(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】屋根材
(51)【国際特許分類】
E04D 3/367 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
E04D3/367 A
(21)【出願番号】P 2021031137
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】598042275
【氏名又は名称】株式会社 セキノ興産
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】杉本 伸雄
(72)【発明者】
【氏名】今 貴志
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-227726(JP,A)
【文献】特開2003-082820(JP,A)
【文献】特開2009-174250(JP,A)
【文献】特開2001-132176(JP,A)
【文献】特開2002-097754(JP,A)
【文献】中国実用新案第2639416(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
働き巾方向両端部に位置する一対のはぜ締め部と、
上記一対のはぜ締め部の間に位置する底部と、
上記一対のはぜ締め部と上記底部との間で傾斜して延びている一対の傾斜部と、
一端が上記傾斜部に接続され他端が上記底部に接続されている一対の底隅部であって、上記底隅部と上記底部との第1接続部および上記底隅部と上記傾斜部との第2接続部の両方は、上から見て谷折りになっている、上記一対の底隅部とを備え
、
上記一対のはぜ締め部は角はぜであり、
上記一対のはぜ締め部と上記一対の傾斜部との間に、タイトフレームに形成された突出係止部と嵌合する嵌合部を備え、
上記嵌合部は、屋根材の高さ方向における中央より上側に位置することを特徴とする屋根材。
【請求項2】
上記底隅部の幅は、上記傾斜部の幅より短い、請求項1に記載の屋根材。
【請求項3】
上記底隅部は、上記傾斜部より緩やかに傾斜している、請求項1または2に記載の屋根材。
【請求項4】
上記底隅部は、上記第1接続部と上記第2接続部との間に、上から見て山折りになっている箇所を含まない、請求項1から3のいずれか一項に記載の屋根材。
【請求項5】
上記第1接続部における上記底隅部と上記底部との間の角度と、上記第2接続部における上記底隅部と上記傾斜部との間の角度との差は、5°以内である、請求項1から4のいずれか一項に記載の屋根材。
【請求項6】
上記第1接続部における角度と、上記第2接続部における角度とは、互いに異なる、請求項1から4のいずれか一項に記載の屋根材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根材に関する。
【背景技術】
【0002】
1枚の鋼板を折り曲げて成形した複数の折板を連結することによって構成される屋根構造体が、従来技術として知られている。当該屋根構造体は、梁上に取付けられるタイトフレームを介して、梁上に設置される。このような屋根構造体は、折板で構成されるため強度が高く、瓦屋根等に比べると軽量であるため耐震性能が高く、施工性が良い。このため、工場や倉庫等の大型の建物の屋根に好適に用いられている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、山フラット部と谷フラット部(底部)とが交互に連なって形成され、山フラット部と谷フラット部との間に立ち上がり部(傾斜部)が連続して形成される、はぜ係合の薄板折板屋根部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術は、山フラット部および谷フラット部と、立ち上がり部との間は、一つの折り曲げ部で区画され、はぜ部分を除き、他に折り曲げ部は形成されていない。通常、折り曲げ部が多いと折板の強度は高くなるが、従来技術は、折り曲げ部が少ないため強度が低い。
【0006】
例えば、強風地帯では、台風・北風等により屋根材に加わる負圧荷重が大きく、強風等による折板屋根の変形や破損を防ぐため、屋根材として用いられる折板の強度を高くする必要がある。しかし、折板に折り曲げ部を多数形成すると、ロール成形機での成形工程の増加、寸法精度の低下、および製造コストの増加等という問題が生じる。
【0007】
本発明の一態様は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、屋根材の強度を高めつつ、容易に成形可能な屋根材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様における屋根材は、働き巾方向両端部に位置する一対のはぜ締め部と、上記一対のはぜ締め部の間に位置する底部と、上記一対のはぜ締め部と上記底部との間で傾斜して延びている一対の傾斜部と、一端が上記傾斜部に接続され他端が上記底部に接続されている一対の底隅部であって、上記底隅部と上記底部との第1接続部および上記底隅部と上記傾斜部との第2接続部の両方は、上から見て谷折りになっている、上記一対の底隅部とを備えている。
【0009】
上記の構成によれば、屋根材を構成する折板の底部は、第1接続部と第2接続部とによって、二段折りされているために断面を強化し(断面係数を大きくし)、折板の強度を高くすることができる。また、第1接続部および第2接続部は、同じ方向に折り曲げられているため、容易に折板の成形をすることができる。
【0010】
上記底隅部の幅は、上記傾斜部の幅より短くてもよい。
【0011】
上記底隅部は、上記傾斜部より緩やかに傾斜してもよい。
【0012】
上記底隅部は、上記第1接続部と上記第2接続部との間に、上から見て山折りになっている箇所を含まなくてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、折板の底部は、第1接続部と第2接続部とによって、同じ方向に二段折りされた構成であり、例えば、山折りになっている箇所を含む、底段付の底部を含まないため、容易に折板の成形をすることができる。
【0014】
上記第1接続部における上記底隅部と上記底部との間の角度と、上記第2接続部における上記底隅部と上記傾斜部との間の角度との差は、5°以内であってもよい。
【0015】
上記の構成によれば、2つの角度差は5°以内であり、略同一の角度である。このため、荷重に対してどちらかに偏って力が加わらず、均等に力が加わるため、強度を高くすることができる。
【0016】
上記第1接続部における角度と、上記第2接続部における角度とは、互いに異なっていてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、折板の底部が二段折りのため、強度向上の効果が得られるため、折板を容易に成形することができる。
【0018】
上記一対のはぜ締め部は角はぜであり、上記一対のはぜ締め部と上記一対の傾斜部との間に、タイトフレームの側部に形成された突出係止部と嵌合する嵌合部を備え、上記嵌合部は、上記屋根材の高さ方向における中央より上側に位置してもよい。
【0019】
上記の構成によれば、折板とタイトフレームが屋根材の高さ方向における中央より上側で嵌合するため、折板をタイトフレームに強固に取付けることができ、台風等があっても直接、負圧の荷重をタイトフレーム自体に伝達することが可能になり、屋根材の破損を防ぐことができる。また、上側で嵌合させるため、視認しやすく施工性を良くすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、屋根材の強度を高めつつ、容易に成形可能な屋根材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態1に係る屋根構造体の外観の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図2に示す折板をタイトフレームに取付けた状態を示す図である。
【
図5】
図1に示す屋根構造体のはぜ締め部および嵌合部の一例を示す拡大図である。
【
図6】本発明の実施形態1に係る折板およびその他の折板の試験方法を説明する図である。
【
図7】本発明の実施形態1に係る試験体1の試験結果を示す図である。
【
図10】試験体1、比較体1、および比較体2の試験結果を比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、
図1から
図5に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、はぜ締めにより屋根材として用いられる折板2を連結し、タイトフレーム3と嵌合することによって、タイトフレーム3を介して梁4等の屋根下地に固定される屋根構造体1の例について説明する。
【0023】
ただし、本発明はこれに限らず、折板をナットやボルト等の締結部材によってタイトフレームに固定する重ね式折板屋根材、吊子を介して折板をタイトフレームに固定するはぜ締め式折板屋根材、および、折板同士の連結部にキャップをかぶせて固定するキャップ嵌合式折板屋根材等、様々な種類の屋根材についても適用可能である。
【0024】
<屋根構造体>
図1は、本発明の実施形態1に係る屋根構造体1の外観の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、屋根構造体1は、複数の折板2を連結することによって構成される金属製の屋根構造体1である。ロール成形機等により、1枚の鋼板を折り曲げて成形された折板2は、曲げ剛性が高く、1枚の鋼板をそのまま使用するより強度が高いため、工場、倉庫、体育館等の大型の建物の屋根材として好適に使用されている。
【0025】
また、折板2に加工される鋼板は、例えば、厚さ約0.6mm~1.0mm程度である。後述するように、折板2は容易に成形可能な方法で折り曲げ部分を増やしているため、一般的な折板材と比べ耐風圧性能が高く、台風等に強いという特性を持っている。
【0026】
折板2は、互いに隣接する折板2Aと、はぜ締めによって連結され、山状に形成された頂部21と、谷状に形成された底部22とを交互に連続して備えている。また、頂部21と底部22との間には、頂部21と底部22とを連結し、頂部21および底部22から連なる傾斜部23が形成されている。なお、折板2のはぜ締めの詳細については、
図5に基づいて後述する。
【0027】
折板2は、タイトフレーム3を介して、梁4上に設置されている。折板2は、タイトフレーム3に形成された突出係止部34と嵌合する嵌合部25を備えている。折板2は、嵌合部25がタイトフレーム3の突出係止部34と嵌合することによって、タイトフレーム3に強固に取付けられている。折板2とタイトフレーム3との嵌合の詳細については
図5に基づいて後述する。
【0028】
また、折板2は、結露を防ぐため、折板2の裏側(下側)に薄い断熱性のシート(図示せず)を裏貼りしてもよい。断熱性のシートは、厚さが約4.0mm程度であり、鋼板を折り曲げて成形する前に、鋼板の裏側に接着剤等で貼り付けてもよい。断熱性のシートは、例えば樹脂で形成されている。
【0029】
タイトフレーム3は、梁4等の屋根下地の上面に、溶接またはボルト等の締結部材によって取付けられている。タイトフレーム3は、折板2の形状に沿うように、山部31と谷部32とが連続して形成され、山部31と谷部32とを連結する傾斜面からなる連結部33を備えている。
【0030】
また、タイトフレーム3は、上述したように、連結部33の上部に、折板2の嵌合部25と嵌合して、折板2を取付けるための突出係止部34を備えている。折板2とタイトフレーム3との嵌合の詳細については
図5に基づいて後述する。
【0031】
なお、実施形態1では、山部31と谷部32とが連続して形成される帯状のタイトフレーム3について説明した。これに限らず、タイトフレーム3は、1つの山部31と、山部31の両側に一対の連結部33とを備え、一対の梁用固定部が形成されるタイトフレームであってもよい。この場合、梁4上にタイトフレームを複数個、並設して取付けてもよい。
【0032】
梁4は、鉄骨等によって実現される屋根下地であり、上面にタイトフレーム3が溶接またはボルト等によって取付けられる。梁4は、折板2の働き巾W(
図2に図示)の方向と直交する方向(屋根の頂点に向かう方向。以後、「奥行き方向」という)に複数配置されている。これにより、折板2が奥行き方向に沿って変形、破損等するのを防止することができる。なお、働き巾とは、折板2の幅のうち、隣接する折板2と重畳する部分を除いた実際に使える部分の幅のことである。すなわち、働き巾は、複数の折板2を組み合わせる方向における、屋根構造体1における1つの折板2当たりの幅を示す。
【0033】
<折板>
図2は折板2の正面図の一例、
図3は折板2の斜視図の一例、
図4は折板2をタイトフレーム3に取付けた状態を示す正面図である。また、
図5は屋根構造体1のはぜ締め部および嵌合部の一例を示す拡大図である。
図2から
図5に基づいて、実施形態1の折板2についてさらに詳細に説明する。
【0034】
図2および
図3に示すように、折板2は、1枚の鋼板を折り曲げて成形されている。折板2は、働き巾W方向両端部に、それぞれ、山状に形成された一対の頂部21a,21bを備え、折板2の略中央部には、谷状に形成された底部22を備えている。さらに、折板2は、一対の傾斜部23a、23b、および、一対の底隅部26を備えている。
【0035】
また、頂部21a、21bと、底部22との間には、頂部21a、21bと、底部22とを連結する傾斜部23a、23bが、それぞれ形成される。また、傾斜部23a、23bは、それぞれ、頂部21a,21bと、底部22とに連なって形成されている。
【0036】
頂部21aには、上はぜ部24aが形成され、頂部21bには、下はぜ部24bが形成される。
【0037】
図4に示すように、折板2の上はぜ部24aは、互いに隣接する折板2Aに形成された下はぜ部24bと係合し、はぜ締めされることによって、折板2は、隣接する折板2Aと連結される。
【0038】
このように、互いに隣接する折板2、2Aをはぜ締めにより連結することによって、
図1に示すように、複数の頂部21と、複数の底部22とが交互に連続して形成される屋根構造体1が構成される。
【0039】
はぜ締め部24は、断面形状が略矩形状に形成される角はぜである。角はぜの詳細については、
図5に基づいて後述する。
【0040】
(二段折り)
再び
図2を参照して、折板2の底部22に形成される底隅部26について説明する。底部22には、傾斜部23aとの連結部近傍において、傾斜部23aに近接する方向に折り曲げることによって、底隅部26aが形成されている。言い換えれば、底隅部26aと傾斜部23aとの間を区画する折り曲げ部Xa(第2接続部)と、底隅部26aと底部22との間を区画する折り曲げ部Ya(第1接続部)とが形成されている。つまり、底部22は、折り曲げ部Xaと、折り曲げ部Yaとによって、二段折りされている。底隅部26aの幅(折り曲げ部XaとYaとの間の長さ)は、傾斜部23aの幅(折り曲げ部Xaから嵌合部25aまでの長さ)より短く形成されている。
【0041】
また、底部22は、傾斜部23bとの連結部近傍においても同様に、傾斜部23bに近接する方向に折り曲げることによって、底隅部26bが形成されている。言い換えれば、底隅部26bと傾斜部23bとの間を区画する折り曲げ部Xb(第2接続部)と、底隅部26bと底部22との間を区画する折り曲げ部Yb(第1接続部)とが形成されている。つまり、底部22は、折り曲げ部Xbと、折り曲げ部Ybとによって、二段折りされている。底隅部26bの幅(折り曲げ部XbとYbとの間の長さ)は、傾斜部23bの幅(折り曲げ部Xbから嵌合部25bまでの長さ)より短く形成されている。
【0042】
これにより、底部22は、傾斜部23aおよび23bとの連結部近傍において、折り曲げ部YaおよびYbが形成され、二段折りとなるため、折板2の強度を高くすることができる。折板2の強度の向上の詳細については、
図6から
図10に示す試験結果に基づいて、後述する。
【0043】
また、底隅部26a,26bを区画する、折り曲げ部Xa、Xbおよび折り曲げ部Ya、Ybの両方は、上方から見て谷折りになっている。また、折り曲げ部XaとYaとの間と、折り曲げ部Xb、Ybとの間には、山折りになっている箇所を含んでいない。
【0044】
言い換えれば、折り曲げ部Yaは、折り曲げ部Xaと同じ方向に折り曲げられており、折り曲げ部Ybも同様に、折り曲げ部Xbと同じ方向に折り曲げられており、異なる方向に折り曲げられている箇所はない。
【0045】
そのため、反対側に折り曲げる場合と比較して、ロール成形機等の成型工程が複雑にならない。また、折板2の折り曲げ部の増加は、折り曲げ部YaおよびYbの2箇所のみであるため、寸法精度や、製造コストにほとんど影響を与えない。また、折り曲げ部の形状が細かく複雑でないため、上述した断熱性のシートを貼着しても、折板2を容易に成形することができる。
【0046】
また、底部22の両端を1回のみ折り曲げる場合と比較して、二段折りの場合、鋼板のラインがコースカットとなり、成形するのに必要な寸法が短くなる。一般に、市販されている鋼板の幅の寸法は決まっているため、必要な寸法が短くなると、鋼板の幅方向の寸法に余裕が生じる。この鋼板の寸法の余裕分を、例えば、折板2の山高(底部22の下面から頂部21の上面までの長さ)を高くするために、使用することができるようになる。
【0047】
折板2は、通常、山高の寸法が大きくなると、断面二次モーメントが大きくなるため、剛性(断面性能)が向上する。このため、底部22を二段折りすることにより、鋼板の余裕分を使用して山高を高くすることができ、折板2の強度をさらに高めることができる。
【0048】
このように、底部22を二段折りすることにより、成形が容易で、耐風圧性能が高く、強度の高い折板2を生産することができる。なおここでは、底隅部26aおよび底隅部26bは平らであるが、例えば、両端の折り曲げ部を含めて3段以上の谷折りを含んでもよい。
【0049】
(同角度)
図2に示すように、底隅部26a、26bは水平線に対して傾斜しており、水平線に対する底隅部26a、26bの傾斜角度は、水平線に対する傾斜部23a、23bの角度より、緩やかである。
【0050】
例えば、折り曲げ部Xaにおける折り曲げ角度xは25°であって、折り曲げ部Yaにおける折り曲げ角度yは25°であり、角度xと角度yは同じ角度、または5°以内の角度差で構成される。また、25°である場合、角度xと角度yとを足した全体の角度は50°となる。折り曲げ部Xb、Ybについても、これと同様に構成される。
【0051】
角度xと角度yの差が5°以内であれば、同程度の角度と見なせる。これにより、二段折り部分周辺は、均等に負荷がかかり、折り曲げ部Xa、Yaの何れかに偏って負荷がかかる場合と比較して、負荷がかかっても破損しにくくなる。
【0052】
なお、角度xおよびyは、これに限らず、互いに相違する角度であってもよい。また、角度xと角度yを足した全体の角度は、50°以外の角度であってもよい。
【0053】
(リブ)
図2に示すように、底部22には、略中央部に凹部27が形成されている。凹部27は、リブとして機能し、折板2を補強するために形成されている。
【0054】
また、暑さのため、底部22の長さが伸びた場合、伸長した長さ分、底部22は上方または下方に膨出して変形する。この際、凹部27が形成されていると、底部22が膨出する方向を、凹部27の膨出する方向と同じ方向である下方へ導くことができる。このため、底部22の変形方向を制御し、各底部22がそれぞれ勝手な方向へ変形するのを抑制することができる。
【0055】
(上部嵌合)
図2および
図4に示すように、折板2は、上はぜ部24aと傾斜部23aとの間に、タイトフレーム3の連結部33aに形成された突出係止部34aと嵌合する嵌合部25aを備えている。また、下はぜ部24bと傾斜部23bとの間にも、タイトフレーム3の連結部33bに形成された突出係止部34bと嵌合する嵌合部25bを備えている。
【0056】
突出係止部34aと突出係止部34bとは、一対に構成され、同様に、嵌合部25aと嵌合部25bとは、一対に構成されている。
【0057】
一対の突出係止部34a、33bに、一対の嵌合部25a,25bを嵌め込むことにより、折板2は、タイトフレーム3に強固に取付けられる。
【0058】
嵌合部25a,25bは、折板2の高さ方向における中央より上側に位置する。また、突出係止部34a、33bも、高さ方向における中央より上側に位置する。
【0059】
このため、折板2をタイトフレーム3に取付ける際に、嵌合部25a,25bおよび突出係止部34a、33bを視認しやすく、施工が容易になる。
【0060】
なお、嵌合部25a,25bの位置は、これに限らず、折板2の高さ方向における中央、または中央より下側に位置してもよい。
【0061】
(角ハゼ)
上述したように、折板2の頂部21aには上はぜ部24aが形成され、頂部21bには下はぜ部24bが形成されている。折板2の上はぜ部24aは、互いに隣接する折板2Aに形成された下はぜ部24bと係合し、はぜ締めされることによって、折板2は、折板2Aと連結される。このように、互いに隣接する折板2をはぜ締めにより連結することによって、
図1に示すように、複数の頂部21と、複数の底部22とが交互に連続して形成される屋根構造体1が構成される。
【0062】
図2に示すように、はぜ締め部24は、上はぜ部24aの断面形状が略矩形状に形成される角はぜである。上はぜ部24aの端部には、上方へ屈曲する屈曲片24cが形成され、下はぜ部24bには、頂部21bから略垂直に立設する立ち上がり部24dが形成されている。
【0063】
角はぜは全体的に直線で形成されているため、丸はぜ等と比較して高い寸法精度で形成することができる。また、材料も少なくて済むため、削減できた材料で山高を高くする等、折板2の強度をさらに高めるために使用することができる。
【0064】
図5に示すように、下はぜ部24bに上はぜ部24aを係合させて、はぜ締めする。このとき、折り曲げられた上はぜ部24aは、下はぜ部24bの上部を挟み込む。これにより、上はぜ部24aと下はぜ部24bとを、より強固に、はせ締めすることができる。
【0065】
なお、角はぜによるはぜ締めについて、上記に説明したが、これに限らず、丸はぜ、または三角はぜ等、種々のはぜ締めを用いてもよい。
【0066】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例1】
【0067】
本実施例では、折板ドブ底モデル破壊試験を実施し、折板2の底部22の上下方向の座屈強度を調べた。試験対象として、折板2の底部22部分のモデルを3種類、1種類につき3体制作し、それぞれの座屈強度を測定した。なお、各モデルは実際の折板の1/2のスケールとし、各モデルは原板幅408mmの同サイズの原板を使用し、折り曲げ位置のみを変えることによって、3種類のモデルを制作した。
【0068】
具体的には、各モデルの底部が上側になるように設置し、試験機(島津製作所製万能試験機:型番AG-100kNX)を用いて、各モデルに試験速度10mm/minの荷重を加え、モデルが変位するまでの最大荷重と、当該最大荷重をかけたときの最大点変位を測定した。
【0069】
図6は、本発明の実施形態1に係る折板およびその他の折板の試験方法を説明する図、
図7は実施形態1に係る試験体1の試験結果を示す図、
図8は比較体1の試験結果を示す図、
図9は比較体2の試験結果を示す図である。また、
図10は試験体1、比較体1、および比較体2の試験結果を比較して示す図である。
【0070】
図7から
図9に示す各グラフは、各モデルにかける縦方向の荷重(試験力)と変位(ストローク)との関係を示すグラフである。また、各グラフの下に示される各画像は、試験前および試験後における各モデルの状態を示す画像である。なお、各グラフは、見やすいように、1-2、1-3について、それぞれ原点をX軸方向にずらして示している。
【0071】
図6に示すように、試験体1は、実施形態1の折板2を想定したモデルである。具体的には、一対の底隅部26を備える山高166mmの折板を想定した。
【0072】
比較体1および比較体2は、実施形態1の折板2と比較するために制作したモデルである。具体的には、比較体1は、底隅部を備えない山高162mmの折板を想定し、比較体2は、底隅部を備えない山高172mmの折板を想定した。
【0073】
つまり、山高の高さで比較すると、比較体2が一番高く172mmであり、比較体1が一番低く162mmであり、試験体1は、比較体1と比較体2との間の高さ166mmである。
【0074】
図7から
図10に示すように、試験体1は、最大点変位の際の荷重の平均値が4.41kN、比較体1は3.86kN、比較体2は4.02kNであり、試験体1は、比較体1および比較体2に比べて強度が高かった。
【0075】
一般的に折板は、山高が高い折板の方が、山高が低い折板より座屈強度が高くなる。しかし、試験体1は、比較体2の方が試験体1より山高が高いにも関わらず、比較体2よりも座屈強度が高かった。
【符号の説明】
【0076】
2 折板(屋根材)
22 底部
23 傾斜部
24 はぜ締め部
25 嵌合部
26 底隅部
34 突出係止部
Xa、Ya 折り曲げ部(第1接続部)
Xb、Yb 折り曲げ部(第2接続部)