(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20241015BHJP
C10M 101/02 20060101ALI20241015BHJP
C10M 129/68 20060101ALI20241015BHJP
C10M 137/10 20060101ALI20241015BHJP
C10M 139/00 20060101ALI20241015BHJP
C10M 129/72 20060101ALI20241015BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20241015BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20241015BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20241015BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20241015BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M101/02
C10M129/68
C10M137/10 A
C10M139/00 A
C10M129/72
C10N10:04
C10N40:04
C10N30:06
C10N40:25
(21)【出願番号】P 2020202745
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】常岡 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】楠原 慎太郎
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-102486(JP,A)
【文献】特開2017-160366(JP,A)
【文献】特開2008-013685(JP,A)
【文献】特表2017-514983(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0204347(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱油系基油を含む潤滑油基油と、
潤滑油組成物の全量を基準として、
4~15質量%の一価又は多価の脂肪族カルボン酸と一価又は多価の脂肪族アルコールとのエステル化合物と、
リン元素換算で400~1200質量ppmのジアルキルジチオリン酸亜鉛と、
カルシウム元素換算で500~3000質量ppmのカルシウム系清浄剤と、
ホウ素元素換算で50~1000質量ppmのホウ素変性コハク酸イミド系分散剤と、
を含有
し、
前記エステル化合物が、エステル結合を2以上有するエステル化合物であり、
前記エステル化合物が、多価の脂肪族カルボン酸と一価の脂肪族アルコールとのエステル化合物であって、前記一価の脂肪族アルコールの脂肪族基の炭素原子数が8~13であるエステル化合物、又は、一価の脂肪族カルボン酸と多価の脂肪族アルコールとのエステル化合物であって、前記一価の脂肪族カルボン酸の脂肪族基の炭素原子数が8~13であるエステル化合物であり、
二輪自動車4サイクルガソリンエンジンに用いられる、潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二輪自動車4サイクルガソリンエンジン油(潤滑油組成物)は、四輪自動車4サイクルガソリンエンジン用に開発されたエンジン油を転用することが一般に行われている。しかしながら、二輪自動車では、四輪自動車と異なり、エンジン、クラッチシステム、及びトランスミッションの潤滑油を共用しているため、四輪自動車4サイクルガソリンエンジン油をそのまま二輪自動車4サイクルガソリンエンジンに適用すると、動力伝達機構等に支障をきたすおそれがある。特に、四輪自動車用として、強い要望がある省燃費対応4サイクルガソリンエンジン油では、省燃費性の観点から摩擦特性が低減されているが、このような摩擦特性の低減によってクラッチ滑りが発生する場合がある。
【0003】
一方で、二輪自動車4サイクルガソリンエンジンでは、小型であること、高出力であること、高速回転であること、空冷及び/又は水冷方式を採用していること等によって、エンジン油の油温が上昇し易い傾向にある。特に、オフロードバイクにおいては、その傾向が顕著であり、高負荷条件下でのクラッチ滑りを抑制することが求められている。
【0004】
二輪自動車4サイクルガソリンエンジン油としては、例えば、所定の添加剤を所定量含有する潤滑油組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の潤滑油組成物は、省燃費性とクラッチ摩擦特性とを高いレベルで兼ね備えるものではない。
【0007】
そこで、本発明は、省燃費性とクラッチ摩擦特性とを両立することが可能な潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、潤滑油組成物を提供する。当該潤滑油組成物は、鉱油系基油を含む潤滑油基油と、潤滑油組成物の全量を基準として、4~15質量%の一価又は多価の脂肪族カルボン酸と一価又は多価の脂肪族アルコールとのエステル化合物と、リン元素換算で400~1200質量ppmのジアルキルジチオリン酸亜鉛と、カルシウム元素換算で500~3000質量ppmのカルシウム系清浄剤と、ホウ素元素換算で50~1000質量ppmのホウ素化コハク酸イミド系分散剤とを含有する。このような潤滑油組成物によれば、省燃費性とクラッチ摩擦特性とを両立することが可能となる。
【0009】
エステル化合物は、エステル結合を2以上有するエステル化合物であってよい。エステル化合物は、多価の脂肪族カルボン酸と一価の脂肪族アルコールとのエステル化合物であって、一価の脂肪族アルコールの脂肪族基の炭素原子数が8~13であるエステル化合物、又は、一価の脂肪族カルボン酸と多価の脂肪族アルコールとのエステル化合物であって、一価の脂肪族カルボン酸の脂肪族基の炭素原子数が8~13であるエステル化合物であってもよい。エステル化合物としてこのようなエステル化合物を用いることによって、省燃費性とクラッチ摩擦特性とをより高いレベルで両立することが可能となる。
【0010】
当該潤滑油組成物は、省燃費性とクラッチ摩擦特性とを両立することが可能であることから、二輪自動車4サイクルガソリンエンジンに好適に用いることができる。
【0011】
本発明の他の一側面は、上記組成物の、二輪自動車4サイクルガソリンエンジン油としての使用に関する。また、本発明の他の一側面は、上記組成物の、二輪自動車4サイクルガソリンエンジン油の製造のための使用に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、省燃費性とクラッチ摩擦特性とを両立することが可能な潤滑油組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本明細書において、例示する各成分(潤滑油基油、添加剤)等は、特に断らない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。潤滑油組成物中の各成分の含有量は、潤滑油組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、潤滑油組成物中に存在する当該複数の物質の合計の含有量を意味する。各成分の性状は、各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、当該複数の物質の合計の性状を意味する。
【0015】
本明細書において、潤滑油組成物を基準としたときの各元素の含有量は、潤滑油組成物を直接元素分析することによって決定してもよく、添加剤に含まれる元素含有量と仕込み量とから算出することによって決定してもよい。
【0016】
[潤滑油組成物]
一実施形態の潤滑油組成物は、鉱油系基油を含む潤滑油基油と、エステル化合物と、ジアルキルジチオリン酸亜鉛と、カルシウム系清浄剤と、ホウ素化コハク酸イミド系分散剤とを含有する。
【0017】
<潤滑油基油>
(鉱油系基油)
本実施形態の潤滑油組成物は、鉱油系基油を含む潤滑油基油を含有する。鉱油系基油は、通常の潤滑油の分野で使用される鉱油系基油を使用することができる。
【0018】
鉱油系基油としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、又は芳香族系の原油の蒸留によって得られる灯油留分;灯油留分からの抽出操作等により得られるノルマルパラフィン;及びパラフィン系、ナフテン系、又は芳香族系の原油の蒸留によって得られる潤滑油留分、あるいは潤滑油脱ろう工程により得られる、スラックワックス等のワックス及び/又はガストゥリキッド(GTL)プロセス等により得られる、フィッシャートロプシュワックス、GTLワックス等の合成ワックスなどを原料とし、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、水素化異性化、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を1又は2以上適宜組み合わせて精製したパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、ノルマルパラフィン系基油、イソパラフィン系基油、芳香族系基油が挙げられる。
【0019】
鉱油系基油の硫黄分は、基油全量を基準として、好ましくは100質量ppm以下、より好ましくは50質量ppm以下、さらに好ましくは10質量ppm以下である。なお、本明細書において、硫黄分は、JIS K2541「原油及び石油製品-硫黄分試験方法」により測定された値を意味する。
【0020】
鉱油系基油の全芳香族含有量は、基油全量を基準として、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。なお、本明細書において、全芳香族含有量は、石油学会法JPI-5S-49-97「石油製品-炭化水素タイプ試験方法-高速液体クロマトグラフ」で測定される全芳香族の含有量を意味する。
【0021】
潤滑油基油は、鉱油系基油からなるものであってよいが、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の基油をさらに含むことができる。その他の基油としては、例えば、合成系基油(ただし、後述のエステル化合物に対応するエステル系基油を除く。)等が挙げられる。これらの基油を潤滑油基油として含む場合、これらの基油の含有量は本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に制限されないが、例えば、潤滑油基油の全量を基準として、0.01~20質量%であってよい。
【0022】
合成系基油としては、例えば、ポリα-オレフィン又はその水素化物、イソブテンオリゴマー又はその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等が挙げられる。
【0023】
潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは4.0mm2/s以上、より好ましくは4.5mm2/s以上、さらに好ましくは5.0mm2/s以上である。また、潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは20mm2/s以下、より好ましくは15mm2/s以下、さらに好ましくは10mm2/s以下である。潤滑油基油の100℃における動粘度が上記の範囲内であると、適正な粘性を確保でき、実使用温度域において良好な油膜が得られる傾向にある。
【0024】
潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは28mm2/s以上、より好ましくは30mm2/s以上、さらに好ましくは32mm2/s以上である。また、潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは50mm2/s以下、より好ましくは45mm2/s以下、さらに好ましくは40mm2/s以下である。潤滑油基油の40℃における動粘度が上記の範囲内であると、適正な粘性を確保でき、実使用温度域において良好な油膜が得られる傾向にある。
【0025】
潤滑油基油の粘度指数は、好ましくは70以上、より好ましくは100以上、さらに好ましくは120以上である。粘度指数が上記の範囲内であると、外部の温度に対して粘度の安定性が確保されるため、使用時における外部の温度変化に対しても安定的に油膜を形成できる傾向にある。潤滑油基油の粘度指数は、例えば、180以下であってよい。
【0026】
本明細書において、40℃及び100℃における動粘度並びに粘度指数は、それぞれJIS K2283:2000「原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に準拠して測定される値を意味する。
【0027】
潤滑油基油のNOACK蒸発量(250℃、1時間)は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。なお、本明細書において、NOACK蒸発量とは、ASTM D 5800(NOACK試験:250℃、1時間)に準拠して測定した値(蒸発損失量)を意味する。
【0028】
潤滑油組成物における潤滑油基油の含有量は、後述のエステル化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、カルシウム系清浄剤、ホウ素化コハク酸イミド系分散剤、及びその他の添加剤の含有量の残部であってよい。潤滑油基油の含有量は、潤滑油組成物全量を基準として、好ましく40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。潤滑油基油の含有量が40質量%以上であると、粘度が高くなり過ぎることによる省燃費性の低下を防ぐことができる傾向にある。
【0029】
<添加剤>
(エステル化合物)
本実施形態の潤滑油組成物は、一価又は多価の脂肪族カルボン酸と一価又は多価の脂肪族アルコールとのエステル化合物を含有する。エステル化合物は、通常の潤滑油の分野で使用されるエステル化合物を使用することができる。
【0030】
一価の脂肪族カルボン酸は、炭素原子数1~24、炭素原子数2~20、炭素原子数4~16、又は炭素原子数8~13の脂肪族基を有する脂肪族カルボン酸であってよい。一価の脂肪族カルボン酸の脂肪族基は、脂肪族飽和炭化水素基(アルキル基)又は脂肪族不飽和炭化水素基であってよい。これらの炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってよい。一価の脂肪族カルボン酸としては、例えば、メタン酸、エタン酸(酢酸)、プロパン酸(プロピオン酸)、ブタン酸(酪酸、イソ酪酸等)、ペンタン酸(吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸等)、ヘキサン酸(カプロン酸等)、ヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸等)、ノナン酸(ペラルゴン酸等)、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸等)、トリデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸等)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸等)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸等)、ノナデカン酸、イコサン酸、ヘンイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸等の飽和脂肪族カルボン酸;プロペン酸(アクリル酸等)、プロピン酸(プロピオール酸等)、ブテン酸(メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等)、ペンテン酸、ヘキセン酸、へプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸(オレイン酸等)、ノナデセン酸、イコセン酸、ヘンイコセン酸、ドコセン酸、トリコセン酸、テトラコセン酸、ペンタコセン酸、ヘキサコセン酸、ヘプタコセン酸、オクタコセン酸、ノナコセン酸、トリアコンテン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸などが挙げられる。
【0031】
多価の脂肪族カルボン酸は、2価~6価、2~4価、又は2価若しくは3価の脂肪族カルボン酸であってよい。多価の脂肪族カルボン酸は、エタン二酸(シュウ酸)、又は、炭素原子数1~16、炭素原子数2~14、若しくは炭素原子数4~12の(多価の)脂肪族基を有する脂肪族カルボン酸であってよい。多価の脂肪族カルボン酸の脂肪族基は、多価の脂肪族飽和炭化水素基又は多価の脂肪族不飽和炭化水素基であってよい。これらの炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってよい。多価の脂肪族カルボン酸としては、例えば、エタン二酸(シュウ酸)、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、ヘプタン二酸(ピメリン酸)、オクタン二酸(スベリン酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘプタデカン二酸、ヘキサデカン二酸等の飽和脂肪族カルボン酸;ヘキセン二酸、ヘプテン二酸、オクテン二酸、ノネン二酸、デセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸、トリデセン二酸、テトラデセン二酸、ヘプタデセン二酸、ヘキサデセン二酸等の不飽和脂肪族カルボン酸などが挙げられる。
【0032】
一価の脂肪族アルコールは、炭素原子数1~24、炭素原子数2~20、炭素原子数4~16、又は炭素原子数8~13の脂肪族基を有する脂肪族アルコールであってよい。脂肪族アルコールの脂肪族基は、脂肪族飽和炭化水素基(アルキル基)又は脂肪族不飽和炭化水素基であってよい。これらの炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってよい。一価の脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール等が挙げられる。
【0033】
多価の脂肪族アルコールは、2価~6価、2~4価、又は2価若しくは3価の脂肪族アルコールであってよい。多価の脂肪族アルコールは、炭素原子数1~16、炭素原子数2~14、又は炭素原子数4~12の(多価の)脂肪族基を有する脂肪族アルコールであってよい。多価の脂肪族アルコールの脂肪族基は、多価の脂肪族飽和炭化水素基又は多価の脂肪族不飽和炭化水素基であってよい。これらの炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってよい。多価の脂肪族アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン等が挙げられる。
【0034】
エステル化合物の一価又は多価の脂肪族カルボン酸と一価又は多価の脂肪族アルコールとの組み合わせとしては、例えば、下記(a)~(i)の組み合わせを例示することができる。
(a)一価の脂肪族カルボン酸と一価の脂肪族アルコールとのエステル化合物
(b)多価の脂肪族カルボン酸と一価の脂肪族アルコールとのエステル化合物
(c)一価の脂肪族カルボン酸と多価の脂肪族アルコールとのエステル化合物
(d)多価の脂肪族カルボン酸と多価の脂肪族アルコールとのエステル化合物
(e)一価の脂肪族カルボン酸と、一価の脂肪族アルコール及び多価の脂肪族アルコールの混合物とのエステル化合物
(f)多価の脂肪族カルボン酸と、一価の脂肪族アルコール及び多価の脂肪族アルコールの混合物とのエステル化合物
(g)一価の脂肪族カルボン酸及び多価の脂肪族カルボン酸の混合物と、一価の脂肪族アルコールとのエステル化合物
(h)一価の脂肪族カルボン酸及び多価の脂肪族カルボン酸の混合物と、多価の脂肪族アルコールとのエステル化合物
(i)一価の脂肪族カルボン酸及び多価の脂肪族カルボン酸の混合物と、一価の脂肪族アルコール及び多価の脂肪族アルコールの混合物とのエステル化合物
【0035】
エステル化合物は、燃費性とクラッチ摩擦特性とをより高いレベルで両立することが可能となることから、エステル結合を2以上有するエステル化合物であってよい。エステル結合を2以上有するエステル化合物は、例えば、(b)の組み合わせのエステル化合物又は(c)の組み合わせのエステル化合物であってもよい。(b)の組み合わせのエステル化合物において、一価の脂肪族アルコールの脂肪族基(例えば、アルキル基等)の炭素原子数は、好ましくは8~13である。(c)の組み合わせのエステル化合物において、一価の脂肪族カルボン酸の脂肪族基(例えば、アルキル基等)の炭素原子数は、好ましくは8~13である。
【0036】
エステル化合物の100℃における動粘度は、1.0mm2/s以上、2.0mm2/s以上、又は3.0mm2/s以上であってよい。エステル化合物の100℃における動粘度は、10mm2/s以下、7.5mm2/s以下、又は6.0mm2/s以下であってよい。
【0037】
エステル化合物の40℃における動粘度は、8.0mm2/s以上、10mm2/s以上、又は11mm2/s以上であってよい。エステル化合物の40℃における動粘度は、40mm2/s以下、35mm2/s以下、又は30mm2/s以下であってよい。
【0038】
エステル化合物の粘度指数は、100以上、120以上、又は130以上であってよい。エステル化合物の粘度指数は、例えば、170以下であってよい。
【0039】
エステル化合物の含有量は、潤滑油組成物全量を基準として、4~15質量%である。エステル化合物の含有量がこのような範囲にあると、省燃費性を維持しつつ、クラッチ摩擦特性を改善することができる。エステル化合物の含有量は、潤滑油組成物全量を基準として、4.1質量%以上、4.2質量%以上、又は4.3質量%以上であってよく、14.8質量%以下、14.6質量%以下、又は14.4質量%以下であってよい。
【0040】
(ジアルキルジチオリン酸亜鉛)
本実施形態の潤滑油組成物は、摩耗防止剤として作用し得るジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDTP)を含有する。ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、通常の潤滑油の分野で使用されるジアルキルジチオリン酸亜鉛を使用することができる。
【0041】
ジアルキルジチオリン酸亜鉛としては、例えば、下記一般式(C)で表される化合物等が挙げられる。
【0042】
【0043】
式(C)中、R11~R14は、それぞれ独立に、炭素原子数1~24の直鎖状又は分枝状のアルキル基を示す。アルキル基の炭素原子数は、例えば、2~12又は3~8であってよい。アルキル基は、分岐状であってよい。
【0044】
ジアルキルジチオリン酸亜鉛の含有量は、潤滑油組成物の全量を基準として、リン元素換算で400~1200質量ppmである。ジアルキルジチオリン酸亜鉛の含有量が、潤滑油組成物の全量を基準として、リン元素換算で400質量ppm以上であると、摩耗防止性により優れる傾向にある。ジアルキルジチオリン酸亜鉛の含有量が、潤滑油組成物の全量を基準として、リン元素換算で1200質量ppm以下であると、触媒被毒低減により優れる傾向にある。ジアルキルジチオリン酸亜鉛の含有量は、潤滑油組成物の全量を基準として、リン元素換算で600質量ppm以上又は800質量ppm以上であってよく、1100質量ppm以下又は1000質量ppm以下であってよい。
【0045】
(カルシウム系清浄剤)
本実施形態の潤滑油組成物は、金属系清浄剤として作用し得るカルシウム系清浄剤を含有する。カルシウム系清浄剤は、通常の潤滑油の分野で使用されるカルシウム系清浄剤を使用することができる。
【0046】
カルシウム系清浄剤としては、例えば、カルシウムのスルホネート、フェネート、サリシレート等の中性塩、中性塩をカルシウムの水酸化物、酸化物等を水の存在下で加熱することによって得られる塩基性塩、中性塩を炭酸ガス、ホウ酸、ホウ酸塩等の存在下でカルシウムの水酸化物等の塩基と反応させることによって得られる過塩基性塩などが挙げられる。
【0047】
カルシウム系清浄剤の含有量は、潤滑油組成物の全量を基準として、カルシウム元素換算で500~3000質量ppmである。カルシウム系清浄剤の含有量が、潤滑油組成物の全量を基準として、カルシウム元素換算で500質量ppm以上であると、エンジン内部の清浄性により優れる傾向にある。カルシウム系清浄剤の含有量が、潤滑油組成物の全量を基準として、カルシウム元素換算で3000質量ppm以下であると、省燃費性により優れる傾向にある。カルシウム系清浄剤の含有量は、潤滑油組成物の全量を基準として、カルシウム元素換算で1000質量ppm以上又は1500質量ppm以上であってよく、2500質量ppm以下又は2000質量ppm以下であってよい。
【0048】
(ホウ素変性コハク酸イミド系分散剤)
本実施形態の潤滑油組成物は、無灰分散剤として作用し得るホウ素変性コハク酸イミド系分散剤を含有する。ホウ素変性コハク酸イミド系分散剤は、通常の潤滑油の分野で使用されるホウ素変性コハク酸イミド系分散剤を使用することができる。ホウ素変性コハク酸イミド系分散剤を上述のエステル化合物と組わせて用いることによって、高負荷条件下でのクラッチ滑りを抑制することが可能となる。
【0049】
ホウ素変性コハク酸イミド系分散剤としては、例えば、ポリオレフィンから誘導されるアルケニル基又はアルキル基を有するコハク酸イミドを、ホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素化合物で変性させて得られるホウ素変性コハク酸イミド等が挙げられる。
【0050】
ホウ素変性コハク酸イミド系分散剤の含有量は、潤滑油組成物の全量を基準として、ホウ素元素換算で50~1000質量ppmである。ホウ素変性コハク酸イミド系分散剤の含有量がこのような範囲にあると、クラッチ摩擦特性により優れる傾向にある。ホウ素変性コハク酸イミド系分散剤の含有量は、潤滑油組成物の全量を基準として、ホウ素元素換算で80質量ppm以上又は100質量ppm以上であってよく、500質量ppm以下又は300質量ppm以下であってよい。
【0051】
本実施形態の潤滑油組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、一般的に使用されている任意のその他の添加剤をさらに含有することができる。その他の添加剤としては、例えば、摩擦調整剤、金属系清浄剤(ただし、カルシウム系清浄剤を除く。)、摩耗防止剤(ただし、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を除く。)、無灰分散剤(ただし、ホウ素変性コハク酸イミド系分散剤を除く。)、酸化防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤等が挙げられる。これらの添加剤を潤滑油組成物に含有させる場合、それぞれの含有量は本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に制限されないが、例えば、潤滑油組成物の全量を基準として、0.01~30質量%であってよい。
【0052】
(摩擦調整剤)
摩擦調整剤としては、例えば、エステル系、アミン系、アミド系、グリコール系等の無灰系摩擦調整剤、モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)、モリブデンジチオホスフェート(MoDTP)等の金属系摩擦調整剤などが挙げられる。
【0053】
(金属系清浄剤)
金属系清浄剤としては、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属(カルシウムを除く。)のスルホネート、フェネート、サリシレート等の中性塩、中性塩をアルカリ金属又はアルカリ土類金属(カルシウムを除く。)の水酸化物、酸化物等を水の存在下で加熱することによって得られる塩基性塩、中性塩を炭酸ガス、ホウ酸、ホウ酸塩等の存在下でアルカリ金属又はアルカリ土類金属(カルシウムを除く。)の水酸化物等の塩基と反応させることによって得られる過塩基性塩などが挙げられる。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属(カルシウムを除く。)としては、マグネシウム、バリウム等が挙げられる。
【0054】
(摩耗防止剤(極圧剤))
摩耗防止剤としては、例えば、硫黄系、リン系、硫黄-リン系等の摩耗防止剤が挙げられる。より具体的には、例えば、亜リン酸エステル類、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、トリチオリン酸エステル類、これらのアミン塩、これらの金属塩(ジアルキルジチオリン酸亜鉛を除く。)、これらの誘導体、ジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、ジサルファイド類、ポリサルファイド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等が挙げられる。
【0055】
(無灰分散剤)
無灰分散剤としては、例えば、ポリオレフィンから誘導されるアルケニル基又はアルキル基を有するコハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアミン、マンニッヒ塩基等の含窒素化合物、これら含窒素化合物をホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素化合物で変性させて得られるホウ素変性含窒素化合物(ホウ素系無灰分散剤)(ホウ素変性コハク酸イミド系分散剤を除く。)などが挙げられる。
【0056】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤などが挙げられる。フェノール系無灰酸化防止剤としては、例えば、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)等が挙げられる。アミン系無灰酸化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン、アルキルフェニル-α-ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0057】
(粘度指数向上剤)
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤、オレフィンコポリマー系粘度指数向上剤、スチレン-ジエン共重合体系粘度指数向上剤等が挙げられる。これらの粘度指数向上剤は、非分散型及び分散型のいずれであってもよい。
【0058】
(流動点降下剤)
流動点降下剤としては、例えば、使用する潤滑油基油に適合するポリ(メタ)アクリレート系のポリマー等が挙げられる。
【0059】
(腐食防止剤)
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0060】
(防錆剤)
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0061】
(抗乳化剤)
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤などが挙げられる。抗乳化剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0062】
(金属不活性化剤)
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4-チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4-チアジアゾリル-2,5-ビスジアルキルジチオカーバメート、2-(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、β-(o-カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0063】
(消泡剤)
消泡剤としては、例えば、25℃における動粘度が1000~100000mm2/sのシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸とのエステル、メチルサリチレートとo-ヒドロキシベンジルアルコールとのエステル等が挙げられる。
【0064】
潤滑油組成物の100℃における動粘度は、好ましくは5.0mm2/s以上、より好ましくは7.0mm2/s以上、さらに好ましくは10mm2/s以上である。また、潤滑油組成物の100℃における動粘度は、好ましくは30mm2/s以下、より好ましくは25mm2/s以下、さらに好ましくは15mm2/s以下である。潤滑油組成物の100℃における動粘度が上記の範囲内であると、適正な粘性を確保でき、実使用温度域において良好な油膜が得られる傾向にある。
【0065】
潤滑油組成物の40℃における動粘度は、好ましくは50mm2/s以上、より好ましくは60mm2/s以上、さらに好ましくは65mm2/s以上である。また、潤滑油組成物の40℃における動粘度は、好ましくは100mm2/s以下、より好ましくは90mm2/s以下、さらに好ましくは85mm2/s以下である。潤滑油組成物の40℃における動粘度が上記の範囲内であると、適正な粘性を確保でき、実使用温度域において良好な油膜が得られる傾向にある。
【0066】
潤滑油組成物の粘度指数は、好ましくは120以上、より好ましくは140以上、さらに好ましくは160以上、特に好ましくは170以上である。粘度指数が上記の範囲内であると、外部の温度に対して粘度の安定性が確保されるため、使用時における外部の温度変化に対しても安定的に油膜を形成できる傾向にある。潤滑油組成物の粘度指数は、例えば、220以下であってよい。
【0067】
潤滑油組成物の15℃における密度は、例えば、好ましくは0.800g/cm3以上、より好ましくは0.850g/cm3以上、さらに好ましくは0.865g/cm3以上であり、好ましくは0.900g/cm3以下、より好ましくは0.890g/cm3以下、さらに好ましくは0.880g/cm3以下である。なお、本明細書において、15℃における密度は、JIS K 2249:2011に準拠して15℃において測定された密度を意味する。
を意味する。
【0068】
潤滑油組成物の静摩擦特性指数(SFI)は、例えば、2.50以上であってよい。なお、SFIは、JASO T903-2016「二輪自動車4サイクルガソリンエンジン油のクラッチ摩擦特性評価試験方法」に準拠して、SAE No.2摩擦試験によって得られる摩擦特性指数を意味する。また、SFIの「2.50以上」との範囲は、二輪自動車4サイクルガソリンエンジン油の性能MAとして規定された基準値を超える範囲であり、クラッチ摩擦特性により優れることを意味する。潤滑油組成物のSFIは、例えば、3.00以下であってよい。
【0069】
上記潤滑油組成物は、省燃費性とクラッチ摩擦特性とを両立することが可能であることから、二輪自動車4サイクルガソリンエンジンに好適に用いることができる。すなわち、上記潤滑油組成物は、二輪自動車4サイクルガソリンエンジン用潤滑油組成物であってよい。二輪自動車は、例えば、オフロードバイクであってよい。
【実施例】
【0070】
以下、本発明について、実施例を挙げてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0071】
(実施例1~6及び比較例1、2)
以下に示す潤滑油基油及び添加剤を用いて、表1に示す組成を有する実施例1~6及び比較例1~5の潤滑油組成物を調製した。
【0072】
<潤滑油基油>
(鉱油系基油)
A-1:鉱油系基油(API分類のグループIII)(100℃動粘度:6.4mm2/s、40℃動粘度:35.6mm2/s、粘度指数:133、NOACK蒸発量(250℃、1時間):7.4質量%、硫黄分:1質量ppm、全芳香族含有量:0.4質量%)
【0073】
<添加剤>
(エステル化合物)
B-1:アジピン酸(二価の脂肪族カルボン酸)とイソデシルアルコール(一価の脂肪族アルコール、脂肪族基の炭素原子数:10)とのエステル化合物(100℃動粘度:3.5mm2/s、40℃動粘度:13.7mm2/s、粘度指数:144)
B-2:アジピン酸(二価の脂肪族カルボン酸)とイソトリデシルアルコール(一価の脂肪族アルコール、脂肪族基の炭素原子数:13)とのエステル化合物(100℃動粘度:5.3mm2/s、40℃動粘度:26.7mm2/s、粘度指数:135)
B-3:二価の脂肪族カルボン酸(脂肪族基の炭素原子数:10)と2-エチルヘキシルアルコール(一価の脂肪族アルコール、脂肪族基の炭素原子数:8)とのエステル化合物(100℃動粘度:3.2mm2/s、40℃動粘度:11.6mm2/s、粘度指数:152)
B-4:一価の脂肪族カルボン酸(脂肪族基の炭素原子数:8~10)とトリメチロールプロパン(三価の脂肪族アルコール)とのエステル化合物(100℃動粘度:4.4mm2/s、40℃動粘度:20.0mm2/s、粘度指数:140)
(ジアルキルジチオリン酸亜鉛)
C-1:ジアルキルジチオリン酸亜鉛(炭素原子数3~8の第二級アルコールから誘導されたジアルキルジチオリン酸亜鉛、P含有量:7.2質量%、S含有量:14.4質量%、Zn含有量:7.9質量%)
(カルシウム系清浄剤)
D-1:プロピレンオリゴマーである炭素原子数7~24のアルキル基を有する過塩基性カルシウムスルホネート(Ca含有量:12質量%)
(ホウ素変性コハク酸イミド系分散剤)
E-1:ホウ素変性コハク酸イミド系分散剤(ビスタイプ、数平均分子量(Mn):2700、重量平均分子量(Mw):7400、B含有量:0.50質量%)
E-2:ホウ素変性コハク酸イミド系分散剤(モノタイプ、数平均分子量(Mn):3100、重量平均分子量(Mw):4600、B含有量:0.15質量%)
(非ホウ素変性コハク酸イミド系分散剤)
e-1:コハク酸イミド系分散剤(ビスタイプ、数平均分子量(Mn):5400、重量平均分子量(Mw):11000、B含有量:0質量%)
e-2:コハク酸イミド系分散剤(モノタイプ、数平均分子量(Mn):3600、重量平均分子量(Mw):4500、B含有量:0質量%)
(粘度指数向上剤)
F-1:ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤(重量平均分子量(Mw):30000)
(その他添加剤)
流動点降下剤、消泡剤
【0074】
なお、表1における元素含有量は、潤滑油組成物の全量を基準とした値であり、添加剤に含まれる元素含有量と仕込み量とから算出したものである。P元素含有量、S元素含有量、及びZn元素含有量は、主に、C-1に由来する値である。Ca元素含有量は、主に、D-1に由来する値である。B元素含有量は、主に、E-1及びE-2に由来する値である。
【0075】
(1)動粘度、粘度指数
JIS K2283:2000に準拠し、各潤滑油組成物の40℃及び100℃における動粘度並びに粘度指数を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
(2)密度
JIS K 2249:2011に準拠し、各潤滑油組成物の15℃における密度を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
(3)SRV摩擦係数
各潤滑油組成物について、SRV摩擦試験機を用い、下記の条件でSRV摩擦試験を実施し、SRV摩擦係数を測定した。SRV摩擦係数が低い(例えば、0.110以下)ほど、省燃費性に優れるといえる。結果を表1に示す。
温度:80℃
荷重:50N
周波数:50Hz
振幅:1.5mm
測定時間:30分間
【0078】
(4)クラッチ摩擦特性
JASO T903-2016「二輪自動車4サイクルガソリンエンジン油のクラッチ摩擦特性評価試験方法」に準拠して、SAE No.2摩擦試験を行い、動摩擦特性指数(DFI)、静摩擦特性指数(SFI)、及び制動時間指数(STI)からなる摩擦特性指数を求めた。二輪自動車4サイクルガソリンエンジン油の性能MAとして規定された基準値(DFI:1.35以上2.50未満、SFI:1.45以上2.50未満、STI:1.40以上2.50未満)に基づいて評価した。結果を表1に示す。
【0079】
【0080】
【0081】
表1及び表2に示すとおり、実施例1~6の潤滑油組成物は、比較例1~5の潤滑油組成物に比べて、SRV摩擦係数が低く、摩擦特性指数が高かった。特に、実施例1~6の潤滑油組成物は、静摩擦特性指数(SFI)において、二輪自動車4サイクルガソリンエンジン油の性能MAとして規定された基準値を超える範囲となっていることが判明した。これらの結果から、本発明の潤滑油組成物は、省燃費性とクラッチ摩擦特性とを両立することが可能であることが確認された。