IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特許7570898画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム
<>
  • 特許-画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム 図1
  • 特許-画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム 図2
  • 特許-画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム 図3
  • 特許-画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム 図4
  • 特許-画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム 図5
  • 特許-画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム 図6
  • 特許-画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム 図7
  • 特許-画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム 図8
  • 特許-画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム 図9
  • 特許-画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム 図10
  • 特許-画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム 図11
  • 特許-画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム 図12
  • 特許-画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム 図13
  • 特許-画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム 図14
  • 特許-画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム 図15
  • 特許-画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20241015BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20241015BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
G03G15/02 102
G03G21/00 370
G03G21/00
G03G15/00 651
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020193848
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022082352
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002767
【氏名又は名称】弁理士法人ひのき国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤野 猛
(72)【発明者】
【氏名】曽田 将太
(72)【発明者】
【氏名】森 光太
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-223513(JP,A)
【文献】特開平10-247006(JP,A)
【文献】特開2018-124509(JP,A)
【文献】特開2006-243357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/02
G03G 13/045
G03G 13/14 -13/16
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/02
G03G 15/045
G03G 15/14 -15/16
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/04
G03G 21/06 -21/08
G03G 21/10 -21/12
G03G 21/14
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、
前記感光体に対してパッシェン放電により帯電処理を行う帯電部材と、
前記帯電部材に対して直流電圧を印加する電圧印加手段と、
前記感光体から前記帯電部材に流れる直流電流を測定する電流検知手段と、
前記感光体に対して露光を行って潜像を形成する露光手段と、
前記感光体に形成された潜像に対してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を転写材に転写する転写手段と、
を有する画像形成装置において、
前記電圧印加手段は、第1の工程において、前記帯電部材から前記感光体への放電が開始する電圧である放電開始電圧を超える第1の帯電電圧及び第2の帯電電圧を、前記感光体を帯電させるために前記感光体へ印加し、
前記電圧印加手段は、さらに、第2の工程において、前記放電開始電圧り低い除電電圧を、前記感光体を除電するために前記感光体へ印加し、
前記電流検知手段は、前記第1の工程において前記第1の帯電電圧が印加された後に前記第2の工程において前記除電電圧が印加された部分における前記感光体から前記帯電部材に流れる第1の直流電流と、前記第1の工程において前記第2の帯電電圧が印加された後に前記第2の工程において前記除電電圧が印加された部分における前記感光体から前記帯電部材に流れる第2の直流電流を測定し、
前記第1の帯電電圧と前記第1の直流電流との第1のセット、及び、前記第2の帯電電圧と前記第2の直流電流との第2のセットとに基づいて、前記放電開始電圧を改めて算出する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記電流検知手段は、前記第2の工程において、前記第1の直流電流及び前記第2の直流電流を検知する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の工程及び前記第2の工程は、非画像形成時において行われる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
改めて算出された前記放電開始電圧に基づいて、画像形成時において前記電圧印加手段から前記帯電部材に対して印加する直流電圧を設定する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
改めて算出された前記放電開始電圧に基づいて、前記感光体における誘電層の膜厚を算出する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
算出された前記誘電層の膜厚に基づいて、前記感光体の寿命を取得する
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記感光体の寿命を表示する表示手段を有する
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1の帯電電圧及び第2の帯電電圧は、それぞれ、前記感光体が1回転する間に印加され、
前記第1の直流電流及び前記第2の直流電流は、それぞれ、前記感光体が別の1回転する間に印加される
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第1の帯電電圧及び第2の帯電電圧は、前記感光体が1回転する間に印加され、
前記第1の直流電流及び前記第2の直流電流は、前記感光体が別の1回転する間に印加される
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記第1の帯電電圧及び第2の帯電電圧は、前記感光体が1回転する間に、前記直流電圧を段階的に変化させることにより印加される
ことを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記第1の帯電電圧及び第2の帯電電圧は、前記感光体が1回転する間に、前記直流電圧をスロープ状に変化させることにより印加される
ことを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記直流電流が0となる時間に対して前記感光体が1回転する前の時間において前記帯電部材に対して印加した前記直流電圧に基づいて、前記放電開始電圧を改めて算出する
ことを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
感光体と、
前記感光体に対してパッシェン放電により帯電処理を行う帯電部材と、
前記帯電部材に対して直流電圧を印加する電圧印加手段と、
前記感光体から前記帯電部材に流れる直流電流を測定する電流検知手段と、
前記感光体に対して露光を行って潜像を形成する露光手段と、
前記感光体に形成された潜像に対してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を転写材に転写する転写手段と、
を有する画像形成装置の制御方法において、
前記帯電部材から前記感光体への放電が開始する電圧である放電開始電圧を超える第1の帯電電圧及び第2の帯電電圧を、前記感光体を帯電させるために前記感光体へ印加する第1の工程と、
前記放電開始電圧り低い除電電圧を、前記感光体を除電するために前記感光体へ印加する第2の工程と、
前記第1の工程において前記第1の帯電電圧が印加された後に前記第2の工程において前記除電電圧が印加された部分における前記感光体から前記帯電部材に流れる第1の直流電流と、前記第1の工程において前記第2の帯電電圧が印加された後に前記第2の工程において前記除電電圧が印加された部分における前記感光体から前記帯電部材に流れる第2の直流電流を測定する工程と、
前記第1の帯電電圧と前記第1の直流電流との第1のセット、及び、前記第2の帯電電圧と前記第2の直流電流との第2のセットとに基づいて、前記放電開始電圧を改めて算出する工程と、を有する
ことを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項14】
請求項13に記載の画像形成装置の制御方法をコンピュータにより実行するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置、画像形成装置の制御方法、及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式を用いた画像形成装置において、像担持体としての感光体を帯電させる方式として、感光体に接触、または非常に狭いギャップ(数十~数百μm以下)で非接触近接させた帯電部材に電圧を印加するパッシェン放電方式がある。帯電部材としては、ローラ状の帯電ローラが用いられることが多い。帯電ローラは、例えば、導電性支持体の外周に導電性弾性体層が設けられ、該導電性弾性体層の表面に導電性の表層が被覆された構成とされる。
【0003】
パッシェン放電方式では、感光体と帯電部材との間の微小空隙において発生する放電(パッシェン放電)によって感光体の表面が帯電させられる。パッシェン放電方式には、帯電部材に直流電圧と交流電圧とを重畳した電圧を印加する「AC帯電方式」と、帯電部材に直流電圧のみを印加する「DC帯電方式」とがある。DC帯電方式は、AC電源が不要であるため、小型化、構成の簡易化、低コスト化に有利である。但し、DC帯電方式は、AC帯電と異なり、感光ドラムの電位収束効果がないため、帯電部材に同じ電圧を印加し続けると感光体の膜厚の減少と共にドラム表面電位が徐々に上昇するという課題がある。このドラム表面電位の変動による、かぶり等の問題の発生を未然に防ぐために、プリント枚数に応じて帯電部材に印加するDC電圧を制御する必要がある。
【0004】
このように、DC帯電方式においてはドラム電位の変化が感光体の膜厚に依存することから、感光体の膜厚を検知または予測する様々な手段が提案されている。例えば、特許文献1には、パッシェン放電方式に特有の方法として、感光ドラムの感光体層(誘電層)の膜厚を検知することができる方法が提案されている。パッシェン放電においては、帯電部材に印加する電圧がある閾値(以下、「放電開始電圧」と呼ぶ)を超えてから放電開始し電流が流れる特性がある。この放電開始電圧は感光体の静電容量成分の分担電圧に応じていることから、帯電部材に印加する電圧と、感光体に流れる電流値を検知することができれば、放電開始電圧と感光体の膜厚を得ることができると説明されている。
特許文献1を要約すると、非画像形成時の膜厚検知シーケンス時に帯電部材へ印加する電圧をVc1、Vc2、帯電部材から感光体に流れるDC電流をId1、Id2とした時に、感光体層の膜厚d =α・(Vc2-Vc1)/(Id2-Id1)と表せる。ここで、αは感光体の誘電率、感光体の帯電幅、感光体の回転速度(いわゆる、プロセススピード)等で決まる既知の定値であることから、感光体の膜厚dを導くことが可能であると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-223513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者が特許文献1に従って検討したところ、感光ドラム上の帯電前の残留電位(帯電前電位)に応じて、感光体の膜厚検知結果の値に誤差が生じることが判明した。本発明者の検討によれば、帯電前電位は画像形成装置の温湿度環境や感光体の露光履歴など様々な因子により変化するため、完全な予測は困難であり、帯電前電位の予測しえない変動分が感光体の膜厚の計算値誤差として含まれることが判明した。また、感光体の膜厚から計算したドラム表面電位の値にも誤差が含まれてしまうことが判明した。
【0007】
そこで、本発明の目的は、パッシェン放電を用いたDC帯電方式の画像形成装置において、感光体の帯電前電位に依存することなく、感光体の放電開始電圧をより高精度に取得することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、感光体と、前記感光体に対してパッシェン放電により帯電処理を行う帯電部材と、前記帯電部材に対して直流電圧を印加する電圧印加手段と、前記感光体から前記帯電部材に流れる直流電流を測定する電流検知手段と、前記感光体に対して露光を行って潜像を形成する露光手段と、前記感光体に形成された潜像に対してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を転写材に転写する転写手段と、を有する画像形成装置において、前記電圧印加手段は、第1の工程において、前記帯電部材から前記感光体への放電が開始する電圧である放電開始電圧を超える第1の帯電電圧及び第2の帯電電圧を、前記感光体を帯電させるために前記感光体へ印加し、前記電圧印加手段は、さらに、第2の工程において、前記放電開始電圧り低い除電電圧を、前記感光体を除電するために前記感光体へ印加し、前記電流検知手段は、前記第1の工程において前記第1の帯電電圧が印加された後に前記第2の工程において前記除電電圧が印加された部分における前記感光体から前記帯電部材に流れる第1の直流電流と、前記第1の工程において前記第2の帯電電圧が印加された後に前記第2の工程において前記除電電圧が印加された部分における前記感光体から前記帯電部材に流れる第2の直流電流を測定し、前記第1の帯電電圧と前記第1の直流電流との第1のセット、及び、前記第2の帯電電圧と前記第2の直流電流との第2のセットとに基づいて、前記放電開始電圧を改めて算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より高精度に感光体の放電開始電圧を取得可能な画像形成装置を提供することができる。これにより、より適切な感光体への印加電圧や、より精度の高い感光体の寿命を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】画像形成装置の断面図
図2】画像形成部の断面図
図3】画像形成装置を制御する制御回路
図4】画像形成動作のメインフローチャート
図5】Vth検知シーケンスのフローチャート(実施例1)
図6】印加電圧Vcとドラム表面電位Vdの時間推移(実施例1)
図7】感光ドラムから流れるDC電流Idの時間推移(実施例1)
図8】放電開始電圧Vth1を求める方法を説明する図
図9】ドラム表面電位Vd/DC電流Idの誤差を説明する図
図10】Vth検知シーケンスのフローチャート(実施例2)
図11】印加電圧Vcとドラム表面電位Vdの時間推移(実施例2)
図12】感光ドラムから流れるDC電流Idの時間推移(実施例2)
図13】Vth検知シーケンスのフローチャート(実施例3)
図14】印加電圧Vcとドラム表面電位Vdの時間推移(実施例3)
図15】感光ドラムから流れるDC電流Idの時間推移(実施例3)
図16図15の部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための実施例について説明する。
但し、以下に説明する各実施例はあくまで例示であり、本発明の範囲をそれらに限定する趣旨のものではない。また、以下の実施例で説明されている特徴の組み合わせのすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0012】
(画像形成装置の各部の説明)
<実施例1>
1-1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の模式的な断面図である。画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することができる、中間転写方式を採用したタンデム型(インライン方式)の複写機、プリンタ、ファクシミリ装置の機能を備えた複合機である。画像形成装置100は、接触帯電方式、特に、DC帯電方式を採用しており、最大A3サイズの転写材Pに画像を形成することができる。
画像形成装置100は、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像を形成する、第1、第2、第3、第4の複数の画像形成部SY、SM、SC、SKを有する。なお、以下では、各画像形成部SY、SM、SC、SKにおいて同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを表す符号(Y、M、C、K)を省略して総括的に説明することがある。
【0013】
図2は、1つの画像形成部Sを示す模式的な断面図である。本実施例では、画像形成部Sは、後述する感光ドラム1、帯電ローラ2、露光装置3、現像装置4、一次転写ローラ5、ドラムクリーニング装置6などから構成される。
画像形成装置100は、像担持体としての回転可能なドラム型(円筒形)の感光体である感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、駆動手段としての不図示の駆動モータによって図中矢印R1方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。本実施例では、感光ドラム1は、負帯電性のドラム状の有機感光体であり、アルミニウムなどの導電性材料で構成された基体上に感光層(OPC層)が形成されている。
回転する感光ドラム1の表面は、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電工程時に、帯電ローラ2には、電圧印加手段である高圧電源E1から、直流成分のみからなるDC電圧(帯電バイアスまたは帯電電圧ともいう)Vcが印加される。感光ドラム1の表面の帯電処理は、感光ドラム1と帯電ローラ2との接触部Nに対し、感光ドラム1の回転方向の上流側又は下流側の少なくとも一方の感光ドラム1と帯電ローラ2との間の微小空隙において発生するパッシェン放電によって行われる。帯電処理された感光ドラム1の表面は、露光手段(静電像形成手段)としての露光装置3によって走査露光され、感光ドラム1上に静電像(静電潜像)が形成される。本実施例では、露光装置3は、半導体レーザーを用いたレーザービームスキャナである。
【0014】
感光ドラム1上に形成された静電像は、現像手段としての現像装置4によって現像剤を用いて現像(可視化)され、感光ドラム1上にトナー像が形成される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで、電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部に、感光ドラム1の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性に帯電したトナーが付着する。つまり、本実施例では、現像時のトナーの帯電極性であるトナーの正規の帯電極性は負極性である。
本実施例では、現像装置4は、現像剤としてトナー(非磁性トナー粒子)とキャリア(磁性キャリア粒子)とを備えた二成分現像剤を用いる。現像装置4は、現像剤4eを収容する現像容器4aと、現像容器4aの開口部から一部が外部に露出するように現像容器4aに回転可能に設けられた、非磁性の中空円筒部材で形成された現像スリーブ4bと、を有する。現像スリーブ4bの内部(中空部)には、マグネットローラ4cが現像容器4aに対し固定されて配置されている。また、現像容器4aには、現像スリーブ4bと対向するように規制ブレード4dが設けられている。また、現像容器4a内には2つの攪拌部材(攪拌スクリュー)4fが設けられている。現像容器4aには、トナーホッパー4gから適宜トナーが補給される。
【0015】
マグネットローラ4cの磁力により現像スリーブ4b上に担持された現像剤4eは、現像スリーブ4bの回転に伴って規制ブレード4dによって量が規制された後に、感光ドラム1との対向部(現像部)に搬送される。現像部に搬送された現像スリーブ4b上の現像剤4eは、マグネットローラ4cの磁力によって穂立ちして磁気ブラシ(磁気穂)を形成し、感光ドラム1の表面に接触又は近接させられる。また、現像工程時に、現像スリーブ4bには、現像電源(高圧電源回路)E2から、現像電圧(現像バイアス)として直流電圧(DC成分)と交流電圧(AC成分)とが重畳された振動電圧が印加される。これにより、感光ドラム1上の静電像に応じて、現像スリーブ4b上の磁気ブラシから感光ドラム1上にトナーが移動して、感光ドラム1上にトナー像が形成される。
【0016】
本実施例では、帯電ローラ2により帯電処理されて形成される感光ドラム1の表面電位(暗部電位)が-700V、露光装置3により露光されて形成される感光ドラム1の表面電位(明部電位)が-300Vとなるように、帯電量、露光量が調整される。また、本実施例では、現像電圧の直流成分は-550Vに設定されている。また、本実施例では、感光ドラム1のプロセススピードは120mm/secであり、感光ドラム1上の感光ドラム1の回転軸線方向の帯電処理幅は320mmである。また、本実施例では、トナーの帯電量は約-40μC/g、画像ベタ部の感光ドラム1上でのトナー量は約0.4mg/cmに設定されている。
【0017】
各感光ドラム1Y、1M、1C、1Kと対向して、中間転写体としての無端状のベルトで構成された中間転写ベルト7が配置されている。中間転写ベルト7は、複数の張架ローラとしての駆動ローラ71、テンションローラ72及び二次転写対向ローラ73に掛け渡されて所定の張力で張架されている。中間転写ベルト7は、駆動ローラ71が回転駆動されることで、図中矢印R2方向に感光ドラム1の周速度と略同一の周速度で回転(周回移動)する。
中間転写ベルト7の内周面側には、各感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに対応して、一次転写手段としてのローラ型の一次転写部材である一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kが配置されている。一次転写ローラ5は、中間転写ベルト7を介して感光ドラム1に向けて押圧され、感光ドラム1と中間転写ベルト7とが接触する一次転写部(一次転写ニップ)T1を形成する。
【0018】
上述のように感光ドラム1上に形成されたトナー像は、一次転写部T1において、一次転写ローラ5の作用によって中間転写ベルト7上に一次転写される。一次転写工程時に、一次転写ローラ5には、一次転写電源(高圧電源回路)E3から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の直流電圧である一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム1上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト7上に重ね合わされるようにして順次転写される。
【0019】
中間転写ベルト7の外周面側において、二次転写対向ローラ73と対向する位置には、二次転写手段としてのローラ型の二次転写部材である二次転写ローラ8が配置されている。二次転写ローラ8は、中間転写ベルト7を介して二次転写対向ローラ73に向けて押圧され、中間転写ベルト7と二次転写ローラ8とが接触する二次転写部(二次転写ニップ)T2を形成する。
上述のように中間転写ベルト7上に形成されたトナー像は、二次転写部T2において、二次転写ローラ8の作用によって、中間転写ベルト7と二次転写ローラ8とに挟持されて搬送される記録用紙などの転写材(シート、記録材)Pに二次転写される。二次転写工程時に、二次転写ローラ8には、二次転写電源(高圧電源回路)E4から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の直流電圧である二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加される。
転写材Pは、不図示の給送装置によって1枚ずつ送り出されてレジストローラ対9まで搬送され、レジストローラ対9によって中間転写ベルト7上のトナー像とタイミングが合わされて二次転写部T2へと供給される。また、トナー像が転写された転写材Pは、定着手段としての定着装置10に搬送され、定着装置10によって加熱及び加圧されることでトナー像が定着(溶融固着)される。その後、転写材Pは、画像形成装置100の外部に出力される。
【0020】
一方、一次転写時に感光ドラム1上に残留したトナー(一次転写残トナー)は、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置6によって感光ドラム1上から除去されて回収される。ドラムクリーニング装置6は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード6aと、クリーニング容器6bと、を有する。ドラムクリーニング装置6は、感光ドラム1に当接して配置されたクリーニングブレード6aによって、回転する感光ドラム1の表面を摺擦する。これによって、感光ドラム1上の一次転写残トナーは感光ドラム1上から掻き取られてクリーニング容器6b内に収容される。
また、中間転写ベルト7の外周面側において、駆動ローラ71と対向する位置に、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置74が配置されている。二次転写工程時に中間転写ベルト7上に残留したトナー(二次転写残トナー)は、ベルトクリーニング装置74によって中間転写ベルト7上から除去されて回収される。
本実施例では、各画像形成部SY、SM、SC、SKにおいて、感光ドラム1と、帯電ローラ2と、ドラムクリーニング装置6とは、一体的に画像形成装置100に対して着脱可能なドラムカートリッジ(ドラムCRG)110を構成している。
【0021】
ここで、図3を用いて、帯電ローラ2から感光ドラム1へ流れる電流の検知手段である電流検知回路103を含む、画像形成装置100を制御する回路の全体図について説明する。
CPU101は、画像形成装置100全体を制御しており、内部メモリ102、高圧電源E1、電流検知回路103、外部メモリ104と電気回路的に接続されている。外部メモリ104は、ドラムCRG110に保持されている不揮発メモリであり、画像形成装置100とは独立してドラムCRG110自体が感光ドラム1や帯電ローラ2に関する情報を保持する機能を有する。
高圧電源E1と帯電ローラ2とは、不図示の給電接点により電気的に接続されている。電流検知回路103は、不図示の参照抵抗とオペアンプから構成され、高圧電源E1から各画像形成部の帯電ローラ2Y、2M、2C、2Kへ流れる直流電流(DC電流)を検知し、その値を電気信号に変換してCPU101に転送する。
【0022】
1-2.課題と解決手段の概要
次に、DC帯電方式を採用した従来技術における課題について説明する。
ドラムカートリッジの寿命は感光体の膜厚に依存することが多いため、感光体の膜厚を検知または予測する様々な手段が提案されている。このうち、パッシェン放電方式に特有の方法として、特許文献1に開示されているように、感光体の膜厚を検知することができる方法が知られている。パッシェン放電においては、帯電部材に印加する電圧がある閾値(前述の「放電開始電圧」)を超えてから放電が開始し、電流が流れる特性がある。この放電開始電圧は感光体の静電容量成分の分担電圧に応じていることから、帯電部材に印加する電圧と、感光体に流れる電流値を検知することができれば、感光体の静電容量を導き、最終的に感光体の膜厚を得ることができると説明されている。
【0023】
より詳しく説明すると、帯電ローラ2への印加電圧をVc、感光ドラム1の表面電位(ドラム表面電位)をVd、放電開始電圧をVthとすると、以下のような関係式になる。
【0024】
【数1】
【0025】
次に、感光ドラム1と帯電ローラ2の間の空気層の厚みをz[μm]、感光ドラム1の誘電層の厚みをd[μm]、感光ドラム1の比誘電率をk、感光ドラム1と帯電ローラ2の間の空気層に掛かる分担電圧をVgap[V]とすると、以下のような関係式になる。
【0026】
【数2】
【0027】
また、タウンゼントの実験式から、一気圧の大気での火花開始電圧Vsは、下記の式(3)のようになる。
【0028】
【数3】
【0029】
ここで、Vgap=Vsの場合に帯電ローラ2から感光ドラム1に対して放電が開始し、かつ、その時の印加電圧Vcは放電開始電圧Vthに等しいことから、式(2)と式(3)より、放電開始電圧Vthは下記の式(4)のようになる。
【0030】
【数4】
【0031】
式(4)をzについて解くと、下記の式(5)のようになる。
【0032】
【数5】
【0033】
放電開始時において、式(5)における空気層の厚みzはただ一つの解をもつことから、2次方程式 ax+bx+c=0における重解条件 b-4ac=0より、下記の式(6)のようになる。
【0034】
【数6】
【0035】
式(6)を放電開始電圧Vthについて解くと、下記の式(7)のようになる。
【0036】
【数7】
【0037】
ここで、感光ドラム1の誘電層の比誘電率kは材質で決まる値であり、本実施例で用いられる感光ドラム1の有機感光層においてはk=3の値が適正であることが分かっている。すなわち、放電開始電圧Vthが判明していれば、式(7)を用いて感光ドラム1の誘電体層の膜厚dを得ることができる。
また、式(1)で示したように、放電開始電圧Vthは印加電圧Vcとドラム表面電位Vdより求めることができるが、本実施例のように、ドラム表面電位計を有さない画像形成装置においては、ドラム表面電位Vdを直接測定して求めることはできない。
【0038】
そこで、帯電ローラ2から感光ドラム1に流れるDC電流をId[μA]とし、感光ドラム1のプロセススピードをVp[mm/s]、帯電幅W[mm]、誘電層の比誘電率をk、真空の誘電率ε0とした場合、静電容量の式Q=CVを変形することにより、以下の式(8)が得られる。
【0039】
【数8】
【0040】
式(1)と式(8)より、帯電ローラ2への印加電圧Vcと、その時のDC電流Idの組み合わせを2セット以上得ることができれば、2つの未知数である感光ドラム1の膜厚dと放電開始電圧Vthを得ることが理論上はできると説明されている。
【0041】
しかしながら、本発明者が検討したところ、特許文献1に従った場合でも、DC帯電方式において感光体上の帯電前の残留電位に応じて、ドラムの膜厚検知結果の値に差が生じることが判明した。
すなわち、感光ドラム1の帯電前電位をV0とし、帯電後の電位をVdとした場合に、式(8)の正しい関係式は、以下のようになる。
【0042】
【数9】
である。すなわち、式(1)に示されるように、ドラム表面電位Vdは帯電前電位V0によらず印加電圧Vcと放電開始電圧Vthによって決定されるのに対し、その時に流れる電流Idは帯電前電位V0に依存するため、I-V特性にズレが生じるのである。
そこで、式(1)と式(9)を感光体の膜厚dに対して解くと、下記の式(10)のようになる。
【0043】
【数10】
【0044】
これを分かりやすく示したグラフが図9である。図9において、縦軸は、ドラム表面電位Vd=-700Vに帯電した場合に、ドラム表面電位Vdを帯電ローラ2に流れるDC電流Idで割った値、横軸は、感光ドラム1の誘電体層の厚みを示している。感光体のプロセススピードは120mm/sec、帯電器の幅は320mm、感光体の誘電体の比誘電率は3である。帯電前電位V0が0Vの場合の結果が実線、帯電前電位V0が-100Vの場合の結果が破線で示されている。
帯電前電位V0が環境変動や耐久変動により0Vから-100Vの間で変動する場合、膜厚dも図9の実線と破線の間で変動する。図9の例では、その検知誤差は約14%あることが分かる。本発明者の検討結果では、帯電前電位V0は、画像形成装置の温湿度環境や感光体の露光履歴など様々な因子により変化するため、完全な予測は困難であり、帯電前電位V0の振れ分だけ膜厚dに誤差が含まれてしまうことが判明した。また、放電開始電圧Vthにも誤差が含まれてしまうため、そこから計算されるドラム表面電位Vdの値にも誤差が含まれることが判明した。
【0045】
そこで、本実施例は、パッシェン放電を用いたDC帯電方式において、感光体の残留電位(帯電前電位)V0の変動に依存せずに、所望のドラム表面電位にするために必要な印加電圧と、より高精度な感光体の膜厚が取得可能な方法を提供することを目的とする。
具体的には、非画像形成時において、帯電ローラ2に放電開始電圧Vthを超える電圧Vc(より具体的には、Vc>2Vth)を印加して、感光ドラム1上に放電開始電圧Vthを超えるドラム表面電位Vdを形成する帯電処理を行う。次に、感光ドラム1上に形成されたドラム表面電位Vdを帯電ローラ2により除電処理を行い、その時に感光ドラム1から帯電ローラ2に流れるDC電流Idを検知する。このようにして、帯電時の印加電圧Vcと除電時のDC電流Idの組み合わせを複数得るシーケンス(以下、「Vth検知シーケンス」と呼ぶ)を行う。これにより、感光ドラム1の残留電位(帯電前電位)の変化に依存せずに、放電開始電圧Vth及び感光ドラム1の膜厚dを得ることができる。この原理を幾つかの式を用いて以下に説明する。
【0046】
Vth検知シーケンスは、非画像形成時に行われ、帯電ローラ2による帯電工程と除電工程を1セットとして構成される。そして、帯電工程において、異なる高圧印加を最大でN回行う。ここで、n回目の帯電工程での帯電ローラ2への印加電圧をVc(n)とすると、式(1)より、下記の式(11)のようになる。
【0047】
【数11】
【0048】
但し、Vc(n)は、仮の放電開始電圧Vth0の2倍を超える値に設定する。
ここで、仮の放電開始電圧Vth0は、Vth検知シーケンスを一度も行っていない状態では真の放電開始電圧Vth1が未知数であることから、初期の感光ドラム1の膜厚の量産時の公差振れの最大値を式(7)に代入して計算した数値を用いることが望ましい。Vth検知シーケンスを一度でも行った後は、前回のVth検知シーケンスにおいて得られた真の放電開始電圧Vth1を仮の放電開始電圧Vth0として使用する。
【0049】
本実施例においては、感光ドラム1の量産品の膜厚公差の最大値が23μmであることから、式(7)により計算した結果、仮の放電開始電圧Vth0を約620Vと設定した。また、ドラム表面電位が高いほど除電時のDC電流Idが増えることから、安定的に測定するためには高圧出力の範囲内でドラム表面電位が高い方が好ましく、Vc(n)は少なくともVth0の2.1倍以上が好ましい。そこで、本実施例では、Vc(1)=-1300VとVc(2)=-1400Vとしてメモリに保持した。なお、Vc(n)のデータは、画像形成装置100の内部メモリ102に保持しても良いし、ドラムCRG110に備えられた外部メモリ104に保持しても良い。
【0050】
また、測定点数を増やして精度を更に向上させたい場合は、例えば、Vc(1)=-1300V、Vc(2)=-1400V、Vc(3)=-1500V、・・・のように、複数の電圧データをメモリ内に保持しておけばよい。また、メモリに直接Vc(n)を保持する方法以外にも、最初のVth検知シーケンス以降、得られた真の放電開始電圧Vth1を用いて、その都度、Vc(n)を算出するといった手段を採ることもできる。この場合は、例えば、仮の放電開始電圧Vth0を外部メモリ104に保持し、また、N個の2を超える係数β(2.1、2.2、・・・など)を内部メモリ102に保持しておいて、次のVth検知シーケンス時にVc(n)=β×Vth0で算出しても良い。この手段の利点は、主に外部メモリ104の容量を削減できる点にある。
【0051】
本実施例では、帯電ローラ2にVc(1)の帯電バイアスを印加してから感光ドラム1が少なくとも1回転した後(Vth検知シーケンスの帯電工程が終了した後)、帯電ローラ2への印加電圧を放電開始電圧より低い値であるVdis(n)に設定する。これにより、ドラム表面電位Vdは、帯電ローラ2によって除電され、Vth+Vdis(n)に収束する(Vth検知シーケンスが終了する)。
ここで、Vthシーケンスの除電工程中において感光ドラム1から帯電ローラ2に流れるDC電流(除電電流)をId(n)とすると、下記の式(12)のように表すことができる。
【0052】
【数12】
【0053】
これは、感光ドラム1のドラム表面電位Vdが除電により放電開始電圧Vth+Vdis(n)に収束し、除電されたドラム表面電位Vdは電流に変換されることを意味している。また、帯電高圧がマイナス極性であるため、帯電工程時はDC電流Idとしてマイナスの電流が流れるが、除電工程時は感光ドラム1から帯電ローラ2に電流が流れるため、見かけ上はプラスの電流が流れる。
【0054】
除電工程において帯電ローラ2に印加する電位Vdis(n)(除電電圧ともいう)は、原理上は正負いずれの値も取り得る。但し、感光ドラム1の正規の電位(本実施例の場合は、マイナス側)の逆(同、プラス側)の電圧を印加するには、帯電ローラ2の高圧電源を正負両極対応にする必要があるため、コストが増加し、感光ドラム1にドラムメモリと呼ばれる履歴が発生することもある。このため、感光ドラム1に逆電圧を印加することは、基本的には好ましくない。また、マイナスの電圧を印加すると、感光ドラム1の電位を除電しにくくなるため、これもあまり好ましくない。そこで、本実施例では、これ以降、感光ドラム1の除電には帯電ローラ2に印加する除電電圧を0Vとすることとし、Vdis(n)=0Vとして説明する。
【0055】
式(11)と式(12)とを組み合わせ、Vdis(n)=0を代入して整理すると、放電開始電圧Vthは以下のように表すことができる。
【0056】
【数13】
【0057】
ここで、式(13)中、k、ε0、Vp、Wは既知の値であり、所定の設定値Vc(n)を用いてVth検知シーケンスを行うことでId(n)を得ることができるため、完全な未知数はVthとdの2つである。よって、Vc(n)とId(n)のセットが少なくとも2つ以上求められれば、残り2つの未知数である放電開始電圧Vth及び感光ドラム1の膜厚dを得ることができる。また、Vc(n)とId(n)が3セット以上ある場合は、後述する最小二乗法により、より測定誤差の少ない放電開始電圧Vth及び感光ドラム1の膜厚dの値を得ることができる。
【0058】
1-3.画像形成装置のVth検知シーケンス
次に、図3から図7を用いて、本実施例のVth検知シーケンスについて説明する。
まず、図4に示す、画像形成動作のメインフローチャートについて説明する。図4のフローチャートに示される処理は、CPU101が内部メモリ102に記憶されているプログラムを実行することにより実現される。
【0059】
まず、S101において、CPU101は通常の画像形成動作を実行する。
通常の画像形成動作が終了後の非画像形成時に、S102において、CPU101は、Vth検知シーケンスに入るか否かの判断を行う。Vth検知シーケンスに入るか否かの判断基準としては、プリント枚数の積算カウント値や、画像形成装置の設置環境など、様々な条件の組み合わせを用いて設定することができる。これは、感光ドラム1の膜厚は長期に渡るプリント動作で少しずつ変動するので、あまり頻繁にVth検知シーケンスをすることで、待機時間が増えてユーザービリティを損なうことがないようにするためである。本実施例においては、電源動作直後の1回目のプリントジョブ終了時、またはA4プリント千枚毎のプリントジョブ終了時にVth検知シーケンスに入る。
Vth検知シーケンスに入ると判断した場合、S103に移行する。Vth検知シーケンスに入らないと判断した場合は、S107に移行する。
【0060】
S103において、CPU101は、Vth検知シーケンスに入る前に、画像形成装置100の一次転写部T1による一次転写動作を終了し、一次転写バイアスをOFFする。また、感光ドラム1に対する除電手段である露光装置3も、Vth検知シーケンスに入る前にOFFする。
なお、Vth検知シーケンス中の帯電ローラ2以外での感光ドラム1に対する除電処理は、Vth検知シーケンスの誤差要因になる。このため、最後に感光ドラム1上の除電を受けた部位が帯電ローラ2を通過した後にVth検知シーケンスに入るようにタイミングを設定することが望ましい。また、一次転写バイアスをOFFしても一次転写部T1が感光ドラム1を除電するように構成されている場合もある。この場合、一次転写部を感光ドラム1から離間させる手段や、一次転写部から感光ドラム1に対して放電しない範囲内(感光ドラム1のドラム表面電位と一次転写バイアスの電圧差がVth未満の範囲)で帯電ローラ2と同極性の電圧を印加するなどの手段を取ることが望ましい。
【0061】
次に、S104においてVth検知シーケンスに入る。Vth検知シーケンスの詳細については、図5のフローチャートを用いて説明する。また、図6に、本実施例のVth検知シーケンスにおける、帯電ローラ2への印加電圧Vcと感光ドラム1の表面電位(ドラム表面電位)Vdの時間推移を示す。また、図7に、感光ドラム1から帯電ローラ2へ流れるDC電流Idの時間推移を示す。
図5のフローチャートに移行し、S111において、CPU101はメモリから最大測定回数Nを読み出す。なお、本実施例ではN=2と設定するが、より精度を求めるためにN=3以上であっても良い。また、本実施例で説明するメモリは、CPU101に接続する画像形成装置の内部メモリ102でも良いし、ドラムCRG110に付随する外部メモリ104であっても良い。
【0062】
次に、S112において、CPU101は現在の測定回数nを1に設定する。以下、本実施例においては、Vth検知シーケンスにおける帯電工程と除電工程の1セットを1ステップという。以下では、nステップにおける帯電工程をn-1、nステップにおける除電工程をn-2と称する。
【0063】
次に、S113において、CPU101はステップn-1の帯電工程を開始する。最初のステップは、n=1であるため、ステップ1-1の帯電工程となる。n=2の場合はステップ2-1の帯電工程となる。
n=1では、CPU101は、まず、仮の放電開始電圧Vth0=-620Vの2倍を超える値であるVc(1)=-1300Vをメモリ(内部メモリ102または外部メモリ104)から読み出す。
【0064】
次に、S114において、CPU101は、帯電ローラ2に帯電バイアスVc(1)=-1300Vを感光ドラム1の1回転分だけ印加する。その結果、感光ドラム1のドラム表面電位はVd=-720V付近に収束する。(但し、本実施例の画像形成装置100はこのドラム表面電位Vdそのものを検知することはできない。)
なお、Vth検知シーケンスの対象とする感光ドラム1は、YMCKの全ての感光ドラムでもいいし、Bkモード時の場合は感光ドラム1Kのみであってもいい。また、ステップn-1の動作時間は感光ドラム1の1回転分(本実施例においては0.785sec)であるが、例えば電位を安定させるため等の画像形成装置100の状況に応じて、感光ドラム1を複数回転させても良い。
【0065】
S114の帯電工程により感光ドラム1が1回転した後、S115において、CPU101はステップn-2の除電工程を開始する。最初のステップはn=1であるため、ステップ1-2であり、帯電ローラ2への印加電圧をVdis(1)=0Vに変更する(なお、本実施例においては、常にVdis(n)=0Vに設定する)。
ステップ1-1の工程で印加電圧Vc(1)=-1300Vにより-720Vに帯電されていた感光ドラム1のドラム表面電位Vdは、0Vになっている帯電ローラ2を通過した後、除電されて約570~580V付近に収束した。(但し、前述のように、本実施例の画像形成装置100はこの収束したドラム表面電位Vdそのものを検知することはできない。)
【0066】
S115の除電工程の動作中(本実施例では、感光ドラム1が1回転する0.785secの間)、S116において、CPU101は、電流検知回路103により、感光ドラム1から帯電ローラ2へ流れるDC電流Id(n)を測定する。そして、測定したDC電流Id(n)の平均値化処理を行い、メモリに格納する。
なお、本実施例のステップ1-2において、電流検知回路103が検知したDC電流の平均値はId(1)=7.2μAであった。
【0067】
S116の除電工程により感光ドラム1が1回転した後、S117において、CPU101は現在の測定回数nと最大測定回数Nとを比較する。
n≧Nとなったら、S118に移行する。
n<Nである場合は、S119に移行し、nに1を加える。その後、再度S113に移行して、同様のシーケンスを行う(例えば、n=2として、ステップ2-1の帯電工程とステップ2-2の除電工程を行う)。
【0068】
例えば、ステップ2-1の帯電工程においては、CPU101は、Vc(2)=-1400Vをメモリから読み出して、感光ドラム1への帯電処理を行う。また、ステップ2-2の除電工程においては、CPU101は、帯電ローラ2への印加電圧をVdis(2)=0Vに設定して感光ドラム1の除電処理を行い、電流検知回路103により平均化されたDC電流Id(2)を検知する。本実施例では、DC電流Id(2)は、12.2μAであった。
本実施例では最大測定回数Nを2に設定しているため、ここでS113からS117までのループはここで終了する。
【0069】
S118において、CPU101は、Vc(1)とId(1)、及び、Vc(2)とId(2)より、改めて真の放電開始電圧Vth1及び感光ドラム1の膜厚dを以下のような計算で求める。
真の放電開始電圧Vth1は、式(13)より、Idをx軸、Vcをy軸としたxy座標上の2点から、x=0となるy切片の値となるので、以下の式(14)のとおりになる。
【0070】
【数14】
【0071】
ここで、図8に、Vc(1)とId(1)、及び、Vc(2)とId(2)より放電開始電圧Vth1を求める方法を分かりやすく示したグラフを示す。図8のグラフは、縦軸が印加電圧Vc(n)、横軸がDC電流Idを示している。なお、感光ドラム1のプロセススピードは120mm/sec、帯電幅は320mmである。
なお、前述のように、第1の帯電工程においてVc(1)=-1300Vで帯電処理した感光ドラム1のドラム表面電位Vdを、第1の除電工程において0Vの帯電ローラ2で除電した場合の検知電流はId(1)=7.2μAであった。また、第2の帯電工程においてVc(2)=-1400Vで帯電処理した感光ドラム1のドラム表面電位Vdを、第2の除電工程において0Vの帯電ローラ2で除電した場合の検知電流はId(2)=12.2μAであった。
【0072】
式(14)より、真の放電開始電圧Vth1は、DC電流Idが0μA、すなわち除電しなくなった時の電圧の2分の1に等しいことから、図8の破線のy切片の値を2で割った値、つまり578Vが、この感光体の真の放電開始電圧Vth1であることが分かる。図8と式(14)の中には、感光ドラム1の表面電位は介在していないことから、感光ドラム1の表面電位Vdを測定する必要はない。また、帯電前電位V0も介在していないことから、帯電前電位V0による検知電流の誤差を含まずに、感光ドラム1の真の放電開始電圧Vth1を導けることが分かる。
【0073】
また、式(7)をdに関して解くと、下記の式(15)のようになる。
【0074】
【数15】
【0075】
この式(15)に、放電開始電圧Vth=-578Vと、感光体の誘電体の比誘電率であるk=3を代入することにより、感光ドラム1の膜厚d=19.8[μm]を得ることができた。
本実施例において実験に用いた感光ドラム1の実際の厚みは長手平均で20.1μmであったことから、誤差約1.5%で感光ドラム1の膜厚を得ることができることが立証できた。これは、図9で示されるような、帯電前電位V0が0~100Vの変動があった場合の膜厚誤差である約14%と比較すると一桁小さい誤差であることから、より高精度な膜厚検知方法を提供できることが確認できた。
【0076】
また、本実施例における電流検知誤差は、主に電流検知回路103の電流ノイズである。このことから、Vth検知シーケンスの最大測定回数Nが2を超える場合の放電開始電圧Vthの求め方に関しては、電流検知ノイズ等の電気回路的な誤差を小さくするために、最小近似法を用いることができる。具体的には、n個のデータ(x1,y1),(x2,y2),…(xn,yn),に対して、最小近似法y=ax+bにより、xn=Id(n)、yn=Vc(n)を代入して、式(16)のようにbを求める。
【0077】
【数16】
【0078】
そして、Vth=b/2として放電開始電圧Vthを求めることで、より検知誤差を小さくすることができる。
S118において、真の放電開始電圧Vth1及び感光ドラム1の膜厚dが算出されると、Vth検知シーケンスを終了し、図4のメインシーケンスに戻る。
【0079】
図4のフローチャートに戻り、S105において、CPU101は、算出した真の放電開始電圧Vth1をメモリ(内部メモリ102または外部メモリ104)に格納し、次の通常の画像形成時の帯電ローラ2への高圧制御にフィードバックする。これにより、次の通常の画像形成時から、感光ドラム1をより適切な電位で画像形成することが可能となる。また、真の放電開始電圧Vth1をドラムCRG110の外部メモリ104に格納しておくことで、仮にドラムCRG110がつけ外しされた場合であっても、正しい帯電バイアスを印加することができる。
【0080】
次に、S106において、CPU101はVth検知シーケンスで算出した膜厚dを画像形成装置100のドラム寿命の表示に反映させる。本実施例では、感光ドラム1の膜厚dが初期値から10μm減少した時点で、画像形成装置100に備えられた不図示のディスプレイにおいて、寿命を0%と表示させることとする。このため、初期状態で100%と表示し、-0.1μmの変化毎に1%単位でドラム寿命の数値を減少させて表示する。これにより、画像形成装置100のオペレーターやユーザーは、ドラムCRG110の交換時期をより正確に知ることができる。
S106でドラム寿命を表示したら、S107において、CPU101は画像形成装置100の残りの後回転動作(濃度調整など)を実行する。これで、図4のメインシーケンスを終了する。
【0081】
以上説明したように、実施例1では、Vth検知シーケンスにおいて、感光ドラムへの帯電工程と除電工程を繰り返し複数回行い、帯電時の印加電圧Vc(n)と除電時の電流Id(n)の複数セットの組み合わせを取得する。これにより、より精度の高い放電開始電圧Vthを得ることができ、それに対応して画像形成時の印加電圧をより適切に設定することが可能となる。また、より精度の高い感光ドラムの誘電体層の厚みdを得ることができ、より正確なドラム寿命やドラムCRGの交換時期を表示可能な画像形成装置を提供することができる。
【0082】
<実施例2>
2-1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
画像形成装置100の全体的な構成及び動作は、実施例1と同様であるため、説明を割愛する。
2-2.課題と解決手段の概要
課題及び概要についても、実施例1と同様であるため、以下では、主に実施例1との差異部分であるVth検知シーケンスについて説明する。
【0083】
実施例2では、帯電工程において、感光ドラム1が1回転する間に、感光ドラム1に印加する電圧を、仮の放電開始電圧Vth0の2倍を超える印加電圧Vc(1)からVc(n)に段階的に変化させて帯電処理を行う。実施例2においては、2段階のステップVc(1)、Vc(2)によりVthを求めるが、実施例1と同様に、測定点数を増やして精度を更に向上させたい場合は、Vc(3)、Vc(4)、…とステップ数を増やしていっても良い。
【0084】
次に、除電工程において、感光ドラム1が次の1回転する間に、仮の放電開始電圧Vth0以下の印加電圧Vdis(n)で帯電ローラ2により感光ドラム1に除電処理を行う。そして、感光ドラム1が1回転をする間に、感光ドラム1のVc(1)が印加された部分から帯電ローラ2に流れる除電電流Id(1)と、感光ドラム1のVc(2)が印加された部分から帯電ローラ2に流れる除電電流Id(2)を求める。(なお、除電工程における帯電ローラ2への印加電圧Vdis(n)は、実施例1と同様に、0Vで行うこととする。)
【0085】
これにより、感光ドラム1に高圧を印加するステップ数nによらず、Vth検知シーケンスでの感光ドラム1の回転数は、帯電工程の1回転と、除電工程の別の1回転との、2回転で終了する。このため、Vth検知シーケンスによるダウンタイムの増加や感光ドラム1の回転増による膜厚減少を最小化することができる。
上記のVth検知シーケンスにより検知されたId(1)、Id(2)及び印加電圧Vc(1)、Vc(2)を用いた放電開始電圧Vth及び感光ドラム1の膜厚dの算出方法については、実施例1と同様であるため、説明を割愛する。
【0086】
2-3.画像形成装置のVth検知シーケンス
実施例2のVth検知シーケンスを、図10のフローチャート用いて説明する。また、図11に、実施例2のVth検知シーケンスにおける、帯電ローラ2への印加電圧Vcとドラム表面電位Vdの時間推移を示す。また、図12に、感光ドラム1から帯電ローラ2へ流れる電流値Idの時間推移を示す。なお、メインフローチャートに関しては、実施例1で説明した図4と同様であるため、説明を割愛する。
【0087】
S201において、CPU101はメモリから検知ステップ回数Nを読み出す。本実施例においては、N=2とし、2段階の帯電高圧設定を用いる。
次に、S202において、CPU101は帯電工程を開始する。まず、仮の放電開始電圧Vth0=-620Vの2倍を超える値であるVc(1)=-1300V、Vc(2)=-1400Vをメモリから読み出す。
次に、S203において、CPU101は、感光ドラム1が1回転する間に、帯電ローラ2に帯電バイアスVc(1)=-1300V及びVc(2)=-1400Vを印加するように高圧電源E1を段階的に制御する。
ここで、Vth検知シーケンスの対象とする感光ドラム1は、YMCKの全ての感光ドラムでも良いし、Bkモード時の場合は感光ドラム1Kのみであっても良い。なお、本実施例においては、感光ドラム1の1回転分の時間は0.785secである。
【0088】
次に、感光ドラム1の1回転分の帯電処理の終了後、S204において、CPU101は除電工程を開始する。まず、感光ドラム1の次の1回転分、帯電ローラ2への印加電圧をVdis(1)=0に変更する。
S204の除電工程の動作中、S205において、CPU101は、電流検知回路103により、感光ドラム1から帯電ローラ2へ流れるDC電流Id(n)を測定する。ここで、除電電流Id(1)の測定は、印加電圧Vc(1)による帯電処理が行われた感光ドラム1の1回転分後(本実施例においては、0.785sec後)に行う。同様に、Id(2)の測定は、印加電圧Vc(2)による帯電処理が行われた感光ドラム1の1回転後(同じく、0.785sec後)に行う。
測定したDC電流Id(1)、Id(2)は、平均値化処理を行い、メモリに格納する。
なお、本実施例においては、DC電流はId(1)=7.2μA、Id(2)=12.2μAであった。
【0089】
次に、S206において、CPU101は、Vc(1)とId(1)、及び、Vc(2)とId(2)より、真の放電開始電圧Vth1及び感光ドラム1の膜厚dを算出する。これらの算出方法は、実施例1においてS118で説明したものと同様である。
【0090】
以上説明したように、実施例2では、感光ドラム1の1回転中に複数段階の印加電圧Vc(n)で帯電処理を行い、それらの1回転後にそれぞれの帯電処理面に対して帯電ローラ2に流れる除電電流Id(n)を検知する。これにより、より短い動作時間で感光ドラム1の誘電体層の厚みdと、放電開始電圧Vthを得ることができる。
【0091】
<実施例3>
3-1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
画像形成装置の全体的な構成及び動作は、実施例1及び実施例2と同様であるため、説明を割愛する。
3-2.課題と解決手段の概要
課題及び概要についても、実施例1及び実施例2と同様であるため、主にこれらの実施例との差異部分であるVth検知シーケンスについて説明する。
【0092】
実施例3におけるVth検知シーケンスについて説明する。
所定のタイミングtにおける帯電部材への印加電圧をVc(t)とする。まず、帯電工程として、感光ドラム1が1回転する間に、仮の放電開始電圧Vth0の2倍を超える印加電圧Vc(T1)から、Vth0の2倍未満の印加電圧Vc(T2)を連続的(スロープ状)に変化させて感光ドラム1に帯電処理を行う。
次に、除電工程として、感光ドラム1が1回転する間に、仮の放電開始電圧Vth0以下の印加電圧Vdis(t)で感光ドラム1に除電処理を行う。そして、除電工程の期間において、帯電ローラ2に流れるDC電流Id(t)が0となる(ゼロクロスする)時刻T3を求める(Id(T3)=0)。すなわち、時間tの関数である電流Id(t)について、電流Id(t)=0となる時刻T3を求める。
【0093】
ここで、感光ドラム1の1回転分に必要な時間をTdrとする。式(11)と式(12)より、真の放電開始電圧Vth1は、時刻T3からドラム1回転分前の時刻(T3-Tdr)に感光ドラム1の表面を帯電処理した際の印加電圧Vc(T3-Tdr)を用いて、以下の式(17)で表される。
【0094】
【数17】
【0095】
本実施例では、除電工程時に帯電ローラ2に印加するバイアスは常に0V(Vdis(t)=0V)であることから、真の放電開始電圧Vth1は、以下の式(18)で求めることができる。
【0096】
【数18】
【0097】
3-3.画像形成装置のVth検知シーケンス
実施例3のVth検知シーケンスを、図13のフローチャート用いて説明する。また、図14に、実施例3のVth検知シーケンスにおける、帯電ローラ2への印加電圧Vcとドラム表面電位Vdの時間推移を示す。また、図15に、感光ドラム1から帯電ローラ2へ流れる電流値Idの時間推移を、図16に、図15の部分拡大図を示す。なお、メインフローチャートに関しては、実施例1で説明した図4と同様であるため、説明を割愛する。
【0098】
S301において、CPU101は帯電工程を開始する。まず、メモリから仮の放電開始電圧Vth0=-600V、及び、スロープ状に変化させて印加する帯電バイアスVcの始端値Vc(T1)=-1800V(=3×Vth0)と終端値Vc(T2)=-900V(=1.5×Vth0)を読み出す。
【0099】
次に、S302において、CPU101は、感光ドラム1の1回転中に、帯電ローラ2に帯電バイアスVc(t)=-1800V~-900Vをスロープ状に変化させて印加するように高圧電源E1を制御する。
感光ドラム1のドラム表面電位Vdは、感光ドラム1の1回転の間で図14のように、-1200V~-300Vに変化するように形成された。(但し、前述のように、本実施例の画像形成装置100はこのドラム表面電位Vdそのものを検知することはできない。)なお、Vth検知シーケンスの対象とする感光ドラム1は、YMCKの全ての感光ドラムでもいいし、Bkモード時の場合は感光ドラム1Kのみであってもいい。また、帯電工程の動作時間は、感光ドラム1の1回転分(本実施例においては0.785sec)であるが、感光ドラム1の1回転分以下の時間であっても良い。
【0100】
次に、S303において、CPU101は除電工程を開始する。まず、帯電ローラ2への印加電圧をVdis=0Vに変更する。これにより、帯電ローラ2を通過後、感光ドラム1のドラム表面電位Vdは、約570V以上に帯電された部分は約570V~580V付近に収束し、それ未満に帯電された部分はほぼそのままの電位であった。
除電工程と同時に、S304において、CPU101は、感光ドラム1の1回転分(本実施例においては0.785sec)の間に、感光ドラム1から帯電ローラ2へ流れるDC電流Id(t)を、電流検知回路103を用いて検知し、内部メモリ102に格納する。
【0101】
次に、S305において、CPU101は、DC電流Id(t)がゼロクロスする時刻T3を求めることにより、真の放電開始電圧Vth1を求める(図15を参照)。そのための手段として、CPU101は、Id(t)の近似直線を最小二乗法により算出する(図16を参照)。直線近似を行うデータ範囲としては、除電時のId(t)が有意な値を持つ範囲を抽出する。本実施例では、DC印加電圧Vc(t)が仮の放電開始電圧Vth0の2.9倍となる時刻Ta´から、2.1倍となる時刻Tb´に感光ドラム1の1回転の時間Tdr(=ドラム外周長÷プロセススピード)を加算した時刻TaからTbの範囲を解析範囲とした。(すなわち、Vc(Ta´)=2.9×Vth0,Vc(Tb´)=2.1×Vth0)。
【0102】
この範囲[Ta,Tb]におけるn個のデータ群(t1,Id1),(t2,Id2),…(tn,Idn)…に対して、一次関数(y=ax+b)の最小近似法から、
a=(nΣxy-Σx・Σy)/(nΣx-(Σx)
b=(Σx・Σy-Σxy・Σx)/(nΣx-(Σx)
であるため、Xn=tn、Yn=Idnを代入してa、bを求め、0=at+bとしてDC電流値Idがゼロクロスする時刻T3を求めることができる。
【0103】
次に、S306において、CPU101は、ゼロクロスする時刻T3のドラム1回転分前の時刻T4を得る。本実施例においては、図16で示すように、T3=2.925sと求められ、Tdr=0.785であることから、T4=T3-Tdr=2.13sと求められた。
【0104】
次に、S307において、CPU101は、時刻T4において帯電ローラ2に印加した印加電圧Vc(T4)をメモリより読み出す。式(13)より、真の放電開始電圧Vth1はDC電流Idが0μA、すなわち除電しなくなった時の電圧の2分の1に等しい。このことから、時刻T4における印加電圧Vc(T4)を2で割った値、すなわち、図14においては、-1156V/2=-578Vがこの感光体の真の放電開始電圧Vth1であることが分かる。真の放電開始電圧Vth1が得られた後の処理に関しては、実施例1と同様であるため、説明を割愛する。
【0105】
Vth検知シーケンス終了後、CPU101は、真の放電開始電圧Vth1をメモリに格納し、次の通常の画像形成時の帯電ローラ2への高圧制御にフィードバックする。また、Vth検知シーケンス時の印加電圧Vcの始端値と終端値、及びIdの算出のために、メモリに格納された仮の放電開始電圧Vth0を使用しているが、次回以降のVth検知シーケンス時にはVth0の代わりに新たに得られたVth1を使用してもよい。
【0106】
以上説明したように、実施例3では、感光ドラム1をスロープ状に変化する電位に帯電させ、その後に除電処理を行い、帯電時の印加電圧Vc(t)と除電電流Id(t)の組み合わせを取得する。これにより、より短時間で高精度に感光ドラム1の誘電体層の厚みdと、放電開始電圧Vthを得ることができる。
【0107】
<その他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、1つの機器からなる装置に適用してもよい。
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。すなわち、上述した構成例及びその変形例を組み合わせた構成もすべて本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0108】
1 感光ドラム
2 帯電ローラ
3 露光装置
100 画像形成装置
101 CPU
103 電流検知回路
E1 高圧電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16