表面を基準とした保護カバー部材のカール領域(カール部分)の最大高さ(加熱処理前:H0、加熱処理後:H1)を求め、以下の式により、保護カバー部材のカール率を算出した。なお、比較例1,2の保護カバー部材では、上記加熱処理によって上方に撓んだ領域及び部分は生じなかった。このため、比較例1,2の保護カバー部材のカール率は、H0=H1である100%とした。
カール率(%)=H1/H0×100
【0130】
[剥離作業性]
保護カバー部材の剥離作業性は、以下のように評価した。作製した保護カバー部材を、保護膜とは反対側の面において露出している粘着層を介して、ポリ塩化ビフェニル板の表面に固定した。次に、ポリ塩化ビフェニル板ごと保護カバー部材を静止型リフロー炉(奥原電気製、SAR500A)に収容し、25℃から260℃まで昇温速度1℃/秒で加熱処理した。次に、25℃まで自然冷却した後、先端部の幅が1mmである金属製のピンセットにより保護カバー部材を把持してポリ塩化ビフェニル板から剥離して除去する剥離作業を実施し、当該作業によってポリ塩化ビフェニルの固定面に傷が生じたかを目視により確認した。傷が生じなかった場合を可(〇)、傷が生じた場合を不可(×)とした。なお、実施例1~5の保護カバー部材は、第1部分8Aにおける外方に突出した領域を把持することで剥離した。実施例6の保護カバー部材は、保護膜及び部分61を把持することで剥離した。比較例1の保護カバー部材は、第1部分8A及び部分61を有さないため、部材の側面を把持することで剥離した。比較例2の保護カバー部材は、保護膜における外方に突出した部分を把持することで剥離を試みた。
【0131】
[保護膜の準備]
保護膜として、PTFE延伸多孔質膜Aを以下のように準備した。PTFEファインパウダー(ダイキン工業製、ポリフロンPTFE F-104)100重量部と、成形助剤としてn-ドデカン(ジャパンエナジー製)20重量部とを均一に混合し、得られた混合物をシリンダーを用いて圧縮した後、ラム押出成形して、シート状の混合物を形成した。次に、形成したシート状の混合物を一対の金属ロールを通して厚さ0.15mmに圧延し、更に150℃の加熱により成形助剤を除去して、帯状のPTFEシート成形体を形成した。次に、形成したシート成形体を、延伸温度360℃、延伸倍率10倍で長手方向に延伸した後、延伸温度150℃、延伸倍率10倍で幅方向に延伸して、PTFE延伸多孔質膜Aを得た。PTFE延伸多孔質膜Aの厚さは25μm、厚さ方向の通気度は、ガーレー通気度により表示して0.2秒/100mL、線膨張係数は-393×10-6/℃であった。
【0132】
別の保護膜としてPTFE延伸多孔質膜Bを以下のように準備した。PTFEディスパージョン(PTFE粉末の濃度40重量%、PTFE粉末の平均粒径0.2μm、ノニオン性界面活性剤をPTFE100重量部に対して6重量部含有)に、フッ素系界面活性剤(DIC社製、メガファックF-142D)をPTFE100重量部に対して1重量部添加した。次に、PTFEディスパージョンに長尺のポリイミドフィルム(厚さ125μm)を浸漬して引き上げ、当該フィルム上にPTFEディスパージョンの塗布膜を形成した。このとき、計量バーにより、塗布膜の厚さを20μmとした。次に、塗布膜を100℃で1分間、続いて390℃で1分間加熱することにより、ディスパージョンに含まれる水を蒸発させて除去するとともに、残るPTFE粒子同士を互いに結着させてPTFE膜を得た。上記浸漬及び加熱をさらに2回繰り返した後、ポリイミドフィルムからPTFE膜(厚さ25μm)を剥離させた。次に、得られたPTFE膜をテンターによって幅方向に2倍の延伸倍率で延伸した。さらに、長手方向に2.5倍の圧延倍率でPTFE膜を圧延した。これにより、PTFE延伸多孔質膜Bを得た。ロール圧延装置におけるロールの設定温度は170℃とした。延伸温度は170℃とした。PTFE延伸多孔質膜Bの厚さは10μm、厚さ方向の通気度は、ガーレー通気度により表示して100秒/100mL、線膨張係数は-750×10-6/℃であった。
【0133】
[基材フィルムの準備]
基材フィルムとして、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン製、カプトン)を準備した。基材フィルムの厚さは25μm、線膨張係数は14×10-6/℃であった。
【0134】
(実施例1)
PTFE延伸多孔質膜A及び基材フィルムをシリコーン粘着剤(ダウ・東レ製、過酸化物硬化型であるSH4280、過酸化物の配合量1.2重量部)により接合して積層体とした。シリコーン粘着剤の硬化条件は、200℃及び3分とした。シリコーン粘着剤による粘着層(第2粘着層4)の厚さは25μmとした。次に、積層体を幅10mm及び長さ100mmの長方形に切り出して、第1部分8Aを形成した。次に、幅10mm及び長さ90mmの長方形に切り出した両面粘着テープ(日東電工製、No.585、厚さ50μm)を第1粘着層5として基材フィルムに接合した。第1粘着層5の接合は、第1部分8Aと第1粘着層5との間で一方の短辺及び双方の長辺が一致するように実施した。このようにして、
図4A,4Bに示す長方形の保護カバー部材(第1部分8Aにおいて外方に突出している領域の幅W
1は10mm、奥行D
1は10mm、面積A
1は100mm
2)を得た。なお、厚さ方向の通気性を有する保護膜を使用したが、保護カバー部材のカール率及び剥離作業性の評価が目的であったため、第2粘着層4、基材フィルム及び第1粘着層5は厚さ方向の通気性を有さない形状とした。このため、作製した保護カバー部材は、厚さ方向の通気性を有していない(以降の実施例及び比較例においても同様である)。
【0135】
(実施例2)
実施例1と同様に作製した積層体を幅5mm及び長さ50mmの長方形に切り出して、第1部分8Aを形成した。次に、幅5mm及び長さ45mmの長方形に切り出した両面粘着テープ(日東電工製、No.585、厚さ50μm)を第1粘着層5として基材フィルムに接合した。第1粘着層5の接合は、第1部分8Aと第1粘着層5との間で一方の短辺及び双方の長辺が一致するように実施した。このようにして、
図4A,4Bに示す長方形の保護カバー部材(第1部分8Aにおいて外方に突出している領域の幅W
1は5mm、奥行D
1は5mm、面積A
1は25mm
2)を得た。
【0136】
(実施例3)
実施例1と同様に作製した積層体を幅2.5mm及び長さ25mmの長方形に切り出して、第1部分8Aを形成した。次に、幅2.5mm及び長さ24.5mmの長方形に切り出した両面粘着テープ(日東電工製、No.585、厚さ50μm)を第1粘着層5として基材フィルムに接合した。第1粘着層5の接合は、第1部分8Aと第1粘着層5との間で一方の短辺及び双方の長辺が一致するように実施した。このようにして、
図4A,4Bに示す長方形の保護カバー部材(第1部分8Aにおいて外方に突出している領域の幅W
1は2.5mm、奥行D
1は0.5mm、面積A
1は1.25mm
2)を得た。
【0137】
(実施例4)
実施例1と同様に作製した積層体を幅1.0mm及び長さ10mmの長方形に切り出して、第1部分8Aを形成した。次に、幅1.0mm及び長さ9.5mmの長方形に切り出した両面粘着テープ(日東電工製、No.585、厚さ50μm)を第1粘着層5として基材フィルムに接合した。第1粘着層5の接合は、第1部分8Aと第1粘着層5との間で一方の短辺及び双方の長辺が一致するように実施した。このようにして、
図4A,4Bに示す長方形の保護カバー部材(第1部分8Aにおいて外方に突出している領域の幅W
1は1.0mm、奥行D
1は0.5mm、面積A
1は0.5mm
2)を得た。
【0138】
(比較例1)
実施例1と同様に作製した積層体を幅10mm及び長さ100mmの長方形に切り出した。次に、幅10mm及び長さ100mmの長方形に切り出した両面粘着テープ(日東電工製、No.585、厚さ50μm)を粘着層として基材フィルムに接合した。粘着層の接合は、積層体の積層方向に見て、積層体の外周と粘着層の外周とが一致するように実施した。このようにして、外方に突出している領域を持たない長方形の保護カバー部材を得た。
【0139】
(変形例)
実施例1と同様に作製した積層体を幅10mm及び長さ100mmの長方形に切り出した。次に、幅10mm及び長さ100mmの長方形に切り出した両面粘着テープ(日東電工製、No.585、厚さ50μm)を第3粘着層52として基材フィルムに接合した。第3粘着層52の接合は、積層体の積層方向に見て、積層体の外周と第3粘着層52の外周とが一致するように実施した。次に、一辺10mmの正方形の形状を有する更なるポリイミドフィルム(東レ・デュポン製、カプトン、厚さ25μm)を部材53として第3粘着層52の露出面に配置した。配置は、更なるポリイミドフィルムの三辺と第3粘着層52の一方の短辺及び双方の長辺とが一致するように実施した。このようにして、部材53であるポリイミドフィルムによって非粘着面である部分61が粘着面60に形成された、
図14に示す長方形の保護カバー部材(部分61の幅W
2は10mm、奥行D
2は10mm、面積A
2は100mm
2)を得た。
【0140】
(比較例2)
基材フィルム103(幅10mm×長さ100mmの長方形)の一方の主面に、実施例1で使用したシリコーン粘着剤により、保護膜101であるPTFE延伸多孔質膜A(幅10mm及び長さ120mmの長方形)を接合して積層体を得た。シリコーン粘着剤の硬化条件は、実施例1と同じとした。シリコーン粘着剤による粘着層102の厚さは25μmとした。接合は、積層体の積層方向に見て、基材フィルム103及び保護膜101の長辺及び中心が一致するように実施した。次に、幅10mm及び長さ100mmの長方形に切り出した両面粘着テープ(日東電工製、No.585、厚さ50μm)を粘着層104として基材フィルムに接合した。粘着層104の接合は、積層方向に見て、基材フィルム103の外周と粘着層104の外周とが一致するように実施した。このようにして、積層方向に見て、基材フィルム103及び粘着層102,104の外周から外方に突出した部分105を保護膜101が有する保護カバー部材100を得た(
図17A及び
図17B参照)。保護膜101における突出した部分105の幅W
3は10mm、奥行D
3は10mm、面積A
3は100mm
2であった。
【0141】
(実施例5)
保護膜としてPTFE延伸多孔質膜Aの代わりにPTFE延伸多孔質膜Bを用いた以外は実施例1と同様にして、
図4A,4Bに示す長方形の保護カバー部材(第1部分8Aにおいて外方に突出している領域の幅W
1は10mm、奥行D
1は10mm、面積A
1は100mm
2)を得た。
【0142】
作製した各保護カバー部材について、評価結果を以下の表1に示す。
【0143】
【0144】
表1に示すように、実施例及び変形例の保護カバー部材では剥離作業性を確保できた。剥離作業性は、カール率が大きいほど良好であった。実施例の保護カバー部材の中では、第1部分8Aにおける外方に突出した領域の面積が大きいほど、また、保護膜と基材フィルムとの線膨張係数の差が大きいほど、カール率は大きくなった。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明の保護カバー部材は、例えば、MEMS等の半導体素子を備える回路基板の製造に利用できる。
【符号の説明】
【0146】
1,1A,1B,1C,1D,1E 保護カバー部材
2 保護膜
3 基材フィルム
4 第2粘着層
5 第1粘着層
6 外周面
7 段差
8A 第1部分
8B 第2部分
9 外周
10 外周
11 部材供給用シート
12 基材シート