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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20241015BHJP
   G03G 21/20 20060101ALI20241015BHJP
   B65H 29/58 20060101ALI20241015BHJP
   B65H 7/02 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
G03G21/00 370
G03G21/20
B65H29/58 B
B65H7/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020121234
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018256
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉田 宗人
(72)【発明者】
【氏名】望月 桂介
(72)【発明者】
【氏名】藤本 徹一郎
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-154455(JP,A)
【文献】特開2007-187751(JP,A)
【文献】特開2016-102861(JP,A)
【文献】特開2007-003913(JP,A)
【文献】特開2019-162856(JP,A)
【文献】特開2005-037871(JP,A)
【文献】特開2004-069910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 21/20
B65H 29/58
B65H 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報に応じたトナー像が形成される感光ドラムを有し、シートに未定着のトナー像を形成する画像形成手段と、
シート収納部と、
前記シート収納部からシートを給送する給送手段と、
前記シート収納部から給送されたシートを前記画像形成手段の画像形成位置へ搬送する搬送手段と、
前記画像形成手段によってトナー像が形成されたシートを加熱及び加圧して、トナー像をシートに定着させる定着用ローラを有する定着手段と、
トナー像が定着されたシートを装置外へ排出する排出手段と、
前記搬送手段から前記排出手段までのシート搬送路である第1搬送路と、
前記定着手段のシート搬送方向下流で第1搬送路から分岐し、前記画像形成手段のシート搬送方向上流で前記第1搬送路に合流する第2搬送路と、
前記感光ドラムと前記搬送手段と前記定着用ローラを駆動する単一のモータと、
前記第1搬送路の前記搬送手段と前記画像形成手段の間に配置されており、シートの坪量を検知するための検知手段と、
制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
シートが前記画像形成位置を第1回目に通過する際にシートに対してトナー像を形成し、前記定着手段でトナー像をシートに定着した後、排出する第1モードと、
シートが前記画像形成位置を第1回目に通過する際にはシートに対してトナー像の形成を行わず、前記定着手段でシートを加熱し、前記第2搬送路を介してシートが前記画像形成位置に第2回目に搬送されて来て通過する際に、シートに対してトナー像を形成し、前記定着手段でトナー像をシートに定着した後、排出する第2モードと、
を実行可能であり、
複数枚のシートに連続して画像形成する場合であって、1枚目のシートが前記画像形成位置を前記第1回目に通過する前に前記検知手段によって検知した前記1枚目のシートの坪量が基準値より大きい場合、
前記制御手段は、前記1枚目のシートに画像形成する際、前記1枚目のシートを第1搬送速度で搬送するように前記モータを制御しつつ、前記定着手段を前記1枚目のシートの坪量に応じた温度で前記定着するように設定して前記第2モードを実行し、
2枚目のシートに画像形成する際、前記1枚目のシートが排出されるまで待機させ、前記1枚目のシートの排出後に前記第1搬送速度より遅い第2搬送速度で前記2枚目のシートを搬送するように前記モータを制御してシートの搬送を開始させ、前記定着手段を前記1枚目のシートの坪量に応じた温度に設定して前記第1モードを実行する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートに画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レーザプリンタ等の画像形成装置は、感光体上に形成されたトナー像をシートへ転写させた後、シート上のトナー像を加熱及び加圧してシートに定着させる。このような画像形成装置において、トナー像をシートに定着させる際の適切な定着条件は、シートの特性に応じて変化する。例えば、画像形成装置におけるトナー像の定着条件としては、トナー像を定着させる際の温度やシートの搬送速度等が挙げられる。また、例えば、シートの特性としては、坪量や表面性等が挙げられる。
【0003】
このような画像形成装置において、シートの特性に応じた適切な定着条件ではない定着条件でトナー像を定着させようとすると、トナー像がシートに十分に定着しない定着不良が発生する場合がある。例えば、坪量が大きいシートは熱容量も大きいため、坪量が大きいシートに画像を形成する際に坪量が小さいシートと同じ定着条件でトナー像を定着させようとすると、トナーに与えられる熱量が不足して、トナー像がシートに十分に定着しない場合がある。
【0004】
従来、シートの坪量を検知して、シートの坪量が大きい場合にはシートの搬送速度を低下させることでトナー像の定着不良を抑制することが可能な画像形成装置が開示されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の画像形成装置は、シートの坪量を検知してからシートへのトナー像の形成前に、シートの搬送を一旦停止させる。また、特許文献1に記載の画像形成装置は、検知した坪量が大きい場合にはシートの搬送停止中に感光ドラムの回転を減速させ、減速させた感光ドラムに応じた小さい搬送速度でシートの搬送を再開する。これにより、特許文献1に記載の画像形成装置は、坪量が大きいシートに対して、坪量が小さいシートよりも小さな搬送速度でトナー像を定着させることで、トナー像の定着不良の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-102861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の画像形成装置では、トナー像の定着不良を抑制するために感光ドラムとシートを搬送するための各ローラとをそれぞれ個々に加減速の制御を行う必要があり、制御部での処理負担が大きい。
【0007】
本発明は、トナー像の定着不良を抑制することが可能な画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、画像情報に応じたトナー像が形成される感光ドラムを有し、シートに未定着のトナー像を形成する画像形成手段と、シート収納部と、前記シート収納部からシートを給送する給送手段と、前記シート収納部から給送されたシートを前記画像形成手段の画像形成位置へ搬送する搬送手段と、前記画像形成手段によってトナー像が形成されたシートを加熱及び加圧して、トナー像をシートに定着させる定着用ローラを有する定着手段と、トナー像が定着されたシートを装置外へ排出する排出手段と、前記搬送手段から前記排出手段までのシート搬送路である第1搬送路と、前記定着手段のシート搬送方向下流で第1搬送路から分岐し、前記画像形成手段のシート搬送方向上流で前記第1搬送路に合流する第2搬送路と、前記感光ドラムと前記搬送手段と前記定着用ローラを駆動する単一のモータと、前記第1搬送路の前記搬送手段と前記画像形成手段の間に配置されており、シートの坪量を検知するための検知手段と、制御手段と、を備え、前記制御手段は、シートが前記画像形成位置を第1回目に通過する際にシートに対してトナー像を形成し、前記定着手段でトナー像をシートに定着した後、排出する第1モードと、シートが前記画像形成位置を第1回目に通過する際にはシートに対してトナー像の形成を行わず、前記定着手段でシートを加熱し、前記第2搬送路を介してシートが前記画像形成位置に第2回目に搬送されて来て通過する際に、シートに対してトナー像を形成し、前記定着手段でトナー像をシートに定着した後、排出する第2モードと、を実行可能であり、複数枚のシートに連続して画像形成する場合であって、1枚目のシートが前記画像形成位置を前記第1回目に通過する前に前記検知手段によって検知した前記1枚目のシートの坪量が基準値より大きい場合、前記制御手段は、前記1枚目のシートに画像形成する際、前記1枚目のシートを第1搬送速度で搬送するように前記モータを制御しつつ、前記定着手段を前記1枚目のシートの坪量に応じた温度で前記定着するように設定して前記第2モードを実行し、2枚目のシートに画像形成する際、前記1枚目のシートが排出されるまで待機させ、前記1枚目のシートの排出後に前記第1搬送速度より遅い第2搬送速度で前記2枚目のシートを搬送するように前記モータを制御してシートの搬送を開始させ、前記定着手段を前記1枚目のシートの坪量に応じた温度に設定して前記第1モードを実行する、ことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トナー像の定着不良の抑制を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態に係る画像形成装置の概略図。
図2】定着装置を示す断面図。
図3】画像形成装置の制御構成を示すブロック図。
図4】画像形成ジョブを示すフローチャート。
図5】第2の実施の形態に係る画像形成ジョブを示すフローチャート。
図6】第3の実施の形態に係る画像形成ジョブを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各実施の形態に係る画像形成装置について、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、本技術の適用範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
<第1の実施の形態>
[画像形成装置の概略構成]
図1は、第1の実施の形態に係る画像形成装置100を示す概略図である。本実施の形態では、シート(記録材)に画像を形成する電子写真方式のレーザビームプリンタである画像形成装置100を例に説明をする。なお、シートとしては、普通紙や厚紙等の紙、プラスチックフィルム、布、コート紙のような表面処理が施されたシート材、封筒やインデックス紙等の特殊形状のシート材等、サイズ及び材質の異なる多様なシートを使用可能である。
【0014】
画像形成装置100は、シートを給送するシート給送部10、シートを搬送するシート搬送装置20、シートにトナー像を形成する画像形成部30、トナー像をシートに定着させる定着装置40、モータ50、及び制御部70を備えている。また、画像形成装置100は、搬送されるシートを検知するシートセンサ80、及び搬送されるシートの特性を検知するメディアセンサ60を備えている。
【0015】
シート給送部10は、装置本体に対して着脱可能に設けられ、シートPを積載して収納する給送カセット11と、給送カセット11に収納されているシートを給送する給送ローラ12と、を有する。給送手段としての給送ローラ12は、給送カセット11内に収納されているシートPの最上位シートに当接しながら回転して、シートを1枚ずつ分離して給送する。
【0016】
また、シート給送部10は、シートを積載して支持可能な手差しトレイ13と、手差しトレイ13に支持されているシートを給送する給送ローラ15,16と、を有する。給送手段としての給送ローラ15は、手差しトレイ13に支持されているシートの最上位シートに当接しながら回転してシートを1枚ずつ分離し、給送手段としての給送ローラ16と共にシートを給送する。
【0017】
搬送手段としてのシート搬送装置20は、搬送ローラ対21と、排出ローラ対22と、反転搬送ローラ対23,25と、を有する。搬送ローラ対21は、対向配置されて回転する2つのローラによって構成されており、これら2つのローラの間に形成されたニップ部によって、第1搬送路としてのシート搬送路2に沿ってシートを挟持搬送する。排出ローラ対22、及び反転搬送ローラ対23,25については、後述する。
【0018】
画像形成手段としての画像形成部30は、感光ドラム33と、帯電ローラ35と、レーザスキャナ32と、現像ローラ36と、転写ローラ37と、クリーニング装置38と、を有している。本実施の形態においては、感光ドラム19、帯電ローラ35、現像ローラ36及びクリーニング装置38が、プロセスカートリッジ31として、画像形成装置100の装置本体に対して着脱可能に設けられている。
【0019】
像担持体としての感光ドラム33は、図1における反時計方向に回転する。帯電装置としての帯電ローラ35は、帯電電圧の印加により感光ドラム33の周面を所定の極性・電位に一様に帯電(一次帯電)させる。露光装置としてのレーザスキャナ32は、不図示のイメージスキャナや外部コンピュータ等の外部機器から入力された画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応してオン/オフ変調したレーザ光を出力する。レーザスキャナ32は、このレーザ光によって感光ドラム33の周面を露光しながら走査して、感光ドラム33の周面の露光明部の電荷を除電することにより、感光ドラム33の周面に入力された画像情報に応じた静電潜像を形成する。
【0020】
現像装置としての現像ローラ36は、感光ドラム33に対向配置されており、トナー(現像剤)を表面に担持しながら回転することで、感光ドラム33の周面にトナーを供給し、感光ドラム33の周面に形成された静電潜像をトナー像として順次に現像する。本実施の形態の画像形成装置100では、静電潜像の露光明部にトナーを付着させて現像する反転現像方式が用いられている。
【0021】
転写装置としての転写ローラ37は、感光ドラム33に対向配置されており、シート搬送路2上において、搬送ローラ対21よりもシート搬送方向(図1に示すA方向)の下流に、感光ドラム33との間に転写ニップTを形成している。転写ローラ37は、不図示の転写電圧印加電源によってトナーとは逆極性の転写電圧が印加されることにより、感光ドラム33の周面に形成されたトナー像を、転写ニップTで挟持搬送されるシートPの表面へ静電的に転写する。言い換えると、転写ローラ37は、像担持体上のトナー像を第1搬送路上の転写ニップTにおいてシートに転写し、シートに未定着のトナー像を形成する。クリーニング装置38は、クリーニングブレード38aを有しており、シートPへトナー像が転写された後、感光ドラム33の周面の残トナーや紙粉等をクリーニングブレード38aによって除去する。
【0022】
なお、本実施の形態では、画像形成装置100は、感光ドラムからシートにトナー像を直接転写する方式を採用しているが、これに限らず、感光体上に形成したトナー像を中間転写ベルト等の中間転写体を介してシートに転写する方式を採用してもよい。
【0023】
定着手段としての定着装置40は、定着部材としての回転体42と、シート搬送路2を挟んで回転体42に対向配置されて、回転体42との間にニップ部としての定着ニップFを形成する加圧部材としての加圧ローラ41と、を有している。定着ニップFは、シート搬送路2上において、転写ニップTよりもシート搬送方向の下流に配置されており、定着装置40は、定着ニップFにおいて挟持されたシートを加熱及び加圧して、トナー像をシートに定着させる。定着装置40の詳細は、後述する。
【0024】
排出ローラ対22は、シート搬送路2上における定着装置40の下流に配置されている。排出ローラ対22は、対向配置されて回転する2つのローラによって構成されており、これら2つのローラの間に形成されたニップ部によってシートを挟持搬送して、シートを排出トレイ3へ排出する。
【0025】
シート搬送路2上における搬送ローラ対21と転写ニップTとの間には、シートセンサ80及びメディアセンサ60が設けられている。シートセンサ80は、例えば、透過型の光学センサ等からなり、搬送ローラ対21によって搬送されるシートで光軸が遮光されると、検知信号を出力する。
【0026】
メディアセンサ60は、シートに向けて音波(超音波)を出力する出力部(送信部)61と、音波が入力される入力部(受信部)62と、を有し、シート搬送路2を挟むように出力部61と入力部62とが配置されている。メディアセンサ60の出力部61と入力部62とは同様の構成であり、それぞれ機械的変位と電気信号との相互変換素子である圧電素子(ピエゾ素子ともいう)と、電極端子と、を有する。
【0027】
出力部61では、電極端子に所定の周波数のパルス電圧が入力されることによって圧電素子が発振して音波が発生し、発生した音波が空気中を伝搬する。音波がシート搬送路2上のシートに到達すると、音波によってシートが振動する。シートの振動は空気中を音波として伝搬し、入力部62に到達する。このように、出力部61で発生させた音波が、シートを介して入力部62に伝搬する。入力部62の圧電素子は、入力された音波の振幅に応じた出力電圧を電極端子に発生させる。出力部61が出力する音波の周波数は、出力部61及び入力部62の構成、検知精度等に応じて適切な周波数が予め設定されている。本実施の形態では、出力部61は、32kHzの周波数特性を持つ超音波を出力する。
【0028】
このように構成されて、本実施の形態のメディアセンサ60は、搬送ローラ対21によって搬送されるシートの坪量を検知する。なお、メディアセンサが検知するシートの特性は坪量に限らず、例えば、シートの表面性(表面粗さや光沢度等)であってもよい。
【0029】
シート給送部10により給送されたシートは、搬送ローラ対21によりシート搬送路2に沿って搬送されながら、シートセンサ80及びメディアセンサ60によって検知され、トナー像が形成される画像形成位置である転写ニップTへ向けて搬送される。シートは、転写ニップTで第1面(表面)に未定着のトナー像が転写されながら更に搬送されて、トナー像が定着される定着位置である定着ニップFで加熱及び加圧されてトナー像が定着される。トナー像が定着されたシートは、シート搬送路2に沿って更に搬送され、排出ローラ対22によって排出トレイ3に排出される。
【0030】
以上の動作を繰り返すことで、画像形成装置100は、シート給送部10のシートに対して次々と画像形成を行う。例えば、画像形成装置100は、A4サイズ(210mm×297mm)の普通紙に対し、230mm/secの搬送速度で毎分約43枚の白黒画像をプリントすることが可能となっている。なお、画像形成装置は、これに限らず、カラー印刷や多色印刷が可能であってもよい。
【0031】
また、画像形成装置100には、シートの第1面とは反対の第2面(裏面)に画像を形成する場合にシートが搬送される、第2搬送路としての反転搬送路7が形成されている。反転搬送路7は、シート搬送路2上のシート搬送方向における定着装置40よりも下流でシート搬送路2から分岐し、シート搬送路2上のシート搬送方向における搬送ローラ対21よりも上流でシート搬送路2に合流するように形成されている。言い換えると、反転搬送路7は、定着装置40のシート搬送方向下流でシート搬送路2から分岐し、画像形成部30のシート搬送方向上流でシート搬送路2に合流する。
【0032】
シートの第1面とは反対の第2面(裏面)に画像を形成する場合、定着ニップFで第1面のトナー像が定着されたシートは、排出ローラ対22に挟持された状態で排出ローラ対22が逆転するスイッチバック動作により先端と後端とが入れ替えられる。先端と後端とが入れ替えられたシートは、反転搬送路7上の反転搬送ローラ対23,25によって反転搬送路7に沿って搬送され、再び搬送ローラ対21によってシート搬送路2に沿って転写ニップTへ向けて搬送される。
【0033】
駆動手段としてのモータ50は、給送ローラ12,15,16、シート搬送装置20の各ローラ対、感光ドラム33、帯電ローラ35、現像ローラ36、転写ローラ37及び加圧ローラ41を駆動する単一のモータとして構成されている。このため、モータ50によって駆動される各部は、互いに同期して制御される。これにより、本実施の形態の画像形成装置100は、装置の小型化やコストの抑制が可能であると共に、複数のモータを個々に加減速制御する必要がなくなり、制御部70での処理負担を軽減することができる。
【0034】
[定着装置の詳細]
次に、図2を参照しながら、定着装置40の詳細について説明する。定着装置40は、回転体42と、加圧ローラ41と、加熱体としてのヒータ43と、温度検知手段としてのサーミスタ45と、を有している。回転体42は、例えば、可撓性を有する耐熱性フィルムによって、無端ベルト状(もしくは円筒状)に形成されている。ヒータ43は、ヒータ保持部材46によって保持され、ヒータ保持部材46は金属ステー部材47によって保持されている。金属ステー部材47と加圧ローラ41との間には、不図示の加圧機構によって加圧力が加えられており、回転体42を介して加圧ローラ41をヒータ43に加圧することにより、回転体42と加圧ローラ41との間に定着ニップFが形成されている。
【0035】
回転体42は、加圧ローラ41に圧接されており、加圧ローラ41がモータ50の回転駆動力によって回転すると、定着ニップFでの加圧ローラ41との摩擦力によって加圧ローラ41と共に回転する。温度検知素子としてのサーミスタ45は、ヒータ43に当接するように配置されており、ヒータ43の温度に応じた信号を出力する。なお、定着装置40は、ヒータ43が直接回転体42に接触するものに限らず、鉄合金やアルミ等の熱伝導性が高いシート材を介して回転体42に接触する構成であってもよい。
【0036】
[制御構成]
図3は、画像形成装置100の制御構成を示すブロック図である。画像形成装置100の各部を制御する制御手段としての制御部70は、CPU71a、ROM71b、RAM71c、I/O71d等のハードウェアを有して構成される。CPU71aは、ROM71bに記憶された各種のプログラムを実行することにより、RAM71cを作業領域として用いながら、画像形成に係わる画像形成装置100の各部の動作を制御する。制御部70には、シートセンサ80、メディアセンサ60の入力部62、サーミスタ45、及びI/O71dに接続された図示しない外部装置等からの信号が入力される。制御部70は、これらの入力信号に基づいて、モータ50、画像形成部30、ヒータ43、メディアセンサ60の出力部61を制御する。
【0037】
例えば、制御部70は、サーミスタ45からの入力信号に基づいて、サーミスタ45によって検知されるヒータ43の温度が、後述する目標温度となるようにヒータ43への通電を制御する。また、例えば、制御部70は、外部装置からの入力信号(画像形成指示信号、給送指示信号)に基づいてモータ50や画像形成部30を動作させ、シートに画像を形成する画像形成ジョブを開始する。
【0038】
また、例えば、制御部70は、シートセンサ80からの入力信号に基づいて給送ローラ12によって給送されたシートの先端を検知し、シート先端の検知タイミングに基づいて、レーザスキャナ32による静電潜像の形成を開始するタイミングを調整する。例えば、制御部70は、シートの先端が転写ニップTに到達するタイミングに合わせて、感光ドラム33の周面上に形成されたトナー像の先端が転写ニップTに到達するように、画像形成部30を制御している。
【0039】
また、制御部70は、メディアセンサ60の入力部62からの入力信号に基づいて、搬送ローラ対21によって搬送されるシートPの特性、本実施の形態においては、シートPの坪量を検知(測定)する。以下、メディアセンサ60によってシートPの坪量を検知する構成について説明する。制御部70は、超音波の入出力制御やシートPの坪量を判別する処理(以下、坪量判別処理という)を行う坪量検知制御部72を有している。制御部70は、坪量検知制御部72での演算結果に応じて、画像形成における画像形成条件(定着条件)の制御を行っている。なお、画像形成条件とは、例えば、転写電圧、トナー像をシートに定着させる際の温度(以下、定着温度)、シートの搬送速度等、画像形成を行う際の各条件をいう。
【0040】
制御部70のCPU71aは、シートPの坪量の測定の開始を示す信号を坪量検知制御部72の駆動信号制御部741に出力する。駆動信号制御部741は、CPU71aから上記信号が入力されると、所定の周波数の超音波を発生させるために、駆動信号生成部731に対して、超音波出力信号を生成するよう指示する。駆動信号生成部731は、シートPやシート搬送路2の周囲の部材による反射波等の外乱の影響を低減するために、出力部61が出力した直接波のみを入力部62で検知できるように、一定の周期のパルス波を出力する。これは、バースト波と呼ばれている。本実施の形態では、駆動信号生成部731は、1回の測定で、32kHzのパルス波を5パルス、連続して出力する。駆動信号生成部731では、このように、予め設定された周波数を持つ信号を生成し、増幅器732に出力する。増幅器732は、駆動信号生成部731から入力された所定の周波数を持つ信号のレベル(電圧値)を増幅し、出力部61へ出力する。出力部61は、増幅器732から入力された信号に応じて圧電素子が発信して超音波を発生させる。
【0041】
入力部62には、出力部61が出力した超音波、又は出力部61が出力してシートPを透過した超音波が入力され、入力された超音波に応じた信号を坪量検知制御部72の検知回路742に出力する。検知回路742は、信号の増幅機能と信号の整流機能を有しており、シートPが出力部61と入力部62との間に存在しない状態と、存在する状態とで増幅率を変更できるようにしている。検知回路742は、入力された信号を増幅、整流してA-D変換部743に出力する。A-D変換部743は、検知回路742から入力された信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換し、ピーク抽出部744に出力する。ピーク抽出部744は、A-D変換部743から入力されたデジタル信号に基づいて、入力されたデジタル信号のピーク(極大値)を抽出し、抽出したピーク値を記憶部746に記憶する。これらの動作を「ピーク検出動作」と呼ぶ。
【0042】
ピーク検出動作は、出力部61と入力部62の間にシートPが存在しない状態と存在する状態に対して、各々所定間隔で所定回数実施される。演算部747は、記憶部746に記憶されたデジタル信号のピーク値に基づき、シートPが存在しない状態での所定回数のピーク値の平均値と、シートPが存在する状態での所定回数のピーク値の平均値との比からシートPに対する超音波の透過係数を算出する。演算部747は、算出した透過係数をCPU71aに出力する。演算部747により算出された透過係数は、シートPの坪量と負の相関をもつ値であり、CPU71aは、演算部747で算出された透過係数に基づいてシートPの坪量を判別する。
【0043】
なお、本実施の形態では、シートの特性を検知する手段として、シートを透過する音波によってシートの坪量を検知するメディアセンサを例に挙げたが、これに限定されない。シートの特性を検知する手段としては、シートで反射して入力部に入力された音波によってシートの特性を検知するセンサを使用してよい。また、シートの特性として、坪量以外の特性、例えば、材質、厚さ、表面性(表面粗さや光沢度)等を検知するセンサを使用してもよい。また、これらのシートの特性のうち複数の特性を検知するセンサを使用してもよい。
【0044】
[定着条件]
次に、本実施の形態の制御部70が実行する画像形成ジョブにおける定着条件について説明する。本実施の形態の制御部70は、メディアセンサ60の検知結果(メディアセンサ60からの入力信号)に基づいてシートの坪量を判別(検知)し、その判別結果に基づいてトナー像をシートに定着させる際の条件(以下、定着条件)を決定している。例えば、定着条件は、上述した画像形成条件のうち、トナー像をシートに定着させる際の温度や、定着ニップFを通過する際のシートの搬送速度である。
【0045】
一般に、適切な定着条件は、シートの特性に応じて異なる。例えば、シートにトナー像を定着させる際、坪量が小さい普通紙よりも、坪量が大きい厚紙は、トナー像を定着させるためにより多くの熱量が必要となる。トナー像をシートに定着させる際の熱量が不足すると、トナー像がシートに十分に定着しない定着不良の原因となる。
【0046】
例えば、トナー像に対してより多くの熱量を与えるためには、トナー像を定着させる際の温度(以下、定着温度)を高くする方法が考えられるが、定着温度を高くすると、ヒータ43を加熱する際に必要な時間が長くなると共に、消費電力が増大する。また、例えば、トナー像に対してより多くの熱量を与えるためには、定着ニップを通過する際のシートの搬送速度(以下、定着搬送速度)を小さく設定して、シートが定着ニップFを通過する時間を長くする方法も考えられる。しかしながら、定着搬送速度を小さくすると、画像形成に要する時間が長くなってしまう。
【0047】
このため、本実施の形態では、制御部70は、メディアセンサ60の検知結果に基づいて定着温度及び定着搬送速度を適切な値となるように変化させることで、定着不良を抑制すると共に、消費電力の抑制及び画像形成に要する時間の短縮が可能となる。例えば、制御部70は、画像が形成されるシートが、厚紙等の坪量の大きいシートであると判別した場合、定着温度が高くなるように定着装置40を制御すると共に、定着搬送速度が小さくなるようにモータ50を制御する。
【0048】
具体的には、表1に示すように、本実施の形態の制御部70は、メディアセンサ60の検知結果に基づいて、搬送されるシートの坪量が5つの範囲のいずれの範囲に含まれるかを判定する。そして、制御部70は、シートの坪量の判別結果に応じて、シートの定着搬送速度が、230mm/secである第1搬送速度(高速)、及び115mm/secである第2搬送速度(低速)のいずれかとなるように、モータ50を制御する。より具体的には、制御部70は、シートの定着搬送速度が、シートの坪量が60g/m以上105g/m未満である場合に第1搬送速度、シートの坪量が105g/m以上199g/m以下である場合に第2搬送速度となるようにモータ50を制御する。なお、本実施の形態の画像形成装置100では、シート給送部10、シート搬送装置20、画像形成部30及び定着装置40を、単一のモータ50によって駆動させているため、定着搬送速度と、他の部位におけるシートの搬送速度と、は同じ速度となる。
【0049】
また、制御部70は、シートの搬送速度が同じであるシートの坪量の範囲内でシートの坪量が大きいほど、ヒータ43の目標温度が高くなるように定着装置40を制御している。具体的には、制御部70は、シートの坪量が、60g/m以上105g/m未満と、105g/m以上199g/m以下と、のそれぞれの範囲内で、シートの坪量が大きいほどヒータ43の目標温度が高くなるように定着装置40を制御している。
【0050】
【表1】
【0051】
制御部70は、このように定着装置40の温度及びモータ50を制御することで、シートの坪量に応じて、消費電力と画像形成に要する時間との最適化を図っている。例えば、画像形成装置100において、第1搬送速度(高速)で搬送されるシートに画像形成を行う場合、A4サイズのシート1枚の画像形成に要する時間、即ちファースト・プリント・アウト・タイム(以下、FPOT)は、7.0secとなっている。また、例えば、画像形成装置100において、第2搬送速度(低速)で搬送されるシートに画像形成を行う場合のFPOTは、12.0secとなっている。
【0052】
[画像形成ジョブにおける処理]
次に、本実施の形態の制御部70が実行する画像形成ジョブにおける処理について説明する。転写ニップTにおいてトナー像をシートに転写する際、感光ドラム33上に形成されたトナー像がシートの所定の位置に転写されるように、タイミングを合わせる必要がある。詳しくは、シートがシート給送部10によって給送された後、シートの先端は、シートセンサ80によって検知される。このような画像形成装置100は、例えば、シートセンサ80の位置と転写ニップTとの位置、及びシートの搬送速度から、シートの先端が転写ニップTに到達するタイミングが検知(算出)される。一方で、シートの先端が転写ニップTに到達するタイミングで、感光ドラム33上のトナー像の先端も転写ニップTに到達するように、感光ドラム33上に静電潜像を形成するための露光も行われる。すなわち、露光開始タイミングにおいて、感光ドラム33の周方向における静電潜像の先端位置から転写ニップTまでの長さとシートの先端から転写ニップTまでの長さは同じ長さになっていなければならない。
【0053】
例えば、メディアセンサ60でシートの坪量を検知した時点で、搬送速度が大きすぎたり目標温度が低すぎたりする場合、定着不良を抑制するためにはメディアセンサ60でのシートの坪量の検知後に、シートの搬送速度を小さく変更する方法が考えられる。しかしながら、感光ドラム33上に露光が開始された後は、静電潜像のずれの発生を防止するために、感光ドラム33の回転速度を変更することは好ましくない。このため、感光ドラム33とシートの搬送を単一のモータで駆動する本実施の形態の画像形成装置100では、シートの搬送速度及び感光ドラム33の回転速度の変更は、感光ドラム33上への露光を開始する前に完了する必要がある。そのためには、メディアセンサ60によるシートの坪量(特性)の検知が終了してから、速度変更に必要な時間分を加味したタイミングで感光ドラム33への露光を開始することとなる。
【0054】
ここで、シートの搬送速度の変更を実施している間も、シートはシート搬送路2上を搬送される。このため、メディアセンサ60によるシートの検知が終了する位置から転写ニップTまでのシート搬送路2に沿った長さは、速度変更中にシートが搬送される長さと、上記した静電潜像の先端位置から転写ニップTまでの長さとを合わせた長さが必要となる。即ち、メディアセンサ60によるシートの検知後にシートの搬送速度の変更を行うためには、搬送速度の変更を実施している間にシートが搬送される長さの分だけ、転写ニップTまでのシートの搬送経路を長くする必要がある。シートの搬送経路を長くすることは、画像形成装置のサイズアップを招いてしまう。
【0055】
このため、本実施の形態において、制御部70は、メディアセンサ60によるシートの検知後に搬送速度を変更することなく、定着不良の抑制とFPOTを向上している。以下、制御部70による画像形成ジョブにおける制御の詳細を説明する。
【0056】
制御部70は、画像形成ジョブにおいて、メディアセンサ60によるシートの検知結果に基づき、普通紙等の坪量の小さいシートに画像を形成するための第1モードと、厚紙等の坪量の大きいシートに画像を形成するための第2モードとのいずれかを実行する。言い換えると、制御部70は、画像形成ジョブにおいて、搬送されるシートの特性が所定の特性であった場合に第2モードを実行可能であり、搬送されるシートの特性が上記所定の特性以外の特性であった場合に第1モードを実行可能に構成されている。シートの坪量が所定値未満である場合、制御部70は、メディアセンサ60によってシートの坪量を検知した後、一般的な画像形成装置と同様、シートが転写ニップTを第1回目に通過する際にシートに対してトナー像を形成(転写)する第1モードを実行する。言い換えると、第1モードにおいて、制御部70は、メディアセンサ60によってシートの坪量を検知した後、シートが転写ニップTを最初に通過する際にシートに対してトナー像を形成する。
【0057】
シートの坪量が所定値以上である場合、制御部70は、メディアセンサ60によってシートの坪量を検知した後、シートが転写ニップTを第1回目に通過する際にはシートに対してトナー像の形成を行なわない第2モードを実行する。また、制御部70は、第2モードにおいて、トナー像の形成を行わずにシートに転写ニップTを通過させたあと、当該シートを反転搬送路7へ搬送する。また、制御部70は、第2モードにおいて、反転搬送路7を介してシートを再びシート搬送路2へ搬送し、転写ニップTに第2回目に搬送されてきたシートが転写ニップTを通過する際に当該シートに対してトナー像を形成する。
【0058】
これにより、シートの坪量が大きい場合であっても、シートが反転搬送路7を介して再び転写ニップTへと搬送されるまでに、シートの坪量に応じた温度となるように定着温度を上昇させることが可能となり、定着不良を抑制することが可能となる。また、シートの坪量が大きい場合、シートが定着ニップFを2度通過することでシートが温まりやすくなり、定着不良を抑制することが可能となる。
【0059】
以下、図4を参照して、本実施の形態において制御部70が実行する処理の詳細について説明する。
【0060】
画像形成装置100が画像形成ジョブを開始した際、制御部70は、シート給送部10に第1搬送速度(高速)でシートの給送(シートの搬送)を開始させる(S101)。本実施の形態においては、画像形成ジョブが開始された状態、言い換えると、画像形成ジョブの1枚目のシート(第1のシート)の搬送が開始された状態では、シートの搬送速度は第1搬送速度に、ヒータ43の目標温度は180℃に設定されている。シートの搬送が開始され、搬送ローラ対21によってシートがメディアセンサ60まで搬送されると、メディアセンサ60は、シートの坪量を検知してシートの坪量に応じた信号を制御部70に出力する(S102)。
【0061】
メディアセンサ60からの信号が制御部70に入力されると、制御部70は、シートの坪量が105g/m未満であるかどうかを判断する(S103)。ステップS103において坪量が105g/m未満であった場合(S103のYES)、制御部70は、レーザスキャナ32に感光ドラム33の露光を開始させて、シートに対してトナー像の形成を開始させる(S104)。また、この処理において、制御部70は、シートの坪量が75g/m以上105g/m未満である場合、ヒータ43の目標温度を表1に示すシートの坪量に応じた目標温度へ変更する。
【0062】
転写ニップTでトナー像が転写されたシートが定着ニップFに達すると、制御部70は、定着装置40によって、シートの坪量に応じた定着温度でトナー像をシートに定着させる(S105)。言い換えると、制御部70は、シートの坪量に応じた定着温度でトナー像が形成されたシートに定着処理を行う。このとき、ヒータ43の目標温度は、検知されたシートの坪量に応じた目標温度に設定されている。具体的には、ヒータ43の目標温度は、検知されたシートの坪量に応じて、表1に従い、170℃、180℃、190℃、200℃のいずれかの値に設定される。例えば、制御部70は、シートの坪量が90g/m以上105g/m未満であった場合、ヒータ43の目標温度を180℃から200℃へ変更する。定着装置40によってトナー像が定着されたシートは、排出ローラ対22によって排出トレイ3上に排出される(S106)。
【0063】
このように、制御部70は、シートの坪量が105g/m未満である場合に、ステップS104において、シートが転写ニップTを第1回目に通過する際にシートに対してトナー像を形成する第1モードを実行する。画像形成ジョブが、複数枚のシートに連続して画像形成を行うジョブである場合、全てのシートに対する画像形成が終了すると、シートの搬送速度を第1搬送速度(高速)に、ヒータ43の目標温度を180℃に、初期化する。
【0064】
次に、ステップS103の処理において、メディアセンサ60によって検知された坪量が105g/m以上であった場合(S103のNO)について説明する。この場合、シートの搬送速度は第2搬送速度(低速)であることが望ましく、第1搬送速度かつヒータ43の目標温度が180℃の条件で定着を行った場合、トナー像に与えられる熱量が大きく不足して、トナー像の定着不良が発生する虞がある。
【0065】
このため、制御部70は、シートが転写ニップTを第1回目に通過する際にはシートに対してトナー像の形成を行なわない(S107)。具体的には、制御部70は、シートの搬送速度が第1搬送速度のままシート搬送路2に沿って搬送し、レーザスキャナ32によって感光ドラム33を露光させず、感光ドラム33への静電潜像の形成を行わない。これにより、感光ドラム33上にトナー像が形成されないため、転写ニップTを通過するシートにはトナー像が転写されない。
【0066】
転写ニップTを通過したシートが定着ニップFに達すると、制御部70は、シート搬送路2に沿って更にシートを搬送させて、定着ニップFを通過させる(S108)。言い換えると、制御部70は、トナー像が形成されていないシートに定着処理を行う。このとき、高い定着温度を維持する必要がないため、回転体42及び加圧ローラ41の回転トルクが大きくなりすぎない範囲で低い目標温度とすることもできる。本実施の形態では150℃としている。
【0067】
シート後端が定着ニップFを通過すると、制御部70は、シートが排出ローラ対22によって挟持された状態における所定のタイミングで排出ローラ対22を逆回転させて、シートを反転搬送路7へ搬送する。その後、制御部70は、シートを反転搬送ローラ対23,25によって反転搬送路7に沿って、再びシート搬送路2に向けて第1搬送速度のまま搬送する(S109)。
【0068】
シートが搬送ローラ対21によって再びシート搬送路2に沿って搬送されると、制御部70は、レーザスキャナ32に感光ドラム33の露光を開始させ、シートに対してトナー像の形成を開始させる(S104)。転写ニップTでトナー像が転写されたシートが定着ニップFに達すると、制御部70は、シートを第1搬送速度のまま搬送して、定着装置40によってトナー像をシートに定着させる(S105)。本実施の形態において、制御部70は、シートが第1回目に定着ニップFを通過してから第2回目に定着ニップFに達するまでの所定のタイミングで、ヒータ43の目標温度を第1温度としての180℃から、最も高い第2温度としての200℃に変更する。
【0069】
このように、制御部70は、シートの坪量が105g/m以上である場合に、ステップS107~S109及びステップS104において、シートが転写ニップTを第2回目に通過する際にシートに対してトナー像を形成する第2モードを実行する。シートが第2回目に転写ニップTを通過する際、定着搬送速度は、シートの坪量に応じた定着搬送速度よりも大きいものの、定着温度は、シートの坪量に応じた定着温度よりも高い。また、シートは、第1回目に転写ニップTを通過する際に既に定着装置40によって温められており、室温よりも高い状態となっている。これにより、シートの坪量に応じた定着搬送速度よりも大きい搬送速度で定着ニップFを通過させても、トナー像に十分な熱量を与えることが可能となる。
【0070】
なお、複数枚のシートに連続して画像形成を行う場合において1枚目のシートの坪量が105g/m以上であった場合、2枚目以降のシートも坪量が105g/m以上である可能性が高い。このため1枚目のシートの坪量が105g/m以上であった場合、制御部70は当該1枚目のシートが排出されるまで2枚目のシート(第2のシート)の給送を待機させ、1枚目のシートの排出後に第2搬送速度(低速)で2枚目以降のシートの給送を開始する。この際、制御部70は、1枚目のシートが定着ニップFを通過した後で、ヒータ43の目標温度を170℃及び180℃のうち表1に示すシートの坪量に応じたいずれかの値に変更する。また、制御部70は、1枚目のシートの坪量が105g/m以上であった場合、2枚目のシートの坪量が105g/m以上であっても第2モードを実行せず、シートの坪量に応じた定着条件でシートに対する画像形成を行う。
【0071】
[効果]
以下、表2を参照して、本実施の形態の構成と、従来技術の構成と、の差異について説明する。従来技術の比較例1として、坪量が大きいシートの定着不良を抑制するために、画像形成ジョブを開始して1枚目のシートに画像形成を行う際、シートの坪量によらず第2搬送速度(低速)でシートの搬送を開始する画像形成装置を用いた。また、従来技術の比較例2として、厚紙等、坪量105g/m以上のシートであっても、第1搬送速度のまま第1回目に転写ニップTを通過する際にシートへトナー像の形成を行い、搬送速度を変更せずにトナー像を定着させる画像形成装置を用いた。比較例1及び比較例2の画像形成装置のその他の構成は本実施の形態と同様である。
【0072】
なお、普通紙としては、HP社のHP MultipurposePaper紙(坪量75g/m)を使用した。また、厚紙1(表1参照)としては、Hammermill社のPremiumLaserPrint紙(坪量120g/m)を使用した。また、厚紙2(表1参照)としては、Springhill社のSpringhill Cardstock Paper(坪量199g/m)を使用した。
【0073】
【表2】
【0074】
表2に示すように、比較例1の画像形成装置は、第2搬送速度(低速)でトナー像をシートに定着させるため、坪量105g/m以上である厚紙1及び厚紙2のいずれに対して画像形成を行った場合であっても定着不良の発生はなかった。しかしながら、坪量105g/m未満の普通紙に対して画像形成を行う場合、定着不良を抑制するだけであれば第1搬送速度で搬送可能にも関わらず、第1搬送速度の半分の速度である第2搬送速度で搬送したために、FPOTが12.0secとなった。
【0075】
比較例2の画像形成装置は、シートの坪量によらず第1搬送速度でトナー像をシートに定着させるため、厚紙1及び厚紙2のいずれに対して画像形成を行った場合も定着不良が発生した。
【0076】
一方で、本実施の形態の画像形成装置100は、普通紙のFPOTを7.0secとすることができると共に、厚紙1に対して画像形成を行った場合に定着不良が発生しなかった。また、本実施の形態の画像形成装置100は、厚紙2に対して画像形成を行った場合、形成される画像が写真画像や全面ベタ塗り画像のような特殊な画像である場合に、軽微な定着不良が発生するものの、重大な定着不良の発生はなかった。
【0077】
以上説明したように、本実施の形態によれば、搬送ローラ対21、感光ドラム33、加圧ローラ41等をそれぞれ同じ搬送速度で制御可能となっている。このため、複数のモータを個々に加減速制御することなく、モータの制御を簡略化して制御部70の処理負担を軽減することが可能となると共に、生産性(FPOT)を向上させつつ定着不良を抑制することが可能となる。
【0078】
また、搬送ローラ対21、感光ドラム33、加圧ローラ41等をそれぞれ同じ搬送速度で制御可能であるため、これらを単一のモータ50によって駆動させることが可能となり、装置の小型化やコストの抑制が可能となる。また、搬送ローラ対21及び感光ドラム33を同じ搬送速度となるように構成し、かつメディアセンサによるシートの検知後に搬送速度を変更する場合と比較して、シートの搬送経路を短くすることが可能となり、装置を小型化することができる。
【0079】
なお、本実施の形態において、制御部70は、メディアセンサ60で検知したシートの坪量が105g/m未満であった場合に第1モードを実行し、シートの坪量が105g/m以上であった場合に第2モードを実行するが、これに限定されない。例えば、制御部70は、シートの坪量が105g/m以外の他の値以上であった場合に第2モードを実行してもよいし、坪量以外のシートの特性が所定の特性であった場合に第2モードを実行してもよい。また、例えば、制御部70は、メディアセンサ60でシートの特性を検知した時点でのシートの搬送速度及びヒータ43の目標温度の少なくとも一方が、検知したシートの特性に対応する値と異なっていた場合に第2モードを実行してもよい。また、例えば、制御部70は、シートの特性が所定の特性であった場合、ヒータ43の目標温度を変更せずに第2モードを実行してもよい。
【0080】
また、本実施の形態では、制御部70は、第2モードにおいてレーザスキャナ32に感光ドラム33を露光させないことによって、シートに対するトナー像の形成を制限しているが、これに限定されない。例えば、制御部は、感光ドラム33上にトナー画像が形成された後、転写ニップTで感光ドラム33上のトナー像がシートに転写されないようにして、シートに対するトナー像の形成を制限するようにしてもよい。具体的には、制御部は、転写ニップTで、転写ローラ37にトナーと同極性の転写電圧を印加することによって、感光ドラム33上のトナー像がシートへ転写されないようにしてもよい。
【0081】
また、本実施の形態では、制御部70は、画像形成ジョブにおける全てのシートに対する画像形成が終了すると、シートの搬送速度を第1搬送速度に、ヒータ43の目標温度を180℃に、初期化するが、これに限定されない。画像形成ジョブの開始時に所定の搬送速度及び所定の目標温度となっていればよく、例えば、制御部70は、画像形成ジョブの開始時にシートの搬送速度及びヒータ43の目標温度を初期化してもよい。また、画像形成装置が不図示の入力装置を備え、ユーザが画像形成ジョブの開始時に入力装置を操作することによって、シートの搬送速度及びヒータ43の目標温度が所定の搬送速度及び所定の目標温度となるように設定可能であってもよい。
【0082】
また、本実施の形態では、制御部70は、シートの坪量に応じて定着条件を決定するように構成されているが、これに限定されない。制御部70は、シートの特性に応じて画像形成条件を決定するように構成されていればよく、例えば、制御部70は、メディアセンサ60で検知したシートの特性に応じて、転写ニップTでの転写電圧を決定するように構成されていてもよい。
【0083】
<第2の実施の形態>
以下、図5を参照して、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、第1の実施の形態に対し、制御部70による画像形成ジョブにおける処理が異なる。詳しくは、第2の実施の形態は、第1の実施の形態に対し、画像形成ジョブのステップS103の処理において、メディアセンサ60によって検知された坪量が105g/m以上であった場合の処理が異なる。他の構成については第1の実施の形態と同様であり、第1の実施の形態と同様の構成については図面に同一の符号を付して説明を省略する。
【0084】
本実施の形態では、シートの坪量が105g/m以上であった場合、制御部70はレーザスキャナ32によって感光ドラム33の露光が行われていない間に、シートの搬送速度を第1搬送速度(高速)から第2搬送速度(低速)へと切り換える。具体的には、ステップS103においてメディアセンサ60によって検知された坪量が105g/m以上であった場合(S103のNO)、制御部70は、まず、第1の実施の形態と同様に、ステップS107~S109の処理を行う。ステップS109の処理において、シートが排出ローラ対22によって反転搬送路7に搬送されてから、搬送ローラ対21によって搬送されるまでの間に、制御部70は、シートの搬送速度を第1搬送速度から第2搬送速度へと切り換える(S210)。言い換えると、制御部70は、第2モードにおいて、シートが反転搬送路7に沿って搬送されている間に、シートの搬送速度を第1搬送速度(高速)から第2搬送速度(低速)へと切り換える。
【0085】
シートの搬送速度を切り換えると、制御部70は、レーザスキャナ32に感光ドラム33の露光を開始させて、第2搬送速度でシートを搬送しながらシートに対してトナー像の形成を開始させる(S211)。また、制御部70は、第2モードにおいて、トナー像が形成されたシートが定着ニップFを通過する際、即ち、シートが第2回目に定着ニップFを通過する際の目標温度を、170℃及び180℃のうち表1に示すシートの坪量に応じたいずれかの値に設定する。これにより、シートが第2回目に定着ニップFを通過する際に、制御部70は、シートの坪量に応じた定着温度でトナー像をシートに定着さる(S212)。トナー像が定着されたシートは、排出ローラ対22によってシートを排出トレイ3上に排出される(S106)。
【0086】
[効果]
以下、表3を参照して、第1の実施の形態の構成と、第2の実施の形態の構成と、従来技術である比較例1及び2の構成と、の差異について説明する。比較例1及び比較例2の内容は、第1の実施の形態で比較したものと同様である。
【0087】
【表3】
【0088】
第2の実施の形態では、シートの坪量が105g/m以上であった場合においても、定着搬送速度及び目標温度がシートの坪量に応じた値とすることができるため、厚紙2に画像形成を行った場合でも、定着不良の発生がなかった。
【0089】
以上説明したように、本実施の形態によれば、シートの坪量に応じた搬送速度及び定着温度でトナー像をシートに定着させることが可能となり、FPOTの向上しつつ定着不良を抑制することができる。
【0090】
<第3の実施の形態>
以下、図6を参照して、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態は、第2の実施の形態に対し、制御部70による画像形成ジョブにおける処理が異なる。詳しくは、第3の実施の形態は、第2の実施の形態に対し、画像形成ジョブのステップS103の処理において、メディアセンサ60によって検知された坪量が105g/m以上であった場合の処理が異なる。他の構成については第1の実施の形態と同様であり、第1の実施の形態と同様の構成については図面に同一の符号を付して説明を省略する。
【0091】
一般に、シートの坪量が大きい場合であっても、シートに形成される画像比率(印字率)が小さい場合、シート(トナー像)に与えられる熱量が小さくても定着不良は発生しにくい。このため、本実施の形態では、シートの坪量が105g/m以上である場合であっても、制御部70は、外部機器等から入力された画像形成を行うための画像情報に基づく画像比率が所定の値よりも小さい場合には、第1モードを実行する。具体的には、ステップS103においてシートの坪量が105g/m以上であった場合、制御部70は、外部機器等から入力された画像情報に基づいて、画像比率を算出し、画像比率が10%以下であるか否かを判断する(S307)。
【0092】
なお、画像比率とは、シートの画像形成領域の面積に対する、実際にトナー像が形成される領域の面積の比率であり、外部機器から入力された画像データに基づいて制御部70が算出する。具体的には、例えば画像比率が100%の場合、シートの画像形成領域の全てにわたってトナー像が形成され、画像比率が50%の場合、シートの画像形成領域の半分の領域にトナー像が形成される。
【0093】
ステップS307の処理において、画像比率が10%を超えている場合(S307のNO)、制御部70は、第2の実施の形態と同様に、ステップS107~S109,S210~S212の処理を実行する。ステップS307の処理において、画像比率が10%以下である場合(S307のYES)、制御部70は、第2モードを実行せず、第1搬送速度のまま第1モードを実行してシートにトナー像を形成する(S104)。
【0094】
[効果]
以下、表4を参照して、第1~第3の実施の形態の構成と、従来技術である比較例1の構成と、の差異について説明する。比較例1の内容は、第1の実施の形態で比較したものと同様である。
【0095】
【表4】
【0096】
第3の実施の形態では、シートの坪量が105g/m以上である場合でも、画像比率が小さく第2モードを実行する必要がない場合には、反転搬送路7を介さず(両面通紙せず)に第1搬送速度(高速)で第1モードを実行してシートに画像を形成する。このような第3の実施形態では、シートの坪量が105g/m以上の厚紙1及び厚紙2(表1参照)のいずれに画像形成を行う場合においても、定着不良の発生がなかった。
【0097】
以上説明したように、本実施の形態によれば、シートの坪量が大きい場合であっても画像比率が小さく第2モードを実行する必要がない場合に、第1搬送速度で第1モードを実行してシートに画像を形成する。これにより、坪量が大きいシートの生産性(スループット)の低下を抑制しつつ定着不良を抑制することができる。なお、本実施の形態では、制御部70は、シートの坪量が大きい場合であっても画像比率が所定値よりも小さい場合には、第2モードを実行せずに第1搬送速度で第1モードを実行してシートに画像を形成するが、これに限定されない。制御部は、シートの坪量が大きい場合であっても、他の画像情報に基づいて、第2モードを実行せず第1搬送速度で第1モードを実行してもよい。例えば、制御部は、シートの坪量が大きい場合であっても、シートに形成するトナー像の最大濃度が所定の濃度よりも低い場合に、第2モードを実行せず第1搬送速度で第1モードを実行してもよい。また、例えば、制御部は、シートの坪量が大きい場合であっても、最大濃度の代わりに、平均濃度や、カラー印刷が可能な画像形成装置においては画像の平均明度等が所定値よりも低い場合に、第2モードを実行せず第1搬送速度で第1モードを実行してもよい。
【符号の説明】
【0098】
P…シート/2…第1搬送路(シート搬送路)/7…第2搬送路(反転搬送路)/12…搬送手段(給送ローラ)/15…搬送手段(給送ローラ)/16…搬送手段(給送ローラ)/21…搬送手段(搬送ローラ対)/22…排出手段(排出ローラ対)/23…搬送手段(反転搬送ローラ対)/25…搬送手段(反転搬送ローラ対)/30…画像形成手段(画像形成部)/32…露光装置(レーザスキャナ)/33…像担持体(感光ドラム)/35…帯電装置(帯電ローラ)/36…現像装置(現像ローラ)/37…転写装置(転写ローラ)/40…定着手段(定着装置)/50…モータ/60…検出手段(メディアセンサ)/61…出力部/62…入力部/70…制御手段(制御部)/100…画像形成装置/A…シート搬送方向/T…画像形成位置(転写ニップ)/P…シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6