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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】警報ベル
(51)【国際特許分類】
   G10K 1/064 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
G10K1/064 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020163595
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055899
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】池端 利之
(72)【発明者】
【氏名】川島 高広
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-293179(JP,A)
【文献】実公昭34-017232(JP,Y1)
【文献】特開2008-185886(JP,A)
【文献】特開平08-123423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 1/00-7/06
G10K 9/12-9/22
G08B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打棒と、前記打棒により打撃されるゴングを備え、前記打棒の打撃によりゴングが鳴動して警報を発する警報ベルであって、
前記打棒は、前記ゴングを打撃する打撃部に近接する位置にスリット又は穴が設けられており、
前記スリット又は穴は、前記打棒の側部に凹設又は貫設されるものであると共に、前記打棒の長さ方向の中心線を超える深さを有するものであることを特徴とする警報ベル。
【請求項2】
前記打棒にモータの動力をカムを介して伝達する動力伝達部材をさらに備え、
前記動力伝達部材は、基端側が前記カムと接続されると共に、先端側が前記打棒と接続されており、前記カムは、前記動力伝達部材の基端側の接続部分が巻回されて、カム面として機能するカム面部と、前記カム面部に向けて傾斜する傾斜面が内壁面に設けられるフランジ部を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の警報ベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、打撃によりゴングが鳴動して警報を発する警報ベルに関する。
【背景技術】
【0002】
警報ベルは、打撃されるとベル音を発生するゴングと、前記ゴングを打撃する打棒と、前記打棒を駆動するモータと、前記モータを収納するハウジング等を備え、火災等の非常事態の発生時にゴングが鳴動してベル音を発生し、警報を発するものとして用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
主な用例は、自動火災報知設備の地区音響装置や非常警報設備の音響装置の非常ベル(以下、単に「非常ベル」という)等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-235394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の警報ベルにおいては、前記の非常ベルとして用いられるものの場合、多数台が同時に鳴動(区分鳴動や一斉鳴動)するものとして設置されることが多い。そのため、警報ベル個々のモータの消費電流(駆動電流)は小さい方が好ましい。
【0006】
この発明は、前記の事情に鑑み、モータの消費電流を低減することができる警報ベルを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、打棒と、前記打棒により打撃されるゴングを備え、前記打棒の打撃によりゴングが鳴動して警報を発する警報ベルであって、前記打棒は、前記ゴングを打撃する打撃部に近接する位置にスリット又は穴が設けられており、前記スリット又は穴は、前記打棒の側部に凹設又は貫設されるものであると共に、前記打棒の長さ方向の中心線を超える深さを有するものであることを特徴とする警報ベル、である。
【0009】
の発明において前記打棒にモータの動力をカムを介して伝達する動力伝達部材をさらに備えるものとすることができ、前記動力伝達部材は、基端側が前記カムと接続されると共に、先端側が前記打棒と接続されており、前記カムは、前記動力伝達部材の基端側の接続部分が巻回されて、カム面として機能するカム面部と、前記カム面部に向けて傾斜する傾斜面が内壁面に設けられるフランジ部を有するものとすることができる。また、前記フランジ部は、前記カム面部の軸方向両端にそれぞれ設けられるものとすることができる。また、前記カム面部は、長さ方向の一方の端部側が他方の端部側よりも大きい回転半径で回転する配置で設けられるものとすることができる。また、前記カム面部は、前記一方の端部側が他方の端部側よりも軸方向の幅が大きいものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明においては、打棒の打撃部に近接する位置にスリット又は孔が設けられていることにより、打棒がゴングを打撃した際の打棒の反発力を大きくすることができる。それにより、打棒を引き戻す際のモータの負荷を低減することができ、モータの消費電流を低減することができる。
【0011】
したがって、この発明によれば、モータの消費電流を低減することができる警報ベルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の警報ベルの実施形態の一例を示したものであり、ゴングの裏面側に設けられる打棒やモータ等の打撃機構部分をハウジングの裏蓋を開けた状態で示した裏面図である。
図2】同上の警報ベルの打棒の、(a)が図1の例の拡大側面図、(b)が他の例の拡大側面図、(c)がさらに他の例の拡大側面図である。
図3】同上の警報ベルのカムの、動力伝達部材が接続されている状態の、(a)斜視図、(b)が下面図である。
図4】同上の警報ベルのカム単体の、(a)が正面図(フランジの一方の側面側)、(b)が左側面図、(c)が右側面図、(d)が上面図、(e)が(a)のA-A線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の警報ベルの実施形態の一例について、図1乃至4を参照しつつ、警報ベル1として説明する。なお、警報ベル1は、例えば、自動火災報知設備の地区音響装置や非常警報設備の音響装置の非常ベル等として用いることができるものである。
【0014】
[基本構成]
警報ベル1は、図1に示したように、ゴング2と、ゴング2を打撃する打棒3と、打棒3を駆動するモータ4と、打棒3にモータ4の動力をカム5を介して伝達する動力伝達部材6等を備えており、火災等の非常事態の発生時、打棒3の打撃によりゴング2が鳴動して警報を発するものとして用いられる。なお、打棒3やモータ4等の打撃機構部分は、ゴング2の内面側に設けられるものである。
【0015】
[打棒]
打棒3は、具体的には、カム5と動力伝達部材を介して伝達されるモータ4の動力により、長さ方向前後に往復運動し、前方に移動した際に、先端部に設けられる球冠形状の打撃部3aによりゴング2を打撃するものとして設けられている。
【0016】
・スリット
そして、打棒3には、図1及び図2(a)に示したように、ゴング2を打撃する打撃部3aに近接する位置に、スリット3cが設けられている。
【0017】
警報ベル1においては、このスリット3cが設けられていることにより、打棒3がゴング2を打撃した際の打棒3の反発力を大きくすることができる。それにより、打棒3を引き戻す際のモータ4の負荷を低減することができ、モータ4の消費電流を低減することができる。
【0018】
・スリットの具体例
スリット3cは、具体的には、図示の例の場合、打棒3の側部に凹設されるものとしており、かつ、打棒3の横断方向に細長の溝が形成されるものとしている。さらに、その溝の深さが、打棒3の長さ方向の中心線を超えるものとしている。
【0019】
・スリットの変更例
スリット3cの形状等については、打撃の際の反発力を大きくすることができるものであれば、適宜変更することができる。例えば、スリット3cの場合、溝を1つとしているが、複数としてもよい。図2(b)に示したものは、溝を複数とする場合の一例である。同図において、スリット3c’、3c’は、溝を2つ有するものとしている。2つの溝は、いずれも、スリット3cの溝と同様、打棒3の側部に凹設され、打棒3の横断方向に形成されるものとしているが、前後2段に配されるものとしており、かつ、互いに反対方向に開口するものとしている。なお、複数の溝を前後に段状に配されるものとする場合の、各溝の開口の向きについては、前記のように交互に反対方向に開口するものとしてもよいし、同じ方向に開口するものとしてもよい。
【0020】
・穴
打撃の際の打棒3の反発力を大きくする手段としては、前記のスリット3cや3c’のような溝とするのに代えて、或いは加えて、穴としてもよい。図2(c)に示したものは、溝とするのに代えて穴とする場合の一例である。同図において、穴3c’’は、打棒3の側部に貫設される貫通穴として形成されるものとしている。その数は1つとしており、その形状は四角形状(角丸のものを含む)をなすものとしている。穴3c’’の穴の数や形状については、適宜変更することができる。例えば、複数としてもよいし、他の多角形形状(角丸のものを含む)や、円形状、楕円形状をなすものとしてもよい。さらに、貫設されるものとするのに代えて、凹設されるものとし、非貫通穴として形成されるものとしてもよい。
【0021】
[カム]
カム5は、図1に示したように、モータ4の駆動軸4aに固定されており、駆動軸4aと共に回転する。カム5には、先端側の接続部分6bが打棒3に接続される動力伝達部材6における基端側の接続部分6aが接続されており、カム5と動力伝達部材6を介し、モータ4の回転運動の動力が往復運動の動力として打棒3に伝達される。打棒3は、それにより長さ方向前後に往復運動する。
【0022】
カム5は、具体的には、図3及び図4に示したように、動力伝達部材6の接続部分6aが巻回されて接続されて、カム面と機能するカム面部5aと、カム面部5aの軸方向両側に設けられるフランジ部5b、5bを有している。
【0023】
なお、動力伝達部材6は、図示の例の場合、線状の部材からなるものとしており、かつ、途中に曲折部が設けられてバネ性を有するものとしている(図1及び図3参照)。
【0024】
・傾斜面
そして、カム5のフランジ部5b、5bには、その内壁面に、カム面部5aに向けて傾斜する傾斜面5c、5cが設けられている。
【0025】
警報ベル1においては、傾斜面5c、5cが設けられていることにより、カム5が回転する際に、動力伝達部材6の接続部分6aとの接触部分が、傾斜面に接触したとしても、傾斜面の外周部ではなく、カム面部5aに近い部分で接触することになり、接触により発生する摩擦トルクを軽減することができる。それにより、モータ4の負荷を低減することができ、モータ4の消費電流を小さくすることができる。
【0026】
なお、傾斜面5c、5cは、フランジ部5b、5bの両側に設けられるものとするのが好ましいが、片側のみに設けられるものとしてもよい。
【0027】
・回転半径
カム5は、図示の例の場合、カム面部5aが、その長さ方向の一方の端部5aa側が他方の端部5ab側よりも大きい回転半径で回転する配置で設けられるものとしている(図3(a)および図4(d)参照)。それにより、往復運動の動力を得ているが、通常、接続部分6aが必ず一方の端部5ab側に接触するため、回転トルク負荷を小さくすることができる。これによっても、モータ4の負荷を軽減することができ、モータ4の消費電流を小さくすることができる。
【0028】
さらに、カム5は、図示の例の場合、一方の端部5aa側が他方の端部5ab側よりも軸方向の幅が大きいものとしている(図4(d)参照)。それにより、動力伝達部6が、通常、小径側である5ab側にのみ接触するため、モータ4の消費電流を小さくすることができる。
【0029】
[構成の変更例]
警報ベル1においては、例えば、以下のように構成を変更することができる。
【0030】
スリット3c、3c’の溝の深さについては、より浅いものとしてもよい。ただし、打撃の際の打棒3の反発力を大きくするという点では、前記の通り、打棒3の長さ方向の中心線を超える程の深さとした方が有利である。
【0031】
傾斜面5c、5cの傾斜の角度については、適宜変更することができ、図示のものよりも、急なものとしてもよいし、緩やかなものとしてもよい。
【0032】
また、以下のような変更をしても同様の効果を得られる。
・カム5の傾斜の形状について、直線的な傾斜とするのに代えて、円弧状の傾斜としても良い。
・カム5の中心軸について、カム5の重心位置になく、偏心した位置にあってもよい。また、カム5の形状は、円形状ではなく、楕円形状でもよく、また、丸四角形状でも、丸三角形状でもよい。
・カム5のフランジ部5bの厚さは、カムの位置により変化をしてもよい。例えば、カム5の回転バランスを均等にするために、端部5aa側を薄肉として、端部5ab側を肉厚としてもよい。
・カム面部5aは、その中心部から遠位端側の端部5aaを複数もつ形状でもよい。この場合、カム面部5aは断面形状を、丸三角形状としたり、丸四角形状としたりしてもよい。例えば、丸三角形状とする場合は、カム5が1回転する間に、動力伝達部材6を3往復させることができる。
【符号の説明】
【0033】
1:警報ベル 2:ゴング 3:打棒 3a:打撃部
3c、3c’:スリット 3c’’:穴 4:モータ 4a:駆動軸
5:カム 5a:カム面部 5aa、5ab:端部 5b:フランジ部
5c:傾斜面 6:動力伝達部 6a、6b:接続部分
図1
図2
図3
図4