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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】皮膚感覚評価方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20241015BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
A61B5/00 M
A61B5/107 800
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020217555
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102683
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-09-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】花田 洋子
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 崇訓
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 志洋
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-115913(JP,A)
【文献】特開2019-194175(JP,A)
【文献】特開2020-158529(JP,A)
【文献】特開2018-083005(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0275320(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/01、5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の剤を被験者の顔の皮膚の表面に塗布する前の第一状態において前記皮膚に力を負荷して当該皮膚の力学的特性を求める第一特性算出工程と、
前記所定の剤を前記皮膚の表面に塗布した後の第二状態において前記皮膚に力を負荷して当該皮膚の力学的特性を求める第二特性算出工程と、
前記第一特性算出工程と前記第二特性算出工程との算出結果に基づき、前記第二状態で前記被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価する評価工程と、
を含み、
前記第一特性算出工程は、前記被験者の皮膚の表面の力学的特性として前記第一状態での当該被験者の皮膚の最大変位値の変位方向と直交し、かつ、最大変位点に向かう内向きの変位の最大値である第一直交最大変位値を算出する工程を含み、
前記第二特性算出工程は、前記被験者の皮膚の表面の力学的特性として前記第二状態での当該被験者の皮膚の前記最大変位値の変位方向と直交し、かつ、最大変位点に向かう内向きの変位の最大値である第二直交最大変位値を算出する工程を含み、
前記評価工程では、
複数人の被験者の母集団からそれぞれ取得された、前記第一状態での前記第一直交最大変位値および前記第二状態での前記第二直交最大変位値と、前記第一状態における前記力学的感覚および前記第二状態における前記力学的感覚と、の関係性を示す関係情報を参照して、
前記第一特性算出工程および前記第二特性算出工程で前記被験者から求めた前記力学的特性から前記第二状態で前記被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価することを特徴とする皮膚感覚評価方法。
【請求項2】
前記第一特性算出工程は、前記被験者の皮膚の表面の力学的特性として前記第一状態での当該被験者の皮膚の最大変位値である第一最大変位値を算出する工程を含み、
前記第二特性算出工程は、前記被験者の皮膚の表面の力学的特性として前記第二状態での当該被験者の皮膚の最大変位値である第二最大変位値を算出する工程を含み、
前記評価工程では、
前記複数人の被験者の母集団から前記被験者の皮膚の表面の力学的特性としてそれぞれ取得された、前記第一状態での前記第一最大変位値および前記第二状態での前記第二最大変位値と、前記第一状態における前記力学的感覚および前記第二状態における前記力学的感覚と、の関係性を示す関係情報を参照して、
前記第一特性算出工程および前記第二特性算出工程で前記被験者から求めた前記力学的特性から前記第二状態で前記被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価することを特徴とする請求項1に記載の皮膚感覚評価方法。
【請求項3】
所定の剤を被験者の顔の皮膚の表面に塗布する前の第一状態において前記皮膚に力を負荷して当該皮膚の力学的特性を求める第一特性算出工程と、
前記所定の剤を前記皮膚の表面に塗布した後の第二状態において前記皮膚に力を負荷して当該皮膚の力学的特性を求める第二特性算出工程と、
前記第一特性算出工程と前記第二特性算出工程との算出結果に基づき、前記第二状態で前記被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価する評価工程と、
を含み、
前記第一特性算出工程は、前記被験者の皮膚の表面の力学的特性として前記第一状態での当該被験者の皮膚の最大変位値の変位方向と直交し、かつ、最大変位点に向かう内向きの変位の最大値である第一直交最大変位値を算出する工程を含み、
前記第二特性算出工程は、前記被験者の皮膚の表面の力学的特性として前記第二状態での当該被験者の皮膚の前記最大変位値の変位方向と直交し、かつ、最大変位点に向かう内向きの変位の最大値である第二直交最大変位値を算出する工程を含み、
前記評価工程では、
前記第一特性算出工程で前記被験者から求めた前記第一直交最大変位値および前記第二特性算出工程で前記被験者から求めた前記第二直交最大変位値から前記第二状態で前記被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価することを特徴とする皮膚感覚評価方法。
【請求項4】
前記第一特性算出工程および前記第二特性算出工程において、前記被験者が表情筋を動かすことにより前記皮膚に前記力を負荷することを特徴とする請求項1からいずれか一項に記載の皮膚感覚評価方法。
【請求項5】
前記力学的感覚が、つっぱり感、乾燥感または閉塞感であることを特徴とする請求項1からいずれか一項に記載の皮膚感覚評価方法。
【請求項6】
前記第一状態の前記皮膚の表面を撮像した第一撮像データを取得する第一撮像データ取得工程と、
前記第一状態の前記皮膚に力を負荷した状態で前記皮膚の表面を撮像した第二撮像データを取得する第二撮像データ取得工程と、
前記第二状態において前記皮膚の表面を撮像した第三撮像データを取得する第三撮像データ取得工程と、
前記第二状態の前記皮膚に力を負荷した状態で前記皮膚の表面を撮像した第四撮像データを取得する第四撮像データ取得工程と、を含み、
前記第一特性算出工程では、前記第一撮像データと前記第二撮像データとを比較して前記皮膚の力学的特性を求め、
前記第二特性算出工程では、前記第三撮像データと前記第四撮像データとを比較して前記皮膚の力学的特性を求めることを特徴とする請求項1からいずれか一項に記載の皮膚感覚評価方法。
【請求項7】
前記第一撮像データ、前記第二撮像データ、前記第三撮像データおよび前記第四撮像データは、それぞれ前記被験者の皮膚の表面に現れる肌理の幾何学的パターンを含み、かつ、同一領域を撮像したデータであり、
前記第一特性算出工程では、前記第一撮像データが表す前記幾何学的パターンと前記第二撮像データが表す前記幾何学的パターンとを比較し、
前記第二特性算出工程では、前記第三撮像データが表す前記幾何学的パターンと前記第四撮像データが表す前記幾何学的パターンとを比較して前記皮膚の力学的特性を求めることを特徴とする請求項に記載の皮膚感覚評価方法。
【請求項8】
所定の剤を被験者の顔の皮膚の表面に塗布する前の第一状態において前記皮膚に力を負荷して当該皮膚の力学的特性を求める第一特性算出工程と、
前記所定の剤を前記皮膚の表面に塗布した後の第二状態において前記皮膚に力を負荷して当該皮膚の力学的特性を求める第二特性算出工程と、
前記第一特性算出工程と前記第二特性算出工程との算出結果に基づき、前記第二状態で前記被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価する評価工程と、
を含み、
前記第一特性算出工程は、前記被験者の皮膚の表面の力学的特性として前記第一状態での当該被験者の皮膚の最大変位値の変位方向と直交し、かつ、最大変位点に向かう内向きの変位の最大値である第一直交最大変位値を算出する工程を含み、
前記第二特性算出工程は、前記被験者の皮膚の表面の力学的特性として前記第二状態での当該被験者の皮膚の前記最大変位値の変位方向と直交し、かつ、最大変位点に向かう内向きの変位の最大値である第二直交最大変位値を算出する工程を含み、
前記評価工程では、
前記第一特性算出工程で前記被験者から求めた前記第一直交最大変位値および前記第二特性算出工程で前記被験者から求めた前記第二直交最大変位値から前記第二状態で前記被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価し、
前記評価工程の評価結果に基づき、前記所定の剤の物性を評価する剤評価工程をさらに含むことを特徴とする剤の物性評価方法。
【請求項9】
被験者の顔の皮膚の力学的特性を求める特性算出手段と、
所定の剤を塗布した皮膚で前記被験者が感じる力学的感覚を評価する評価手段と、を備え、
前記特性算出手段は、前記所定の剤を被験者の顔の皮膚の表面に塗布する前の第一状態および前記所定の剤を前記皮膚の表面に塗布した後の第二状態において、前記皮膚に力を負荷して皮膚の力学的特性をそれぞれ求め、
前記評価手段は、前記第一状態の前記被験者の前記皮膚の力学的特性と、前記第二状態の前記被験者の前記皮膚の力学的特性とに基づき、前記第二状態で前記被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価し、
前記特性算出手段は、前記被験者の皮膚の表面の力学的特性として前記第一状態での当該被験者の皮膚の最大変位値の変位方向と直交し、かつ、最大変位点に向かう内向きの変位の最大値である第一直交最大変位値を算出する手段と、前記被験者の皮膚の表面の力学的特性として前記第二状態での当該被験者の皮膚の前記最大変位値の変位方向と直交し、かつ、最大変位点に向かう内向きの変位の最大値である第二直交最大変位値を算出する手段を備え、
前記評価手段は、
前記特性算出手段で前記被験者から求めた前記第一直交最大変位値および前記第二直交最大変位値から前記第二状態で前記被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価することを特徴とする皮膚感覚評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚感覚の評価技術に関する。
【背景技術】
【0002】
肌状態を解析する方法として、表情の変化や肌に指が接触することなどにより生じたシワから解析するものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-193197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、表情の変化や肌に指が接触することなどにより生じたシワを解析することによって、肌の柔軟性やハリ状態などを定量的に解析している。しかしながら、つっぱり感、うるおい感など、被験者自身が皮膚表面に感じる力学的感覚を定量的に評価することはいまだできていなかった。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、被験者自身が皮膚表面に感じる力学的感覚を適切に評価することを可能とする技術に関する。本明細書において「皮膚感覚の評価」とは、非医療目的で、被験者自身が皮膚表面に感じる力学的感覚を評価することを意味し、専門家以外の評価者であっても可能な評価を含む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定の剤を被験者の顔の皮膚の表面に塗布する前の第一状態において前記皮膚に力を負荷して当該皮膚の力学的特性を求める第一特性算出工程と、前記所定の剤を前記皮膚の表面に塗布した後の第二状態において前記皮膚に力を負荷して当該皮膚の力学的特性を求める第二特性算出工程と、前記第一特性算出工程と前記第二特性算出工程との算出結果に基づき、前記第二状態で前記被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価する評価工程と、を含むことを特徴とする皮膚感覚評価方法に関する。
【0007】
また、所定の剤を被験者の顔の皮膚の表面に塗布する前の第一状態において前記皮膚に力を負荷して当該皮膚の力学的特性を求める第一特性算出工程と、前記所定の剤を前記皮膚の表面に塗布した後の第二状態において前記皮膚に力を負荷して当該皮膚の力学的特性を求める第二特性算出工程と、前記第一特性算出工程と前記第二特性算出工程との算出結果に基づき、前記第二状態で前記被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価する評価工程と、前記評価工程の評価結果に基づき、前記所定の剤の物性を評価する剤評価工程と、を含むことを特徴とする剤の物性評価方法に関する。
【0008】
また、被験者の顔の皮膚の力学的特性を求める特性算出手段と、所定の剤を塗布した皮膚で前記被験者が感じる力学的感覚を評価する評価手段と、を備え、前記特性算出手段は、前記所定の剤を被験者の顔の皮膚の表面に塗布する前の第一状態および前記所定の剤を前記皮膚の表面に塗布した後の第二状態において、前記皮膚に力を負荷して皮膚の力学的特性をそれぞれ求め、前記評価手段は、前記第一状態の前記被験者の前記皮膚の力学的特性と、前記第二状態の前記被験者の前記皮膚の力学的特性とに基づき、前記第二状態で前記被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価する皮膚感覚評価装置に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により提供される技術によれば、被験者自身が皮膚表面で感じる力学的感覚を適切に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】被験者の各皮膚状態における皮膚の力学的特性の1つであるひずみ分布を示した画像である。
図2】被験者の各皮膚状態における皮膚の力学的特性の1つであるひずみ分布を示した画像である。
図3】第一状態および第二状態において取得する被験者の肌画像の位置を示した概念図である。
図4】本実施形態の皮膚感覚評価方法(本方法)を示すフローチャートである。
図5】ステップS100およびステップS110の力学的特性の算出内容を示すフローチャートである。
図6】ステップS130の評価工程で用いる相関関係情報の算出方法を示すフローチャートである。
図7】ε1およびε2を説明する概念図である。
図8】(a)はファンデーションAを塗布する前と後との力学的感覚(つっぱり感)の平均値を示したグラフであり、(b)はファンデーションAを塗布する前と後との力学的特性(ε1)の平均値を示したグラフである。
図9】(a)はファンデーションBを塗布する前と後との力学的感覚(つっぱり感)の平均値を示したグラフであり、(b)はファンデーションBを塗布する前と後との力学的特性(ε1)の平均値を示したグラフである。
図10】(a)はファンデーションAを塗布する前と後との力学的感覚(乾燥感)の平均値を示したグラフであり、(b)はファンデーションAを塗布する前と後との力学的特性(ε1)の平均値を示したグラフである。
図11】(a)はファンデーションBを塗布する前と後との力学的感覚(乾燥感)の平均値を示したグラフであり、(b)はファンデーションBを塗布する前と後との力学的特性(ε1)の平均値を示したグラフである。
図12】(a)はファンデーションAを1回塗布後と2回塗布後との力学的感覚(閉塞感)の平均値を示したグラフであり、(b)はファンデーションAを1回塗布後と2回塗布後との力学的特性(ε1)の平均値を示したグラフである。
図13】(a)はファンデーションBを1回塗布後と2回塗布後との力学的感覚(閉塞感)の平均値を示したグラフであり、(b)はファンデーションBを1回塗布後と2回塗布後との力学的特性(ε1)の平均値を示したグラフである。
図14】素肌状態における力学的感覚(つっぱり感)と力学的特性(ε2)との相関関係を示したグラフである。
図15】剤の物性評価方法を示すフローチャートである。
図16】皮膚感覚評価装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
はじめに、本実施形態の概要について説明する。
本実施形態の皮膚感覚評価方法(以下、本方法と表示する場合がある)は、第一特性算出工程、第二特性算出工程および評価工程を含む。第一特性算出工程は、所定の剤を被験者の顔の皮膚の表面に塗布する前の第一状態において皮膚に力を負荷して当該皮膚の力学的特性を求める工程である。第二特性算出工程は、所定の剤を皮膚の表面に塗布した後の第二状態において皮膚に力を負荷して当該皮膚の力学的特性を求める工程である。そして評価工程は、第一特性算出工程と第二特性算出工程との算出結果に基づき第二状態で被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価する工程である。
【0012】
本発明者らは、所定の剤を顔の皮膚に塗布したことによる、被験者が、皮膚表面や表層において生じる力学的物性も一因として生じるつっぱり感、閉塞感、うるおい感、乾燥感などの皮膚感覚(力学的感覚とよぶ)は、これまで被験者の主観に基づく評価しかできておらず、定量的かつ安定的な評価が求められているとの見識に至った。すなわち、特許文献1の発明によれば、肌の柔軟性やハリ状態などを定量的に解析することはできても、瞬きなど皮膚に力を負荷した状態で被験者が皮膚表面に感じるつっぱり感、閉塞感、うるおい感などの力学的感覚を定量的に評価することはできない。
ここで、図1および図2は、被験者の各皮膚状態における皮膚の力学的特性の1つであるひずみ分布を示した画像である。図1および図2は、被験者の右目下の所定領域の画像である。
図1はファンデーションを塗布した際に、つっぱり感や乾燥感などの力学的感覚を感じた被験者の画像であり、図2はファンデーションを塗布した際に、つっぱり感や乾燥感などの力学的感覚を感じなかった被験者の画像である。
図1(a)-1は、洗顔後の肌における皮膚の最大ひずみの分布画像であり、図1(a)-2は、洗顔後の肌における皮膚の最大ひずみの変位方向と直交し、かつ、最大ひずみ点に向かう内向きのひずみの最大値である最小ひずみの分布画像である。図1(b)-1は洗顔後、化粧水を塗布した肌における皮膚の最大ひずみの分布画像であり、図1(b)-2は、洗顔後、化粧水を塗布した肌における皮膚の最大ひずみの変位方向と直交し、かつ、最大ひずみ点に向かう内向きのひずみの最大値である最小ひずみの分布画像である。図1(c)-1は化粧水塗布後、ファンデーションを塗布した肌における皮膚の最大ひずみの分布画像であり、図1(c)-2は化粧水塗布後、ファンデーションを塗布した肌における皮膚の最大ひずみの変位方向と直交し、かつ、最大ひずみ点に向かう内向きのひずみの最大値である最小ひずみの分布画像である。
図2(a)-1は、洗顔後の肌における皮膚の最大ひずみの分布画像であり、図2(a)-2は、洗顔後の肌における皮膚の最大ひずみの変位方向と直交し、かつ、最大ひずみ点に向かう内向きのひずみの最大値である最小ひずみの分布画像である。図2(b)-1は洗顔後、化粧水を塗布した肌における皮膚の最大ひずみの分布画像であり、図2(b)-2は、洗顔後、化粧水を塗布した肌における皮膚の最大ひずみの変位方向と直交し、かつ、最大ひずみ点に向かう内向きのひずみの最大値である最小ひずみの分布画像である。図2(c)-1は化粧水塗布後、ファンデーションを塗布した肌における皮膚の最大ひずみの分布画像であり、図2(c)-2は化粧水塗布後、ファンデーションを塗布した肌における皮膚の最大ひずみの変位方向と直交し、かつ、最大ひずみ点に向かう内向きのひずみの最大値である最小ひずみの分布画像である。
図1図2とを比較すると、図1(ファンデーションを塗布した際に、つっぱり感や乾燥感などの力学的感覚を感じた被験者)は、ひずみが目の中心に近い部分で大きいのに対し、図2(ファンデーションを塗布した際に、つっぱり感や乾燥感などの力学的感覚を感じなかった被験者)は、ひずみが全体的に生じており、皮膚に力を負荷した状態で被験者が感じる力学的感覚と皮膚のひずみには、一定の関係性があることが明らかとなった。
このため、本方法においては、所定の剤を被験者の顔の皮膚の表面に塗布する前の第一状態において皮膚に力を負荷して求めた皮膚の力学的特性と、所定の剤を被験者の顔の皮膚の表面に塗布した後の第二状態において皮膚に力を負荷して求めた皮膚の力学的特性とに基づき、第二状態で被験者が感じる力学的感覚を評価する。
【0013】
以下、本方法について更に詳細に説明する。
【0014】
第一状態の肌状態とは、所定の剤を塗布する前の状態であり、第二状態の肌状態とは、所定の剤を塗布した後の状態である。本実施形態では、特段の記載がない限り、所定の剤をファンデーションとし、第一状態の肌状態はファンデーションを塗布する前の肌であり、化粧水や乳液により肌状態を整えた状態(いわゆる、スキンケア後の肌)とし、第二状態の肌状態はファンデーションを塗布した後の肌とすることを例示する。したがって、被験者の肌にファンデーションを塗布したことにより、被験者が皮膚表面に感じるつっぱり感、閉塞感、うるおい感などの力学的感覚を評価している。しかし、本発明における所定の剤は、ファンデーションに限らず、皮膚外用剤、化粧料が挙げられ、たとえば、ローション、乳液、クリーム、美容液、マッサージ、パック、リップクリーム等のスキンケア化粧料;ファンデーション、化粧下地、液状ファンデーション、油性ファンデーション、パウダーファンデーション、コンシーラー、コントロールカラー、アイシャドウ、頬紅、口紅、リップグロス、リップライナー、ボディのデコルテ用等のメイクアップ化粧料;日やけ止め乳液、日やけ止めジェル、日焼け止めクリームなどの紫外線防御化粧料;石鹸、洗顔料、メイク落とし、ボディシャンプー、シャワー剤等の洗浄用又は入浴用化粧料が挙げられ、特にこれらに限定されるものではない。
そして、例えば、所定の剤をローションとした場合、第一状態の肌状態はローションを塗布する前の状態とし、第二状態の肌状態はローションを塗布した後の肌となる。この場合、被験者の肌にローションを塗布したことにより、被験者が皮膚表面に感じるつっぱり感、閉塞感、うるおい感などの力学的感覚を評価することができる。また、所定の剤を日焼け止めクリームとした場合、第一状態の肌状態は日焼け止めクリームを塗布する前の状態とし、第二状態の肌状態は日焼け止めクリームを塗布した後の肌となる。この場合、被験者の肌に日焼け止めクリームを塗布したことにより、被験者が皮膚表面に感じるつっぱり感、閉塞感、うるおい感などの力学的感覚を評価している。このように、塗布する剤は乳液、クリーム、紫外線防御剤、化粧下地、各種のベースメイクアップやポイントメイクアップなど、肌に塗布されるものであれば限定を受けない。
ここで、皮膚に力を負荷し、第一特性算出工程および第二特性算出工程によって力学的特性を求めるが、皮膚に負荷する力は、第一状態および第二状態で同一であることが好ましい。これは、同じ条件でそれぞれの力学的特性を求めたほうが、皮膚に力を負荷した状態で被験者が皮膚表面に感じるつっぱり感、閉塞感、うるおい感などの力学的感覚を正確に評価できるためである。また、本実施形態では、皮膚に負荷する力は、表情筋を動かすことによる力、例えば、瞬きによる力とする。これは、平常時に生じる力に基づき力学的特性を求める方が、平常時に被験者が皮膚表面に感じるつっぱり感、閉塞感、うるおい感などの力学的感覚を評価できるためである。なお、皮膚に負荷する力は瞬きに限らず、例えば、強く目を瞑ったり、微笑む、口を開けるなどの表情変化でもよいし、指や冶具等の押圧手段で肌を押したり、こすったり、せん断をかけることによって生じた力を皮膚に負荷する力としてもよい。また、例えば、第一状態では皮膚に負荷する力が瞬き、第二状態では皮膚に負荷する力が指で肌を押すことによって生じた力のように、第一状態と第二状態とで皮膚に負荷する力が異なっていても評価は可能である。
【0015】
ここで、第一特性算出工程および第二特性算出工程で算出する「皮膚の力学的特性」とは、皮膚の剛直さや伸びやすさなど皮膚の変位しやすさを示す客観的な指標である。たとえば、皮膚表面または肌内部に力を負荷したことにより皮膚に生じる所定方向のひずみ(以下、εと表示する場合もある)、皮膚表面が所定方向に変位する変位量(以下、Uと表示する場合もある)、皮膚の粘弾性など負荷した力に抗する性質などを総称して皮膚の力学的特性と呼称する。
また、「皮膚で感じる力学的感覚」とは、被験者が皮膚表面において力学的に感じる主観的な指標であり、つっぱり感、乾燥感、閉塞感、負担感、違和感、心地よさ、うるおい感、軟らかい感じなどが例示される。すなわち、皮膚で感じる力学的感覚とは、冷たさや温かさなどの熱的な感覚や、皮膚表面を触ったことによるカサカサ感やつるつる感などの感覚(いわゆる、触覚)は含まず、皮膚の剛直さや伸びやすさ等の力学的特性に基づいて被験者が体性感覚野で感知する感覚をいう。ここで、「つっぱり感」とは、肌表面がぴんとはった肌感覚を指している。また、「乾燥感」とは、肌表面の水分が不足している肌感覚のことを指している。また、「閉塞感」とは、肌表面がふさがった肌感覚のことを指している。また、「負担感」とは、肌表面に負担がかかった肌感覚のことを指している。また、「違和感」とは、いつもとは異なる肌感覚や、所定の剤が肌表面になじんでいないことを知覚する肌感覚のことを指している。また、「心地よさ」とは、肌表面が快適な感じのことを指している。また、「うるおい感」とは、肌表面がしっとりしている感じのことを指している。また、「やわらかい感じ」とは、肌表面の柔軟性がある感じを指している。
【0016】
本実施形態では、複数の被験者の母集団からそれぞれ第一状態における力学的特性および第二状態における力学的特性と、第一状態における力学的感覚および第二状態における力学的感覚と、の関係を示す関係情報を参照し、第一特性算出工程および第二特性算出工程で被験者から求めた力学的特性から第二状態で被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価する場合について説明する。なお、本実施形態の皮膚感覚評価方法は、複数の被験者の母集団から求めた関係情報を参照して評価する方法に限らず、例えば、所定の被験者自身の第一状態における力学的特性および異なる他の所定の剤を塗布した第二状態における力学的特性と、第一状態における力学的感覚および所定の剤を塗布した第二状態における力学的感覚と、の関係を示す関係情報を参照し、第一特性算出工程および第二特性算出工程で被験者から求めた力学的特性から所定の剤を塗布した第二状態で被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価こともできる。この点については後述する。
また、本実施形態では、第二状態で被験者が皮膚で感じる力学的感覚として、第二状態での力学的感覚の絶対値がどのような値となるかによって評価するが、これに限らない。例えば、第一状態での力学的感覚と第二状態での力学的感覚との差分を用いて評価してもよい。さらに、第一状態での力学的感覚と第二状態の力学的感覚とで、どの程度変化したかを示す変化量を用いて評価してもよい。このように、差分や変化量を用いて評価した場合、所定の剤を塗布したことにより、力学的感覚(例えば、つっぱり感)がどの程度変化したかを評価することが可能となる。また、第一状態での力学的感覚に対し、第二状態での力学的感覚の変化率を用いて評価してもよい。このように変化率を用いて評価することにより、所定の剤を塗布したことによる影響を感覚的に把握しやすくなる。
また、本実施形態では、力学的感覚のうち1種類ずつ力学的特性との相関関係を算出し、第二状態における力学的感覚のうちの1種類について評価するが、複数種類の力学的感覚と力学的特性との相関関係を算出し、第二状態における力学的感覚の評価を行ってもよい。
【0017】
<皮膚感覚評価方法>
以下に、本実施形態の皮膚感覚評価方法について図3から図7を用いて説明する。
図3は、第一状態および第二状態において取得する被験者の肌画像の位置を示した概念図である。
図4は、本実施形態の皮膚感覚評価方法(本方法)を示すフローチャートである。
図5は、ステップS100およびステップS110の力学的特性の算出内容を示すフローチャートである。
図6は、ステップS130の評価工程で用いる相関関係情報の算出方法を示すフローチャートである。
図7は、ε1およびε2を説明する概念図である。
【0018】
図3は、第一状態および第二状態において取得する被験者の肌画像の位置を示している。本実施形態においては、右目尻下の肌画像を取得し、縦10mm横15mmの範囲を計測対象領域としている。なお、計測対象領域は一例であって、他の場所でもよい。本実施形態では、後述するが、瞬きによる力を皮膚表面に負荷する力とするため、目の付近である目尻下の肌画像を計測対象領域とした。
【0019】
図4は、本実施形態の皮膚感覚評価方法(本方法)を示すフローチャートである。
工程(ステップS100)は、所定の剤を塗布する前の第一状態での被験者の力学的特性を算出する工程である。本実施形態では、ファンデーションを塗布する前のスキンケア後の状態での被験者の力学的特性を算出する。算出内容については、図5のフローチャートを用いて説明する。
なお、工程(ステップS100)が本方法の「第一特性算出工程」に相当する。
【0020】
工程(ステップS101)は、第一状態において目を開けた状態での画像を取得する。取得する肌画像の位置は、図3に示した通りである。
ここで、取得する画像は、撮像装置(カメラ)により撮影された画像であり、撮像装置は、一般的なRGBカメラであってもよいし、モノクロカメラ又はスペクトルカメラであってもよく、静止画像としての撮影でも動画としての撮影でもよく、撮像装置の性能や仕様は制限されない。照明数、照明角度、照度、撮影角度などの撮影環境条件についても制限はない。本実施形態では、モノクロ画像を取得することとする。
【0021】
工程(ステップS102)は、第一状態において目を閉じた状態での画像を取得する。取得する画像は、ステップS101で撮像した際と同じ撮影環境条件であることが好ましい。
【0022】
工程(ステップS103)は、ステップS101およびステップS102で取得した画像を用いて、第一状態での力学的特性を算出する。本実施形態では、取得した画像から皮膚の最大ひずみ(以下、ε1と表示する場合もある)を算出する。最大ひずみ(ε1)の詳細については後述する。
【0023】
図4に戻り、工程(ステップS110)は、所定の剤を塗布した後の第二状態での被験者の力学的特性を算出する工程である。本実施形態では、ファンデーションを塗布した後の状態での被験者の力学的特性を算出する。算出内容については、図5のフローチャートと同様である。
なお、工程(ステップS110)が本方法の「第二特性算出工程」に相当する。
【0024】
工程(ステップS120)は、力学的特性と力学的感覚との相関関係情報を取得する工程である。ここで、ステップS120で取得する相関関係情報の算出内容については、図6のフローチャートを用いて説明する。なお、相関関係情報は、図6のフローチャートに基づき事前に求めてあるものをステップS120の工程で取得してもよいし、ステップS120のタイミングで求めてもよい。また、例えば、ステップS100より前の工程で取得していてもよく、ステップS130で評価する前に取得してあればよい。
【0025】
図6に基づき、相関関係情報の算出内容について説明する。ここで、算出内容を説明する前に、本実施形態における相関関係情報を取得する際の環境を説明する。
被験者は9名とした。
皮膚に負荷する力は、被験者が表情筋を動かすことにより生じる力とし、本実施形態では、所定時間内に生じた自然な瞬きを用いた。
図3に示した領域を計測領域とした。
第一状態は、洗顔後、化粧水と乳液を塗布した後の肌状態とした。
第二状態は、第一状態の肌にリキッドタイプファンデーションAを塗布した後、一定期間経過後、再度、リキッドタイプファンデーションAを塗布した後の肌状態、すなわち2回塗布後の肌状態とした。
皮膚感覚のアンケートは、力学的感覚の1つであるつっぱり感が0から10の11段階のいずれであるかを回答するものとした。なお、力学的感覚の1つであるつっぱり感であるため、被験者には瞬きなど皮膚に力を負荷した状態でのつっぱり感について回答してもらうものとした。
以下に示す工程(ステップS121)から工程(ステップS128)は、9名の被験者一人一人に対し行い、それらのデータに基づき工程(ステップS129)を行った。
【0026】
工程(ステップS121)は、被験者から、第一状態における皮膚感覚のアンケートを取得する。つっぱり感は、0から10の11段階で回答し、つっぱり感がないと感じた場合は0を、つっぱり感が感じられるほど10に近い数字を回答してもらうこととする。
【0027】
工程(ステップS122)は、第一状態において目を開けた状態での画像を取得する。また、工程(ステップS123)は、第一状態において目を閉じた状態での画像を取得する。工程(ステップS122)と工程(ステップS123)は、所定時間内の自然な瞬きと同程度の瞑り具合の瞬きの画像を取得することが好ましい。
なお、工程(ステップS122)が本方法の「第一撮像データ取得工程」に、工程(ステップS123)が本方法の「第二撮像データ取得工程」に相当する。さらに、工程(ステップS122)で取得する画像が本方法の「第一撮像データ」に相当し、工程(ステップS123)で取得する画像が本方法の「第二撮像データ」に相当する。
【0028】
工程(ステップS124)は、ステップS122とステップS123で取得した画像に基づき、第一状態での力学的特性を算出する。本実施形態で算出する力学的特性は、ステップS103で算出したものと同様に、皮膚の最大ひずみ(ε1)を算出する。
ここで、最大ひずみ(ε1)について、図7に基づき説明する。
本実施形態では、第一状態および第二状態で取得する肌画像の位置は、図3に示した通りである。
図7は、図3に示した取得した肌画像のうち、瞬きの間(閉眼時)のものである。
皮膚表面には、瞬きによる力が負荷されることにより、水平から斜め方向の伸び(引っ張り)のひずみが生じ、当該伸びのひずみは負荷される力により変化する。最大ひずみ(ε1)は、この水平から斜め方向の伸びひずみの大きさの最大値である。
そして、本実施形態では、力学的特性として、最大ひずみ(ε1)を算出し、皮膚感覚評価を行うこととしている。
【0029】
工程(ステップS125)は、被験者の肌に所定の剤としてファンデーションAを塗布し、所定時間経過後、再度、ファンデーションAを塗布した第二状態における皮膚感覚のアンケートを取得する。つっぱり感は、0から10の11段階で回答し、つっぱり感がないと感じた場合は0を、つっぱり感が感じられるほど10に近い数字を回答してもらうこととする。
【0030】
工程(ステップS126)は、第二状態において目を開けた状態での画像を取得する。また、工程(ステップS127)は、第二状態において目を閉じた状態での画像を取得する。工程(ステップS126)と工程(ステップS127)は、所定時間内の自然な瞬きと同程度の瞑り具合の瞬きの画像を取得することが好ましい。
なお、工程(ステップS126)が本方法の「第三撮像データ取得工程」に、工程(ステップS127)が本方法の「第四撮像データ取得工程」に相当する。さらに、工程(ステップS126)で取得する画像が本方法の「第三撮像データ」に相当し、工程(ステップS127)で取得する画像が本方法の「第四撮像データ」に相当する。
【0031】
工程(ステップS128)は、ステップS126とステップS127で取得した画像に基づき、第二状態での力学的特性を算出する。算出する力学的特性については、ステップS124で算出した最大ひずみ(ε1)と同様である。
【0032】
工程(ステップS129)は、ステップS121およびステップS125で取得したアンケート結果とステップS124およびステップS128で算出した力学的特性とに基づき、力学的感覚と力学的特性との相関関係情報を算出する。
【0033】
次に、ステップS129で算出する力学的感覚と力学的特性との相関関係情報について、図8(a)および図8(b)を用いて説明する。
【0034】
図8(a)および図8(b)は、ファンデーションAを塗布した場合の力学的感覚と力学的特性との相関関係を示したグラフである。
より具体的には、図8(a)は、9名の被験者の第一状態における力学的感覚の平均値と第二状態における力学的感覚の平均値をグラフに示している。グラフの縦軸は、皮膚感覚のアンケートの11段階を指し、横軸は肌状態を指している。
図8(b)は、9名の被験者の第一状態における力学的特性(最大ひずみ(ε1))の平均値と第二状態における力学的特性(最大ひずみ(ε1))の平均値をグラフに示している。グラフの縦軸は、最大ひずみ(ε1)の値を指し、横軸は肌状態を指している。
ここで、被験者が力学的感覚として感じるつっぱり感について、第一状態と第二状態それぞれで評価した結果に基づく有意差検定と、被験者の肌表面の力学的特性(最大ひずみ(ε1))について、第一状態と第二状態それぞれで算出した結果に基づく有意差検定を行った。有意差検定の結果は、第一状態と第二状態とでは、力学的感覚についてはp値が0.42、力学的特性についてはp値が0.43であり、いずれも有意差がない、すなわち、第一状態と同等に皮膚が伸びるため、ファンデーションAを塗布したことによるつっぱり感は感じられないと判定した。
【0035】
図4に戻り、工程(ステップS130)は、ステップS100およびステップS110の算出結果とステップS120で取得した相関関係情報とに基づき、対象被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価する。
ステップS129で算出した相関関係情報にステップS100およびステップS110で算出した被験者の力学的特性を比較し、第二状態で被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価する。例えば、ステップS100およびステップS110で算出した被験者の力学的特性とステップS129で算出された第一状態および第二状態それぞれで算出した結果の平均値と同等であれば、つっぱり感は感じられないと評価する。
このように、力学的感覚(本実施形態ではつっぱり感)と力学的特性(本実施形態では最大ひずみ(ε1))との相関関係と、対象被験者の力学的特性とを比較することで、当該被験者の力学的感覚を定量的に評価することが可能となる。
【0036】
次に、異なる条件において算出した力学的感覚と力学的特性との相関関係情報について図9(a)から図13(b)を用いて説明する。
【0037】
図9(a)および図9(b)は、ファンデーションBを塗布した場合の力学的感覚(つっぱり感)と力学的特性との相関関係を示したグラフである。
ここで、ファンデーションAとファンデーションBとでは、どちらもリキッドタイプのファンデーションではあるが、剤の膜の弾性率が異なるファンデーションである。そして、ファンデーションAとファンデーションBは、何れも同様の第一状態の肌に同量のファンデーションを同一一定期間経過後、再度、塗布した状態、すなわち2回塗布後を第二状態としている。
より具体的には、図9(a)は、9名の被験者の第一状態における力学的感覚の平均値と第二状態における力学的感覚の平均値をグラフに示している。グラフの縦軸は、皮膚感覚のアンケートの11段階を指し、横軸は肌状態を指している。
図9(b)は、9名の被験者の第一状態における力学的特性(最大ひずみ(ε1))の平均値と第二状態における力学的特性(最大ひずみ(ε1))の平均値をグラフに示している。グラフの縦軸は、最大ひずみ(ε1)の値を指し、横軸は肌状態を指している。
ここで、被験者が力学的感覚として感じるつっぱり感について、第一状態と第二状態それぞれで評価した結果に基づく有意差検定と、被験者の肌表面の力学的特性(最大ひずみ(ε1))について、第一状態と第二状態それぞれで算出した結果に基づく有意差検定を行った。有意差検定の結果は、第一状態と第二状態とでは、力学的感覚についてはp値が0.05より小さく、力学的特性についてもp値が0.05より小さく、いずれも有意差がある、すなわち、ファンデーションBを塗布したことにより皮膚が伸び難く、つっぱり感は感じられると判定した。
【0038】
次に、図10(a)および図10(b)ならびに図11(a)および図11(b)を参照して、力学的感覚の1つの「乾燥感」と力学的特性(最大ひずみ(ε1))との相関関係ついて説明する。
図10(a)および図10(b)は、ファンデーションAを塗布した場合の力学的感覚性(乾燥感)と力学的特性との相関関係を示したグラフである。
より具体的には、図10(a)は、9名の被験者の第一状態における力学的感覚の平均値と第二状態における力学的感覚の平均値をグラフに示している。グラフの縦軸は、皮膚感覚のアンケートの11段階を指し、横軸は肌状態を指している。なお、皮膚感覚のアンケートは、第一状態および第二状態それぞれにおいて、乾燥感がないと感じた場合は0を、乾燥感が感じられるほど10に近い数字を回答してもらうこととする。
図10(b)は、9名の被験者の第一状態における力学的特性(最大ひずみ(ε1))の平均値と第二状態における力学的特性(最大ひずみ(ε1))の平均値をグラフに示している。グラフの縦軸は、最大ひずみ(ε1)の値を指し、横軸は肌状態を指している。
ここで、被験者が力学的感覚として感じる乾燥感について、第一状態と第二状態それぞれで評価した結果に基づく有意差検定と、被験者の肌表面の力学的特性(最大ひずみ(ε1))について、第一状態と第二状態それぞれで算出した結果に基づく有意差検定を行った。有意差検定の結果は、第一状態と第二状態とでは、力学的感覚についてはp値が0.91、力学的特性についてはp値が0.43であったため、いずれも有意差がない、すなわち、第一状態と同等に皮膚が伸びるため、ファンデーションAを塗布したことによる乾燥感は感じられないと判定した。
【0039】
図11(a)および図11(b)は、ファンデーションBを塗布した場合の力学的感覚(乾燥感)と力学的特性との相関関係を示したグラフである。
より具体的には、図11(a)は、9名の被験者の第一状態における力学的感覚の平均値と第二状態における力学的感覚の平均値をグラフに示している。グラフの縦軸は、皮膚感覚のアンケートの11段階を指し、横軸は肌状態を指している。
図11(b)は、9名の被験者の第一状態における力学的特性(最大ひずみ(ε1))の平均値と第二状態における力学的特性(最大ひずみ(ε1))の平均値をグラフに示している。グラフの縦軸は、最大ひずみ(ε1)の値を指し、横軸は肌状態を指している。
ここで、被験者が力学的感覚として感じる乾燥感について、第一状態と第二状態それぞれで評価した結果に基づく有意差検定と、被験者の肌表面の力学的特性(最大ひずみ(ε1))について、第一状態と第二状態それぞれで算出した結果に基づく有意差検定を行った。有意差検定の結果は、第一状態と第二状態とでは、力学的感覚についてはp値が0.03より小さく、力学的特性についてもp値が0.05より小さく、いずれも有意差がある、すなわち、ファンデーションBを塗布したことにより皮膚が伸び難く、乾燥感は感じられると判定した。
【0040】
次に、図12(a)および図12(b)ならびに図13(a)および図13(b)を参照して、力学的感覚の1つの「閉塞感」と力学的特性(最大ひずみ(ε1))との相関関係ついて説明する。
ここでは、第一状態はファンデーションを1回塗布した状態、第二状態はファンデーションを2回塗布した状態として、力学的感覚と力学的特性との相関関係情報を算出する。
【0041】
図12(a)および図12(b)は、ファンデーションAを塗布した場合の力学的感覚(閉塞感)と力学的特性との相関関係を示したグラフである。
より具体的には、図12(a)は、9名の被験者の第一状態(ファンデーションAを1回塗布した状態)における力学的感覚の平均値と第二状態(ファンデーションAを2回塗布した状態)における力学的感覚の平均値をグラフに示している。グラフの縦軸は、皮膚感覚のアンケートの11段階を指し、横軸は肌状態を指している。なお、皮膚感覚のアンケートは、第一状態および第二状態それぞれにおいて、閉塞感がないと感じた場合は0を、閉塞感が感じられるほど10に近い数字を回答してもらうこととする。
図12(b)は、9名の被験者の第一状態(ファンデーションAを1回塗布した状態)における力学的特性(最大ひずみ(ε1))の平均値と第二状態(ファンデーションAを2回塗布した状態)における力学的特性(最大ひずみ(ε1))の平均値をグラフに示している。グラフの縦軸は、最大ひずみ(ε1)の値を指し、横軸は肌状態を指している。
ここで、被験者が力学的感覚として感じる乾燥感について、第一状態と第二状態それぞれで評価した結果に基づく有意差検定と、被験者の肌表面の力学的特性(最大ひずみ(ε1))について、第一状態と第二状態それぞれで算出した結果に基づく有意差検定を行った。有意差検定の結果は、第一状態と第二状態とでは、力学的感覚についてはp値が0.1、力学的特性についてもp値が0.6であったため、いずれも有意差がない、すなわち、第一状態と同等に皮膚が伸びるため、ファンデーションAを2回塗布したことによる閉塞感は変わらないと判定した。
【0042】
図13(a)および図13(b)は、ファンデーションBを塗布した場合の力学的感覚(閉塞感)と力学的特性との相関関係を示したグラフである。
より具体的には、図13(a)は、9名の被験者の第一状態(ファンデーションBを1回塗布した状態)における力学的感覚の平均値と第二状態(ファンデーションBを2回塗布した状態)における力学的感覚の平均値をグラフに示している。グラフの縦軸は、皮膚感覚のアンケートの11段階を指し、横軸は肌状態を指している。
図13(b)は、9名の被験者の第一状態における力学的特性(最大ひずみ(ε1))の平均値と第二状態における力学的特性(最大ひずみ(ε1))の平均値をグラフに示している。グラフの縦軸は、最大ひずみ(ε1)の値を指し、横軸は肌状態を指している。
ここで、被験者が力学的感覚として感じる閉塞感について、第一状態と第二状態それぞれで評価した結果に基づく有意差検定と、被験者の肌表面の力学的特性(最大ひずみ(ε1))について、第一状態と第二状態それぞれで算出した結果に基づく有意差検定を行った。有意差検定の結果は、第一状態と第二状態とでは、力学的感覚についてはp値が0.03より小さく、力学的特性についてもp値が0.001より小さく、いずれも有意差がある、すなわち、ファンデーションBを2回塗布したことにより皮膚が伸び難く、閉塞感が強くなると判定した。
【0043】
次に、力学的特性として、最大ひずみ(ε1)の変位方向と直交し、かつ、最大ひずみ点に向かう内向きのひずみの最大値である最小ひずみ(ε2)を算出し、当該最小ひずみ(ε2)と力学的感覚との相関関係に基づき、第二状態における被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価することについて説明する。最大ひずみ(ε1)の変位方向と直交し、かつ、最大ひずみ点に向かう内向きのひずみの最大値である最小ひずみ(ε2)は、図7に基づき説明する。皮膚表面には、瞬きによる力が負荷されることにより、最大ひずみ(ε1)の変位方向と直交し、かつ、最大ひずみ点に向かう圧縮ひずみが生じ、当該圧縮ひずみは負荷される力により変化する。最小ひずみ(ε2)は、この最大ひずみ(ε1)の変位方向と直交し、かつ、最大ひずみ点に向かう圧縮ひずみの大きさの最大値である。
ここで、図14に示すように、本実施形態では、力学的感覚との相関関係を求める際には、算出した最小ひずみ(ε2)の値の絶対値をとることとした。したがって、最大ひずみ(ε1)の変位方向と直交し、かつ、最大ひずみ点に向かう圧縮ひずみの値が小さいほど、絶対値をとった最小ひずみ(ε2)の値は大きくなる。
【0044】
図14は、洗顔後の肌状態、いわゆる素肌状態での力学的感覚(つっぱり感)と最小ひずみ(ε2)の相関関係を示した図である。
グラフの縦軸は、最小ひずみ(ε2)、横軸は皮膚感覚アンケートの11段階を指している。アンケートは素肌状態において、つっぱり感がないと感じた場合は0を、つっぱり感が感じられるほど10に近い数字を回答してもらうこととする。ここでは、グラフの縦軸の最小ひずみ(ε2)の値は、値が小さいほど(絶対値が大きいほど)、つっぱり感が感じられなくなっている。
そして、素肌状態において、力学的特性として最小ひずみ(ε2)を算出し、その値を図14の線形に当てはめることで、当該素肌状態のつっぱり感を推定することが可能となる。
このように、複数の被験者の所定の肌状態における力学的感覚(つっぱり感)と力学的特性(最小ひずみ(ε2))から算出した相関関係と、対象被験者の力学的特性とを比較することで、当該被験者の力学的感覚を定量的に評価することが可能となる。
【0045】
<剤の物性評価方法>
以下、剤の物性評価方法について説明する。
図15は、剤の物性評価方法を示すフローチャートである。
剤の物性評価方法は、工程(ステップS200)から工程(ステップS240)で構成される。
ここで、工程(ステップS200)から工程(ステップS230)は、皮膚感覚評価方法における工程(ステップS100)から工程(ステップS130)と同じであるため、説明を省略する。
工程(ステップS240)は、工程(ステップS230)での評価結果に基づき剤の物性を評価する工程である。ここで、工程(ステップS230)での評価結果が図8に示した力学的感覚と力学的特性との相関関係情報と同様であった場合、このとき塗布した所定の剤は、ファンデーションAと同様の物性であると評価することができる。また、工程(ステップS230)での評価結果が図9に示した力学的感覚と力学的特性との相関関係情報と同様であった場合、このとき塗布した所定の剤は、ファンデーションBと同様の物性であると評価することができる。
このように、所定の剤を塗布する前の第一状態と所定の剤を塗布した後の第二状態との力学的特性を算出し、予め算出してあった力学的感覚と力学的特性との相関関係情報とを比較することで、塗布した剤の物性を評価することができる。
【0046】
<皮膚感覚評価装置100>
以下、本方法を実現する皮膚感覚評価装置100について説明する。
図16は、本実施形態における皮膚感覚評価装置100のブロック図である。
本実施形態における皮膚感覚評価装置100は、各種の処理を実行可能な情報処理端末である。なお、図示してはいないが、皮膚感覚評価装置100は、キーボード、ポインティングデバイスなどの入力装置、演算処理装置、記憶部等を備えている。
皮膚感覚評価装置100は、特性算出手段110および評価手段120を備えている。
また、本実施形態では、皮膚感覚評価装置100と制御信号の授受を行う入力手段130、表示制御手段140および表示手段150は、皮膚感覚評価システム200を構成する手段である。なお、入力手段130、表示制御手段140および表示手段150は、皮膚感覚評価装置100の外部に設けられ、ネットワークで接続されていてもよいし、皮膚感覚評価装置100と一体に設けられていてもよい。
【0047】
特性算出手段110は、所定の剤を被験者の顔の皮膚の表面に塗布する前の第一状態および当該所定の剤を皮膚の表面に塗布した後の第二状態において、皮膚に力を負荷して皮膚の力学的特性をそれぞれ求める。具体的には、特性算出手段110は、所定の剤(本実施形態では、ファンデーション)を塗布する前の第一状態において、皮膚に力(本実施形態では、瞬きによる力)を負荷し、力学的特性(本実施形態においては、例えば、最大ひずみ(ε1))を求める。また、特性算出手段110は、所定の剤(本実施形態では、ファンデーション)を塗布した後の第二状態において、皮膚に力(本実施形態では、瞬きによる力)を負荷し、力学的特性(本実施形態においては、例えば、最大ひずみ(ε1))を求める。
【0048】
評価手段120は、特性算出手段110によって算出された第一状態における力学的特性と第二状態における力学的特性から第二状態の被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価する。ここで、評価手段120によって評価する際には、特性算出手段によって算出された力学的特性を予め準備しておいた複数の被験者から算出した力学的特性と力学的感覚との相関関係、もしくは、予め準備しておいた被験者自身の他の剤に基づき力学的特性と力学的感覚との相関関係と比較することで行う。
複数の被験者に基づき算出された力学的特性と力学的感覚との相関関係とは、次のように算出されたものを用いる。複数の被験者一人一人に対し、特性算出手段で算出する力学的特性と同様に、第一状態および第二状態の力学的特性を求める。また、当該複数の被験者一人一人に対し、第一状態および第二状態での皮膚感覚アンケートを行うことにより力学的感覚を取得する。皮膚感覚アンケートは、力学的感覚(本実施形態においては、瞬きなど皮膚に力を負荷した状態でのつっぱり感)を感じない場合は0、感じる度合いが大きいほど10に近くなるような11段階で回答してもらう。そして、これらの力学的特性および力学的感覚から相関関係情報を算出しておく。
また、被験者自身の他の剤に基づき算出された力学的特性と力学的感覚との相関関係とは、次のように算出されたものを用いる。特性算出手段で算出する力学的特性と同様に、第一状態および第二状態の力学的特性を求める。ここでの第二状態は、他の剤(本実施形態では、所定の剤のファンデーションと異なるファンデーション)を塗布した状態とし、当該他の剤を塗布した状態での力学的特性を求める。他の剤は1種類でもよいが、複数種類に対応した力学的特性があるほうが好ましい。例えば、店頭などで過去に他の剤による値を記録しておき、その値を用いることでもよい。また、第一状態および他の剤を塗布した第二状態での皮膚感覚アンケートを行うことにより力学的感覚を取得する。皮膚感覚アンケートは、力学的感覚(本実施形態においては、瞬きなど皮膚に力を負荷した状態でのつっぱり感)を感じない場合は0、感じる度合いが大きいほど10に近くなるような11段階で回答してもらう。これらの力学的特性および力学的感覚から相関関係情報を算出しておく。
そして、これらの相関関係情報を入力手段130により皮膚感覚評価装置100に入力し、特性算出手段110で算出された力学的特性と比較することで、第二状態における力学的感覚を評価する。入力手段130によって入力された相関関係情報および評価結果を表示制御手段140によって制御される表示手段150に表示することが好ましい。このように、表示手段150に表示することにより、より、評価結果を把握しやすくできる。なお、相関関係情報および評価結果は、図8から図14に示した内容と同様である。
【0049】
<変形例>
本発明の実施は、上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形、改良等が可能である。
【0050】
上述した第二状態における力学的感覚の評価は、対象被験者の第一状態と第二状態との力学的特性を、力学的感覚と力学的特性との相関関係情報と比較することで求めていた。しかし、対象被験者の第一状態における力学的感覚をアンケートなどにより取得し、当該第一状態における力学的感覚も第二状態における力学的感覚の評価を行う際に用いるようにしてもよい。具体的には、ステップS100において、第一状態における力学的感覚を取得し、ステップS130で評価する際に用いるようにする。
このようにすることで、対象被験者自身の第一状態における力学的感覚を第二状態における力学的感覚の評価に反映できるため、より対象被験者が肌表面で感じる力学的感覚に近い評価結果を得ることができる。
【0051】
上述では、第二状態における力学的感覚を評価する際に、複数の被験者の母集団から取得した力学的感覚と力学的特性との相関関係情報を参照した。
しかし、被験者自身の他の剤に基づき力学的特性と力学的感覚との相関関係情報を参照することでも第二状態における力学的感覚を評価することは可能である。
複数の被験者の母集団から力学的感覚と力学的特性との相関関係情報を取得した際と同様に、第一状態および第二状態の力学的特性を求める。ここでの第二状態は、他の剤(本実施形態では、所定の剤のファンデーションと異なるファンデーション)を塗布した状態とし、当該他の剤を塗布した状態での力学的特性を求める。他の剤は1種類でもよいが、複数種類に対応した力学的特性があるほうが望ましい。これは、例えば、店頭などで過去に他の剤による値を記録しておき、その値を用いることでもよい。また、第一状態および他の剤を塗布した第二状態での皮膚感覚アンケートを行うことにより力学的感覚を取得する。皮膚感覚アンケートは、力学的感覚(本実施形態においては、瞬きなど皮膚に力を負荷した状態でのつっぱり感)を感じない場合は0、感じる度合いが大きいほど10に近くなるような11段階で回答してもらう。そして、これらの力学的特性および力学的感覚から相関関係情報を算出しておく。
このようにして算出した、相関関係情報を参照し力学的感覚を評価する。この場合、被験者自身が行ったデータのみで所定の剤を塗布したときに被験者自身が感じる肌表面の力学的感覚を定量的に評価することが可能となる。
【0052】
上述では、力学的感覚と力学的特性との相関関係を求める際に、最大ひずみ(ε1)または最小ひずみ(ε2)の値そのものを用いて行った。この場合、力学的特性を求める際に負荷する力、すなわち、本実施形態の場合、瞬きの強さも同等の方か好ましい。このようにすることで、評価結果に、瞬きの違いによる力学的特性の変化を含まないようにすることができ、取得した力学的特性の変化は、所定の剤によるものとなるからである。
しかし、これに限らず、所定の計測範囲に最大ひずみ(ε1)または最小ひずみ(ε2)が計測領域にどの程度含まれるかによって、相関関係を求めてもよい。具体的には、第一状態において算出した最大ひずみ(ε1)の所定割合(例えば、40%)以上のひずみ領域と、第二状態において算出した最大ひずみ(ε1)の所定割合(例えば、40%)以上のひずみ領域との関係(所定割合以上のひずみ領域が増加したまたは減少したなど)を算出する。そして、当該算出結果と力学的感覚とに基づき相関関係を求める。
このようにすることで、最大ひずみ(ε1)の値そのものを用いるよりも、力学的特性を求める際の負荷される力の違いによる計測誤差の影響を受けにくい評価結果とすることが可能となる。なお、領域の大小関係ではなく、計測領域に対し、最大ひずみ(ε1)または最小ひずみ(ε2)がどのように分布しているかに基づき相関関係を求めてもよい。
【0053】
上述では、力学的特性は、図6に示した画像相関法によって算出した。これは、被験者の皮膚に接触することなく、また、被験者の皮膚に所定の剤以外の物質を付着させることなく皮膚の力学的特性を求めることができるため、平常時に被験者自身が感じる皮膚の力学的感覚を評価することができる。しかし、図6に示した画像相関法とは異なる方法でもよく、また、3D画像を取得し、当該3D画像に基づき力学的特性を求めてもよい。本方法は、力学的特性の算出方法には影響されず、力学的特性と力学的感覚との相関関係から被験者が皮膚で感じる力学的感覚を評価することができる。
【0054】
また、図6に示した画像相関法によって力学的特性を求める際に、取得した第一撮像データ、第二撮像データ、第三撮像データおよび第四撮像データには、それぞれ被験者の皮膚表面に現れる肌理の幾何学的パターンが含まれるものとする。そして、第一特性算出工程では、第一撮像データが表す幾何学的パターンと第二撮像データが表す幾何学的パターンとを比較することで力学的特性を求めるようにしてもよい。同様に、第二特性算出工程では、第三撮像データが表す幾何学的パターンと第四撮像データが表す幾何学的パターンとを比較することで力学的特性を求めるようにしてもよい。これは、肌理はほぼ均一に肌表面に分布しており、この肌理を用いて力学的特性を求めることで、平常時に被験者自身が感じる皮膚の力学的感覚を評価することが可能となる。
なお、第一撮像データ、第二撮像データ、第三撮像データおよび第四撮像データは、同一領域を撮像したものではあるが、完全に同一である必要はなく、計測対象領域が含まれていればよい。
さらに、本実施形態では、被験者の肌表面が撮像できれば撮像する機器の種類は問わない。例えば、店頭などでスタッフにより、高速度カメラを用いて撮像してもよく、また、被験者自身で被験者のスマートフォンのカメラなどにより撮像し、撮像したデータを店頭スタッフなどに提供し、皮膚感覚の評価を行ってもよい。さらに、被験者自身がスマートフォンのカメラで撮像し、相関関係情報と、第一状態および第二状態の力学的特性を算出する機能を備えたアプリケーションを用いて被験者自身で第二状態における力学的感覚を評価することも可能である。
【0055】
上述したように、本実施形態では力学的特性として、最大ひずみ(ε1)または最小ひずみ(ε2)を算出し、力学的感覚との相関関係を算出して評価を行った。しかし、力学的特性としては、所定方向にした変位量(U)を用いてもよい。
【0056】
上述したように、本実施形態では、所定の剤を2回塗布した状態を第二状態とした。しかし、これに限らず、所定の剤を1回塗布した状態を第二状態としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
100 皮膚感覚評価装置
110 特性算出手段
120 評価手段
130 入力手段
140 表示制御手段
150 表示手段
200 皮膚感覚評価システム
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