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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】飲料サーバ
(51)【国際特許分類】
   B67D 1/04 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
B67D1/04 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020218690
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022103822
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】平石 和弘
(72)【発明者】
【氏名】豊澤 智弘
(72)【発明者】
【氏名】池庭 愛
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇仁
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-329195(JP,A)
【文献】特開平05-294331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部を閉じるようにして前記口部に装着可能なキャップと、前記キャップに対して着脱可能なヘッドとを備え、前記ヘッドが前記キャップに取り付けられた取付状態のときに、前記キャップ及び前記ヘッドの飲料流路が相互に接続されるとともに前記キャップ及び前記ヘッドのガス流路が相互に接続され、前記ヘッド側の飲料流路を開閉するタップ機構の操作により、前記ヘッド側から前記ガス流路を介して前記容器内に導入されるガスの圧力で前記容器内の飲料が押し出されて注出口から注出される飲料サーバであって、
前記キャップの飲料流路及びガス流路は、非同軸的に配置されて前記キャップの天面側の互いに異なる位置にて開口する一方で、前記ヘッドの飲料流路及びガス流路は前記キャップの天面に対する前記ヘッドの対向面側に開口し、
前記キャップには、前記キャップの飲料流路を開閉する第1弁機構と、前記キャップのガス流路を開閉する第2弁機構とが設けられる一方で、前記ヘッドには、前記ヘッドのガス流路を開閉する第3弁機構が設けられ、
前記第1弁機構、前記第2弁機構及び前記第3弁機構のそれぞれは、前記飲料流路又は前記ガス流路を閉じる閉位置と、前記飲料流路又は前記ガス流路を開く開位置との間で移動可能な弁体と、前記弁体を前記閉位置に向けて押し付ける弁体駆動手段とを含み、
前記第1弁機構及び前記第2弁機構の各弁体は、前記キャップの前記天面側から前記弁体駆動手段に抗して前記開位置側に押し込み操作可能に設けられ、
前記第3弁機構の弁体は、前記ヘッドの前記対向面側から前記弁体駆動手段に抗して前記開位置側に押し込み操作可能に設けられ、
前記ヘッドには、前記ヘッドの前記キャップへの装着に伴って前記第1弁機構の弁体を前記開位置に向けて押し込み操作する第1操作部、及び前記第2弁機構の弁体を前記開位置に向けて押し込み操作する第2操作部が設けられ、
前記キャップには、前記ヘッドの前記キャップへの装着に伴って前記第3弁機構の弁体を前記開位置に向けて押し込み操作する第3操作部が設けられ、
前記取付状態にあるときに、前記キャップ及び前記ヘッドの前記飲料流路及び前記第1弁機構の前記弁体は前記キャップの中心線上に配置され、前記キャップ及び前記ヘッドの前記ガス流路、前記第2弁機構の前記弁体及び前記第3弁機構の弁体は前記中心線から偏心した位置に配置され、
前記第2弁機構及び前記第3弁機構の各弁体には、前記キャップから前記ヘッドが取り外された取外状態にて前記キャップの前記天面側又は前記ヘッドの前記対向面側に露出する弁軸部が設けられ、
前記第2操作部及び前記第3操作部のそれぞれは、前記中心線の回りを一周するように、かつ前記取付状態で前記弁軸部と接して当該弁軸部を押し込むように設けられている飲料サーバ。
【請求項2】
前記取付状態にて、前記キャップ及び前記ヘッドの各ガス流路を接続する隙間が前記中心線の回りを一周するようにして前記キャップと前記ヘッドとの間に形成される請求項に記載の飲料サーバ。
【請求項3】
各弁軸部の外周には、前記取付状態にて、前記キャップ及び前記ヘッドの各ガス流路と前記隙間とを結ぶ溝部が設けられている請求項2に記載の飲料サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に導入したガスの圧力を利用して容器内の飲料を注出するタイプの飲料サーバに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスの圧力を利用してビール等の飲料を容器から注出する飲料サーバとして、キャップが装着された樹脂製の飲料容器を蓋付きの保持容器内に収容してその蓋を閉じることにより、蓋側に設けられたガス流路の先端のニードルをキャップに突き刺して飲料容器内にガスを導入可能とする一方、キャップに接続された飲料用のチューブを注出切替用のタップ機構に導くことにより、タップ操作に応じて飲料を注出可能とした飲料サーバが知られている(例えば特許文献1及び2参照)。業務用の樽に用いられるスピアバルブと同様に構成されたバルブアッセンブリを樹脂製の容器の口部に装着し、そのバルブアッセンブリの弁体を容器内に向かって押し込むことにより、飲料流路とガス流路とを一体的に開いてガスの導入と飲料の注出とを実現する飲料注出装置も知られている(特許文献3参照)。ペットボトル等の樹脂製容器の口部に注出用のユニットを装着し、そのユニットに内蔵されたポンプにて容器内の飲料を汲み上げて注出する飲料サーバも提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-30768号公報
【文献】国際公開第2017/208808号明細書
【文献】特表2013-518004号公報
【文献】特開2012-012106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2の飲料サーバでは、キャップをニードルにて穿孔して容器内にガスを導入している。そのため、保持容器の蓋を開くと容器内のガス導入口が開放されてガスが逃げる。飲料が残っている飲料容器を飲料サーバ外で保管するためには、例えばキャップを交換して飲料容器を再密封するといった措置が必要である。特許文献3のようにスピアバルブタイプのバルブユニットを容器の口部に装着する場合は、容器内にガスの圧力を閉じ込めた状態で容器を保管することが可能である。しかし、スピアバルブタイプのバルブユニットは、容器の中心線側から外周側に向かって、飲料流路、弁体、及びガス流路を同軸的に配置する構成であるため、ガス流路の開口部分の内径が大きくなり、それにより、弁体やコイルばねも大型化してバルブユニットも大きくなりがちである。そのため、消費者向けのペットボトルのように、比較的容量が小さくて口部の口径も小さい飲料容器に対して特許文献3のようなバルブユニットを適用することは容易ではない。特許文献4のようなポンプユニットを利用する飲料サーバは、ガスの圧力を容器内に閉じ込める必要性が生じない。
【0005】
そこで、本発明は容器内にガスの圧力を閉じ込めた状態で容器を取り出すことが可能であって、かつ比較的小さい容器にも好適に用いることが可能な飲料サーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る飲料サーバは、容器の口部を閉じるようにして前記口部に装着可能なキャップと、前記キャップに対して着脱可能なヘッドとを備え、前記ヘッドが前記キャップに取り付けられた取付状態のときに、前記キャップ及び前記ヘッドの飲料流路が相互に接続されるとともに前記キャップ及び前記ヘッドのガス流路が相互に接続され、前記ヘッド側の飲料流路を開閉するタップ機構の操作により、前記ヘッド側から前記ガス流路を介して前記容器内に導入されるガスの圧力で前記容器内の飲料が押し出されて注出口から注出される飲料サーバであって、前記キャップの飲料流路及びガス流路は、非同軸的に配置されて前記キャップの天面側の互いに異なる位置にて開口する一方で、前記ヘッドの飲料流路及びガス流路は前記キャップの天面に対する前記ヘッドの対向面側に開口し、前記キャップには、前記キャップの飲料流路を開閉する第1弁機構と、前記キャップのガス流路を開閉する第2弁機構とが設けられる一方で、前記ヘッドには、前記ヘッドのガス流路を開閉する第3弁機構が設けられ、前記第1弁機構、前記第2弁機構及び前記第3弁機構のそれぞれは、前記飲料流路又は前記ガス流路を閉じる閉位置と、前記飲料流路又は前記ガス流路を開く開位置との間で移動可能な弁体と、前記弁体を前記閉位置に向けて押し付ける弁体駆動手段とを含み、前記第1弁機構及び前記第2弁機構の各弁体は、前記キャップの前記天面側から前記弁体駆動手段に抗して前記開位置側に押し込み操作可能に設けられ、前記第3弁機構の弁体は、前記ヘッドの前記対向面側から前記弁体駆動手段に抗して前記開位置側に押し込み操作可能に設けられ、前記ヘッドには、前記ヘッドの前記キャップへの装着に伴って前記第1弁機構の弁体を前記開位置に向けて押し込み操作する第1操作部、及び前記第2弁機構の弁体を前記開位置に向けて押し込み操作する第2操作部が設けられ、前記キャップには、前記ヘッドの前記キャップへの装着に伴って前記第3弁機構の弁体を前記開位置に向けて押し込み操作する第3操作部が設けられているものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一態様に係る飲料サーバの正面図。
図2】飲料サーバを図1の矢印II方向から見た状態を示す側面図。
図3】飲料サーバの内部構成を示す断面図。
図4】ヘッドをキャップから取り外した状態を示す斜視図。
図5】ヘッドをキャップに取り付けた状態を示す斜視図。
図6】キャップ及びヘッドの内部構成をヘッドが取り外された状態で示す断面図。
図7】キャップ及びヘッドの内部構成をヘッドが取り付けられた状態で示す断面図。
図8図6の要部を拡大して示す断面図。
図9図7の要部を拡大して示す断面図。
図10】キャップの斜視図。
図11】ヘッドをキャップに対する対向面側から観察した状態を示す斜視図。
図12】ヘッド側に設けられるプランジャの軸方向断面図。
図13】プランジャを部分的に破断して示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の一形態に係る飲料サーバを説明する。図1図3は飲料サーバ1の内部構成を示している。飲料サーバ1は、飲料が充填される容器の一例としてのボトル2内にガスを導入し、そのガスの圧力を利用してボトル2から飲料を注出するように構成されている。飲料は適宜に選択されてよいが、一例としてビールがボトル2内に充填される。ボトル2は樹脂製であり、その容量は例えば1リットル程度、多くても数リットル程度の比較的小さい範囲に設定される。その容量は、家庭的又は個人的な消費を想定したものである。ボトル2の素材としての樹脂は適宜に選択されてよいが、一例としてPET(ポリエチレンテレフタレートの略)樹脂がボトル2の素材として用いられる。図3から明らかなように、ボトル2の上端部には比較的小径の口部2aが形成され、その口部2aの外周には密閉用の雄ねじ部2bが形成され、雄ねじ部2bの下方にはネックリング2cが形成されている。それらの構成は、小売用の飲料容器として用いられる周知のPETボトルと同様である。
【0009】
飲料サーバ1は、ボトル2の口部2aに装着されるキャップ3と、そのキャップ3と組み合わされるヘッド4と、カートリッジホルダ5と、タップ機構6とを備えている。キャップ3は、ボトル2の雄ねじ部2bにねじ込まれることにより、口部2aを閉じるようにして口部2aに装着される。キャップ3及びヘッド4には、ボトル2内にガスを導入し、かつそのガスの圧力で飲料を取り出すための各種の部品が装着される。それらの詳細は順を追って説明する。
【0010】
カートリッジホルダ5には、注出用のガス、一例として二酸化炭酸ガスの供給源としてのガスカートリッジ(不図示)が着脱可能、あるいは交換可能に装着される。ガスカートリッジは、カートリッジホルダ5に対してその下方からねじ込まれるようにして装着される。カートリッジホルダ5には、ガスカートリッジを覆うカバー7が取り付け可能である。カートリッジホルダ5は、ガスチューブ8を介してヘッド4と接続される。
【0011】
タップ機構6は、ヘッド4から飲料チューブ9を介して送り出される飲料の注出、泡付け及び注出停止を切り替える機構である。一例として、タップ機構6は、レバー6aの操作により、その内部のプランジャ6b、6c(図3)を上下方向に選択的に駆動して飲料チューブ9の押し潰し量を変化させることにより、飲料チューブ9の先端に設定された注出口9aからの飲料の注出状態を変化させるように構成される。
【0012】
レバー6aが図示の停止位置にあるときは飲料チューブ9の内部流路が閉鎖するように飲料チューブ9がプランジャ6bにより押し潰されて飲料の注出が停止する。レバー6aが注出位置、例えば、図1の位置よりも右側(又は左側とされてもよい。)に倒された位置に操作されると、プランジャ6bによる飲料チューブ9の押し潰し量が減少して飲料チューブ9の内部流路が開通し、注出口9aから飲料が注出される。レバー6aが泡付け位置、例えば図1の位置よりも左側(又は右側であってもよい。)に倒された位置に操作されると、プランジャ6cによって飲料チューブ9がその内部にオリフィス状の微小流路が生じる程度まで押し潰されて飲料の泡が生成され、その泡が注出口9aから注出される。
【0013】
タップ機構6は注出口9aからの飲料の注出状態を切り替え可能であれば、必ずしも飲料チューブ9の押し潰し量を変化させる構成でなくともよい。例えば、飲料チューブ9に接続される飲料流路内に流路の断面積を変更可能な弁機構が組み込まれ、その弁機構がレバー6aによって操作されるものであってもよい。タップ機構6には、泡付け時における飲料チューブ9のプランジャ6cによる押し潰し量を調整する泡付け調整機構6dがさらに設けられている。
【0014】
ボトル2、及び飲料サーバ1の内部構成部品、すなわち、ボトル2に装着されたキャップ3、ヘッド4、カートリッジホルダ5及びタップ機構6は、適宜のケースに収容される。ケースは、一例として、ボトル2を収容する本体と、その本体と着脱自体に組み合わされるカバーとを含む。本体は、一例として保温性(保冷性と表現されてもよい。)を有する二重筒構造である。本体にペルチェ素子等の温度調整手段が設けられてもよい。カートリッジホルダ5及びタップ機構6はケースのカバー側に取り付けられて図1図3に示す定位置に保持される。
【0015】
図4及び図5に示すように、ヘッド4はキャップ3に対して着脱可能である。図4はヘッド4がキャップ3から取り外された取外状態を、図5はヘッド4がキャップ3に取り付けられた取付状態をそれぞれ示している。ヘッド4には、キャップ3に対してヘッド4を定位置に拘束するための拘束機構10が設けられている。拘束機構10は、一例として、支軸11を中心として回転自在に設けられた一対のレバー12と、それらのレバー12を支軸11の回りに回転させる駆動力をレバー12に付与する捩じりばね13とを含んでいる。レバー12の下端部には爪12aが設けられている。捩じりばね13は、爪12aが互いに接近する方向にレバー12を回転させる駆動力をレバー12に付与するようにして支軸11に取り付けられている。レバー12の上端側の操作部12bを互いに接近する方向に操作することにより爪12aが開く。爪12aが開いた状態でヘッド4をキャップ3の天面3a上に被せて操作部12bを解放すると、レバー12が捩じりばね13の力で回転し、爪12aがボトル2のネックリング2cと噛み合う。それにより、ヘッド4がキャップ3に対して拘束される。
【0016】
図3に示すように、キャップ3の下部には、ボトル2内の飲料を導出するためのインナチューブ15が接続される。インナチューブ15はボトル2の内底まで延ばされる。キャップ3及びヘッド4のそれぞれには、インナチューブ15を介して送り出される飲料を飲料チューブ9に導く飲料流路と、ガスチューブ8を介して送られるガスをボトル2内に導くガス流路と、それらの流路を開閉するための弁機構とが設けられる。以下、キャップ3及びヘッド4の構成を順に説明する。
【0017】
図6及び図7はキャップ3及びヘッド4の内部構成を示し、図6は取外状態に、図7は取付状態にそれぞれ対応する。図8図6の要部を拡大して示し、図9図7の要部を拡大して示している。なお、図中の参照符号は、取外状態を示す図6及び図8を中心に表記し、取付状態を示す図7及び図9では参照符号を適宜に省略する。これらの図に示すように、キャップ3は、キャップ本体21と、キャップ本体21の外周側に取り付けられるナット22と、キャップ本体21の下端側に取り付けられる弁蓋23とを含んだアッセンブリ部品として構成されている。
【0018】
キャップ本体21は、キャップ3に必要な機能を実現するための各種の部品の取付基礎となるべき部品である。図4及び図10にも示したように、キャップ本体21の上面側には、キャップ3の天面3aとしての環状の平面が形成されている。天面3aの中心部には、ヘッド4側と嵌合するための突部21aが設けられている。ナット22は、キャップ3をボトル2の口部2aに取り付けるためのねじ部品である。ナット22はキャップ本体21に対して中心線L1の回りに相対回転自在である。ボトル2、キャップ3及びヘッド4のそれぞれの中心線は互いに独立して観念されるが、図6図9ではボトル2、キャップ3及びヘッド4が互いに同軸であるため、共通の中心線L1で代表して示している。以下の説明でも、図6図9の中心線L1を、ボトル2、キャップ3、又はヘッド4の中心線を示すものとして適宜に使い分けて表現する。
【0019】
図6図9に示すように、キャップ3には、飲料流路24及びガス流路25が形成されている。飲料流路24は、キャップ3の中心線L1上に配置されている。ガス流路25は、その中心線L2がキャップ3の中心線L1から外周側に偏心するようにしてキャップ本体21に設けられている。つまり、飲料流路24とガス流路25とは非同軸的に配置されている。飲料流路24及びガス流路25のそれぞれは、キャップ3の天面3a側の互いに異なる位置にて開口する。したがって、飲料流路24の開口位置は中心線L1上であり、ガス流路25の開口位置は中心線L1に対して偏心した位置にある。
【0020】
キャップ3には、飲料流路24を開閉する第1弁機構の一例としての飲料弁機構30と、ガス流路25を開閉する第2弁機構の一例としてのガス弁機構40とが設けられている。飲料弁機構30は、キャップ本体21の飲料流路24内に形成された弁座31と、その弁座31と接触及び離間が可能な状態で飲料流路24内に組み込まれる弁体32と、弁体32の外周に嵌め合わされるスリーブ33と、スリーブ33を介して弁体32を弁座31に向けて押し付ける弁体駆動手段の一例としてのコイルばね34とを含む。弁座31は半球面状に形成されている。弁体32には、弁座31と密着可能な半球面状の輪郭を有するシール部35と、シール部35から下方、すなわちボトル2内に向かって延びる弁軸部36とが設けられている。弁軸部36は、スリーブ33を介してキャップ本体21に摺動自在に嵌め合わされる。それにより、弁体32は、シール部35が弁座31と密着した閉位置(図6及び図8の位置)と、シール部35が弁座31から離れた開位置(図7及び図9の位置)との間で、中心線L1に沿って移動可能である。
【0021】
弁軸部36の下端側にはチューブ接続部37が設けられている。チューブ接続部37にはインナチューブ15が接続される。弁軸部36の内部には、弁体内流路36aが中心線L1に沿って設けられている。弁体内流路36aの下端側はチューブ接続部37を貫いてその下端側に開口し、インナチューブ15の内部に通じている。一方、弁体内流路36aの上端側は、貫通孔36bを介してシール部35の外周側の隙間38と通じている。飲料流路24の上端側には、キャップ本体21の突部21aの上端面に開口する接続部24aが設けられている。弁体32のシール部35の上端中心部は、その接続部24aの内部に露出する。弁体内流路36a、貫通孔36b、隙間38及び接続部24aのそれぞれは、飲料流路24の構成要素として機能する。
【0022】
弁蓋23はキャップ本体21の下端側に固定されている。コイルばね34は、弁蓋23とスリーブ33の上端側の拡大部分との間に圧縮状態で取り付けられている。スリーブ33は、弁軸部36の拡大部分に対して下方から噛み合わされている。それにより、コイルばね34の圧縮に対する復元力がスリーブ33を介して弁体32に上方への駆動力として伝わる。その駆動力で弁体32のシール部35が弁座31に押し付けられて飲料流路24が閉じられる。一方、シール部35の接続部24aへの露出部分を下方に押し込み操作することにより、弁体32が開位置に移動してシール部35が弁座31から離れる。それにより、接続部24aと隙間38との間が接続されて飲料流路24が開通する。
【0023】
ガス弁機構40は、キャップ本体21のガス流路25内に形成された弁座41と、ガス流路25内に嵌め合わされた弁体42と、弁体42を弁座41に向けて押し付ける弁体駆動手段の一例としてのコイルばね43とを含む。弁座41は、上方に向かうほど内径が減少するテーパ面状に形成されている。弁体42には、弁座41と密着可能なシール部44と、シール部44から上方に向かってシール部44と同軸的に延びる弁軸部46とが設けられている。シール部44には、シール性を確保するためのOリング等のシール部材44aが設けられている。弁体42は、シール部材44aが弁座41と密着した閉位置(図6及び図8の位置)と、シール部材44aが弁座41から離れた開位置(図7及び図9の位置)との間で移動可能である。ただし、シール部材44aに代えて、シール部44の外周側に弁座41と密着可能なテーパ面が形成されてもよい。コイルばね43は、弁蓋23の外周の一部に形成された軸状のばね装着部47と弁体42との間に圧縮状態で取り付けられる。それにより、コイルばね43の圧縮に対する復元力が弁体42を上方に押し付ける駆動力として弁体42に作用する。その駆動力で弁体42のシール部材44aが弁座41に押し付けられてガス流路25が閉じられる。
【0024】
弁軸部46は、ガス流路25に沿って上方に延び、その上端部はキャップ本体21の天面3a側に露出する。弁体42が閉位置にあるとき、弁軸部46は天面3aから幾らか突出する(図10も参照)。弁軸部46の突出部分を下方に押し込み操作することにより、弁体42が開位置に移動する。それにより、ガス流路25が開かれる。図8及び図10に示すように、弁軸部46の外周には、ガス流路25の内壁から半径方向中心側に後退した溝部46aが形成されている。図示の例では、弁軸部46の外周に4本の溝部46aが設けられているが、その本数は適宜でよい。溝部46aは弁軸部46の上端、すなわち天面3a側における弁軸部46の露出部分まで達している。溝部46aの下端側は、弁体42が開位置にあるときに弁座41の下方まで達している。それにより、弁体42が開位置に移動したとき、溝部46aを介してガス流路25の開通が確保される。同様の目的で、弁蓋23のばね装着部47にも、ガス流路25の内壁から後退した溝部47aが形成されている。溝部47aはキャップ本体21の下端を超えて口部2a内の空間まで延びている。したがって、弁体42の下方では、溝部47aを介してガス流路25とボトル2の内部との開通が確保される。よって、溝部46a、47aはガス流路25の構成要素として機能する。なお、図示を省略したが、シール部44の外周側にも、弁体42が開位置にあるときのガス流路25の開通を確保するために適宜の溝部が設けられる。キャップ3の適宜の位置には、部品間のシール性を確保するためのOリング等のシール部材が装着される。それらのシール部材の位置は図示の通りであり、詳細な説明は省略する。
【0025】
図10に示すように、キャップ本体21の天面3aには、弁軸部46の上端部を半径方向に挟み込むようにして一対の突壁21c、21dが設けられている。突壁21c、21dは、キャップ本体21の周方向に沿って適度な長さで延びている。弁体42が閉位置にあるとき、つまり弁軸部46が天面3aから最大限に突出しているとき、弁軸部46の上端は突壁21c、21dと略同一高さにある。突壁21c、21dは、ヘッド4が取外状態にあるとき、弁軸部46がユーザによって不用意に押し込み操作されてガス流路25が誤って開くおそれを排除し、又は低減する作用効果を奏する。
【0026】
次に、ヘッド4側の構成を説明する。図6図9に示すように、ヘッド4は、ヘッド本体61と、中心線L1上を貫くようにしてヘッド本体61に取り付けられるプランジャ62と、ヘッド本体61の上部に取り付けられるばね受け63とを含んだアッセンブリ部品として構成されている。ヘッド本体61は、ヘッド4に必要な機能を実現するための各種の部品の取付基礎となるべき部品である。上述した拘束機構10の支軸11もヘッド4に取り付けられている。ヘッド本体61の下端側、言い換えればキャップ3の天面3aに対するヘッド4の対向面側には、キャップ本体21の天面3a側を受け入れるように、キャップ3の天面3a側の外形形状(突部21aも含む。)と相補的な凹部61aが形成されている(図11も参照)。
【0027】
プランジャ62は、ヘッド本体61に対して中心線L1に沿って相対移動できるようにしてヘッド本体61に組み付けられる。ばね受け63はヘッド本体61の上端に固定されている。プランジャ62の下端側には、凹部61a内に突出する嵌合部62aが形成されている。嵌合部62aの外形形状は、キャップ3の接続部24aの内周輪郭と相補的である。ヘッド4をキャップ3に被せた取付状態において、プランジャ62の嵌合部62aは、キャップ3側の弁体32のシール部35を押し込むようにして接続部24aに嵌まり込む。ヘッド本体61とプランジャ62のフランジ62b(図12及び図13も参照)との間にはコイルばね64が圧縮状態で装着される。コイルばね64の圧縮に対する復元力により、プランジャ62はそのフランジ62bがヘッド本体61のストッパ61bに突き当てられるようにしてヘッド本体61内に組み付けられている。コイルばね64がプランジャ62を押し付ける力は、キャップ3側のコイルばね43が弁体42を押し上げる力よりも大きく設定されている。したがって、ヘッド4の取付状態において、シール部35と接したプランジャ62は上方に変位せず、シール部35がコイルばね43に抗して開位置へと駆動される(図7及び図9参照)。それにより、嵌合部62aは、飲料弁機構30の弁体32を開位置に向けて押し込み操作する第1操作部の一例として機能する。
【0028】
図12及び図13にも示したように、プランジャ62の内部には、中心線L1に沿って延びる飲料流路65が形成されている。プランジャ62の上端には、飲料チューブ9と接続されるチューブ接続部66が設けられている。飲料流路65はチューブ接続部66の上端面に開口する。図6図9において、飲料流路65の下端側は閉鎖された状態で示されている。しかしながら、図11図13から明らかなように、嵌合部62aの下端側には、その嵌合部62aの円筒状の壁部を貫く複数の開口部62cが形成されている。したがって、飲料流路65は、キャップ3の天面3aに対する対向面側に開口する。図示例では、4つの開口部62cが周方向に等間隔で並べて形成されているが、その個数は適宜でよい。図では一部の開口部62cにのみ参照符号が付されている。
【0029】
プランジャ62の嵌合部62aがキャップ3側の弁体32を押し下げたとき、キャップ3側の飲料流路24は開口部62cを介してプランジャ62内の飲料流路65と接続される。キャップ3側の飲料流路24から流出する飲料は、それらの開口部62cを介してプランジャ62内の飲料流路65に流入する。したがって、開口部62cも飲料流路65の構成要素として機能する。図9では、キャップ3の弁体32が開位置に移動したときの飲料の流れが実線の矢印で例示されている。
【0030】
図11図13に示すように、嵌合部62aの内部には、飲料流路65を開口部62cごとの流域67(図13)に区分する仕切68が設けられている。4か所の開口部62cに対応して、仕切68は断面十字状である。仕切68を設けることにより、各開口部62cから流入する飲料の流れの干渉を抑えることができる。それにより、飲料流路65内における飲料の泡立ちが防止され、又は抑制される。
【0031】
図6図9に示すように、ヘッド4には、ガスチューブ8を介して送られるガスをボトル2内に導くためのガス流路71と、そのガス流路71を開閉する第3弁機構の一例としてのガス弁機構72とがさらに設けられている。ガス流路71は、その中心線L3がヘッド4の中心線L1から外周側に偏心するようにしてヘッド本体61に設けられている。中心線L1に対する中心線L3の偏心量、すなわち中心線L1、L3間の半径方向の距離は、キャップ3側における中心線L1に対するガス流路25の中心線L2の偏心量よりも大きく設定されている。ガス流路71の下端側は、飲料流路65と同様にキャップ3の天面3aに対する対向面側に開口する。より詳しくは、ガス流路71はヘッド本体61の凹部61a内に開口する。
【0032】
ガス弁機構72は、ヘッド本体61の取付孔61cにねじ込まれてヘッド本体61に固定される弁ケース73と、弁ケース73の内部に挿入される弁体74と、弁ケース73の上端側の開口を閉じるようにして弁ケース73に取り付けられる弁蓋75とを含んでいる。弁ケース73は中空円筒状であり、その内部はヘッド本体61の凹部61a内に開口することによりガス流路71として機能する。弁体74はガス流路71の中心線L3と同軸的に配置されている。弁蓋75にはガスチューブ8を接続するためのチューブ装着部75aが形成されている。チューブ装着部75aの中心部は弁ケース73内のガス流路71に通じている。
【0033】
弁ケース73の内部には弁座76が形成されている。弁座76は下方に向かうほど内径が減少するテーパ面状に形成されている。弁体74には、弁座76と密着可能なシール部77と、シール部77から下方、すなわち凹部61a内に向かってシール部77と同軸的に延びる弁軸部78とが設けられている。シール部77には、シール性を確保するためのOリング等のシール部材77aが設けられている。ただし、シール部材77aに代えて、シール部77に弁座76と密着可能なテーパ面が形成されてもよい。弁軸部78はシール部77よりも小径である。弁体74は、シール部材77aが弁座76と密着した閉位置(図6及び図8の位置)と、シール部材77aが弁座76から離れた開位置(図7及び図9の位置)との間で移動できるようにして弁ケース73内に収容されている。
【0034】
ガス弁機構72は、弁ケース73内に収容されて、弁体74を弁座76に向けて押し付ける弁体駆動手段の一例としてのコイルばね80をさらに含む。コイルばね80は、弁蓋75の下面側に配置されたばね受け81と、弁体74との間に圧縮状態で取り付けられる。それにより、コイルばね80の圧縮に対する復元力が弁体74を下方に押し付ける駆動力として弁体74に作用する。その駆動力で弁体74のシール部材77aが弁座76に押し付けられてガス流路71が閉じられる。一方、図11にも示したように、弁軸部78は、ガス流路71に沿って下方に延び、その下端部は弁ケース73を貫いてヘッド本体61の凹部61a内に露出する。弁体74が閉位置にあるとき、弁軸部78は凹部61a内に幾らか突出する。その突出部分を上方に押し込み操作することにより、弁体74が上方に変位してシール部材77aが弁座76から離れる。それにより、ガス流路71が開かれる。
【0035】
図11から明らかなように、ヘッド本体61の凹部61aの底側(図6図9において上側)には、環状突部61dが中心線L1の回りを一周するように形成されている。環状突部61dは、ヘッド4をキャップ3に装着した取付状態において、キャップ本体21の天面3aと幾らかの隙間82(図9)を介して対向する。隙間82もまた中心線L1の回りを一周するように設けられている。ヘッド4が取付状態にあるとき、キャップ3側のガス流路25及びヘッド4側のガス流路71のそれぞれは隙間82と接続され、それによりガス流路25、71が相互に隙間82を介して相互に接続される。
【0036】
環状突部61dは、ヘッド4が図7及び図9の取付状態にあるときに、キャップ本体21の一対の突壁21c、21d間に入り込むようにその内径及び外径が設定されている。したがって、ヘッド4をキャップ3に取り付けると、環状突部61dとキャップ3側の弁体42の弁軸部46とが接して弁体42が下方に押し込まれる。これにより、弁体42が開位置に移動してキャップ3側のガス流路25が開通する。したがって、環状突部61dは、キャップ3側のガス弁機構40の弁体42を開位置に向けて押し込み操作する第2操作部の一例として機能する。
【0037】
図6及び図8から明らかなように、ヘッド4側のガス弁機構72における弁体74の弁軸部78は、ヘッド4がキャップ3から取り外された取外状態のとき、言い換えれば弁体74のシール部材77aが弁座76に密着してガス流路71が閉じられているとき、環状突部61dよりも下方に幾らか大きく突出する。弁軸部78の半径方向の位置、言い換えればガス流路71の半径方向の位置は、キャップ3の天面3aと対向する位置、より詳しくは天面3aに設けられた突壁21cの位置と合わせるようにして設定されている。したがって、ヘッド4をキャップ3に被せた図7及び図9の取付状態において、弁軸部78を突壁21cによって上方に押し込むことが可能である。ただし、ヘッド4とキャップ3との周方向における位置関係によっては、弁軸部78が突壁21cに対して周方向にずれる場合がある。このような場合でも、天面3aにて弁軸部78を押し込むことができるように、弁軸部78の凹部61a内への突出量が設定されている。したがって、突壁21cを含む天面3aが、ヘッド4側のガス弁機構72の弁体74を開位置に向けて押し込み操作する第3操作部の一例として機能する。
【0038】
ヘッド4をキャップ3に被せる操作に伴って弁軸部78が上方に押し込まれることにより、弁体74は開位置に移動する。このとき、キャップ3側の弁体42もヘッド4側の環状突部61dに押し込まれて開位置に移動する。それらの動作により、ガス流路71が隙間82を介してキャップ3側のガス流路25と接続される。その結果、ガスカートリッジから送り出されたガスがボトル2内に導入される。図9では、弁体42、74がいずれも開位置に移動したときのガスの流れが破線の矢印で例示されている。
【0039】
図8及び図11に示すように、弁体74が開位置にあるときのガス流路71の開通を確保するため、弁軸部78の外周には、ガス流路71の内壁から半径方向中心側に後退した溝部78aが形成されている。溝部78aは弁軸部78の下端、すなわち凹部61a内への突出部分まで延びている。それにより、溝部78aはガス流路71の構成要素として機能する。なお、図示を省略したが、シール部77の外周側にも、シール部材77aが弁座76から離れているときのガス流路71の開通を確保するために、適宜の溝部が設けられる。ヘッド4の適宜の位置には、部品間のシール性を確保するためのOリング等のシール部材が装着される。それらのシール部材の位置は図示の通りであり、詳細な説明は省略する。
【0040】
以上のように構成された飲料サーバ1によれば、ボトル2の口部2aにキャップ3を装着し、そのキャップ3に対してヘッド4を被せるように取り付けることにより、キャップ3側の弁体32、42がヘッド4側のプランジャ62及び環状突部61dに押されて開位置に移動し、ヘッド4側の弁体74がキャップ3側の天面3a(突壁21cを含む。)に押されて開位置に移動する。そのため、ヘッド4をキャップ3に取り付ける操作に伴ってキャップ3の飲料流路24とヘッド4の飲料流路65とが相互に接続され、かつキャップ3のガス流路25とヘッド4のガス流路71とが相互に接続される。これにより、ボトル2内にガス流路71、25を介してガスが導入され、その圧力でボトル2内の飲料を押し出すことが可能となる。そして、タップ機構6のレバー6aを操作することにより、飲料又はその泡を注出口9aから注出することができる。
【0041】
一方、ヘッド4をキャップ3から取り外せば、キャップ3側の弁体32、42がコイルばね34、43の力で閉位置に移動してキャップ3の飲料流路24及びガス流路25が閉じる。したがって、ボトル2内にガスの圧力を閉じ込めて飲料の流出を阻止した状態で、ボトル2を飲料サーバ1から取り出して適宜の場所で保管することが可能である。また、ヘッド4の取り外しに伴って、ヘッド4側の弁体74もコイルばね80の力で閉位置に移動し、ヘッド4のガス流路71も閉じられる。そのため、ヘッド4を取り外してもガスカートリッジのガスがヘッド4外に漏れ出すおそれもない。
【0042】
キャップ3の飲料流路24とガス流路25とを、それぞれの中心線L1、L2が互いに異なるように非同軸的に配置して天面3aの互いに異なる位置に開口させているので、ガス流路25を圧力の導入に必要な小径の流路として設けることが可能である。飲料流路の外周に同軸的にガス流路を設け、そのガス流路を比較的大きな径で天面側に開口させる必要はない。そのため、飲料弁機構30及びガス弁機構40のそれぞれの弁体32、42は、飲料流路24及びガス流路25の開閉に必要な程度の比較的小さいもので足りる。したがって、弁体32、42を駆動するためのコイルばね34、43も巻き径を小さくして弁機構30、40をコンパクトに構成することができる。よって、口径が比較的小さい消費者向けの小容量のボトル2であっても、キャップ3を適合させることが可能である。
【0043】
ヘッド4に関しても、その中心線L1上では飲料流路65を確保しつつキャップ3の弁体32を押し込むための手段の一例としてのプランジャ62を配置すればよい。弁体32のシール部35を回り込んだ飲料を、プランジャ62の開口部62cから内部の飲料流路65に流入させる構成としているため、プランジャ62それ自体も比較的小型に構成することができる。プランジャ62の外周側のガス流路71及びこれを開閉するガス弁機構72に関しても、弁体74、コイルばね80といった構成部品を小型化することができる。それにより、ヘッド4も比較的コンパクトに構成することが可能である。
【0044】
ガス弁機構40の弁体42を操作するための環状突部61d、及びガス弁機構72の弁体74を操作するための天面3aは、いずれも中心線L1の回りを一周するように設けられている。したがって、弁体42の弁軸部46及び弁体74の弁軸部78のそれぞれが中心線L1から偏心した位置に配置されていても、ヘッド4の装着時におけるキャップ3とヘッド4との周方向における位置関係に関わりなく、弁体42、74を押し込み操作することができる。しかも、ガス流路25、71を、キャップ3とヘッド4との間に形成される隙間82を介して接続するため、ガス流路25の開口位置に対してガス流路71の開口位置が周方向にずれていてもガス流路25、71を相互に接続させることが可能である。
【0045】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、適宜の変形又は変更が施された形態にて実施されてよい。例えば、上記の形態では、第2操作部及び第3操作部のそれぞれを中心線L1の回りに一周する環状の形状としたが、第2操作部及び第3操作部は必ずしもそのような形状に形成されることを要しない。キャップとヘッドとの周方向の位置関係を一定範囲に収める手段を講じることにより、第2操作部及び第3操作部を周方向の適宜の範囲に限定的に設けるようにしてもよい。一例として、上記の形態において、キャップ3の突壁21cとヘッド4の弁体74の弁軸部78とが接する範囲でヘッド4がキャップ3に装着されるように、両者の周方向の位置関係を設定する手段を講じることにより、突壁21cのみを第3操作部として機能させてもよい。位置関係を設定する手段としては、例えばキャップ3とヘッド4との間に、周方向の位置関係を一定に保つための嵌合部や係合部等を設けてもよいし、キャップ3及びヘッド4のそれぞれに適切な位置関係を示す目視可能な指標部を設けて、ユーザがその指標部を目安としてヘッド4を装着するように仕向けてもよい。
【0046】
上記の形態では、キャップ3及びヘッド4のそれぞれの飲料流路24、65をキャップ3の中心線L1上に配置する一方、ガス流路25、71を中心線L1から偏心した位置に配置しているが、飲料流路及びガス流路はそのように配置される例に限定されない。例えば、飲料流路及びガス流路のそれぞれが、キャップの中心線に対して偏心した位置でかつ互いに異なる位置に配置されてもよい。その場合、隙間82と同様の構成によって飲料流路同士、及びガス流路同士を接続してもよいし、キャップとヘッドと周方向の位置関係を一定に保つ手段を講じた上で、キャップ側の飲料流路とヘッド側の飲料流路とが取付状態で連なるようにそれらの開口部の位置を合わせ、かつキャップ側のガス流路とヘッド側のガス流路とが取付状態で連なるようにそれらの開口部の位置を合わせるものとしてもよい。
【0047】
弁座31、41、76及び弁体32、42、74は図示の形状に限らず、飲料流路又はガス流路を開閉し得る限りにおいて適宜の形状で設けられてよい。弁体駆動手段はコイルばねに限定されず、弁体を閉位置に向けて押し付けることが可能な限りにおいて適宜の手段が採用されてよい。例えば、ヘッド側の第3機構の弁体に関して、ガスカートリッジ等のガス供給源からのガス圧力を弁体駆動手段として利用して弁体を閉位置に押し付けるものとしてもよい。
【0048】
上述した実施の形態及び変形例のそれぞれから導き出される本発明の各種の態様を以下に記載する。なお、以下の説明では、本発明の各態様の理解を容易にするために添付図面に図示された対応する構成要素を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0049】
本発明の一態様に係る飲料サーバ(1)は、容器(2)の口部(2a)を閉じるようにして前記口部に装着可能なキャップ(3)と、前記キャップに対して着脱可能なヘッド(4)とを備え、前記ヘッドが前記キャップに取り付けられた取付状態のときに、前記キャップ及び前記ヘッドの飲料流路(24、65)が相互に接続されるとともに前記キャップ及び前記ヘッドのガス流路(25、71)が相互に接続され、前記ヘッド側の飲料流路を開閉するタップ機構(6)の操作により、前記ヘッド側から前記ガス流路を介して前記容器内に導入されるガスの圧力で前記容器内の飲料が押し出されて注出口(9a)から注出される飲料サーバであって、前記キャップの飲料流路(24)及びガス流路(25)は、非同軸的に配置されて前記キャップの天面(3a)側の互いに異なる位置にて開口する一方で、前記ヘッドの飲料流路(65)及びガス流路(71)は前記キャップの天面に対する前記ヘッドの対向面側に開口し、前記キャップには、前記キャップの飲料流路を開閉する第1弁機構(30)と、前記キャップのガス流路を開閉する第2弁機構(40)とが設けられる一方で、前記ヘッドには、前記ヘッドのガス流路を開閉する第3弁機構(72)が設けられ、前記第1弁機構、前記第2弁機構及び前記第3弁機構のそれぞれは、前記飲料流路又は前記ガス流路を閉じる閉位置と、前記飲料流路又は前記ガス流路を開く開位置との間で移動可能な弁体(32、42、74)と、前記弁体を前記閉位置に向けて押し付ける弁体駆動手段(34、43、80)とを含み、前記第1弁機構及び前記第2弁機構の各弁体は、前記キャップの前記天面側から前記弁体駆動手段に抗して前記開位置側に押し込み操作可能に設けられ、前記第3弁機構の弁体は、前記ヘッドの前記対向面側から前記弁体駆動手段に抗して前記開位置側に押し込み操作可能に設けられ、前記ヘッドには、前記ヘッドの前記キャップへの装着に伴って前記第1弁機構の弁体(32)を前記開位置に向けて押し込み操作する第1操作部(62a)、及び前記第2弁機構の弁体(42)を前記開位置に向けて押し込み操作する第2操作部(61d)が設けられ、前記キャップには、前記ヘッドの前記キャップへの装着に伴って前記第3弁機構の弁体(74)を前記開位置に向けて押し込み操作する第3操作部(3a、21c)が設けられたものである。
【0050】
上記態様の飲料サーバによれば、ヘッドをキャップに取り付けることにより、第1弁機構の弁体が第1操作部に、第2弁機構の弁体が第2操作部に、第3弁機構の弁体が第3操作部によってそれぞれ押し込まれて各弁体が開位置に移動する。したがって、キャップ側の飲料流路、ガス流路及びヘッド側のガス流路がそれぞれ開通して、キャップの飲料流路とヘッドの飲料流路とが相互に接続され、かつキャップのガス流路とヘッドのガス流路とが相互に接続されて容器内にガスが導入される。そして、タップ機構を操作することにより、ガスの圧力を利用して飲料を容器から押し出して注出することができる。一方、ヘッドをキャップから取り外せば、各操作部による弁体の押し込みが解除されて各弁体が閉位置に移動し、キャップの飲料流路及びガス流路が閉じるとともに、ヘッドのガス流路も閉じる。したがって、容器内にガスの圧力を閉じ込めて飲料の流出を阻止した状態で、容器を飲料サーバから取り出して適宜の場所で保管することが可能である。また、ヘッドを取り外してもガスがヘッド外に漏れ出すおそれもない。
【0051】
キャップの飲料流路とガス流路とが非同軸的に配置されてキャップの天面側の互いに異なる位置にて開口するため、ガス流路を飲料流路の外周側に同軸的に配置する従来例と比較して、キャップ側のガス流路を圧力の導入に必要な小径の流路として設けることが可能である。したがって、キャップ側の第1弁機構及び第2弁機構も、それぞれの弁体を飲料流路及びガス流路の開閉に必要な程度に小型化して、それらの弁機構を比較的コンパクトに構成することが可能である。よって、口径が比較的小さい小容量の容器に対してもキャップを比較的容易に適合させることができる。
【0052】
上記態様の飲料サーバにおいては、前記取付状態にあるときに、前記キャップ及び前記ヘッドの前記飲料流路及び前記第1弁機構の前記弁体は前記キャップの中心線(L1)上に配置され、前記キャップ及び前記ヘッドの前記ガス流路、前記第2弁機構の前記弁体及び前記第3弁機構の弁体は前記中心線から偏心した位置に配置されてもよい。飲料流路は飲料の流量を確保する観点からキャップの中心線上に配置して必要十分な内径を与えることが好都合である。一方、ガス流路はガスの圧力を容器内に導入できれば足りるので飲料流路に比してその断面積を小さく設定することが可能である。そのため、ガス流路をキャップの中心線から偏心した位置に配置しても、キャップの大径化を抑えることが可能である。このような配置を採用することにより、小口径の容器に対する適応性を高めることができる。
【0053】
前記ヘッドの前記飲料流路は前記第1操作部の内部を経由するように設けられ、前記第1操作部には、当該第1操作部の外周側と内周側とを貫く開口部(62c)が設けられてもよい。これによれば、キャップの中心線上に配置された第1弁機構の弁体を押し込むための第1操作部をヘッド側の中心線上に配置しつつ、その内部をヘッド側の飲料流路として利用することができる。これにより、第1操作部とヘッド側の飲料流路とを合理的に配置してヘッドの大型化を抑えることができる。
【0054】
前記第1操作部の前記開口部は、当該第1操作部の周方向に沿って設定された複数の位置のそれぞれに設けられ、前記第1操作部の内部には、前記ヘッドの前記飲料流路を前記開口部ごとの流域(67)に区分する仕切(68)が設けられてもよい。これによれば、第1操作部の外周側から導かれる飲料を各開口部に対応する流域に区別して流入させて飲料流路内における飲料の流れの干渉を抑え、飲料の不所望な泡立ちを防止することができる。
【0055】
前記第2弁機構及び前記第3弁機構の各弁体(42、74)には、前記キャップから前記ヘッドが取り外された取外状態にて前記キャップの前記天面側又は前記ヘッドの前記対向面側に露出する弁軸部(46、78)が設けられ、前記第2操作部及び前記第3操作部のそれぞれは、前記中心線(L1)の回りを一周するように、かつ前記取付状態で前記弁軸部と接して当該弁軸部を押し込むように設けられてもよい。第2弁機構及び第3弁機構のそれぞれの弁体がキャップの中心線から偏心した位置に配置される場合、キャップとヘッドとの間における周方向の位置関係が不定となり、それに伴って、第2弁機構の弁体とヘッドとの間における周方向の位置関係、第3弁機構の弁体とキャップとの周方向の間における位置関係もまた不定となる。しかしながら、第2操作部、及び第3操作部のそれぞれが、キャップの中心線の回りを一周するように設けられていれば、キャップとヘッドとの間における周方向の位置関係に関わりなく、第2弁機構及び第3弁機構のそれぞれの弁体と第2操作部及び第3操作部とを確実に接触させて各弁体を押し込むことが可能である。したがって、ヘッドをキャップに装着する際に、周方向の位置関係に留意する必要がなく、ヘッドの装着に関する手間が軽減される。
【0056】
前記取付状態にて、前記キャップ及び前記ヘッドの各ガス流路を接続する隙間(82)が前記中心線の回りを一周するようにして前記キャップと前記ヘッドとの間に形成されてもよい。これによれば、キャップ側のガス流路とヘッド側のガス流路とを、キャップとヘッドとの間における周方向の位置関係に関わりなく確実に接続することができる。
【0057】
各弁軸部の外周には、前記取付状態にて、前記キャップ及び前記ヘッドの各ガス流路と前記隙間とを結ぶ溝部(46a、78a)が設けられてもよい。これによれば、第2弁機構及び第3弁機構のそれぞれの弁体の弁軸部をガス流路内においてキャップの天面側、及びヘッドの対向面側に露出するまで延ばしても、ガス流路が弁軸部にて塞がれることなく溝部によってガス流路の開通状態を確保することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 飲料サーバ
2 ボトル(容器)
3 キャップ
3a 天面(第3操作部)
4 ヘッド
6 タップ機構
8 ガスチューブ
9 飲料チューブ
9a 注出口
21 キャップ本体
21c 突壁(第3操作部)
24 飲料流路
25 ガス流路
30 飲料弁機構(第1弁機構)
32 弁体
36 弁軸部
40 ガス弁機構(第2弁機構)
42 弁体
46 弁軸部
46a 溝部
61 ヘッド本体
61d 環状突部(第2操作部)
62 プランジャ
62a 嵌合部(第1操作部)
62c 開口部
65 飲料流路
67 流域
68 仕切
71 ガス流路
72 ガス弁機構(第3弁機構)
74 弁体
78 弁軸部
78a 溝部
82 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13