(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】微粒子製造装置及び微粒子製造方法並びに微粒子の物性制御方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/08 20060101AFI20241015BHJP
B01J 2/00 20060101ALI20241015BHJP
B22F 9/14 20060101ALI20241015BHJP
H05H 1/26 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
B01J19/08 K
B01J2/00 A
B22F9/14 Z
H05H1/26
(21)【出願番号】P 2021021595
(22)【出願日】2021-02-15
【審査請求日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2020063873
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】織田 晃祐
(72)【発明者】
【氏名】平泉 健一
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-4842(JP,A)
【文献】特開平8-111298(JP,A)
【文献】特開2004-235349(JP,A)
【文献】特開2010-250959(JP,A)
【文献】特開2012-23105(JP,A)
【文献】特開2012-55840(JP,A)
【文献】特表2012-515084(JP,A)
【文献】特開2013-212958(JP,A)
【文献】特開2014-186846(JP,A)
【文献】特開2016-24936(JP,A)
【文献】国際公開第2019/216343(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/50202(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 2/00 - 49/90
B22F 9/00 - 9/30
B82Y 40/00
H05H 1/00
1/24 - 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーと、原料供給装置と、プラズマガス供給装置と、DCプラズマトーチと、プラズマ発光解析装置と、制御装置と、を備えた微粒子製造装置であって、
前記プラズマガス供給装置から供給されるプラズマガスに対して、前記DCプラズマトーチによって所定の電圧を印加させることで発生した直流熱プラズマを用いて、前記原料供給装置より供給される原料を加熱することにより前記原料をガス化させて、前記チャンバー内で冷却することによって、微粒子を製造するように構成され、
前記プラズマ発光解析装置は、前記直流熱プラズマの発光を解析するものであり、
前記制御装置は、前記プラズマ発光解析装置により測定された、前記プラズマガス又は前記原料の発光に由来する波長λの出力に基づき、前記プラズマガスの供給量、プラズマ出力、前記原料の供給量のうち少なくともいずれかを制御するものであることを特徴とする微粒子製造装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記波長λの出力が、所定の出力閾値を超えた場合に、前記プラズマガスの供給量、前記プラズマ出力、前記原料の供給量のうち少なくともいずれかを制御するものであることを特徴とする請求項1に記載の微粒子製造装置。
【請求項3】
前記出力閾値が、A(t)±n×σ(t)(nは自然数)であることを特徴とする請求項2に記載の微粒子製造装置。ここで、A(t)は、事前に行った微粒子製造時における複数回分の良好な結果における波長λの出力の時間変化(以下、「出力Y(t)」と呼ぶ。なお、tは時間を表す。)から算出された平均値、σ(t)は、出力Y(t)及び平均値A(t)から算出されたバラツキを表す。
【請求項4】
前記出力閾値が、A(t)±m×σ(mは自然数)であることを特徴とする請求項2に記載の微粒子製造装置。ここで、A(t)は、事前に行った微粒子製造時における複数回分の良好な結果における波長λの出力の時間変化(以下、「出力Y(t)」と呼ぶ。なお、tは時間を表す。)から算出された平均値、σは、出力Y(t)及び平均値A(t)から算出されたバラツキσ(t)の時間平均値を表す。
【請求項5】
前記出力閾値が、事前に設定した一定値であることを特徴とする請求項2に記載の微粒子製造装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
所定の時間における波長λの出力の時間平均値B(t)を算出し、該時間平均値B(t)が所定の時間平均閾値を超えた場合に、前記プラズマガスの供給量、前記プラズマ出力、前記原料の供給量のうち少なくともいずれかを制御するように構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の微粒子製造装置。
【請求項7】
前記時間平均閾値が、事前に行った微粒子製造時における良好な結果に基づき設定された値であることを特徴とする請求項6に記載の微粒子製造装置。
【請求項8】
前記制御装置は、
所定の時間における波長λの出力の時間変化のバラツキσ'(t)を算出し、該σ'(t)が所定のバラツキ閾値を超えた場合に、前記プラズマガスの供給量、前記プラズマ出力、前記原料の供給量のうち少なくともいずれかを制御するように構成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の微粒子製造装置。
【請求項9】
前記バラツキ閾値が、事前に行った微粒子製造時における良好な結果に基づき設定された値であることを特徴とする請求項8に記載の微粒子製造装置。
【請求項10】
前記制御装置は、
所定の時間における波長λの出力の時間平均値B(t)及び時間変化のバラツキσ'(t)を算出するとともに、バラツキσ'(t)/時間平均値B(t)(以下、単に「σ'(t)/B(t)」と表記する。)を算出し、該σ'(t)/B(t)が所定のσ'/B閾値を超えた場合に、前記プラズマガスの供給量、前記プラズマ出力、前記原料の供給量のうち少なくともいずれかを制御するように構成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の微粒子製造装置。
【請求項11】
前記σ'/B閾値が、事前に行った微粒子製造時における良好な結果に基づき設定された値であることを特徴とする請求項10に記載の微粒子製造装置。
【請求項12】
プラズマガスに対して、DCプラズマトーチを用いて所定の電圧を印加することで発生した直流熱プラズマを用いて、原料を加熱することにより前記原料をガス化させた後、冷却することによって、微粒子を製造するにあたり、
前記プラズマガス又は前記原料の発光に由来する波長λの出力に基づき、前記プラズマガスの供給量、前記DCプラズマトーチのプラズマ出力、前記原料の供給量のうち少なくともいずれかを制御することを特徴とする微粒子製造方法。
【請求項13】
プラズマガスに対して、DCプラズマトーチを用いて所定の電圧を印加することで発生した直流熱プラズマを用いて、原料を加熱することにより前記原料をガス化させた後、冷却することによって、微粒子を製造するにあたり、
前記プラズマガス又は前記原料の発光に由来する波長λの出力に基づき、前記プラズマガスの供給量、前記DCプラズマトーチのプラズマ出力、前記原料の供給量のうち少なくともいずれかを調整して、微粒子製造時における良好な結果となるよう微粒子の物性を制御することを特徴とする微粒子の物性制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流熱プラズマを用いて一度に多量の微粒子を製造するための微粒子製造装置及び微粒子製造方法に関し、特に、生産量を増加させるために原料を大量供給しても、プラズマの状態が長期に安定し、かつ、微粒子の品質も安定して製造される微粒子製造装置及び微粒子製造方法並びに微粒子の物性制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子の一例として、従来、銅粉が導電性ペースト材料として多用されてきた。近年、電気回路などにおいてファインピッチ化が進められるのに伴い、導電性ペースト用の銅粉については微粉化が求められている。
【0003】
銅粉は、サブミクロンスケールに微粒化するほど、表面酸化が著しくなり圧粉抵抗が高くなる傾向がある。したがって、銅粉をペースト印刷・キュアリングして回路形成した際に導電性が劣るようになり、導通信頼性が要求される部品には回路材料として採用できないという課題を抱えていた。
【0004】
このような課題を解決するために、特許文献1に開示されるように、本発明者等は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D50が0.20μm~0.70μmであるという微粒銅粉であるにもかかわらず、当該D50に対する結晶子径の比率(結晶子径/D50)が0.15~0.60(μm/μm)というように結晶子径が大きい微粒子を製造するための方法を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示するような微粒子の製造方法では、直流熱プラズマ(以下、「DCプラズマ」ともいう。)が用いられる。直流熱プラズマを用いた方法は、高周波プラズマを用いた方法と比べて、製造コストを安くすることができるが、プラズマの状態を長期的に安定して維持することが難しく、仮に原料の供給が無い状態であっても、プラズマの発光状態が一定になるとは限らず、不安定になってしまうことがある。このため、製造される微粒子の品質を安定させることが難しく、場合によっては、製造を中止しなければならないことがあった。
【0007】
また、微粒子の生産量を増加させるために、原料の供給量を増加させると、それにつれて、チャンバー内の温度が低下して不安定となってしまう。このため、微粒子の品質を安定化させるためには、プラズマの出力を増加させることで、チャンバー内の温度を一定に保ちたいが、プラズマの出力を制御するための指標となる温度を簡単に測定するための手段がなく難しい。
【0008】
本発明では、このような現状に鑑み、微粒子の生産量を増加させるために、原料を大量に供給してもプラズマの状態を長期的に安定して維持し、製造される微粒子の品質を安定させることができる微粒子製造装置及び微粒子製造方法並びに微粒子の物性制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述するような従来技術における課題を解決するために発明されたものであって、本発明は、例えば、以下の態様を含む。
【0010】
本発明の微粒子製造装置は、チャンバーと、原料供給装置と、プラズマガス供給装置と、DCプラズマトーチと、プラズマ発光解析装置と、制御装置と、を備えた微粒子製造装置であって、
前記微粒子製造装置は、前記プラズマガス供給装置から供給されるプラズマガスに対して、前記DCプラズマトーチによって所定の電圧を印加させることで発生した直流熱プラズマを用いて、前記原料供給装置より供給される原料を加熱することにより前記原料をガス化させて、前記チャンバー内で冷却することによって、微粒子を製造するように構成され、
前記プラズマ発光解析装置は、前記直流熱プラズマの発光を解析するものであり、
前記制御装置は、前記プラズマ発光解析装置により測定された、前記プラズマガス又は前記原料の発光に由来する波長λの出力に基づき、前記プラズマガスの供給量、プラズマ出力、前記原料の供給量のうち少なくともいずれかを制御するものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の微粒子製造方法は、プラズマガスに対して、DCプラズマトーチを用いて所定の電圧を印加することで発生した直流熱プラズマを用いて、原料を加熱することにより前記原料をガス化させた後、冷却することによって、微粒子を製造するにあたり、
前記プラズマガス又は前記原料の発光に由来する波長λの出力に基づき、前記プラズマガスの供給量、前記DCプラズマトーチのプラズマ出力、前記原料の供給量のうち少なくともいずれかを制御することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の微粒子の物性制御方法は、プラズマガスに対して、DCプラズマトーチを用いて所定の電圧を印加することで発生した直流熱プラズマを用いて、原料を加熱することにより前記原料をガス化させた後、冷却することによって、微粒子を製造するにあたり、
前記プラズマガス又は前記原料の発光に由来する波長λの出力に基づき、前記プラズマガスの供給量、前記DCプラズマトーチのプラズマ出力、前記原料の供給量のうち少なくともいずれかを調整して、微粒子製造時における良好な結果となるよう微粒子の物性(例えば、粒子径、比表面積、細孔径など)を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、原料を大量に供給してもプラズマの状態を長期的に安定して維持することができるため、微粒子の生産量を増加させるために、原料を大量に供給しても、微粒子の品質を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施形態における微粒子製造装置の構成を説明するための模式図である。
【
図2】
図2は、プラズマフレームの発光スペクトルの一例を示すグラフである。
【
図3】
図3は、発光出力に基づく制御の方法を説明するためのグラフである。
【
図4】
図4は、発光出力に基づく別の制御の方法を説明するためのグラフである。
【
図5】
図5は、比表面積SSAとバラツキσ'の関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、具体例におけるバラツキσ'の時間変化を示すグラフである。
【
図7】
図7は、出力の時間平均値に基づく制御の方法を説明するためのグラフである。
【
図8】
図8は、具体例におけるσ'/Bの時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいて、より詳細に説明する。
図1は、本実施形態における微粒子製造装置の典型的な構成を説明するための模式図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の微粒子製造装置10は、チャンバー12と、回収ポット14と、原料供給装置15と、プラズマガス供給装置18と、DCプラズマトーチ20と、プラズマ発光解析装置22と、制御装置30と、を備えている。
【0017】
この微粒子製造装置10では、原料は、原料供給装置15から原料供給ノズル17を介してDCプラズマトーチ20内部を通ることになる。なお、本実施形態において、原料供給量調節手段16によって、原料供給装置15からDCプラズマトーチ20内部に供給される原料の供給量を調節するように構成している。
【0018】
DCプラズマトーチ20には、プラズマガス供給装置18より、例えば、アルゴン(Ar)ガスが供給され、このアルゴンガス(プラズマガス)に対してDCプラズマトーチ20によって所定の電圧を印加することによって、プラズマフレームが発生することになる。その後、窒素(N2)等を混合してもよい。
【0019】
また、DCプラズマトーチ20で発生させたプラズマフレーム内で、原料はガス化され、チャンバー12に放出された後、冷却されて微粉末となって回収ポット14内に蓄積回収される。
【0020】
チャンバー12の内部は、図示しない圧力調整装置によって原料供給ノズル17よりも相対的に陰圧が保持されるように制御され、プラズマフレームを安定して発生する構造をとっている。なお、チャンバー12の内部は大気圧のままとしておくことも可能である。
【0021】
本実施形態の微粒子製造装置10では、チャンバー12に観察窓13が設けられており、この観察窓13を介して、プラズマフレームの発光をプラズマ発光解析装置22によって観察するように構成される。
【0022】
プラズマ発光解析装置22は、コリメートレンズ23と、光ファイバ24と、分光器25と、スペクトル処理部26と、を備えている。
分光器25は、コリメートレンズ23及び光ファイバ24を介して、プラズマフレームの発光が入力されると、この発光の電磁波スペクトル(発光スペクトル)を測定する。ここで、想定する電磁波は特に限定されるものではないが、例えば、波長域として200nm以上4000nm以下が挙げられ、特に200nm以上1700nm以下が挙げられる。測定された発光スペクトルは、スペクトル処理部26に送られ、スペクトル処理部26において、後述するように、所定の波長における出力を取得し、これを制御装置30に送信する。
【0023】
制御装置30は、スペクトル処理部26から送られてくる所定の波長における出力に基づいて、プラズマガス供給装置18によるプラズマガスの供給量(ガス流量)、DCプラズマトーチ20の出力、原料供給装置15による原料の供給量のうち少なくともいずれかを制御するように構成される。
【0024】
このような微粒子製造装置10において用いられる原料としては、製造したい微粒子に応じて適宜選択されるものであって、特に限定されるものではないが、例えば、Cu、Si、Ni、Ti、Fe、Co、Cr、Mg、Mn、Mo、W、Ta、In、Zr、Nb、B、Ge、Sn、Zn、Bi、Agなどから選ばれる少なくとも1種の元素成分を含有するものとすることができる。
【0025】
また、微粒子製造装置10において用いられる原料としては、線状、粉末状、溶液状、スラリー状のもの等が挙げられる。以下、粉末状の原料を用いた場合を例に取って説明する。
【0026】
このような原料粉は、製造上の観点から、体積累積粒径D50が3.0μm以上30μm以下であることが好ましく、特に、5.0μm以上15μm以下であることが好ましい。なお、体積累積粒径D50は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定することができる。
【0027】
また、原料粉の形状は、例えば、樹枝状、棒状、フレーク状、キュービック状、もしくは、球状乃至略球状などが挙げられるが、特に制限されるものではない。但し、プラズマトーチへの供給効率を安定化する観点からは、球状乃至略球状であるのが好ましい。
【0028】
微粒子製造装置10を使用して原料粉を加熱する際、プラズマガスとして、アルゴンと窒素の混合ガスを使用すると共に、プラズマフレームが層流状態で太く長くなるように調整することが好ましい。このように調整すれば、投入した原料粉は、プラズマ炎中で瞬時にガス化し、プラズマフレーム内で十分なエネルギーを供給することができるため、プラズマ尾炎部に向って核形成、凝集及び凝縮が生じて微粒子、中でもサブミクロンオーダーの微粒子を形成することができる。
【0029】
上述するプラズマフレームが層流状態であるか否かは、プラズマフレームを、フレーム幅が最も太く観察される側面から観察したときに、フレーム幅に対するフレーム長さの縦横比(以下、「フレームアスペクト比」と呼ぶ。)が3以上であるか否かによって判断することができる。具体的には、フレームアスペクト比が3以上であれば層流状態であると判断することができ、一方で、フレームアスペクト比が3未満であれば乱流状態であると判断することができる。
【0030】
熱プラズマを発生させる動作ガスとしてのプラズマガスは、アルゴン、水素、窒素、ヘリウムなどが挙げられ、その中でも、上述のようにアルゴンと窒素の混合ガスを使用するのが好ましい。
【0031】
ここで、アルゴンガスと窒素ガスとを混合したガスを使用すると、窒素(2原子分子)ガスにより、より大きな振動エネルギー(熱エネルギー)を原料粉粒子に付与することができ、凝集状態を均一にできるため、粒度分布がよりシャープなナノ微粒子を得ることができる。
【0032】
プラズマガスにおけるアルゴンと窒素の割合は流量比で99:1~10:90であるのが好ましく、中でも95:5~60:40、その中でも95:5~80:20であるのがさらに好ましい。窒素の含有量をこのような範囲とすることで、プラズマフレームが減退することを防止し、粒度分布のシャープな粉体が得られやすくなる。
【0033】
また、粒度分布をシャープなものとする、言い換えれば、製造される微粒子の(D90-D10)/D50をより小さくする観点からは、アルゴンと窒素の割合は、流量比で99:1~50:50、中でも95:5~50:50のように、窒素よりもアルゴンの流量の方が多い比率内で調整するのが好ましい。
【0034】
なお、微粒子として酸化物を製造する場合には、プラズマガスに酸素を含有させることもできる。酸素の含有量は、製造する酸化物微粒子によって、適宜設定することが好ましい。
【0035】
ここで、微粒子のD10、D50、D90は、それぞれ、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD10、D50、D90である。また、微粒子の(D90-D10)/D50は、粒子分布のシャープさを示す指標となるものである。
【0036】
このように構成される本実施形態の微粒子製造装置10では、制御装置30は、以下のようにして、プラズマガス供給装置18、DCプラズマトーチ20及び原料供給装置15の制御を行う。
【0037】
本実施形態において、プラズマガス供給装置18は、DCプラズマトーチ20へ供給するプラズマガスの流量を調節するためのガス流量調節手段19を有する。また、DCプラズマトーチ20は、プラズマ出力を調節するためのプラズマ出力調節手段21を有する。また、原料供給装置15は、原料供給量を調節するための原料供給量調節手段16を有する。なお、本発明において「プラズマ出力」とは、電流の出力であってもよいし、電圧の出力であってもよいし、また、電流及び電圧の積である電力の大きさであってもよい。
【0038】
原料供給量調節手段16、ガス流量調節手段19、プラズマ出力調節手段21は、制御装置30と接続されており、制御装置30によって、プラズマガス供給装置18からDCプラズマトーチ20へ供給されるプラズマガスの流量、DCプラズマトーチ20のプラズマ出力、原料供給装置15から供給される原料の供給量のうち少なくともいずれかがそれぞれ調節される。
【0039】
微粒子製造装置10により、微粒子を製造する際には、制御装置30により、ガス流量調節手段19及びプラズマ出力調節手段21を制御することにより、プラズマガス供給装置18から所定量のプラズマガスをDCプラズマトーチ20へ供給するとともに、DCプラズマトーチ20を所定のプラズマ出力とすることによって、プラズマフレームを発生させる。
【0040】
プラズマフレームが層流状態で太く長くなるようにするためには、プラズマ出力は2kW~40kWであるのが好ましく、中でも4kW~15kWであるのがさらに好ましい。また、プラズマガスのガス流量は、上述の観点から、0.1L/分~20L/分であるのが好ましく、中でも0.5L/分~18L/分であるのがさらに好ましい。
【0041】
さらには、プラズマフレームを層流状態に安定的に保つには、上述のプラズマ出力、ガス流量の範囲を保ち、かつプラズマ出力(A)に対するガス流量を適正に保つことが好ましい。例えば、プラズマガスとしてアルゴンと窒素の混合ガスを用いる場合には、Arガス流量(B)とN2ガス流量(C)の和の比、計算式(B+C)/Aで算出した値(単位:L/(分・kW))が、0.50~2.00とするのがより好ましい。原料粉のガス化に必要な流速を得るためには(B+C)/A値が0.50以上とするのが好ましく、プラズマフレームを層流で安定した状態を保持するには2.00以下とするのが好ましい。
かかる観点から、(B+C)/Aが、0.70~1.70となるように調節するのが特に好ましく、その中でも0.75~1.50となるように調節するのがさらに好ましい。
【0042】
この状態で、原料供給装置15から原料供給ノズル17を介してプラズマフレームに原料粉を供給することによって、原料粉はガス化され、チャンバー12に放出された後、冷却されて微粒子となって回収ポット14内に蓄積回収される。
【0043】
このように微粒子を製造する際に、プラズマ発光解析装置22によって、プラズマフレームの状態を解析する。そして、プラズマフレームの発光スペクトルにおいて、プラズマガス又は原料の発光に由来する波長の出力に基づき、制御装置30によって、プラズマガス供給装置18からDCプラズマトーチ20へ供給されるプラズマガスの流量、DCプラズマトーチ20のプラズマ出力、原料供給装置15から供給される原料の供給量のうち少なくともいずれかを調節する。
【0044】
なお、プラズマガスの発光に由来する波長λは、原料が供給されていない状態におけるプラズマフレームの発光スペクトルにより判断することができる。例えば、発光スペクトルが
図2(a)に示すような場合、プラズマガスの発光に由来する波長λ(スペクトルの中心波長)は、波長λ
1であると特定することができる。
【0045】
また、原料の発光に由来する波長λは、原料をDCプラズマトーチ20へ供給した直後のプラズマフレームの発光スペクトルにより判断することができる。例えば、発光スペクトルが
図2(b)に示すように現れた場合、原料の発光に由来する波長λ(スペクトルの中心波長)は、波長λ
2であると特定することができる。
【0046】
このように特定されたプラズマガス又は原料の発光に由来する波長λの出力に基づき、以下のようにプラズマガスの流量、プラズマ出力、原料の供給量の制御を行うことができる。なお、以下の実施例では、プラズマガス又は原料の発光に由来する波長λの出力に基づき、プラズマガスの流量、プラズマ出力、原料の供給量の制御を行う一例を挙げる。
【0047】
なお、プラズマガスの発光に由来する波長λ1の出力に基づき制御を行うか、原料の発光に由来する波長λ2の出力に基づき制御を行うかは、後述するような微粒子の特性との相関を考慮して、適宜選択することができる。
【0048】
なお、波長λの出力としては、分光器25から出力された値をそのまま用いてもよいが、この値を時間に対する微分を行った微分値や、時間に対する2次微分を行った2次微分値などを用いてもよい。このような微分値や2次微分値を用いることによって、波長λの出力の時間変化がより顕著となる。なお、1次微分、2次微分に限らず、より高次(3次、4次など)の微分を行っても構わない。また、分光器25から出力された値を波長に対する微分を行った微分値や、波長に対する2次微分を行った2次微分値などを用いてもよい。また、波長λの出力を、別の波長λ’の出力で割ることで規格化した値を用いてもよい。なお、このような波長λ’の出力は、波長λを出力した時間と同一の時間における出力としてもよいし、また、例えば、原料を供給する前における初期の出力としてもよい。また、これらの値を時間に対して移動平均した値を用いてもよい。本明細書においては、このような微分値や規格化した値を含めて「波長λの出力」と呼ぶ。
【0049】
(1)発光出力に基づく制御
制御装置30によって、波長λの出力が、事前に設定された出力閾値を超えた場合に、プラズマガスの流量、プラズマ出力、原料の供給量を増減させることで、発光出力が出力閾値に収まるように制御を行う。
【0050】
ここで、出力閾値としては、例えば、微粒子の製造を複数回行って得られた波長λの出力の時間変化(以下、「出力Y(t)」と呼ぶ。なお、tは時間を表す。)から、良好な結果が得られたときの出力Y(t)を任意に複数選択する。そして、N個(Nは2以上の自然数)のYi(t)(iは1~Nの自然数)から、下記式(1)のように、平均値A(t)を算出する。
【0051】
【0052】
そして、この平均値A(t)から、下記式(2)のように、微粒子の製造を複数回行うことにより得られる出力のバラツキσ(t)を算出する。
【0053】
【0054】
このように算出したバラツキσ(t)に基づき、A(t)±n×σ(t)(nは自然数)を出力閾値として設定することができる。なお、nは、特に限定されるものではないが、3~6とすることが好ましい。
【0055】
なお、微粒子の製造を行った際の「良好な結果」とは、例えば、微粒子の製造継続時間や、製造された微粒子の特性によって判断することができる。微粒子の特性としては、特に限定されるものではないが、例えば、画像解析粒径DSEM、レーザー回折散乱式粒度D10、D50、D90やこれらから算出される微粒子の(D90-D10)/D50、O2やN2などの元素含有量、X線回折結晶子径、比表面積SSAなどを挙げることができる。
【0056】
また、プラズマガスの流量と波長λの出力との相関、プラズマ出力と波長λの出力との相関、原料の供給量と波長λの出力との相関は、原料の種類、プラズマガスの種類、装置構成などによって変わってくる。このため、波長λの出力が出力閾値を超えた場合に、どのような制御を行うかは、プラズマガスの流量、プラズマ出力、原料の供給量が、波長λの出力とそれぞれどのような相関を有するかを試験によって把握しておく必要がある。
【0057】
例えば、出力閾値をA(t)±3σ(t)に設定した場合には、
図3(a)に示すように、波長λの出力が出力閾値A(t)+3σ(t)を超えた場合には、制御装置30は、波長λの出力が減少するように、ガス流量調節手段19、プラズマ出力調節手段21、原料供給量調節手段16によってプラズマガスの流量、プラズマ出力、原料の供給量を制御する。これによって、波長λの出力は、出力閾値に収まるように推移する。
【0058】
一方で、
図3(b)に示すように、波長λの出力が出力閾値A(t)-3σ(t)を超えた場合には、制御装置30は、波長λの出力が増加するように、ガス流量調節手段19、プラズマ出力調節手段21、原料供給量調節手段16によってプラズマガスの流量、プラズマ出力、原料の供給量を制御する。これによって、波長λの出力は、出力閾値に収まるように推移する。
【0059】
このように、波長λの出力が、出力閾値に収まるように、プラズマガスの流量、プラズマ出力、原料の供給量のうち少なくともいずれかを制御することによって、プラズマの状態を安定させることができるため、途中で微粒子の製造が中止されて生産性が低下することがなくなり、また、製造される微粒子の品質も安定させることができる。
【0060】
なお、上述した例では、バラツキを時間関数σ(t)として用いているが、バラツキσ(t)の時間平均を用いてもよい。すなわち、バラツキσ(t)を時間で平均した値(バラツキσ)を用いて、A(t)±m×σ(mは自然数)のように設定することができる。なお、mは、特に限定されるものではないが、3~6とすることが好ましい。
【0061】
また、出力閾値としては、一定値とすることもできる。一定値としては、上述するような平均値A(t)やバラツキσ(t)などを参考に、任意に設定することができる。例えば、微粒子の製造を複数回行って得られた波長λの出力Y(t)から、良好な結果が得られたときの出力Y(t)を複数選択し、それらの出力Y(t)が収まるように出力閾値を設定することができる。
【0062】
このように出力閾値を設定した場合には、例えば、
図4(a)に示すように、波長λの出力が、上限の出力閾値を超えた場合には、制御装置30は、波長λの出力が減少するように、ガス流量調節手段19、プラズマ出力調節手段21、原料供給量調節手段16によってプラズマガスの流量、プラズマ出力、原料の供給量を制御する。これによって、波長λの出力は、出力閾値に収まるように推移する。
【0063】
一方で、
図4(b)に示すように、波長λの出力が、下限の出力閾値を超えた場合には、制御装置30は、波長λの出力が増加するように、ガス流量調節手段19、プラズマ出力調節手段21、原料供給量調節手段16によってプラズマガスの流量、プラズマ出力、原料の供給量を制御する。これによって、波長λの出力は、出力閾値に収まるように推移する。
【0064】
なお、このような制御を行う場合、微粒子の製造開始直後(原料の供給直後)は、波長λの出力のバラツキが大きくなる傾向があるため、所定の判定開始時刻を設定し、この判定開始時刻を経過してから、上述するような制御を始めるように、制御装置30を構成することが好ましい。
【0065】
(2)出力のバラツキσ'に基づく制御
制御装置30によって、波長λの出力Y(t)を一定時間毎に取得し、この出力Y(t)の時間変化のバラツキσ'(t)が、事前に設定されたバラツキ閾値を超えた場合に、プラズマガスの流量、プラズマ出力、原料の供給量を増減させることで、バラツキσ'(t)がバラツキ閾値に収まるように制御を行う。
【0066】
具体的には、バラツキσ'(t)は、時刻tjにおける波長λの出力Y(tj)と、時刻tj-1(tj>tj-1)における波長λの出力Y(tj-1)とから、下記式(3)のように、出力の差ΔY(tj)を算出する。
【0067】
【0068】
このような出力の差ΔY(tj)を、所定の時間(判定時間)内において複数算出する。そしてM個(Mは2以上の自然数)のΔY(tj)(jは1~Mの自然数)から、標準偏差を算出し、この標準偏差をバラツキσ'(t)とする。
【0069】
このように算出されたバラツキσ'(t)が、バラツキ閾値に収まるように、プラズマガスの流量、プラズマ出力、原料の供給量を制御することによって、プラズマの状態を安定させることができ、製造される微粒子の品質も安定させることができる。
【0070】
ここで、バラツキ閾値は、バラツキσ'と相関を有する、微粒子の製造継続時間や、微粒子の特性に基づき設定することができる。例えば、事前に、バラツキσ'と微粒子の特性との関係を取得しておき、相関を有する微粒子の特性について利用することができる。このような出力のバラツキσ'と微粒子の特性との関係性は、微粒子の原料の種類などによって異なってくる。
【0071】
図5は、原料としてCuの粉体を用いて微粒子を製造した際の、微粒子製造時間全域におけるプラズマガスの波長λ
1の出力のバラツキσ'と、製造された微粒子のSSAとの関係を示すグラフである。なお、ここで、SSAは、微粒子製造時間全域における平均値である。
図5に示すように、原料粉としてCuを用いた場合には、バラツキσ'と、微粒子のSSAとには相関を有する。
図5に示すバラツキσ'と、微粒子のSSAの近似式は、σ'=187×(SSA)-437.61、相関係数R
2は、0.7624であった。
【0072】
なお、本実施例においては、バラツキσ'及びSSAの平均値について、微粒子製造時間全域において算出したが、両者の時間域が同じであれば、微粒子製造時間全域でなくとも、それよりも短い所定の時間域において算出してもよい。
【0073】
SSAは、小さい方が好ましいことが知られている。このため、SSAの上限を任意に設定し、このときのバラツキσ'を、バラツキ閾値の基準に設定することで、SSAが上限を超えないような微粒子の製造が可能となる。
【0074】
なお、本実施例においては、SSAの上限のみを設定しているが、必要に応じてSSAの下限を設定することもできる。また、このような閾値は、SSAに限らず、他の微粒子の特性に関しても、上限と下限を必要に応じて設定することができる。
【0075】
(具体例)
波長λの出力Y(t)を1秒ごとに取得し、ΔY(t
j)を算出した。判定時間を300秒として、バラツキσ'(t)を算出した。なお、判定開始は300秒経過後とした。
すなわち、301秒の波長λの出力Y(301)から600秒までの波長λの出力Y(600)に基づき、バラツキσ'(600)を算出する。これを、波長λの出力Y(t)の取得タイミング毎に算出することにより、微粒子製造開始から終了までのバラツキσ'(t)を取得した。これを7回実施した。結果を
図6に示す。
【0076】
例えば、微粒子のSSAの上限値を3.2m
2/gと設定する場合には、
図5のグラフから、バラツキσ'(t)の上限(バラツキ閾値)を例えば、150と設定することができる。
この場合、
図6に示す試験5及び6では、バラツキσ'(t)が150を超えてしまっていることから、粒子径、比表面積、細孔径等が良好な微粒子が得られない。本発明の微粒子製造装置及び微粒子製造方法では、このようにバラツキσ'が、バラツキ閾値を超えないように、プラズマガスの流量、プラズマ出力、原料の供給量のうち少なくともいずれかを制御することによって、プラズマの状態を安定させるとともに、製造される微粒子の品質も安定を図っている。
【0077】
(3)出力の時間平均値Bに基づく制御
制御装置30によって、波長λの出力Y(t)を一定時間毎に取得し、この出力Y(t)の時間平均値B(t)を算出し、この時間平均値B(t)が、事前に設定された平均出力閾値を超えた場合に、プラズマガスの流量、プラズマ出力、原料の供給量を増減させることで、時間平均値B(t)が平均出力閾値に収まるように制御を行う。
【0078】
ここで平均出力閾値は、時間平均値Bと相関を有する、微粒子の製造継続時間や、微粒子の特性に基づき設定することができる。例えば、事前に、時間平均値Bと微粒子の特性との関係を取得しておき、相関を有する微粒子の特性について利用することができる。このような出力の時間平均値Bと微粒子の特性との関係性は、微粒子の原料の種類などによって異なってくる。
【0079】
このように平均出力閾値を設定した場合には、例えば、
図7(a)に示すように、出力Y(t)の時間平均値B(t)が、上限の平均出力閾値を超えた場合には、制御装置30は、波長λの出力が減少するように、ガス流量調節手段19、プラズマ出力調節手段21、原料供給量調節手段16によってプラズマガスの流量、プラズマ出力、原料の供給量を制御する。これによって、出力Y(t)の時間平均値B(t)は、平均出力閾値に収まるように推移する。
【0080】
一方で、
図7(b)に示すように、出力Y(t)の時間平均値B(t)が、下限の平均出力閾値を超えた場合には、制御装置30は、波長λの出力が増加するように、ガス流量調節手段19、プラズマ出力調節手段21、原料供給量調節手段16によってプラズマガスの流量、プラズマ出力、原料の供給量を制御する。これによって、出力Y(t)の時間平均値B(t)は、平均出力閾値に収まるように推移する。
【0081】
なお、このような制御を行う場合にも、上述した場合と同様に、所定の判定開始時刻を設定し、この判定開始時刻を経過してから、上述するような制御を始めるように、制御装置30を構成することが好ましい。
【0082】
また、時間平均値Bと微粒子の特性との相関を算出する場合、上述した場合と同様に、微粒子製造時間全域において算出してもよいし、また、両者の時間域が同じであれば、微粒子製造時間全域でなくとも、それよりも短い所定の時間域において算出してもよい。
【0083】
(4)バラツキσ'/平均値Bに基づく制御
制御装置30によって、波長λ1の出力Y(t)を一定時間毎に取得し、この出力Y(t)の時間変化のバラツキσ'(t)を、出力Y(t)の時間平均値B(t)で規格化した値σ'(t)/B(t)を算出し、このσ'(t)/B(t)が、事前に設定されたσ'/B閾値を超えた場合に、プラズマガスの流量、プラズマ出力、原料の供給量を増減させることで、σ'(t)/B(t)がσ'/B閾値に収まるように制御を行う。
【0084】
具体的には、判定時間における出力Y(t)の時間平均値B(t)とバラツキσ'(t)を算出し、σ'(t)/B(t)を算出する。なお、出力Y(t)の時間変化のバラツキσ'(t)は、上述した方法と同様に算出することができる。
【0085】
このように算出されたσ'(t)/B(t)が、σ'/B閾値に収まるように、プラズマガスの流量、プラズマ出力、原料の供給量を制御することによって、プラズマの状態を安定させることができ、製造される微粒子の品質も安定させることができる。
【0086】
ここで、σ'/B閾値は、微粒子製造時間全域におけるσ'/Bと相関を有する微粒子の特性に基づき設定することができる。微粒子の特性としては、特に限定されるものではないが、例えば、画像解析粒径DSEM、レーザー回折散乱式粒度D10、D50、D90やこれらから算出される微粒子の(D90-D10)/D50、酸素や窒素などの元素含有量、X線回折結晶子径、SSAなどを挙げることができ、事前に、σ'/Bと特性との関係を取得しておき、相関を有する特性について利用することができる。このような出力のσ'/Bと微粒子の特性との関係性は、微粒子の原料の種類などによって異なってくる。
【0087】
なお、σ'/Bと微粒子の特性との相関を算出する場合、上述した場合と同様に、微粒子製造時間全域において算出してもよいし、また、両者の時間域が同じであれば、微粒子製造時間全域でなくとも、それよりも短い所定の時間域において算出してもよい。
【0088】
(具体例)
図6に示す試験1~7の試験データから、σ'(t)/B(t)を算出した。なお、判定時間は300秒、判定開始は300秒経過後とした。結果を
図8に示す。
【0089】
図6に示すように、他の試験と比べ、試験5及び6のバラツキσ'が大きくなっていたが、
図8に示すように、σ'(t)/B(t)により比較すると、他の試験と比べ、試験4及び5のσ'(t)/B(t)が大きくなっている。
【0090】
このように、バラツキσ'による判定と、σ'/Bによる判定とでは、異なる結果が得られる。すなわち、バラツキσ'だけでは良不良の判定ができない微粒子の特性であっても、σ'/Bを用いることによって、良不良の判定が可能になり、良好な微粒子を製造するための制御をすることができる。
【0091】
さらには、出力の時間平均値B、バラツキσ'に基づく制御、σ'/Bによる制御を組み合わせて行うことにより、複数の特性を制御しながら微粒子の製造をすることが可能となる。
【0092】
したがって、プラズマガス又は原料の発光に由来する波長λの出力の時間平均値Bや時間変化のバラツキσ'、σ'/Bを、プラズマガスの流量、プラズマ出力、原料の供給量のうち少なくともいずれかで制御することによって、所望の条件の微粒子を製造することができる。
【0093】
なお、上述した例では、各種閾値を超えた場合に、プラズマガスの供給量、プラズマ出力、原料の供給量を制御するようにしているが、各種閾値を超えないように、プラズマガスの供給量、プラズマ出力、原料の供給量を制御するように構成することもできる。
【0094】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上述するような制御によって、微粒子の物性制御を行う方法も、本発明の実施形態に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
10 微粒子製造装置
12 チャンバー
13 観察窓
14 回収ポット
15 原料供給装置
16 原料供給量調節手段
17 原料供給ノズル
18 プラズマガス供給装置
19 ガス流量調節手段
20 DCプラズマトーチ
21 プラズマ出力調節手段
22 プラズマ発光解析装置
23 コリメートレンズ
24 光ファイバ
25 分光器
26 スペクトル処理部
30 制御装置