IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成株式会社の特許一覧

特許7570883架橋用ゴム組成物、及びタイヤ用トレッド
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】架橋用ゴム組成物、及びタイヤ用トレッド
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20241015BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20241015BHJP
   C08F 212/04 20060101ALI20241015BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241015BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20241015BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20241015BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
C08L21/00
B60C1/00 A
C08F212/04
C08K3/36
C08L25/08
C08L91/00
C08L101/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020176625
(22)【出願日】2020-10-21
(65)【公開番号】P2022067814
(43)【公開日】2022-05-09
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】荒木 祥文
(72)【発明者】
【氏名】安本 敦
(72)【発明者】
【氏名】井上 芳久
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-160291(JP,A)
【文献】特開2018-177920(JP,A)
【文献】国際公開第2019/151126(WO,A1)
【文献】特開2020-070330(JP,A)
【文献】特開2007-177209(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0131347(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0371216(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 21/00
B60C 1/00
C08F 212/04
C08K 3/36
C08L 25/08
C08L 91/00
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素価が10~250(g/100g)であり、エチレン構造≧3質量%であり、ビニル芳香族単量体単位の含有量が5質量%以上30質量%以下であり、ビニル芳香族単量体単位が8個以上連鎖しているビニル芳香族単量体ブロック<10質量%であるゴム状重合体(A)と、
架橋剤(B)と、
軟化点が140℃未満の水素添加された環含有樹脂(C)と、
を、含有する、架橋用ゴム組成物であって、
前記ゴム状重合体(A)は、重量平均分子量が、25万以上100万以下であり、
前記ゴム状重合体(A)は、カラム吸着GPC法で測定される変性率が70質量%以上であり、
前記架橋用ゴム組成物中のゴム成分総量に対する前記ゴム状重合体(A)の含有量が、20質量%以上であり、
前記架橋用ゴム組成物中のゴム成分総量100質量部に対する前記環含有樹脂(C)の含有量が30質量部以下であり、
前記架橋用ゴム組成物が、シリカ、及びオイルをさらに含有し、
前記架橋用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対する、シリカ量(質量部)/オイル量(質量部)が、6以上である、
架橋用ゴム組成物
【請求項2】
前記ゴム状重合体(A)のビニル単位及びブチレン単位の含有量が、20mol%以上である、請求項に記載の架橋用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム状重合体(A)が、窒素原子を含有する、請求項1又は2に記載の架橋用ゴム組成物。
【請求項4】
前記軟化点が140℃未満の水素添加された環含有樹脂(C)の軟化点が90℃以上である、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の架橋用ゴム組成物。
【請求項5】
前記架橋用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、
前記軟化点が140℃未満の水素添加された環含有樹脂(C)を10~30質量部を含有する、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の架橋用ゴム組成物。
【請求項6】
前記架橋用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対する前記軟化点が140℃未満の水素添加された環含有樹脂(C)量(質量部)/前記ゴム状重合体(A)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(ST)(質量%)が、
0.3以上である、請求項1乃至のいずれか一項に記載の架橋用ゴム組成物。
【請求項7】
前記軟化点が140℃未満の水素添加された環含有樹脂(C)が、部分水添樹脂及び/又は水添テルペン樹脂である、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の架橋用ゴム組成物。
【請求項8】
前記架橋用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、植物由来のオイルを1~80質量部、さらに含有する、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の架橋用ゴム組成物。
【請求項9】
前記架橋用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、
シリカを、10~130質量部、さらに含有する、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の架橋用ゴム組成物。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の架橋用ゴム組成物を含む、タイヤ用トレッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋用ゴム組成物、及びタイヤ用トレッドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤトレッド、シート、フィルム、及びアスファルト改質用のゴム材料分野において、機械強度や圧縮永久歪みを高める目的で、エチレン構造を有し架橋可能な不飽和基を導入したゴム状重合体を含有する架橋用ゴム組成物が提案されている(例えば、特許文献1~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2003/085010号公報
【文献】特開2010-270314号公報
【文献】国際公開第2019/151126号公報
【文献】国際公開第2019/151127号公報
【文献】国際公開第2019/078083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来提案されているエチレン構造を有し、架橋可能な不飽和基を有するゴム状重合体を含有する架橋用ゴム組成物は、ムーニー粘度が大きい傾向にあるため、混練しにくく、架橋用ゴム組成物の加工性が低く、その結果、得られるゴム材料の引張エネルギーが低かったり、耐摩耗性が低かったりする傾向にある、という問題点を有している。
【0005】
そこで、本発明においては、エチレン構造を有し、架橋可能な不飽和基を有するゴム状重合体を含有する架橋用ゴム組成物であって、良好な加工性を示し、十分な引張エネルギー及び耐摩耗性を有する成形体が得られる架橋用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述した従来技術の課題を解決するために、鋭意研究検討した結果、ヨウ素価、エチレン構造、及びビニル芳香族ブロック量を所定の数値範囲に特定したゴム状重合体(A)、架橋剤(B)、及び所定の軟化点の環含有樹脂(C)を含有する架橋用ゴム組成物が、上述した従来の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0007】
〔1〕
ヨウ素価が10~250(g/100g)であり、エチレン構造≧3質量%であり、ビニル芳香族単量体単位の含有量が5質量%以上30質量%以下であり、ビニル芳香族単量体単位が8個以上連鎖しているビニル芳香族単量体ブロック<10質量%であるゴム状重合体(A)と、
架橋剤(B)と、
軟化点が140℃未満の水素添加された環含有樹脂(C)と、
を、含有する、架橋用ゴム組成物であって、
前記ゴム状重合体(A)は、重量平均分子量が、25万以上100万以下であり、
前記ゴム状重合体(A)は、カラム吸着GPC法で測定される変性率が70質量%以上であり、
前記架橋用ゴム組成物中のゴム成分総量に対する前記ゴム状重合体(A)の含有量が、20質量%以上であり、
前記架橋用ゴム組成物中のゴム成分総量100質量部に対する前記環含有樹脂(C)の含有量が30質量部以下であり、
前記架橋用ゴム組成物が、シリカ、及びオイルをさらに含有し、
前記架橋用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対する、シリカ量(質量部)/オイル量(質量部)が、6以上である、
架橋用ゴム組成物
〔2〕
前記ゴム状重合体(A)のビニル単位及びブチレン単位の含有量が、20mol%以上
である、前記〔1〕に記載の架橋用ゴム組成物。
〔3〕
前記ゴム状重合体(A)が、窒素原子を含有する、前記〔1〕又は〔2〕に記載の架橋用ゴム組成物。
〔4〕
前記軟化点が140℃未満の水素添加された環含有樹脂(C)の軟化点が90℃以上で
ある、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の架橋用ゴム組成物。
〔5〕
前記架橋用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、
前記軟化点が140℃未満の水素添加された環含有樹脂(C)を10~30質量部を含
有する、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の架橋用ゴム組成物。
〔6〕
前記架橋用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対する前記軟化点が140℃未満の
水素添加された環含有樹脂(C)量(質量部)/前記ゴム状重合体(A)中のビニル芳香
族単量体単位の含有量(ST)(質量%)が、
0.3以上である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の架橋用ゴム組成物。
〔7〕
前記軟化点が140℃未満の水素添加された環含有樹脂(C)が、部分水添樹脂及び/
又は水添テルペン樹脂である、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載の架橋用ゴム組成物。
〔8〕
前記架橋用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、植物由来のオイルを1~8
0質量部、さらに含有する、前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載の架橋用ゴム組成物。
〔9〕
前記架橋用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、シリカを、10~130質
量部、さらに含有する、前記〔1〕乃至〔8〕のいずれか一項に記載の架橋用ゴム組成物。
〔10〕
前記〔1〕乃至〔9〕のいずれか一に記載の架橋用ゴム組成物を含む、タイヤ用トレッド。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加工性が良好で十分な混練が可能であり、十分な引張エネルギー及び耐摩耗性を有する成形体が得られる架橋用ゴム組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施することができる。
【0010】
〔架橋用ゴム組成物〕
本発明の架橋用ゴム組成物は、
ヨウ素価化が10~250(g/100g)であり、エチレン構造≧3質量%であり、ビニル芳香族単量体ブロック<10質量%であるゴム状重合体(A)と、架橋剤(B)と、
軟化点が140℃未満の水素添加された環含有樹脂(C)を含有する。
上記構成により、加工性が良好で、十分な引張エネルギー及び耐摩耗性を有する成形体が得られる架橋用ゴム組成物となる。
【0011】
(ゴム状重合体(A))
本実施形態の架橋用ゴム組成物に含まれるゴム状重合体(A)は、ヨウ素価が10~250(g/100g)であり、エチレン構造≧3質量%であり、ビニル芳香族単量体ブロック含有量<10質量%である。
【0012】
<ヨウ素価>
ゴム状重合体(A)は、ヨウ素価が10~250(g/100g)である。
ヨウ素価は、ゴム状重合体(A)を架橋用ゴム組成物に使用する場合の共架橋性や、タイヤにした時の柔軟性の観点から、10(g/100g)以上であり、15(g/100g)以上が好ましく、30(g/100g)以上がより好ましく、50(g/100g)以上がさらに好ましい。
一方、タイヤの材料として使用する場合の機械強度や耐摩耗性の観点から、250(g/100g)以下とし、200(g/100g)以下が好ましく、150(g/100g)以下がより好ましく、100(g/100g)以下がさらに好ましく、70(g/100g)以下がさらにより好ましい。
ヨウ素価は、「JIS K 0070:1992」に記載の方法に準じて測定することができる。
ヨウ素価は、対象となる物質100gと反応するハロゲンの量をヨウ素のグラム数に換算して表す値であるため、ヨウ素価の単位は「g/100g」である。
例えば、後述するゴム状重合体の製造方法において、共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とを共重合した場合は、共役ジエン単量体は二重結合を有しているため、ゴム状重合体のヨウ素価は、共役ジエン単量体の含有量が低い方が低くなり、また、共役ジエン単量を水素添加する場合は、水素添加率が高い方が、ヨウ素価は低くなる。
ゴム状重合体(A)のヨウ素価は、不飽和結合を有する共役ジエン単量体等の添加量、重合時間、重合温度等の重合条件、水素添加工程における水素添加量、水素添加時間等の条件を調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0013】
<エチレン構造の含有量>
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)は、エチレン構造が3質量%以上(エチレン構造≧3質量%)である。
エチレン構造が3質量%以上であることにより、ゴム状重合体(A)を用いた架橋用ゴム組成物の引張強度が低くなりにくくなる、という効果が得られる。好ましくはエチレン構造が5質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。
また、エチレン構造は好ましくは90質量%以下であり、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
ゴム状重合体(A)中のエチレン構造が90質量%以下であることにより、優れたゴム弾性が得られる。
ゴム状重合体(A)中のエチレン構造は、エチレン単量体を共重合体して得られるエチレン構造や、共役ジエン単量体を重合後に水素添加して得られるエチレン構造等の全てを含む。例えば、1,4-ブタジエン単位が水素添加した場合は、二つのエチレン構造が得られ、1,4-イソプレン単位が水素添加された場合は、一つのプロピレン構造と一つのエチレン構造が得られる。
ゴム状重合体(A)のエチレン構造は、後述する実施例に記載する方法により測定することができ、エチレンの添加量、共役ジエン単量体の添加量と水素添加率等を調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0014】
<ビニル芳香族単量体ブロック含有量>
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)は、ビニル芳香族単量体ブロック含有量が10質量%未満(ビニル芳香族単量体ブロック<10質量%)である。
ゴム状重合体(A)とは、ビニル芳香族単量体単位が8個以上連鎖しているブロックをいう。
ゴム状重合体(A)のビニル芳香族単量体ブロック含有量が10質量%未満であると、本実施形態の架橋用ゴム組成物をタイヤの原料とした時の省燃費性が向上しやすい傾向にある。
ゴム状重合体(A)の芳香族ビニル単量体ブロック含有量は、7質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
ビニル芳香族単量体ブロックは、柔軟性の観点から、ビニル芳香族単量体単位が30以上連鎖しているブロックの数が、少ないか又はないものであることが好ましい。
ビニル芳香族単量体ブロックの形態は、具体的には、共重合体がブタジエン-スチレン共重合体の場合、Kolthoffの方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により重合体を分解し、メタノールに不溶なポリスチレン量を分析することができる。その他の方法として、国際公開第2014-133097号公報に記載されているように、NMRを用いてスチレン単位の連鎖を測定すること等の公知の方法で測定できる。
ゴム状重合体(A)のビニル芳香族単量体ブロック含有量は、ビニル芳香族単量体の添加方法や重合助剤の添加や重合温度等の調整により、上記数値範囲に制御することができる。
【0015】
<ゴム状重合体(A)中のビニル芳香族単量体単位の含有量>
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、成形体の運搬時の耐変形性や、タイヤトレッドに用いた時の破壊強度やウェットスキッド抵抗性の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらにより好ましい。
一方、シート状あるいはブロック状の成形体の計量時の切断性や包装フィルムの密着性や包装フィルムの破れ難さの観点から、さらには、タイヤトレッドに用いた時の省燃費性や耐摩耗性の観点から、45質量%以下が好ましく、さらに、水素添加された樹脂(C)との相容性の観点から、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。
ゴム状重合体(A)中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、後述する実施例に記載する方法により測定でき、重合工程におけるビニル芳香族単量体の添加量を調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0016】
<ゴム状重合体(A)のビニル単位及びブチレン単位の含有量>
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)は、ビニル単位及びブチレン単位の含有量が20mоl%以上であることが好ましい。
ビニル単位及びブチレン単位の含有量は、、ゴム状重合体(A)の製造性や、本実施形態の架橋用ゴム組成物の加工性や、タイヤトレッドに用いた時のウェットスキッド抵抗性の観点から、20mоl%以上が好ましく、25mоl%以上がより好ましく、30mоl%以上がさらに好ましい。
また、ゴム状重合体(A)の耐熱老化性や、タイヤトレッドに用いた時の省燃費性の観点から、60mоl%以下が好ましく、50mоl%以下がより好ましく、45mоl%以下がさらに好ましい。
ゴム状重合体(A)中のビニル単位及びブチレン単位の含有量は、実施例の、1H-NMR測定により測定することができる。
ゴム状重合体(A)のビニル単位及びブチレン単位の含有量は、ゴム状重合体(A)の重合時における、極性化合物の添加や重合温度の調整により、上記数値範囲に制御することができる。
【0017】
<ゴム状重合体(A)に不飽和基を含有させる単量体単位>
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)は、共役ジエン単量体単位やミルセン等の不飽和基を有する単量体単位を2質量%以上含有することが好ましい。
経済性や製造性の観点から、ゴム状重合体(A)は、共役ジエン単量体単位を含有することがより好ましい。
ゴム状重合体(A)の成分として共役ジエン単量体単位やミルセンを含有する場合、共役ジエン単量体単位やミルセンは二重結合を有しているため、得られるゴム状重合体(A)においても二重結合を有していることとなり、架橋可能な不飽和基となる。
ゴム状重合体(A)中の共役ジエン単量体単位やミルセン等の不飽和基を有する単量体単位の含有量は、上述したヨウ素価と密接に関係している。
共役ジエン単量体単位やミルセン等の不飽和基を有する単量体単位の含有量が2質量%以上であることにより、架橋のしやすさの観点で優れたものとなる。共役ジエン単量体単位の含有量はより好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは6質量%以上である。
また、共役ジエン単量体単位やミルセン等の不飽和基を有する単量体単位の含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましく30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。この場合、耐候性や耐経年劣化性が優れたものとなる。
共役ジエン単量体単位やミルセン等の不飽和基を有する単量体単位の中では、経済性や製造性の観点で、共役ジエン単量体単位が好ましい。
ゴム状重合体(A)の共役ジエン単量体単位やミルセン等の不飽和基を有する単量体単位の含有量は、後述する実施例に記載する「水添率」の測定方法により併せて測定することができ、後述する共役ジエン単量体単位やミルセン等の不飽和基を有する単量体の添加量や、共役ジエン単量体の水素添加率を調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0018】
<ゴム状重合体(A)中のα-オレフィンの含有量>
ゴム状重合体(A)中のビニル芳香族単量単位を除いた全ての単量体単位中のα-オレフィンの含有量は、ゴム状重合体の生産性の観点から、13質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。
一方で、タイヤに用いた時の機械強度の観点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、55質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下がさらにより好ましい。
ゴム状重合体(A)を、共役ジエン単量体の重合体又は共重合体を水素添加して製造する場合、α-オレフィンの含有量は、水素添加反応前の共役ジエン単量体含有量やビニル結合量や水素添加率を調整することによって制御できる。
なお、1,2-ビニルブタジエンが水素添加されるとブチレンとなり、α-オレフィン構造となる。
ゴム状重合体(A)のα-オレフィン含有量は、実施例の、1H-NMR測定により測定することができる。
【0019】
<架橋用ゴム組成物を構成するゴム状重合体(A)の変性>
本実施形態の架橋用ゴム組成物は、当該架橋用ゴム組成物の成形体からの架橋用ゴム組成物の耐剥離性や、タイヤにした時の省燃費性の観点から、ゴム状重合体(A)が窒素原子やスズ原子を含有することが好ましく、窒素原子を含有することがより好ましい。
【0020】
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)は、架橋用ゴム組成物の機械強度や、シリカやカーボンブラックを用いたタイヤに製造する時の分散性の観点から、ゴム状重合体(A)のカラム吸着GPC法で測定される変性率が、40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
本明細書中、「変性率」は、ゴム状重合体(A)の総量に対する窒素原子含有官能基を有する重合体の質量比率を表す。
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)中への窒素原子の導入位置は、ゴム状重合体(A)の重合開始末端、分子鎖中(グラフト生成物を含む)、及び重合末端のいずれであってもよい。
変性率は、ゴム状重合体に対する変性剤の添加量、変性工程時間を調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0021】
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)を、共役ジエン単量体を重合した後に水素添加して製造する場合は、重合生産性や高い変性率やタイヤにした時の耐摩耗性及び省燃費性の観点から、スズ原子又は窒素原子を含有するカップリング剤を用いて、重合体中にスズ原子又は窒素原子を導入する方法を採用することが好ましい。特に窒素原子を含有するカップリング剤を用いて重合体中に窒素原子を導入する方法を採用することがより好ましい。
【0022】
窒素原子を含有するカップリング剤としては、重合生産性や高い変性率の観点から、イソシアナート化合物、イソチオシアナート化合物、イソシアヌル酸誘導体、窒素基含有カルボニル化合物、窒素基含有ビニル化合物、窒素基含有エポキシ化合物、及び窒素基含有アルコキシシラン化合物等が好ましい。
これらの窒素原子を含有するカップリング剤としては、ゴム状重合体(A)の重合生産性や高い変性率やタイヤにした時の引張強度の観点から、窒素基含有アルコキシシラン化合物がより好ましい。
【0023】
窒素基含有アルコキシシラン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-(4-トリメトキシシリルブチル)-1-アザ-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジメトキシ-1-(5-トリメトキシシリルペンチル)-1-アザ-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジメトキシ-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ-2-エチル-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ,2-メチル-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、及び2-エトキシ-2-エチル-1-(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(トリメトキシシリルメチル)アミン、トリス(2-トリメトキシシリルエチル)アミン、及びトリス(4-トリメトキシシリルブチル)アミン、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、及びN1-(3-(ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロピル)-N1-メチル-N3-(3-(メチル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロピル)-N3-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,3-プロパンジアミン等が挙げられる。
【0024】
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)が、エチレンと共役ジエン単量体を共重合して製造されたものである場合は、架橋用ゴム組成物の破壊強度や、タイヤにした時の省燃費性や耐摩耗性や柔軟性の観点から、スズ原子、窒素原子、又は珪素原子を含有することが好ましい。
ゴム状重合体(A)の製造性の観点から、重合反応の転化率が100%に達した際に、スズ原子、窒素原子、又は珪素原子を含有するカップリング剤を用いて、これらの原子を重合体中に導入する方法を採用することが好ましい。
スズ原子、窒素原子、又は珪素原子を含有するカップリング剤としては、例えば、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチル スズ等のスズ含有化合物、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート化合物、グリシジルプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物等が挙げられる。
【0025】
<ゴム状重合体(A)のガラス転移温度>
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)のガラス転移温度は、架橋用組成物の引張強度の観点から、-90℃以上が好ましく、-80℃以上がより好ましく、-75℃以上がさらに好ましい。
一方、架橋用ゴム組成物の柔軟性や、タイヤ製造時のシートの耐切れ性の観点から、-15℃以下が好ましく、-30℃以下が好ましく、-40℃以下がさらに好ましい。
ガラス転移温度については、ISO 22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とする。
【0026】
<ゴム状重合体(A)の重量平均分子量>
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)の重量平均分子量は、架橋用ゴム組成物の相容性や、架橋用ゴム組成物の引張伸びの観点から、10万以上が好ましく、15万以上がより好ましく、20万以上がさらに好ましく、25万以上がさらにより好ましい。
一方、架橋用ゴム組成物の加工性の観点から、100万以下が好ましく、70万以下がより好ましく、60万以下がさらに好ましく、50万以下がさらにより好ましい。
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)の分子量分布(=重量平均分子量/数平均分子量)は、架橋用ゴム組成物の相容性や、タイヤに使用した時の省燃費性の観点から、2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.6以下がさらに好ましい。一方、架橋用ゴム組成物の加工性の観点から、1.05以上が好ましく、1.2以上がより好ましく、1.4以上がさらに好ましい。
重量平均分子量や分子量分布は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されたポリスチレン換算の分子量から計算できる。
ゴム状重合体(A)の重量平均分子量、分子量分布は、重合工程における単量体添加量、重合時間、重合温度、重合圧力等の各種重合条件を調整することにより、上記数値範囲に制御できる。
【0027】
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)は、架橋用ゴム組成物の相容性や、低温から高温まで幅広い範囲での柔軟性等の観点で、ビニル芳香族単量体やエチレンやα-オレフィンや共役ジエン単量体の構成比が異なる(共)重合体ブロックを二つ以上有してもよい。柔軟性の観点から、(共)重合体ブロック中のビニル芳香族単量体量は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
【0028】
(ゴム状重合体(A)の製造方法)
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)は、少なくとも共役ジエン単量体を重合又は共重合し、その後、二重結合の一部又は大部分を水素化(水素添加)して製造するか、少なくともエチレンと共役ジエン単量体を共重合して製造することが好ましい。
【0029】
少なくとも共役ジエン単量体を重合又は共重合した後に水素添加する方法としては、例えば、国際公開第96/05250号公報、特開2000-053706号公報、国際公開第2003/085010号公報、国際公開第2019/151126号公報、国際公開第2019/151127号公報、国際公開第2002/002663号公報、国際公開第2015/006179号公報に記載されているように、種々の添加剤や条件のもとに、アニオン重合で共役ジエン単量体を重合し、必要に応じてその他の単量体と共重合した後に水素添加する方法が挙げられる。
【0030】
少なくともエチレンと共役ジエン単量体を共重合体する方法としては、例えば、国際公開第2019/078083号公報、国際公開第2019/171679号公報、国際公開第2019/142501号公報に記載されているように、種々の添加剤や条件のもとに、配位重合で、エチレン、共役ジエン単量体、必要に応じて、他の単量体を添加して共重合する方法が挙げられる。
【0031】
製造可能な構造の自由度の観点から、ゴム状重合体(A)は、共役ジエン単量体を重合した後に水素添加して得ることが好ましい。
【0032】
共役ジエン単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、及び1,3-ヘプタジエン等が挙げられる。
これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、1,3-ブタジエンやイソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
ゴム状重合体(A)を構成する単量体としては、ビニル芳香族単量体も用いることができる。
ビニル芳香族単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、N,N-ジメチルアミノメチルスチレン、3級アミノ基含有ジフェニルエチレン(例えば、1-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-1-フェニルエチレン)等が挙げられる。
これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、スチレンが好ましい。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
ゴム状重合体(A)は、上述した単量体の他、必要に応じてその他の単量体を用いてもよい。
必要に応じて用いるその他の単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸、α,β―不飽和ニトリル化合物、α-オレフィン(ブチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン等)、エチレン、ミルセン、エチリデンノルボルネン、イソプロピリデンノルボルネン、シクロペンタジエン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0035】
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)を、共役ジエン単量体を重合又は共重合した後に水素添加して製造する場合は、水素添加前の共役ジエン系重合体の共役ジエン単量体単位のビニル結合量が重要であり、共役ジエン単量体単位中のビニル結合量は、ゴム状重合体(A)の生産性やタイヤにした時の高いウェットスキッド抵抗性の観点から、10mol%以上が好ましく、20mol%以上がより好ましい。また、タイヤに用いた時の機械強度の観点から、75mol%以下が好ましく、60mol%以下がより好ましく、45mol%以下がさらに好ましく、30mol%以下がさらにより好ましい。
ビニル結合量は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0036】
上記の重合工程や水添工程は、各々、バッチ式、連続式のいずれで行ってもよい。
【0037】
ゴム状重合体(A)の、水素添加率、エチレン、共役ジエン単量体、ミルセン、α-オレフィン及びビニル芳香族単量体等の単量体の分子間や分子内の分布は、特に限定されず、均一でも、不均一でも、分布があってもよい。
【0038】
(ゴム状重合体(A)に対する添加剤の添加)
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)の製造時に、種々の添加剤を添加して、ゴム組成物にすることが好ましい。
【0039】
<ゴム用軟化剤>
例えば、ゴム状重合体(A)の生産性、タイヤ製造時の無機充填剤等を配合したときの加工性を改善するために、ゴム用軟化剤を1~30質量%添加してもよい。ゴム状重合体(A)の分子量が高い場合、例えば重量平均分子量が100万を超える場合などは、ゴム用軟化剤を好ましくは15~30質量%用い、一方充填剤を配合した組成物とする場合の配合の自由度を広げるためには好ましくは1~15質量%用いる。
ゴム状重合体(A)を含むゴム組成物中のゴム用軟化剤の含有量は、タイヤにした時の経年劣化の特性の観点から、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下がさらにより好ましい。
ゴム用軟化剤としては、特に限定されないが、例えば、伸展油、液状ゴム、樹脂等が挙げられる。
ゴム用軟化剤としては、加工性や生産性や経済性の観点から、伸展油が好ましい。
ゴム用軟化剤を共役ジエン系重合体に添加する方法としては、以下のものに限定されないが、ゴム用軟化剤を重合体溶液に加え、混合して、ゴム用軟化剤含有の重合体溶液としたものを脱溶媒する方法が好ましい。
【0040】
<伸展油>
ゴム状重合体(A)には、加工性や生産性や経済性の観点から、伸展油を添加することが好ましい。
好ましい伸展油としては、例えば、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油等が挙げられる。
これらの中でも、環境安全上の観点、並びにオイルブリード防止及びウェットグリップ特性の観点から、IP346法による多環芳香族(PCA)成分が3質量%以下であるアロマ代替油が好ましい。アロマ代替油としては、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52(12)799(1999)に示されるTDAE(Treated Distillate Aromatic Extracts)、MES(Mild Extraction Solvate)等の他、RAE(Residual Aromatic Extracts)が挙げられる。
【0041】
<ゴム用安定剤>
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)の重合工程の後に、ゲル生成の防止や加工安定性の観点から、ゴム用安定剤を添加することが好ましい。
ゴム用安定剤としては、以下のものに限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(以下「BHT」とも記す。)、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェノール)プロピネート、2-メチル-4,6-ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等の酸化防止剤が挙げられる。
【0042】
(ゴム状重合体(A)の物性)
<残存溶媒量>
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)や、当該ゴム状重合体(A)に種々の添加剤を添加したゴム組成物中の、ゴム状重合体(A)の重合工程で用いた重合溶媒の残存溶媒は、臭気やVOC削減の観点から、低い方が好ましい。5000ppm以下が好ましく、3000ppm以下がより好ましく、1500ppm以下がさらに好ましい。また、経済性のバランスの観点から、50ppmm以上が好ましく、150ppm以上がより好ましく、300ppm以上がさらに好ましい。
【0043】
<水分含有量>
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)や、当該ゴム状重合体(A)に種々の添加剤を添加したゴム組成物中の水分の含有量は、0.05質量%以上1.5質量%以下が好ましい。ゴム状重合体(A)に添加剤を添加したゴム組成物中の水分量は溶媒除去後の乾燥時のゲル抑制の観点から、0.05質量%以上が好ましい。0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましい。一方、ゴム組成物の結露抑制や耐変色性の観点から、1.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下がさらに好ましい。
【0044】
<ムーニー粘度>
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)や、当該ゴム状重合体(A)に種々の添加剤を添加したゴム組成物のムーニー粘度は、ゴム状重合体(A)の分子量、分子量分布、分岐度、軟化剤、残存溶剤、及び水の含有量等の情報を含んだ指標となる。
ゴム状重合体(A)及びゴム組成物の100℃で測定されるムーニー粘度は、本実施形態の架橋用ゴム組成物の耐摩耗性や、タイヤにした時の操縦安定性や破壊強度の観点から、40以上が好ましく、50以上がより好ましく、55以上がさらに好ましい。一方、ゴム状重合体(A)やゴム組成物の生産性、充填剤等を配合した組成物としたときの加工性の観点から、170以下が好ましく、150以下がより好ましく、130以下がさらに好ましく、110以下がさらにより好ましい。
ムーニー粘度は、ISO289に規定されている方法で測定できる。
【0045】
<ムーニー緩和率>
ゴム状重合体(A)、又は当該ゴム状重合体(A)に軟化剤、伸展油、及び安定剤からなる群より選択される少なくとも一種の混合物としたときの、100℃で測定されるムーニー緩和率(MSR)が、成形性の観点から、0.80以下が好ましい。0.7以下がより好ましく、0.6以下がさらに好ましい。
ムーニー緩和率は、ゴム状重合体(A)が単体で流通する場合は、単体で測定することができる一方、軟化剤、伸展油、及び安定剤を含有した状態で流通する場合は、これらとの混合物の状態で測定し、0.80以下であることが好ましい。
ムーニー緩和率は、共役ジエン系共重合体の分子の絡み合いの指標となり、低いほど分子の絡み合いが多いことを意味し、ゴム状重合体(A)の分子量を大きくしたり、上述するカップリング剤や所定の分岐化剤等で分岐度を高くしたり、ゴム用軟化剤の添加量を低くしてムーニー粘度を高くさせることで、低くすることができる。
ムーニー緩和率は、ゴム状重合体(A)又は当該ゴム状重合体(A)を用いたゴム組成物を、100℃で1分間予熱した後、2rpmでローターを回転させ、その4分後のトルクからムーニー粘度(ML(1+4))を測定した後に、即座にローターの回転を停止させ、停止後1.6秒間~5秒間の0.1秒ごとのトルクをムーニー単位で記録し、トルクと時間(秒)とを両対数プロットした際の直線の傾きを求め、その絶対値をムーニー緩和率とすることで求めることができる。
【0046】
(ゴム状重合体(A)や種々の添加剤を添加したゴム組成物の成形方法)
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いるゴム状重合体(A)、又は当該ゴム状重合体(A)を含むゴム組成物は、取扱い性の観点から、シート状あるいはブロック状に成形した成形体とすることが好ましい。ブロック状の方がより好ましく、1,000cm3以上のブロック状(ベール)がさらに好ましい。17.5kgから35kgの直方体型ベールがさらに好ましい。
【0047】
(架橋用ゴム組成物の構成成分)
本実施形態の架橋用ゴム組成物は、架橋剤(B)、軟化点が140℃未満の水素添加された環含有樹脂(C)を含有し、さらに必要に応じて、その他のゴム成分、充填剤等を含むことができる。
【0048】
<その他のゴム成分>
その他のゴム成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(乳化重合タイヤや溶液重合タイプ)、天然ゴム、ポリイソプレン、 ブタジエンゴム(ハイシスポリブタジエン、ローシスポリブタジエン、シンジオタクチック1,2-ポリブタジエン、アクリロニトリルーブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレンゴムやエチレン-ブテンゴムやエチレン-オクテン等のエチレン-α-オレフィン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、及びウレタンゴム等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
混合は、重合後にドライの重合体を混合しても、重合中に溶液状態で混合してもよい。
【0049】
<ゴム成分総量中のゴム状重合体(A)の含有量>
本実施形態の架橋用ゴム組成物中のゴム成分総量に対するゴム状重合体(A)の含有量は20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることがさらにより好ましい。
【0050】
<ゴム成分総量の平均のヨウ素価>
本実施形態の架橋用ゴム組成物中のゴム成分総量の平均のヨウ素価は、架橋ムラの抑制や、高い機械強度の観点から、250(g/100g)以下が好ましい。
200(g/100g)以下がより好ましく、130(g/100g)以下がさらに好ましく、70(g/100g)以下がさらにより好ましい。
【0051】
<架橋剤(B)>
本実施形態の架橋用ゴム組成物は、架橋剤(B)を含有する。
架橋剤(B)は、硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤、無機架橋剤、ポリアミン架橋剤、樹脂架橋剤、硫黄化合物系架橋剤、オキシムーニトロソアミン系架橋剤等が挙げられ、これらを併用してもよい。
耐圧縮永久歪や経時の物性低下の少なさの観点から、硫黄系架橋剤(加硫剤)が好ましく、硫黄がより好ましい。
【0052】
本実施形態の架橋用ゴム組成物における架橋剤(B)の含有量は、引張モデュラスの観点から、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下が好ましい。
なお、「ゴム成分」とは、上述したゴム状重合体(A)、及びその他のゴム成分を含むものとする。
架橋剤(B)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、高い引張強度や高い架橋速度の観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。
一方、架橋ムラの抑制や高い引張強度の観点から、20質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。
ゴム状重合体(A)や、後述する環含有樹脂(C)の構造や比率は、架橋剤(B)の好ましい添加量に多少は影響し得るが、引張モデュラスの観点からは、この範囲で選択すればよい。
【0053】
架橋剤(B)として硫黄系架橋剤(加硫剤)を用いる場合は、加硫促進剤を併用することが好ましい。
特に、ゴム状重合体(A)のヨウ素価が200以下の場合は、加硫促進剤を併用することが好ましい。
加硫促進剤は、架橋用ゴム組成物の短い架橋時間や、耐摩耗性の観点から、グアニジン系、アルデヒドーアミン系、アルデヒドーアンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンテート系等の化合物が好ましく、ジフェニルグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤や、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤がより好ましい。
加硫促進剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
<軟化点が140℃未満の水素添加された環含有樹脂(C)>
本実施形態の架橋用ゴム組成物は、軟化点が140℃未満の水素添加された環含有樹脂(C)(以下、環含有樹脂(C)と記載する場合がある。)を含有する。
軟化点が140℃未満の水素添加された環含有樹脂(C)を用いることにより、本実施形態の架橋用ゴム組成物の加工性が低くなり難く、引張エネルギーが低くなり難く、耐摩耗性が低くなり難くなる。
環含有樹脂(C)の軟化点を140℃未満とすることで、架橋用ゴム組成物の粘度が高くなったり、剛直になったりすることを抑制できる。また環含有樹脂(C)が水素添加された構造を有することで、エチレン構造部分を有するゴム状重合体(A)との相溶性が良好なものとなる。
本明細書中、「環含有樹脂(C)」は、芳香族環及び/又は脂肪族環を有する樹脂を示す。
タイヤ用の架橋用ゴム組成物としては、一般に、芳香族環及び/又は脂肪族環を有し、低分子量であって室温でガラス状態のポリマーを「樹脂」と称することが多い。本明細書においても、このような樹脂は、環含有樹脂(C)の好ましい態様である。
環含有樹脂(C)の軟化点は様々な因子で決めるが、主な因子は分子量である。分子量が高いほど軟化点が高くなり、分子量が小さいほど軟化点は低くなる傾向にあるため、分子量を参照することで好ましい軟化点を有する環含有樹脂(C)を選択することができる。
【0055】
環含有樹脂(C)の分子量は、本実施形態の架橋用ゴム組成物の高い引張エネルギーの観点から300以上が好ましく、より好ましくは400以上、さらに好ましくは500以上であり、架橋用ゴム組成物の加工性の観点から2500以下が好ましく、より好ましくは2000以下、さらに好ましくは1500以下である。
【0056】
水素添加された環含有樹脂(C)のガラス転移温度は、本実施形態の架橋用ゴム組成物をシートにした際の耐切れ性の観点から、90℃以下がより好ましく、85℃以下がさらに好ましく、80℃以下がさらにより好ましい。一方で、本実施形態の架橋用ゴム組成物の剛性や、架橋用ゴム組成物の混合時の取扱い性の観点から、40℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましく、110℃以上がさらにより好ましい。
【0057】
環含有樹脂(C)は、環状であることにより、低粘度であり、また、物理架橋点として働き易いと想定される。
ヨウ素価が10~250(g/100g)であり、エチレン構造≧3質量%のゴム状重合体(A)と、軟化点が140℃未満の水素添加された環含有樹脂(C)が混練りし易く、相容性が高くなり、良好な性能が得られたと推定される。
軟化点が低いことが凝集力の低さにつながり、架橋用ゴム組成物が柔軟になり易く、柔軟であることで、架橋用ゴム組成物が機械的な衝撃の際に摩耗し難くなる効果が生じると推定される。
【0058】
前記環含有樹脂(C)の軟化点は、本実施形態の架橋用ゴム組成物をシートにした際の耐切れ性の観点から、140℃未満であるものとしく、135℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。
一方で、架橋用ゴムゴム組成物の剛性や、架橋用ゴム組成物の混合時の取扱い性の観点から、90℃以上が好ましく、95℃以上がより好ましく、100℃がさらに好ましく、110℃以上がさらにより好ましい。
【0059】
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いる環含有樹脂(C)は、分子内の不飽和結合を、部分的に又は完全に水素添加された樹脂である。
より具体的には、少なくとも、ベンゼン環等の芳香族環、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、及びテルペン構造からなる群より選ばれる少なくともいずれかを有する樹脂の不飽和基が部分的に又は完全に水素添加された樹脂である。
水素添加方法としては、例えば、分子内に不飽和結合を有する樹脂を、有機カルボン酸ニッケル、有機カルボン酸コバルト、1~3族の有機金属化合物からなる水素化触媒;カーボン、シリカ、珪藻土等に担持したニッケル、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム金属触媒;コバルト、ニッケル、ロジウム、ルテニウム錯体等から選択される一種を触媒として、1~100気圧の加圧水素下で水素化する方法が挙げられる。
水添前の樹脂は、天然樹脂でも合成樹脂でもよい。
【0060】
本実施形態の架橋用ゴム組成物に用いる環含有樹脂(C)は、市販品を好適に使用することができる。具体的には、C5留分を主原料とする、DCPD(ジシクロペンタジエン)/芳香族(C9)共重合系の水添石油樹脂である出光興産株式会社製の商品名「アイマーブP100」、「アイマーブP125」、「アイマーブS100」、「アイマーブS110」、C9留分を主原料とする水添族樹脂である荒川化学工業株式会社製の商品名「アルコンP-90」、「アルコンP-100」、「アルコンP-115」、「アルコンP-125」、「アルコンM-90」、「アルコンM-100」、「アルコンM-115」、「アルコンM-135」(Pは完全水添、Mは部分水添)、DCPD(ジシクロペンタジエン)/芳香族(C9)共重合系の水添石油樹脂である東燃ゼネラル石油株式会社製の商品名「T-REZ OP501」、「T-REZ PR801」、「T-REZ HA125」、「T-REZ HB125」、テルペン系の水素添加樹脂としては、具体的には、ヤスハラケミカル製クリアロンP105、ヤスハラケミカル製クリアロンP115、ヤスハラケミカル製クリアロンP125、ヤスハラケミカル製クリアロンP135、ヤスハラケミカル製クリアロンP150(商品名、軟化点152℃)、ヤスハラケミカル製クリアロンM105、ヤスハラケミカル製クリアロンM115、ヤスハラケミカル製クリアロンK100、ヤスハラケミカル製クリアロンK110、ヤスハラケミカル製クリアロンK4100、ヤスハラケミカル製クリアロンK4090、等が挙げられる。
これら水素添加された環含有樹脂(C)は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中では、高い引張強度の観点から、部分的に水素添加(部分水添)や水素添加されたテルペン樹脂が好ましい。相容性の観点から、部分的に水素添加(部分水添)したC5留分やC9留分(ホモポリマーの部分水添は除く)や水素添加されたテルペン樹脂がより好ましい。部分的に水素添加(部分水添)したC5留分やC9留分(ホモポリマー部分水添は除く)がさらに好ましい。特に、相容性の観点から、ゴム状重合体(A)中のビニル芳香族単量体単位の含有量30質量%未満の場合に好ましい。
部分水添は共架橋性があり架橋密度ムラが小さくし、また、留分は混合物のため、ホモポリマーよりも相容性が高くなるため、部分的に水素添加(部分水添)したC5留分やC9留分(ホモポリマー部分水添は除く)が特に良好な機械強度が得られると推定する。
【0061】
本実施形態の架橋用ゴム組成物は、引張強度や、引張伸びの観点から、架橋用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、前記軟化点が140℃未満の水素添加された環含有樹脂(C)を、10~40質量部を含有することが好ましい。引張エネルギーの観点から、15質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましい。
一方、架橋用ゴム組成物の混合時の容易性の観点から、30質量部以下がより好ましく、25質量部以下がさらに好ましい。
特に、引張強度や、引張伸び、引張エネルギーの観点から、ゴム状重合体(A)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が30質量%未満である場合に、上記含有量であることが好ましい。
【0062】
<前記(C)成分以外の、水素添加していない樹脂>
本実施形態の架橋用ゴム組成物は、(C)成分以外にも、必要に応じて、水素添加していない樹脂を含有してもよい。
水素添加していない樹脂は、室温(23℃)において固体で、炭素と水素を本質的にベースとする(他の原子も含み得る)化合物である。
当該水素添加していない樹脂は、脂肪族、脂環式、芳香族、水素化芳香族、脂肪族及び芳香族モノマーをベースとし得る樹脂が例示される。樹脂は、石油樹脂としても、石油系でない天然または合成樹脂でもよい。
このような水素添加していない樹脂は、シクロペンタジエン(CPD)のホモポリマー又はコポリマー樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)のホモポリマー又はコポリマー樹脂、テルペンのホモポリマー又はコポリマー樹脂、C5留分のホモポリマー又はコポリマー樹脂、C9留分のホモポリマー又はコポリマー樹脂、α-メチルスチレンのホモポリマー又はコポリマー樹脂及びこれらの樹脂のブレンドからなる群から選ばれる炭化水素樹脂が挙げられる。
上記のコポリマー樹脂のうちでは、さらに詳細には、(D)CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、(D)CPD/テルペンコポリマー樹脂、テルペン/フェノールコポリマー樹脂、(D)CPD/C5留分コポリマー樹脂、(D)CPD/C9留分コポリマー樹脂、テルペン/ビニル芳香族コポリマー樹脂、テルペン/フェノールコポリマー樹脂、C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂、及びこれらの樹脂のブレンドからなる群から選ばれるコポリマーが好ましい。
上述した水素添加していない樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
(架橋用ゴム組成物の好ましい物性)
<(C)質量部/(ST)質量%>
本実施形態の架橋用ゴム組成物は、高い引き裂き強度の観点から、架橋用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対する水素添加された環含有樹脂(C)量(質量部)/ゴム状重合体(A)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(ST)(質量%)、すなわちC/STが0.3以上であることが好ましく、0.6以上がより好ましく、1.2以上がより好ましく、1.7以上がさらに好ましく、2.2以上がさらにより好ましい。
【0064】
<シリカ量(質量部)/オイル量(質量部)>
本実施形態の架橋用ゴム組成物は、剛性の観点から、架橋用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対するシリカ量(質量部)/オイル量(質量部)が6以上であることが好ましく、7以上がより好ましく、8以上がさらに好ましく、9以上がさらにより好ましい。
ここで、シリカとは、沈降性シリカである。
オイルとは、伸展油のことであり、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油、植物油等である。
【0065】
(架橋用ゴム組成物のその他の構成成分)
<伸展油>
本実施形態の架橋用ゴム組成物は、混練後の成形性を確保する観点から、伸展油を含有することが好ましい。
伸展油の含有量はゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上であり、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、20質量部以上がさらに好ましい。
伸展油の含有量が1質量部以上であることにより、配合物の加工性が向上する。
一方、伸展油の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは80質量部以下であり、60質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。伸展油の含有量が80質量部以下であることにより、架橋用ゴム組成物の耐摩耗性がより向上する傾向にある。
【0066】
好ましい伸展油としては、例えば、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油等が挙げられる。これらの中でも、環境安全上の観点、並びにオイルブリード防止及びウェットグリップ特性の観点から、IP346法による多環芳香族(PCA)成分が3質量%以下であるアロマ代替油が好ましい。
アロマ代替油としては、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52(12)799(1999)に示されるTDAE(Treated Distillate Aromatic Extracts)、MES(Mild Extraction Solvate)等の他、RAE(Residual Aromatic Extracts)が挙げられる。
【0067】
伸展油としては、植物油を用いてもよい。植物油を伸展油として使用することにより、合成油や鉱物油を伸展油として用いる場合と比較して、環境への配慮を達成しつつ、混練後の成形性の改善を図ることができる。
このような植物油としては、特に制限されないが、例えば、アマニ油、ベニバナ油、ダイズ油、コーン油、綿実、ターニップシード油、ヒマシ油、キリ油、パイン油、ヒマワリ油、パーム油、オリーブ油、ココナッツ油、落花生油、グレープシード油等が挙げられる。このなかでも、ヒマワリ油を用いることが好ましい。これらの植物油は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋用ゴム組成物の耐摩耗性の観点から、植物由来のオイル(植物油)が好ましい。
特に、本実施形態の架橋用ゴム組成物は、耐摩耗性と混練後の成形性を確保する観点から当該架橋用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、植物由来のオイルを、1~80質量部、さらに含有することが好ましく、5~60質量部がより好ましく、10~40質量部がさらに好ましい。
【0068】
また、植物油は、脂肪酸を含むことが好ましい。
脂肪酸としては、特に制限されないが、例えば、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸;リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、アラキドン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。
これらの中でも、不飽和脂肪酸が好ましく、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸及びこれらの混合物がより好ましく、オレイン酸がさらに好ましい。これら一価不飽和脂肪酸は酸化し劣化し難い傾向にある。
脂肪酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
植物油が脂肪酸を含む場合、脂肪酸に含まれるオレイン酸の含有量は、脂肪酸の総量に対して、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、さらにより好ましくは90質量%以上である。特に、オレイン酸を上記含有量で含むヒマワリ油が好ましい。
【0069】
<充填剤>
本実施形態の架橋用ゴム組成物は、補強性の向上の観点から、充填剤を用いることができる。
充填剤の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、補強性の観点から、30質量部を超えることが好ましく、50質量部を超えることがより好ましく、60質量部を超えることがさらに好ましく、70質量部を超えることがさらにより好ましい。一方、架橋性ゴム組成物の加工性の点から、130質量部以下が好ましく、120質量部以下がより好ましい。
なお、「ゴム成分」とは、上述したゴム状重合体(A)及びさらにその他のゴム成分も含むものである。
【0070】
充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化 マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム等が挙げられるが、これらの中でも、カーボンブラックを用いることが好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、FEF、GPF、SRF、HAF、N339、IISAF、ISAF、SAFなどが挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K6217-2:2001に準拠して測定する)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0071】
これらの充填剤の中では、本実施形態の架橋用ゴム組成物をタイヤタイヤトレッドにした時の省燃費性や、ウェットスキッド抵抗性の観点からシリカが好ましく、沈降性シリカがより好ましい。
また、本実施形態の架橋用ゴム組成物中のシリカの添加量としては、本実施形態の架橋用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対し、省燃費性や、ウェットスキッド抵抗性の観点から、10~130質量部が好ましく、40~120質量部がより好ましく、50~100質量部がさらに好ましく、60~80質量部がさらにより好ましい。
【0072】
<シランカップリング剤>
本実施形態の架橋用ゴム組成物は、充填剤の分散性の改善や架橋体の引張物性強度の観点から、シランカップリング剤を含んでもよい。
シランカップリング剤は、ゴム成分と無機充填剤との相互作用を緊密にする機能を有しており、ゴム成分及び充填剤のそれぞれに対する親和性又は結合性の基を有しており、硫黄結合部分とアルコキシシリル基又はシラノール基部分とを一分子中に有する化合物が好ましい。
このような化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ビス-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-テトラスルフィド、ビス-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-ジスルフィド、ビス-[2-(トリエトキシシリル)-エチル]-テトラスルフィド、S-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]オクタンチオエート、S-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]オクタンチオエートと[(トリエトキシシリル)-プロピル]チオールの縮合物、少なくとも1個のチオール(-SH)官能基(メルカプトシランと称する)及び/又は、少なくとも1個のマスクトチオール基を担持するシラン類が挙げられる。
【0073】
本実施形態の架橋用ゴム組成物中のシランカップリング剤の含有量は、上述した充填剤100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、0.5質量部以上20質量部以下がより好ましく、1.0質量部以上15質量部以下がさらに好ましい。シランカップリング剤の含有量が上記範囲であると、シランカップリング剤による上記添加効果を一層顕著なものにできる傾向にある。
【0074】
<その他の添加剤>
本実施形態の架橋用ゴム組成物には、上述した以外にも、その他の軟化剤及び充填剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、滑剤等の各種添加剤を添加することができる。
その他の軟化剤としては、公知の軟化剤を用いることができる。
その他の充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウムが挙げられる。
上記の耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、潤滑剤としては、それぞれ公知の材料を用いることができる。
【0075】
〔架橋用ゴム組成物の製造方法〕
本実施形態の架橋用ゴム組成物は、ゴム状重合体(A)、架橋剤(B)、及び水素添加された環含有樹脂(C)を混合することにより得られる。さらに、必要に応じてその他のゴム成分、シリカ系無機充填剤、カーボンブラックやその他の充填剤、シランカップリング剤、ゴム用軟化剤等の添加剤を混合してもよい。
混合方法については、以下のものに限定されないが、例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解混合後、溶剤を加熱除去する方法が挙げられる。
これらのうち、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機による溶融混練法が生産性、良混練性の観点から好ましい。
また、ゴム成分とその他の充填剤、シランカップリング剤、及び添加剤とを一度に混練する方法、複数の回数に分けて混合する方法のいずれも適用可能である。
【0076】
〔用途〕
本実施形態の架橋用ゴム組成物は、好ましくはタイヤ部材、自動車の内装及び外装品、防振ゴム、ベルト、履物(特にアウトソールやミッドソール)、発泡体、各種工業用品用途等に利用できる。
これらの中でも、タイヤ部品に好適に用いられる。
タイヤ部材としては、省燃費タイヤ、オールシーズンタイヤ、高性能タイヤ、スノー用タイヤ、スタッドレスタイヤ等の各種タイヤ:タイヤトレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部等のタイヤ各部位への利用が可能である。
特に、タイヤ部材としては、加硫物としたときに耐摩耗性能、省燃費性、ウェットスキッド抵抗性、及びスノー性能とのバランスに優れているため、省燃費タイヤや高性能タイヤ用、スノー用タイヤのタイヤトレッド用として、好適に用いられる。
【0077】
タイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、タイヤ成形用ドラム上に未加硫の架橋用ゴム組成物及びコードよりなる群から選択される少なくとも1つからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常タイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、所望のタイヤ(例えば、空気入りタイヤ)を製造することができる。
【実施例
【0078】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて、本実施形態を更に詳しく説明するが、本実施形態は以下の実施例及び比較例により何ら制限されるものではない。
実施例及び比較例における各種の物性は下記に示す方法により測定した。
【0079】
((物性1)分子量と分子量分布)
<測定条件1> :
後述する重合例で得られたゴム状重合体を試料として、下記の具体的な条件に従い、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC測定装置(東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」)を使用して、RI検出器(東ソー社製の商品名「HLC8020」)を用いてクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用して得られる検量線に基づいて、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)と分子量分布(Mw/Mn)とを求めた。
【0080】
[具体的な測定条件]
GPC測定装置:東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」
溶離液 :5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHF(テトラヒドロフラン)
ガードカラム:東ソー社製の「TSKguardcolumn SuperMP(HZ)-H」
カラム :東ソー社製の「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」を3本接続した。
オーブン温度:40℃
流量 :0.35mL/分
サンプル :測定用の試料10mgを10mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液10μLをGPC測定装置に注入した。
【0081】
上記の<測定条件1>で測定した各種試料の中で、分子量分布(Mw/Mn)の値が1.6未満であった試料は、改めて下記の<測定条件2>により測定し、その結果を測定値として用いた。
前記<測定条件1>で測定し、その分子量分布の値が1.6以上であった試料に対しては、<測定条件1>で測定した結果を測定値として用いた。
【0082】
<測定条件2> :
後述する重合例で得られたゴム状重合体を試料として、下記の具体的な条件に従い、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC測定装置(東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」)を使用して、RI検出器(東ソー社製の商品名「HLC8020」)を用いてクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線に基づいて、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)と分子量分布(Mw/Mn)とを求めた。
【0083】
[具体的な測定条件]
溶離液 :5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHF
ガードカラム:東ソー社製の「TSKguardcolumn SuperH-H」
カラム :東ソー社製の「TSKgel SuperH5000」、「TSKgel SuperH6000」、及び「「TSKgel SuperH7000」を上流からこの順で連結したもの
オーブン温度:40℃
流量 :0.6mL/分
サンプル :測定用の試料10mgを20mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液20μLをGPC測定装置に注入して測定した。
【0084】
((物性2)重合体ムーニー粘度)
後述する重合例で得られたゴム状重合体を試料として、ムーニー粘度計(上島製作所社製の商品名「VR1132」)を用い、ISO 289に準拠し、ムーニー粘度を測定した。
試料を1分間、100℃で予熱した後、L型ローターを2rpmで回転させ、4分後のトルクを測定してムーニー粘度(ML(1+4))を得た。
【0085】
((物性3)変性率)
後述する重合例で得られたゴム状重合体における変性率を、カラム吸着GPC法で以下のとおり測定した。
重合例で得られたゴム状重合体を試料として、シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに、変性した塩基性重合体成分が吸着する特性を応用することにより、測定した。
【0086】
試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液を、ポリスチレン系カラムで測定したクロマトグラムと、シリカ系カラムで測定したクロマトグラムと、の差分よりシリカ系カラムへの吸着量を測定し、変性率を求めた。
【0087】
具体的な測定条件を以下に示す。
また、上記の(物性1)の<測定条件1>で測定した結果、ゴム状重合体の分子量分布の値が1.6以上であった試料に対しては下記の<測定条件3>、その分子量分布の値が1.6未満であった試料に対しては下記の<測定条件4>で測定した。
【0088】
<測定条件3 : ポリスチレン系カラムを用いたGPC測定条件>
GPC測定装置:東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」
溶離液 :5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHF
ガードカラム:東ソー社製の「TSKguardcolumn SuperMP(HZ)-H」
カラム :東ソー社製の「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」を3本接続した。
オーブン温度:40℃
流量 :0.35mL/分
RI検出器(東ソー社製 HLC8020)
サンプル :測定用の試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液10μLをGPC測定装置に注入した。
【0089】
<測定条件4 : ポリスチレン系カラムを用いたGPC測定条件>
GPC測定装置:東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」
溶離液 :5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHF
ガードカラム:東ソー社製の「TSKguardcolumn SuperH-H」
カラム :東ソー社製の「TSKgel SuperH5000」、「TSKgel SuperH6000」、及び「「TSKgel SuperH7000」を上流からこの順で連結したもの
オーブン温度:40℃
流量 :0.6mL/分
RI検出器(東ソー社製 HLC8020)
サンプル :測定用の試料10mgを20mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液20μLをGPC測定装置に注入して測定した。
【0090】
<シリカ系カラムを用いたGPC測定条件>
GPC測定装置:東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」
溶離液 :THF
ガードカラム:「DIOL 4.6×12.5mm 5micron」
カラム :「Zorbax PSM-1000S」、「PSM-300S」、「PSM-60S」を上流からこの順で連結したもの
オーブン温度:40℃
流量 :0.5mL/分
RI検出器(東ソー社製 HLC8020)
サンプル :測定用の試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液50μLをGPC測定装置に注入した。
【0091】
変性率の計算方法 :
ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積P1、標準ポリスチレンのピーク面積P2を求めた。同様に、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積P3、標準ポリスチレンのピーク面積P4を求めた。そして、得られた面積値に基づいて、下記式より変性率(%)を求めた。
変性率(%)=[1-(P2×P3)/(P1×P4)]×100
(ただし、P1+P2=P3+P4=100)
【0092】
((物性4)結合スチレン量(スチレン含有量))
後述する重合例で得られたゴム状重合体を試料として、試料100mgを、クロロホルムで100mLにメスアップし、溶解して測定サンプルとした。
スチレンのフェニル基による紫外線吸収波長(254nm付近)の吸収量により、試料であるゴム状重合体100質量%に対しての結合スチレン量(質量%)を測定した(測定装置:島津製作所社製の分光光度計「UV-2450」)。
【0093】
((物性5)ブタジエン部分のミクロ構造(1,2-ビニル結合量))
後述する重合例で得られたゴム状重合体を試料として、試料50mgを、10mLの二硫化炭素に溶解して測定サンプルとした。
溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600~1000cm-1の範囲で測定して、所定の波数における吸光度によりハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry 21,923(1949)に記載の方法)の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造、すなわち、1,2-ビニル結合量(mol%)を求めた(測定装置:日本分光社製のフーリエ変換赤外分光光度計「FT-IR230」)。
なお、「ビニル単位およびブチレン単位の含有量」の水添する前の状態が、「1,2-ビニル結合量」に相当し、数値は同じになる。
よって、表1中の「ビニル単位およびブチレン単位の含有量」は、水添前の1,2-ビニル結合量に相当する。
【0094】
((物性6)ゴム状重合体の水添率、ゴム状重合体のエチレン構造とビニル単位及びブチレン単位の含有量)
試料として、後述する重合例で得られたゴム状重合体を用いて、1H-NMR測定によって、ゴム状重合体の水添率、エチレン構造とビニル単位及びブチレン単位の含有量を測定した。1H-NMR測定の条件を以下に記す。
<測定条件>
測定機器 :JNM-LA400(JEOL製)
溶媒 :重水素化クロロホルム
測定サンプル :ゴム状重合体
サンプル濃度 :50mg/mL
観測周波数 :400MHz
化学シフト基準:TMS(テトラメチルシラン)
パルスディレイ:2.904秒
スキャン回数 :64回
パルス幅 :45°
測定温度 :26℃
【0095】
((物性7)ゴム状重合体のスチレンブロック量)
スチレン構造単位が8個以上連なった連鎖をスチレンブロックとし、当該スチレンブロック量を、次のようにして求めた。
重クロロホルムを溶媒として測定した400MHzの1H-NMRスペクトルから、以下の(X)の各化学シフト範囲の積分値割合を求め、ゴム状重合体中に含まれるスチレンブロックの含量を求めた。
(X)芳香族ビニル化合物連鎖8以上: 6.00≦S<6.68
【0096】
((物性8)ゴム状重合体のヨウ素価)
ヨウ素価は、下記により測定した。
試料をシクロヘキサンに溶かした後、一塩化ヨウ素溶液を加え、暗所に放置後、ヨウ化カリウム及び水を加え、チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し、溶液の色がうすい黄色になったとき、でんぷん溶液を加え,青が消えるまで滴定することにより、ヨウ素価を求めた。
【0097】
〔ゴム状重合体の製造〕
(水素添加触媒の調製)
後述する重合例において、ゴム状重合体を調製する際に用いる水素添加触媒を下記の方法により調製した。
窒素置換した反応容器に、乾燥及び精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn-ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させ水素添加触媒(TC-1)を得た。
【0098】
(ゴム状重合体の重合)
<(重合例1)ゴム状重合体1>
内容積40Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを2,700g、スチレンを300g、シクロヘキサンを21,000g、極性物質として、テトラヒドロフラン(THF)を30mmolと2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを11.6mmol、反応器へ入れ、反応器内温を43℃に保持した。
重合開始剤として、n-ブチルリチウム68.0mmolを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は、76℃に達した。この反応温度ピーク到達後から2分後に、反応器に、変性剤として2,2-ジメトキシ-1-(3-卜リメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン(化合物1)を13.6mmol添加し、20分間、カップリング反応を実施した。この重合体溶液に、反応停止剤としてメタノールを13.3mmolを添加し、水素添加前のゴム状重合体溶液を一部分析用に抜き出し、乾燥機で脱溶剤し、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状重合体溶液に、前記水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、チタン基準で70ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を40分間行い、ゴム状重合体1を得た。得られたゴム状重合体1のヨウ素価は108(g/100g)であった。
得られたゴム状重合体の溶液に、酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加し、乾燥処理を施した。
分析した結果を表1に示す。
【0099】
<(重合例2、3)ゴム状重合体2、3>
水素添加反応を、それぞれ60分間と80分間とした、その他の条件は(重合例1)と同様の方法で、ゴム状重合体2及びゴム状重合体3を得た。
得られたゴム状重合体2のヨウ素価は65(g/100g)、ゴム状重合体3のヨウ素価は22(g/100g)であった。
分析した結果を表1に示す。
【0100】
<(重合例4)ゴム状重合体4>
内容積40Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを3,000g、シクロヘキサンを21,000g、極性物質として、テトラヒドロフラン(THF)を90mmol、反応器へ入れ、反応器内温を45℃に保持した。
重合開始剤として、n-ブチルリチウム74.0mmolを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は、76℃に達した。この反応温度ピーク到達後から2分後に、反応器に、変性剤として四塩化ケイ素(化合物2)を14.8mmol添加し、20分間、カップリング反応を実施した。この重合体溶液に、反応停止剤としてメタノールを14.4mmolを添加し、水素添加前のゴム状重合体溶液を一部分析用に抜き出し、乾燥機で脱溶剤し、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状重合体溶液に、前記水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、チタン基準で70ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を10分間行い、ゴム状重合体4を得た。得られたゴム状重合体4のヨウ素価は418(g/100g)であった。
得られたゴム状重合体の溶液に酸化防止剤として、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加し、乾燥処理を施した。
分析した結果を表1に示す。
【0101】
<(重合例5)ゴム状重合体5>
内容積40Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを1,000g、スチレンを1,350g、シクロヘキサンを21,000g、極性物質として、テトラヒドロフラン(THF)を162mmol、反応器へ入れ、反応器内温を48℃に保持した。
重合開始剤として、n-ブチルリチウム54.0mmolを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、反応器内のモノマーコンバージョンが96%に達した時点で、ブタジエン650gを2回に分けて追添し、さらに反応させた。最終的な反応器内の温度は、82℃に達した。この反応温度ピーク到達後から2分後に、反応器に、変性剤として四塩化ケイ素(化合物2)を10.8mmol添加し、20分間、カップリング反応を実施した。この重合体溶液に、反応停止剤としてメタノールを10.5mmolを添加し、水素添加前のゴム状重合体溶液を一部分析用に抜き出し、乾燥機で脱溶剤し、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状ブロック重合体溶液に、前記水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、チタン基準で70ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を40分間行い、ゴム状重合体5を得た。得られたゴム状重合体5のヨウ素価は39(g/100g)であった。
得られたゴム状重合体の溶液に酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加し、乾燥処理を施した。
分析した結果を表1に示す。
【0102】
<(重合例6)ゴム状重合体6>
内容積40Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを2,000g、スチレンを750g、シクロヘキサンを21,000g、極性物質として、テトラヒドロフラン(THF)を30mmolと2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを7.8mmol、反応器へ入れ、反応器内温を43℃に保持した。
重合開始剤として、n-ブチルリチウム32.3mmolを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、反応器内のモノマーコンバージョンが96%に達した時点で、ブタジエン250gを追添し、さらに反応させた。最終的な反応器内の温度は、86℃に達した。この反応温度ピーク到達後から2分後に、反応器に、変性剤として2,2-ジメトキシ-1-(3-卜リメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン(化合物1)を6.5mmol添加し、20分間、カップリング反応を実施した。この重合体溶液に、反応停止剤としてメタノールを5.8mmolを添加し、水素添加前のゴム状重合体溶液を一部分析用に抜き出し、乾燥機で脱溶剤し、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状重合体溶液に、前記水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、チタン基準で70ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を50分間行い、ゴム状重合体6を得た。得られたゴム状重合体6のヨウ素価は54(g/100g)であった。
得られたゴム状重合体の溶液に、酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加し、乾燥処理を施した。
分析した結果を表1に示す。
【0103】
<(重合例7)ゴム状重合体7>
内容積40Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを2,000g、スチレンを240g、シクロヘキサンを21,000g、極性物質として、テトラヒドロフラン(THF)を158mmol反応器へ入れ、反応器内温を46℃に保持した。
重合開始剤として、n-ブチルリチウム52.5mmolを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、反応器内のモノマーコンバージョンが96%に達した時点で、ブタジエン760gを2回に分けて追添し、さらに反応させた。最終的な反応器内の温度は、80℃に達した。この反応温度ピーク到達後から2分後に、反応器に、変性剤として、2,2-ジメトキシ-1-(3-卜リメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン(化合物1)を10.5mmol添加し、20分間、カップリング反応を実施した。この重合体溶液に、反応停止剤としてメタノールを9.4mmolを添加し、水素添加前のゴム状重合体溶液を一部分析用に抜き出し、乾燥機で脱溶剤し、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状重合体溶液に、前記水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、チタン基準で70ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を60分間行い、ゴム状重合体7を得た。得られたゴム状重合体7のヨウ素価は65(g/100g)であった。
得られたゴム状重合体の溶液に、酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加し、乾燥処理を施した。
分析した結果を表1に示す。
【0104】
<(重合例8)ゴム状重合体8>
内容積40Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを2,150g、スチレンを510g、シクロヘキサンを21,000g、極性物質として、テトラヒドロフラン(THF)を30mmolと2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを7.8mmol、反応器へ入れ、反応器内温を48℃に保持した。
重合開始剤として、n-ブチルリチウム32.3mmolを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、反応器内の反応温度がピークに到達後から5分後に、スチレン240gを追添し、反応させた。その後、反応器内の反応温度がピークに到達後から2分後にブタジエン100gを追添し、さらに反応させた。最終的な反応器内の温度は、86℃に達した。この反応温度ピーク到達後から2分後に、反応器に、変性剤として2,2-ジメトキシ-1-(3-卜リメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン(化合物1)を6.5mmol添加し、20分間、カップリング反応を実施した。この重合体溶液に、反応停止剤としてメタノールを5.8mmolを添加し、水素添加前のゴム状重合体溶液を一部分析用に抜き出し、乾燥機で脱溶剤し、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状重合体溶液に、前記水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、チタン基準で70ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を60分間行い、ゴム状重合体8を得た。得られたゴム状重合体8のヨウ素価は54(g/100g)であった。
得られたゴム状重合体の溶液に酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加し、乾燥処理を施した。
分析した結果を表1に示す。
【0105】
下記表1中の変性剤種について、以下に示す。
化合物1:2,2-ジメトキシ-1-(3-卜リメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン
化合物2:四塩化ケイ素
【0106】
【表1】
【0107】
(実施例1~8、参考例9、実施例10、参考例11~13、実施例14~17、比較例1~2)
下記表2~表4に記載の各成分を混合し、架橋用ゴム組成物を得た。
温度制御装置を備える密閉混練機(内容量0.3L)を使用し、第一段の混練として、
充填率65%、ローター回転数30~50rpmの条件で、ゴム状重合体1~8(A)、
その他のゴム成分、補強充填剤、シランカップリング剤、伸展油、亜鉛華、ステアリン酸
、環含有樹脂(C)及びワックスを混練した。
このとき、密閉混合機の温度を制御し、排出温度は155~160℃で各ゴム組成物(
配合物)を得た。
【0108】
次に、第二段の混練として、上記で得た配合物を室温まで冷却後、老化防止剤を加え、補強充填剤の分散を向上させるため再度混練した。この場合も、混合機の温度制御により、配合物の排出温度を155~160℃に調整した。
冷却後、第三段の混練として、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄(B)、他の加硫促進剤を加えて混練し、架橋用ゴム組成物を得た。
その後、成型し、160℃で20分間、加硫プレスにて加硫した。
加硫後のゴム組成物を下記方法により評価した。
その結果を表2~表4に示す。
【0109】
(配合材料)
<ゴム成分>
ポリマー1~8:重合例で得られたゴム状重合体1~8
NR:天然ゴム(解凝固化物)
EPDM:エチレン・プロピレンゴム(住友化学社製「エスプレン 505A」)
【0110】
<補強充填材>
シリカ(エボニック デグサ社製の商品名「Ultrasil 7000GR」、窒素吸着比表面積170m2/g)
カーボンブラック(東海カーボン社製の商品名「シーストKH(N339)」)
【0111】
<シランカップリング剤>
シランカップリング剤(エボニック デグサ社製の商品名「Si75」、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
【0112】
<樹脂>
水添レジン1: 荒川化学工業株式会社製 アルコン M-115(C9樹脂、軟化点115℃、部分水添)
水添レジン2: 荒川化学工業株式会社製 アルコン M-135(C9樹脂、軟化点135℃、部分水添)
水添レジン3: 荒川化学工業株式会社製 アルコン M-90(C9樹脂、軟化点90℃、部分水添)
水添テルペン: ヤスハラケミカル株式会社製 クリアロン M125(テルペン樹脂、軟化点125℃、完全水添)
非水添レジン: ENEOS株式会社製 ネオポリマー150(C9樹脂、軟化点150℃、非水添)
完全水添レジン: 荒川化学工業株式会社製 アルコン P-140(C9樹脂 完全水添、軟化点140℃)荒川化学工業株式会社
上記水添レジン1~3、水添テルペンは、軟化点が140℃未満の水素添加された環含有樹脂(C)に相当する。
【0113】
<伸展油>
植物由来オイル:NOVANCE社製 LUBRIROB TOD 1880(ヒマワリオイル)
鉱物オイル:JX日鉱日石エネルギー社製 プロセスNC140(SRAEオイル)
【0114】
<加硫剤>
硫黄
【0115】
<加硫促進剤>
加硫促進剤1:CBS(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフィンアミド)
加硫促進剤2:DPG(ジフェニルグアニジン)
【0116】
<加硫助剤>
亜鉛華
ステアリン酸
【0117】
<その他>
ワックス(WAX)(パラフィンワックス)
老化防止剤(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
【0118】
表中、「樹脂/スチレン含有量」は、「架橋用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対する水素添加された環含有樹脂(C)量(質量部)/ゴム状重合体(A)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(ST)(質量%)」を示す。
「シリカ量/オイル量」は、「架橋用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対するシリカ量(質量部)/オイル量(質量部)」を示す。
【0119】
(特性評価)
<(評価1)加工性>
第三段の混練前の配合物を試料として、ムーニー粘度計を使用し、ISO 289に準拠して、130℃、1分間の予熱を行った後に、ローターを毎分2回転で4分間回転させた後の粘度を測定した。
比較例1の結果を100として指数化した。
指数が大きいほど加工性が良好であることを示す。
表2~表4には、比較例1を基準として各性能が下記の範囲で変化する場合の記号を記載した。
AA:20%以上良化
A :15%以上20%未満の範囲で良化
B : 5%以上15%未満の範囲で良化
C : 0%以上 5%未満の範囲で良化
D : 0%を超え10%未満の範囲で悪化
E : 10%以上悪化
【0120】
<(評価2)引張エネルギー>
得られた加硫ゴム試験片を用いて以下に示す試験法で引張エネルギーを評価した。
各例の引張エネルギーの結果を、比較例1の結果を100として指数化した。
数値が大きいほど引張エネルギーが高く、ゴムの強度が良好であることを示す。
[引張エネルギーの測定]
得られた加硫ゴム試験片からJIS3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、JIS K6251:2010に準拠して引張速度500mm/分で引張試験を行い、得られた応力―歪み曲線の歪みゼロから破断した歪みまでの応力を積分することで測定した。
表2~表4には、比較例1を基準として各性能が下記の範囲で変化する場合の記号を記載した。
AA:20%以上良化
A :15%以上20%未満の範囲で良化
B : 5%以上15%未満の範囲で良化
C : 0%以上 5%未満の範囲で良化
D : 0%を超え10%未満の範囲で悪化
E : 10%以上悪化
【0121】
<(評価3)耐摩耗性>
アクロン摩耗試験機(安田精機製作所社製)を使用し、JIS K6264-2に準拠して、荷重44.4N、1000回転の摩耗量を測定し、比較例1の結果を100として指数化した。
指数が大きいほど耐摩耗性が良好であることを示す。
表2~表4には、比較例1を基準として各性能が下記の範囲で変化する場合の記号を記載した。
AA:20%以上良化
A :15%以上20%未満の範囲で良化
B : 5%以上15%未満の範囲で良化
C : 0%以上 5%未満の範囲で良化
D : 0%を超え10%未満の範囲で悪化
E : 10%以上悪化
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0125】
本実施形態の架橋用ゴム組成物は、タイヤ部材、自動車の内装及び外装品、防振ゴム、ベルト、履物、発泡体、各種工業用品用途等の分野において産業上の利用可能性がある。