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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】樹脂組成物及びトナー
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/02 20060101AFI20241015BHJP
   C08K 5/19 20060101ALI20241015BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20241015BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20241015BHJP
   C07C 251/74 20060101ALN20241015BHJP
   C07D 235/26 20060101ALN20241015BHJP
   C07D 235/28 20060101ALN20241015BHJP
   C08L 67/00 20060101ALN20241015BHJP
【FI】
C08L101/02
C08K5/19
G03G9/087 331
G03G9/097 365
C07C251/74
C07D235/26 B
C07D235/28 B
C08L67/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020204690
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092112
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】関 真範
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和香
(72)【発明者】
【氏名】井上 圭
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-518793(JP,A)
【文献】特開2001-106936(JP,A)
【文献】特許第6395515(JP,B2)
【文献】特開昭60-228569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性官能基からプロトンが除去されて形成される官能基を有する樹脂、顔料及び下記一般式(1)で表されるアンモニウム基含有化合物を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【化1】
[式(1)中、
は、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表し、
~R、及びR~R11のうちの少なくとも1つは、未置換アンモニウム基(-NH )又はアンモニウムメチレン基(-CHNH )であり、
未置換アンモニウム基(-NH )又はアンモニウムメチレン基(-CHNH )ではないR~R、及びR~R11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アミド基、スルホンアミド基、下記式(2-1)で表される基又は下記式(2-2)で表される基を表す。]
【化2】
[式(2-1)中、
*は、式(1)中のR~Rを有する芳香環又はR~R11を有する芳香環との結合位置を表し、
12は、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルキルオキシカルボニル基又はアラルキルオキシカルボニル基を表し、
は、酸素原子、硫黄原子又はNR13基を表し、
13は、水素原子、アルキルオキシカルボニル基又はアラルキルオキシカルボニル基を表す。
【化3】
[式(2-2)中、
*及び**は、式(1)中のR~Rを有する芳香環又はR~R11を有する芳香環との結合位置を表し、
式(2-2)で表される基は、式(1)中のR~Rを有する芳香環又はR~R11を有する芳香環と結合することによって5員複素環を形成し、
は、酸素原子、硫黄原子又はNR14基を表し、
14は、水素原子、アルキルオキシカルボニル基又はアラルキルオキシカルボニル基を表す。]
【請求項2】
前記アニオン性官能基からプロトンが除去されて形成される官能基を有する樹脂がポリエステルである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記アニオン性官能基からプロトンが除去されて形成される官能基を有する樹脂の酸価が5以上である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記アニオン性官能基がカルボン酸基である請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂組成物を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記樹脂組成物が請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物であることを特徴とするトナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及びトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
顔料をトナー用着色剤として使用する場合、着色力等の分光特性を向上させるためにトナーの結着樹脂や重合性単量体中に顔料を微分散する必要がある。しかしながら、顔料の着色力、透明性等の分光特性を向上させるために、顔料を微細化すると、分散工程やその後の製造工程において熱履歴や溶剤との接触により結晶の成長や転移等が起きやすくなり、着色力や透明性の低下等の問題を引き起こしてしまう。
これらの顔料の分散性を改善するために様々な顔料組成物及びそれを構成する顔料分散剤が提案されている。例えば、着色剤である顔料に親和性を有する部位と、重合性単量体或いは樹脂部位とが共有結合で結合している樹脂分散剤が開示されている(特許文献1及び2)。さらに顔料の表面に相互作用する重合性単量体を樹脂化する樹脂処理顔料が開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6395515号公報
【文献】特許5223082号公報
【文献】特開2014-214207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の顔料分散剤は高い顔料分散性を有するが製造工程が煩雑である。特許文献2に記載の顔料分散剤は顔料への親和性が不十分なため、顔料の分散性が十分でなく、高精細な画像に求められるトナーの色調、転写効率の向上等を満足させるまでには至っていない。特許文献3に記載の樹脂処理顔料は、分散基が固定のため分散媒によっては分散性が不十分なことがある。
従って本発明の一態様の目的は、製造が容易で、分散媒との親和性が良好であり、かつ顔料分散性が良好な樹脂組成物を提供することである。また、本発明の他の態様の目的は、良好な着色力を有するトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、アニオン性官能基からプロトンが除去されて形成される官能基を有する樹脂、顔料及び下記一般式(1)で表されるアンモニウム基含有化合物を含む樹脂組成物が提供される。
【0006】
【化1】
【0007】
式(1)中、
は、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表し、
~R、及びR~R11のうちの少なくとも1つは、未置換アンモニウム基(-NH )又はアンモニウムメチレン基(-CHNH )であり、
未置換アンモニウム基(-NH )又はアンモニウムメチレン基(-CHNH )ではないR~R、及びR~R11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アミド基、スルホンアミド基、下記式(2-1)で表される基又は下記式(2-2)で表される基を表す。
【0008】
【化2】
【0009】
式(2-1)中、
*は、式(1)中のR~Rを有する芳香環又はR~R11を有する芳香環との結合位置を表し、
12は、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルキルオキシカルボニル基又はアラルキルオキシカルボニル基を表し、
は、酸素原子、硫黄原子又はNR13基を表し、
13は、水素原子、アルキルオキシカルボニル基又はアラルキルオキシカルボニル基を表す。
【0010】
【化3】
【0011】
式(2-2)中、
*及び**は、式(1)中のR~Rを有する芳香環又はR~R11を有する芳香環との結合位置を表し、
式(2-2)で表される基は、式(1)中のR~Rを有する芳香環又はR~R11を有する芳香環と結合することによって5員複素環を形成し、
は、酸素原子、硫黄原子又はNR14基を表し、
14は、水素原子、アルキルオキシカルボニル基又はアラルキルオキシカルボニル基を表す。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、製造が容易で、分散媒との親和性が良好であり、かつ顔料分散性が良好な樹脂組成物を提供することができる。また、本発明の他の態様によれば、良好な着色力を有するトナーを提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、好適な実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明の範囲を以下の実施の形態に限定するものではない。
本発明に係る樹脂組成物は、アニオン性官能基からプロトンが除去されて形成される官能基を有する樹脂、顔料及び下記一般式(1)で表されるアンモニウム基含有化合物を含む。
【0014】
【化4】
【0015】
式(1)中、
は、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表し、
~R、及びR~R11のうちの少なくとも1つは、未置換アンモニウム基(-NH )又はアンモニウムメチレン基(-CHNH )であり、
未置換アンモニウム基(-NH )又はアンモニウムメチレン基(-CHNH )ではないR~R、及びR~R11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、アミド基、スルホンアミド基、下記式(2-1)で表される基又は下記式(2-2)で表される基を表す。
【0016】
【化5】
【0017】
式(2-1)中、
*は、式(1)中のR~Rを有する芳香環又はR~R11を有する芳香環との結合位置を表し、
12は、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルキルオキシカルボニル基又はアラルキルオキシカルボニル基を表し、
は、酸素原子、硫黄原子又はNR13基を表し、
13は、水素原子、アルキルオキシカルボニル基又はアラルキルオキシカルボニル基を表す。
【0018】
【化6】
【0019】
式(2-2)中、
*及び**は、式(1)中のR~Rを有する芳香環又はR~R11を有する芳香環との結合位置を表し、
式(2-2)で表される基は、式(1)中のR~Rを有する芳香環又はR~R11を有する芳香環と結合することによって5員複素環を形成し、
は、酸素原子、硫黄原子又はNR14基を表し、
14は、水素原子、アルキルオキシカルボニル基又はアラルキルオキシカルボニル基を表す。
本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
【0020】
<アニオン性官能基からプロトンが除去されて形成される官能基を有する樹脂>
本発明の樹脂組成物は、アニオン性官能基からプロトンが除去(イオン化)されて形成される官能基を有する樹脂を含有する。樹脂中のアニオン性官能基としては、カルボン酸基またはスルホン酸基が挙げられる。アニオン性官能基は、樹脂の多様性の観点から、カルボン酸基が好ましい。カルボン酸基を有する樹脂には、公知のものを用いることができるが、ポリエステル樹脂,スチレン-アクリル系樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、特に限定されるものはなく従来公知のポリエステル樹脂が使用できる。ポリエステル樹脂を構成する単量体(アルコール成分及び酸成分)としては、従来公知の下記物質を使用することができるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0021】
アルコール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、トリメチレングリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールAなど。
【0022】
また、酸成分としては、以下のものが挙げられる。フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類、又はこれらの酸無水物。コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのジカルボン酸類又はこれらの酸無水物。フタル酸、テレフタル酸等の芳香族系ジカルボン酸又はこれらの酸無水物など。
【0023】
また3価以上のアルコールとしてグリセリン、ソルビット、ソルビタン等が挙げられる。3価以上の酸としてはトリメリット酸、ピロメリット酸等及びこれらの酸無水物等が挙げられる。
アニオン性官能基からプロトンが除去されて形成される官能基を有する樹脂の酸価は5以上であることが好ましい。なお、酸価とは、試料1g中に含有されている遊離脂肪酸、樹脂酸などの酸成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。測定方法は、JIS-K0070に準じて測定した。
【0024】
<アニオン性官能基からプロトンが除去されて形成される官能基を有する樹脂以外の樹脂成分>
本発明において、前記アニオン性官能基からプロトンが除去されて形成される官能基を有する樹脂以外の樹脂成分としては、特に制限はなく、公知のものから適宜選択することができる。具体的には、例えば以下のものが挙げられる。ポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、石油系樹脂など。
前記アニオン性官能基からプロトンが除去されて形成される官能基を有する樹脂の含有量は、前記樹脂成分の全質量に対して10質量%以上質量100%以下であることが好ましい。
【0025】
<顔料>
本発明に係る樹脂組成物に含有されるイエロー顔料としては、例えば「Organic Pigments Handbook」2006年発行(著者/発行者;橋本勲)に記載のイエロー顔料を適宜選択して用いることができる。具体的には、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、ポリアゾ系顔料、イソインドリン系顔料、縮合アゾ系顔料、アゾメチン系顔料、アントラキノン系顔料、又はキノキサリン系顔料が挙げられる。その中でも、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、ポリアゾ系顔料、及びイソインドリン系顔料が好適に使用できる。
上記イエロー顔料は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0026】
具体的には、以下のものを用いることができる。C.I.Pigment Yellow 12,13,14,15,17,62,94,95,97,109,110,111,120,127,129,139,147,151,154,168,174,176,181,191,194,213,214;C.I.バットイエロー1,3,20;ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、C.I.Solvent Yellow 9,17,24,31,35,58,93,100,102,103,105,112,162及び163。
【0027】
本発明に係る樹脂組成物に含有されるマゼンタ顔料としては、例えば「Organic Pigments Handbook」2006年発行(著者/発行者;橋本勲)に記載の下記のマゼンタ顔料の中から適宜選択して用いることができる。キナクリドン系顔料、モノアゾナフトール系顔料、ビスアゾナフトール系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ナフトールAS系顔料、及びBONAレーキ系顔料等。その中でも、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ナフトールAS系顔料及びBONAレーキ系顔料が好ましい。
上記マゼンタ顔料は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0028】
本発明に係る樹脂組成物に含有されるシアン顔料としては、フタロシアニン顔料が好適に使用できる。フタロシアニン顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:5,15:6,16,17,17:1,68,70,75,76及び79が挙げられる。
上記シアン顔料は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0029】
本発明に係る樹脂組成物に含有されるブラック顔料としては、カーボンブラックが好適に使用できる。
本発明に用いられるカーボンブラックは、特に制限はないが、例えばサーマル法、アセチレン法、チャンネル法、ファーネス法、及びランプブラック法などの製法により得られたカーボンブラックを用いることができる。
上記カーボンブラックは単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
なお、本発明に使用し得る顔料としては、上記のようなイエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料又はカーボンブラック以外の顔料でも、本発明の顔料分散剤と親和性がある顔料であれば用いることができるため、上記の顔料に限定されるものではない。
【0030】
本発明において、各色着色剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
本発明に係る樹脂組成物に含まれる顔料と下記のアミノ基含有化合物との質量基準での組成比[(顔料の質量):(アミノ基含有化合物の質量)]は、100:0.01~100:100の範囲であることが好ましい。かかる範囲であると、優れた顔料分散性を得ることができる。また、該組成比は、100:0.01~100:10であることがより好ましい。
【0031】
<アンモニウム基含有化合物>
続いて、アンモニウム基含有化合物について詳細に説明する。
該アンモニウム基含有化合物は、アミノ基含有化合物のアミノ基がプロトンを受容して、カチオン化されたものである。以下、該アミノ基含有化合物について詳細に説明する。
上記式(1)中のRにおけるアルキル基としては、例えば、以下のものが挙げられる。メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、及び、シクロヘキシル基などの直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基。
【0032】
上記式(1)中のRのアルキル基、又はフェニル基は、顔料への親和性を著しく阻害しない限りは更に置換基により置換されていてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基(-NO)、アミノ基(-NH)、ヒドロキシル基(-OH)、シアノ基(-CN)、及びトリフルオロメチル基(-CF)が挙げられる。
上記式(1)中のRは、上記の中でも顔料への親和性が優れるという観点からメチル基であることが好ましい。
【0033】
上記式(1)中のR~R、及びR~R11は、上記の中でも顔料への親和性が優れるという観点から、R~R、及びR~R11のうちの少なくとも一つは未置換アンモニウム基(-NH )又はアンモニウムメチレン基(-CHNH )である。
未置換アンモニウム基(-NH )又はアンモニウムメチレン基(-CHNH )ではないR~R、及びR~R11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、シアノ基(-CN)、トリフルオロメチル基(-CF)、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基(-C(=O)-O-CH)、アミド基(-C(=O)-NH)、スルホンアミド基(-S(=O)(=O)-NH)、上記式(2-1)で表される基(例えば、-NHCONH)又は上記式(2-2)で表される基(例えば、-NHCONH-)を表す。
製造容易性が高いという観点からは、
~R、及びR~R11のうちの少なくとも一つがアミノ基(-NH)又はアミノメチレン基(-CHNH)であり、
アミノ基又はアミノメチレン基ではないR~R、及びR7~R11がいずれも水素原子であることがより好ましい。
【0034】
上記式(2-1)中のR12におけるアルキル基としては、例えば、以下のものが挙げられる。メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、及びシクロヘキシル基などの直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基。
上記式(2-1)中のR12におけるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基(CCH-)、及びフェネチル基(CCHCH-)が挙げられる。
【0035】
上記式(2-1)中のR12におけるアルキルオキシカルボニル基(-C(=O)-O-Alkyl)としては、例えば、以下のものが挙げられる。メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基。
【0036】
上記式(2-1)中のR12におけるアラルキルオキシカルボニル基(-C(=O)-O-Ararkyl)としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基(-C(=O)-O-CH)、フェネチルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0037】
上記式(2-1)中のR12におけるアルキル基、アラルキル基、アルキルオキシカルボニル基、及びアラルキルオキシカルボニル基は、顔料への親和性を著しく阻害しない限りは更に置換基により置換されていてもよい。この場合、置換してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、シアノ基、及びトリフルオロメチル基が挙げられる。
上記式(2-1)中のR12は、上記の中でも、顔料への親和性が優れるという観点から、水素原子、メチル基、エチル基であることが好ましい。
【0038】
また、上記式(2-1)で表される基の代わりに、上記式(2-2)で表される基を用いてもよい。式(2-2)で表される基は、式(1)中のR~Rを有する芳香環又はR~R11を有する芳香環と結合することによって5員複素環を形成する。
このとき形成される5員複素環は、例えば、式(2-2)中のAが、
酸素原子である場合は、2-イミダゾロン環、
硫黄原子である場合は、2-イミダゾリジンチオン環、
NH基である場合は、2-イミノイミダゾリジン環である。
上記式(2-1)中のR13及び上記式(2-2)中のR14におけるアルキルオキシカルボニル基としては、例えば、以下のものが挙げられる。
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基。
【0039】
上記式(2-1)中のR13及び上記式(2-2)中のR14におけるアラルキルオキシカルボニル基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基が挙げられる。
上記式(2-1)中のR13及び上記式(2-2)中のR14におけるアルキル基、アルキルオキシカルボニル基、及びアラルキルオキシカルボニル基は、顔料への親和性を著しく阻害しない限りは更に置換基により置換されていてもよい。この場合、置換してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、シアノ基、及びトリフルオロメチル基が挙げられる。
【0040】
上記式(2-1)中のR13及び上記式(2-2)中のR14は、上記の中でも、製造容易性が高いという観点から、水素原子、tert-ブトキシカルボニル基、又はベンジルオキシカルボニル基であることが好ましい。
上記式(2-1)中のA及び上記式(2-2)中のAは、酸素原子、硫黄原子、NR13基又はNR14基からそれぞれ任意に選択できるが、顔料への親和性及び製造容易性が高いという観点から、酸素原子であることが好ましい。
上記式(1)で表されるアミノ基含有化合物は、酸性官能基を持つ樹脂と非共有結合を形成することで顔料分散剤として働く。
【0041】
<アミノ基含有構造を有する化合物の製造方法>
次にアミノ基含有構造を有する化合物(アミノ基含有化合物)の製造方法について詳述する。
上記アミノ基含有構造を有する化合物は、公知の方法に従って合成することができる。
具体的には、アミノ基含有構造を有する化合物を合成する方法としては、例えば、下記(i)~(ii)に示す方法が挙げられる。
まず、方法(i)について、スキームの一例を以下に示し、詳細に説明する。
方法(i)は、アミノ基がR~Rに置換されている構造を有する化合物を合成する。
【0042】
【化7】
【0043】
[式(4)、式(5)、式(7)及びアミノ基含有化合物中のRは上記式(1)中のRと同義である。式(4)中のXは脱離基を表す。式(3)、式(5)、式(7)及びアミノ基含有化合物中のmは1又は2の整数を表す。]
【0044】
上記に例示した方法(i)のスキームでは、下記工程1~3を経ることによって、上記式(1)で表されるアミノ基含有化合物を合成することができる。
工程1では、式(3)で表されるニトロアニリン誘導体と式(4)で表されるアセト酢酸類縁体とをアミド化し、アシルアセトアニリド類縁体である式(5)で表される中間体を合成する。
工程2では、式(5)で表される中間体と式(6)で表されるアニリン誘導体とをジアゾカップリングさせ、式(7)で表されるアゾ化合物を合成する。
工程3では、式(7)で表されるアゾ化合物中のニトロ基を還元し、アミノ基含有化合物を合成する。
【0045】
まず、工程1について説明する。
工程1では公知の方法を利用できる。例えば、Datta E.Ponde、他4名、「The Journal of Organic Chemistry」、(米国)、American Chemical Society、1998年、第63巻、第4号、1058-1063頁参照。又、式(5)中のRがメチル基の場合は式(4)の替わりにジケテンを用いた方法によっても合成可能である。例えば、Kiran Kumar Solingapuram Sai、他2名、「The Journal of Organic Chemistry」、(米国)、American Chemical Society、2007年、第72巻、第25号、9761-9764頁参照。
上記式(3)で表されるニトロアニリン誘導体及び上記式(4)で表されるアセト酢酸類縁体は、それぞれ多種市販されており容易に入手可能である。又、公知の方法によって容易に合成することができる。
【0046】
次に、工程2について説明する。
工程2では公知の方法を利用できる。具体的には、例えば、下記に示す方法が挙げられる。先ず、メタノール溶剤中、上記式(6)で表されるアニリン誘導体を塩酸、又は硫酸等の無機酸の存在下、亜硝酸ナトリウム、又はニトロシル硫酸等のジアゾ化剤と反応させて、対応するジアゾニウム塩を合成する。更に、上記式(5)で表されるジアゾニウム塩を中間体とカップリングさせて、上記式(7)で表されるアゾ化合物を合成する。
上記式(6)で表されるアニリン誘導体は、多種市販されており容易に入手可能である。又、公知の方法によって容易に合成することができる。
【0047】
次に、工程3について説明する。
工程3では公知の方法を利用できる。具体的には、金属化合物等を用いる方法としては、例えば、「実験化学講座」、丸善(株)、第2版、第17-2巻、162-179頁。接触水素添加法としては、例えば、「新実験化学講座」、丸善(株)、第1版、第15巻、390-448頁、又は国際公開第2009/060886号等に記載の方法が利用できる。
アミノメチレン基(-CHNH)を有する化合物は、上記式(3)中のニトロ基をニトロメチレン基(-CHNO)に変えることで合成することが可能である。
【0048】
次に、方法(ii)について、スキームの一例を以下に示し、詳細に説明する。
方法(ii)は、方法(i)とは異なる位置[式(1)中のR~R11]に、アミノ基が置換されている化合物を合成する。
【0049】
【化8】
【0050】
[式(4)、式(9)、式(10)及びアミノ基含有化合物中のRは上記式(1)中のRと同義である。式(4)中のXは脱離基を表す。式(3)、式(10)及びアミノ基含有化合物中のmは1又は2の整数を表す。]
【0051】
上記に例示したスキームでは、工程4~6を経ることによって、上記アミノ基含有化合物を合成することができる。
工程4では、式(8)で表されるアニリン誘導体と式(4)で表されるアセト酢酸類縁体とをアミド化し、アシルアセトアニリド類縁体である式(9)で表される中間体を合成する。
工程5では、式(9)で表される中間体と式(3)で表されるアニリン誘導体とをジアゾカップリングさせ、式(10)で表されるアゾ化合物を合成する。
工程6では、式(10)で表されるアゾ化合物中のニトロ基を還元し、アミノ基含有化合物を合成する。
【0052】
まず、工程4について説明する。
工程4では上記方法(i)の工程1と同様の方法を利用し、アシルアセトアニリド類縁体である式(9)で表される中間体を合成する。上記式(8)で表されるアニリン誘導体は、多種市販されており容易に入手可能である。又、公知の方法によって容易に合成することができる。
【0053】
次に、工程5について説明する。
工程5では上記方法(i)の工程2と同様の方法を利用し、式(10)で表されるアゾ化合物を合成することができる。
工程6では上記方法(i)の工程3と同様の方法を利用し、アミノ基含有化合物を合成することができる。
アミノメチレン基を有する化合物は、上記式(3)中のニトロ基をニトロメチレン基に変えることで合成することが可能である。
アミノ基含有化合物の具体例を表1に示す。表1に示すアミノ基含有化合物がプロトンを受容してアンモニウム基含有化合物となる。
しかし、本発明に係るアンモニウム基含有化合物は、表1に示すアミノ基含有化合物がプロトンを受容して得られるアンモニウム基含有化合物に限られるものではない。
【0054】
【表1】
【0055】
<樹脂組成物の製造方法>
樹脂組成物は湿式又は乾式にて製造が可能である。アンモニウム基含有化合物が、プロトンを受容する前駆体であるアミノ基含有化合物は非水溶性溶剤との高い親和性を有していることから、簡便に均一な樹脂組成物を製造することが可能な湿式による製造が好ましい。具体的には、下記のようにして樹脂組成物を作製することができる。
分散媒中にアミノ基含有化合物及び酸性官能基を有する樹脂を溶かし込み、撹拌しながら顔料粉末を除々に加え十分に分散媒になじませる。分散機により機械的剪断力を加えることで、顔料の表面に顔料分散剤を吸着させ、顔料を安定に均一な微粒子状に微分散することができる。分散機としては、ニーダー、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、ディゾルバー、アトライター、サンドミル、及びハイスピードミルが挙げられる。分散媒として非水溶性溶剤を用いる場合は、分散工程後に溶剤除去工程を行う必要がある。非水溶性溶剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸プロピルのようなエステル類、ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、及びキシレンのような炭化水素類、四塩化炭素、トリクロロエチレン、及びテトラブロモエタンのようなハロゲン化炭化水素類。
【0056】
<トナー>
次に、本発明のトナーについて説明する。本発明のトナーにおいては、樹脂成分として、前記アニオン性官能基からプロトンが除去されて形成される官能基を有する樹脂以外に、他の重合体を併用してもよい。具体的には、下記の重合体などを用いることが可能である。ポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。
【0057】
本発明のトナーは、着色剤を含有するトナー粒子を有する。ここで、着色剤として、上記の樹脂組成物を用いることにより、トナー粒子中での顔料の分散性が良好に保たれるため、着色力の高いトナーを得ることが可能となる。
【0058】
<無機粒子(主に外添剤)>
本発明のトナーには、必要に応じて無機微粒子を含有させることもできる。無機微粒子は、トナー粒子に内添しても良いし外添剤としてトナー粒子と混合してもよい。外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの無機微粉体が好ましい。無機微粉体は、シランカップリング剤、シリコーンオイル又はそれらの混合物などの疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。これらの中でも、シランカップリング剤またはシリコーンオイルで表面処理されたシリカ微粒子を用いることが、トナーへ負帯電性を付与することができるという観点から好ましい。
外添剤は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下使用されることが好ましい。トナー粒子と外添剤との混合は、ヘンシェルミキサーなどの公知の混合機を用いることができる。
【0059】
<離型剤(ワックス)>
本発明のトナーに用いられるワックスとしては、例えば以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。更に、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸などの脂肪酸類とステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどのアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N、N’ジオレイルアジピン酸アミド、N、N’ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N、N’ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般的に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
本発明では、離型剤は、樹脂100質量部あたり1質量部以上20質量部以下で使用されることが好ましい。
【0060】
<トナー粒子の製造方法>
本発明のトナー粒子の製造方法としては、従来使用されている、粉砕法、懸濁重合法、懸濁造粒法、及び乳化重合法が挙げられる。以下、例として粉砕法でのトナー製造手順について説明する。
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、例えば、アニオン性官能基からプロトンが除去されて形成される官能基を有する樹脂、顔料及び上記アンモニウム基含有化合物、脂肪酸金属塩、及び離型剤を所定量秤量して配合し、混合する。必要に応じて荷電制御剤等の他の成分も所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業(株)製)などが挙げられる。
【0061】
次に、混合した材料を溶融混練する。溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーなどのバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業(株)製)などが挙げられる。更に、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロール等で圧延され、冷却工程で水などによって急冷する。
【0062】
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルなどの粉砕機で粗粉砕した後、更に、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(ターボ工業製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。
【0063】
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)などの分級機や篩分機を用いて分級し、分級品(トナー粒子)を得る。
更に必要に応じて、トナー粒子の表面に外添剤が外添処理される。外添剤を外添処理する方法としては、分級されたトナーと公知の各種外添剤を所定量配合し、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業(株)製)、ノビルタ(ホソカワミクロン(株)製)等の混合装置を外添機として用いて、撹拌・混合する方法が挙げられる。
【実施例
【0064】
以下、実施例、及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
下記の方法で、アミノ基含有化合物を得た。
【0065】
<実施例1~42>
<アミノ基含有化合物11の合成>
方法(i)に従い合成を行った。式(3)で表される原料として4-ニトロアニリンを、式(6)で表される原料として3-アミノ安息香酸メチルを選ぶことで化合物(11)を3段階63%の収率で得ることができた。
【0066】
<アミノ基含有化合物(12)~(34)の合成例>
使用した原料を変更する以外は、上記化合物(11)の合成例と同様の操作を行い、表1に示したアミノ基含有化合物(12)~(34)を合成した。
【0067】
<アミノ基含有化合物35の合成>
方法(ii)に従い合成を行った。式(8)で表される原料として3-アミノ安息香酸メチルを、式(3)で表される原料として4-ニトロアニリンを選ぶことで化合物(35)を3段階60%の収率で得ることができた。
【0068】
<アミノ基含有化合物(36)~(52)の合成例>
使用した原料を変更する以外は、上記化合物(35)の合成例と同様の操作を行い、表1に示したアミノ基含有化合物(36)~(52)を合成した。
樹脂組成物を下記の方法で調製した。
【0069】
<樹脂組成物の調製例1>
・ブラック顔料:カーボンブラック 30.0部
(比表面積=65m/g、一次粒子の個数平均粒径=30nm、pH=9.0)
・上記アミノ基含有構造を有する化合物(11) 3.0部
・非水溶性溶剤:トルエン 150部
・酸性官能基を有する樹脂P1:ポリエステル 組成(モル%)〔ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:テレフタル酸=80:20:100〕、重量平均分子量(Mw)=7,000、酸価=5mgKOH/g、水酸基価=55mgKOH/g、ガラス転移点=52℃ 40部
・ガラスビーズ(直径1mm) 130部
上記材料を混合し、アトライター[日本コークス工業(株)製]で3時間分散させ、メッシュで濾過して樹脂組成物(Bk1)を得た。
【0070】
【化9】
【0071】
上記式(61)、(62)中、j及びkは正の数を示す。jとkの和は、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)1分子に付加したアルキレンオキサイド(オキシプロピレン、オキシエチレン)の付加モル数を意味する。
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン中の(2.2)は、オキシプロピレンの平均付加モル数を示す。
ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン中の(2.2)は、オキシエチレンの平均付加モル数を示す。
【0072】
<樹脂組成物の調製例2>
上記樹脂組成物の調製例1において、アミノ基含有化合物(11)を、アミノ基含有化合物(12)~(52)に各々変更した以外は同様の操作を行い、樹脂組成物(Bk2)~(Bk42)を得た。
【0073】
<実施例43~84>
<樹脂組成物の調製例3>
上記樹脂組成物の調製例において、酸性官能基を有する樹脂P1を下記の酸性官能基を有する樹脂P2とした以外は同様の操作を行い、樹脂組成物(Bk43)~(Bk84)を得た。
・酸性官能基を有する樹脂P2:ポリエステル 組成(モル%)〔ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:テレフタル酸=80:20:100〕、重量平均分子量(Mw)=7,500、酸価=9mgKOH/g、水酸基価=52mgKOH/g、ガラス転移点=54℃ 40部
【0074】
<基準用樹脂組成物の調製例1>
上記樹脂組成物の調製例1において、アミノ基含有化合物(11)を加えないこと以外は同様の操作を行って、基準用樹脂組成物(Bk85)を得た。
【0075】
<比較例1~2>
<比較用樹脂組成物の調製例1>
上記樹脂組成物の調製例1及び3においてアミノ基含有化合物(11)を、アミノ基を含まない以下の式(53))で表される化合物に変更した以外は各々同様の操作を行って、それぞれ比較用ブラック顔料分散体(Bk86)~(Bk87)を得た。
【0076】
【化10】
【0077】
<比較例3>
<比較用樹脂組成物の調製例2>
上記樹脂組成物の調製例1において樹脂P1を、ポリスチレン[重量平均分子量(Mw)=35,000]に変更した以外は各々同様の操作を行って、それぞれ比較用ブラック顔料分散体(Bk88)を得た。
上記樹脂組成物を下記の方法で評価した。
【0078】
<顔料分散性評価>
以下の樹脂組成物を用いて、塗工膜の光沢試験を行うことで、本発明のアミノ基含有化合物の顔料分散性を評価した。
・上記樹脂組成物(Bk1)~(Bk88)
具体的な評価方法は下記のとおりである。
樹脂組成物をスポイトですくい取り、スーパーアート紙[SA金藤 180kg 80×160、王子製紙(株)製]上部に直線上に載せ、ワイヤーバー(#10)を用いて均一にアート紙上に塗工し、乾燥させた。乾燥後の光沢(反射角:75°)を光沢計Gloss Meter VG2000[日本電色工業(株)製]により測定し、測定値を表2に示した。また、以下の評価基準に従ってランク付けし、ランクを表2に示した。
尚、顔料がより微細に分散するほど塗工膜の平滑性が向上し、光沢値が向上する。
・樹脂組成物の評価基準
A:光沢値が80以上
B:光沢値が50以上80未満
C:光沢値が20以上50未満
D:光沢値が20未満
光沢値が50以上であれば良好な顔料分散性であると判断した。
【0079】
【表2】
【0080】
次に下記の方法で、トナーを製造した。
<実施例91~134>
<トナーの製造例1>
・ブラック顔料:カーボンブラック 5.0部
(比表面積=65m/g、一次粒子の個数平均粒径=30nm、pH=9.0)
・上記アミノ基含有構造を有する化合物(11) 0.1部
・酸性官能基を有する樹脂P1:ポリエステル 組成(モル%)〔ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:テレフタル酸=80:20:100〕、重量平均分子量(Mw)=7,000、酸価=5mgKOH/g、水酸基価=55mgKOH/g、ガラス転移点=52℃ 100部
・炭化水素ワックス(最大吸熱ピークのピーク温度78℃)5.0部
【0081】
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、温度130℃に設定した二軸混練機(PCM-30型、(株)池貝製)にて混練した。得られた混練物25℃まで冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T-250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。更にファカルティF-300(ホソカワミクロン社製)を用いて分級を行い、トナー粒子を得た。
【0082】
得られたトナー粒子100部に対して、一次粒子の平均粒子径が、10nmの疎水化処理されたシリカ微粉体1.5部および1次粒子の平均粒子径が100nmの疎水化処理されたシリカ微粉体2.5部を添加した。添加した後、ヘンシェルミキサー(FM-75型、三井三池化工機(株)製)で混合して、トナー(TBk1)を得た。
【0083】
<実施例92~114>
<トナーの製造例2>
アミノ基含有化合物(11)を、アミノ基含有化合物(12)~(34)に各々変更した以外は同様の操作を行い、トナー(TBk2)~トナー(TBk24)を得た。
【0084】
<参考例2>
<基準用トナーの製造例1>
上記トナーの製造例1において、アミノ基含有化合物(11)を加えないこと以外は同様の操作を行って、基準用トナー(TBk25)を得た。
【0085】
<比較例4>
<比較用トナーの製造例1>
上記トナーの製造例1においてアミノ基含有化合物(11)を、アミノ基を含まない上記式(53)で表される化合物に変更した以外は各々同様の操作を行って、それぞれ比較用トナー(TBk26)を得た。
得られた各トナーについて以下の方法に従って性能評価を行った。
【0086】
<着色力>
市販のカラーレーザープリンター Satera LBP7700C(キヤノン(株)製)用のカートリッジから中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、評価する各トナー(150g)を充填した。また、Satera LBP7700Cを一部改造し、定着機を外して未定着画像を出力できるように変更し、コントローラーにより画像濃度を調節可能にした。さらに、一色のプロセスカートリッジだけの装着でも作動するよう改造した。外した定着機は、定着機単体でも動作できるように改良し、さらにプロセススピードと温度を制御できるように外部定着機として改造した。
【0087】
上記カートリッジをプリンターに装着し、図2に示すような転写材の上部に30mmの空白の後、横150mm×縦30mmの帯画像を作成した。さらに帯画像のトナー載り量が0.35mg/cmとなるようにコントローラーを設定した。転写材は、A4サイズのGF-C081(キヤノン(株)製、81.4g/m)を用いた。
この画像を10枚出力し、LBP7700Cの外部定着機を用いて、プロセススピード300mm/sec、180℃で定着した。この帯画像の画像濃度を測定して着色力を評価した。尚、画像濃度の測定には「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて測定した。原稿濃度が0.00の白下地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定し、出力画像1枚に付き左部、中央部および右部の3点ずつ測定し出力画像10枚の平均値を表3に示した。また、以下の評価基準に従ってランク付けし、ランクを表3に示した。
A:画像濃度が1.40以上。
B:画像濃度が1.30以上1.40未満。
C:画像濃度が1.20以上1.30未満。
D:画像濃度が1.10以上1.20未満。
E:画像濃度が1.10未満。
結果を表3に示す。
【0088】
【表3】