(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】モータ取付け構造とモータ取付け方法
(51)【国際特許分類】
H02K 5/04 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
H02K5/04
(21)【出願番号】P 2020157551
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000105659
【氏名又は名称】ニデックコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 佑希
(72)【発明者】
【氏名】松下 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】飛内 康宏
(72)【発明者】
【氏名】井ノ口 貴敏
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03365123(US,A)
【文献】特開2015-033522(JP,A)
【文献】特開2012-102686(JP,A)
【文献】国際公開第2016/189763(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
モータのロータを回転可能に保持するシャフトが固定される第1ホルダと、
周囲部が前記ケースと前記第1ホルダの間に配置され、前記モータのステータを保持するリング状の第2ホルダと、
前記ケース、前記第1ホルダ、及び前記第2ホルダを一体的に固定する固定部材と、
を具備し、
前記第2ホルダは、前記ステータを保持する保持部と、前記周囲部と前記保持部との間に位置し、前記周囲部より薄い厚みを有する吸収部とを具備
し、前記保持部は前記吸収部を介して第2ホルダに固定されることを特徴とするモータ取付け構造。
【請求項2】
前記第2ホルダは、前記吸収部に対応して、印刷基板を配置するための第1凹部を有することを特徴とする請求項1記載のモータ取付け構造。
【請求項3】
前記第2ホルダの周囲部は、複数の第2凹部を含み、前記ケースは、前記第2ホルダの前記複数の第2凹部に対応して複数の突部を含むことを特徴とする請求項1記載のモータ取付け構造。
【請求項4】
前記ケースは、側面にパイプ状のダクトを有し、前記ダクトは一端の一部が前記ケースの内部と連通され、前記第2ホルダは、側面に前記ダクトの一端を覆う蓋体を具備することを特徴とする請求項1記載のモータ取付け構造。
【請求項5】
請求項1記載のモータ取付け構造と、
前記ケースに設けられた吸気口及び排気口と、
前記ケース内に配置され、前記モータにより駆動される遠心ファンと、
を具備することを特徴とする送風機。
【請求項6】
ケースと、モータのロータを回転可能に保持するシャフトが固定される第1ホルダと、前記モータのステータを保持する保持部と、前記保持部と周囲部との間に位置し、前記周囲部より薄い厚みを有する吸収部とを具備するリング状の第2ホルダと、を準備し、
前記ケースと前記第1ホルダの間に前記第2ホルダを配置して前記第2ホルダの中央部に前記シャフトを配置させ、
前記シャフトと前記ステータとの間に治具の第1部分を挿入し、前記シャフトと前記ケースとの間に前記治具の第2部分を挿入し、
前記第1ホルダの周囲において、前記ケース、前記第1ホルダ、及び前記第2ホルダを固定部材により固定することを特徴とするモータ取付け方法。
【請求項7】
前記ケースは、側面にパイプ状のダクトを有し、前記ダクトは一端の一部が前記ケースの内部と連通され、前記第2ホルダは、側面に蓋体を有し、前記蓋体により前記ダクトの一端を覆うことを特徴とする請求項6記載のモータ取付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば遠心ファンを有する送風機におけるモータ取付け構造とモータ取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心ファンを用いた送風機は、例えばファンと、ファンを回転させるモータと、ファンの回転軸方向に設けられた吸気口と、吸気口に対して直交方向に配置された排気口を含むハウジングとを具備している。ファンは、複数の羽根を含んでいる(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-129638号公報
【文献】特許第4716750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遠心ファンを有する送風機において、モータの振動や振動に起因する騒音は、送風機の品質を低下させる。
【0005】
モータは、例えばシャフトと、シャフトに軸受けを介して回転可能に設けられ、マグネットを有するロータと、ロータの周囲に配置され、コイルが巻回されたリング状のコアとを具備する。モータのシャフト及びロータと、リング状のコアが別々の部材に保持される場合において、シャフトと、コアの中心軸がずれた場合、電磁力の影響によりコアやロータの振動が発生する。例えば積層された鉄製のコアに複数のコイルを巻回したモータにおいて、シャフトの中心と、コアの中心がずれた場合、振動が発生する。
【0006】
本発明の実施形態は、振動の発生を防止することが可能なモータ取付け構造とモータ取付け方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態のモータ取付け構造は、ケースと、モータのロータを回転可能に保持するシャフトが固定される第1ホルダと、周囲部が前記ケースと前記第1ホルダの間に配置され、前記モータのステータを保持するリング状の第2ホルダと、前記ケース、前記第1ホルダ、及び前記第2ホルダを一体的に固定する固定部材と、を具備し、前記第2ホルダは、前記ステータを保持する保持部と、前記周囲部と前記保持部との間に位置し、前記周囲部より薄い厚みを有する吸収部とを具備し、前記保持部は前記吸収部を介して第2ホルダに固定される。
【0008】
本実施形態のモータ取付け方法は、ケースと、モータのロータを回転可能に保持するシャフトが固定される第1ホルダと、前記モータのステータを保持する保持部と、前記保持部と周囲部との間に位置し、前記周囲部より薄い厚みを有する吸収部とを具備するリング状の第2ホルダと、を準備し、前記ケースと前記第1ホルダの間に前記第2ホルダを配置して前記第2ホルダの中央部に前記シャフトを配置させ、前記シャフトと前記ステータとの間に治具の第1部分を挿入し、前記シャフトと前記ケースとの間に前記治具の第2部分を挿入し、前記第1ホルダの周囲において、前記ケース、前記第1ホルダ、及び前記第2ホルダを固定部材により固定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態が適用される送風機を示す斜視図。
【
図3】
図2の一部を取出して示すものであり、本実施形態に係るモータ取付け構造を分解して示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。図面において、同一部分又は同一機能を有する部分には、同一符号を付している。
【0011】
図1は、本実施形態に係る遠心ファンを用いた送風機10を示している。送風機10は、ハウジング11としての第1ケース12、第2ケース13、第1ホルダ14、及び第2ホルダ15を具備している。
【0012】
第1ケース12と第2ケース13は、例えば樹脂により分割して形成されている。第1ケース12の周囲には複数の係合部12cが設けられ、第2ケース13の周囲には、係合部12cに対応して複数の突起13bが設けられ、これら係合部12cと突起13bが係合することにより、第1ケース12と第2ケース13が結合される。第1ケース12と第2ケース13は、必ずしも分割される必要はなく、一体構成とされていてもよい。
【0013】
第1ケース12及び第2ケース13は、略円筒形であり、吸気口12aと排気口12bを具備している。吸気口12aは、第1ケース12の上面、且つ中央部に配置され、排気口12bは、第1ケース12と第2ケース13の側面で、吸気口12aとほぼ直交する方向に配置されている。
【0014】
第2ケース13の側面には、後述するバルブ構造を構成するパイプ状のダクト13aが設けられている。ダクト13aの一端は、第2ケース13の内部と連通され、他端は、第1ケース12の上面に位置されている。
【0015】
図2に示すように、第1ケース12と第2ケース13とにより構成される空間内には、遠心ファン(以下、ブレードと称す)16が配置され、第2ケース13、第1ホルダ14、第2ホルダ15の内部には、ブレード16を駆動するモータ17が配置される。
【0016】
モータ17は、シャフト17a、スラスト軸受け17b、ハブ17c、補助リング17d、スリーブ17e、リング状のマグネット17f、ステータとしてのコア17g、複数のコイル17hなどにより構成されている。ハブ17c、補助リング17d、スリーブ17e、マグネット17fは、ロータ17iを構成する。
【0017】
シャフト17aの一端は、円盤状の第1ホルダ14の中央部に固定される。第1ホルダ14は、例えば金属により構成され、シャフト17aは、第1ホルダ14の表面に垂直に固定される。
【0018】
シャフト17aの他端には、例えば磁気軸受からなるスラスト軸受け17bを介在して、ロータ17iが設けられる。具体的には、スラスト軸受け17bにハブ17cが設けられ、ハブ17cには、ブレード16と、補助リング17dと、スリーブ17eが固定される。スリーブ17eの内部にシャフト17aが挿入される。シャフト17aとスリーブ17eは、周知の空気動圧軸受けを構成してもよい。スリーブ17eの周囲で、スリーブ17eと補助リング17dとの間にリング状のマグネット17fが取り付けられる。
【0019】
ロータ17iの周囲にリング状のコア17gが配置される。コア17gは、例えば積層された複数の鋼板により構成され、コア17gの複数個所にコイル17hが巻回されている。コア17gは、第2ホルダ15に保持される。
【0020】
第2ホルダ15は、例えば絶縁性の樹脂によって構成され、保持部15aと、周囲部15bと、周囲部15bと保持部15aとの間に位置する吸収部15cとを具備する。保持部15aは、コア17gを保持する。吸収部15cは厚みT1を有し、厚みT1は、周囲部15bの厚みT2より薄い(T1<T2)。このため、コア17gから振動が発生した場合、吸収部15cにより振動を吸収することができる。
【0021】
吸収部15cの厚みが周囲部15bの厚みより薄いため、第2ホルダ15の裏面には、第1凹部15dが形成されている。この第1凹部15d内に印刷基板18が配置される。印刷基板18には、モータ17の駆動回路を構成する図示せぬ部品が配置され、さらに、これら部品に複数のリード線19が電気的に接続される。複数のリード線19は、第1ホルダ14と第2ホルダ15の間から外部に引き出される。
【0022】
さらに、第2ホルダ15は、コア17gの保持部15aに対応して、コア17gを覆うカバー15gを具備し、保持部15aとカバー15gの複数個所にコイル17hが巻回される。カバー15gも絶縁性の樹脂によって構成されており、コア17gとコイル17hは、保持部15aとカバー15gにより絶縁される。
【0023】
第2ケース13、第1ホルダ14、第2ホルダ15は、上記のように積層された状態において、固定部材としての複数のねじ20により固定される。
【0024】
図3、
図4、
図5に示すように、第2ホルダ15の周囲部15bの表面には、複数の第2凹部15eが形成され、各第2凹部15eの中央部に貫通孔15fが形成されている。
【0025】
第2ケース13の裏面の周囲には、第2ホルダ15の第2凹部15eに対応して、複数の突部13cが形成され、各突部13cの中央部に第2ホルダ15の貫通孔15fと連通する例えばねじ穴としての凹部13dが形成されている。複数の突部13cは、第2ホルダ15の複数の第2凹部15eとともに、位置合わせの機能を有している。
【0026】
図3、
図4に示すように、第1ホルダ14の周囲には、第2ホルダ15の貫通孔15fに対応して、複数の貫通孔14aが形成されている。
【0027】
図5に示すように、第2ホルダ15の周囲部(側面)15bの一部には、蓋体15hが外側に延出して形成される。
図6に示すように、第2ホルダ15と第2ケース13とを結合した状態において、蓋体15hによりダクト13aの一端が覆われる。具体的には、ダクト13aは、第2ケース13の側面に軸心に沿って設けられ、ダクト13aの一端の一部が第2ケース13の内部と連通されている。このため、蓋体15hによりダクト13aの一端が覆われると、ダクト13aと第2ケース13及び第1ケース12とを連通する内部空間が形成される。
【0028】
ブレード16は回転により生じる圧力変動により、スラスト方向(シャフト17aの軸心に沿った方向)の力を受ける。この力によるフレード16のスラスト方向の位置変動を抑えるため、モータ17の下側と吸気口12aとを繋ぐダクト13aを第2ケース13の外側に設けている。
【0029】
図6に示すように、送風機10が組み立てられた状態において、ブレード16が回転されると、吸気口12aから吸い込まれた空気の一部は、図示矢印Aに示すように、ブレード16の裏面と第2ケース13の間、モータ17と第2ケース13の間を通ってダクト13aからも排出される。この空気の流れにより、ブレード16のスラスト方向の位置変動を抑制することができる。
【0030】
(モータの組み立て方法)
図3、
図4を参照して、上記構成のモータ17の組み立て方法について説明する。
図3に示すように、先ず、第2ケース13と、シャフト17aが固定された第1ホルダ14と、コア17gが保持された第2ホルダ15が準備される。具体的には、第2ホルダ15の保持部15aとカバー15gの間には、コア17gが設けられ、保持部15aとカバー15gの周囲にはコイル17hが設けられる。さらに、第2ホルダ15の第1凹部15d内には印刷基板18が配置される。
【0031】
次に、例えば第2ホルダ15の第2凹部15eに第2ケース13の突部13cが挿入され、第2ホルダ15と第2ケース13が組み合わされる。第2ホルダ15の第2凹部15eに第2ケース13の突部13cが挿入することにより、位置合わせの粗調整を行うことができる。
【0032】
この後、シャフト17aが固定された第1ホルダ14が第2ホルダ15の裏面に組み合わされる。すなわち、
図4に示すように、シャフト17aは、印刷基板18の中央部に設けられた開口部18a内に挿入され、コア17gの中央部に配置される。
【0033】
次いで、シャフト17aとコア17gとの間に例えば略円筒形の治具21が挿入される。治具21は、例えばシャフト17aの外面とコア17gの内面との間の理想的な距離に等しい厚みを有する第1部分21aと、シャフト17aの外面と第2ケース13の内面との間の理想的な距離と等しい厚みを有する第2部分21bとを有している。治具21をシャフト17aとコア17gとの間に挿入することにより、第1部分21aによりシャフト17aの中心とコア17gの中心が一致され、第2部分21bにより、シャフト17aの中心と第2ケース13の中心が一致させる。
【0034】
このように、治具21を用いて、シャフト17aとコア17g及び第2ケース13の芯出しが行われた状態において、固定部材としての複数のねじ20が第1ホルダ14の貫通孔14a、第2ホルダ15の貫通孔15fに挿入され、第2ケース13の凹部13dに螺合される。シャフト17aの中心とコア17gの中心が一致されるため、シャフト17aに取り付けられるロータ17iのマグネット17fとコア17gの中心も一致される。したがって、ロータ17iの中心とコア17gの中心がずれることを防止でき、振動の発生を防止することが可能である。
【0035】
(実施形態の効果)
上記実施形態によれば、第2ホルダ15は、コア17gを保持する保持部15aと周囲部15bとの間に周囲部15bより薄い厚みを有する吸収部15cを設けている。このため、コア17gの電磁力によって生じるコア17gの振動が第2ホルダ15以外の部材に伝達することを防止でき、モータ17の振動を抑制することが可能である。
【0036】
しかも、シャフト17aとコア17gが別々の部材に設けられる構造において、シャフト17aの中心とコア17gの中心が一致されている。このため、シャフト17aに取り付けられるロータ17iのマグネット17fとコア17gの中心も一致される。したがって、ロータ17iの中心とコア17gの中心がずれることを防止でき、振動の発生を防止できる。
【0037】
さらに、シャフト17aとコア17g及び第2ケース13の芯出しは、コア17gの中央部にシャフト17aを挿入した後、シャフト17aとコア17gの間に治具21の第1部分21aが挿入され、シャフト17aと第2ケース13の間に治具21の第2部分21bが挿入される。この状態において、第1ホルダ14、第2ホルダ15、第2ケース13を複数のねじ20により一体的に固定することにより、完了される。このため、複数の部材の芯出し作業を簡単、且つ確実に行うことができる。
【0038】
また、第2ホルダ15は第2ケース13と同様の直径を有するほぼ円形であり、第2ホルダ15の側面が第2ケース13の側面と一致されている。このため、第2ケース13の側面に設けられたダクト13aの一端部近傍の第2ケース13を第2ホルダ15の側面の一部に設けられた蓋体15hによりか確実に覆うことが可能である。
【0039】
しかも、蓋体15hを第2ホルダ15に設けることにより、第1ホルダ14の形状を第2ホルダ15と同様の直径を有する円形とすることができる。このため、第1ホルダ14の加工を容易化することが可能である。
【0040】
その他、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0041】
12…第1ケース、13…第2ケース、13a…ダクト、14…第1ホルダ、15…第2ホルダ、15a…保持部、15b…周囲部、15c…吸収部、15d…第1凹部、15e…第2凹部、15h…蓋体、16…ブレード(遠心ファン)、17…モータ、17a…シャフト。