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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】包装された膜製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/08 20060101AFI20241015BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241015BHJP
   B65B 31/02 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
B65D85/08
B65D65/40 D
B65B31/02 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020146018
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022041019
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】地藏 眞一
(72)【発明者】
【氏名】徳村 康弘
(72)【発明者】
【氏名】森本 義弘
(72)【発明者】
【氏名】服部 剛幸
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/072421(WO,A1)
【文献】特開2006-224085(JP,A)
【文献】特開2001-018340(JP,A)
【文献】特開2020-066435(JP,A)
【文献】特開2019-051993(JP,A)
【文献】特開2017-114552(JP,A)
【文献】特開2012-223942(JP,A)
【文献】特開2007-246116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/08
B65D 65/40
B65D 67/00-79/02
B65D 30/00-33/38
B65B 31/00-31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装用フィルムと、
前記包装用フィルムによって包装された円筒状の膜製品と、
を備え、
KES法で測定された前記包装用フィルムの曲げ剛性が1.0gf・cm2/cm以上3.5gf・cm2/cm以下であり、
前記曲げ剛性は、前記膜製品の円周方向に沿って前記包装用フィルムを曲げたときに測定される剛性である、
包装された膜製品。
【請求項2】
前記包装用フィルムは、帯電防止処理が施された最外層のフィルムを含む多層構造を有する、
請求項1に記載の包装された膜製品。
【請求項3】
前記包装用フィルムの厚さが90μm以上130μm以下である、
請求項1又は2に記載の包装された膜製品。
【請求項4】
前記最外層のフィルムは、ポリエチレンテレフタレート製、ナイロン製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、又は、ポリ塩化ビニル製のフィルムである、
請求項2に記載の包装された膜製品。
【請求項5】
前記包装用フィルムは、前記最外層と、ガスバリア性を有する中間層と、ポリオレフィン製の融着層とをこの順に有する、
請求項2又は4に記載の包装された膜製品。
【請求項6】
前記包装用フィルムによって構成された袋の内部が減圧状態である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の包装された膜製品。
【請求項7】
前記膜製品が8インチ規格のスパイラル型膜モジュールである、
請求項1から6のいずれか1項に記載の包装された膜製品。
【請求項8】
包装用フィルムによって構成された袋に円筒状の膜製品を入れ、前記膜製品を前記包装用フィルムで減圧包装することと、
前記包装された膜製品を搬送装置で持ち上げて梱包箱に収めることと、
を含み、
KES法で測定された前記包装用フィルムの曲げ剛性が1.0gf・cm2/cm以上3.5gf・cm2/cm以下であり、
前記曲げ剛性は、前記膜製品の円周方向に沿って前記包装用フィルムを曲げたときに測定される剛性である、
包装された膜製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装された膜製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理等に使用される膜製品は、フィルムに包装された状態で梱包され、工場から顧客の元へ届けられる。膜の劣化を防止するために、包装は、大気圧よりも低い圧力下での包装である減圧包装が一般的である。
【0003】
減圧包装から梱包までの一連の工程は、従来、人の手作業によって行われていた。しかし、生産性を向上させるために、一連の工程には自動機が採用されつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3270184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただし、減圧包装から梱包までの一連の工程を自動機に任せると、包装ミス、搬送ミス、梱包ミスなどのエラーが起こることがある。包装ミスは、例えば、減圧包装後の包装用フィルムの密封が不完全であることを意味する。搬送ミスは、例えば、包装された膜製品を搬送装置で持ち上げることができなかったり、包装された膜製品が搬送装置から脱落したりすることを意味する。梱包ミスは、例えば、包装された膜製品が梱包箱にスムーズに入らなかったり、入りにくかったりすることを意味する。これらのエラーが起こると自動機が停止し、手作業による復旧が必要となる。これらのエラーによって膜製品が損傷するおそれもある。
【0006】
本発明者らは、自動機において上記のエラーが発生する原因を究明した。その結果、本発明者らは、エラーの原因が包装用フィルムにあることを突き止めた。すなわち、減圧包装から梱包までの一連の工程を自動機に任せるためには、自動機に適した包装用フィルムを採用する必要がある。
【0007】
本発明の目的は、減圧包装から梱包までの一連の工程を自動機によって確実に実施するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
包装用フィルムと、
前記包装用フィルムによって包装された円筒状の膜製品と、
を備え、
KES法で測定された前記包装用フィルムの曲げ剛性が1.0gf・cm2/cm以上3.5gf・cm2/cm以下であり、
前記曲げ剛性は、前記膜製品の円周方向に沿って前記包装用フィルムを曲げたときに測定される剛性である、
包装された膜製品を提供する。
【0009】
別の側面において本発明は、
包装用フィルムと、
前記包装用フィルムによって包装された膜製品と、
を備え、
前記包装用フィルムは、帯電防止処理が施された最外層のフィルムを含む多層構造を有し、
前記包装用フィルムの厚さが90μm以上130μm以下である、
包装された膜製品を提供する。
【0010】
さらに別の側面において本発明は、
包装用フィルムによって構成された袋に円筒状の膜製品を入れ、前記膜製品を前記包装用フィルムで減圧包装することと、
前記包装された膜製品を搬送装置で持ち上げて梱包箱に収めることと、
を含み、
KES法で測定された前記包装用フィルムの曲げ剛性が1.0gf・cm2/cm以上3.5gf・cm2/cm以下であり、
前記曲げ剛性は、前記膜製品の円周方向に沿って前記包装用フィルムを曲げたときに測定される剛性である、
包装された膜製品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、減圧包装から梱包までの一連の工程を自動機によって確実に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態における包装された膜製品の概略三面図である。
図2図2は、包装用フィルムの曲げ剛性の測定方向を示す図である。
図3図3は、包装用フィルムの概略断面図である。
図4A図4Aは、包装用フィルムによって構成された袋をピックアップして搬送する工程を示す図である。
図4B図4Bは、包装工程を示す図である。
図4C図4Cは、搬送工程及び梱包工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る包装された膜製品の概略三面図である。包装された膜製品10は、膜製品20及び包装用フィルム30を含む。膜製品20が包装用フィルム30によって包装されている。包装用フィルム30は、樹脂フィルムでありうる。
【0015】
膜製品20を包囲するように、包装用フィルム30によって構成された袋の外周部分30aが密封されている。包装用フィルム30によって構成された袋の内部は、減圧状態にある。袋の内部の圧力は、大気圧よりも低く、例えば、ゲージ圧で-5kPaから-30kPaである。膜製品20は、密封された袋の内部において、大気圧よりも低い減圧下に置かれている。これにより、膜製品20の劣化が防止される。
【0016】
包装用フィルム30は、例えば、平面視で矩形の形状を有する。1対の包装用フィルム30を重ね合わせて3つの辺を密封すること、又は、1つの包装用フィルム30を2つに折り畳んで2つの辺を密封することによって、包装用フィルム30によって構成された袋が得られる。包装用フィルム30によって構成された袋に膜製品20を入れて袋の開口部を密封すれば、包装された膜製品10が得られる。本明細書では、包装用フィルム30によって構成された袋を「三方袋」と称することがある。
【0017】
膜製品20は、分離機能を備えた膜を用いた製品でありうる。膜製品20は、液体又は気体の処理に使用される。膜製品20としては、分離膜モジュール、分離膜エレメントなどが挙げられる。
【0018】
一般的な分離膜モジュールは、ケーシング及び少なくとも1つの分離膜エレメントを有する。少なくとも1つの分離膜エレメントがケーシングに収められている。分離膜モジュールは、分離膜エレメントを1つのみ備えていてもよく、複数の分離膜エレメントを備えていてもよい。分離膜モジュールは、ケーシングと、ケーシングに収められた中空糸膜の束とを含む中空糸膜モジュールであってもよい。分離膜エレメントの種類は特に限定されない。分離膜エレメントとしては、スパイラル型膜エレメント、プリーツ型膜エレメントなどが挙げられる。分離膜としては、逆浸透膜、ナノろ過膜、限外ろ過膜及び精密ろ過膜が挙げられる。
【0019】
膜製品20は、典型的には、円筒の形状を有する。一例において、膜製品20は、分離膜モジュールである。分離膜モジュールは、複数のスパイラル型逆浸透膜エレメントを有する、スパイラル型膜モジュールでありうる。膜製品20の寸法は特に限定されない。一例において、スパイラル型膜モジュールは、φ4インチ、φ6インチ、φ8インチなどの様々な寸法規格を有する。
【0020】
包装用フィルム30は、包装された膜製品10を自動機によって取り扱うことに適している。具体的には、KES法で測定された包装用フィルム30の曲げ剛性が1.0gf・cm2/cm以上3.5gf・cm2/cm以下である。曲げ剛性は、望ましくは、1.4gf・cm2/cm以上3.0gf・cm2/cm以下である。
【0021】
図2は、包装用フィルム30の曲げ剛性の測定方向を示している。図2に示すように、包装用フィルム30の曲げ剛性は、包装用フィルム30のTD方向(transverse direction)に沿って包装用フィルム30を曲げたときに測定される剛性を意味する。言い換えれば、包装用フィルム30の曲げ剛性は、円筒状の膜製品20の円周方向D1に沿って包装用フィルム30を曲げたときに測定される剛性を意味する。
【0022】
曲げ剛性が低いことは、包装用フィルムが柔らかいことを意味する。包装用フィルムの曲げ剛性が低すぎると、膜製品を減圧包装するとき、包装された膜製品の胴体部分に大きいシワが生じやすい。シワは、円筒状の膜製品の長手方向に平行な方向に延びるように形成される。胴体部分に生じた大きいシワは、搬送装置、特に吸着搬送装置によって包装された膜製品を持ち上げることを困難にする。あるいは、包装された膜製品が搬送装置から脱落することもある。また、シワが熱融着の妨げになって密封不良を生じさせることもある。その他にも、包装用フィルムの剛性が低すぎると、包装用フィルムによって構成された袋を搬送すること、包装用フィルムによって構成された袋の開口部を広げること、包装用フィルムによって構成された袋に膜製品を収容させることなどの操作の難易度が上がる。「大きいシワ」の語句は、シワが長いこと、シワが高いこと、又は、その両方の意味を含む。
【0023】
曲げ剛性が高いことは、包装用フィルムが硬いことを意味する。曲げ剛性が高すぎると、包装用フィルムが邪魔になって包装された膜製品が梱包箱にスムーズに入らなかったり、梱包箱が破損したりする。また、包装用フィルムによって構成された袋を搬送することの難易度も上がる。
【0024】
結果として、生産ラインの停止及び復旧に時間が費やされ、生産性が低下する。密封不良は、製品の信頼性を低下させる。
【0025】
本実施形態において、包装された膜製品10の包装用フィルム30は、適切な範囲の曲げ剛性を有する。そのため、膜製品20を減圧包装したとき、包装された膜製品10の胴体部分に大きいシワが生じにくい。これにより、密封装置、搬送装置などの自動機によって、膜製品20を確実に包装し、包装された膜製品10を確実に搬送し、包装された膜製品10を確実に梱包することが可能となる。包装用フィルム30によって構成された袋の取り扱いも容易である。結果として、包装された膜製品10の生産性が向上する。
【0026】
減圧包装から梱包までの工程に加え、包装用フィルム30によって構成された袋をピックアップする工程、袋を拡げる工程、及び、袋に膜製品を挿入する工程も自動機で行うことができる。ただし、袋が帯電していると、袋をピックアップすることが困難になったり、袋の開口部を拡げることが困難になったりする。
【0027】
本実施形態において、包装用フィルム30は、帯電防止処理が施された最外層のフィルムを含む多層構造を有する。最外層のフィルムは、包装された膜製品10の外表面をなすフィルムである。最外層のフィルムに帯電防止処理が施されていると、包装用フィルム30が帯電することに起因する搬送ミスなどのエラーが起こりにくい。また、包装用フィルム30には、帯電防止性、ガスバリア性、密封性などの様々な特性が求められる。多層構造における各層に役割を持たせると、要求特性を満たす包装用フィルム30が得られやすい。
【0028】
帯電防止処理が施された最外層のフィルムの材料は特に限定されない。最外層のフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)製、ナイロン製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、又は、ポリ塩化ビニル製のフィルムでありうる。帯電防止処理が施された最外層のフィルムは、例えば、PETフィルムでありうる。PETフィルムは、コシ(stiffness)のあるフィルムであり、摩擦耐久性にも優れているので、包装用フィルム30の最外層のフィルムとして適している。最外層のフィルムがPETフィルムの場合、包装用フィルム30の厚さを過剰に増やすことなく上記した範囲の曲げ剛性を達成しやすい。
【0029】
帯電防止処理としては、フィルムの表面に帯電防止剤を塗布すること、フィルムの材料に帯電防止剤を混ぜることなどが挙げられる。帯電防止剤は、導電性を高める性質を持つ材料である。例えば、界面活性剤は、帯電防止剤として使用可能である。
【0030】
帯電防止処理が施された最外層のフィルムが包装用フィルム30に含まれているとき、包装用フィルム30の表面抵抗率は、例えば、1×1010Ω/□~1×1013Ω/□の範囲にある。表面抵抗率は、例えば、ハイレスタ(日東精工アナリテック社)を用い、日本産業規格JIS K6911(2006)に準拠した方法によって測定されうる。
【0031】
一例において、包装用フィルム30の厚さは、90μm以上130μm以下である。包装用フィルム30が適切な厚さを有していると、上記した範囲の曲げ剛性を達成しやすい。厚さと曲げ剛性との間には一定の相関関係があるが、厚さと曲げ剛性とは必ずしも比例関係には無い。材料及び構造に応じて包装用フィルム30の曲げ剛性が変化するからである。包装用フィルム30が適切な厚さを有していると、突き刺し強度、屈曲耐久性などの機械的強度に関する要求特性も満たされる。
【0032】
図3は、包装用フィルム30の概略断面図である。図3に示すように、包装用フィルム30は、互いに異なる種類の複数の樹脂フィルムの積層体でありうる。具体的には、包装用フィルム30は、最外層31、中間層33及び融着層32をこの順番で有する。最外層31と中間層33とは、例えば、接着剤を用いたドライラミネートによって互いに接着されている。中間層33と融着層32との間には、両者を接着するための接着層34が設けられていてもよい。
【0033】
中間層33は、ガスバリア性を有する層であって、酸素などの気体の透過を防ぐ役割を担う。中間層33は、例えば、ナイロン又はエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)によって構成されている。融着層32は、包装用フィルム30で膜製品20を包装したのち、包装用フィルム30によって構成された袋を密封する役割を担う。1対の包装用フィルム30を重ね合わせ、一方の包装用フィルム30の融着層32と他方の包装用フィルム30の融着層32とを接触させた状態でそれら包装用フィルム30に熱を加える。これにより、各融着層32を構成する樹脂が溶融する。その後、樹脂を固化させることによって、包装用フィルム30が互いに接着される。融着層32は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンによって構成されている。直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、融着層32の材料として適している。融着層32の厚さは、例えば、包装用フィルム30の厚さの40%以上70%以下の範囲にある。一例において、融着層32の厚さは、50μm以上80μm以下である。接着層34も、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンによって構成されている。
【0034】
ガスバリア層としての中間層33の表面上にPVDC(ポリ塩化ビニリデン)のコーティングを形成してもよい。PVDCのコーティングには、帯電防止の効果もある。そのため、PVDCのコーティングは、「帯電防止処理が施された最外層」として機能しうる。この場合、最外層31を省略することができる。
【0035】
包装用フィルム30は、透明であってもよく、非透明であってもよい。包装用フィルム30が非透明であるとき、光に起因する膜製品20の劣化を防止できる。非透明とは、例えば、日本産業規格JIS A5759に規定された可視光透過率及び紫外線透過率がともに10%以下であることを意味する。可視光透過率及び紫外線透過率は0%であってもよい。包装用フィルム30には、抗菌性などの他の性質が付与されていてもよい。
【0036】
図1に示すように、本実施形態によれば、包装された膜製品10において、膜製品20の長手方向と包装用フィルム30のMD方向(machine direction)とが一致している。包装された膜製品10において、シワは、膜製品20の長手方向に沿って延びるように形成されやすい。膜製品20の円周方向D1、つまり、包装用フィルム30のTD方向に沿った曲げ剛性が十分に確保されていると、そのようなシワが生じにくい。
【0037】
包装用フィルム30のMD方向は、フィルム送り方向を意味する。一般的な三方袋は、開口部が設けられた1辺に平行な方向がTD方向であり、TD方向に垂直な方向がMD方向である。本実施形態においても、そのルールに従ってMD方向及びTD方向が決定される。
【0038】
包装用フィルム30の曲げ剛性は、KES(Kawabata’s Evaluation System for Fabrics)法によって測定されうる。KES法を実施可能な試験機として、純曲げ試験機(カトーテック株式会社製、KES-FB2)が市販されている。
【0039】
まず、KES-FB2の固定クランプと移動クランプとの間にサンプルとしての包装用フィルム30をセットする。測定を開始すると、移動クランプは、正側の最大曲率+2.5cm-1まで移動して反転し、曲率0を通過する。移動クランプが負側の最大曲率-2.5cm-1まで移動して反転し、曲率0を再び通過したら測定が終了する。このようにして、1サイクルの曲率に対する曲げモーメントの往復曲線が得られる。曲げモーメントの往復曲線において、曲率0.5cm-1と1.5cm-1との間の傾きと曲率-0.5cm-1と-1.5cm-1との間の傾きの平均値が曲げ剛性として算出される。
【0040】
次に、包装された膜製品10の製造方法について説明する。膜製品20は、当業者によって知られた方法によって作製されうる。
【0041】
図4Aは、包装用フィルム30によって構成された袋をピックアップして搬送する工程を示している。包装用フィルム30によって構成された三方袋の開口部付近を吸着パッド42によって浮かしつつ、1対のクランプ44で幅方向の両端部を掴む。その後、膜製品20を挿入するための所定の位置まで三方袋を搬送する。
【0042】
図4Bは、包装工程を概略的に示している。図4Bに示すように、包装用フィルム30によって構成された袋に膜製品20を入れる。包装用フィルム30が袋状の構造を有するように、包装用フィルム30によって構成された袋の外周部分30aが熱融着によって密封されている。包装用フィルム30によって構成された袋が上方に向かって開口している。膜製品20の長手方向を鉛直方向に平行に保ちながら、膜製品20が包装用フィルム30によって構成された袋の中に収められる。包装用フィルム30のTD方向における1対の外周部分30aをTD方向かつ互いに逆方向に引っ張りながら包装用フィルム30によって構成された袋に膜製品20を入れると、包装用フィルム30に大きいシワが生じにくい。包装用フィルム30のTD方向は、膜製品20の長手方向に垂直な方向でありうる。
【0043】
次に、包装用フィルム30によって構成された袋に膜製品20を入れたまま、包装用フィルム30及び膜製品20を真空槽に入れる。真空槽の内部を真空引きし、さらに、熱融着によって包装用フィルム30によって構成された袋の開口部を密封したのち、真空槽内の圧力を大気圧に戻す。これにより、包装用フィルム30に大きいシワを生じさせることなく、減圧包装された膜製品10が得られる。包装された膜製品10は、真空槽から搬出され、梱包箱に収められる。
【0044】
図4Cは、搬送工程及び梱包工程を概略的に示している。包装された膜製品10は、膜製品20の長手方向が水平方向に平行となるように置かれている。包装された膜製品10を搬送装置40で持ち上げる。搬送装置40は、典型的には、吸着搬送装置である。本実施形態によれば、包装用フィルム30が十分な曲げ剛性を持っており、包装工程で包装用フィルム30に大きいシワが生じにくいので、搬送装置40の吸着力が包装された膜製品10に十分に作用する。これにより、包装された膜製品10を確実に持ち上げて所定の場所まで搬送することができる。包装用フィルム30に大きいシワがあると、シワの周りから空気が漏れて、搬送装置40の吸着力が十分に働かない。
【0045】
次に、包装された膜製品10を搬送装置40によって梱包箱50の真上まで搬送する。搬送装置40を下降させて、包装された膜製品10を梱包箱50に収める。包装用フィルム30の曲げ剛性が適度に抑えられているので、包装用フィルム30によって構成された袋の外周部分30aの剛性も高すぎない。包装用フィルム30によって構成された袋の外周部分30aは、包装された膜製品10の自重によって容易に折れ曲がる。そのため、外周部分30aが梱包箱50の開口部に引っかかることなく、包装された膜製品10は、梱包箱50にスムーズに収められる。
【実施例
【0046】
表1に示すように、種々の厚さ及び種々の積層構造を有する9種類の包装用フィルムをサンプル1~9として準備した。
【0047】
(曲げ剛性の測定)
純曲げ試験機(カトーテック株式会社製、KES-FB2)を用いて、各サンプルの曲げ剛性(曲げ剛性B)を測定した。KES-FB2の固定クランプと移動クランプとの間にサンプルを取り付けた。固定クランプと移動クランプとの間隔は10mmであった。サンプルの大きさは、20cm×20cmであった。測定は、TD方向について実施した。結果を表1に示す。
【0048】
(包装試験)
サンプル1~9の包装用フィルムを用い、MD方向の寸法が1450mmであり、TD方向の寸法が370mmである三方袋を作製した。次に、サンプル1~9の包装用フィルムによって構成された三方袋に膜製品を入れ、真空槽内で三方袋の開口部を熱融着によって閉じた。これにより、サンプル1~9の包装された膜製品が得られた。膜製品は、8インチ規格のスパイラル型膜モジュール(φ200mm×長さ1016mm)であった。
【0049】
次に、サンプル1~9の包装された膜製品の外周面に生じたシワの高さを測定した。シワの最大高さが8mm以上のとき、「シワ高さが大」と判断した。シワの最大高さが8mm未満のとき、「シワ高さが小」と判断した。結果を表1に示す。
【0050】
(箱収納試験)
次に、サンプル1~9の包装された膜製品を梱包箱に入れた。梱包箱の寸法は、幅204mm、長さ1030mm、深さ212mmであった。包装された膜製品の寸法は、図1に示す外周部分30aを含めて、幅255mm~265mm、長さ1160mm~1200mmであった。包装された膜製品が梱包箱にスムーズに入り、その後、包装された膜製品の状態に真空漏れなどの異常が無かったとき、「箱収納が可」と判断した。包装用フィルムが硬すぎて包装された膜製品が梱包箱にスムーズに入らなかったとき、「箱収納が不可」と判断した。具体的には、包装された膜製品を梱包箱に入れるときに梱包箱が損傷したり、包装された膜製品を梱包箱に入れた後に包装された膜製品に真空漏れが生じたりしたとき、「箱収納が不可」と判断した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
(考察)
シワ高さ及び箱収納の両方の試験項目に合格したサンプルを「〇」と判断し、それ以外のサンプルを「×」と判断した。
【0053】
サンプル1及び2の包装用フィルムの剛性が低かった。そのため、包装された膜モジュールに大きいシワ(高さ8mm以上のシワ)が生じた。サンプル3~9の包装用フィルムの剛性は高かった。サンプル3~9の包装用フィルムは、大きいシワを生じさせなかった。ただし、サンプル8及び9の包装用フィルムの剛性は高すぎたので、包装された膜モジュールを梱包箱にスムーズに入れることができなかった。
【0054】
(袋搬送試験)
次に、サンプル1~9の包装用フィルムによって構成された三方袋をそれぞれ400~450枚準備し、袋セット台に配置した。最も上に位置する三方袋の開口部付近を吸着パッドで浮かし、移送アームの1対のクランプで幅方向の両端部を掴んだ。移送アームによって、シール装置における膜製品の挿入位置まで三方袋を搬送した。シール装置の1対のクランプで三方袋を掴んだ後、移送アームのクランプを三方袋から離した。シール装置の1対のクランプをやや幅寄せしながら、吸着パッドで開口部を拡げた。開口部にガイド板を挿入し、続いて、三方袋に膜製品を挿入した。
【0055】
三方袋が問題無く搬送され、かつ、膜製品が三方袋に挿入されたとき、袋搬送が「可」と判断した。三方袋を袋セット台からピックアップするときにクランプが三方袋を掴み損ねたとき、一度に複数の三方袋がピックアップされたとき、又は、クランプからクランプへの三方袋の受け渡しができなかったとき、「袋搬送が不可」と判断した。また、三方袋の開口部が拡がらず、膜製品を三方袋に挿入できなかったときも、「袋搬送が不可」と判断した。結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
サンプル3,4,6及び7の包装用フィルムによって構成された三方袋は、400~450回繰り返し問題なく搬送できた。サンプル3,4,6及び7の包装用フィルムは、帯電防止層を有していた。そのため、フィルム同士が張り付きにくく、自動機でのピックアップ及び搬送がスムーズに行われたと考えられる。一方、サンプル1,2,5,8及び9の包装用フィルムによって構成された三方袋は、三方袋をピックアップできなかったり、開口部を拡げることができなかったりした。エラーの頻度は、サンプルによって異なるが、多い場合には数枚に一度発生した。
【0058】
表1の結果から理解できるように、膜モジュールを三方袋に入れた後の工程は、包装用フィルムの帯電防止層の有無の影響を受けないと考えられる。しかし、膜モジュールを三方袋に入れる前の工程、例えば、三方袋をロボットでピックアップする工程を考えると、包装用フィルムが帯電防止層を有していることが推奨される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、膜製品の製造及び出荷に有用である。
【符号の説明】
【0060】
10 包装された膜製品
20 膜製品
30 包装用フィルム
30a 外周部分
31 最外層
32 融着層
33 中間層
34 接着層
40 搬送装置
42 吸着パッド
44 クランプ
50 梱包箱
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C