(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】絶対安全機構を有するカテーテルの近位端上の気泡検出器
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20241015BHJP
A61B 18/12 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
A61M25/00
A61B18/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020128027
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2023-05-26
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】イェフダ・アルガウィ
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-531935(JP,A)
【文献】特開昭63-127766(JP,A)
【文献】特表2001-505104(JP,A)
【文献】国際公開第2010/023914(WO,A1)
【文献】特開昭59-144461(JP,A)
【文献】特表2010-508518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
患者の内腔に挿入するためのプローブであって、灌注ポンプに連結されている、プローブと、
前記灌注ポンプの出口に近接して配置された、気泡検出サブシステムと、
プロセッサであって、前記灌注ポンプをオンにし、制御することによって、前記プローブへの灌注流体の送達を制御するように構成されている、プロセッサと、
前記プローブの近位部分に連結された気泡検出器であって、前記灌注ポンプがオンになることに応じて、前記気泡検出器が、
前記灌注流体中のガス気泡の検出を自動的に開始し、
前記気泡検出サブシステムが無効化されていても、前記ガス気泡を継続的に検出し、
絶対安全気泡検出が動作可能であることを示す絶対安全信号を送信する、ように構成されている、気泡検出器と、を備え、
前記プロセッサが、前記絶対安全信号を監視し、絶対安全信号の不在下では、前記灌注流体の送達を自動的に無効化するように更に構成されている、システム。
【請求項2】
システムであって、
患者の内腔に挿入するためのプローブであって、灌注ポンプに連結されている、プローブと、
プロセッサであって、前記灌注ポンプをオンにし、制御することによって、前記プローブへの灌注流体の送達を制御するように構成されている、プロセッサと、
前記プローブの近位部分に連結された気泡検出器であって、前記灌注ポンプがオンになることに応じて、前記気泡検出器が、
前記灌注流体中のガス気泡の検出を自動的に開始し、
前記プローブの灌注チャネルをパージしている間であっても、前記ガス気泡の継続的に検出し、
気泡検出が動作可能であることを示す信号を送信する、ように構成されている、気泡検出器と、を備え、
前記プロセッサが、前記信号を監視し、信号の不在下では、前記灌注流体の送達を自動的に無効化するように更に構成されている、システム。
【請求項3】
前記灌注ポンプの出口に近接して配置された気泡検出システムを更に備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記灌注流体の前記送達が無効化されていることをユーザに警告するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記気泡検出器が、事前に決められた時間間隔毎に前記絶対安全信号を送信するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記灌注流体の前記送達の前記自動的な無効化を所与の持続時間にわたって覆すオプションをユーザに提示するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記気泡検出器は、前記灌注ポンプの電力リード線に電気的に配線され、したがって前記灌注ポンプがオンになることに応じて前記検出を開始するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記気泡検出器は、前記灌注ポンプがオンになった後、所与の時間遅延以内に動作を開始するように、前記気泡検出器を準備済みモードに保持する補助電源に並列に配線されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記気泡検出器は、前記灌注ポンプがオンであるかオフであるかにかかわらず前記気泡検出器に給電する補助電源に並列に配線されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
パージ中に使用するための生理食塩水を収容している生理食塩水バッグの点滴筒に取り付けられた、点滴検出器を備え、前記点滴検出器は、生理食塩水が前記
生理食塩水バッグからしたたっているという表示を前記灌注ポンプに送るように構成されており、表示が送られない場合、ポンプ論理が、パージボタンを無効化するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
システムであって、
患者の内腔に挿入するためのプローブであって、灌注ポンプに連結されている、プローブと、
前記灌注ポンプの出口に近接して配置された、気泡検出サブシステムと、
プロセッサであって、前記灌注ポンプをオンにし、制御することによって、前記プローブへの灌注流体の送達を制御するように構成されている、プロセッサと、
前記プローブの近位部分に連結された気泡検出器であって、前記灌注ポンプがオンになることに応じて、前記気泡検出器が、
前記灌注流体中のガス気泡の検出を自動的に開始し、
絶対安全気泡検出が動作可能であることを示す絶対安全信号を送信する、ように構成されている、気泡検出器と、
パージ中に使用するための生理食塩水を収容している生理食塩水バッグの点滴筒に取り付けられた、点滴検出器であって、前記点滴検出器は、生理食塩水が前記生理食塩水バッグからしたたっているという表示を前記灌注ポンプに送るように構成されており、表示が送られない場合、ポンプ論理が、パージボタンを無効化するように構成されている、点滴検出器と、を備え、
前記プロセッサが、前記絶対安全信号を監視し、絶対安全信号の不在下では、前記灌注流体の送達を自動的に無効化するように更に構成され、
前記ポンプ論理は、前記点滴検出器から表示が送られず、かつ前記点滴筒内の生理食塩水の減少するレベルの表示が
前記点滴筒に取り付けられたレベルインジケータから受信される場合、現在発生しているあらゆるアブレーションを終了し、前記
灌注流体の流量をアイドル流に低減するように更に構成されている
、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して侵襲性処置に関し、具体的には侵襲性処置中に使用される灌注流体の監視に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの侵襲性医療処置中に組織が洗浄される場合があり、使用される灌注流体は、気泡の発生に関して監視され得る。いくつかの気泡監視技術が、これまで特許文献において提案された。例えば、欧州特許第0053453号、欧州特許第3076137号、中国特許第109789269号は各々、気泡検出システムを記載している。米国特許出願公開第2019/054256号は、プローブの遠位端から灌注流体を放出して組織を洗浄することと、ある期間にわたって、遠位端の温度センサから遠位端のそれぞれの温度を示す初期信号を受信することと、を含む方法を記載している。方法はまた、初期信号から、上限温度閾値と下限温度閾値との間の温度範囲を定式化することと、ある期間の後に受信された温度センサからの更なる信号が上限温度閾値を超える更なる温度を示す場合、灌注流体中に気泡が存在するというアラームを発することと、を含む。参照される文書は全て、附属書類内のコピーと共に、本明細書に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一実施形態は、プローブと、プロセッサと、気泡検出器と、を備える医療システムを提供する。プローブは、患者の内腔に挿入されるように構成されており、灌注ポンプに連結されている。プロセッサは、灌注ポンプをオンにし、制御することによって、プローブへの灌注流体の送達を制御するように構成されている。気泡検出器は、プローブの近位部分に連結されている。灌注ポンプがオンになることに応じて、気泡検出器は、灌注流体中のガス気泡の検出を自動的に開始し、絶対安全気泡検出が動作可能であることを示す絶対安全信号を送信するように構成されている。プロセッサは、絶対安全信号を監視し、絶対安全信号の不在下では、灌注流体の送達を自動的に無効化するように更に構成されている。
【0004】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、灌注流体の送達が無効化されていることをユーザに警告するように更に構成されている。
【0005】
いくつかの実施形態では、気泡検出器は、事前に決められた時間間隔毎に絶対安全信号を送信するように構成されている。
【0006】
一実施形態では、プロセッサは、灌注流体の送達の自動的な無効化を所与の持続時間にわたって覆すオプションをユーザに提示するように更に構成されている。
【0007】
別の実施形態では、気泡検出器は、灌注ポンプの電力リード線に電気的に配線され、したがって灌注ポンプがオンになることに応じて検出を開始するように構成されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、気泡検出器は、灌注ポンプがオンになった後、所与の時間遅延以内に動作を開始するように、気泡検出器を準備済みモードに保持する補助電源に並列に配線されている。
【0009】
いくつかの実施形態では、気泡検出器は、灌注ポンプがオンであるかオフであるかにかかわらず気泡検出器に給電する補助電源に並列に配線されている。
【0010】
一実施形態では、システムは、パージ中に使用するための生理食塩水を収容している生理食塩水バッグの点滴筒に取り付けられた、点滴検出器を更に備える。点滴検出器は、生理食塩水がバッグからしたたっているという表示を灌注ポンプに送るように構成されており、表示が送られない場合、ポンプ論理が、パージボタンを無効化するように構成されている。
【0011】
別の実施形態では、ポンプ論理は、点滴検出器から表示が送られず、かつ点滴筒内の生理食塩水の減少するレベルの表示が点滴筒に取り付けられたレベルインジケータから受信される場合、現在発生しているあらゆるアブレーションを終了し、流量をアイドル流に低減するように更に構成されている。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、プローブを患者の内腔に挿入することを含む方法が追加的に提供され、プローブは、灌注ポンプに連結されている。プローブへの灌注流体の送達は、前記灌注ポンプをオンにし、制御することによって制御される。灌注ポンプがオンになることに応じて、プローブの近位部分に連結された気泡検出器が制御されて、灌注流体中のガス気泡の検出を自動的に開始し、絶対安全気泡検出が動作可能であることを示す絶対安全信号を送信する。絶対安全信号は監視され、絶対安全信号の不在下では、灌注流体の送達は自動的に無効化される。
【0013】
以下の本開示の実施形態の詳細な説明を図面と併せ読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による、カテーテルベースの心臓アブレーションシステムの概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、カテーテルハンドルの近位端に連結された気泡検出器の概略描写図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、
図1に記載のアブレーション処置中に使用される絶対安全アーキテクチャを概略的に記載するブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、
図1に記載の処置中に、かつ
図3に記載の絶対安全アーキテクチャと共に実施されるアルゴリズムの工程の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概論
内臓のアブレーション処置など、処置を受けている組織が洗浄される侵襲性処置はいくつか存在する。場合によっては、灌注流体中に気泡が生じる可能性があり、それが処置を受けている患者に到達した場合、安全上の問題を引き起こし得る。灌注流体をポンプ圧送するために使用される灌注ポンプにおいて気泡を検出するための機構は、以下に記載されるように、気泡を検出するように動作することに失敗する場合がある。
【0016】
後述の本発明の実施形態は、患者の内腔に挿入するための、カテーテルなどのプローブの近位部分に位置する気泡検出器を備える、絶対安全気泡検出システムを提供する。開示される実施形態では、「近位部分」は、患者の身体の外側にある、プローブの一部分を意味する。プローブは、プローブを介して灌注流体を送達して組織を洗浄するためのプロセッサ制御式灌注ポンプを含むコンソールに接続されている。気泡検出器は、灌注ポンプがオンになることに応じて、検出器が流動した流体中の生じ得るガス気泡の検出を開始することを確実にするための、絶対安全機構を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、灌注ポンプが動作を開始するたびに、気泡検出器も同様にその動作を自動的に開始するような方法で、気泡検出器が灌注ポンプに接続されている、絶対安全配線アーキテクチャが提供される。例えば、気泡検出器は、灌注ポンプ上に位置する電力リード線に配線され得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、気泡検出器は、動作している間、気泡検出システムの適切な動作を示す絶対安全信号を周期的に送信する。プロセッサは、これらの絶対安全信号を受信し、絶対安全信号の不在下では、灌注ポンプをオフにし、灌注が無効化されていることをユーザに警告するように構成されている。あるいは、プロセッサは、最初にユーザに警告し、その後に初めて、事前に決められた持続時間以内に、灌注ポンプをオフにする。
【0019】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、灌注の自動的な無効化を所与の持続時間にわたって覆すオプションをユーザに提示し、灌注ポンプが自動的にオフになる前に動作を継続することを可能にするように更に構成されている。一実施形態では、所与の持続時間は、ユーザによって更に延長され得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、開示される気泡検出のためのシステムは、システムがガス気泡検出サブシステムを備えているにもかかわらず、灌注が気泡に関して十分に監視されていないという潜在的に危険な医療シナリオを克服するための、レガシーシステムに対するアドオンとして提供される。
【0021】
絶対安全機構を有する追加の気泡検出器をプローブの近位部分に配置することによって、本発明の実施形態は、灌注を必要とする侵襲性医療処置中の患者の安全性を向上させ得る。
【0022】
絶対安全機構を有するカテーテルの近位端上の気泡検出器
図1は、本発明の一実施形態による、カテーテルベースの心臓アブレーションシステム12の概略図である。システム12は、例として、患者18の心臓の心筋16の一部分の高周波(RF)アブレーションを含むことが想定される侵襲的処置を実施するために、医師14によって使用される。
【0023】
アブレーションを実施するために、医師14は、カテーテルハンドル19を使用して、患者の内腔に事前に配置されているシース21に、カテーテル20を挿入する。シース21は、カテーテルの遠位端22が、シースの遠位端から抜け出た後に患者の心臓に侵入し、その後心臓の組織に接触し得るように位置付けられている。
【0024】
システム12は、システムプロセッサ46及びインターフェース回路45によって制御される。プロセッサは、本明細書に開示される少なくとも1つのアルゴリズムを実施するようにプログラミングされ得、このアルゴリズムは、以下に記載の工程を含む。プロセッサは、アルゴリズムを実施するためにインターフェース回路45を使用する。
【0025】
プロセッサ46は、システム12の操作コンソール48内に位置する。コンソール48は、モジュールバンク50内のモジュールと通信して処置を実行するプロセッサ46と通信するために医師14によって使用される、制御部49を含む。バンク50内のモジュールの機能は、以下に記載される。
【0026】
医師14によって実施される処置中、遠位端22には、灌注ポンプ24によってポンプ圧送される、典型的にはヘパリン処置された通常の食塩水である灌注流体が供給される。いくつかの実施形態では、灌注ポンプ24は、蠕動ポンプを含む。あるいは、任意の他の好適な灌注流体ポンプが使用されてもよい。
【0027】
プロセッサ46の灌注モジュール56は、灌注管26を介したポンプ24からカテーテル20への流体の流量を制御する。プロセッサ46の全体的な制御下にある灌注モジュール56は、典型的には、流体の流量をゼロ量から最大で既定最大量まで必要に応じて変化させるように構成されている。一実施形態では、いったん遠位端22がシース21に挿入されると、モジュール56は、ポンプ24を操作して、約5mL/分の流体の最小流量を提供し、この流量は、医師14がアブレーションを開始したとき、モジュールによって増加される。
【0028】
灌注ポンプ24は、灌注流体がカテーテルに提供されている間に動作する気泡検出サブシステム27を更に備える。気泡検出サブシステム27は、灌注ポンプ24の出口に近接して配置されている。サブシステム27によって気泡が検出される場合、灌注流体の流れは、典型的には、プロセッサ46によって自動的に停止される。しかしながら、場合によっては、プロセッサ46は、最初に灌注流体中の気泡の存在に関して医師14にアラームを発する。アラームは、ベル音などの聴覚的で非言語的な警告、又は医師に向けて放送される録音された文などであってもよい。代替的に又は追加的に、アラームは、スイッチが入れられた光又はスクリーン60上の警告通知62などの視覚的警告であってもよい。
【0029】
気泡検出サブシステム27は、通常、灌注管を浄化するために使用される「パージ」段階(「スプラッシュ」とも称される)の間、自動的に無効化される。カテーテル20が患者に挿入されている間は、通常、パージ段階は呼び出されないが、そのような事象は、偶発的に発生し得る。この場合、気泡検出サブシステム27は、気泡が患者に侵入したかどうかを検出する方法がなく、結果として問題が生じ得る。
【0030】
本発明の実施形態は、検出サブシステム27によって防止されない、灌注が気泡を有して動作している事象を防ぐための追加の気泡検出器25を提供する。気泡検出器25は、灌注ポンプ24がオンになるたびに、気泡検出器25が気泡を検出するための動作を自動的に開始することを確実にする絶対安全スキームで、ケーブル37を介して灌注ポンプ24に接続されている。しかしながら、パージを可能にするために、一実施形態では、医師がパージを開始するための専用のパージボタンを押すと、気泡検出器25はオフになる。別の実施形態では、パージ(例えば、スプラッシュ)が行われるたびに、気泡検出器25はカテーテルの近位部分から分離され、その後に医師が気泡検出器25をカテーテルに接続する。
【0031】
例えば、絶対安全スキームは、灌注ポンプ24の電力リード線に直接配線されている気泡検出器25によって実現され得る。いくつかの実施形態では、気泡検出器25は、ケーブルを介して灌注ポンプ24に接続され得る。他の実施形態では、ポンプ24の無効化をトリガするために、気泡検出器25が灌注ポンプ24の制御部に無線接続された状態で、絶対安全スキームに論理が使用される。
【0032】
任意の一実施形態では、点滴検出器又はレベルインジケータが、パージ中に使用するための生理食塩水を収容している生理食塩水バッグの点滴筒に取り付けられる。点滴検出器は、生理食塩水がバッグから流れ出ているという表示を灌注ポンプに送る。(生理食塩水がバッグから流れ出ていないために)表示が送られない場合、ポンプ論理は、バッグが空であるときに、以下に記載のパージボタンを無効化するように構成されている。
【0033】
任意の一実施形態では、ポンプ論理は、点滴が存在しないが、レベルインジケータが減少している(生理食塩水は流れているが、バッグが空であることを示す)ときを特定するように構成され得る。このシナリオでは、ポンプ論理は、現在発生しているあらゆるアブレーションを終了し、かつ流量をアイドル流に低減し得る。これにより、管に空気が引き込まれる前に空のIVバッグを交換するのに十分な時間を医師に与えることが可能になり、灌注は停止させられる。点滴計数器及びレベルインジケータの両方の組み合わせはまた、閉鎖ストップコックからであるか閉塞したデバイスからであるかにかかわらず、閉塞の同定を可能にし得る。
【0034】
気泡検出器25は、カテーテル20の近位部分に位置し(例えば、近位部分に組み込まれるか、又は近位部分上に装着され)、灌注流体中で検出された気泡に応じて、ケーブル35を介してプロセッサ46に信号を送信するように構成されている。プロセッサは、追加の気泡検出器が気泡を検出した場合に、灌流の流れを停止するように構成されている。したがって、灌注ポンプ24の気泡検出サブシステム27が無効化されても、気泡が検出されると灌注は無効化され得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、気泡検出器25は、例えば、カテーテル20の灌注管に当該検出器を装着し、気泡検出器25をコンソール48に電気的に接続して、
図4に記載の工程を実施することにより、レガシープローブに対するアドオンとなる。同時に、プロセッサ46又は灌注ポンプ24の別の制御部は、同様に
図4で以下に記載されるように、気泡検出器25からの信号に応答して工程を実施するように構成されている。
【0036】
いくつかの実施形態では、気泡センサ25が作動していることを気泡センサ25が能動的に示さない限り、気泡検出器25は、灌注が無効化されていることを確実にするための絶対安全モードで機能する。一実施形態では、気泡検出器25は、気泡検出器25が起動していることを示す絶対安全信号を、事前に決められた時間間隔で(例えば、周期的に)ケーブル35を介してプロセッサ46に送信するように構成されている。プロセッサ46は、そのような絶対安全信号が事前に決められた持続時間以内に受信されない限り、灌注ポンプ24をオフにするように構成されている。事前に決められた持続時間及び時間間隔は、調整可能である。別の実施形態では、プロセッサは、灌注を無効化する前に、上記の方法のうちの1つを使用して、医師14に警告する。
【0037】
別の実施形態では、気泡検出器25は、当該産業に存在するものなどの、検出器25の故障を検出するための自己試験を含み、それによって気泡検出器25は、そのような故障が自己検出された場合に、ケーブル35を介して絶対安全信号を送るのを停止するように構成されている。
【0038】
プロセッサ46は、温度モジュール52を使用して、遠位端22における温度センサから受信した信号を分析する。分析された信号から、プロセッサ46は、遠位端の温度を決定し、一実施形態では、本特許出願の譲受人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、「Detection of Bubbles in Irrigation Fluid」と題する2017年8月15日出願の前述の米国特許出願公開第2019/054256号に記載の気泡検出アルゴリズムにおいて、検知された温度を使用する。
【0039】
モジュールバンク50はまた、アブレーションモジュール54も含み、これによって、プロセッサ46は、(以下に記載の)遠位端22の選択された電極及び患者の皮膚上の戻り電極(図示せず)を介して、その選択された電極と接触している心筋の領域をアブレーションするために、RF電流を心筋16に注入することが可能になる。アブレーションモジュールによって、また、プロセッサは、その周波数、消散される電力、注入の持続時間など、注入された電流のパラメータを設定することが可能になる。
【0040】
システム12を操作するために、モジュールバンク50は、典型的には、プロセッサに遠位端に加わる力を測定させることを可能にする力モジュール、及びプロセッサに遠位端における電極を介して心筋16からの電極電位を取得させることを可能にする心電図(ECG)モジュールなどの、上記のモジュール以外のモジュールを備える。簡潔化のために、他のそのようなモジュールは、
図1に図示されていない。全てのモジュールは、ハードウェア要素並びにソフトウェア要素を含み得る。
【0041】
プロセッサ46及びモジュールバンク50のモジュールのためのソフトウェアは、例えば、ネットワークを通じて、電子的な形でプロセッサにダウンロードされ得る。代替的に又は追加的に、ソフトウェアは、光学的、磁気的、又は電子的記憶媒体などの非一時的有形媒体上で提供され得る。プロセッサ、及び典型的にはモジュールは、ダウンロードされたソフトウェアを記憶するために、並びにシステム12によって生成されたデータを記憶するために使用されるメモリを含む。
【0042】
プロセッサ46は、医師14によって実施される処置の結果、並びに
図4を参照して以下に記載のアルゴリズムの結果を、ディスプレイスクリーン60に提示してもよい。
【0043】
絶対安全気泡検出
図2は、本発明の一実施形態による、カテーテルハンドル19の近位端に連結された気泡検出器125の概略描写図である。この実施形態では、医師14は、パージ(例えば、スプラッシュ)が行われるたびに、カテーテルの近位部分から気泡検出器125を容易に分離することができ、その後に医師14は気泡検出器125をハンドル19に再接続して、開示される絶対安全構成を提供する。
【0044】
図3は、本発明の一実施形態による、
図1に記載のアブレーション処置中に使用される絶対安全アーキテクチャ66を概略的に記載するブロック図である。見られるように、ポンプ24は、起電電源59に接続されている。プロセッサ46は、ライン55を介して中継デバイス57に指示を与えて、スイッチ47を閉鎖又は開放させ、それによってポンプ24のスイッチを入れたり切ったりすることができる。
図3では、気泡検出器25は、検出器が灌注ポンプの電力リード線44a及び44bに配線される絶対安全電力配線スキームで、ポンプ24に並列に配線されている。この絶対安全電力配線スキームは、ポンプ24が動作電力を受信するたびに、気泡検出器25のスイッチがオンになることを確実にする。
【0045】
動作している間、気泡検出器25は、プロセッサ46が気泡検出器25が適切に動作していることを定期的に検証するための絶対安全信号を、ライン35を介してプロセッサ46に送る。プロセッサ46が絶対安全信号の受信を停止した場合、プロセッサ46は、コマンドライン55を介して中継57に指示を与えてスイッチ47を開放させ、灌注ポンプ24をオフにし、灌注流体の流れを停止させる。絶対安全信号の例は、気泡検出器25が起動している場合にのみ機能する温度センサを介して、気泡検出器25付近に有効温度を与える信号である。
【0046】
任意の一実施形態では、気泡検出器25は、灌注ポンプがオンになった後、所与の時間遅延以内に動作を開始するように、気泡検出器が準備済みモードになることを可能にする別の電源(図示せず)に並列に配線されている。別の任意の実施形態では、他の電源によって、灌注ポンプがオンであるかオフであるかにかかわらず、気泡検出器が動作することが可能になる。
【0047】
図3に示されている絶対安全アーキテクチャ66の例は、単に概念を明確にする目的で選択された。実際には、絶対安全機構は、当業者に想到されるように、異なる方式で考案されても、追加の要素(例えば、無停電電源(uninterruptible power supply、UPS))を含んでもよい。
【0048】
図4は、本発明の一実施形態による、
図1に記載の処置中に、かつ
図3に記載の絶対安全アーキテクチャ66と共に実施されるアルゴリズムの工程の流れ図である。
【0049】
提示された実施形態によるこのアルゴリズムは、灌注をオンにする工程70で、医師14が最初に灌注を起動することで開始するプロセス(ポンプ24をオンにすること、灌注チャネルをパージすること、及びアイドル流量を確立することを含む)を実行する。次に、医師14は、カテーテル挿入工程72で、コンソール48に差し込まれ、灌注ポンプ24に連結されているカテーテル20を、患者18の内腔に事前配置されているシース21に挿入する。
【0050】
絶対安全アーキテクチャ66に従って灌注ポンプ24に配線されていることによって、カテーテル20の近位部分に位置する気泡検出器25は、気泡検出工程74で、自動的にオンになり、気泡検出を開始する。しかしながら、工程70を可能にするために、一実施形態では、医師がパージを開始するための専用のボタンを押すと、気泡検出器25はオフになる。
【0051】
気泡検出器25は、絶対安全信号伝達工程76で、絶対安全信号を送信して、検出器が気泡検出を適切に実行していることを示す。
【0052】
絶対安全信号は、絶対安全信号受信工程78で、灌注モジュール24を制御するプロセッサ46によって受信される。
【0053】
プロセッサ46は、絶対安全確認工程80で、事前に決められた時間間隔毎に、必要に応じて、絶対安全信号が受信されることを継続的に確認する。絶対安全信号が受信される限り、プロセスは、工程78に戻って、監視を継続する。プロセッサ46が事前に決められた持続時間以内に絶対安全信号を受信しない場合、プロセッサ46は、絶対安全オフ工程82で、灌注ポンプ24をオフにするように指示する。同時に、プロセッサ46は、警告工程84で、例えば、上記の視聴覚的方法によって、灌注がオフになっているという警告をユーザに発する。
【0054】
本明細書に記載の実施形態は主に心臓用途に対処するが、本明細書に記載の方法及びシステムはまた、処置中に患者の体内に液体を流すことを必要とする侵襲性医療処置などの他の臨床用途にも用いられ得る。
【0055】
上記の実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上記に具体的に示し記載したものに限定されない点が理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上記の様々な特徴の組み合わせ及びその部分的組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、従来技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。
【0056】
〔実施の態様〕
(1) システムであって、
患者の内腔に挿入するためのプローブであって、灌注ポンプに連結されている、プローブと、
前記灌注ポンプの出口に近接して配置された、気泡検出サブシステムと、
プロセッサであって、前記灌注ポンプをオンにし、制御することによって、前記プローブへの灌注流体の送達を制御するように構成されている、プロセッサと、
前記プローブの近位部分に連結された気泡検出器であって、前記灌注ポンプがオンになることに応じて、前記気泡検出器が、
前記灌注流体中のガス気泡の検出を自動的に開始し、
絶対安全気泡検出が動作可能であることを示す絶対安全信号を送信する、ように構成されている、気泡検出器と、を備え、
前記プロセッサが、前記絶対安全信号を監視し、絶対安全信号の不在下では、前記灌注流体の送達を自動的に無効化するように更に構成されている、システム。
(2) システムであって、
患者の内腔に挿入するためのプローブであって、灌注ポンプに連結されている、プローブと、
プロセッサであって、前記灌注ポンプをオンにし、制御することによって、前記プローブへの灌注流体の送達を制御するように構成されている、プロセッサと、
前記プローブの近位部分に連結された気泡検出器であって、前記灌注ポンプがオンになることに応じて、前記気泡検出器が、
前記灌注流体中のガス気泡の検出を自動的に開始し、
気泡検出が動作可能であることを示す信号を送信する、ように構成されている、気泡検出器と、を備え、
前記プロセッサが、前記信号を監視し、信号の不在下では、前記灌注流体の送達を自動的に無効化するように更に構成されている、システム。
(3) 前記灌注ポンプの出口に近接して配置された気泡検出システムを更に備える、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記プロセッサは、前記灌注流体の前記送達が無効化されていることをユーザに警告するように更に構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記気泡検出器が、事前に決められた時間間隔毎に前記絶対安全信号を送信するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
【0057】
(6) 前記プロセッサが、前記灌注流体の前記送達の前記自動的な無効化を所与の持続時間にわたって覆すオプションをユーザに提示するように更に構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記気泡検出器は、前記灌注ポンプの電力リード線に電気的に配線され、したがって前記灌注ポンプがオンになることに応じて前記検出を開始するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記気泡検出器は、前記灌注ポンプがオンになった後、所与の時間遅延以内に動作を開始するように、前記気泡検出器を準備済みモードに保持する補助電源に並列に配線されている、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記気泡検出器は、前記灌注ポンプがオンであるかオフであるかにかかわらず前記気泡検出器に給電する補助電源に並列に配線されている、実施態様1に記載のシステム。
(10) パージ中に使用するための生理食塩水を収容している生理食塩水バッグの点滴筒に取り付けられた、点滴検出器を備え、前記点滴検出器は、生理食塩水が前記バッグからしたたっているという表示を前記灌注ポンプに送るように構成されており、表示が送られない場合、ポンプ論理が、パージボタンを無効化するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
【0058】
(11) 前記ポンプ論理は、前記点滴検出器から表示が送られず、かつ前記点滴筒内の生理食塩水の減少するレベルの表示が点滴筒に取り付けられたレベルインジケータから受信される場合、現在発生しているあらゆるアブレーションを終了し、前記流量をアイドル流(idle flow)に低減するように更に構成されている、実施態様10に記載のシステム。
(12) 方法であって、
プローブを患者の内腔に挿入することであって、前記プローブが、灌注ポンプに連結されている、挿入することと、
前記灌注ポンプをオンにし、制御することによって、前記プローブへの灌注流体の送達を制御することと、
前記灌注ポンプがオンになることに応じて、前記プローブの近位部分に連結された気泡検出器を制御して、前記灌注流体中のガス気泡の検出を自動的に開始し、絶対安全気泡検出が動作可能であることを示す絶対安全信号を送信することと、
前記絶対安全信号を監視し、絶対安全信号の不在下では、前記灌注流体の送達を自動的に無効化することと、を含む、方法。
(13) 前記灌注流体の前記送達が無効化されていることをユーザに警告することを含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記絶対安全信号を送信することが、事前に決められた時間間隔毎に前記絶対安全信号を送信することを含む、実施態様12に記載の方法。
(15) 前記灌注流体の前記送達の前記自動的な無効化を所与の持続時間にわたって覆すオプションをユーザに提示することを含む、実施態様12に記載の方法。