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特許7570926医療デバイスのための放射線不透過性及びエコー源性コーティング
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  • 特許-医療デバイスのための放射線不透過性及びエコー源性コーティング 図1
  • 特許-医療デバイスのための放射線不透過性及びエコー源性コーティング 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】医療デバイスのための放射線不透過性及びエコー源性コーティング
(51)【国際特許分類】
   A61L 29/08 20060101AFI20241015BHJP
   A61L 29/10 20060101ALI20241015BHJP
   A61L 27/34 20060101ALI20241015BHJP
   A61L 27/44 20060101ALI20241015BHJP
   A61L 27/02 20060101ALI20241015BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20241015BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20241015BHJP
   A61L 29/06 20060101ALI20241015BHJP
   A61L 29/12 20060101ALI20241015BHJP
   A61L 29/14 20060101ALI20241015BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20241015BHJP
   A61L 31/10 20060101ALI20241015BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20241015BHJP
   A61L 31/02 20060101ALI20241015BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20241015BHJP
   A61B 17/00 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
A61L29/08 100
A61L29/10
A61L27/34
A61L27/44
A61L27/02
A61L27/18
A61L27/50
A61L29/06
A61L29/12 100
A61L29/14
A61L31/06
A61L31/10
A61L31/12 100
A61L31/02
A61L31/14
A61B17/00 700
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020566199
(86)(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 US2019017924
(87)【国際公開番号】W WO2019161004
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】62/630,334
(32)【優先日】2018-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】323002956
【氏名又は名称】ミツビシ・ケミカル・アメリカ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】キャロル、クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、シャオシ・ケビン
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-522172(JP,A)
【文献】特表2009-522071(JP,A)
【文献】特表2007-525287(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0143260(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0130962(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0053770(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0305881(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0148889(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/18
A61B 13/00-18/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波の視認性を向上させるコーティングを含む超音波ガイド下手技のための医療デバイスであって、前記コーティングがポリマーマトリックス内に分散された放射線不透過性材料を含み、前記放射線不透過性材料が、次炭酸ビスマス、酸化ビスマス及びオキシ塩化ビスマスからなる群から選択され、前記超音波の視認性の向上が、コーティングされていない医療デバイスと比較した、超音波ガイド下手技におけるリアルタイムガイダンスのためのイメージングの視認性の向上を意味する、医療デバイス。
【請求項2】
前記ポリマーマトリックスがポリウレタンを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記ポリマーマトリックスがポリカーボネートベースのウレタンを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記ポリマーがシリコーンを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の医療デバイスを製造する方法であって、前記マトリックス及び前記放射線不透過性材料を含むコーティング溶液に基板を浸漬することを含む、方法
【請求項6】
前記コーティング溶液が、前記マトリックス及び前記放射線不透過性材料の組合せを0.1~20%(重量対体積)含む、請求項に記載の方法
【請求項7】
前記コーティング溶液の溶媒が、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、又は両者の混合物のいずれかである、請求項に記載の方法
【請求項8】
前記コーティングを得るために、複数の浸漬処理が使用される、請求項に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年2月14日に出願された米国仮特許出願第62/630,334号の優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、エコー源性及び放射線不透過性の両方を有する医療デバイスのためのコーティングを製造するための方法を開示する。
【背景技術】
【0003】
超音波は、針、カテーテル及びガイドワイヤの配置のガイド、血管アクセス、神経ブロック、胸水又は腹水貯留のドレナージ、並びに経皮的気管切開に広く使用されている。超音波は、ターゲット及び側副構造の特定、並びに針及びその他の挿入されたデバイスを正確に配置するためのリアルタイムガイダンスを可能にする。
【0004】
超音波ガイド下手技では、針又はその他の挿入されたデバイスの視認性は非常に重要である。針の位置を正確に特定しないと、側副構造への損傷が発生し得る可能性がある。しかし、ほとんどの医療デバイスは、デバイスが挿入される組織の音響インピーダンスと同様の音響インピーダンスを有する。その結果、デバイスの視認性が悪くなり、正確な配置が非常に困難になる可能性がある。
【0005】
次炭酸ビスマス及び硫酸バリウムなどの放射線不透過性材料は、放射線学的介入中に使用されるガイドワイヤ又はステントなど様々なデバイスの設計に広く使用されている。所与の血管内デバイスの放射線不透過性は、介入手技中にデバイスを追跡できるため重要である。
【0006】
放射線不透過性材料の密度が高いため、超音波の視認性のコントラストを提供するためにそれらを使用することが可能である。さらに、エコー源性及び放射線不透過性の両方を有する医療デバイスのためのコーティングを提供することは有利である。
【発明の概要】
【0007】
上記に照らして、本発明は、エコー源性及び放射線不透過性の両方を有する医療デバイスコーティングを提供する。より具体的には、本発明のコーティング組成物は、放射線不透過性材料を分散させたポリマーマトリックスを含む。コーティング組成物に使用されるポリマーは、好ましくは、基板表面に強く付着し、放射線不透過性材料の均一な分散を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ポリマーマトリックス及び放射線不透過性材料の分散を含む、本発明のエコー源性及び放射線不透過性コーティングを使用してコーティングされた基板を表す図面である。
図2】2つの超音波画像の比較を示す。左側の画像は、水中に浸されたコーティングされていないステンレス製の針の超音波画像に該当する。右側の画像は、水中に浸されたコーティングされたステンレス製の針の超音波画像に該当する。コーティングされたステンレス製の針は、実施例Aに記載されているように、本発明のエコー源性及び放射線不透過性コーティングを使用して調製した。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照すると、針又はその他の医療デバイスの外面である基板は、放射線不透過性材料を分散させたポリマー及び/又は他の材料によって形成されたマトリックスでコーティングされている。
【0010】
ポリマーマトリックスを形成するために使用されるポリマーは、好ましくは生体適合性であり、良好な引張強度並びに広範囲の金属及びポリマー基板への接着性を有する。適切なポリマーには、ポリウレタン(PU)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ-N-ビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、及びそれらのコポリマーなどの医療デバイスのためのポリマーコーティングとして使用されてきたものが含まれる。これらのポリマーの混合物及びブレンドも使用できる。他のマトリックスベースのコーティング又はジャケットも使用できる。
【0011】
ポリマーマトリックス内に分散させるために使用される放射線不透過性材料は、好ましくは生体適合性である。適切な放射線不透過性材料には、限定されないが、次炭酸ビスマス、酸化ビスマス、オキシ塩化ビスマス及び硫酸バリウムが含まれる。
【0012】
放射線不透過性材料及びポリマーは、コーティング組成物を提供するために、1つ又は複数の有機溶媒中で一緒に混合できる。使用できる適切な溶媒には、限定されないが、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグリム、N-メチルピロリドン、酢酸エチル、エチレン及びプロピレングリコールジアセテート、エチレン及びプロピレングリコールモノアセテートのアルキルエーテル、トルエン、キシレン、並びにt-ブタノール及びジアセトンアルコールなどの立体障害のあるアルコールが含まれる。好ましい実施形態では、有機溶媒又は溶媒混合物は蒸発性である。例えば、テトラヒドロフランを使用できる。全固体負荷は、約5重量%と約30重量%との間であり得、ここで、放射線不透過性材料の負荷は、ポリマーの負荷の約10重量%と約200重量%との間である。
【0013】
医療デバイスのエコー源性を向上させるために、医療デバイスの表面の少なくとも一部を本コーティング組成物でコーティングできる。医療デバイスの形状に応じて、スピンコーティング、ドロップキャスティング、ゾーンキャスティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、スプレーなどの様々なコーティング技術を使用できる。例えば、医療デバイスは、カテーテル、ガイドワイヤ若しくは針などの細長い部材、又はインプラント若しくはバルーンなどの平面若しくは球形の部材であり得る。コーティングの典型的な厚さは、約0.01mmから約0.2mmの範囲であり得る。コーティング組成物の1回の塗布によって達成される厚さは、コーティング組成物の粘度、コーティング方法、並びにコーティングが塗布される速度及び温度に依存する。いくつかの実施形態では、必要な厚さを持たせるために、コーティングの複数回の塗布が必要とされ得る。次いで、コーティングを乾燥させる。
【実施例
【0014】
実施例A
ステンレス製の針を本発明の方法でコーティングした。最初に、5%(w/v)のChronoFlex ALをテトラヒドロフランに溶解し、続いて、10%(w/v)の次炭酸ビスマスを均一な溶液が得られるまでChronoFlex溶液に混合することによってコーティング溶液を調製した。次いで、ステンレス製の針をコーティング溶液に浸し、ゆっくりと引き上げた。次いで、ステンレス製の針を室温で30分間乾燥させた。
【0015】
実施例B
実施例Aに記載された本発明の耐久性エコー源性コーティングを使用して調製されたステンレス製の針を、水中での超音波の視認性について、コーティングされていないステンレス製の針と比較した。図2は、2つの超音波画像の比較を示す。左側の画像は、水に浸されたコーティングされていないステンレス製の針の超音波画像に該当する。右側の画像は、水中に浸されたコーティングされたステンレス製の針の超音波画像に該当する。コーティングされた針は、コーティングされていない針と比較して、超音波の視認性が大幅に向上している。
【0016】
本教示は、その精神又は本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化できる。したがって、前述の実施形態は、本明細書に記載の本教示を限定するのではなく、すべての点で例示的であると見なされるべきである。したがって、本教示の範囲は、前述の説明よりむしろ添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び均等の範囲内にあるすべての変更は、特許請求の範囲内に包含することが意図されている。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載した発明を付記する。
[1] 超音波の視認性を向上させるコーティングを含む医療デバイスであって、前記コーティングがポリマーマトリックス内に分散された放射線不透過性材料を含む、医療デバイス。
[2] 前記ポリマーマトリックスがポリウレタンを含む、[1]に記載の医療デバイス。
[3] 前記ポリマーマトリックスがポリカーボネートベースのウレタンを含む、[1]に記載の医療デバイス。
[4] 前記ポリマーがシリコーンを含む、[1]に記載の医療デバイス。
[5] 前記放射線不透過性材料が次炭酸ビスマスを含む、[1]に記載の医療デバイス。
[6] 前記放射線不透過性材料が酸化ビスマスを含む、[1]に記載の医療デバイス。
[7] 前記放射線不透過性材料がオキシ塩化ビスマスを含む、[1]に記載の医療デバイス。
[8] 前記放射線不透過性材料が硫酸バリウムを含む、[1]に記載の医療デバイス。
[9] 前記コーティングが、前記マトリックス及び前記放射線不透過性材料を含むコーティング溶液に基板を浸漬することによって調製される、[1]に記載の医療デバイス。
[10] 前記コーティング溶液が、前記マトリックス及び前記放射線不透過性材料の組合せを0.1~20%(重量対体積)含む、[9]に記載の医療デバイス。
[11] 溶媒が、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、又は両者の混合物のいずれかである、[9]に記載の医療デバイス。
[12] 前記コーティングを得るために、複数の浸漬処理が使用される、[9]に記載の医療デバイス。
図1
図2