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特許7570864記録装置、制御方法、および画像処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】記録装置、制御方法、および画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241015BHJP
   B41J 11/68 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J11/68
B41J2/01 401
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020159661
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022053059
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今野 裕司
(72)【発明者】
【氏名】和田 聡
(72)【発明者】
【氏名】馬場 直子
(72)【発明者】
【氏名】永井 肇
(72)【発明者】
【氏名】西岡 真吾
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 慧
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 純一
(72)【発明者】
【氏名】吉川 世玲菜
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-112759(JP,A)
【文献】特開2007-144960(JP,A)
【文献】特開2011-011488(JP,A)
【文献】特開2017-065131(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0104358(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
B41J 11/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送方向で搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される記録媒体に対してインクを付与して画像を記録する記録手段と、
前記記録手段より前記搬送方向の下流側に設けられ、前記搬送方向と交差する記録媒体の幅方向における、成果物のサイズに応じた位置において、前記搬送方向に沿って記録媒体を切断するスリッターユニットと、
画像データを画像処理して記録用のデータを取得する画像処理手段と、
を有し、前記記録用のデータに基づいて画像を記録した後に、前記スリッターユニットによって、記録後の画像の前記幅方向における端部を切断して成果物を生成する記録装置であって、
前記画像処理手段は、
前記画像データに基づいて、記録時に前記搬送方向の下流側に位置する画像の先端側の、前記幅方向の一方の端部に形成された第1領域における第1インク付与量と、前記幅方向の他方の端部に形成された第2領域における第2インク付与量とを算出し、
前記第1インク付与量および前記第2インク付与量の少なくともどちらか一方が閾値を超えている場合、前記画像データを所定の比率で拡大して前記記録用のデータを取得し、
前記第1インク付与量および前記第2インク付与量のどちらも前記閾値以下の場合、前記記録用のデータを取得する際に、前記所定の比率である第1拡大率よりも小さい第2拡大率で前記画像データを拡大することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
記録媒体を搬送方向で搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される記録媒体に対してインクを付与して画像を記録する記録手段と、
前記記録手段より前記搬送方向の下流側に設けられ、前記搬送方向と交差する記録媒体の幅方向における、成果物のサイズに応じた位置において、前記搬送方向に沿って記録媒体を切断するスリッターユニットと、
画像データを画像処理して記録用のデータを取得する画像処理手段と、
を有し、前記記録用のデータに基づいて画像を記録した後に、前記スリッターユニットによって、記録後の画像の前記幅方向における端部を切断して成果物を生成する記録装置であって、
前記画像処理手段は、
前記画像データに基づいて、記録時に前記搬送方向の下流側に位置する画像の先端側の、前記幅方向の一方の端部に形成された第1領域における第1インク付与量と、該先端側の、前記幅方向の他方の端部に形成された第2領域における第2インク付与量と、記録時に前記搬送方向の上流側に位置する画像の後端側の、前記幅方向の一方の端部に形成された第3領域における第3インク付与量と、該後端側の、前記幅方向の他方の端部に形成された第4領域における第4インク付与量とを算出し、
前記第1インク付与量および前記第2インク付与量の少なくともどちらか一方が閾値を超え、かつ、前記第3インク付与量および前記第4インク付与量のどちらも前記閾値以下である場合、前記画像データを180°回転して前記記録用のデータを取得し、
前記第1インク付与量および前記第2インク付与量の少なくともどちらか一方が前記閾値を超え、かつ、前記第3インク付与量および前記第4インク付与量の少なくともどちらか一方が前記閾値を超えている場合、前記画像データを回転させず、所定の比率で拡大して前記記録用のデータを取得し、
前記第1インク付与量および前記第2インク付与量のどちらも前記閾値以下の場合と、前記第1インク付与量および前記第2インク付与量の少なくともどちらか一方が前記閾値を超え、かつ、前記第3インク付与量および前記第4インク付与量のどちらも前記閾値以下である場合とには、前記記録用のデータを取得する際に、前記所定の比率である第1拡大率よりも小さい第2拡大率で前記画像データを拡大することを特徴とする記録装置。
【請求項3】
前記画像処理手段においてインク付与量を算出する際に用いる前記画像データの解像度は、前記記録用のデータを取得する際に用いる前記画像データの解像度よりも低いことを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記閾値は、記録媒体に浮きが発生するインク付与量の下限値、または、該下限値よりも一定量だけ少ない値であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記第1領域は、記録時に前記搬送方向の下流側に位置する画像の先端側の、前記幅方向の一方側の第1角部から、前記搬送方向および前記幅方向に所定長さの矩形領域であり、
前記第2領域は、該先端側の、前記幅方向の他方側の第2角部から、前記搬送方向および前記幅方向に前記所定長さの矩形領域である
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項6】
前記第1領域は、記録時に前記搬送方向の下流側に位置する画像の先端側の、前記幅方向の一方側の第1角部から、前記搬送方向および前記幅方向に所定長さの矩形領域であり、
前記第2領域は、該先端側の、前記幅方向の他方側の第2角部から、前記搬送方向および前記幅方向に前記所定長さの矩形領域であり、
前記第3領域は、記録時に前記搬送方向の上流側に位置する画像の後端側の、前記幅方向の一方側の第3角部から、前記搬送方向および前記幅方向に前記所定長さの矩形領域であり、
前記第4領域は、該後端側の、前記幅方向の他方側の第4角部から、前記搬送方向および前記幅方向に前記所定長さの矩形領域である
ことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項7】
前記画像処理手段で算出するインク付与量は、単位面積当たりのインク付与量を示す記録デューティであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記録装置。
【請求項8】
生成される成果物は、記録された画像の前記幅方向の端部に隣接して余白が形成されない成果物であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記閾値は、記録媒体に、前記スリッターユニットにより切断された画像の幅方向の端部に隣接する余白を形成する浮きを生じさせるインク付与量の下限値、または、該下限値よりも一定量だけ少ない値であることを特徴とする請求項8に記載の記録装置。
【請求項10】
前記画像処理手段は、拡大していない画像データを画像処理して記録用のデータを取得し、
取得した記録用のデータに基づいて記録した後に、前記スリッターユニットによって、前記幅方向において、記録後の画像の端部から離間した位置を切断することで、該画像の前記幅方向の端部に隣接して余白が形成された成果物をさらに取得することができる請求項8または9に記載の記録装置。
【請求項11】
記録媒体を搬送方向で搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される記録媒体に対してインクを付与して画像を記録する記録手段と、
前記記録手段の前記搬送方向の下流側において、前記搬送方向に沿って記録媒体を切断するスリッターユニットと、を有する記録装置の制御方法であって、
画像データに基づいて、記録時に前記搬送方向の下流側に位置する画像の先端側の、前記搬送方向と交差する記録媒体の幅方向の一方の端部に形成された第1領域における第1インク付与量と、前記幅方向の他方の端部に形成された第2領域における第2インク付与量とを算出する算出工程と、
前記第1インク付与量および前記第2インク付与量の少なくともどちらか一方が閾値を超えている場合、所定の比率で拡大した前記画像データを画像処理して記録用のデータを取得し、前記第1インク付与量および前記第2インク付与量のどちらも前記閾値以下の場合、前記所定の比率である第1拡大率よりも小さい拡大率で拡大した前記画像データを画像処理して記録用のデータを取得する取得工程と、
前記記録用のデータに基づいて画像を記録する記録工程と、
記録した画像の前記幅方向における端部を、前記スリッターユニットにより切断する切断工程と、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項12】
記録媒体の搬送方向で搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される記録媒体に対してインクを付与して画像を記録する記録手段と、
前記記録手段の前記搬送方向の下流側において、前記搬送方向に沿って記録媒体を切断するスリッターユニットと、を有する記録装置の制御方法であって、
画像データに基づいて、記録時に前記搬送方向の下流側に位置する画像の先端側の、前記搬送方向と交差する記録媒体の幅方向の一方の端部に形成された第1領域における第1インク付与量と、該先端側の、前記幅方向の他方の端部に形成された第2領域における第2インク付与量と、記録時に前記搬送方向の上流側に位置する画像の後端側の、前記幅方向の一方の端部に形成された第3領域における第3インク付与量と、該後端側の、前記幅方向の他方の端部に形成された第4領域における第4インク付与量とを算出する算出工程と、
前記第1インク付与量および前記第2インク付与量の少なくともどちらか一方が閾値を超え、かつ、前記第3インク付与量および前記第4インク付与量のどちらも前記閾値以下である場合、180°回転した前記画像データを画像処理して記録用のデータを取得し、前記第1インク付与量および前記第2インク付与量の少なくともどちらか一方が前記閾値を超え、かつ、前記第3インク付与量および前記第4インク付与量の少なくともどちらか一方が前記閾値を超えている場合、回転させずに、所定の比率で拡大した前記画像データを画像処理して記録用のデータを取得し、前記第1インク付与量および前記第2インク付与量のどちらも前記閾値以下の場合と、前記第1インク付与量および前記第2インク付与量の少なくともどちらか一方が前記閾値を超え、かつ、前記第3インク付与量および前記第4インク付与量のどちらも前記閾値以下である場合とには、前記所定の比率である第1拡大よりも小さい第2拡大率で拡大した前記画像データを画像処理して記録用のデータを取得する取得工程と、
前記記録用のデータに基づいて画像を記録する記録工程と、
記録した画像の前記幅方向における端部を、前記スリッターユニットにより切断する切断工程と、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項13】
搬送方向に搬送される記録媒体に対してインクを付与して記録した画像の、前記搬送方向と交差する記録媒体の幅方向における端部を、前記搬送方向に沿って切断して成果物を生成する記録装置での画像の記録に用いる記録用のデータを生成する画像処理装置であって、
画像データに基づいて、記録時に前記搬送方向の下流側に位置する画像の先端側の、前記幅方向の一方の端部に形成された第1領域における第1インク付与量と、前記幅方向の他方の端部に形成された第2領域における第2インク付与量とを算出する算出手段と、
前記第1インク付与量および前記第2インク付与量の少なくともどちらか一方が閾値を超えている場合、前記画像データを所定の比率で拡大し、前記第1インク付与量および前記第2インク付与量のどちらも前記閾値以下の場合、前記所定の比率である第1拡大率よりも小さい第2拡大率で前記画像データを拡大する拡大手段と、
前記拡大手段により拡大された前記画像データを画像処理して、前記記録用のデータを作成する作成手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項14】
搬送方向に搬送される記録媒体に対してインクを付与して記録した画像の、前記搬送方向と交差する記録媒体の幅方向における端部を、前記搬送方向に沿って切断して成果物を生成する記録装置での画像の記録に用いる記録用のデータを生成する画像処理装置であって、
画像データに基づいて、記録時に前記搬送方向の下流側に位置する画像の先端側の、前記幅方向の一方の端部に形成された第1領域における第1インク付与量と、該先端側の、前記幅方向の他方の端部に形成された第2領域における第2インク付与量と、記録時に前記搬送方向の上流側に位置する画像の後端側の、前記幅方向の一方の端部に形成された第3領域における第3インク付与量と、該後端側の、前記幅方向の他方の端部に形成された第4領域における第4インク付与量とを算出する算出手段と、
前記第1インク付与量および前記第2インク付与量の少なくともどちらか一方が閾値を超え、かつ、前記第3インク付与量および前記第4インク付与量のどちらも前記閾値以下である場合、前記画像データを180°回転し、前記第1インク付与量および前記第2インク付与量の少なくともどちらか一方が前記閾値を超え、かつ、前記第3インク付与量および前記第4インク付与量の少なくともどちらか一方が前記閾値を超えている場合、回転させずに、前記画像データを所定の比率で拡大し、前記第1インク付与量および前記第2インク付与量のどちらも前記閾値以下の場合と、前記第1インク付与量および前記第2インク付与量の少なくともどちらか一方が前記閾値を超え、かつ、前記第3インク付与量および前記第4インク付与量のどちらも前記閾値以下である場合とには、前記所定の比率である第1拡大率よりも小さい第2拡大率で前記画像データを拡大する拡大手段と、
前記拡大手段により処理された前記画像データを画像処理して、前記記録用のデータを作成する作成手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送されるシート状の記録媒体を切断可能な記録装置およびその制御方法ならびに画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、記録後の記録媒体を、記録媒体の搬送方向に沿って切断するスリッターを備えた記録装置に関する技術が開示されている。具体的には、特許文献1に開示された記録装置では、搬送される記録媒体が、その先端からスリッターの刃部に挿入され、記録媒体の搬送に伴って搬送方向に沿って切断される。
【0003】
こうした特許文献1に記載の記録装置では、画像の周囲に余白を設けないフチなし記録と、画像の周囲に余白を設けるフチあり記録とを選択的に実行することができる。フチなし記録の場合には、幅方向において、スリッターにより切断される切断位置よりもその外側に数mm程度はみ出して画像が記録される。このはみ出し量については、インクの消費量を抑制するために、可能な限り少ないことが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-013438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、画像の記録時に記録媒体に付与するインク量が多いと、記録媒体がプラテンから浮く現象、所謂、「浮き」が生じる。こうした浮きが生じた状態の記録媒体では、幅方向に亘って記録媒体が高さ方向で波打つため、当該記録媒体に記録された画像の幅方向の端部は、浮きが生じていないときと比較して幅方向の中心側に寄る傾向にある。従って、記録媒体に浮きが生じると、記録媒体の幅方向における切断位置が想定した位置よりも外側に変化する虞がある。特に、記録媒体の切断開始位置から搬送方向に所定の長さの範囲において、こうした変化が顕著であり、想定よりも幅広く切断される虞があった。この結果、特にフチなし記録の際には、記録された画像の幅方向の端部の一部に隣接して余白が生じる虞があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、記録媒体の幅方向において切断位置が変化する可能性がある場合であっても、ユーザが所望する成果物を生成可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、記録媒体を搬送方向で搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される記録媒体に対してインクを付与して画像を記録する記録手段と、前記記録手段より前記搬送方向の下流側に設けられ、前記搬送方向と交差する記録媒体の幅方向における、成果物のサイズに応じた位置において、前記搬送方向に沿って記録媒体を切断するスリッターユニットと、画像データを画像処理して記録用のデータを取得する画像処理手段と、を有し、前記記録用のデータに基づいて画像を記録した後に、前記スリッターユニットによって、記録後の画像の前記幅方向における端部を切断して成果物を生成する記録装置であって、前記画像処理手段は、前記画像データに基づいて、記録時に前記搬送方向の下流側に位置する画像の先端側の、前記幅方向の一方の端部に形成された第1領域における第1インク付与量と、前記幅方向の他方の端部に形成された第2領域における第2インク付与量とを算出し、前記第1インク付与量および前記第2インク付与量の少なくともどちらか一方が閾値を超えている場合、前記画像データを所定の比率で拡大して前記記録用のデータを取得し、前記第1インク付与量および前記第2インク付与量のどちらも前記閾値以下の場合、前記記録用のデータを取得する際に、前記所定の比率である第1拡大率よりも小さい第2拡大率で前記画像データを拡大することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、記録媒体の幅方向において切断位置が変化する可能性がある場合であっても、ユーザが所望する成果物を生成することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】記録装置の概略構成図。
図2】カッターおよびスリッター近傍の概略構成図。
図3】スリッターユニットにおける上可動刃と下可動刃との関係を示す図。
図4】スリッターユニットの構成を説明する図。
図5】記録装置の制御系のブロック構成図。
図6】記録媒体に生じる浮きを説明する図。
図7】フチなし記録時に切断される画像記録領域のはみ出し量を説明する図。
図8】記録媒体に浮きが生じる際の画像記録領域の一例を示す図。
図9】制御部の画像処理に関する機能的構成のブロック図。
図10】インク付与量を算出する画像の端部領域を説明する図。
図11】記録処理の詳細な処理ルーチンを示すフローチャート。
図12】異なる実施形態での制御部の画像処理に関する機能的構成のブロック図。
図13】異なる実施形態でのインク付与量を算出する画像の端部領域を説明する図。
図14】画像を180°回転したときの図。
図15】異なる実施形態での記録処理の詳細な処理ルーチンを示すフローチャート。
図16図15の記録処理のサブルーチンの拡大率の決定処理のフローチャート。
図17図15の記録処理のサブルーチンの回転決定処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら、本実施形態による記録装置、制御方法、および画像処理装置の一例を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を限定するものではなく、また、実施形態で説明されている特徴の組み合わせのすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。また、実施形態に記載されている構成要素の相対位置および形状などは、あくまで例示であり、特に断りのない限り、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
なお、以下の説明において、「記録」には、文字、図形など有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターンなどを形成する、または媒体の加工を行う場合を含む。また、「記録」とは、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かは問わない。さらに、実施形態では、「記録媒体」として、記録媒体を想定しているが、カット紙、布、プラスチックフィルムなどであってもよい。
【0012】
(第1実施形態)
まず、図1乃至図11を参照しながら、第1実施形態による記録装置について説明する。図1は、実施形態による記録装置の概略構成図である。
【0013】
<記録装置の全体構成>
図1の記録装置100は、ホスト装置(不図示)から出力されるジョブデータに基づいて、長尺のシート状の記録媒体に対してインクを付与して記録を行うインクジェット記録装置である。本実施形態では、記録装置100において、長尺のシート状の記録媒体1を巻き回して形成されたロールが保持されている。ロールから巻き解かれた記録媒体1は、上ガイド6および下ガイド7から形成される搬送路を通り、下流へと送られる。その後、記録媒体1は、搬送ローラ8とピンチローラ9とによって挟持され、画像記録部に搬送される。画像記録部は、記録ヘッド2と、記録ヘッド2を搭載するキャリッジ3と、記録ヘッド2に対向する位置に配置されたプラテン10とを備えている。記録媒体1は、搬送ローラ8によってプラテン10上へと搬送される。画像記録部では、プラテン10上に搬送された記録媒体1に対して、記録ヘッド2から吐出されたインクが付与され、画像が記録される。
【0014】
キャリッジ3は、記録媒体1の搬送方向であるY方向と交差(本実施形態では直交)するX方向に延在するガイドシャフト4と、ガイドシャフト4に平行に設けられたガイドレール(不図示)とに摺動可能に支持されている。また、キャリッジ3は、記録ヘッド2に対し、記録媒体1の搬送方向の下流側に、プラテン10と対向するように反射型の検出センサ12を備えている。
【0015】
これにより、キャリッジ3は、記録ヘッド2を保持したままガイドシャフト4に沿ってX方向に走査、つまり、往復移動可能な構成となっている。記録ヘッド2は、インクを吐出するためのノズル(不図示)が形成されたノズル面がプラテン10と対向するようにキャリッジ3に保持されている。そして、キャリッジ3がX方向で走査しているときに、記録ヘッド2におけるノズルからインクを吐出することによって、記録媒体1に対してインクを付与して記録を行う。このように、本実施形態では、記録ヘッド2が、記録媒体に記録を行う記録手段として機能している。なお、本実施形態では、記録ヘッド2は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のインクを吐出するものとする。
【0016】
記録装置100は、キャリッジ3を介して記録ヘッド2をX方向で走査させて記録媒体1に記録を行った後、搬送ローラ8により記録媒体1を所定量だけ搬送し、再びキャリッジ3を介して記録ヘッド2を走査させて記録媒体1に対して記録を行う。このように、記録装置100では、記録ヘッド2をX方向で走査させて記録する記録動作と、搬送方向に記録媒体1を所定量だけ搬送する搬送動作とを繰り返し実行することで、画像データに基づく画像が記録媒体1上に記録される。
【0017】
検出センサ12は、プラテン10やプラテン10上を搬送される記録媒体1に光を照射するとともに反射光を受光して、検出位置(検出スポット)での反射光の強度を検出可能な構成となっている。こうした反射光の強度たる反射強度は、白い記録媒体では強くなり、濃度の高いパターンや黒い部材では弱くなる。従って、プラテン10が黒色、記録媒体1が白色の場合、両者の反射強度は大きく異なる。これにより、検出センサ12の検出結果に基づいて、搬送される記録媒体1の搬送方向における先端部を検知することができる。また、検出センサ12は、キャリッジ3に搭載されているので、キャリッジ3のX方向での往復移動によって、記録媒体1の幅方向(X方向)の端部の位置を検出することができる。
【0018】
記録媒体1の搬送方向におけるキャリッジ3の下流には、X方向に記録媒体1を切断するためのカッター5が設けられている。また、搬送方向におけるカッター5の下流には、記録媒体1を搬送方向に沿って切断するためのスリッター13が設けられている。このスリッター13の搬送方向の下流には、切断された記録媒体1を排出する排出ガイド11が設けられている。なお、図1での図示は省略するが、搬送方向において、スリッター13の上流側であり、かつ、キャリッジ3の下流側において、複数の拍車72がホルダ74に保持されてX方向に沿って配置されている(図7(a)(b)参照)。
【0019】
<カッターの構成>
図2は、記録装置100のカッター5およびスリッター13近傍の概略構成図である。本明細書において符号の末尾の「L」および「R」は、図中の左側(即ち、+X側)の部材と、図中の右側(即ち、-X側)の部材とをそれぞれ示すものである。本明細書では、左右の部材で共通する事項については、符号の末尾を省略する場合がある。
【0020】
カッター5は、記録媒体1をX方向に切断する切断部としてのカッターユニット300と、カッターユニット300をX方向に沿って移動させる移動部としての移動ユニット290とを備えている。
【0021】
移動ユニット290は、X方向に延在するガイドレール101に摺動可能に設けられたカッターキャリッジ200を備えている。カッターキャリッジ200には、カッターユニット300と、ベルト102とが設けられている。ベルト102は、ガイドレール101の左右の端部近傍に設けられたモータプーリ107とテンショナプーリ108とに、無端状に張設されている。そして、ベルト102は、モータプーリ107に接続されたカッターモータ103の駆動により可動するように構成されている。
【0022】
カッターモータ103は、カッターエンコーダ104を備えている。カッターエンコーダ104は、カッターモータ103の駆動に応じたパルス数をカウントする。後述する制御部410は、カッターキャリッジ200の原点位置と、カッターエンコーダ104で得られるパルス数とに基づいて、カッターユニット300のX1およびX2方向の移動位置を制御することとなる。
【0023】
カッターユニット300は、上可動刃301と下可動刃302とを有し、これらの接触点においてX1方向に移動する際に記録媒体1を切断する。また、上可動刃301および下可動刃302は、カッターモータ103と、ベルト102およびカッターキャリッジ200を介して連結されている。このため、上可動刃301および下可動刃302は、カッターモータ103の駆動によって回転駆動可能な構成となっている。
【0024】
記録媒体1の切断時には、下可動刃302および下可動刃に接触する上可動刃301がともに回転しながら、記録媒体1を切断する。図2では、記録媒体第一端部1aから記録媒体第二端部1bに向かってカッターユニット300による切断が行われる。記録媒体第一端部1aは、カッターユニット300の待機位置P1側の端部である。記録媒体1の切断後は、カッターキャリッジ200は、所定の反転位置で反転して、次の切断動作のために待機位置P1となる位置まで移動し、待機する。なお、本実施形態ではカッターユニット300は、カッターキャリッジ200に搭載されている例を示しているが、例えば、記録ヘッド2を搭載するキャリッジ3にカッターユニット300を搭載するようにしてもよい。
【0025】
<スリッターの構成>
スリッター13は、記録媒体1の搬送方向においてカッター5の下流側に設けられている。スリッター13は、X方向に延在するスリッターガイドレール307に移動可能に設けられたスリッターユニット303を有している(図2参照)。このスリッターユニット303は、X1およびX2方向の任意の位置に移動可能であり、移動後の位置において記録媒体1を搬送方向(+Y方向)と平行な方向に沿って切断可能である。
【0026】
本実施形態では、スリッター13は、スリッターユニット303L、303Rの2個を搭載した構成とする。なお、スリッターユニット303L、303Rは、X1およびX2方向において左右対称で同じ部品構成となっている。このため、図2では簡略化のため、主にスリッターユニット303Lの部品に符号を付している。
【0027】
図3および図4は、スリッターユニット303Lの詳細を説明する図である。図3(a)は、スリッターユニット303Lの切断部60Lの平面図であり、図3(b)は、切断部60Lの側面図である。図4は、スリッターユニット303Lの正面図である。
【0028】
スリッターユニット303Lは、記録媒体1をY方向に沿って切断するための切断部60Lと、切断部60LをX方向に沿って移動させる移動部62Lとを備えている(図2参照)。切断部60Lには、スリッター上可動刃304Lと、スリッター下可動刃305Lとが設けられている。スリッター上可動刃304Lとスリッター下可動刃305Lとは互いに、上下方向(Z方向)に丸刃オーバーラップ量313Lと(図3(b)参照)、切断方向となる搬送方向に対して所定量の角度(交差角)θとを設けるように配置される(図3(a)参照)。
【0029】
スリッター上可動刃304Lとスリッター下可動刃305Lとの接触点311L(図3(b)参照)において、記録媒体1が切断される。スリッター上可動刃304Lは、ギアを介してスリッター駆動モータ16Lに接続されており(図4参照)、スリッター駆動モータ16Lの駆動によって回転する。スリッター駆動モータ16Lの駆動力によって、スリッター上可動刃304Lを回転させる際には、スリッター上可動刃304と同軸上に接続されたスリッター上搬送ローラ320Lも回転する。スリッター上搬送ローラ320Lの外周面は、スリッター下可動刃305Lの同軸上に接続されたスリッター下搬送ローラ321Lの外周面と、ローラ挟持点312Lで接触している(図3(b)参照)。
【0030】
このため、スリッター下搬送ローラ321Lは、スリッター上搬送ローラ320Lの摩擦伝達によって駆動するとともに、このスリッター下搬送ローラ321Lの駆動によって、スリッター下可動刃305Lが回転する。従って、こうした摩擦伝達による駆動によって、スリッター上搬送ローラ320Lおよびスリッター下搬送ローラ321Lにより記録媒体1が搬送されるとともに、上下の刃(304L、305L)が共に回転しながら記録媒体1が搬送方向に切断される。従って、本実施形態では、搬送ローラ8およびスリッター上搬送ローラ320などが、記録媒体を搬送方向に搬送する搬送手段として機能している。
【0031】
スリッター駆動モータ16Lは、スリッター駆動エンコーダ310Lを備えおり、このスリッター駆動エンコーダ310Lによる出力結果に基づいて、その駆動量が制御可能となっている。スリッター駆動モータ16Lは、搬送ローラ8と同期してその駆動が制御される。
【0032】
また、移動部62Lには、スリッター移動モータ14Lと、スリッター移動ローラ306Lとが設けられている。スリッター移動モータ14Lは、ギアを介してスリッター移動ローラ306Lに駆動力を伝達可能な構成となっている。なお、スリッター移動モータ14Lは、スリッター移動エンコーダ309Lを備えており、このスリッター移動エンコーダ309Lによる出力結果に基づいて、制御部410によりその駆動量が制御される。即ち、スリッター移動エンコーダ309Lの出力結果に基づいて、待機位置からのスリッターユニット303Lの移動位置を制御することとなる。
【0033】
スリッター移動ローラ306Lは、X方向に延在するスリッターガイドレール307に沿って移動可能に設けられている。具体的には、スリッター移動ローラ306Lは、スリッターガイドレール307に当接している。そして、スリッター移動ローラ306Lが駆動すると、その表面と、スリッターガイドレール307との摩擦によって、スリッターユニット303LがX1およびX2方向に移動する。即ち、スリッター上可動刃304L、スリッター下可動刃305L、スリッター上搬送ローラ320L、およびスリッター下搬送ローラ321Lは、スリッターガイドレール307に沿って一体的に移動可能となっている。
【0034】
本実施形態では、移動部62Lの移動機構を、スリッター移動ローラ306Lの摩擦駆動としたが、スリッター移動ローラ306をピニオン、スリッターガイドレール307をラックとしたラック&ピニオンの構成としてもよい。
【0035】
こうした構成のスリッターユニット303で記録媒体1を切断する場合には、まず、スリッターユニット303L、303Rを切断位置に移動させる。また、搬送ローラ8を駆動する搬送モータ51およびスリッター駆動モータ16L、16Rを駆動して、搬送ローラ8で記録媒体1を搬送する。
【0036】
次に、搬送ローラ8により搬送された記録媒体1の先端がスリッター13の接触点311L、311Rに到達すると、スリッター上搬送ローラ320L、320Rおよびスリッター下搬送ローラ321L、321Rにより記録媒体1が搬送される。また、このとき、記録媒体1は左右のスリッター上可動刃304L、304Rおよびスリッター下可動刃305L、305Rによって切断される。このようにして、記録媒体1は、上下の刃(304、305)により切断されながら、上下のローラ(320、321)に挟持されて搬送され、排出ガイド11を通って排出される。
【0037】
スリッターユニット303による切断は、記録動作と並行して実行することができる。この場合、まず、スリッターユニット303を、ユーザの設定に応じて、待機位置からX1およびX2方向の所定の切断位置に移動させる。なお、所定の切断位置とは、成果物のサイズに応じた位置である。そして、搬送モータ51およびスリッター駆動モータ16が駆動されて、搬送ローラ8により記録媒体1を搬送する。
【0038】
記録媒体1が記録ヘッド2と対向する位置まで搬送されると、画像記録部において、キャリッジ3を介した記録ヘッド2のX1またはX2方向への移動による1ライン分の走査により、1ライン分の画像が記録される。その後、記録媒体1は、搬送ローラ8とピンチローラ9により所定量だけ搬送される。そして、キャリッジ3を介して記録ヘッド2を走査して1ライン分の画像を記録する。こうして記録動作と搬送動作とを繰り返して記録が進行し、記録媒体1の先端が接触点311に到達すると、記録媒体1は回転しているスリッター上可動刃304L、304Rおよびスリッター下可動刃305L、305Rによって切断される。また、記録媒体1は、切断されながら、スリッター上搬送ローラ320L、320Rおよびスリッター下搬送ローラ321L、321Rに挟持されて搬送される。
【0039】
そして、画像の記録が終了し、スリッターユニット303による切断が終了すると、スリッターユニット303は、例えば、記録媒体第一端部1a、記録媒体第二端部1bの近傍に位置する所定の待機位置まで移動する。その後、記録媒体1は、カッターユニット300により切断可能な切断位置まで搬送され、カッターユニット300によってX方向に切断されて、切断された部分が排出ガイド11を通って排出される。
【0040】
なお、上述したスリッター13の構成はその一例に過ぎず、記録媒体1の幅方向に移動可能であり、幅方向の任意の位置にて、搬送される記録媒体1を搬送方向に切断可能な構成であれば、どのような構成であってもよい。例えば、スリッター上搬送ローラ320およびスリッター下搬送ローラ321と、スリッター上可動刃304およびスリッター下可動刃305とが、独立して駆動する形態としてもよい。また、駆動源を持たずに、手動で切断位置まで移動するようにしてもよいし、切断部60を固定された平刃により構成するようにしてもよい。
【0041】
<記録装置の制御構成>
図5は、記録装置100の制御系のブロック構成図である。記録装置100は、装置全体の動作を制御するための制御部410を備えている。制御部410は、CPU411、ROM412、RAM413、およびモータドライバ414を備えている。
【0042】
制御部410は、搬送ローラ8を駆動する搬送モータ51、カッター5を駆動するカッターモータ103、スリッター13を移動するスリッター移動モータ14、およびスリッター13の切断部60を駆動するスリッター駆動モータ16を制御する。また、制御部410は、キャリッジ3を移動するキャリッジモータ52、搬送モータ51の駆動量を検出する搬送ローラエンコーダ112、およびカッターモータ103の駆動量を検出するカッターエンコーダ104を制御する。さらに、制御部410は、スリッター移動モータ14の駆動量を検出するスリッター移動エンコーダ309、およびスリッター駆動モータ16の駆動量を検出するスリッター駆動エンコーダ310を制御する。さらにまた、制御部410は、キャリッジ3の位置を検出するためのキャリッジエンコーダ407、記録媒体1にインクを付与する記録ヘッド2、および検出センサ12の駆動を制御する。即ち、制御部410は、各エンコーダやセンサなどから取得した信号に基づいて、各モータや記録ヘッド2の制御を行うこととなる。
【0043】
<記録処理>
上記のように、記録装置100では、画像が記録された記録媒体1の幅方向(X方向)における所定位置をスリッター13により切断可能な構成となっている。このため、記録装置100では、例えば、幅方向において、成果物として残す画像が記録された画像記録領域のX方向の両端部の内側をスリッター13により切断することで、所謂、フチなし記録を行うことができる。スリッター13を備えていない記録装置によりフチなし記録を行った場合と比較して、記録装置100では、記録媒体1からはみ出すようにインクを付与する必要がないため、プラテン10へのインクの付着を大幅に抑制することができる。
【0044】
このように、記録装置100では、記録装置100に設けられた操作部(不図示)、記録装置100に接続されたホスト装置(不図示)などを介して、「フチあり記録」、または、「フチなし記録」を選択することが可能となっている。「フチなし記録」が選択された場合には、記録された画像、つまり、画像記録領域の幅方向の端部をスリッター13によって切断する。一方、「フチあり記録」が選択された場合には、幅方向において、記録された画像、つまり、画像記録領域から一定量だけ離間した、画像が記録されていな部分をスリッター13によって切断する。
【0045】
図6は、フチなし記録時に生じる記録媒体の浮きを説明する図である。図6(a)は、フチなし記録を実行する際の、スリッターユニット303で生じる抵抗力を説明する図である。図6(b)は、スリッターユニット303で生じた抵抗力による記録媒体の浮きを説明する図である。
【0046】
フチなし記録のときには、スリッターユニット303による切断の際に、記録媒体1の+Y方向への搬送量に対して、スリッターユニット303により記録媒体1には-Y方向の抵抗力が生じる(図6(a)参照)。特に、記録媒体1の切断開始からの所定領域では、切断開始位置を含む先端領域では、記録媒体1がプラテン10への貼り付く力が弱く、かつ、記録媒体の先端がスリッターユニット303の切断部60に突入する際の突入抵抗力が生じる。このため、記録媒体1の上記所定領域の切断時には、図6(b)のように、記録媒体に浮きが生じ易くなる。記録媒体に生じた浮きによって、記録媒体1は幅方向においてその中心部分に寄る。これにより、記録媒体1の浮きが生じた領域をスリッターユニット303によりY方向に沿って切断する際には、当該領域は幅方向(X方向)に広く切断されてしまう。なお、こうした記録媒体に生じる浮きは、記録媒体1の剛性が低いほど顕著に現れる。
【0047】
ところで、記録装置100では、フチなし記録の際には、図7(a)のように、スリッターユニット303は、記録媒体1の幅方向において、記録ヘッド2によりインクが付与されて記録された記録画像領域PS内を切断する。図7(a)(b)は、フチなし記録の際の画像記録領域PSと、スリッターユニット303による切断ラインCとの関係を示す図である。画像記録領域PSの切断ラインCより外側に位置するはみ出し部分Prは、成果物にとって不要となる。このため、記録時のインク使用量を抑制する目的で、記録画像領域PSにおいて、幅方向でのはみ出し部分Prの量、つまり、はみ出し量APが小さくなるように、画像記録領域PSの大きさが調整される(図7(b)参照)。
【0048】
ここで、記録媒体1は、インクが付与されることでインクの液体成分が浸透し、これにより剛性(剛度)が低下する。こうした記録媒体1の剛性の低下は、インク付与量が多いほど、例えば、単位面積当たりのインク付与量を示す記録デューティが高いほど、大きくなる。記録媒体1に生じる浮きは、上記のように記録媒体1の剛性が低くなるほど顕著に現れるとともに、記録媒体の先端側に生じ易い。このため、画像記録領域PSのはみ出し量APが小さくなるように調整されていると、記録媒体1の先端側の浮きが生じやすい領域では、幅方向において、想定されていた位置よりも外側が切断されてしまう。このため、記録媒体の先端側では、記録画像領域PSよりも切断ラインCが外側に位置してしまい、フチなし記録の際には、画像の幅方向の端部に隣接して余白が形成されて、画像の周囲にフチのない成果物を取得することができない虞がある。
【0049】
こうした現象は、図7(b)のように、スリッターユニット303L、303Rに挟まれた領域全体に画像が記録される場合のみならず、図8のように、画像が幅方向の一方側に寄っている場合でも同様に生じる。図8は、画像記録領域PSが、スリッターユニット303R側に位置する場合を示す図である。即ち、画像記録領域PSが、X方向およびY方向に延在して一定の面積Stを有し、かつ、スリッターユニット303Rによる切断ラインCR上に位置する場合でも、インク付与量が多いほど、成果物では切断ラインCR側に余白が発生することがある。なお、こうした現象は、本願発明者による実験では、条件により多少の誤差はあるが、画像記録領域PSが10cm×10cm、インク付与量が記録デューティ150%程度で認められた。記録デューティは、1200dpi格子に4plのインク滴を1発記録した状態を100%と定義している。
【0050】
そこで、本実施形態では、記録媒体1がスリッターユニット303に突入する先端側において、記録される画像の幅方向の両端に設けられた端部領域のインク付与量を取得する。そして、取得したインク付与量に応じて、記録する画像の大きさを調整することで、画像記録領域の大きさを変更し、フチなし記録の際に、画像の幅方向の端部に隣接する余白の発生を抑制する。
【0051】
以下、記録装置100で実行する記録処理について、詳細に説明する。まず、記録処理で実行される画像処理のための制御部410における機能的構成について説明する。図9は、制御部410における画像処理に関する機能的構成を示すブロック図である。図10は、インク付与量を算出する端部領域を示す図である。
【0052】
制御部410には、ホスト装置などにおけるアプリケーション902から画像データが入力される。画像データは、RGB各8bit、合計24bitのデータでアプリケーション902から出力される。アプリケーション902からは、後述するプレ画像処理および記録用画像処理のそれぞれで必要となる解像度の画像データが出力される。具体的には、後述する記録処理の、プレ画像処理で用いる低解像度の画像データと、記録用画像処理で用いる高解像度の画像データとが出力される。本実施形態では、プレ画像処理では解像度150dpi、記録用画像処理では記録に必要となる解像度である解像度600dpiの画像データが出力される。尚、アプリケーション902から高解像度の画像データのみが出力され、制御部410が、その高解像度の画像データから低解像度の画像データを生成してもよい。
【0053】
制御部410は、後述する決定部912で決定した拡大率に基づいて、画像データを拡大する画像サイズ変換部904と、グラフィック調や写真調といった、画像データ特性に適した色の補正を行う色補正部906とを備えている。また、制御部410は、RGB形式の画像データを、記録装置100で使用するインク色であるCMYK各8bit、4色合計32Bbitのデータに変換する色変換部908を備えている。さらに、制御部410は、得られたCMYKデータから画像における端部領域Sfl、Sfrでの平均的なインク付与量を算出する算出部910と、得られたインク付与量に基づいて画像の拡大率を決定する決定部912とを備えている。さらにまた、制御部410は、色変換部908で変換されたCMYK各8bitのデータを、記録ヘッド2でのインクの吐出、非吐出を表す2値データに変換する量子化部914を備えている。量子化部914で用いられる2値化処理は、誤差拡散処理でもよいし、ディザ処理でもよい。こうした各構成による機能については、例えば、CPU411により実現されることとなる。本実施形態では、制御部410が、画像データから記録用のデータを取得する画像処理手段として機能している。
【0054】
端部領域Sfl、Sfrは、画像の先端側の幅方向の端部において一定の面積を備えた領域である。画像の先端とは、画像データに基づいて記録した際に、記録媒体1において搬送方向の下流側に位置する画像の端部(端辺)である。端部領域Sflは、画像IMの幅方向の一方側(図10中の左側)端部に位置し、画像IMの先端側の端辺IMaを含む領域となっている。また、端部領域Sflは、画像IMの先端側の一方側(図10中の左側)の角部Aflから、-X方向に、例えば、10cm、-Y方向に、例えば、10cmの矩形領域となっている。端部領域Sfrは、画像IMの幅方向の他方側(図10中の右側)端部に位置し、画像IMの先端側の端辺IMaを含む領域となっている。また、端部領域Sfrは、画像IMの先端側の他方側(図10中の右側)の角部Afrから、+X方向に、例えば、10cm、-Y方向に、例えば、10cmの矩形領域となっている。
【0055】
従って、記録媒体1に記録された画像では、端部領域Sflは、フチなし記録時に、記録媒体1のスリッターユニット303Lへの突入位置を含み、かつ、搬送方向において当該突入位置から所定長さだけ切断ラインCLを含むように形成される。なお、切断ラインCLは、スリッターユニット303Lによる切断により記録媒体1に形成される直線状の切断部分である。また、端部領域Sfrは、フチなし記録時に、記録媒体1のスリッターユニット303Rへの突入位置を含み、かつ、搬送方向において当該突入位置から所定長さだけ切断ラインCRを含むように形成される。なお、切断ラインCRは、スリッターユニット303Rによる切断により記録媒体1に形成される直線状の切断部分である。
【0056】
端部領域Sfl、Sfrにおけるインク付与量を取得する際には、色変換部908で取得したCMYKデータを用いる。より詳細には、色変換部908で取得したCMYKデータにおけるCMYK各8bitの値は、各インク色のインク付与量、つまり、記録デューティを表す。即ち、CMYK各色8bit、0~255の値について、「0」はインク付与量0%、「255」はインク付与量100%となり、0~255の中間の値については、その値に比例したインク付与量となる。そして、算出部910は、端部領域Sfl、Sfrについて、色変換部908で得られたCMYKデータから得られるCMYK4色のインク付与量を合計してインク付与量を算出する。例えば、C=255、M=255、Y=0、K=0とすると、インク付与量としては、100%+100%+0%+0%=200%となる。そして、決定部912は、算出部910で得られた端部領域Sfl、Sfrの平均的なインク付与量と閾値とを比較し、この比較の結果に応じて画像の拡大率を決定する。こうした閾値Th1、拡大率については、記録媒体の種類、インクの特性、外部環境などに応じて設定されている。
【0057】
次に、第1実施形態による記録装置100で実行される記録処理の具体的な処理内容について説明する。図11は、第1実施形態による記録装置100で実行される記録処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。図11のフローチャートに示される一連の処理は、CPU411がROM412に記憶されているプログラムコードをRAM413に展開して実行されることにより行われる。あるいはまた、図11におけるステップの一部または全部の機能をASICまたは電気回路などのハードウェアで実行してもよい。なお、各処理の説明において符号Sは、当該フローチャートにおけるステップであることを意味する。
【0058】
ホスト装置から記録装置100に対して記録開始の指示とともにジョブが入力されると、CPU411は、入力されたジョブデータに含まれる画像データをRAM413などの記憶領域に保持する(S1102)。このとき、記憶領域には、高解像度の画像データと低解像度の画像データとが保持される。そして、CPU411は、開始を指示された記録が、フチなし記録か否かを判定する(S1104)。フチなし記録か否かについては、例えば、ジョブデータに含まれるようにしてもよいし、この処理を行う時点で、フチあり記録またはフチなし記録が設定されていない場合は、ホスト装置や操作部などにその旨を表示し、ユーザに当該設定を促すようにしてもよい。
【0059】
S1104において、フチなし記録でない、つまり、フチあり記録であると判定されると、後述するS1116に進む。また、S1104において、フチなし記録であると判定されると、CPU411は、低解像度の画像データに対してプレ画像処理を実行する(S1106)。即ち、S1106では、色補正部906で画像データの特性に適した色補正を行い、色変換部908で画像データ(RGBデータ)を記録装置100で使用するインク色のデータ(CMYKデータ)に変換する。なお、このプレ画像処理では、スリッターユニット303による切断ライン近傍の領域での平均的なインク付与量を取得することが目的のため、低解像度の画像データを利用することで、処理負荷を軽減している。
【0060】
次に、CPU411は、端部領域Sfl、Sfrにおける平均的なインク付与量を算出する(S1108)。即ち、S1108では、算出部910で、S1106のプレ画像処理で得られたデータに基づいて、端部領域Sfl、Sfrの平均的なインク付与量を算出する。本実施形態では、算出部910が、画像の先端側における幅方向の端部に設けられた領域でのインク付与量を算出する算出手段として機能している。
【0061】
その後、CPU411は、端部領域Sfl、Sfrにおける平均的なインク付与量の少なくともどちらか一方が、閾値Th1を超えているか否かを判定する(S1110)。閾値Th1は、記録媒体1に浮きを生じさせるインク付与量の下限値、あるいは、当該下限値よりも一定量だけ少ない値である。より詳細には、例えば、フチなし記録時に画像の幅方向の端部に隣接する余白を生じさせる浮きを記録媒体1に生じさせるインク付与量の下限値、あるいは、当該下限値よりも一定量だけ少ない値である。本実施形態では、閾値Th1を、記録デューティ150%とする。
【0062】
そして、S1110において、端部領域Sfl、Sfrのインク付与量のどちらも閾値Th1を超えていないと判定されると、CPU411は、拡大率として、記録媒体に生じる浮きを無視する拡大率P1に決定する(S1112)。即ち、端部領域Sfl、Sfrのインク付与量のどちらも閾値Th1以下であると判定されると、記録媒体に浮きが生じない、あるいは、記録媒体に生じる浮きを無視できるため、決定部912において、はみ出し量が1mm程度となる拡大率P1に決定する。
【0063】
具体的には、成果物として画像のサイズを、例えば、A4サイズと同じサイズの、X方向210mm、Y方向297mmとする。この場合、拡大後の画像のサイズ(つまり、画像記録領域のサイズである。)のX方向のサイズは、成果物の画像サイズを+X方向、-X方向のそれぞれに1mmずつ拡大するため、212mmとなる。従って、拡大率P1は、212/210≒101%となる。なお、フチなし記録時の拡大率は、X方向だけでなくY方向についても同じ比率で拡大するため、画像拡大後のY方向の画像サイズは、297×101%≒300mmとなる。この場合、拡大率P1は、成果物のサイズに応じて異なるようにしてもよいし、同じであってもよい。
【0064】
一方、S1110において、端部領域Sfl、Sfrのインク付与量の少なくとも一方が閾値Th1を超えていると判定されると、CPU411は、拡大率として、記録媒体に生じる浮きを考慮した拡大率P2に決定する(S1114)。なお、拡大率P2は、拡大率P1よりも大きな値である。即ち、端部領域Sfl、Sfrのインク付与量の少なくともどちらか一方が閾値Th1を超えていると判定されると、スリッターユニット303による切断位置が、想定している位置よりも外側に位置になる虞がある。従って、フチなし記録時に、記録媒体1に生じた浮きによって、成果物では、画像の幅方向の端部に隣接して余白が形成される虞がある。このため、決定部912は、はみ出し量が4mm程度となる拡大率P2に決定する。
【0065】
具体的には、成果物として画像のサイズを、A4サイズと同じサイズとすると、拡大後画像のX方向のサイズは、成果物の画像サイズを+X方向、-X方向にそれぞれ4mmずる拡大するため、218mmとなる。従って、拡大率P2は、218/210≒104%となり、拡大後の画像のY方向のサイズは、297×104≒309mmとなる。なお、S1110からS1114の処理は、図9に示す制御部410の機能的構成の決定部912で実行される。拡大率P2については、拡大率P1と同様に、成果物のサイズに応じて異なるようにしてもよいし、同じであってもよい。
【0066】
こうして、拡大率が決定されると、CPU411は、高解像度の画像データに対して記録用画像処理を実行する(S1116)。即ち、S1114では、画像サイズ変換部904において、高解像度の画像データを、決定した拡大率で拡大し、拡大した画像データに対して、色補正部906を介して色変換部908によりRGBデータをCMYKデータに変換する。そして、量子化部914で、変換されたCMYKデータを、記録ヘッド2によるインクの吐出、非吐出を表す2値データを取得する。本実施形態では、画像サイズ変換部904が、算出部910の算出結果に基づいて画像データを拡大する拡大手段として機能している。また、色補正部906、色変換部908、および量子化部914が、画像データを画像処理して2値データを作成する作成手段として機能している。
【0067】
S1116では、S1104でフチなし記録でないと判定された後では、画像データを拡大することなく、2値データを取得することとなる。また、S1116では、S1104でフチなし記録であると判定された後では、S1112またはS1114で決定した拡大率で画像データを拡大して、2値データを取得することとなる。
【0068】
その後、CPU411は、取得した2値データを用いて記録を行い(S1118)、記録処理を終了する。即ち、S1118では、まず、ジョブデータなどからスリッターユニット303による記録媒体1への切断位置を取得し、搬送プロファイルを設定する。搬送プロファイルは、予め記憶されている。取得する切断位置は、成果物のサイズに応じて設定されている。次に、取得した切断位置に、スリッターユニット303を移動し、スリッター駆動モータ16および搬送モータ51を駆動する。そして、搬送ローラ8により記録媒体1を搬送開始位置まで搬送し、搬送開始位置にある記録媒体に対して、キャリッジ3を介して記録媒体1をX方向で走査しながら記録を行う。当該走査での記録が終了すると、搬送ローラ8により所定量だけ記録媒体1を搬送し、その後、キャリッジ3を介して記録媒体1に対して記録を行う。こうした記録動作と搬送動作とを交互に繰り返し実行して記録を行い、記録が終了したと判定されると、記録媒体1をカッター5により切断される位置まで移動する。記録媒体1がカッター5により切断される位置まで移動すると、スリッター駆動モータ16、搬送モータ51を停止し、カッター5により記録媒体1をX方向に切断して、成果物を排出することとなる。
【0069】
以上において説明したように、第1実施形態による記録装置100では、フチなし記録の際に、記録媒体1におけるスリッターユニット303への突入位置に位置する、画像の先端側の幅方向における両端に位置する端部領域のインク付与量を取得するようにした。そして、取得した2つのインク付与量の少なくとも一方が、フチなし記録時に画像の幅方向の端部に隣接する余白が生じる浮きの発生の判定基準としての閾値を超えているときには、画像の拡大率を大きくするようにした。
【0070】
これにより、第1実施形態による記録装置100では、2つの端部領域におけるインク付与量によって、フチなし記録時に画像の幅方向に隣接する余白が形成される浮きが記録媒体1に生じる虞があると判定されるときには、画像記録領域のはみ出し量が大きくなる。このため、比較的浮きが生じ易い記録媒体の先端で浮きが生じても、当該先端を含む所定領域の幅方向の端部に隣接する余白の発生が抑制されるようになる。
【0071】
(第2実施形態)
次に、図12乃至図17を参照しながら、第2実施形態による記録装置について説明する。なお、以下の説明では、上記した第1実施形態と同一または相当する構成については、第1実施形態で用いた符号と同一の符号を用いることにより、その詳細な説明を省略する。
【0072】
第2実施形態による記録装置100では、以下の点において上記第1実施形態と異なっている。即ち、第2実施形態による記録装置100では、画像におけるインク付与量を取得する端部領域を、画像の先端側だけでなく、後端側にも設け、これら端部領域でのインク付与量に応じて、画像の拡大率の変更および画像の回転を行うようにした。
【0073】
図12は、制御部410における画像処理に関する機能的構成を示すブロック図である。図13は、インク付与量を取得する画像の端部領域を説明する図である。図14は、回転した画像データに基づいて記録媒体1に記録される画像を示す図である。なお、図12では、図9で説明した構成と同じ構成については、同じ符号を用いて示している。以下の説明では、図9と同じ符号で示される構成については、その詳細な説明を適宜省略する。
【0074】
第2実施形態における記録装置100では、制御部410は、画像サイズ変換部904、色補正部906、色変換部908、決定部912、および量子化部914を備えている。また、制御部410はさらに、画像における四隅に設けられた端部領域におけるインク付与量を算出する算出部1202と、算出部1202での算出結果に応じて、高解像度の画像データを180°回転する画像回転部1204とを備えている。こうした各構成による機能については、例えば、CPU411により実現されることとなる。本実施形態では、制御部410が、画像データから記録用のデータを取得する画像処理手段として機能している。
【0075】
より詳細には、算出部1202は、端部領域Sfl、Sfrとともに、端部領域Sbl、Sbrの合計4つの領域における平均的なインク付与量を算出する(図13参照)。算出部1202での各端部領域におけるインク付与量の取得方法は、算出部910と同じであり、端部領域Sfl、Sfrについては、第1実施形態と同じであるため、これらの詳細な説明は省略する。端部領域Sbl、Sbrは、画像の後端側の幅方向の端部において一定の面積を備えた矩形領域である。画像の後端とは、画像データに基づいて記録した際に、記録媒体1において搬送方向の上流側に位置する画像の端部(端辺)である。
【0076】
端部領域Sblは、画像IMの幅方向の一方側(図13中の左側)端部に位置し、画像IMの後端側の端辺IMbを含む領域となっている。また、端部領域Sblは、画像IMの後端側の一方側(図13中の左側)の角部Ablから、-X方向に、例えば、10cm、+Y方向に、例えば、10cmの矩形領域となっている。端部領域Sbrは、画像IMの幅方向の他方側(図13中の右側)端部に位置し、画像IMの後端側の端辺IMbを含む領域となっている。また、端部領域Sbrは、画像IMの後端側の他方側(図13中の右側)の角部Abrから、+X方向に、例えば、10cm、+Y方向に、例えば、10cmの矩形領域となっている。
【0077】
従って、記録媒体1に記録された画像では、端部領域Sblは、フチなし記録時に、スリッターユニット303Lが抜ける位置を含み、かつ、搬送方向において当該位置から所定長さだけ切断ラインCLを含むように形成される。また、端部領域Sbrは、フチなし記録時に、スリッターユニット303Rが抜ける位置を含み、かつ、搬送方向において当該位置から所定長さだけ切断ラインCRを含むように形成される。
【0078】
画像回転部1204は、算出部1202で算出した算出結果と閾値Th1とを比較して、この比較結果に基づいて画像データを回転する。具体的には、端部領域Sfl、Sfrのインク付与量の少なくともどちらか一方が閾値Th1を超え、かつ、端部領域Sbl、Sbrのインク付与量のどちらも閾値Th1を超えていない場合にのみ、画像データを180°回転する。こうして180°回転した画像データに基づいて記録された画像では、図14のように、インク付与量が閾値Th1以下となる端部領域Sbl、Sbrが、記録媒体1の先端側に位置することとなる。これにより、フチなし記録時に、インク付与量が閾値Th1以下となる端部領域Sbl、Sbrに、記録媒体1のスリッターユニット303L、303Rへの突入位置がそれぞれ含まれるようになる。この場合、スリッターユニット303へ突入する記録媒体の先端側において浮きが生じ難くなり、フチなし記録の際の画像の幅方向の端部に隣接する余白の発生が抑制される。
【0079】
決定部912は、端部領域Sfl、Sfrのインク付与量の少なくとも一方が閾値Th1を超え、かつ、端部領域Sbl、Sbrのインク付与量の少なくとも一方が閾値Th1を超えているときに、画像の拡大率を拡大率P2に決定する。それ以外のときには、画像の拡大率は、予め設定されている拡大率P1に決定する。即ち、端部領域Sfl、Sfrのインク付与量のどちらも閾値Th1以下であると、端部領域Sbl、Sbrのインク付与量にかかわらず、画像の拡大率を拡大率P1に決定する。また、端部領域Sfl、Sfrのインク付与量の少なくとも一方が閾値Th1を超え、かつ、端部領域Sbl、Sbrのインク付与量のどちらも閾値Th1以下であると、画像の拡大率を拡大率P1に決定する。
【0080】
次に、第2実施形態による記録装置100で実行される記録処理の具体的な処理内容について説明する。図15は、第2実施形態による記録装置100により実行される記録処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。図15のフローチャートで示される一連の処理は、CPU411がROM412に記録されているプログラムコードをRAM413に展開して実行されることにより行われる。あるいはまた、図15におけるステップの一部または全部の機能をASICまたは電気回路などのハードウェアで実行してもよい。なお、各処理の説明において符号Sは、当該フローチャートにおけるステップであることを意味する。
【0081】
ホスト装置から記録装置100に対して記録開始の指示とともにジョブが入力されると、CPU411は、入力されたジョブデータに含まれる画像データをRAM413などの記録領域に保持する(S1502)。次に、CPU411は、開始を指示された記録が、フチなし記録か否かを判定する(S1504)。S1504において、フチなし記録でないと判定されると、後述するS1514に進む。また、S1504において、フチなし記録であると判定されると、CPU411は、低解像度の画像データに対してプレ画像処理を実行する(S1506)。S1502からS1506の具体的な処理内容は、上記S1102からS1106と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0082】
その後、CPU411は、端部領域Sfl、Sfr、Sbl、Sbrの4つの領域における平均的なインク付与量を算出する(S1508)。即ち、S1508では、算出部1202で、S1506でプレ画像処理された画像データに基づいて、端部領域Sfl、Sfr、Sbl、Sbrのそれぞれの平均的なインク付与量を算出する。本実施形態では、算出部1202が、画像の4隅に設けられた領域におけるインク付与量を算出する算出手段として機能している。
【0083】
次に、CPU411は、拡大率の決定処理を行う(S1510)。ここで、図16は、記録処理のサブルーチンである拡大率の決定処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。この拡大率の決定処理は、算出された端部領域における平均的なインク付与量を用いて、図12に示す制御部410の機能的構成の決定部912で実行されることとなる。
【0084】
S1510の拡大率の決定処理では、まず、CPU411は、端部領域Sfl、Sfrにおける平均的なインク付与量の少なくともどちらか一方が、閾値Th1を超えているか否かを判定する(S1602)。S1602において、端部領域Sfl、Sfrのインク付与量のどちらも閾値Th1を超えていないと判定されると、CPU411は、拡大率として、記録媒体に生じる浮きを無視する拡大率P1に決定し(S1604)、後述するS1512へ進む。S1604の具体的な処理内容は、上記S1112と同じである。一方、S1602において、端部領域Sfl、Sfrのインク付与量の少なくとも一方が閾値Th1を超えていると判定されると、CPU411は、端部領域Sbl、Sbrの平均的なインク付与量のどちらも閾値Th1以下であるか否かを判定する(S1606)。
【0085】
S1606において、端部領域Sbl、Sbrのインク付与量のどちらも閾値Th1以下であると判定されると、S1604に進む。一方、S1606において。端部領域Sbl、Sbrのインク付与量のどちらも閾値Th1以下でないと判定されると、CPU411は、拡大率として、記録媒体に生じる浮きを考慮した拡大率P2に決定し(S1608)、後述するS1512に進む。S1608の具体的な処理内容は、上記S1114と同じである。
【0086】
図15に戻る。こうして拡大率が決定されると、S1512に進み、CPU411は、回転の有無を決定する回転決定処理を行う。ここで、図17は、記録処理のサブルーチンである回転決定処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。この回転決定処理は、算出された端部領域における平均的なインク付与量を用いて、図12に示す制御部410の機能的構成の画像回転部1204で実行されることとなる。
【0087】
S1512の回転決定処理では、まず、CPU411は、S1602と同様にして、端部領域Sfl,Sfrの平均的なインク付与量の少なくともどちらか一方が、閾値Th1を超えているか否かを判定する(S1702)。S1702において、端部領域Sfl、Sfrのインク付与量のどちらも閾値Th1を超えていないと判定されると、CPU411は、画像データを回転しないこと、つまり、「回転なし」を決定し(S1704)、後述するS1514に進む。一方、S1702において、端部領域Sfl、Sfrのインク付与量の少なくとも一方が閾値Th1を超えていると判定されると、CPU411は、端部領域Sbl、Sbrの平均的なインク付与量のどちらも閾値Th1以下であるか否かを判定する(S1706)。なお、1706の具体的な処理内容は、上記S1606と同じである。
【0088】
S1706において、端部領域Sbl、Sbrのインク付与量のどちらも閾値Th1以下でないと判定されると、S1704に進む。一方、S1706において、端部領域Sbl、Sbrのインク付与量のどちらも閾値Th1以下であると判定されると、CPU411は、画像データを回転すること、つまり、「回転あり」を決定し(S1708)、後述するS1514に進む。
【0089】
図15に戻る。画像データの回転の有無が決定されると、S1514に進み、CPU411は、高解像度の画像データに対して記録用画像処理を実行する。即ち、S1514では、まず、高解像度の画像データに対して、画像回転部1204において、決定した回転の有無に従って、画像データを180°回転する。即ち、回転決定処理で、「回転なし」と決定されていると画像データを回転せず、「回転あり」と決定されていると画像データを180°回転する。
【0090】
次に、画像回転部1204から出力された高解像度の画像データに対して、画像サイズ変換部904で、決定した拡大率で画像データを拡大する。そして、拡大された画像データに対して、色補正部906を介して色変換部908によりRGBデータをCMYKデータに変換する。そして、変換されたCMYKデータを量子化部914で量子化して、記録ヘッド2によるインク吐出、非吐出を表す2値データを取得する。本実施形態では、画像サイズ変換部904と画像回転部1204とが、算出部1202の算出結果に基づいて画像データを回転および拡大する拡大手段として機能している。また、色補正部906、色変換部908、および量子化部914が、画像データを画像処理して2値データを作成する作成手段として機能している。
【0091】
即ち、S1514では、S1504でフチなし記録でないと判定された後では、画像データを回転、拡大することなく、2値データを取得することとなる。また、S1504でフチなし記録であると判定された後では、S1510で決定した回転の有無に応じて画像データを回転し、この画像データを、S1512で決定した拡大率で拡大して、2値データを取得することとなる。
【0092】
その後、CPU411は、取得した2値データを用いて記録を行い(S1516)、記録処理を終了する。なお、S1516の具体的な処理内容は、上記S1118と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0093】
以上において説明したように、第2実施形態による記録装置100では、フチなし記録の際に、画像の4隅の端部領域の平均的なインク付与量を取得するようにした。そして、画像の先端側の2つの端部領域のインク付与量の少なくとも一方が閾値を超え、かつ、画像の後端側の2つの端部領域のインク付与量がどちらも閾値以下であると、画像の拡大率を上げることなく、画像を180°回転するようにした。これにより、拡大率を変更することなく、スリッターユニット303への突入位置がある記録媒体の先端側において浮きが生じ難くなる。従って、第2実施形態による記録装置100においては、上記第1実施形態の作用効果に加えてさらに、記録時のインクの使用量を抑制することができる。
【0094】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下の(1)乃至(7)に示すように変形してもよい。
【0095】
(1)上記実施形態では特に記載しなかったが、端部領域の形状、端部領域の面積、閾値Th1、および画像の拡大率などについては、使用する記録媒体の種類、インクの特性、外部環境などの種々の条件に応じて変化させるようにしてもよい。条件に応じた値については、例えば、実験的に求められる。即ち、記録媒体の浮きの発生およびその程度は、記録媒体の種類、インクの特性、外部環境などの条件により異なる。従って、こうした記録媒体の浮きの発生に影響する条件に応じて、端部領域の形状、端部領域の面積、閾値Th1、画像の拡大率などを実験的求めるようにする。この際、実験的に求められた値をそのまま用いるようにしてもよいし、閾値については一定量だけ小さく、面積、拡大率については一定量だけ大きくするようにしてもよい。これにより、より確実にフチなし記録時の余白の発生を抑制することができるようになる。
【0096】
(2)上記実施形態では特に記載しなかったが、フチなし記録時の余白の発生を抑制する上記実施形態で説明した記録処理を、実行するか否かをユーザが選択可能な構成としてもよい。この場合、フチなし記録時の余白の発生を抑制する記録処理を選択しなかったときには、記録開始が指示されると、高解像度の画像データを保持した後に、記録用画像処理を実行して記録を行うこととなる。また、上記実施形態では、プレ画像処理に低解像度の画像データを用い、記録用画像処理に高解像度の画像データを用いるようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、プレ画像処理に高解像度の画像データを用い、当該画像データから簡易的にインク付与量を算出するようにしてもよい。
【0097】
(3)上記実施形態では、記録媒体に生じる浮きを無視する拡大率P1と、当該浮きを考慮した拡大率P2と選択的に適用する構成としたが、これに限定されるものではない。即ち、浮きを考慮した拡大率について、浮きの程度に応じた複数の拡大率を設けるようにし、インク付与量に応じた拡大率を選択可能な構成としてもよい。また、上記実施形態では、インク付与量として記録デューティを用いるようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、端部領域における総ドット数としてもよいし、端部領域の所定領域ごとに付与されるドット数の平均値としてもよく、端部領域へのインクの付与量を示す値であればどのような値でもよい。
【0098】
(4)上記実施形態では、記録装置100について、キャリッジ3を介して記録ヘッド2を走査しながら記録する、所謂、シリアルスキャンタイプとしたが、これに限定されるものではない。即ち、記録媒体の幅方向のサイズに対応する長さのノズル列を備えた記録ヘッドが固定的に配置されたフルラインタイプの記録装置としてもよい。また、上記実施形態では、スリッター13は、2つのスリッターユニット303L、303Rを有するようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、スリッター13は、スリッターユニット303を1つ備えるような形態としてもよい。この場合、スリッターユニット303が位置しないX方向の他方側には、スリッター搬送ローラが設けられることとなる。
【0099】
(5)上記実施形態では、記録装置100の制御部410において、画像の拡大率(および回転の有無)を決定し、これを用いて記録ヘッド2からのインクの吐出、非吐出を表す2値データを取得するようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、こうした処理、具体的には、上記実施形態で説明した記録処理のうち、記録用画像処理までの処理を、例えば、ホスト装置などの記録装置100に接続された画像処理装置などで実行してもよい。また、上記実施形態では、フチなし記録において、端部領域におけるインク付与量が閾値以下の場合などに、画像データを拡大率P1で拡大するようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、アプリケーション902から、フチなし記録用の画像データとして、拡大率P1で拡大済みの画像データが入力されるようにしてもよい。さらに、上記実施形態では、2値データを記録ヘッド2による記録用のデータとして取得するようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、記録用のデータとしては、例えば、4値など、多値データであってもよい。
【0100】
(6)上記第2実施形態では、決定部912で拡大率を決定し、画像回転部1204で回転の有無を決定するようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、決定部912の機能に、画像の回転の有無を決定する機能を含むようにしてもよい。これにより、記録処理では、例えば、拡大率の決定処理のS1602と回転決定処理のS1702となど、同じ処理を繰り返して実行する必要がなくなり、効率的に拡大率および回転の有無を決定することができるようになる。
【0101】
具体的には、端部領域Sfl、Sfrのインク付与量のどちらも閾値Th1を超えていないと判定されると、決定部912において、拡大率P1と回転なしとを決定する。また、端部領域Sfl、Sfrのインク付与量の少なくとも一方が閾値Th1を超えていると判定された後に、端部領域Sbl、Sbrのインク付与量のどちらも閾値Th1以下でないと判定されると、決定部912において、拡大率P2と回転なしとを決定する。さらに、端部領域Sfl、Sfrのインク付与量の少なくとも一方が閾値Th1を超えていると判定された後に、端部領域Sbl、Sbrのインク付与量のどちらも閾値Th1以下であると判定されると、決定部912は、拡大率P1と回転ありとを決定する。
【0102】
(7)上記実施形態および上記した(1)乃至(6)に示す各種の形態は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0103】
2 記録ヘッド
8 搬送ローラ
100 記録装置
303 スリッターユニット
320 スリッター上搬送ローラ
410 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17