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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】ダストカバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/16 20060101AFI20241015BHJP
   F16J 15/52 20060101ALI20241015BHJP
   F16J 3/04 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
B62D1/16
F16J15/52 C
F16J3/04 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020200569
(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公開番号】P2021091398
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2019220294
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 誠一
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-006268(JP,A)
【文献】特開2005-240932(JP,A)
【文献】国際公開第2005/068277(WO,A1)
【文献】特開2018-017278(JP,A)
【文献】特開2010-149776(JP,A)
【文献】特開2000-052360(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0099049(US,A1)
【文献】中国実用新案第201824966(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/16
F16J 15/52
F16J 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダッシュパネルの筒状部材を貫通するステアリングシャフトの外周面に取り付けられるブッシュと、
前記筒状部材と前記ブッシュとの間の隙間を塞ぐ環状のベローズと、を備え、
前記ベローズは、内周側の端部が前記ブッシュの外周側の端部よりも内周側に位置し且つ車室側の端部が前記ブッシュの車室側の端部よりも車室側に位置するシール部材を有
前記シール部材は、前記内周側の端部から外周側に向けて延びるスリットを有し、
前記シール部材の前記内周側の端部は、前記ブッシュの内周側の端部よりも内周側に位置する、
ダストカバー。
【請求項2】
前記ブッシュは、外周側に突出するフランジを備え、
前記シール部材の内周面は、前記フランジに接する接触部を有する、
請求項1に記載のダストカバー。
【請求項3】
前記シール部材の前記接触部は、外周側に向けて凹む凹溝を有し、
前記ブッシュの前記フランジは、前記接触部の前記凹溝に嵌合する、
請求項に記載のダストカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアリングシャフトとダッシュパネルとの間の隙間に配置されるダストカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリングシャフトは、車室とエンジンルームとを隔てるダッシュパネルの貫通部を貫通している。ステアリングホイールの位置の調整又は走行中の振動等に伴ってステアリングシャフトが移動するため、ステアリングシャフトとダッシュパネルの貫通部との間には所定の隙間が設けられる。その一方、粉塵等の異物などを車室内へ侵入することを防止する必要がある。このため、ステアリングシャフトとダッシュパネルの貫通部との間の隙間にダストカバーが設けられる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-6268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたダストカバーにおいては、粉塵等の車室内への侵入を防止するシールリップをブッシュに加硫接着によって固定している。しかし、加硫接着は、ブッシュへの接着剤の塗布工程、及び、シールリップをブッシュにインサート成形する成形工程などを要し、また、加硫工程に長時間かかるため、シールリップの製造が困難であるという問題があった。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、シール部材の製造が容易なダストカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様のダストカバーは、ダッシュパネルの筒状部材を貫通するステアリングシャフトの外周面に取り付けられるブッシュと、前記筒状部材と前記ブッシュとの間の隙間を塞ぐ環状のベローズと、を備え、前記ベローズは、内周側の端部が前記ブッシュの外周側の端部よりも内周側に位置し且つ車室側の端部が前記ブッシュの車室側の端部よりも車室側に位置するシール部材を有する。このように、ベローズには、シール部材が一体に設けられる。従って、従来のように加硫接着でシール部材をブッシュに固定する場合と比較して、本開示では、接着材の塗布工程、及び、シール部材のインサート成形工程などが省略されるため、シール部材の製造が容易になるというメリットがある。
【0007】
ダストカバーの望ましい態様として、前記シール部材の内周側の端部は、前記ブッシュの内周側の端部よりも外周側に位置させてもよい。これにより、シール部材の内周側の端部とステアリングシャフトとの間で生じるスティックスリップによる異音が生じにくいというメリットがある。なお、前記シール部材の内周側の端部とステアリングシャフトとの間に間隙が設けられるが、当該間隙の大きさを調整することにより、粉塵等の車室内への侵入を防止することができる。
【0008】
ダストカバーの望ましい態様として、前記シール部材は、前記内周側の端部から外周側に向けて延びるスリットを有し、前記シール部材の内周側の端部は、前記ブッシュの内周側の端部よりも内周側に位置させてもよい。これにより、シール部材の内周側の端部は、ステアリングシャフトの外周面と接する。しかし、シールリップは、スリットを備えるため、スリットがないシールリップよりも剛性が低い。以上より、粉塵等の異物などが車室内へ侵入することを防止することができると共に、シール部材の内周側の端部とステアリングシャフトとのスティックスリップによる異音の発生を抑制することが可能となる。
【0009】
ダストカバーの望ましい態様として、前記ブッシュは、外周側に突出するフランジを備え、前記シール部材の内周面は、前記フランジに接する接触部を有してもよい。これにより、シール部材がフランジによって径方向に支持されるため、シール部材の端部とステアリングシャフトとの間の間隙をより確実に保つことが可能となる。
【0010】
ダストカバーの望ましい態様として、前記シール部材の前記接触部は、外周側に向けて凹む凹溝を有し、前記ブッシュの前記フランジは、前記接触部の前記凹溝に嵌合させてもよい。これにより、シール部材の軸方向位置を一定に保つことが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、シール部材の製造が容易なダストカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態のステアリング装置の模式図である。
図2図2は、実施形態のステアリング装置の斜視図である。
図3図3は、車両に取り付けられたダストカバーの断面図である。
図4図4は、実施形態のバンドの斜視図である。
図5図5は、実施形態のダストカバーの正面図である。
図6図6は、図5におけるA-A断面図である。
図7図7は、図6の一部を拡大した断面図である。
図8図8は、第1変形例によるシールリップを拡大した断面図である。
図9図9は、第2変形例によるダストカバーの断面図である。
図10図10は、第3変形例によるダストカバーの正面図である。
図11図11は、図10におけるB-B断面図である。
図12図12は、図11の一部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0014】
[実施形態]
図1は、実施形態のステアリング装置の模式図である。図2は、実施形態のステアリング装置の斜視図である。図1に示すように、ステアリング装置80は、ステアリングホイール81と、第1ステアリングシャフト82と、操舵力アシスト機構83と、第1ユニバーサルジョイント84と、第2ステアリングシャフト85と、第2ユニバーサルジョイント86と、を備え、第3ステアリングシャフト87に接合されている。なお、図面及び以下の説明においては、ステアリング装置80が搭載された車両における前方は単に前方FR又は車室外側OUTと記載され、車両における後方は単に後方RR又は車室側INと記載される。車室外側OUTは、車両のエンジンルーム側でもある。
【0015】
図1に示すように、第1ステアリングシャフト82は、入力軸82aと、出力軸82bとを備える。入力軸82aの一方の端部がステアリングホイール81に連結され、入力軸82aの他方の端部が出力軸82bに連結される。また、出力軸82bの一方の端部が入力軸82aに連結され、出力軸82bの他方の端部が第1ユニバーサルジョイント84に連結される。
【0016】
図1に示すように、第2ステアリングシャフト85(ステアリングシャフト)は、第1ユニバーサルジョイント84と第2ユニバーサルジョイント86とを連結している。第2ステアリングシャフト85の一方の端部が第1ユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部が第2ユニバーサルジョイント86に連結される。第3ステアリングシャフト87の一方の端部が第2ユニバーサルジョイント86に連結され、第3ステアリングシャフト87の他方の端部がステアリングギヤ88に連結される。図2に示すように、第2ステアリングシャフト85は、ダッシュパネル10を貫通している。ダッシュパネル10は、車室とエンジンルームとを隔てる仕切り板である。
【0017】
図1に示すように、ステアリングギヤ88は、ピニオン88aと、ラック88bとを備える。ピニオン88aは、第3ステアリングシャフト87に連結される。ラック88bは、ピニオン88aに噛み合う。ステアリングギヤ88は、ピニオン88aに伝達された回転運動をラック88bで直進運動に変換する。ラック88bは、タイロッド89に連結される。ラック88bが移動することで車輪の角度が変化する。
【0018】
図1に示すように、操舵力アシスト機構83は、減速装置92と、電動モータ93とを備える。減速装置92は、例えばウォーム減速装置である。電動モータ93で生じたトルクは、減速装置92の内部のウォームを介してウォームホイールに伝達され、ウォームホイールを回転させる。減速装置92は、ウォーム及びウォームホイールによって、電動モータ93で生じたトルクを増加させる。そして、減速装置92は、出力軸82bに補助操舵トルクを与える。すなわち、ステアリング装置80はコラムアシスト方式である。
【0019】
図1に示すように、ステアリング装置80は、ECU(Electronic Control Unit)90と、トルクセンサ94と、車速センサ95と、を備える。電動モータ93、トルクセンサ94及び車速センサ95は、ECU90と電気的に接続される。トルクセンサ94は、入力軸82aに伝達された操舵トルクをCAN(Controller Area Network)通信によりECU90に出力する。車速センサ95は、ステアリング装置80が搭載される車体の走行速度(車速)を検出する。車速センサ95は、車体に備えられ、車速をCAN通信によりECU90に出力する。
【0020】
ECU90は、電動モータ93の動作を制御する。ECU90は、トルクセンサ94及び車速センサ95のそれぞれから信号を取得する。ECU90には、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置99(例えば車載のバッテリ)から電力が供給される。ECU90は、操舵トルク及び車速に基づいて補助操舵指令値を算出する。ECU90は、補助操舵指令値に基づいて電動モータ93へ供給する電力値を調節する。ECU90は、電動モータ93から誘起電圧の情報又は電動モータ93に設けられたレゾルバ等から出力される情報を取得する。ECU90が電動モータ93を制御することで、ステアリングホイール81の操作に要する力が小さくなる。
【0021】
図3は、車両に取り付けられたダストカバーの断面図である。図4は、実施形態のバンドの斜視図である。図5は、実施形態のダストカバーの正面図である。図6は、図5におけるA-A断面図である。図7は、図6の一部を拡大した断面図である。
【0022】
以下の説明において、第2ステアリングシャフト85の中心軸Zに沿う方向は軸方向と記載され、軸方向に対する直交方向は径方向と記載され、中心軸Zを中心とした円に沿う方向は周方向と記載される。
【0023】
図3に示すように、ダッシュパネル10は、筒状部材101を備える。筒状部材101の内周面は、第2ステアリングシャフト85の外周面と対向する。第2ステアリングシャフト85は、ステアリングホイール81の位置の調整又は走行中の振動等に伴って移動することがある。このため、筒状部材101の内周面と第2ステアリングシャフト85の外周面との間には環状の隙間が設けられている。この隙間を塞ぐために、ステアリング装置80は、ダストカバー1を備える。
【0024】
ダストカバー1は、筒状部材101の内周面に嵌められている。筒状部材101の外周面に取り付けられたバンド7によって、ダストカバー1が筒状部材101に固定されている。筒状部材101は、バンド7で締め付けられることで変形する。例えば、筒状部材101は金属で形成されている。筒状部材101が金属である場合、筒状部材101は図3に示すように軸方向に沿ったスリット102を有することが好ましい。筒状部材101がスリット102を有することで、筒状部材101がバンド7で締め付けられた時に容易に変形する。
【0025】
図4に示すように、バンド7は、内側部材71と、外側部材72と、を備える。内側部材71及び外側部材72は、例えば金属で形成されている。外側部材72が内側部材71の外周面に重なっている。内側部材71は、外周面から突出する爪715と、把持部711と、を備える。外側部材72は、長穴720と、把持部721と、を備える。爪715は、長穴720の内側に位置する。把持部711及び把持部721に互いに近付く方向の力が加えられると、内側部材71の内径が小さくなっていく。内側部材71の内径が所定の大きさになると、爪715が長穴720の端部に接する。これにより、内側部材71の内径が所定の大きさ以下にならない。内側部材71の内径が所定の大きさになると、例えば長穴720の内壁からストッパーが突出することで爪715が位置決めされる。これにより、内側部材71及び外側部材72が相対的に移動しなくなるので、バンド7が筒状部材101を締め付けた状態が保たれる。
【0026】
図5及び図6に示すように、ダストカバー1は、取付部材6と、ベローズ2と、ブッシュ5と、シールリップ11と、を備える。取付部材6、ベローズ2、ブッシュ5、及びシールリップ11は、それぞれ環状に形成されている。
【0027】
取付部材6は、ベローズ2を図3に示す筒状部材101に押し付ける部材である。取付部材6は、例えばアルミニウム合金で形成される。取付部材6は、合成樹脂で形成されていてもよい。図6に示すように、取付部材6は、本体部61と、フランジ部62と、を備える。本体部61は、第2ステアリングシャフト85の中心軸Zの周方向に沿って延びる円筒状である。本体部61は、外周面611を有する。外周面611は、中心軸Zを中心として周方向に延びる円筒面である。フランジ部62は、本体部61から径方向外側(外周側)に向かって突出する。フランジ部62には、軸方向に貫通する貫通孔621が設けられる。
【0028】
ベローズ2は、例えばゴムで形成されている。ベローズ2は、筒状部材101とブッシュ5との間の隙間を塞ぐ環状の部材である。図6に示すように、ベローズ2は、ブッシュ嵌合部20と、第1外縁部22と、第1可撓部21と、縦壁部222と、抜止め部材223と、第2外縁部26と、第2可撓部25と、シールリップ100と、を備える。
【0029】
ブッシュ嵌合部20は、ベローズ2のうちの径方向内側の端部に位置している。ブッシュ嵌合部20は、ブッシュ5に嵌まる。即ち、ブッシュ嵌合部20は、ブッシュ5の外周面に接する。
【0030】
図6に示すように、取付部材6の本体部61の外周面611には、ベローズ2の第1外縁部22が接している。第1可撓部21は、ブッシュ嵌合部20と第1外縁部22とを連結している。中心軸Zを含む断面において、第1可撓部21は略U字状である。第1外縁部22の外周面には、径方向の内側に凹む凹部221が設けられる。第1外縁部22は、凹部221の先端側に、径方向の外側に向かって突出する縦壁部222を有する。縦壁部222は、軸方向に延びる抜止め部材223を有する。抜止め部材223は、フランジ部62の貫通孔621に嵌められる。抜止め部材223は、縦壁部222をフランジ部62に固定する部材である。
【0031】
また、第2外縁部26は、第1外縁部22の外周側に設けられる。第2可撓部25は、ブッシュ嵌合部20と第2外縁部26とを連結している。中心軸Zを含む断面において、第2可撓部25は略U字状である。第2外縁部26は、第2可撓部25の端部に配置される。第2外縁部26は、径方向の内側に向かって突出する凸部261を有する。凸部261は、第1外縁部22の凹部221に嵌められる。
【0032】
ブッシュ5は、第2ステアリングシャフト85を回転可能に支持する軸受である。ブッシュ5は、ナイロン等の合成樹脂で形成されている。
【0033】
図7に示すように、ブッシュ5は、第2ステアリングシャフト85の中心軸Zの軸回りの周方向に沿って円環状に延びる。ブッシュ5は、基部50と、外側フランジ51と、内側フランジ52と、複数の潤滑剤溝59と、を備える。
【0034】
基部50は、第2ステアリングシャフト85の中心軸Zの軸回りの周方向に沿って円筒状に延びる。外側フランジ51は、基部50の車室外側の端部から径方向外側(外周側)に突出している。内側フランジ52は、基部50の車室側の端部から径方向外側(外周側)に突出している。固定部54は、ブッシュ5の外周側に設けられる。即ち、基部50、外側フランジ51及び内側フランジ52で固定部54が形成される。固定部54には、ベローズ2のブッシュ嵌合部20が嵌まる。潤滑剤溝59は、基部50の内周面に設けられた溝であって、例えば軸方向に沿っている。潤滑剤溝59は、ブッシュ5の軸方向の全長に亘っている。例えば複数の潤滑剤溝59が周方向で等間隔に配置されている。潤滑剤溝59には、潤滑剤としてのグリースが充填されている。これにより、ブッシュ5の内周面53と第2ステアリングシャフト85の外周面85aとの間の摩擦が低減される。
【0035】
シールリップ11は、第2ステアリングシャフト85及びブッシュ5の間の隙間とエンジンルームとを隔てる密封部材である。シールリップ11は、例えばニトリルゴム(NBR)であり、加硫接着によりブッシュ5と一体となっている。図7に示すように、シールリップ11は、ブッシュ5の第1の端面551から車室外側に突出している。第1の端面551は、ブッシュ5の車室外側の端面である。第2ステアリングシャフト85の外周面85aに接する前におけるシールリップ11の最小内径は、第2ステアリングシャフト85の外径より小さい。このため、シールリップ11が第2ステアリングシャフト85の外周面85aに接すると、シールリップ11が変形する。シールリップ11の弾性により、シールリップ11と第2ステアリングシャフト85との間の隙間が生じにくくなっている。このため、シールリップ11は、エンジンルームからブッシュ5の内側への異物の侵入を防ぐことができると共に、ブッシュ5の内側からエンジンルームへのグリースの漏洩を防ぐことができる。また、シールリップ11は、エンジンルームで生じる音の車室への漏洩を抑制することができる。
【0036】
また、ブッシュ5の車室側の端部は、第2の端面552である。即ち、内側フランジ52は、車室外側の端面521と、外周面522と、車室側の端面である第2の端面552と、を備える。換言すると、端面521と、外周面522と、第2の端面552とで囲まれる断面矩形状の部位が内側フランジ52である。外周面522は、ブッシュ5の外周側の端部である。なお、ブッシュ5の内周面53は、ブッシュ5の内周側の端部である。
【0037】
さらに、第1可撓部21の車室側の縦壁部211は、径方向(図7の上下方向)に延びる。縦壁部211から車室側(図7の右方向)に向けてシールリップ100(シール部材)が延びている。シールリップ100は、ベローズ2の縦壁部211と一体成形されている。シールリップ100は、ベローズ2と同じゴムで形成されている。シールリップ100は、本体部110と、先端部120と、を備える。本体部110は、縦壁部211から軸方向に沿って延びる。
【0038】
先端部120は、外周面122及び内周面123を有する。先端部120は、中心軸Zを含む断面において、車室側に行くに従って先細りする。先端部120の端縁121は、シールリップ100の内周側の端部であり、また、シールリップ100の車室側の端部でもある。先端部120の端縁121は、ブッシュ5の内側フランジ52の外周面522よりも径方向内側(内周側)に位置する。また、先端部120の端縁121は、ブッシュ5の第2の端面552よりも車室側に位置する。さらに、先端部120の端縁121は、ブッシュ5の内周面53よりも径方向外側(外周側)に位置する。これにより、先端部120の端縁121が第2ステアリングシャフト85の外周面85aよりも外周側に位置するため、端縁121と第2ステアリングシャフト85の外周面85aとの間に間隙が設けられる。シールリップ100は、内周側に接触部140を有する。接触部140は、凹溝130である。凹溝130は、第1内周面131と、第2内周面132と、第3内周面133と、で囲まれた部位である。中心軸Zを含む断面において、第1内周面131及び第3内周面133は、径方向に延び、第2内周面132は、軸方向に沿って延びる。内側フランジ52の外周端部に凹溝130が嵌合される。詳細には、第2内周面132は、内側フランジ52の外周面522に接する。第1内周面131は、端面521に接する。第3内周面133は、第2の端面552に接する。
【0039】
以上で説明したように、ダストカバー1は、ブッシュ5とベローズ2とを備える。ベローズ2には、シールリップ100(シール部材)が一体成形されている。即ち、ベローズ2は、シールリップ100(シール部材)を有する。シールリップ100においては、先端部120の端縁121(内周側の端部)がブッシュ5の外周面522(ブッシュ5の外周側の端部)よりも内周側に位置し且つ端縁121(車室側の端部)がブッシュ5の第2の端面552(ブッシュ5の車室側の端部)よりも車室側に位置する。
【0040】
このように、ベローズ2には、シールリップ100が一体成形される。従って、従来のように加硫接着でシールリップをブッシュに固定する場合と比較して、本実施形態では、接着材の塗布工程、及び、シールリップのインサート成形工程などが省略されるため、シールリップ100の成形(製造)が容易になる。従って、シールリップ100の成形作業を安価なコストで行えるというメリットがある。
【0041】
また、先端部120の端縁121(内周側の端部)は、ブッシュ5の内周面53(ブッシュ5の内周側の端部)よりも外周側に位置する。これにより、端縁121と第2ステアリングシャフト85の外周面85aとの間に間隙が設けられる。ここで、端縁121と第2ステアリングシャフト85の外周面85aとが接していると、第2ステアリングシャフト85の回転によって、端縁121と外周面85aとによってスティックスリップが生じる場合がある。ここで、スティックスリップとは、摩擦面間に生ずる微視的な摩擦面の付着と滑りとの繰り返しによって引き起こされる自励振動のことである。特に、シールリップ100が軟らかいゴムで形成されている場合に生じやすい。しかし、本実施形態では、シールリップ100の端縁121と第2ステアリングシャフト85の外周面85aとの間に間隙が設けられるため、スティックスリップによる異音が生じにくいというメリットがある。なお、第2ステアリングシャフト85の過大な軸偏心の際にのみシールリップ100と第2ステアリングシャフト85とが部分接触することでブッシュ5の軸支持剛性を高め、車室外側のシールリップ11の防水シール機能をサポートできる。さらに、シールリップ100の端縁121と第2ステアリングシャフト85の外周面85aとの間に間隙が設けられるが、当該間隙の大きさを調整することにより、第2ステアリングシャフト85の倒れによる外周面85aとシールリップ100の端縁121との接触を防止することができ、防水性をあまり必要としない車室側において簡潔なシール構造で実用上十分な防塵性能を得ることができる。
【0042】
そして、ブッシュ5は、外周側に突出する内側フランジ52(フランジ)を備え、シールリップ100(シール部材)の内周面123は、内側フランジ52に接する接触部140を有する。これにより、シールリップ100が内側フランジ52によって径方向に支持されるため、シールリップ100の端縁121と第2ステアリングシャフト85の外周面85aとの間の間隙をより確実に保つことが可能となる。
【0043】
接触部140は、外周側に向けて凹む凹溝130を有し、内側フランジ52(フランジ)は、凹溝130に嵌合する。これにより、シールリップ100の軸方向位置を一定に保つことが可能となる。
【0044】
[第1変形例]
次いで、第1変形例について説明する。図8は、第1変形例によるシールリップを拡大した断面図である。第1可撓部21の車室側の縦壁部211は、径方向(図8の上下方向)に延びる。縦壁部211から車室側に向けてシールリップ100A(シール部材)が延びている。シールリップ100Aは、本体部110Aと、先端部120Aと、を備える。本体部110Aは、縦壁部211から軸方向に沿って延びる。先端部120Aは、外周面122及び内周面123Aを有する。先端部120Aは、中心軸Zを含む断面において、車室側に行くに従って先細りする。また、先端部120Aの端縁121Aは、ブッシュ5の内側フランジ52の外周面522よりも径方向内側(内周側)に位置する。また、先端部120Aの端縁121Aは、ブッシュ5の第2の端面552よりも車室側に位置する。さらに、先端部120Aの端縁121Aは、ブッシュ5の内周面53よりも径方向外側(外周側)に位置する。
【0045】
また、シールリップ100Aは、内周側に接触部140Aを有する。接触部140Aは、第1内周面131A及び第2内周面132Aを有する。中心軸Zを含む断面において、第1内周面131Aは、径方向に延び、第2内周面132Aは、軸方向に沿って延びる。第1内周面131Aは、端面521に接する。第2内周面132Aは、内側フランジ52の外周面522に接する。
【0046】
なお、第1変形例においては、実施形態のような凹溝130がなく、接触部140Aである第1内周面131A及び第2内周面132Aが内側フランジ52に接している。
【0047】
以上で説明したように、第1変形例において、ブッシュ5は、外周側に突出する内側フランジ52(フランジ)を備え、シールリップ100A(シール部材)の内周面123Aは、内側フランジ52に接する接触部140Aを有する。特に、第1変形例においては、実施形態のような凹溝130がなく、接触部140Aである第1内周面131A及び第2内周面132Aが内側フランジ52に接している。これにより、シールリップ100Aが軸方向に移動可能となり、且つ、シールリップ100Aが内側フランジ52によって径方向に支持されることが可能となる。
【0048】
[第2変形例]
次いで、第2変形例について説明する。図9は、第2変形例によるダストカバーの断面図である。図9に示すように、ダストカバー1Aにおける取付部材6Aは、本体部61Aと、フランジ部62Aと、を備える。本体部61Aは、第2ステアリングシャフト85の中心軸Zの周方向に沿って延びる円筒状である。本体部61Aは、外周面611Aを有する。外周面611Aには、内周側に凹む凹部612Aが設けられる。フランジ部62Aは、本体部61Aから径方向外側(外周側)に向けて突出する。
【0049】
ベローズ2Aの第1可撓部21Aの第1外縁部22Aは、径方向内側(内周側)に突出する凸部を有する。取付部材6Aの本体部61Aの凹部612Aには、ベローズ2Aの第1外縁部22Aが嵌合する。また、第2可撓部25Aの端部は、第2外縁部26Aを有する。第2外縁部26Aは、内周側に向かって突出する凸部を有する。第2外縁部26Aは、第1外縁部22Aとフランジ部62Aとの間に嵌められる。
【0050】
なお、第2変形例のシールリップ100は、実施形態で説明したシールリップ100と同一である。
【0051】
以上で説明したように、第2変形例では、実施形態及び第1変形例に対して、ベローズと取付部材6との固定構造が相違する。しかし、本発明は、ベローズと取付部材6との固定構造が、実施形態、第1変形例及び第2変形例のいずれの構造でも適用することができる。
【0052】
[第3変形例]
次いで、第3変形例について説明する。図10は、第3変形例によるダストカバーの正面図である。図11は、図10におけるB-B断面図である。図12は、図11の一部を拡大した断面図である。第3変形例は、実施形態に対してシールリップ100B(シール部材)の形状および抜止め部材223の数が相違する。以下に詳細に説明する。
【0053】
前述した実施形態では、抜止め部材223は、ダストカバー1の周方向に沿って等間隔に3つ配置される。これに対し第3変形例においては、ダストカバー1Bは、図10に示すように、4つの抜止め部材223を備える。即ち、抜止め部材223は、ダストカバー1Bの周方向に沿って等間隔に4つ配置される。また、図10に示すように、シールリップ100B(シール部材)は、内周側の端部から外周側に向けて延びるスリット150を備える。従って、スリット150の内周側の端部が開口している。スリット150は、周方向に沿って等間隔に8つ設けられる。なお、本開示においては、スリット150の数は特に限定されず、また、等間隔に配置されなくてもよい。
【0054】
図12に示すように、第1可撓部21の車室側の縦壁部211は、径方向に延びる。縦壁部211から車室側に向けてシールリップ100B(シール部材)が延びている。シールリップ100Bは、ベローズ2Bの縦壁部211と一体成形されている。シールリップ100Bは、ベローズ2と同じゴムで形成されている。シールリップ100Bは、本体部110と、先端部120Bと、を備える。本体部110は、縦壁部211から軸方向に沿って延びる。
【0055】
先端部120Bは、外周面122B及び内周面123Bを有する。先端部120Bは、中心軸Zを含む断面において、車室側に行くに従って先細りする。先端部120Bの端縁121Bは、シールリップ100Bの内周側の端部であり、また、シールリップ100Bの車室側の端部でもある。先端部120Bの端縁121Bは、ブッシュ5の内側フランジ52の外周面522よりも径方向内側(内周側)に位置する。また、先端部120Bの端縁121Bは、ブッシュ5の第2の端面552よりも車室側に位置する。さらに、先端部120Bの端縁121Bは、ブッシュ5の内周面53よりも径方向内側(内周側)に位置する。
【0056】
また、シールリップ100Bは、前述のように、端縁121B(内周側の端部)から外周側に向けてスリット150を有する。スリット150は、本体部110および先端部120Bのうち、先端部120Bの略全体に形成されている。
【0057】
以上説明したように、第3変形例において、先端部120Bの端縁121Bは、ブッシュ5の内周面53よりも径方向内側(内周側)に位置する。また、シールリップ100B(シール部材)は、端縁121B(内周側の端部)から外周側に向けて延びるスリット150を備える。
【0058】
このように、先端部120Bの端縁121Bが第2ステアリングシャフト85の外周面85aよりも内周側に位置するため、端縁121Bと第2ステアリングシャフト85の外周面85aとが接する。以上より、粉塵等の異物などが車室内へ侵入することを防止することができる。さらに、シールリップ100Bは、スリット150を備えるため、スリット150がないシールリップよりも剛性が低い。このため、先端部120Bの端縁121Bが第2ステアリングシャフト85の外周面85aに接した場合における先端部120Bと第2ステアリングシャフト85とのフリクション(摩擦)が低減される。さらに、シールリップ100Bの端縁121Bと第2ステアリングシャフト85とのスティックスリップによる異音の発生を抑制することが可能となる。以上のように、シールリップ100Bの先端部120Bの端縁121Bを第2ステアリングシャフト85の外周面85aよりも内周側に位置させ、且つ、シールリップ100Bにスリット150を形成することによって、粉塵等の異物などが車室内へ侵入することを防止すること、先端部120Bと第2ステアリングシャフト85とのフリクション(摩擦)を低減すること、および、シールリップ100Bの端縁121Bと第2ステアリングシャフト85とのスティックスリップによる異音の発生を抑制すること、を同時に成立させることが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1、1A、1B ダストカバー
2、2A、2B ベローズ
5 ブッシュ
52 内側フランジ(フランジ)
53 内周面(内周側の端部)
100、100A、100B シールリップ(シール部材)
121、121A、121B 端縁(内周側の端部、車室側の端部)
123、123A、123B 内周面
130 凹溝
140、140A 接触部
522 外周面(外周側の端部)
552 第2の端面(車室側の端部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12