(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】医療用監視装置、及び医療用監視システム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
A61N5/10 S
(21)【出願番号】P 2020161179
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市橋 正英
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-010508(JP,A)
【文献】特開2019-154893(JP,A)
【文献】特開2018-161264(JP,A)
【文献】特開2017-192549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝台上の患者
と、当該患者の周囲を移動する移動部を有する医療装置とを撮像するカメラにより撮像された画像データに基づいて、当該患者の位置を示す位置情報を取得する取得部と、
前記位置情報に基づいて、前記患者と、
前記医療装置とが干渉する可能性を予測するシミュレーションにおける患者モデルの位置を補正することによって前記患者と、前記医療装置とが干渉する可能性を予測する予測部と、
前記予測部による予測結果に基づいて、前記患者と前記医療装置とが干渉する可能性が高い干渉箇所を表示させる表示制御部と、
前記予測結果に基づいて、前記干渉箇所に前記カメラの照準を合わせるカメラ制御部と、
を備え
、
前記表示制御部は、前記カメラにより撮像された前記干渉箇所の前記画像データを表示させる医療用監視装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、補正後の位置にある前記患者モデルのシミュレーション画面における前記干渉箇所を表示させる、
請求項
1に記載の医療用監視装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記干渉箇所を強調表示により表示させる、
請求項
1又は2に記載の医療用監視装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記予測結果に基づいて、前記患者と前記医療装置とが干渉する可能性が高いことを通知する画面を表示させる、
請求項1から
3の何れか一項に記載の医療用監視装置。
【請求項5】
前記カメラ制御部は、事前に登録された対象が含まれるように前記カメラの照準を合わせ、
前記表示制御部は、前記カメラが撮像した前記画像データを表示させる、
請求項
1から4の何れか一項に記載の医療用監視装置。
【請求項6】
患者と、当該患者の周囲を移動する移動部を有する医療装置とを撮像するカメラと、医療用監視装置とを有する医療用監視システムであって、
前記カメラは、前記医療用監視装置によって設定された撮像領域を撮像し、
前記医療用監視装置は、
寝台上の患者の位置を示す位置情報を取得する取得部と、
前記位置情報に基づいて、前記患者と、当該患者の周囲を移動する移動部を有する医療装置とが干渉する可能性を予測するシミュレーションにおける患者モデルの位置を補正することによって前記患者と、前記医療装置とが干渉する可能性を予測する予測部と、
前記予測部による予測結果に基づいて、前記患者と前記医療装置とが干渉する可能性が高い干渉箇所に前記カメラの照準を合わせるカメラ制御部と、
前記カメラにより撮像された前記干渉箇所の画像データを表示させる表示制御部と、
を備える医療用監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医療用監視装置、及び医療用監視システムに関する。
【0002】
従来、放射線治療装置などの移動部を有する医療機器において、事前に干渉シミュレーションを実行することで、医療機器と患者との干渉について予測する技術が知られている。このような、干渉シミュレーションでは、仮想的な患者モデルを使用して医療機器と患者との干渉について予測される。
【0003】
しかしながら、実際の患者と、患者モデルでは、患者の位置や姿勢が異なっている場合がある。そのため、医療従事者は、医療機器と患者とが干渉するかを監視しなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、医療機器と患者との干渉に対する監視負担を軽減させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医療用監視装置は、取得部と、予測部と、表示制御部と、カメラ制御部と、を備える。前記取得部は、寝台上の患者と、当該患者の周囲を移動する移動部を有する医療装置とを撮像するカメラにより撮像された画像データに基づいて、当該患者の位置を示す位置情報を取得する。前記予測部は、前記位置情報に基づいて、前記患者と、前記医療装置とが干渉する可能性を予測するシミュレーションにおける患者モデルの位置を補正することによって前記患者と、前記医療装置とが干渉する可能性を予測する。前記表示制御部は、前記予測部による予測結果に基づいて、前記患者と前記医療装置とが干渉する可能性が高い干渉箇所を表示させる。前記カメラ制御部は、前記予測結果に基づいて、前記干渉箇所に前記カメラの照準を合わせる。そして、前記表示制御部は、前記カメラにより撮像された前記干渉箇所の前記画像データを表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る医療用監視システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る放射線治療装置の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る医療用監視装置の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、干渉箇所を強調表示した強調表示画面の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、指定された撮像領域の画像データを表示画面の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る監視支援装置が実行する事前計画処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る監視支援装置が実行する干渉判定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本実施形態に関する医療用監視装置、及び医療用監視システムについて説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
本実施形態に係る医療用監視システム1について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る医療用監視システム1の構成の一例を示す図である。医療用監視システム1は、放射線治療装置10と、監視カメラ20と、医療用監視装置30とを備える。放射線治療装置10と、監視カメラ20と、医療用監視装置30とは、ネットワークを介して、通信可能に接続されている。なお、
図1に示す医療用監視システム1の構成は一例であって、他の構成であってもよい。例えば、医療用監視システム1は、放射線治療装置10と、監視カメラ20と、医療用監視装置30とを複数台備えていてもよいし、ネットワークを介して他の装置やシステムが接続されていてもよい。
【0010】
放射線治療装置10は、事前に設定された治療計画に従い、患者に対して放射線を照射することで放射線治療を実行する。また、放射線治療装置10は、患者の周囲を移動する移動部を有している。
【0011】
監視カメラ20は、放射線治療装置10と患者と監視するためのカメラである。更に詳しくは、監視カメラ20は、医療用監視装置30によって設定された撮像領域を撮像する。そして、監視カメラ20は、撮像した画像データを医療用監視装置30に送信する。
【0012】
医療用監視装置30は、放射線治療装置10における放射線治療において、放射線治療装置10と患者とが干渉する可能性が高いか否かを判定する。すなわち、医療用監視装置30は、放射線治療装置10と患者とが接触する可能性が閾値以上であるか否かを判定する。
【0013】
ここで、放射線治療装置10の治療計画が作成された場合、放射線治療装置10と患者とが干渉しないことを確認するために、治療前に干渉シミュレーションが実行される。この干渉シミュレーションでは、仮想的な患者のモデルである患者モデルと、仮想的な放射線治療装置10のモデルである放射線治療装置モデルとが干渉するかについて予測される。更に詳しくは、干渉シミュレーションでは、治療計画に従って放射線治療装置モデルの移動部を移動させた場合に、患者モデルと、放射線治療装置モデルの移動部とが干渉するかについて予測される。さらに、干渉シミュレーションでは、患者と、放射線治療装置10とが干渉する可能性を示す数値を予測される。なお、干渉シミュレーションは、患者モデルと、放射線治療装置モデルの移動部とに限らず、放射線治療装置モデルの他の部分との干渉について予測してもよい。
【0014】
このように、干渉シミュレーションを実行することで、患者と放射線治療装置10とが干渉しない治療計画が作成される。しかし、治療時において、放射線治療装置10の寝台16(
図2参照)に載置された患者の位置や姿勢は、事前に実行された干渉シミュレーションの患者モデルの位置や姿勢と異なっている。そのため、医療従事者は、放射線治療装置10と患者とが干渉しないことを監視する必要がある。
【0015】
そこで、医療用監視装置30は、放射線治療装置10の寝台16に載置された患者の位置や姿勢を撮像した画像データに基づいて、干渉シミュレーションの患者モデルの位置や姿勢を補正する。また、医療用監視装置30は、補正後の患者モデルを使用して、放射線治療装置10と患者とが干渉する可能性が高いか否かを判定する。そして、医療用監視装置30は、予測結果に基づいて、監視カメラ20を制御することによって、干渉する可能性が高い干渉箇所を表示させる。また、医療用監視装置30は、予測結果をディスプレイ33(
図3参照)に表示させることにより通知する。
【0016】
次に、放射線治療装置10の外観について説明する。
図2は、第1の実施形態に係る放射線治療装置10の一例を示す図である。放射線治療装置10は、寝台16と、治療用の放射線を発生する放射線発生器171と、放射線絞り器172と、回転ガントリ19とを有する。放射線治療装置10は、治療計画に沿って、寝台16や放射線発生器171、放射線絞り器172、回転ガントリ19等を移動させ、放射線治療を実行する。放射線治療装置10は、図示しない放射線治療計画装置と接続され、放射線治療計画装置から送信された治療計画に沿って放射線発生器171から治療対象部位に対して放射線を照射することで放射線治療を実行する。
【0017】
さらに、放射線治療装置10は、撮像用の放射線を照射する放射線発生器181と、撮像用の放射線を検出する検出器182とを備える。放射線治療の開始前において、放射線治療装置10は、回転ガントリ19を回転させながら放射線発生器181から患者に対して放射線を照射し、患者を透過した放射線を検出器182によって検出する。そして、放射線治療装置10は、検出器182による検出結果に基づいてCT画像を生成し、ディスプレイ12に表示させる。これにより、放射線治療装置10のユーザは、放射線治療の開始時における治療対象部位の位置を確認する。そして、放射線発生器171と、放射線絞り器172と、回転ガントリ19と、放射線発生器181、検出器182とは、移動部の一例である。
【0018】
図3は、第1の実施形態に係る医療用監視装置30の構成の一例を示す図である。
図3に示すように、第1の実施形態に係る医療用監視装置30は、通信インターフェース31と、入力インターフェース32と、ディスプレイ33と、記憶回路34と、処理回路35とを有する。
【0019】
通信インターフェース31は、処理回路35に接続され、ネットワークを介して接続された各装置との間で行われる各種データの伝送及び通信を制御する。例えば、通信インターフェース31は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0020】
入力インターフェース32は、処理回路35に接続され、操作者(医療従事者)から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路35に出力する。具体的には、入力インターフェース32は、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換して処理回路35に出力する。例えば、入力インターフェース32は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、本明細書において、入力インターフェース32は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース32の例に含まれる。
【0021】
ディスプレイ33は、処理回路35に接続され、処理回路35から出力される各種情報及び各種画像データを表示する。例えば、ディスプレイ33は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネル等によって実現される。
【0022】
記憶回路34は、処理回路35に接続され、各種データを記憶する。また、記憶回路34は、処理回路35が読み出して実行することで各種機能を実現するための種々のプログラムを記憶する。例えば、記憶回路34は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0023】
処理回路35は、医療用監視装置30全体の動作を制御する。処理回路35は、例えば、入力機能351、取得機能352、関連付け機能353、干渉予測機能354、カメラ制御機能355、及び表示制御機能356を有する。実施形態では、構成要素である入力機能351、取得機能352、関連付け機能353、干渉予測機能354、カメラ制御機能355、及び表示制御機能356にて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路34へ記憶されている。処理回路35は、プログラムを記憶回路34から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路35は、
図3の処理回路35内に示された各機能を有することになる。
【0024】
なお、
図3においては単一のプロセッサにて、入力機能351、取得機能352、関連付け機能353、干渉予測機能354、カメラ制御機能355、及び表示制御機能356を実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路35を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、
図3においては、記憶回路34等の単一の記憶回路が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路35は、個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0025】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD),及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路34に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路34にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0026】
入力機能351は、放射線治療装置10における治療計画の入力を受け付ける。治療計画は、放射線治療に用いる放射線の線質、入射方向、照射野、線量、照射回数などの情報である。放射線治療装置10は、治療計画に従って、寝台16、放射線発生器171、放射線絞り器172、放射線発生器181、検出器182、回転ガントリ19など移動させる。
【0027】
取得機能352は、寝台16上の患者の位置を示す位置情報を取得する。取得機能352は、取得部の一例である。ここで、寝台16に載置される患者の寝台16上の位置や姿勢と、事前に実行された干渉シミュレーションの患者モデルの寝台16上の位置や姿勢とは、異なっている。そのため、治療計画の作成段階で事前に実行された干渉シミュレーションでは、干渉しないと判定された場合であっても、放射線治療装置10における現実の放射線治療では干渉してしまう可能性がある。そのため、干渉シミュレーションにおける精度を向上させる必要がある。
【0028】
干渉シミュレーションの精度を向上させるためには、寝台16上の患者の位置や姿勢に基づいて、干渉シミュレーションの患者モデルの位置や姿勢を補正する必要がある。そこで、取得機能352は、寝台16上の患者の各部位を示す位置情報を取得する。言い換えると、位置情報は、患者の各部位の位置を示す3次元座標などの情報である。
【0029】
更に詳しくは、取得機能352は、患者と放射線治療装置10とを撮像する監視カメラ20により撮像された画像データに基づいて、位置情報を取得する。具体的には、取得機能352は、監視カメラ20が撮像した画像データから患者の各部位を検出する。例えば、取得機能352は、患者の各部位に付された目印となるマーカーを画像データから検出することで、患者の各部位を検出する。マーカーは、例えば、反射板などの器具や、パターンが印刷された印刷物等である。すなわち、取得機能352は、画像データから反射板やパターンを検出することで、患者の各部位を検出する。
【0030】
そして、取得機能352は、検出した各部位の3次元の位置を示す位置情報を取得する。具体的には、取得機能352は、画像データにおける監視カメラ20と放射線治療装置10との位置関係、画像データの画素値、放射線治療装置10から取得した寝台16等の各部の位置及び角度情報、及び患者に付せられたマーカーの位置などに基づいて、位置情報を取得する。すなわち、取得機能352は、これら情報に基づいて、各部位について、基準位置に対する相対的な3次元座標を算出することによって位置情報を取得する。
【0031】
なお、取得機能352は、マーカーに限らず、他の方法により患者の各部位を検出してもよい。例えば、取得機能352は、画像データに含まれる人物の骨格を検出する骨格検出技術により患者の各部位を検出することで、患者の位置や形状を検出する。また、取得機能352は、画像データに限らず、他の方法により、寝台16上の患者の位置を示す位置情報を取得してもよい。例えば、取得機能352は、医療用監視システム1が寝台16に向けられたToF(Time of Flight)センサなどの寝台16上の物体を検出する3次元スキャナを備えている場合には、3次元スキャナからの出力に基づいて、寝台16上の患者の位置を示す位置情報を取得してもよい。
【0032】
関連付け機能353は、干渉シミュレーションの患者モデルの各部位と、取得機能352により取得された位置情報が示す患者の各部位を関連づける。具体的には、関連付け機能353は、干渉シミュレーションの患者モデルの部位に対応する、位置情報が示す患者の部位を関連づける。
【0033】
干渉予測機能354は、位置情報に基づいて、患者と放射線治療装置10とが干渉する可能性を予測する。干渉予測機能354は、予測部の一例である。更に詳しくは、干渉予測機能354は、位置情報に基づいて、患者と、患者の周囲を移動する移動部を有する放射線治療装置10とが干渉する可能性を予測する干渉シミュレーションにおける患者モデルの位置を補正することによって患者と、放射線治療装置10とが干渉する可能性を予測する。すなわち、干渉予測機能354は、位置情報に基づいて、干渉シミュレーションにおける患者モデルの各部位の位置を、寝台16上の患者の位置に補正する。
【0034】
また、干渉予測機能354は、患者モデルの各部位が補正後の位置にあることを登録した上で、再度、干渉シミュレーションを実行する。これにより、干渉予測機能354は、患者と、放射線治療装置10とが干渉する可能性を予測する。なお、干渉予測機能354は、干渉シミュレーションは実行せずに、位置情報に基づいて、事前に実行した干渉シミュレーションの実行結果を補正してもよい。この場合においても、干渉予測機能354は、患者と、放射線治療装置10とが干渉する可能性を予測することができる。
【0035】
また、干渉予測機能354は、患者と放射線治療装置10とが干渉する可能性が高いと判定した場合に、患者と放射線治療装置10とが干渉する可能性が高い干渉箇所の3次元座標を示す干渉位置情報を生成する。干渉箇所とは、例えば、干渉する可能性が高いと判定された患者と放射線治療装置10とのそれぞれの部分である。例えば、患者の腕と、放射線発生器171とが干渉する可能性が高い場合には、患者の腕と、放射線発生器171とのそれぞれの少なくとも何れか一方が干渉箇所となる。なお、干渉箇所とは、干渉する可能性が高いと判定された患者と放射線治療装置10とのそれぞれの部分に限らず、干渉する可能性が高いと判定された位置であってもよい。
【0036】
カメラ制御機能355は、監視カメラ20を制御して、指定した撮像領域の画像データを撮像させる。具体的には、カメラ制御機能355は、監視カメラ20の向きや、焦点、拡大率を制御することにより、指定した撮像領域の画像データを撮像させる。
【0037】
更に詳しくは、カメラ制御機能355は、干渉予測機能354による予測結果に基づいて、患者と放射線治療装置10とが干渉する可能性が高い干渉箇所に監視カメラ20の照準を合わせる。カメラ制御機能355は、カメラ制御部の一例である。すなわち、カメラ制御機能355は、干渉位置情報により特定される位置を、監視カメラ20の撮像領域に設定する。これにより、カメラ制御機能355は、監視カメラ20に干渉箇所の画像データを撮像させる。
【0038】
また、カメラ制御機能355は、監視カメラ20に撮像させる対象が事前に登録されている場合に、事前に登録された対象が含まれるように監視カメラ20の撮像領域を設定する。例えば、カメラ制御機能355は、患者の呼吸による胸腹部の2カ所の体動レベルを検出する呼吸モニタ指示器を確認させることが登録されている場合に、監視カメラ20の撮像領域を呼吸モニタ指示器に設定する。
【0039】
表示制御機能356は、ディスプレイ33に、各種画面を表示させる。例えば、表示制御機能356は、監視カメラ20が撮像した画像データを表示させる。また、表示制御機能356は、干渉シミュレーションのシミュレーション結果を示す画面を表示させる。
【0040】
更に詳しくは、表示制御機能356は、干渉予測機能354による予測結果に基づいて、患者と放射線治療装置10とが干渉する可能性が高い干渉箇所を表示させる。表示制御機能356は、表示制御部の一例である。例えば、表示制御機能356は、監視カメラ20により撮像された干渉箇所の画像データを表示させる。すなわち、カメラ制御機能355により干渉箇所が監視カメラ20の撮像領域に設定された場合、表示制御機能356は、カメラ制御機能355により設定された撮像領域に含まれる干渉箇所の画像データを表示させる。
【0041】
または、表示制御機能356は、補正後の位置にある患者モデルの干渉シミュレーション画面における干渉箇所を表示させる。すなわち、表示制御機能356は、シミュレーション画面における干渉箇所を表示させる。なお、表示制御機能356は、画像データの画面と、シミュレーションの画面と何れか一方に限らず、画像データと、シミュレーション画面との両方の画面を表示させてもよい。
【0042】
表示制御機能356は、干渉箇所を強調表示により表示させる。ここで、
図4は、干渉箇所を強調表示した強調表示画面の一例を示す図である。表示制御機能356は、
図4に示すように、オーバーレイにより干渉マーク3561を画像データに付加する。これにより、表示制御機能356は、干渉箇所を強調して表示させる。なお、強調表示方法は、干渉マーク3561の付加に限らず、干渉箇所を点滅させてもよいし、色を変更してもよいし、干渉箇所を覆う線を付加してもよいし、他の方法であってもよい。
【0043】
また、表示制御機能356は、予測結果に基づいて、患者と放射線治療装置10とが干渉する可能性が高いことを通知する画面を表示させる。例えば、表示制御機能356は、患者と放射線治療装置10とが干渉する可能性が高いことを示すメッセージや、警告画面や、アイコンを表示させる。
【0044】
ここで、監視カメラ20に撮像させる対象が登録されている場合、カメラ制御機能355は、指定された対象が撮像領域に含まれるように監視カメラ20の照準を合わせる。そして、表示制御機能356は、監視カメラ20が撮像した画像データをディスプレイ33に表示させる。ここで、
図5は、指定された撮像領域の画像データを表示画面の一例を示す図である。
図5に示すように、呼吸モニタ指示器を表示させることが治療計画に登録されている場合、表示制御機能356は、監視カメラ20が撮像した呼吸モニタ指示器の画像データを表示させる。さらに、表示制御機能356は、指定された撮像領域を示す指定領域マーク3562を付加して表示させる。これにより、医療従事者は、画像データにおいて注目すべき領域を認識することができる。さらに、撮像領域が指定されるため、表示制御機能356は、医療従事者が呼吸モニタ指示器を表示させる操作が入力されなくても、呼吸モニタ指示器の画像データを表示させることができる。
【0045】
次に、医療用監視装置30が実行する事前計画処理、及び干渉判定処理について説明する。事前計画処理は、治療計画に従って、干渉シミュレーションを実行する処理である。干渉判定処理は、干渉シミュレーションの患者モデルの各部位の位置を補正し、補正した位置にある各部位と、放射線治療装置10とが干渉する可能性が高いか否かを判定する処理である。
【0046】
図6は、第1の実施形態に係る医療用監視装置30が実行する事前計画処理の一例を示すフローチャートである。
【0047】
干渉予測機能354は、治療計画に従って、干渉シミュレーションを実行する(ステップS11)。すなわち、干渉予測機能354は、治療計画に従って放射線治療装置モデルの移動部などを移動させた場合に、患者モデルと放射線治療装置モデルが干渉しないことを干渉シミュレーションで確認する。
【0048】
干渉予測機能354は、干渉シミュレーションの実行結果を記憶回路34などに記憶させる(ステップS12)。ここで、事前計画処理においては、患者と、放射線治療装置10とが干渉しない治療計画が生成される。また、表示制御機能356は、患者と、放射線治療装置10とが干渉しないことをディスプレイ33に表示させてもよい。
【0049】
以上により、医療用監視装置30は、事前計画処理を終了する。
【0050】
図7は、第1の実施形態に係る医療用監視装置30が実行する干渉判定処理の一例を示すフローチャートである。
【0051】
取得機能352は、放射線治療装置10の寝台16に載せられた患者を撮像した画像データを取得する(ステップS21)。
【0052】
取得機能352は、画像データに含まれる寝台16上の患者の各部位を検出する(ステップS22)。
【0053】
取得機能352は、検出した患者の各部位を示す位置情報を取得する(ステップS23)。
【0054】
関連付け機能353は、干渉シミュレーションの患者モデルの各部位と、取得機能352により取得された位置情報が示す患者の各部位とを関連付ける(ステップS24)。なお、関連付け機能353は、患者モデルの各部位と、患者の各部位との関連付けを事前に実施していてもよい。このように事前に関連付けることで、関連付け機能353は、関連づけにかかる処理時間を削減することができる。
【0055】
干渉予測機能354は、患者の各部位を検出した位置に合わせて、干渉シミュレーションの患者モデルの各部位の位置を補正する(ステップS25)。
【0056】
干渉予測機能354は、補正後の各部位の位置において、患者と放射線治療装置10とが干渉する可能性を予測する(ステップS26)。干渉予測機能354は、予測結果に基づいて、干渉する可能性が高いか否かを判定する(ステップS27)。干渉する可能性が低い場合に(ステップS27;No)、医療用監視装置30は、ステップS30に移行する。
【0057】
干渉する可能性が高い場合に(ステップS27;Yes)、表示制御機能356は、患者と放射線治療装置10とが干渉する可能性が高いことを通知する画面を表示させる(ステップS28)。
【0058】
カメラ制御機能355は、予測結果に基づいて監視カメラ20の焦点などを変更することで、監視カメラ20に干渉箇所を撮像させる(ステップS29)。ここで、監視カメラ20は、放射線治療装置10による治療中においては、医療従事者に監視させるために、患者と、放射線治療装置10を含む任意の領域を撮像している。しかし、干渉する可能性が高いと判定された場合、カメラ制御機能355は、予測結果に基づいて、干渉箇所を撮像させるために、監視カメラ20の位置、角度、拡大率、焦点などを制御する。これにより、カメラ制御機能355は、監視カメラ20に干渉箇所を撮像させる。
【0059】
医療用監視装置30は、放射線治療装置10による治療が終了したか否かを判定する(ステップS30)。治療が終了していない場合に(ステップS30;No)、医療用監視装置30は、ステップS21に移行する。
【0060】
治療が終了した場合に(ステップS30;Yes)、医療用監視装置30は、干渉判定処理を終了する。
【0061】
以上のように、第1の実施形態にかかる医療用監視装置30によれば、取得機能352は、放射線治療装置10の寝台16上の患者の位置を示す位置情報を取得する。干渉予測機能354は、患者の位置情報に基づいて、干渉シミュレーションの患者モデルの位置を補正し、補正後の患者モデルを使用して、干渉シミュレーションを実行することで、患者と、放射線治療装置10とが干渉する可能性が高いか否かを予測する。そして、表示制御機能356は、干渉予測機能354による予測結果に基づいて、患者と放射線治療装置10とが干渉する可能性が高い干渉箇所を表示させる。よって、医療従事者は、医療用監視装置30により表示された画面を見ることで、干渉する可能性が高い干渉箇所を確認することができる。以上により、医療用監視装置30は、医療機器と患者との干渉に対する監視負担を軽減させることができる。
【0062】
(変形例1)
第1の実施形態では、医療装置として放射線治療装置10を適用した場合について説明した。医療装置は、事前に撮像計画が設定され、患者の周囲を移動する移動部を有する循環器用X線診断装置(アンギオグラフィ)に適用してもよいし、他の医療装置に適用してもよい。
【0063】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
1 医療用監視システム
10 放射線治療装置
20 監視カメラ
30 医療用監視装置
12 ディスプレイ
16 寝台
19 回転ガントリ
171 放射線発生器
172 放射線絞り器
181 放射線発生器
182 検出器
351 入力機能
352 取得機能
353 関連付け機能
354 干渉予測機能
355 カメラ制御機能
356 表示制御機能
3561 干渉マーク
3562 指定領域マーク