IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-窒化物半導体装置 図1
  • 特許-窒化物半導体装置 図2
  • 特許-窒化物半導体装置 図3
  • 特許-窒化物半導体装置 図4
  • 特許-窒化物半導体装置 図5
  • 特許-窒化物半導体装置 図6
  • 特許-窒化物半導体装置 図7
  • 特許-窒化物半導体装置 図8
  • 特許-窒化物半導体装置 図9
  • 特許-窒化物半導体装置 図10
  • 特許-窒化物半導体装置 図11
  • 特許-窒化物半導体装置 図12
  • 特許-窒化物半導体装置 図13
  • 特許-窒化物半導体装置 図14
  • 特許-窒化物半導体装置 図15
  • 特許-窒化物半導体装置 図16
  • 特許-窒化物半導体装置 図17
  • 特許-窒化物半導体装置 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20241015BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20241015BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20241015BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/06 301F
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020196156
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084344
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 浩隆
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-204304(JP,A)
【文献】特表2020-523781(JP,A)
【文献】国際公開第2020/230434(WO,A1)
【文献】特開2013-247297(JP,A)
【文献】特開2016-146369(JP,A)
【文献】特開2015-207610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/337
H01L 21/338
H01L 29/06
H01L 29/778
H01L 29/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体によって構成された電子走行層と、
前記電子走行層上に形成され、前記電子走行層よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された電子供給層と、
前記電子供給層上の一部に形成され、前記電子供給層よりも小さなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された第1ステップ層と、
前記第1ステップ層上に形成され、前記第1ステップ層よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された第2ステップ層と、
前記第2ステップ層上の一部に形成され、前記第2ステップ層よりも小さなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成されるとともにアクセプタ型不純物を含むゲート層と、
前記ゲート層上に形成されたゲート電極と、
前記電子供給層に接しているソース電極およびドレイン電極と、
を備え、
前記第1ステップ層は、平面視において前記ゲート層の外側に延出する第1延出部を含み、
前記第2ステップ層は、平面視において前記ゲート層の外側に延出するとともに前記第1延出部上に形成された第2延出部を含む、窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記第1延出部は、平面視において前記ゲート層の全外周縁よりも外側に延出している、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記第2延出部は、平面視において前記ゲート層の全外周縁よりも外側に延出している、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記電子供給層上に形成され、前記第1ステップ層と前記第2ステップ層と前記ゲート層と前記ゲート電極とを覆うパッシベーション層をさらに備える請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記パッシベーション層は、前記電子供給層の上面の一部をソースコンタクトおよびドレインコンタクトとしてそれぞれ露出させるソースコンタクトホールおよびドレインコンタクトホールを含み、
前記第1延出部は、
平面視において前記ゲート層の外側に前記ソースコンタクトに向かって延出する第1ソース側延出部と、
平面視において前記ゲート層の外側に前記ドレインコンタクトに向かって延出する第1ドレイン側延出部と、を含み、
前記第1ステップ層は、前記ゲート層の下方に配置され、前記第1ソース側延出部と前記第1ドレイン側延出部との間に位置する第1ベース部をさらに含む、請求項4に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記電子供給層上に形成され、前記第1ステップ層と前記第2ステップ層と前記ゲート層と前記ゲート電極とを覆い、前記電子供給層の上面の一部をソースコンタクトおよびドレインコンタクトとしてそれぞれ露出させるソースコンタクトホールおよびドレインコンタクトホールを含むパッシベーション層をさらに備え、
前記第1延出部は、
平面視において前記ゲート層の外側に前記ソースコンタクトに向かって延出する第1ソース側延出部と、
平面視において前記ゲート層の外側に前記ドレインコンタクトに向かって延出する第1ドレイン側延出部と、を含み、
前記第1ステップ層は、前記ゲート層の下方に配置され、前記第1ソース側延出部と前記第1ドレイン側延出部との間に位置する第1ベース部をさらに含み、
前記第2延出部は、
平面視において前記ゲート層の外側に前記ソースコンタクトに向かって延出するとともに前記第1ソース側延出部上に形成された第2ソース側延出部と、
平面視において前記ゲート層の外側に前記ドレインコンタクトに向かって延出するとともに前記第1ドレイン側延出部上に形成された第2ドレイン側延出部と、を含み、
前記第2ステップ層は、前記ゲート層の下方に配置され、前記第2ソース側延出部と前記第2ドレイン側延出部との間に位置する第2ベース部をさらに含む、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
前記第1ソース側延出部と前記第2ソース側延出部とは、前記ソースコンタクトに向かって延出する方向に同じ幅を有し、
前記第1ドレイン側延出部と前記第2ドレイン側延出部とは、前記ドレインコンタクトに向かって延出する方向に同じ幅を有する、請求項6に記載の窒化物半導体装置。
【請求項8】
前記第2ソース側延出部と前記第2ドレイン側延出部とは、前記第2ベース部と同じ厚さを有する、請求項6または7に記載の窒化物半導体装置。
【請求項9】
前記第1ソース側延出部と前記第1ドレイン側延出部とは、前記第1ベース部と同じ厚さを有する、請求項5~8のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項10】
前記第2ソース側延出部と前記第2ドレイン側延出部とは、前記第2ベース部よりも小さな厚さを有する、請求項6または7に記載の窒化物半導体装置。
【請求項11】
前記第2ステップ層は、前記電子供給層よりも小さな厚さを有し、かつ前記電子供給層よりも小さなバンドギャップを有する、請求項1~10のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項12】
前記第1ステップ層および前記第2ステップ層のうちの少なくとも一つがアクセプタ型不純物を含む、請求項1~11のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項13】
前記第1ステップ層は、前記ゲート層よりも小さな厚さを有する、請求項1~12のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項14】
前記ゲート層は、前記第2ステップ層上に前記ゲート層が積層される方向に互いに離間した2つ以上の分割層によって構成されており、
前記ゲート層の前記2つ以上の分割層のうち隣り合う2つの分割層の間に各々介在し、前記ゲート層の各分割層よりも大きなバンドギャップを有する1つ以上の窒化物半導体層をさらに備える請求項1~13のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項15】
前記第1ステップ層は、前記電子供給層上に前記第1ステップ層が積層される方向に互いに離間した2つ以上の分割層によって構成されており、
前記第1ステップ層の前記2つ以上の分割層のうち隣り合う2つの分割層の間に各々介在し、前記第1ステップ層の各分割層よりも大きなバンドギャップを有する1つ以上の窒化物半導体層をさらに備える請求項1~14のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項16】
前記電子走行層はGaN層であり、
前記電子供給層はAlGaN層であり、
前記第1ステップ層はGaN層であり、
前記第2ステップ層は、前記電子供給層よりも低いAl組成を有するAlGaN層であり、
前記ゲート層は、MgおよびZnのうちの少なくとも一つをアクセプタ型不純物として含むGaN層である、請求項1~15のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項17】
前記電子供給層はAlGa1-xN層(0.1<x<0.3)であり、
前記第2ステップ層はAlGa1-yN層(0.05<y<x)である、請求項16に記載の窒化物半導体装置。
【請求項18】
前記第1ステップ層および前記第2ステップ層のうちの少なくとも一つは、MgおよびZnのうちの少なくとも一つをアクセプタ型不純物として含む、請求項16または17に記載の窒化物半導体装置。
【請求項19】
前記電子供給層の厚さが20nm以下であり、前記第2ステップ層の厚さが10nm以下である、請求項1~18のうちのいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項20】
前記電子供給層の厚さが15nm以下であり、前記第2ステップ層の厚さが7nm以下である、請求項19に記載の窒化物半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窒化物半導体をアクティブ領域の主材料に用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)が提案されておりパワーデバイスへの応用が展開しつつある。窒化物半導体は、III-V族半導体においてV族元素に窒素を用いた半導体である。典型的なシリコンカーバイド(SiC)パワーデバイスと比較すると、窒化物半導体を用いたパワーデバイスは、SiCパワーデバイスと同様に低オン抵抗の特徴を有することに加えて、SiCパワーデバイスよりも高速・高周波動作可能なデバイスとして認知されている。
【0003】
HEMT等のパワートランジスタでは、フェールセーフの観点から、ゲート電圧が印加されていないゼロバイアス時にソース-ドレイン間の電流経路(チャネル)を遮断するノーマリーオフ動作が求められる。特許文献1は、ノーマリーオフ型のパワートランジスタを実現する窒化物半導体装置を記載している。
【0004】
特許文献1に記載された窒化物半導体装置では、電子走行層とも呼ばれる窒化ガリウム(GaN)層と、電子走行層の上に積層され、電子供給層とも呼ばれる窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層とがヘテロ接合されている。この電子走行層と電子供給層との間のヘテロ接合界面付近の位置において電子走行層に2次元電子ガス(2DEG)がチャネルとして形成されており、アクセプタ型不純物がドーピングされたGaN層(p型GaN層)が、ゲート電極の直下において電子供給層の上に設けられている。このp型GaN層に含まれるアクセプタ型不純物の存在により、ゲート電極の直下の領域における電子走行層のチャネルが消失することで、ノーマリーオフ動作が実現される。そして、ゲート電極に適切なオン電圧を印加することで、ゲート電極の直下の領域における電子走行層にチャネルが誘起されて、ソース-ドレイン間が導通される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-73506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような特許文献1などの構造では、ゲート電極とp型GaN層とがショットキー接合されて両者の界面にエネルギー障壁が形成されており、このエネルギー障壁と、電子供給層のエネルギー障壁とによりゲート耐圧が保たれている。しかしながら、このような構造におけるゲート電極への大きな正のバイアスの印加は、ゲートリーク電流の増加を引き起こし得る。例えば寄生インダクタンスの影響などの何らかの外的要因によりゲート電極に過剰な正バイアスが印加されると、ゲート電極からp型GaN層内にホールが注入されてp型GaN層と電子供給層との界面に蓄積される。このホール蓄積に起因して、電子供給層のバンドベンディングが生じて電子走行層からp型GaN層への電子供給層を介した電子の移動(電子リーク)が生じる。このような電子リークは、ゲートリーク電流を増大させ、ゲート耐圧を低下させる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様による窒化物半導体装置は、窒化物半導体によって構成された電子走行層と、前記電子走行層上に形成され、前記電子走行層よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された電子供給層と、前記電子供給層上の一部に形成され、前記電子供給層よりも小さなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された第1ステップ層と、前記第1ステップ層上に形成され、前記第1ステップ層よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された第2ステップ層と、前記第2ステップ層上の一部に形成され、前記第2ステップ層よりも小さなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成されるとともにアクセプタ型不純物を含むゲート層と、前記ゲート層上に形成されたゲート電極と、前記電子供給層に接しているソース電極およびドレイン電極とを備える。前記第1ステップ層は、平面視において前記ゲート層の外側に延出する第1延出部を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の窒化物半導体装置によれば、ゲートリーク電流を低減してゲート耐圧を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る例示的な窒化物半導体装置の概略断面図。
図2図1の窒化物半導体装置の部分拡大断面図。
図3図1の窒化物半導体装置の例示的な製造工程を示す概略断面図。
図4図3に続く製造工程を示す概略断面図。
図5図4に続く製造工程を示す概略断面図。
図6図5に続く製造工程を示す概略断面図。
図7図6に続く製造工程を示す概略断面図。
図8図7に続く製造工程を示す概略断面図。
図9図8に続く製造工程を示す概略断面図。
図10】第2実施形態に係る例示的な窒化物半導体装置の概略断面図。
図11】第3実施形態に係る例示的な窒化物半導体装置の概略断面図。
図12】第4実施形態に係る例示的な窒化物半導体装置の概略断面図。
図13】第5実施形態に係る例示的な窒化物半導体装置の概略断面図。
図14図1の窒化物半導体装置の例示的な形成パターンを示す概略平面図。
図15図14のF15-F15線に沿ったアクティブ領域の概略断面図。
図16図14のF16-F16線に沿った非アクティブ領域の概略断面図。
図17図1の窒化物半導体装置の別の例示的な形成パターンを示す概略平面図。
図18図17のF18-F18線に沿った非アクティブ領域の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示における窒化物半導体装置の実施形態を説明する。
なお、図面における構成要素は、分かり易さおよび明瞭化のために部分的に拡大されている場合があり、必ずしも実際の寸法どおりに描かれているわけではない。また、理解を容易にするために、断面図では、ハッチング線が省略されている場合がある。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る例示的な窒化物半導体装置10の概略断面図である。なお、本開示において使用される「平面視」という用語は、図1に示される互いに直交するXYZ軸のZ軸方向に窒化物半導体装置10を視ることをいう。また、図1に示される窒化物半導体装置10において、+Z方向を上、-Z方向を下、+X方向を右、-X方向を左と定義する。特に断りが無い場合、「平面視」とは、窒化物半導体装置10をZ軸に沿って上方から視ることを指す。
【0012】
この窒化物半導体装置10は、窒化物半導体を用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT)であり、基板12と、基板12上に形成されたバッファ層14と、バッファ層14上に形成された電子走行層16と、電子走行層16上に形成された電子供給層18とを含む。
【0013】
基板12には、例えばシリコン基板を用いることができる。例えば、0.001Ωmm以上0.5Ωmm以下(または0.01Ωmm以上0.1Ωmm以下)の電気抵抗率を有するp型シリコン基板を基板12に用いることができる。あるいは、シリコン基板に代えて、サファイア基板、シリコンカーバイド(SiC)基板、窒化ガリウム(GaN)基板等を用いることもできる。基板12の厚さは、例えば200μm以上700μm以下とすることができる。
【0014】
バッファ層14は、1つまたは複数の窒化物半導体膜で構成されている。例えば、バッファ層14は、窒化アルミニウム(AlN)膜、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)膜、異なるアルミニウム(Al)組成を有するAlGaN複合膜(以下、グレーデッドAlGaN層という)のうちの少なくとも一つを含んでもよい。例えば、バッファ層14は、AlNの単膜、AlGaNの単膜、AlGaN/GaN超格子構造を有する膜、AlN/AlGaN超格子構造を有する膜、AlN/GaN超格子構造を有する膜によって構成されてもよい。
【0015】
第1実施形態では、バッファ層14は、基板12上に形成されたAlN層を第1バッファ層とし、AlN層上に形成されたグレーデッドAlGaN層を第2バッファ層とした多層バッファ層である。この場合、第1バッファ層の厚さは、例えば80nm以上500nm以下とすることができる。第2バッファ層は、例えば、第1バッファ層に近い側から順にAl組成が75%、50%、25%の3つのAlGaN層からなるグレーデッドAlGaN層とすることができる。第2バッファ層の厚さ(3つのAlGaN層の合計厚さ)は、例えば、300nm以上1μm以下とすることができる。なお、グレーデッドAlGaN層は、任意の適切な層数のAlGaN層を含むことができる。また、グレーデッドAlGaN層における各AlGaN層の厚さは同じでもよいし異なっていてもよい。なお、バッファ層14におけるリーク電流を抑制するために、バッファ層14の一部に不純物を導入してバッファ層14の表層領域以外を半絶縁性にしてもよい。その場合、不純物は、例えば炭素(C)または鉄(Fe)であり、不純物の濃度は、例えば4×1016cm-3以上とすることができる。
【0016】
電子走行層16は、窒化物半導体によって構成されており、第1実施形態ではGaN層である。電子走行層16の厚さは、例えば、0.5μm以上2μm以下とすることができる。なお、電子走行層16におけるリーク電流を抑制するために、電子走行層16の一部に不純物を導入して電子走行層16の表層領域以外を半絶縁性にしてもよい。その場合、不純物は、例えばCであり、不純物の濃度は、例えば4×1016cm-3以上とすることができる。
【0017】
電子供給層18は、電子走行層16よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成されており、第1実施形態ではAlGaN層である。窒化物半導体では、Al組成が高いほどバンドギャップが大きくなる。このため、AlGaN層である電子供給層18は、GaN層である電子走行層16よりも大きなバンドギャップを有している。例えば、第1実施形態では、電子供給層18は、AlGa1-xNによって構成され、xは0<x<0.4であることが好ましく、より好ましくは、0.1<x<0.3である。電子供給層18の厚さD4(図2参照)は、例えば5nm以上20nm以下とすることができる。
【0018】
電子走行層16と電子供給層18はバルク領域では格子定数が異なっており、互いの関係は格子不整合系のヘテロ接合である。電子走行層16および電子供給層18の自発分極と、電子供給層18のヘテロ接合部が受ける圧縮応力に起因するピエゾ分極とによって、電子走行層16と電子供給層18との間のヘテロ接合界面付近における電子走行層16の伝導帯のエネルギーレベルはフェルミ準位よりも低くなる。これにより、電子走行層16と電子供給層18とのヘテロ接合界面に近い位置(例えば、界面から数nm程度の距離)において電子走行層16内には2次元電子ガス(2DEG)20が広がっている。
【0019】
窒化物半導体装置10はさらに、電子供給層18上の一部に形成された第1ステップ層22と、第1ステップ層22上に形成された第2ステップ層24とを含む。また、窒化物半導体装置10は、第2ステップ層24上の一部に形成されたゲート層26と、ゲート層26上に形成されたゲート電極28とを含む。
【0020】
さらに、窒化物半導体装置10は、電子供給層18上に形成されたパッシベーション層30と、パッシベーション層30を貫通して電子供給層18に接しているソース電極32およびドレイン電極34を含む。パッシベーション層30は、電子供給層18の上面の一部をソースコンタクト18Aおよびドレインコンタクト18Bとしてそれぞれ露出させるソースコンタクトホール30Aおよびドレインコンタクトホール30Bを含む。窒化物半導体装置10をZX面の断面で見た場合、ソースコンタクト18A、第1ステップ層22、およびドレインコンタクト18Bは、X軸方向に並んでいる。したがって、ソースコンタクト18Aは第1ステップ層22に対して-X方向に位置しており、ドレインコンタクト18Bは第1ステップ層22に対して+X方向に位置している。ソース電極32およびドレイン電極34はそれぞれ、ソースコンタクトホール30Aおよびドレインコンタクトホール30Bを介して2DEG20にオーミック接触するように電子供給層18に接合されている。図示は省略するが、ソース電極32は、基板12に電気的に接続されている。
【0021】
第1ステップ層22は、窒化物半導体によって構成されており、第1実施形態ではGaN層である。したがって、GaN層である第1ステップ層22は、AlGaN層である電子供給層18よりも小さなバンドギャップを有している。第1ステップ層22は、ホール分散の役割を果たす。例えば、ゲート電極28に過剰な正のバイアスが印加されると、ゲート電極28からゲート層26内にホールが注入される。そのような状況下において、第1ステップ層22は、ホールを第1ステップ層22内で分散させる。言い換えれば、第1ステップ層22は、ゲート層26が電子供給層18に直接接合される場合にそれらの接合界面に生じ得る局所的なホール蓄積を抑制する。これにより、電子供給層18(AlGaN層)のバンドベンディングおよびその結果もたらされるゲートリーク電流を抑制してゲート耐圧を向上させることができる。
【0022】
任意で、第1ステップ層22は、例えば、マグネシウム(Mg)および亜鉛(Zn)のうちの少なくとも一つをアクセプタ型不純物として含んでいてもよい。第1ステップ層22がアクセプタ型不純物を含む場合、ゲート電極28に電圧が印加されないゼロバイアス時に、アクセプタ型不純物の存在によりゲート電極28の直下の領域における電子走行層16のチャネル(2DEG20)を消失させて、ノーマリーオフ動作の信頼性を高めることができる。
【0023】
第1ステップ層22は、ソースコンタクト18Aとドレインコンタクト18Bとの間において、ドレインコンタクト18Bよりもソースコンタクト18A寄りに偏って配置されている。第1ステップ層22は、ソース電極32およびドレイン電極34には接触していない。ソース電極32から第1ステップ層22が離間されることで、ゲート-ソース間の電流リークの増加が抑制される。平面視において第1ステップ層22とドレインコンタクト18Bとの間の距離は、ゲート-ドレイン間耐圧を維持する観点により定めることができる。一例においては、第1ステップ層22は、平面視においてソースコンタクト18Aから例えば0.5μm以上離間し、平面視においてドレインコンタクト18Bから例えば3.0μm以上離間している。
【0024】
第1ステップ層22は、ソース側延出部22Aと、ドレイン側延出部22Bと、ベース部22Cとを含む。第1実施形態では、ソース側延出部22Aおよびドレイン側延出部22Bの各々は「第1延出部」に対応し、ベース部22Cは「第1ベース部」に対応する。また、ソース側延出部22Aは「第1ソース側延出部」に対応し、ドレイン側延出部22Bは「第1ドレイン側延出部」に対応する。例えば、第1実施形態では、ベース部22Cは、図1のX軸に沿った方向において、ソース側延出部22Aとドレイン側延出部22Bとの間に位置している。ただし、ベース部22Cと各延出部22A,22Bとの間に物理的な境界はない。ベース部22Cは、ゲート層26の直下の領域に位置する第1ステップ層22の部分として定義されるものであり、したがって、図1のX軸に沿った方向において、ゲート層26と同じ幅を有している。なお、特に断りがない場合、本開示において使用される「幅」とは、図1のX軸に沿った長さと定義される。
【0025】
ソース側延出部22Aは、ベース部22Cに隣接しており、ベース部22Cとの境界から-X方向においてソースコンタクト18Aに向かって延びる第1ステップ層22の一部である。ドレイン側延出部22Bは、ベース部22Cに隣接しており、ベース部22Cとの境界から+X方向においてドレインコンタクト18Bに向かって延びる第1ステップ層22の一部である。したがって、ソース側延出部22Aおよびドレイン側延出部22Bは、平面視においてゲート層26の外側に延出している。
【0026】
図2に示すように、ソース側延出部22Aは幅W1を有しており、ドレイン側延出部22Bは、例えばソース側延出部22Aの幅W1よりも大きな幅W2を有している。各延出部22A,22Bの幅W1,W2は、例えば、ホール分散効果を高めてゲート耐圧を向上させる観点により定めることができる。追加的または代替的に、ドレイン側延出部22Bの幅W2は、例えば、ゲート電極28とドレイン電極34との間における電子供給層18とパッシベーション層30との界面を減らして電子トラップ(それによる電流コラプス)の影響を緩和する観点により定めることができる。
【0027】
例えば、ソース側延出部22Aの幅W1およびドレイン側延出部22Bの幅W2を広くすると、ゲート耐圧向上が期待できる。しかしながら、それによるトレードオフとして、(1)ソース側延出部22Aがソースコンタクト18Aの近傍まで延在している場合、ゲート-ソース間リークが増大する可能性があること、(2)ドレイン側延出部22Bが後述するソースフィールドプレート長よりも長く延在している場合、ソースフィールドプレート長から空乏層を伸長させる効果が薄れることが考えられる。各延出部22A,22Bの幅は、これらのトレードオフを考慮して定めることができる。例えば、ソース側延出部22Aの幅W1は、0.1μm以上0.3μm以下であり、ドレイン側延出部22Bの幅W2は、0.1μm以上0.8μm以下である。第1実施形態では、ソース側延出部22Aの幅W1は約0.2μmであり、ドレイン側延出部22Bの幅W2は約0.6μmである。好ましくは、ソース側延出部22Aの幅W1は、ゲート層26よりも小さく、ドレイン側延出部22Bの幅W2は、ゲート層26よりも大きい。例えば、ソース側延出部22Aの幅W1は、ゲート層26の幅の約0.4倍とすることができ、ドレイン側延出部22Bの幅W2は、ゲート層26の幅の約1.2倍とすることができる。
【0028】
第1ステップ層22の厚さD1は、例えば、ホール分散効果を高めてゲート耐圧を向上させる観点により定めることができる。追加的または代替的に、第1ステップ層22の厚さD1は、ノーマリーオフ動作の信頼性を高める観点により定めることができる。追加的または代替的に、第1ステップ層22の厚さD1は、窒化物半導体装置10のオン抵抗(Ron)を低減する観点により定めることができる。追加的または代替的に、第1ステップ層22の厚さD1は、第1ステップ層22内における2DEGの発生を抑える観点により定めることができる。
【0029】
例えば、第1ステップ層22の厚さD1は、ホール分散効果を高める観点により所与の厚さ以上に設定され得る。また、ノーマリーオフ動作の信頼性を高めつつオン抵抗を低減する観点により、第1ステップ層22の厚さD1は、ゲート層26の厚さD3よりも小さく設定され得る。また、第1ステップ層22の厚さD1は、第1ステップ層22内における2DEGの発生を抑える観点により所与の厚さ以下に設定され得る。一例として、ゲート層26の厚さD3は100nm以上140nm以下とすることができ、好ましくは110nmである。第1ステップ層22の厚さD1は、例えば、20nm以下、好ましくは15nm以下とすることができる。また、第1ステップ層22の厚さD1は、第1ステップ層22のホール分散効果を維持する観点により、例えば、5nm以上とされ得る。
【0030】
第2ステップ層24は、窒化物半導体によって構成されており、第1実施形態では、第1ステップ層22の上面全体に形成されている。第2ステップ層24は、第1実施形態ではAlGaN層である。したがって、AlGaN層である第2ステップ層24は、GaN層である第1ステップ層22よりも大きなバンドギャップを有している。また、第2ステップ層24を構成するAlGaNは、電子供給層18を構成するAlGaNよりも低いAl組成を有している。したがって、第2ステップ層24は、電子供給層18よりも小さなバンドギャップを有している。
【0031】
第2ステップ層24(AlGaN層)のAl組成は、例えば、後述するエッチングプロセスによりゲート層26を形成する際のエッチング選択比を向上させる観点により定めることができる。追加的または代替的に、第2ステップ層24のAl組成は、例えば、第1ステップ層22(GaN層)内における2DEGの発生を抑える観点により定めることができる。一例として、第1実施形態では、電子供給層18がAlGa1-xN(例えば0<x<0.4、好ましくは、0.1<x<0.3)によって構成され、第2ステップ層24がAlGa1-yN(例えば0<y<x、好ましくは、0.05<y<x)によって構成されている。
【0032】
任意で、第1ステップ層22と同様、第2ステップ層24は、例えば、MgおよびZnのうちの少なくとも一つをアクセプタ型不純物として含んでいてもよい。第2ステップ層24がアクセプタ型不純物を含む場合、ゼロバイアス時に、アクセプタ型不純物の存在によりゲート電極28の直下の領域における電子走行層16のチャネル(2DEG20)を消失させて、ノーマリーオフ動作の信頼性を高めることができる。
【0033】
第2ステップ層24は、ソース側延出部24Aと、ドレイン側延出部24Bと、ベース部24Cとを含む。第2実施形態では、ソース側延出部24Aおよびドレイン側延出部24Bの各々は「第2延出部」に対応し、ベース部24Cは「第2ベース部」に対応する。また、ソース側延出部24Aは「第2ソース側延出部」に対応し、ドレイン側延出部24Bは「第2ドレイン側延出部」に対応する。ベース部24Cは、図1のX軸に沿った方向において、ソース側延出部24Aとドレイン側延出部24Bとの間に位置している。ただし、ベース部24Cと各延出部24A,24Bとの間に物理的な境界はない。ベース部24Cは、ゲート層26の直下の領域に位置する第2ステップ層24の部分として定義されるものであり、したがって、ゲート層26と同じ幅を有している。
【0034】
ソース側延出部24Aは、ベース部24Cに隣接しており、ベース部24Cとの境界から-X方向においてソースコンタクト18Aに向かって延びる第2ステップ層24の一部である。ドレイン側延出部24Bは、ベース部24Cに隣接しており、ベース部24Cとの境界から+X方向においてドレインコンタクト18Bに向かって延びる第2ステップ層24の一部である。したがって、ソース側延出部24Aおよびドレイン側延出部24Bは、平面視においてゲート層26の外側に延出している。
【0035】
ソース側延出部24Aは幅W3を有しており、ドレイン側延出部24Bは幅W4を有している。第1実施形態では、第2ステップ層24のソース側延出部24Aの幅W3は、第1ステップ層22のソース側延出部22Aの幅W1と同じに設定されている。また、第2ステップ層24のドレイン側延出部24Bの幅W4は、第1ステップ層22のドレイン側延出部22Bの幅W2と同じに設定されている。すなわち、第1実施形態では、ソース側延出部24Aはソース側延出部22Aの上面全体を覆っており、ドレイン側延出部24Bはドレイン側延出部22Bの上面全体を覆っている。
【0036】
ここで、上記したように、第1ステップ層22におけるドレイン側延出部22Bの幅W2はソース側延出部22Aの幅W1よりも大きいため、第2ステップ層24におけるドレイン側延出部24Bの幅W4はソース側延出部24Aの幅W3よりも大きい。第2ステップ層24のソース側延出部24Aが第1ステップ層22のソース側延出部22Aの上面全体を覆っているため、ソース側延出部22Aは、その幅W1全体にわたりソース側延出部24Aによってプロセスダメージから保護されることで均一の厚さD1に維持される。
【0037】
同様に、第2ステップ層24のドレイン側延出部24Bが第1ステップ層22のドレイン側延出部22Bの上面全体を覆っているため、ドレイン側延出部22Bは、その幅W2全体にわたりドレイン側延出部24Bによってプロセスダメージから保護されることで均一の厚さD1に維持される。
【0038】
ソース側延出部22Aおよびドレイン側延出部22Bの厚さD1は、ベース部22Cの厚さD1と同じである。すなわち、第1ステップ層22の厚さD1は、ソース側延出部22A、ドレイン側延出部22B、およびベース部22Cのすべてにおいて一定である。
【0039】
各延出部24A,24Bの幅W3,W4は、第1ステップ層22を保護する観点、例えば、後述するエッチングプロセスによりゲート層26を形成する際に、第2ステップ層24に相当するAlGaN層をエッチングストップ層として用いる観点により定めることができる。追加的または代替的に、各延出部24A,24Bの幅W3,W4は、第1ステップ層22と第2ステップ層24とのヘテロ接合を減らして第1ステップ層22の表面に生じ得る2DEGの影響を緩和する観点により定められてもよい。例えば、第2ステップ層24に相当するAlGaN層をエッチングストップ層として利用した後、延出部24A,24Bの幅W3,W4が延出部22A,22Bの幅W1,W2よりも短くなるように第2ステップ層24が形成されてもよい。
【0040】
第2ステップ層24の厚さD2は、例えばノーマリーオフ動作の信頼性を高める観点により定めることができる。追加的または代替的に、第2ステップ層24の厚さD2は、第1ステップ層22内における2DEGの発生を抑える観点により定めることができる。追加的または代替的に、第2ステップ層24の厚さD2は、製造ばらつき(例えばエッチングレートの面内ばらつき)を考慮する観点により定めることができる。
【0041】
例えば、第2ステップ層24の厚さD2は、第1ステップ層22を保護する機能が十分に得られるように、製造ばらつきを考慮して所与の厚さ以上に設定され得る。また、第1ステップ層22内における2DEGの発生を抑えつつノーマリーオフ動作の信頼性を高める観点により、第2ステップ層24の厚さD2は、電子供給層18の厚さD4よりも小さく設定され得る。一例として、第2ステップ層24の厚さD2は、2nm以上であるとよい。また、電子供給層18の厚さD4が例えば20nm以下の場合に、第2ステップ層24の厚さD2は例えば10nm以下としてもよい。あるいは、電子供給層18の厚さD4が例えば15nm以下の場合に、第2ステップ層24の厚さD2は例えば7nm以下としてもよい。このように、第2ステップ層24の厚さD2は、電子供給層18の厚さD4の1/2以下に設定することができる。第1実施形態では、ソース側延出部24A、ドレイン側延出部24B、およびベース部24Cは各々、同じ厚さD2を有している。
【0042】
ゲート層26は、窒化物半導体層によって構成されており、第1実施形態では、アクセプタ型不純物がドーピングされたGaN層(p型GaN層)である。したがって、p型GaN層であるゲート層26は、AlGaN層である第2ステップ層24よりも小さなバンドギャップを有している。ゲート層26は、第2ステップ層24上の一部に形成されている。例えば、ゲート層26は、第2ステップ層24上に、断面台形状、断面矩形状、または断面リッジ状に形成されている。ゲート層26の厚さD3は、例えば、正方向のゲート最大定格電圧、すなわちゲート耐圧を向上させる観点により定めることができる。一例では、ゲート層26の厚さD3は、100nm以上140nm以下、好ましくは110nmとすることができる。ゲート層26の幅(例えば、底部幅)は、例えば、0.4μm以上1.0μm以下、好ましくは0.5μmとすることができる。
【0043】
ゲート層26にドーピングされるアクセプタ型不純物は、例えば、Mg、Zn、およびCのうちの少なくとも一つを含むことができ、第1実施形態ではMgである。この場合、ゲート層26内における平均Mg濃度は、例えば、1×1019cm-3以上3×1019cm-3以下、好ましくは、2×1019cm-3することができる。なお、ゲート層26内におけるアクセプタ型不純物の平均ドープ濃度は、第1および第2ステップ層22,24内におけるアクセプタ型不純物(それが含まれる場合)の平均ドープ濃度よりも高く設定される。ゲート層26は、ゼロバイアス時に、ゲート層26の直下の領域において電子走行層16に形成された2DEG20を空乏化する。
【0044】
ゲート電極28は、第1実施形態ではゲート層26の上面の一部に形成されている。ゲート電極28およびゲート層26は、ショットキー接合を形成している。ゲート電極28は、1つまたは複数の金属層によって構成されており、例えば、第1実施形態では窒化チタン(TiN)層である。あるいは、ゲート電極28は、Tiからなる第1金属層と、第1金属層上に設けられTiNからなる第2金属層とによって構成されてもよい。ゲート電極28の厚さは、例えば、50nm以上300nm以下とすることができる。
【0045】
パッシベーション層30は、電子供給層18、第1ステップ層22、第2ステップ層24、ゲート層26、およびゲート電極28を覆っている。パッシベーション層30は、例えば、窒化シリコン(SiN)膜、二酸化シリコン(SiO)膜、酸窒化シリコン(SiON)膜、アルミナ(Al)膜、AlN膜、および酸窒化アルミニウム(AlON)膜のうちのいずれか1つの単膜か、またはそれらの2つ以上の任意の組み合わせからなる複合膜によって構成されている。例えば、第1実施形態では、パッシベーション層30はSiN層である。パッシベーション層30は、電子供給層18の上面と、第1ステップ層22の側面と、第2ステップ層24の側面および上面と、ゲート層26の側面および上面と、ゲート電極28の側面および上面とを直接的に覆っている。
【0046】
ソース電極32およびドレイン電極34は、1つまたは複数の金属層によって構成されている。ソース電極32は、ソース電極部32Aと、ソース電極部32Aに連続するソースフィールドプレート部32Bとを含む。
【0047】
ソース電極部32Aは、ソースコンタクトホール30Aに充填された充填領域と、充填領域と一体に形成され、平面視においてソースコンタクトホール30Aの周辺領域およびゲート電極28の上方の領域に位置する上部領域とを含む。ソースフィールドプレート部32Bは、ソース電極部32Aの上部領域と一体に形成され、平面視において第1および第2ステップ層22,24を覆うようにパッシベーション層30上に設けられている。ソースフィールドプレート部32Bは、ドレイン電極34の近傍に端部32Cを有しており、この端部32Cは、平面視においてドレイン電極34と第1および第2ステップ層22,24との間に位置している。図1のX軸に沿った方向においてゲート層26の端部からソースフィールドプレート部32Bの端部32Cまでの距離(ソースフィールドプレート部32Bの長さ)は、ソースフィールドプレート長と定義される。ソースフィールドプレート部32Bは、ゲート-ソース間電圧Vgs=0V(トランジスタオフ)の状態でソース-ドレイン間電圧Vdsに高電圧が印加された際に、ソースフィールドプレート部32Bの直下の領域に空乏層を伸ばし、ゲート電極28の端部近傍の電界集中を緩和する役割を果たす。なお、ソースフィールドプレート部32Bによる効果を高めるために、第1ステップ層22のドレイン側延出部22Bの幅W2は、ソースフィールドプレート長以下の値に設定されている。
【0048】
次に、図1の窒化物半導体装置10の製造方法を説明する。図3図9は、窒化物半導体装置10の例示的な製造工程を示す概略断面図である。なお、図3図9では、理解を容易にするために、窒化物半導体装置10の最終的な構成要素を含む部材もしくはそれに対応する部材に対して、図1の参照符号を括弧書きで部分的に示している。
【0049】
窒化物半導体装置10の製造方法は、電子走行層16を構成する第1窒化物半導体層52を形成すること、電子供給層18を構成する第2窒化物半導体層54を第1窒化物半導体層52上に形成すること、第3窒化物半導体層56を第2窒化物半導体層54上に形成すること、第4窒化物半導体層58を第3窒化物半導体層56上に形成すること、およびアクセプタ型不純物を含む第5窒化物半導体層60を第4窒化物半導体層58上に形成することを含む。
【0050】
図3に示すように、第1実施形態では、例えばSi基板である基板12上に、バッファ層14、第1窒化物半導体層52、第2窒化物半導体層54、第3窒化物半導体層56、第4窒化物半導体層58、および第5窒化物半導体層60が順にエピタキシャル成長により形成される。エピタキシャル成長プロセスには、例えば、有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いることができる。
【0051】
詳細な図示は省略するが、例えば、第1実施形態では、バッファ層14は多層バッファ層であり、基板12上にAlN層(第1バッファ層)が形成された後、AlN層上にグレーテッドAlGaN層(第2バッファ層)が形成される。グレーテッドAlGaN層は、例えば、AlN層に近い側から順にAl組成を75%、50%、25%とした3つのAlGaN層を積層することによって形成される。
【0052】
このバッファ層14上に第1窒化物半導体層52としてGaN層が形成され、第1窒化物半導体層52上に第2窒化物半導体層54としてAlGaN層が形成される。したがって、第2窒化物半導体層54は第1窒化物半導体層52よりも大きなバンドギャップを有している。第1窒化物半導体層52は図1の電子走行層16に対応し、第2窒化物半導体層54は図1の電子供給層18に対応する。次いで、第2窒化物半導体層54上に第3窒化物半導体層56としてGaN層が形成され、第3窒化物半導体層56上に第4窒化物半導体層58としてAlGaN層が形成される。したがって、第3窒化物半導体層56は第2窒化物半導体層54よりも小さなバンドギャップを有し、第4窒化物半導体層58は第3窒化物半導体層56よりも大きなバンドギャップを有している。次いで、第4窒化物半導体層58上に第5窒化物半導体層60としてp型GaN層が形成される。したがって、第5窒化物半導体層60は第4窒化物半導体層58よりも大きなバンドギャップを有している。
【0053】
図4および図5に示すように、窒化物半導体装置10の製造方法は、第5窒化物半導体層60上にゲート電極28を形成することを含む。まず、図4に示すように、図3に続く製造工程において、第5窒化物半導体層60上に金属層62を形成する。第1実施形態では、例えば、金属層62としてTiN層がスパッタ法によって形成される。
【0054】
次に、図5に示すように、図4に続く製造工程において、金属層62を選択的にエッチングしてゲート電極28を形成する。第1実施形態では、例えば、ゲート電極28の形成領域に対応する位置において、図4の金属層62の上面に、例えばマスク(図示略)が形成される。そして、このマスクを用いたエッチング(例えば、ドライエッチング)により金属層62がパターニングされることによりゲート電極28が形成される。その後、例えば剥離液によりマスクが除去される。
【0055】
図6に示すように、図5に続く製造工程において、窒化物半導体装置10の製造方法は、第5窒化物半導体層60を選択的にエッチングしてゲート層26を形成することを含む。このゲート層26は、ゲート電極28がゲート層26上に位置するように形成される。第1実施形態では、例えば、ゲート層26の形成領域に対応する位置において、図5の第5窒化物半導体層60の上面に、ゲート電極28を全体的に覆うマスク(図示略)が形成される。そして、このマスクを用いたエッチング(例えば、ドライエッチング)によって第5窒化物半導体層60がパターニングされることにより、ゲート層26が形成される。ゲート層26は、断面台形状、断面矩形状、または断面リッジ状を有し得る。その後、例えば剥離液によりマスクが除去される。
【0056】
ここで、第5窒化物半導体層60のエッチング工程は、異なるエッチング条件を用いた複数のエッチング工程、例えば、第1エッチング工程と第2エッチング工程を含んでもよい。この場合、第1エッチング工程で第5窒化物半導体層60のエッチングが開始され、エッチングストップ層として用いられる第4窒化物半導体層58の上面が露出される前に第1エッチング工程が第2エッチング工程に移行する。そして、第2エッチング工程で第5窒化物半導体層60のエッチングが終了する。
【0057】
この方法では、第5窒化物半導体層60の全体のエッチング時間を短縮する観点から第1エッチング工程のエッチング条件が選択される一方、第1エッチング工程に比べてより高いエッチング選択比(この場合、第4窒化物半導体層58に対する第5窒化物半導体層60のエッチング選択比)を得る観点から第2エッチング工程のエッチング条件が選択される。例えば、第2エッチング工程では、エッチング選択比が約10以上で得られるようにエッチング条件が選択される。
【0058】
一例として、第1エッチング工程は、塩素系ガス(例えば、塩素(Cl)ガスまたは四塩化ケイ素(SiCl)ガス)に希釈ガスを添加した混合ガスを第1エッチングガスとして用いたドライエッチング工程であってもよい。この場合、希釈ガスとしては、例えば、窒素含有ガス(例えば、Nガス)またはアルゴン(Ar)ガスを用いることができる。第2エッチング工程は、塩素系ガス(例えば、ClガスまたはSiClガス)に選択比調整ガスを添加した混合ガスを第2エッチングガスとして用いるドライエッチング工程であってもよい。この場合、選択比調整ガスとしては、例えば、フッ素含有ガス(例えば、四フッ化炭素(CF)ガス)または酸素含有ガス(例えば、Oガス)を用いることができる。あるいは、第2エッチングガスは、希釈ガスおよび選択比調整ガスの双方を塩素系ガスに添加した混合ガスでもよい。この例では、第1および第2エッチング工程が行われる場合について説明したが、第5窒化物半導体層60の最終エッチング工程で上記のような第2エッチング工程が行われるのであれば、より多い数のエッチング工程が行われてもよい。
【0059】
第2エッチング工程を第5窒化物半導体層60の最終エッチング工程に採用することは、第4窒化物半導体層58を良好なエッチングストップ層として機能させる上で有利となる。図1を参照して説明したように、第2ステップ層24を構成するAlGaNのAl組成は、エッチング選択比を向上させる観点および第1ステップ層22内における2DEGの発生を抑える観点から、電子供給層18を構成するAlGaNよりも低いAl組成を有している。加えて、第2ステップ層24はゲート層26に比べて薄い。このような構成において、所望のエッチング選択比を実現するために第2エッチング工程が採用されてもよい。第2エッチング工程によりエッチング選択比が制御されることで、第5窒化物半導体層60の最終エッチング工程で第4窒化物半導体層58(第2ステップ層24)が不所望にエッチングされることが抑制される。結果として、第4窒化物半導体層58(第2ステップ層24)は第3窒化物半導体層56(第1ステップ層22)の保護層としての役割を効果的に果たすものとなる。
【0060】
なお、ドライエッチングは、例えば、誘導結合性プラズマ(ICP)エッチング装置を用いて行うことができる。図示は省略するが、ICPエッチング装置は、エッチングガスからプラズマを生成するための電力を供給するプラズマ発生電源と、プラズマ中のイオンをステージ上のエッチング対象物(例えば、図6では第5窒化物半導体層60)に向けて引き込むためのイオン引き込み電力を供給するバイアス電源とを備えている。このようなICPエッチング装置において、所望のエッチング選択比が得られるようにバイアス電源によるイオン引き込み電力が制御されてもよい。例えば、第4窒化物半導体層58に対する第5窒化物半導体層60のエッチング選択比を約10以上に調整するために、第2エッチング工程でイオン引き込み電力が5ワット(W)未満に設定されてもよい。
【0061】
また、第4窒化物半導体層58がZnを含むAlGaN層として形成されている場合には、第5窒化物半導体層60のエッチングが第4窒化物半導体層58に達した際に、Znに起因するプラズマ発光が生じる。このプラズマ発光を捉えることにより、第5窒化物半導体層60のエッチングストップをより精度良く制御することができる。
【0062】
図7に示すように、図6に続く製造工程において、窒化物半導体装置10の製造方法は、電子供給層18上の一部に位置する第1ステップ層22と、第1ステップ層22上に位置する第2ステップ層24とを形成することを含む。ここでは、第4窒化物半導体層58を選択的にエッチングして第2ステップ層24を形成した後、第3窒化物半導体層56を選択的にエッチングして第1ステップ層22を形成する。また、図7に示すエッチングプロセスでは、窒化物半導体装置10の製造方法は、第1ステップ層22に、平面視においてゲート層26の外側に延出する延出部22A,22Bを形成することを含む。
【0063】
第1実施形態では、例えば、第1および第2ステップ層22,24の形成領域に対応する位置において、図6の第4窒化物半導体層58の上面に、ゲート層26とゲート電極28の双方を全体的に覆うマスク(図示略)が形成される。そして、このマスクを用いたエッチング(例えば、ドライエッチング)により第4窒化物半導体層58と第3窒化物半導体層56が順にパターニングされることにより、第2ステップ層24と第1ステップ層22が形成される。このとき、第1実施形態では、第2ステップ層24に、ベース部24Cと、その両側に位置するソース側延出部24Aおよびドレイン側延出部24Bとが形成される。また、第1ステップ層22には、ベース部22Cと、その両側に位置するソース側延出部22Aおよびドレイン側延出部22Bとが形成される。第2ステップ層24のベース部24Cは、第1ステップ層22のベース部22C上に位置している。第2ステップ層24の延出部24A,24Bは、第1ステップ層22の延出部22A,22B上にそれぞれ位置している。その後、例えば剥離液によりマスクが除去される。
【0064】
ここで、第4窒化物半導体層58および第3窒化物半導体層56のエッチング工程は、複数のエッチング工程、例えば、上記で説明した第5窒化物半導体層60のエッチングに適用される場合と同様な第1および第2エッチング工程を含んでもよい。この場合、第1エッチング工程で第4窒化物半導体層58のエッチングが開始され、第2窒化物半導体層54(電子供給層18)の上面が露出される前に、第1エッチング工程が第2エッチング工程に移行する。そして、第2エッチング工程で第3窒化物半導体層56のエッチングが終了する。
【0065】
この方法では、第5窒化物半導体層60のエッチング工程と同様、第4窒化物半導体層58および第3窒化物半導体層56の全体のエッチング時間を短縮する観点から第1エッチング工程のエッチング条件が選択される一方、第1エッチング工程に比べてより高いエッチング選択比(この場合、第2窒化物半導体層54に対する第3窒化物半導体層56のエッチング選択比)を得る観点から第2エッチング工程のエッチング条件が選択される。例えば、第2エッチング工程では、エッチング選択比が約10以上で得られるようにエッチング条件が選択される。あるいは、第3窒化物半導体層56のエッチング工程で上記のような第2エッチング工程が行われるのであれば、より多い数のエッチング工程が行われてもよい。このような方法を採用することによって、第3窒化物半導体層56のエッチング工程で電子供給層18が不所望にエッチングされることが抑制される。
【0066】
次に、窒化物半導体装置10の製造方法は、図8および図9に示す製造工程を介して、電子供給層18と接するソース電極32(図1参照)およびドレイン電極34(図1参照)を形成することを含む。まず、図8に示すように、図7に続く製造工程において、電子供給層18上に、第1ステップ層22と第2ステップ層24とゲート層26とゲート電極28とを覆う誘電体層64を形成する。第1実施形態では、例えば、誘電体層64としてSiN層が形成される。この誘電体層64は図1のパッシベーション層30に対応する。
【0067】
その後、図9に示すように、図8に続く製造工程において、誘電体層64(パッシベーション層30)を貫通して電子供給層18と接するソース電極32(図1参照)およびドレイン電極34(図1参照)を形成する。第1実施形態では、例えば、電子供給層18の上面の一部をソースコンタクト18Aおよびドレインコンタクト18Bとしてそれぞれ露出させるソースコンタクトホール30Aおよびドレインコンタクトホール30Bが誘電体層64に形成される。次いで、コンタクトホール30A,30Bを充填しパッシベーション層30を覆う金属層(1つまたは複数の金属層)が形成され、この金属層がフォトリソグラフィおよびエッチングによってパターニングされることにより、図1に示すソース電極32およびドレイン電極34が形成される。これにより、図1の窒化物半導体装置10が得られる。
【0068】
次に、窒化物半導体装置10の作用について説明する。
上記のように、ゲート電極28の下にはp型GaNからなるゲート層26が位置している。このゲート層26に含まれるアクセプタ型不純物によって、電子走行層16および電子供給層18のエネルギーレベルが引き上げられる。このため、ゲート層26の直下の領域において、電子走行層16と電子供給層18との間のヘテロ接合界面付近における電子走行層16の伝導帯のエネルギーレベルはフェルミ準位とほぼ同じか、またはそれよりも大きくなる。したがって、ゼロバイアス時において、ゲート層26の直下の領域における電子走行層16に2DEG20は形成されず、ゲート層26の直下の領域以外の領域における電子走行層16に2DEG20が形成される。これにより、ノーマリーオフ動作が実現される。そして、ゲート電極28に適切なオン電圧が印加されると、ゲート電極28の直下の領域における電子走行層16にチャネル(2DEG20)が誘起されてソース-ドレイン間が導通される。
【0069】
ここで、ゲート電極28に過剰な正バイアスが印加された場合、ゲート電極28からゲート層26内にホールが注入される。このような状況下において、第1ステップ層22は、ホールを第1ステップ層22内で分散させることで、第1ステップ層22と電子供給層18との接合界面におけるホールの蓄積を抑制する。これにより、電子供給層18(AlGaN層)のバンドベンディングおよびその結果もたらされるゲートリーク電流を抑制してゲート耐圧を向上させることができる。
【0070】
また、トランジスタのオフ状態において、ドレイン-ソース間に高電圧が印加されると、トランジスタ内部の結晶欠陥や層界面、例えば、電子走行層内、または電子供給層表面に電子がトラップされ、それらの電子が2次元電子ガスの発生を阻害する。この場合、次にトランジスタをオン状態にスイッチさせたときにオン抵抗が増大することが知られており、この現象は電流コラプスと呼ばれる。
【0071】
窒化物半導体装置10では、ゲート層26の下方に、ゲート層26よりも広い幅を有する第1および第2ステップ層22,24が設けられているため、ゲート層26近傍の電子供給層18の上面はエッチングガスに曝されない。また、第1ステップ層22の延出部22A,22B上に第2ステップ層24の延出部24A,24Bが位置するため、ゲート層26のエッチングの際に第1ステップ層22の上面はエッチングガスに曝されない。すなわち、図6の第4窒化物半導体層58がエッチングストップ層として用いられることにより、第1ステップ層22が第2ステップ層24によって保護される。これにより、ゲート層26近傍のエッチング表面と2DEG20との間の物理的距離を(第2ステップ層24が存在しない場合に比べて)大きくすることができる。エッチング表面は電子トラップが比較的生じ易い。このようなエッチング表面が2DEG20から離されることにより、エッチング表面にトラップされる電子による2DEG20への影響を低減することができ、ひいては電流コラプスを抑制することができる。
【0072】
第1実施形態は、以下の利点を有する。
(1-1)第1ステップ層22が、平面視においてゲート層26の外側に延出するソース側延出部22Aおよびドレイン側延出部22Bを含む。これら延出部22A,22Bはホール分散の役割を果たす。例えば、ゲート電極28に過剰な正のバイアスが印加されてゲート電極28からゲート層26内にホールが注入される状況下でも、それらホールが第1ステップ層22のソース側延出部22A内とドレイン側延出部22B内とに分散される。言い換えれば、第1ステップ層22の両延出部22A,22Bは、ゲート層26が電子供給層18に直接接合される場合にそれらの接合界面に生じ得る局所的なホール蓄積を抑制する。これにより、電子供給層18(AlGaN層)のバンドベンディングおよびその結果もたらされるゲートリーク電流を抑制してゲート耐圧を向上させることができる。
【0073】
(1-2)第2ステップ層24は、第1ステップ層22のソース側延出部22A上に形成されたソース側延出部24Aと、第1ステップ層22のドレイン側延出部22B上に形成されたドレイン側延出部24Bとを含む。第2ステップ層24の延出部24A,24Bは、エッチングプロセスによりゲート層26を形成する際にエッチングストップ層として使用される第4窒化物半導体層58(図6参照)の一部として構成される。したがって、第2ステップ層24の延出部24A,24Bは、ゲート層26を形成する際のエッチングプロセスから第1ステップ層22の延出部22A,22Bを保護する機能を果たす。その結果、ゲート層26の外側に延出する第1ステップ層22の延出部22A,22Bの厚さD1,D2が、ゲート層26の下方に位置するベース部22Cと同じ厚さに維持される。これにより、第1ステップ層22の延出部22A,22B内でのホール分散効果が高められる。
【0074】
(1-3)第1ステップ層22の延出部22A,22Bが第2ステップ層24の延出部24A,24Bによってエッチングプロセスから保護されるため、第1ステップ層22の上面がエッチングガスに曝されない。したがって、ゲート層26近傍のエッチング表面と2DEG20との間の物理的距離が(第2ステップ層24が存在しない場合に比べて)大きくなる。エッチング表面は電子トラップが比較的生じ易い。このようなエッチング表面が2DEG20から離されることにより、エッチング表面にトラップされる電子による2DEG20への影響を低減することができ、ひいては電流コラプスを抑制することができる。
【0075】
(1-4)第2ステップ層24のソース側延出部24Aの幅W3は、第1ステップ層22のソース側延出部22Aの幅W1と同じである。また、第2ステップ層24のドレイン側延出部24Bの幅W4は、第1ステップ層22のドレイン側延出部22Bの幅W2と同じである。したがって、第2ステップ層24の延出部24A,24Bは、第1ステップ層22の延出部22A,22Bの上面全体を保護する。これにより、第1ステップ層22の厚さD1を良好に維持して延出部22A,22B内でのホール分散効果が好適に高められる。
【0076】
(1-5)第2ステップ層24の厚さD2は、電子供給層18の厚さD4よりも小さい。また、第2ステップ層24は、電子供給層18よりも小さなバンドギャップを有している。第1ステップ層22と第2ステップ層24との接合界面付近における第1ステップ層22内に2DEGが発生すると、電子走行層16の2DEG20との電流経路が形成されて電流リークが生じ得る。あるいは、第1ステップ層22内に2DEGが発生すると、電子走行層16の2DEG20の空乏化が妨げられる可能性がある。これらを考慮して、第2ステップ層24の厚さD2およびバンドギャップに対して、電子供給層18の厚さD4およびバンドギャップが上記の関係で定められている。この構成によれば、第1ステップ層22内における2DEGの発生を抑えてノーマリーオフ動作の信頼性を高めることができる。
【0077】
(1-6)第1および第2ステップ層22,24のうちの少なくとも一つがアクセプタ型不純物を含む。この構成では、ゼロバイアス時に、ゲート層26の直下の領域において電子走行層16に形成された2DEG20を空乏化する効果を高め、ノーマリーオフ動作の信頼性を高めることができる。
【0078】
(1-7)第1ステップ層22の厚さD1はゲート層26の厚さD3よりも小さい。この構成では、ノーマリーオフ動作の信頼性を高めつつオン抵抗を低減することができる。
(1-8)ゲート層26を形成するエッチングプロセス(図7)では、複数のエッチング工程を実行することができる。例えば、第1エッチング工程で第5窒化物半導体層60のエッチングが開始され、第4窒化物半導体層58の上面が露出される前に、第1エッチング工程が第2エッチング工程に移行する。そして、第4窒化物半導体層58がエッチングストップ層として用いられて第2エッチング工程で第5窒化物半導体層60のエッチングが終了する。このとき、第2エッチング工程では、第1エッチング工程に比べて第4窒化物半導体層58に対する第5窒化物半導体層60のエッチング選択比が高いエッチング条件が設定される。この方法によれば、第4窒化物半導体層58をエッチングストップ層として良好に使用しながら第5窒化物半導体層60をエッチングしてゲート層26を形成することができる。これにより、第2ステップ層24の厚さD2に相当する第4窒化物半導体層58の厚さおよび第1ステップ層22の厚さD1に対応する第3窒化物半導体層56の厚さを良好に維持することができる。
【0079】
(1-9)第1および第2ステップ層22,24を形成するエッチングプロセス(図7)では、複数のエッチング工程を実行することができる。例えば、第1エッチング工程で第4窒化物半導体層58のエッチングが開始され、第2窒化物半導体層54(電子供給層18)の上面が露出される前に、第1エッチング工程が第2エッチング工程に移行する。そして、第2窒化物半導体層54(電子供給層18)がエッチングストップ層として用いられて第2エッチング工程で第3窒化物半導体層56のエッチングが終了する。このとき、第2エッチング工程では、第1エッチング工程に比べて第2窒化物半導体層54に対する第3窒化物半導体層56のエッチング選択比が高いエッチング条件が設定される。この方法によれば、第2窒化物半導体層54をエッチングストップ層として良好に使用しながら第3窒化物半導体層56をエッチングして第1ステップ層22を形成することができる。これにより、電子供給層18の厚さD4に相当する第2窒化物半導体層54の厚さおよび電子走行層16の厚さに対応する第1窒化物半導体層52の厚さを良好に維持することができる。
【0080】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態に係る例示的な窒化物半導体装置100の概略断面図である。図10において、第1実施形態に係る窒化物半導体装置10と同様の構成要素には、同じ符号を付している。以下では、第1実施形態と同様な構成要素については説明を省略し、第1実施形態と異なる構成要素について説明する。
【0081】
窒化物半導体装置100は、第1実施形態の第2ステップ層24(図1参照)の代わりに第2ステップ層102を含む。第2ステップ層102は、第2実施形態ではAlGaN層である。
【0082】
第2実施形態の第2ステップ層102は、ソース側延出部102Aと、ドレイン側延出部102Bと、ベース部102Cとを含む。ソース側延出部102Aは、第1実施形態の第2ステップ層24のソース側延出部24Aに対応し、ドレイン側延出部102Bは、第1実施形態の第2ステップ層24のドレイン側延出部24Bに対応する。ベース部102Cは、第1実施形態の第2ステップ層24のベース部24Cに対応する。ただし、第2ステップ層102では、ソース側延出部102Aおよびドレイン側延出部102Bが、ベース部102Cよりも小さな厚さ、例えば、ベース部102Cの半分の厚さを有している。換言すれば、第2ステップ層102は、第1実施形態の第2ステップ層24の延出部24A,24Bを半分の厚さにした構成とみなすことができる。なお、延出部102A,102Bがベース部102Cよりも薄いことを除き、第2実施形態の第2ステップ層102は、第1実施形態の第2ステップ層24と同様な構成および特徴を有するものとすることができる。
【0083】
第2実施形態の第2ステップ層102(延出部102A,102Bおよびベース部102C)は、例えば、図6のゲート層26を形成した後、第4窒化物半導体層58(ベース部102Cに対応する部分以外)をエッチングにより薄化することによって形成することができる。そして、第2ステップ層102の形成後、図7と同様なエッチングにより第1ステップ層22が形成される。
【0084】
第2実施形態は、第1実施形態の利点に加えて、以下の利点を有する。
(2-1)延出部102A,102Bがベース部102Cよりも薄いため、第1ステップ層22における2DEGの発生を抑えることができる。
【0085】
(第3実施形態)
図11は、第3実施形態に係る例示的な窒化物半導体装置200の概略断面図である。図11において、第1実施形態に係る窒化物半導体装置10と同様の構成要素には、同じ符号を付している。以下では、第1実施形態と同様な構成要素については説明を省略し、第1実施形態と異なる構成要素について説明する。
【0086】
窒化物半導体装置200は、第1実施形態の第2ステップ層24(図1参照)の代わりに第2ステップ層202を含む。第2ステップ層202は、第3実施形態ではAlGaN層である。
【0087】
第3実施形態の第2ステップ層202は、第1ステップ層22のベース部22C上においてゲート層26の直下の領域にのみ形成されている。換言すれば、第3実施形態の第2ステップ層202は、第1実施形態の第2ステップ層24から延出部24A,24Bを省略した構成とみなすことができる。なお、延出部が存在しないことを除き、第3実施形態の第2ステップ層202は、第1実施形態の第2ステップ層24と同様な構成および特徴を有するものとすることができる。
【0088】
第3実施形態の第2ステップ層202は、例えば、図6のゲート層26を形成した後、第4窒化物半導体層58(第2ステップ層202に対応する部分以外)をエッチングにより除去することによって形成することができる。そして、第2ステップ層202の形成後、図7と同様なエッチングにより第1ステップ層22が形成される。
【0089】
第3実施形態は、第1実施形態の利点に加えて、以下の利点を有する。
(3-1)AlGaN層である第2ステップ層202が、第1ステップ層22のベース部22C上においてゲート層26の直下の領域にのみ形成されている。このため、第1ステップ層22の延出部22A,22Bの領域内における2DEGの発生が抑制される。また、第1ステップ層22(GaN層)と第2ステップ層202(AlGaN層)との界面に生じ得る電子トラップ(それによる電流コラプス)の影響を緩和することができる。
【0090】
(3-2)第2ステップ層202は、例えば、図6のゲート層26を形成した後、第4窒化物半導体層58(第2ステップ層202に対応する部分以外)をエッチングにより除去することによって形成することができる。換言すれば、第1実施形態と同様、エッチングプロセスによるゲート層26の形成時には、第1ステップ層22上に存在する第4窒化物半導体層58がエッチングストップ層として使用される。このため、第1実施形態と同様に、エッチングプロセスによる第1ステップ層22の損傷を依然として抑制することができる。
【0091】
(第4実施形態)
図12は、第4実施形態に係る例示的な窒化物半導体装置300の概略断面図である。図12において、第1実施形態に係る窒化物半導体装置10と同様の構成要素には、同じ符号を付している。以下では、第1実施形態と同様な構成要素については説明を省略し、第1実施形態と異なる構成要素について説明する。
【0092】
窒化物半導体装置300は、第1実施形態のゲート層26(図1参照)の代わりにゲート層302を含む。ゲート層302は、第4実施形態ではp型GaN層である。
ゲート層302は、第2ステップ層24上にゲート層302が積層される方向に互いに離間した2つの分割層として上側層302Aおよび下側層302Bを含む。窒化物半導体装置300はさらに、上側層302Aおよび下側層302Bに接してそれら上側層302Aと下側層302Bとの間に位置する窒化物半導体層304を含む。上側層302Aおよび下側層302Bは各々例えばp型GaN層であり、窒化物半導体層304は例えばAlGaN層である。したがって、AlGaN層である窒化物半導体層304は、各々p型GaN層である上側層302Aおよび下側層302Bよりも大きなバンドギャップを有している。
【0093】
第4実施形態では、ゲート層302の上側層302Aおよび下側層302Bは、図6においてゲート層26を形成する場合と同様に、第5窒化物半導体層60(p型GaN層)を材料層として使用して形成される。窒化物半導体層304には、例えば、図6における第4窒化物半導体層58(AlGaN層)と同様なAlGaN層を材料層として使用することができる。
【0094】
第4実施形態では、図6において第4窒化物半導体層58をエッチングストップ層として用いて第5窒化物半導体層60をエッチングする場合と同様に、窒化物半導体層304の材料層であるAlGaN層がエッチングストップ層として用いられる。図6を参照して図12のゲート層302を形成する製造工程を説明すると、まず、窒化物半導体層304の材料層(AlGaN層)をエッチングストップ層として用いて図6の第5窒化物半導体層60(上側層302Aに相当する部分)をエッチングすることにより、上側層302Aが形成される。次に、窒化物半導体層304が形成される。その後、図6の場合と同様に第4窒化物半導体層58をエッチングストップ層として用いて第5窒化物半導体層60(下側層302Bに相当する部分)をエッチングすることにより、下側層302Bが形成される。
【0095】
ここで、第4実施形態のゲート層302を形成する際に用いるエッチングプロセスとしては、第1実施形態(図6)のゲート層26を形成する際に用いるエッチングプロセスを適用することができる。例えば、窒化物半導体層304の材料層(AlGaN層)をエッチングストップ層として用いて上側層302Aを形成する際に、第1実施形態において図6を参照して説明した第1および第2エッチング工程を含む複数のエッチング工程を行ってもよい。また、第4窒化物半導体層58をエッチングストップ層として用いて下側層302Bを形成する際に、第1および第2エッチング工程を含む複数のエッチング工程を行ってもよい。
【0096】
第4実施形態では、エッチングレートの面内ばらつきを考慮してゲート層302の中間に窒化物半導体層304が設けられている。ゲート層302を形成する工程では、ゲート層302以外の領域におけるすべての第5窒化物半導体層60をエッチングして第4窒化物半導体層58の上面を露出させる必要がある。しかしながら、エッチングレートの面内ばらつきにより第5窒化物半導体層60が均一にエッチングされない場合がある。
【0097】
この点を考慮して、第4実施形態では、窒化物半導体層304の材料層(AlGaN層)をエッチングストップ層として用いながら上側層302Aを形成する。この際には、より高いエッチング選択比が得られる第2エッチング工程を用いるのがよい。さらには、第4窒化物半導体層58をエッチングストップ層として用いながら下側層302Bを形成する。この際には、より高いエッチング選択比が得られる第2エッチング工程を用いるのがよい。このような方法を用いることで、第4窒化物半導体層58(第2ステップ層24に用いられる層)が、ゲート層302を形成するエッチングプロセスによる損傷の影響を受けることを抑制することができる。
【0098】
なお、ゲート層302に1つの窒化物半導体層304が介在する例として第4実施形態の構成を説明したが、ゲート層302が互いに離間する3つ以上の分割層(各々例えばp型GaN層)によって構成されてもよい。この場合、隣り合う2つの分割層に接してそれら2つの分割層の間に各々介在するように複数の窒化物半導体層304(各々例えばAlGaN層)が設けられてもよい。
【0099】
第4実施形態は、第1実施形態の利点に加えて、以下の利点を有する。
(4-1)ゲート層302の中間に窒化物半導体層304が設けられている。この構成では、窒化物半導体層304の材料層(この例ではAlGaN層)をエッチングストップ層として利用したエッチングによりゲート層302の上側層302Aが形成され、第4窒化物半導体層58をエッチングストップ層として利用したエッチングによりゲート層302の下側層302Bが形成される。この方法によれば、第4窒化物半導体層58(第2ステップ層24に用いられる層)が、ゲート層302を形成するエッチングプロセスによる損傷の影響を受けることを抑制することができる。
【0100】
(第5実施形態)
図13は、第5実施形態に係る例示的な窒化物半導体装置400の概略断面図である。図13において、第1実施形態に係る窒化物半導体装置10と同様の構成要素には、同じ符号を付している。以下では、第1実施形態と同様な構成要素については説明を省略し、第1実施形態と異なる構成要素について説明する。
【0101】
窒化物半導体装置400は、第1実施形態の第1ステップ層22(図1参照)の代わりに第1ステップ層402を含む。第1ステップ層402は、第5実施形態ではGaN層である。
【0102】
第1ステップ層402は、電子供給層18上に第1ステップ層22が積層される方向に互いに離間した2つの分割層として上側層402Aおよび下側層402Bを含む。窒化物半導体装置400はさらに、上側層402Aおよび下側層402Bに接してそれら上側層402Aと下側層402Bとの間に位置する窒化物半導体層404を含む。上側層402Aおよび下側層402Bは各々例えばGaN層であり、窒化物半導体層404は例えばAlGaN層である。したがって、AlGaN層である窒化物半導体層404は、各々GaN層である上側層402Aおよび下側層402Bよりも大きなバンドギャップを有している。
【0103】
第5実施形態では、第1ステップ層402の上側層402Aおよび下側層402Bは、図7において第1ステップ層22を形成する場合と同様に、第3窒化物半導体層56(GaN層)を材料層として使用して形成される。窒化物半導体層404には、例えば、図6における第4窒化物半導体層58(AlGaN層)と同様なAlGaN層を材料層として使用することができる。
【0104】
第5実施形態では、窒化物半導体層404の材料層であるGaN層がエッチングストップ層として用いられる。図7を参照して図13の第1ステップ層402を形成する製造工程を説明すると、まず、窒化物半導体層404の材料層(AlGaN層)をエッチングストップ層として用いて第3窒化物半導体層56(上側層402Aに相当する部分)をエッチングすることにより、上側層402Aが形成される。次に、窒化物半導体層404が形成される。その後、図7の場合と同様に第4窒化物半導体層58をエッチングストップ層として用いて第3窒化物半導体層56(下側層402Bに相当する部分)をエッチングすることにより、下側層402Bが形成される。
【0105】
ここで、第5実施形態の第1ステップ層402を形成する際に用いるエッチングプロセスとしては、第1実施形態(図7)の第1ステップ層22を形成する際に用いるエッチングプロセスを適用することができる。例えば、窒化物半導体層404の材料層(GaN層)をエッチングストップ層として用いて上側層402Aを形成する際に、第1実施形態において図7を参照して説明した第1および第2エッチング工程を含む複数のエッチング工程を行ってもよい。また、第4窒化物半導体層58をエッチングストップ層として用いて下側層402Bを形成する際に、第1および第2エッチング工程を含む複数のエッチング工程を行ってもよい。
【0106】
第5実施形態では、エッチングレートの面内ばらつきを考慮して第1ステップ層402の中間に窒化物半導体層404が設けられている。第1ステップ層402を形成する工程では、第1ステップ層402以外の領域におけるすべての第3窒化物半導体層56をエッチングして第2窒化物半導体層54の上面を露出させる必要がある。しかしながら、エッチングレートの面内ばらつきにより第3窒化物半導体層56が均一にエッチングされない場合がある。
【0107】
この点を考慮して、第5実施形態では、窒化物半導体層404の材料層(AlGaN層)をエッチングストップ層として用いながら上側層402Aを形成する。この際には、より高いエッチング選択比が得られる第2エッチング工程を用いるのがよい。さらには、第2窒化物半導体層54をエッチングストップ層として用いながら下側層402Bを形成する。この際には、より高いエッチング選択比が得られる第2エッチング工程を用いるのがよい。このような方法を用いることで、第2窒化物半導体層54(電子供給層18に用いられる層)が、第1ステップ層402を形成するエッチングプロセスによる損傷の影響を受けることを抑制することができる。
【0108】
なお、第1ステップ層402に1つの窒化物半導体層404が介在する例として第5実施形態の構成を説明したが、第1ステップ層402が互いに離間する3つ以上の分割層(各々例えばGaN層)によって構成されてもよい。この場合、隣り合う2つの分割層に接してそれら2つの分割層の間に各々介在するように複数の窒化物半導体層404(各々例えばAlGaN層)が設けられてもよい。
【0109】
第5実施形態は、第1実施形態の利点に加えて、以下の利点を有する。
(5-1)第1ステップ層402の中間に窒化物半導体層404が設けられている。この構成では、窒化物半導体層404の材料層(この例ではAlGaN層)をエッチングストップ層として利用したエッチングにより第1ステップ層402の上側層402Aが形成され、第2窒化物半導体層54をエッチングストップ層として利用したエッチングにより第1ステップ層402の下側層402Bが形成される。この方法によれば、第2窒化物半導体層54(電子供給層18に用いられる層)が、第1ステップ層402を形成するエッチングプロセスによる損傷の影響を受けることを抑制することができる。
【0110】
(窒化物半導体装置の形成パターンの例)
図14は、図1の窒化物半導体装置10の例示的な形成パターン500を示す概略平面図である。図15は、図14のF15-F15線に沿ったアクティブ領域510の概略断面図であり、図16は、図14のF16-F16線に沿った非アクティブ領域512の概略断面図である。なお、理解を容易にするために、図14~16では、図1の構成要素と同様な構成要素には同一の符号を付している。また、図示の複雑化を避けるべく、図14において、ソース電極32およびドレイン電極34は破線で示されている。
【0111】
図14に示すように、形成パターン500は、トランジスタ動作に寄与するアクティブ領域510と、トランジスタ動作に寄与しない非アクティブ領域512とを含む。アクティブ領域とは、ゲート電極28に電圧が印加されているときに、ソース-ドレイン間に電流が流れる領域のことをいう。
【0112】
図15に示すように、アクティブ領域510においては、複数(図15の例では4つ)の窒化物半導体装置(HEMT)10A~10DがX軸方向に連続して形成されている。なお、各窒化物半導体装置10A~10Dは、図1の窒化物半導体装置10と同様に構成されている。
【0113】
図15の例では、窒化物半導体装置10A,10Bは、窒化物半導体装置10Aの第1および第2ステップ層22,24のソース側延出部22A,24Aが、窒化物半導体装置10Bの第1および第2ステップ層22,24のソース側延出部22A,24Aとソース電極部32Aを介して対向するようにレイアウトされている。また、同様な配置関係により、窒化物半導体装置10C,10Dがレイアウトされている。窒化物半導体装置10B,10Cは、窒化物半導体装置10Bの第1および第2ステップ層22,24のドレイン側延出部22B,24Bが、窒化物半導体装置10Cの第1および第2ステップ層22,24のドレイン側延出部22B,24Bとドレイン電極34を介して対向するようにレイアウトされている。一方、図16に示すように、非アクティブ領域512にドレイン電極34は形成されず、X軸方向にパッシベーション層30およびソース電極32が連続して形成されている。図14に示すように、第2ステップ層24、ゲート層26、ゲート電極28、およびソース電極32は、アクティブ領域510と非アクティブ領域512とでY軸方向に連続して形成されている。なお、図示されていないが、第1ステップ層22も、アクティブ領域510と非アクティブ領域512とで連続して形成されている。
【0114】
図14図16に示すように、第1および第2ステップ層22,24(図14では、第1ステップ層22は図示されない)は、平面視においてゲート層26の外側に延出している。例えば、アクティブ領域510および非アクティブ領域512の各々において、第1および第2ステップ層22,24は、平面視においてゲート層26の全外周縁よりも外側に延出している。言い換えれば、第1および第2ステップ層22,24は、XY平面における+X方向、-X方向、+Y方向、および-Y方向を含む全方向においてゲート層26の外側に延出している。このように、第1および第2ステップ層22,24が平面視においてゲート層26よりも大きな面積で形成されていることにより、第1および第2ステップ層22,24において、X軸方向だけでなくY軸方向にもホールを分散させることができる。なお、図14に示す形成パターン500は、図10図13の各窒化物半導体装置100,200,300,400に適用されてもよい。
【0115】
(窒化物半導体装置の形成パターンの別の例)
図17は、図1の窒化物半導体装置10の別の例示的な形成パターン600を示す概略平面図であり、図18は、図17のF18-F18線に沿った非アクティブ領域の概略断面図である。なお、理解を容易にするために、図17および図18では、図1の構成要素と同様な構成要素には同一の符号を付している。また、図示の複雑化を避けるべく、図17において、ソース電極32およびドレイン電極34は破線で示されている。
【0116】
図14の形成パターン500と同様に、形成パターン600は、アクティブ領域610と非アクティブ領域612とを含む。アクティブ領域610における窒化物半導体装置10のレイアウトは、図15に示すものと同様である。
【0117】
図17および図18に示すように、非アクティブ領域612において、第1および第2ステップ層22,24(図17では第1ステップ層22は図示されない)、ゲート層26、ゲート電極28、パッシベーション層30、およびソース電極32はX軸方向に連続して形成されている。したがって、非アクティブ領域612において、第1ステップ層22であるGaN層は、電子供給層18を構成するAlGaN層をX軸方向に連続的に被覆している。また、非アクティブ領域612において、第2ステップ層24であるAlGaN層は、第1ステップ層22(AlGaN層)をX軸方向に連続的に被覆し、ゲート層26は第2ステップ層24を連続的に被覆し、ゲート電極28はゲート層26を連続的に被覆している。
【0118】
このように、形成パターン600では、図14の形成パターン500と比べて、非アクティブ領域612に形成される第1および第2ステップ層22,24の面積が大きい(図16および図18参照)。このため、図14の形成パターン500を使用する場合に比べて、アクティブ領域610における窒化物半導体装置10のホール分散効果をより高めることができる。また、形成パターン600では、図14の形成パターン500と比べて、非アクティブ領域612に形成されるゲート電極28の面積が大きい。このため、ゲート配線抵抗を低減することができる。なお、図17に示す形成パターン600は、図10図13の各窒化物半導体装置100,200,300,400に適用されてもよい。
【0119】
なお、図14と同様、図17の例でも、アクティブ領域610および非アクティブ領域612の各々において、第1および第2ステップ層22,24は、平面視においてゲート層26の全外周縁よりも外側に延出している。このように、第1および第2ステップ層22,24が平面視においてゲート層26よりも大きな面積で形成されていることにより、第1および第2ステップ層22,24において、X軸方向だけでなくY軸方向にもホールを分散させることができる。
【0120】
(変更例)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記各実施形態および以下の各変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0121】
・第1実施形態の第1ステップ層22において、ドレイン側延出部22Bの幅W2は、ソース側延出部22Aの幅W1以下とされてもよい。この場合、第1ステップ層22のドレイン側延出部22B上に第2ステップ層24のドレイン側延出部24Bが形成され、第1ステップ層22のソース側延出部22A上に第2ステップ層24のソース側延出部24Aが形成されるように、第2ステップ層24において、ドレイン側延出部24Bの幅W4が、ソース側延出部24Aの幅W3以下とされる。第2実施形態(図10)、第4実施形態(図12)、および第5実施形態(図13)についても同様に変更されてもよい。
【0122】
・第1実施形態の第1ステップ層22は、ソース側延出部22Aを含まずに、ドレイン側延出部22Bのみを含むものであってもよい。この場合、第2ステップ層24も、ソース側延出部22Aを含まずに、ドレイン側延出部22Bのみを含むものとなる。あるいは、第1実施形態の第1ステップ層22は、ドレイン側延出部22Bを含まずに、ソース側延出部22Aのみを含むものであってもよい。この場合、第2ステップ層24も、ドレイン側延出部22Bを含まずに、ソース側延出部22Aのみを含むものとなる。第2実施形態(図10)、第4実施形態(図12)、および第5実施形態(図13)についても同様に変更されてもよい。
【0123】
・第1実施形態の第2ステップ層24において、ソース側延出部24Aが、ベース部24Cから-X方向にソースコンタクト18Aに向かって徐々に薄くなるように形成されてよい。また、ドレイン側延出部24Bが、ベース部24Cから+X方向にドレインコンタクト18Bに向かって徐々に薄くなるように形成されてもよい。第2実施形態(図10)、第4実施形態(図12)、および第5実施形態(図13)についても同様に変更されてもよい。
【0124】
・第1実施形態において、第2ステップ層24のソース側延出部24Aが第1ステップ層22のソース側延出部22A上の一部に形成されてもよい。例えば、ソース側延出部24Aがベース部24Cの近傍においてソース側延出部22Aの上面の一部のみに形成されてもよい。同様に、第2ステップ層24のドレイン側延出部24Bが第1ステップ層22のドレイン側延出部22B上の一部に形成されてもよい。例えば、ドレイン側延出部24Bがベース部24Cの近傍においてドレイン側延出部22Bの上面の一部のみに形成されてもよい。
【0125】
・ゲート電極28は、ゲート層26上の少なくとも一部に形成されていればよい。例えば、上記各実施形態において、ゲート電極28は、ゲート層26上の全部に形成されてもよい。
【0126】
・本開示で使用される「~上に」という用語は、文脈によって明らかにそうでないことが示されない限り、「~上に」と「~の上方に」の意味を含む。したがって、「第1層が第2層上に形成される」という表現は、或る実施形態では第1層が第2層に接触して第2層上に直接配置され得るが、他の実施形態では第1層が第2層に接触することなく第2層の上方に配置され得ることが意図される。すなわち、「~上に」という用語は、第1層と第2層との間に他の層が形成される構造を排除しない。例えば、電子供給層18が電子走行層16上に形成される上記各実施形態は、2DEG20を安定して形成するために電子供給層18と電子走行層16との間に中間層が位置する構造も含む。
【0127】
・本開示で使用されるZ軸方向は必ずしも鉛直方向である必要はなく、鉛直方向に完全に一致している必要もない。したがって、本開示による種々の構造(例えば、図1に示される構造)は、本明細書で説明されるZ軸方向の「上」および「下」が鉛直方向の「上」および「下」であることに限定されない。例えば、X軸方向が鉛直方向であってもよく、またはY軸方向が鉛直方向であってもよい。
【0128】
[付記]
上記各実施形態および各変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。なお、各付記に記載された構成要素に対応する実施形態の構成要素の符号を括弧書きで示す。符号は、理解の補助のために例として示すものであり、各付記に記載された構成要素は、符号で示される構成要素に限定されるべきではない。
【0129】
(付記A1)
窒化物半導体によって構成された電子走行層(16)と、
前記電子走行層(16)上に形成され、前記電子走行層(16)よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された電子供給層(18)と、
前記電子供給層(18)上の一部に形成され、前記電子供給層(18)よりも小さなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された第1ステップ層(22;402)と、
前記第1ステップ層(22;402)上に形成され、前記第1ステップ層(22;402)よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成された第2ステップ層(24;102;202)と、
前記第2ステップ層(24;102;202)上の一部に形成され、前記第2ステップ層(24;102;202)よりも小さなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成されるとともにアクセプタ型不純物を含むゲート層(26;302)と、
前記ゲート層(26;302)上に形成されたゲート電極(28)と、
前記電子供給層(18)に接しているソース電極(32)およびドレイン電極(34)と、
を備え、
前記第1ステップ層(22;402)は、平面視において前記ゲート層(26;302)の外側に延出する第1延出部(22A/22B)を含む、窒化物半導体装置。
【0130】
(付記A2)
前記第1延出部(22A/22B)は、平面視において前記ゲート層(26;302)の全外周縁よりも外側に延出している、付記A1に記載の窒化物半導体装置。
【0131】
(付記A3)
前記第2ステップ層(24;102)は、平面視において前記ゲート層(26;302)の外側に延出するとともに前記第1延出部(22A/22B)上に形成された第2延出部(24A/24B;102A/102B)を含む、付記A1またはA2に記載の窒化物半導体装置。
【0132】
(付記A4)
前記第2延出部(24A/24B;102A/102B)は、平面視において前記ゲート層(26;302)の全外周縁よりも外側に延出している、付記A3に記載の窒化物半導体装置。
【0133】
(付記A5)
前記電子供給層(18)上に形成され、前記第1ステップ層(22;402)と前記第2ステップ層(24;102;202)と前記ゲート層(26;302)と前記ゲート電極(28)とを覆うパッシベーション層(30)をさらに備える付記A1~A4のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置。
【0134】
(付記A6)
前記パッシベーション層(30)は、前記電子供給層(18)の上面の一部をソースコンタクト(18A)およびドレインコンタクト(18B)としてそれぞれ露出させるソースコンタクトホール(30A)およびドレインコンタクトホール(30B)を含み、
前記第1延出部(22A/22B)は、
平面視において前記ゲート層(26;302)の外側に前記ソースコンタクト(18A)に向かって延出する第1ソース側延出部(22A)と、
平面視において前記ゲート層(26;302)の外側に前記ドレインコンタクト(18B)に向かって延出する第1ドレイン側延出部(22B)と、を含み、
前記第1ステップ層(22;402)は、前記ゲート層(26;302)の下方に配置され、前記第1ソース側延出部(22A)と前記第1ドレイン側延出部(22B)との間に位置する第1ベース部(22C)をさらに含む、付記A5に記載の窒化物半導体装置。
【0135】
(付記A7)
前記電子供給層(18)上に形成され、前記第1ステップ層(22;402)と前記第2ステップ層(24;102;202)と前記ゲート層(26;302)と前記ゲート電極(28)とを覆い、前記電子供給層(18)の上面の一部をソースコンタクト(18A)およびドレインコンタクト(18B)としてそれぞれ露出させるソースコンタクトホール(30A)およびドレインコンタクトホール(30B)を含むパッシベーション層(30)をさらに備え、
前記第1延出部(22A/22B)は、
平面視において前記ゲート層(26;302)の外側に前記ソースコンタクト(18A)に向かって延出する第1ソース側延出部(22A)と、
平面視において前記ゲート層(26;302)の外側に前記ドレインコンタクト(18B)に向かって延出する第1ドレイン側延出部(22B)と、を含み、
前記第1ステップ層(22;402)は、前記ゲート層(26;302)の下方に配置され、前記第1ソース側延出部(22A)と前記第1ドレイン側延出部(22B)との間に位置する第1ベース部(22C)をさらに含み、
前記第2延出部(24A/24B;102A/102B)は、
平面視において前記ゲート層(26;302)の外側に前記ソースコンタクト(18A)に向かって延出するとともに前記第1ソース側延出部(22A)上に形成された第2ソース側延出部(24A;102A)と、
平面視において前記ゲート層(26;302)の外側に前記ドレインコンタクト(18B)に向かって延出するとともに前記第1ドレイン側延出部(22B)上に形成された第2ドレイン側延出部(24B;102B)と、を含み、
前記第2ステップ層(24;102;202)は、前記ゲート層(26;302)の下方に配置され、前記第2ソース側延出部(24A;102A)と前記第2ドレイン側延出部(24B;102B)との間に位置する第2ベース部(24C;102C)をさらに含む、付記A3またはA4に記載の窒化物半導体装置。
【0136】
(付記A8)
前記第1ソース側延出部(22A)と前記第2ソース側延出部(24A;102A)とは、前記ソースコンタクト(18A)に向かって延出する方向に同じ幅(W1,W3)を有し、
前記第1ドレイン側延出部(22B)と前記第2ドレイン側延出部(24B;102B)とは、前記ドレインコンタクト(18B)に向かって延出する方向に同じ幅(W2,W4)を有する、付記A7に記載の窒化物半導体装置。
【0137】
(付記A9)
前記第2ソース側延出部(24A)と前記第2ドレイン側延出部(24B)とは、前記第2ベース部(24C)と同じ厚さ(D2)を有する、付記A7またはA8に記載の窒化物半導体装置。
【0138】
(付記A10)
前記第1ソース側延出部(22A)と前記第1ドレイン側延出部(22B)とは、前記第1ベース部(22C)と同じ厚さ(D1)を有する、付記A6~A9のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置。
【0139】
(付記A11)
前記第2ソース側延出部(102A)と前記第2ドレイン側延出部(102B)とは、前記第2ベース部(102C)よりも小さな厚さを有する、付記A7またはA8に記載の窒化物半導体装置。
【0140】
(付記A12)
前記第1ステップ層(22;402)は、前記ゲート層(26;302)の下方に配置されたベース部(22C)を含み、
前記第1延出部(22A/22B)は、前記ベース部(22C)から延出しており、
前記第2ステップ層(202)は、前記ベース部(22C)上のみに形成されている、付記A1またはA2に記載の窒化物半導体装置。
【0141】
(付記A13)
前記第2ステップ層(24;102;202)は、前記電子供給層(18)よりも小さな厚さ(D2)を有し、かつ前記電子供給層(18)よりも小さなバンドギャップを有する、付記A1~A12のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置。
【0142】
(付記A14)
前記第1ステップ層(22;402)および前記第2ステップ層(24;102;202)のうちの少なくとも一つがアクセプタ型不純物を含む、付記A1~A13のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置。
【0143】
(付記A15)
前記第1ステップ層(22;402)は、前記ゲート層(26;302)よりも小さな厚さ(D1)を有する、付記A1~A14のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置。
【0144】
(付記A16)
前記ゲート層(302)は、前記第2ステップ層(24;102;202)上に前記ゲート層(302)が積層される方向に互いに離間した2つ以上の分割層(302A,302B)によって構成されており、
前記ゲート層(302)の前記2つ以上の分割層(302A,302B)のうち隣り合う2つの分割層(302A,302B)の間に各々介在し、前記ゲート層(302)の各分割層(302A,302B)よりも大きなバンドギャップを有する1つ以上の窒化物半導体層(304)をさらに備える付記A1~A15のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置。
【0145】
(付記A17)
前記第1ステップ層(402)は、前記電子供給層(18)上に前記第1ステップ層(402)が積層される方向に互いに離間した2つ以上の分割層(402A,402B)によって構成されており、
前記第1ステップ層(402)の前記2つ以上の分割層(402A,402B)のうち隣り合う2つの分割層(402A,402B)の間に各々介在し、前記第1ステップ層(402)の各分割層(402A,402B)よりも大きなバンドギャップを有する1つ以上の窒化物半導体層(404)をさらに備える付記A1~A16のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置。
【0146】
(付記A18)
前記電子走行層(16)はGaN層であり、
前記電子供給層(18)はAlGaN層であり、
前記第1ステップ層(22;402)はGaN層であり、
前記第2ステップ層(24;102;202)は、前記電子供給層(18)よりも低いAl組成を有するAlGaN層であり、
前記ゲート層(26;302)は、MgおよびZnのうちの少なくとも一つをアクセプタ型不純物として含むGaN層である、付記A1~A17のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置。
【0147】
(付記A19)
前記電子供給層(18)はAlGa1-xN層(0.1<x<0.3)であり、
前記第2ステップ層(24;102;202)はAlGa1-yN層(0.05<y<x)である、付記A18に記載の窒化物半導体装置。
【0148】
(付記A20)
前記第1ステップ層(22;402)および前記第2ステップ層(24;102;202)のうちの少なくとも一つは、MgおよびZnのうちの少なくとも一つをアクセプタ型不純物として含む、付記A18またはA19に記載の窒化物半導体装置。
【0149】
(付記A21)
前記電子供給層(18)の厚さ(D4)が20nm以下であり、前記第2ステップ層(24;102;202)の厚さ(D2)が10nm以下である、付記A1~A20のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置。
【0150】
(付記A22)
前記電子供給層(18)の厚さ(D4)が15nm以下であり、前記第2ステップ層(24;102;202)の厚さ(D2)が7nm以下である、付記A21に記載の窒化物半導体装置。
【0151】
(付記B1)
電子走行層(16)を構成する第1窒化物半導体層(52)を形成すること、
前記第1窒化物半導体層(52)よりも大きなバンドギャップを有し、電子供給層(18)を構成する第2窒化物半導体層(54)を前記第1窒化物半導体層(52)上に形成すること、
前記第2窒化物半導体層(54)よりも小さなバンドギャップを有する第3窒化物半導体層(56)を前記第2窒化物半導体層(54)上に形成すること、
前記第3窒化物半導体層(56)よりも大きなバンドギャップを有する第4窒化物半導体層(58)を前記第3窒化物半導体層(56)上に形成すること、
前記第4窒化物半導体層(58)よりも小さなバンドギャップを有し、アクセプタ型不純物を含む第5窒化物半導体層(60)を前記第4窒化物半導体層(58)上に形成すること、
前記第5窒化物半導体層(60)上にゲート電極(28)を形成すること、
前記第5窒化物半導体層(60)からゲート層(26;302)を形成することであって、前記ゲート電極(28)が前記ゲート層(26;302)上に位置するように前記ゲート層(26;302)を形成すること、
前記電子供給層(18)上の一部に位置する第1ステップ層(22;402)と前記第1ステップ層(22;402)上に位置する第2ステップ層(24;102;202)とを形成することであって、前記第4窒化物半導体層(58)から前記第2ステップ層(24;102;202)を形成した後、前記第3窒化物半導体層(56)から前記第1ステップ層(22;402)を形成すること、
前記電子供給層(18)と接するソース電極(32)およびドレイン電極(34)を形成すること、
を備え、
前記第3窒化物半導体層(56)から前記第1ステップ層(22;402)を形成することは、前記第1ステップ層(22;402)に、平面視において前記ゲート層(26;302)の外側に延出する第1延出部(22A/22B)を形成することを含む、窒化物半導体装置の製造方法。
【0152】
(付記B2)
前記第4窒化物半導体層(58)から前記第2ステップ層(24;102)を形成することは、前記第2ステップ層(24;102)に、平面視において前記ゲート層(26;302)の外側に延出する第2延出部(24A/24B;102A/102B)を形成することを含む、付記B1に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【0153】
(付記B3)
前記第1延出部(22A/22B)は第1の延出幅(W1/W2)で形成されており、
前記第2延出部(24A/24B;102A/102B)は、前記第1の延出幅(W1/W2)と同じ第2の延出幅(W3/W4)で形成されている、付記B2に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【0154】
(付記B4)
前記第5窒化物半導体層(60)から前記ゲート層(26)を形成することは、前記第5窒化物半導体層(60)を選択的にエッチングして前記ゲート層(26;302)を形成することを含み、
前記第5窒化物半導体層(60)をエッチングすることは、
第1エッチング工程で前記第5窒化物半導体層(60)のエッチングを開始すること、
前記第4窒化物半導体層(58)の上面が露出される前に、前記第1エッチング工程から第2エッチング工程に移行すること、
前記第4窒化物半導体層(58)をエッチングストップ層として用いて前記第2エッチング工程で前記第5窒化物半導体層(60)のエッチングを終了すること、
を含み、
前記第2エッチング工程は、前記第1エッチング工程に比べて前記第4窒化物半導体層(58)に対する前記第5窒化物半導体層(60)のエッチング選択比が高いエッチング条件を有する、付記B1~B3のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【0155】
(付記B5)
前記第1エッチング工程は、塩素系ガスに希釈ガスを添加した混合ガスを第1エッチングガスとして用いたドライエッチング工程であり、
前記希釈ガスは、窒素含有ガスまたはアルゴンガスを含み、
前記第2エッチング工程は、塩素系ガスに選択比調整ガスを添加した混合ガスを第2エッチングガスとして用いたドライエッチング工程であり、
前記選択比調整ガスは、フッ素含有ガスまたは酸素含有ガスを含む、付記B4に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【0156】
(付記B6)
前記第1エッチング工程および前記第2エッチング工程の各々における前記ドライエッチング工程は、誘導結合性プラズマ(ICP)エッチング装置を用いて実施され、
前記第2エッチング工程では、前記誘導結合性プラズマ(ICP)エッチング装置のバイアス電源によるイオン引き込み電力が5ワット(W)未満に設定される、付記B5に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【0157】
(付記B7)
前記第2エッチング工程における前記エッチング選択比が10以上に設定される、付記B4~B6のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【0158】
(付記B8)
前記第4窒化物半導体層(58)から前記第2ステップ層(24;102;202)を形成した後、前記第3窒化物半導体層(56)から前記第1ステップ層(22)を形成することは、
第1エッチング工程で前記第4窒化物半導体層(58)のエッチングを開始すること、
前記電子供給層(18)に相当する前記第2窒化物半導体層(54)の上面が露出される前に、前記第1エッチング工程から第2エッチング工程に移行すること、
前記第2窒化物半導体層(54)をエッチングストップ層として用いて前記第2エッチング工程で前記第3窒化物半導体層(56)のエッチングを終了すること、
を含み、
前記第2エッチング工程は、前記第1エッチング工程に比べて前記第2窒化物半導体層(54)に対する前記第3窒化物半導体層(56)のエッチング選択比が高いエッチング条件を有する、付記B1~B3のうちのいずれか一つに記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【0159】
以上の説明は単に例示である。本開示の技術を説明する目的のために列挙された構成要素および方法(製造プロセス)以外に、より多くの考えられる組み合わせおよび置換が可能であることを当業者は認識し得る。本開示は、特許請求の範囲を含む本開示の範囲内に含まれるすべての代替、変形、および変更を包含することが意図される。
【符号の説明】
【0160】
10,100,200,300,400…窒化物半導体装置
12…基板
14…バッファ層
16…電子走行層
18…電子供給層
22,402…第1ステップ層
22A…第1ステップ層のソース側延出部(第1ソース側延出部、第1延出部)
22B…第1ステップ層のドレイン側延出部(第1ドレイン側延出部、第1延出部)
24,102,202…第2ステップ層
24A,102A…第2ステップ層のソース側延出部(第2ソース側延出部、第2延出部)
24B,102B…第2ステップ層のドレイン側延出部(第2ドレイン側延出部、第2延出部)
26,302…ゲート層
28…ゲート電極
32…ソース電極
34…ドレイン電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18